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特許7388576骨格推定装置、骨格推定方法および体操採点支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】骨格推定装置、骨格推定方法および体操採点支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20231121BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20231121BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20231121BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20231121BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G06T7/00 660
G06T7/00 350B
G06T7/20 300Z
A61B5/107 300
A61B5/11 230
A63B71/06 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022573819
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2021000107
(87)【国際公開番号】W WO2022149190
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】浅山 能久
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049216(WO,A1)
【文献】冨森英樹 ほか,3Dセンシングによる体操採点支援システム,日本ロボット学会誌,日本,一般社団法人日本ロボット学会,2020年05月15日,第38巻, 第4号,pp.339-344,ISSN 0289-1824
【文献】長谷川雄大 ほか,体操競技における自動採点のための骨格推定,第82回(2020年)全国大会講演論文集(2) 人工知能と認知科学,2020年02月20日,pp.(2-539)-(2-540)
【文献】桝井昇一 ほか,3Dセンシング・技認識による体操採点支援,電子情報通信学会誌,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2020年01月01日,第103巻, 第1号,pp.5-14,ISSN 0913-5693
【文献】世界が認めた富士通の体操判定AI 勝負分ける関節「僅か1度」の差を見極め,日経トレンディ,日経BP,2019年12月04日,第456号,pp.156-157
【文献】遠藤宏之,体操採点のシステム化からスポーツ産業の発展を目指す,GIS NEXT,日本,株式会社ネクストパブリッシング,2019年01月28日,第66号,pp.12-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 7/20
A61B 5/107
A61B 5/11
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間における骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、
前記所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、
算出した前記特徴量に基づいて近似線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似線との相関状態を算出し、
前記相関状態に基づいて、前記所定期間の前記推定情報のうち推定が異常な前記フレーム部分を不良骨格として検出する制御部、
を備えたことを特徴とする骨格推定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記特徴量があらかじめ設定した範囲を超える場合、前記所定期間における前記特徴量から多次元関数による近似曲線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似曲線との相関係数から前記所定期間における前記特徴量に対する尤度を算出し、
前記尤度が予め設定した閾値より小さい場合、前記特徴量と前記近似曲線との差分が最大の前記フレームを前記不良骨格として検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨格推定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記特徴量があらかじめ設定した範囲内の場合、前記所定期間を複数に分割した各分割区間毎に前記特徴量から多次元関数による近似曲線をそれぞれ算出し、
前記分割区間のそれぞれで算出した前記特徴量と、前記近似曲線との相関係数から尤度を算出し、
前記尤度が予め設定した閾値より小さい場合、前記特徴量と前記近似曲線との差分が最大の前記フレームを前記不良骨格として検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨格推定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
複数の前記分割区間同士の一部が時間的に重なるよう分割することを特徴とする請求項3に記載の骨格推定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記特徴量があらかじめ設定した範囲未満の場合、前記所定期間における前記特徴量の最大値と最小値を算出し、
算出した前記最大値と最小値を含む前記特徴量の累積量に基づき尤度を算出し、
前記尤度に基づき前記不良骨格を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨格推定装置。
【請求項6】
前記制御部は、
検出された前記不良骨格の前記フレーム部分に対して再度、骨格の推定を行うことを特徴とする請求項1に記載の骨格推定装置。
【請求項7】
前記特徴量は、前記所定期間において予め想定した人体の所定の運動に対応する運動特徴量であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の骨格推定装置。
【請求項8】
コンピュータが、
所定期間における骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、
前記所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、
算出した前記特徴量に基づいて近似線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似線との相関状態を算出し、
前記相関状態に基づいて、前記所定期間の前記推定情報のうち推定が異常な前記フレーム部分を不良骨格として検出する、
処理を実行することを特徴とする骨格推定方法。
【請求項9】
選手が技を実施する体操競技の体操採点システムであって、
所定期間にわたる前記選手の骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、
前記所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、
算出した前記特徴量に基づいて近似線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似線との相関状態を算出し、
前記相関状態に基づいて、前記所定期間の前記推定情報のうち推定異常な前記フレーム部分を不良骨格として検出する制御部、
を備えたことを特徴とする体操採点システム。
【請求項10】
前記選手を撮像し、距離情報を含む3次元点群の画像をフレーム単位で出力する3Dレーザーセンサーと、骨格推定装置と、を備え、
前記骨格推定装置は、
前記3次元点群の画像から深度画像を生成し、前記深度画像から事前に学習した学習モデルに基づき、前記選手の3次元の骨格を認識する骨格認識部と、
前記3次元点群と前記3次元の骨格とに基づき、前記選手の骨格に適合した3次元の骨格を推定情報として出力するフィッティング部と、を有し、
前記制御部は、
前記技別の特徴量が予め設定され、前記選手による所定の技の実施に対応して前記フィッティング部が出力する前記推定情報のうち前記不良骨格を検出する、
ことを特徴とする請求項9に記載の体操採点システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記推定情報を体操競技の採点者に提示し、
前記不良骨格の検出時には、前記不良骨格の前記フレーム部分に対して再度、骨格の推定を実施した後の前記推定情報を提示する、
ことを特徴とする請求項10に記載の体操採点システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化する人体の骨格を推定する骨格推定装置、骨格推定方法および体操採点支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体操や医療等の広い分野で人体の骨格認識が用いられてきている。例えば、現在の体操競技の採点方法は、複数の採点者による目視で行っているが、近年の技の高度化により採点者の目視では採点が困難な場合が増加している。このため、3Dレーザーセンサーにより取得した選手の3次元データを基に骨格推定装置が選手の骨格情報や各関節の角度、実施した技情報などを認識し、採点者に骨格(例えば姿勢)の情報を提供することで採点を支援することが考えられる。
【0003】
従来、骨格推定に関連する技術として、例えば、時系列の各フレーム画像からシルエット画像を生成し、姿勢状態予測により各姿勢状態の尤もらしさを生成されたシルエット画像を用いて評価し、多関節動物の姿勢を推定する技術がある。また、キネマティクスモデルの関節間の連結性拘束に応じた順番で関節位置を予測して2次元画像上に予測位置を射影し、射影位置の信頼性を評価することで、対象人物の姿勢や動作を認識し、モーションキャプチャに用いる技術がある。また、人のアニメーション生成を行う際に、データベースに記憶した人体の関節の動作パターンを用いることで、コンピュータグラフィックスでの多関節の動作生成および修正を行う技術がある(例えば、下記特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-015558号公報
【文献】特開2007-333690号公報
【文献】特開平10-171854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、人体の骨格の動作について、例えば、隣接フレームでの骨格(関節)の急激な変化を検出し、修正を行うものであり、人体の一連(全体)の動作に基づく骨格の変化を検出することはできなかった。
【0006】
具体例として、体操競技のひねり技では、技全体で体を1回ひねる動作を行う。この場合、従来技術では、隣接するフレーム間での急激な骨格(姿勢)変化を検出するのみであり、技全体で体を1回ひねる動作に対する骨格の変化を検出することはできない。体操競技では、ひねる量が異なる場合や、技にひねりがない場合もある。このため、例えば、従来技術では、隣接したフレーム間の骨格の変化が人体の動作として可能な動きであるが、実際の動きと異なる骨格が推定された場合、これを不良骨格と検出することができない。ここで、従来技術では、体操競技の技等、所定時間で行う一連の動作において、装置内で修正すべき不良骨格を検出できなかった。
【0007】
一つの側面では、本発明は、人体の一連の動作における骨格の変化を正しく検出できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、所定期間における骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、前記所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、算出した前記特徴量に基づいて近似線を算出し、算出した前記特徴量と、前記近似線との相関状態を算出し、前記相関状態に基づいて、前記所定期間の前記推定情報のうち推定が異常な前記フレーム部分を不良骨格として検出する制御部、を備えたことを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、人体の一連の動作における骨格の変化を正しく検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態にかかる骨格推定装置の骨格判定例の説明図である。
図2図2は、骨格推定装置の機能例を示すブロック図である。
図3図3は、骨格推定装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4図4は、骨格推定装置の処理例を示すフローチャートである。
図5図5は、所定期間で推定した骨格情報に対する不良骨格の検出例を示す図である。
図6図6は、実施の形態の骨格推定装置を含む体操採点支援システムの構成例を示す図である。
図7図7は、特徴量別の不良骨格検出の機能例を示すブロック図である。
図8図8は、特徴量が範囲未満のケース1の場合の説明図である。
図9図9は、特徴量が範囲を超えたケース3の場合の説明図である。(その1)
図10図10は、特徴量が範囲を超えたケース3の場合の説明図である。(その2)
図11A図11Aは、特徴量が範囲以内のケース2の場合の説明図である。(その1)
図11B図11Bは、特徴量が範囲以内のケース2の場合の説明図である。(その2)
図12図12は、特徴量別の不良骨格検出の処理例を示すフローチャートである。
図13図13は、他の特徴量に対する不良骨格の検出の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
以下に図面を参照して、開示の骨格推定装置、骨格推定方法および体操採点支援システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施の形態にかかる骨格推定装置の骨格判定例の説明図である。実施の形態の骨格推定装置100は、所定期間の運動等における人体の骨格の変化を正しく検出可能にする。例えば、骨格推定装置100は、体操競技時に選手が実施した技に対応して変化する選手の骨格を推定する。ここで、実施の形態の骨格推定装置100は、所定期間の運動(技)で推定した骨格のうち、実際の人体(選手)の動きと異なる骨格の部分を不良骨格として検出する。
【0013】
骨格推定装置100には、所定期間において骨格の変化に関する情報が入力される。骨格変化に関する情報は、例えば、3Dレーザーセンサーが各直交するX,Y,Z軸それぞれの距離情報を含む画像(3次元点群)を所定期間分フレーム単位で出力する。骨格推定装置100は、複数台の異なる位置から人体(選手)を撮像した3Dレーザーセンサーの出力を取得する。
【0014】
骨格推定装置100の制御部110は、骨格推定プログラムを実行処理することで、所定期間の運動等により変化する人体の骨格を推定する。制御部110は、取得した所定期間において人体の運動等による骨格の変化に関する情報から人体の各関節の動き(角度)等を推定し、推定結果として骨格情報を出力する。所定期間の運動は、予め想定した運動であり、例えば、体操競技がある。体操競技では所定期間にわたって選手が技を実施し、この技に対応して選手の骨格が所定期間で変化する。
【0015】
そして、実施の形態の骨格推定装置100は、所定期間の運動による人体の各関節の動きの推定した骨格情報のうち、実際の人体の動きと異なる部分について不良骨格として検出する。これにより、例えば、骨格推定装置100は、実際の人体の動きと異なる推定結果の部分について、再度の骨格判定を行うことができるようになる。
【0016】
制御部110は、所定期間における人体の動きの特徴量(運動特徴量)に着目し、あるべき運動特徴量との関係性により、推定された骨格が尤もらしいかを推定することで、不良骨格を検出する。あるべき運動特徴量は、例えば、体操競技において、所定期間をかけて行う技に対応した特徴量である。これにより、体操競技の選手の技の実施に対応した骨格の推定結果を採点者に提示できる。また、骨格推定装置100内部で検出した不良骨格について再度の骨格判定を実施できるようになる。これにより、選手の技に対応した骨格の推定結果を精度よく対象の競技の採点者に提示できるようになる。
【0017】
制御部110の処理概要について、体操競技の例を用いて説明する。
(1)3Dレーザーセンサー等から選手の3次元の骨格情報を取得する。
(2)所定期間(例えば、技の開始ts~終了te)までの間の各フレームの特徴量を算出する。
【0018】
(3)所定期間における技全体の運動特徴量に対する尤度を算出する。例えば、技全体の運動特徴量の大きさ別に、尤度の算出方法をケース1~ケース3の3通りに場合分けしてもよい。
【0019】
ケース1:例えば、運動特徴量が予め設定した範囲未満の場合、各フレームの特徴量の最大値と最小値から尤度を算出する。
ケース2:運動特徴量が予め設定した範囲内の場合、予め設定した複数の分割区間で多次元関数による近似線を算出する。そして、分割区間毎に算出した近似線と運動特徴量との相関係数のうち、最大の相関係数から尤度を算出する。
ケース3:運動特徴量が予め設定した範囲を超える場合、技の開始ts~終了teまでの特徴量から多次元関数による近似線を算出する。
ケース2,3の場合、算出した近似線と運動特徴量との相関係数から尤度を算出する。
【0020】
(4)尤度が予め設定した閾値より小さい場合、近似線と運動特徴量の差が最大のフレームを算出する。これにより、推定した骨格情報のうち、不良骨格の部分のフレーム(最大誤差のフレーム)を検出できる。
(5)また、最大誤差フレームに基づき、不良骨格の部分のフレームに対し、再度の骨格判定を行うことができる。
【0021】
上記の運動特徴量としては、体操競技の“ひねり量”や“宙返り量”などがある。また、多次元関数としては1次関数(直線)や、3次関数(3次曲線)などがある。“ひねり量”について3次曲線を用い、“宙返り量”に対応して直線を用いることができる。
【0022】
図1(a),(b)には、上記のケース3における近似線と運動特徴量との相関状態を示す。横軸は時間、縦軸は累積ひねり角度である。ここで、運動特徴量は”運動ひねり量”であり、技として1回以上ひねり、例えば、跳馬の第二空中局面の累積ひねり角度を示す。
【0023】
制御部110は、所定期間、すなわち技の開始ts~終了teまでの間における累積ひねり角度a(図中実線)からひねりの検出に適した近似3次曲線bを算出する(図中点線)。次に、制御部110は、累積ひねり角度と近似3次曲線の相関係数を算出する。
【0024】
次に、制御部110は、予め設定したパラメータの指数関数を利用して相関係数から尤度を算出する。そして、制御部110は、累積ひねり角度aと近似3次曲線bの類似の度合い(相関係数)に基づき、不良骨格の有無を検出する。骨格が正しい場合は、図1(a)に示すように、累積ひねり角度aと近似3次曲線bが類似しており、相関係数が高い。これにより、制御部110は、所定期間(技の開始ts~終了teまでの間)において推定した骨格情報が正しいと判断する。
【0025】
一方、骨格が誤っている場合は、図1(b)に示すように、累積ひねり角度aと近似3次曲線bに差があり、相関係数が低い。これにより、制御部110は、所定期間(技の開始ts~終了teまでの間)において推定した骨格情報が誤っている部分があると判断する。この場合、制御部110は、例えば、累積ひねり角度aと近似3次曲線bに差があり、相関係数が低い期間T1,T2に対し、再度の骨格判定を行うことができる。
【0026】
このように、実施の形態によれば、所定期間における人体の動き、例えば、体操競技の技全体の動作としての運動特徴量に着目し、あるべき運動特徴量との関係性により、推定した骨格が尤もらしいかを推定する。これにより、所定期間において推定した骨格に対する不良骨格の有無を検出できるようになる。
【0027】
また、検出した不良骨格の部分に対し再度の骨格判定を行うことができるようになり、所定期間の全体にわたり推定した骨格の精度を向上させることができるようになる。例えば、対象の競技の採点者に対し、選手の技に対応した骨格の推定結果の精度を向上して提示できるようになる。
【0028】
図2は、骨格推定装置の機能例を示すブロック図である。図2には、実施の形態で主となる機能、すなわち、上記ケース3に示した運動特徴量が”運動ひねり量”であり、技として1回以上ひねり、例えば、跳馬の第二空中局面の累積ひねり角度の骨格推定に対応した機能を示す。
【0029】
骨格推定装置100は、骨格取得部201、特徴量算出部202、近似3次曲線算出部203、尤度算出部204、不良骨格検出部205、を含む。骨格取得部201は、3Dレーザーセンサー等から選手の3次元の骨格情報を取得する。3次元の骨格情報は、例えば、X,Y,Z軸それぞれの距離情報を含む深度画像を所定期間、例えば、技の開始ts~終了teまでの間の複数フレームである。
【0030】
骨格推定装置100は、取得した3次元の骨格情報に対し、学習型の骨格認識を行い、3D関節座標を算出し、この3D関節座標を人体にフィッティングさせる。このフィッティング後の関節座標に基づき、人体の動きの変化(技)を認識する。
【0031】
特徴量算出部202、近似3次曲線算出部203、尤度算出部204、不良骨格検出部205は、技の認識にかかる構成部である。特徴量算出部202は、技の開始ts~終了teまでの各フレームの特徴量を算出する。近似3次曲線算出部203は、ケース3に相当して運動特徴量が予め設定した範囲以上の場合に対応して、技の開始ts~終了teまでの特徴量から多次元関数による近似線を算出する(図1参照)。
【0032】
尤度算出部204は、算出した近似線と運動特徴量との相関係数から尤度を算出する。不良骨格検出部205は、尤度が予め設定した閾値より小さい場合、近似線と運動特徴量の差が最大のフレームを算出する。これにより、推定した骨格情報のうち、不良骨格の部分のフレームを検出する。
【0033】
図3は、骨格推定装置のハードウェア構成例を示す図である。上述した骨格推定装置100は、図3に示すハードウェアで構成されたコンピュータ装置を用いることができる。
【0034】
例えば、骨格推定装置100は、CPU(Central Processing Unit)301、メモリ302、ネットワークインタフェース(IF)303、記録媒体IF304、記録媒体305、を含む。300は各部を接続するバスである。
【0035】
CPU301は、骨格推定装置100の全体の処理を司る制御部として機能する演算処理装置である。メモリ302は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、CPU301のプログラムを格納するROM(Read Only Memory)である。揮発性メモリは、例えば、CPU301のワークエリアとして使用されるDRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)等である。
【0036】
ネットワークIF303は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどのネットワーク310に通信接続するインタフェースである。このネットワークIF303を介して、骨格推定装置100は、3Dレーザーセンサーや、採点者の端末等に通信接続することができる。
【0037】
記録媒体IF304は、CPU301が処理した情報を記録媒体305との間で読み書きするためのインタフェースである。記録媒体305は、メモリ302を補助する記録装置である。記録媒体305は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)フラッシュドライブ等を用いることができる。
【0038】
メモリ302または記録媒体305に記録されたプログラムをCPU301が実行することにより、図2に示した骨格推定装置100の各機能(制御部110)を実現することができる。
【0039】
図3に示したハードウェア構成は、採点者の端末(例えば、PCやスマートフォン等)にも適用できる。例えば、実施の形態の骨格推定装置100が採点者の端末に接続されてなる体操採点支援システムは、汎用のハードウェア構成を用いて実現できる。
【0040】
図4は、骨格推定装置の処理例を示すフローチャートである。図4は、骨格推定装置100の制御部110が行う図2の構成に対応した処理例を示す。
【0041】
はじめに、制御部110は、3Dレーザーセンサー等から選手の3次元の骨格情報を取得する(ステップS401)。次に、制御部110は、技の開始ts~終了teまでの各フレームの特徴量を算出する(ステップS402)。次に、制御部110は、技の開始ts~終了teまでの特徴量から多次元関数による近似線(近似3次曲線、図1参照)を算出する(ステップS403)。
【0042】
次に、制御部110は、算出した近似線と運動特徴量との相関係数から尤度を算出する(ステップS404)。そして、制御部110は、尤度が予め設定した閾値より小さい場合、近似線と運動特徴量の差が最大のフレームを算出する。これにより、推定した骨格情報のうち、不良骨格の部分のフレームを検出する(ステップS405)。
【0043】
これにより、技の開始ts~終了teまでの所定期間において推定した骨格に対する不良骨格の有無を検出できるようになる。また、検出した不良骨格の部分に対し再度の骨格判定を行うことができるようになり、所定期間の全体にわたり推定した骨格の精度を向上させることができるようになる。例えば、対象の競技の採点者の端末に対し、選手の技に対応した骨格の推定結果の精度を向上して提示できるようになる。
【0044】
図5は、所定期間で推定した骨格情報に対する不良骨格の検出例を示す図である。図5(a)は、体操競技の跳馬のひねり技を行った選手の所定期間(技の開始ts~終了teまでの間)の複数フレームF1~F11の画像である。図5(b)は、図5(a)の各フレームに対応し、骨格推定装置100が推定した選手の骨格情報を示すCGデータK1~K11である。
【0045】
骨格推定装置100は、3Dレーザーセンサーから取得した選手の3次元の骨格情報として、X,Y,Z軸それぞれの距離情報を含む深度画像に対し、学習型の骨格認識を行い、3D関節座標を算出し、この3D関節座標を人体モデルにフィッティングさせる。図5(b)のCGデータK1~K11は、フィッティング後の推定した骨格情報である。骨格推定装置100は、推定した骨格情報(CGデータK1~K11)に対し、不良骨格の有無を検出する。
【0046】
図5(a)に示す実際の画像では、跳馬のひねり技で選手が1回の宙返り(上下回転)中に左右に1・1/2回のひねりを行っている。特にF3~F6の間で1回のひねりを行っている。これに対し、図5(b)で推定した骨格情報では、CGデータK3~K6について、ひねりがない状態である。
【0047】
骨格推定装置100は、図4等に示す処理により、実際の動きと異なる部分のCGデータK3~K6部分の不良骨格を検出する。これにより、推定した骨格情報について、隣接したフレーム間の関節の変化としては人体の動作としておかしくない動きであるものの、実際の動きと異なる部分的な骨格情報(CGデータK3~K6)を不良骨格NGとして検出できるようになる。
【0048】
骨格推定装置100は、検出した不良骨格NGの骨格情報(CGデータK3~K6)部分について、再度の骨格推定を行うことで、この不良骨格NG部分の骨格情報を正しいものに修正することができるようになる。
【0049】
(体操採点支援システムへの適用例)
図6は、実施の形態の骨格推定装置を含む体操採点支援システムの構成例を示す図である。骨格推定装置100の制御部110は、体操競技で選手が実施する技を採点する採点者に対し、採点に有用な情報として、選手が所定期間で実施する技の骨格情報(例えば姿勢)を提供する。
【0050】
図示のように、3Dレーザーセンサー601は、体操競技の技Aを実施する選手Hを撮像し、各直交するX,Y,Z軸それぞれの距離情報を含む画像(3次元点群)を、所定期間(技の開始ts~終了te)の複数フレームを骨格推定装置100に出力する。3Dレーザーセンサー601は、例えば、複数配置されそれぞれ選手Hを撮像することで、多視点の画像を骨格推定装置100に出力する。
【0051】
骨格推定装置100は、骨格認識部602、機械学習部603、フィッティング部604、技認識部605を含む。骨格推定装置100は、技データベース(DB)660にアクセス可能である。
【0052】
機械学習部603は、深度画像631と関節座標632に基づき、3次元の骨格情報を学習モデル633として保持し、骨格認識部602に出力する。
【0053】
骨格認識部602は、選手Hの技の期間中における選手Hの骨格を各フレーム単位で認識処理し、フレーム単位で選手Hの3次元の関節座標を出力する。骨格認識部602は、深度画像生成部621、ディープラーニング部622、3D関節座標生成部623を含む。
【0054】
深度画像生成部621は、複数の3Dレーザーセンサー601が出力する3次元点群の情報に基づき、選手Hに対する多視点の深度画像を生成する。ディープラーニング部622は、機械学習部603の学習モデル633にアクセスして、深度画像生成部621が生成した多視点の深度画像を学習し、3次元の骨格情報を得る。3D関節座標生成部623は、選手Hのフレームごとの3次元の関節座標の情報を生成する。
【0055】
フィッティング部604は、骨格認識部602(3D関節座標生成部623)が出力する3次元の関節座標を、フレームごとに選手Hの深度画像にフィッティングさせる処理を行う。この際、フィッティング部604は、3D関節座標生成部623が出力する3次元の関節座標を一次骨格641として認識する。
【0056】
フィッティング部604は、この一次骨格641の各関節位置について、図中矢印方向に位置探索し、選手Hの深度画像(体幹)にフィッティングさせ、フィッティング後の3D関節座標642を得る。フィッティング後の3D関節座標642は、一次骨格を基に選手Hの体形に対応させたより高精度な骨格情報であり、上述した、推定した骨格情報(姿勢)として用いられる。
【0057】
技認識部605は、体操競技の各種技の技データベース660にアクセスし、技データベース660の技と一致する運動(選手Hが実施した技)を判定する。技認識部605は、技名ごとの特徴量(運動特徴量)、条件が予め設定された技認識テーブル651を保持する。
【0058】
上述した実施の形態で説明した、推定した骨格情報に対する不良骨格の検出は、この技認識部605が実施する。不良骨格の検出時、骨格推定装置100は、不良骨格のフレーム、例えば、上述したCGデータK3~K6部分の情報に対しフィッティング部604によるフィッティングの処理を再度実施する。
【0059】
技認識部605が行う選手の骨格情報や各関節の角度、実施した技情報などの情報は、採点者に骨格(例えば姿勢)の情報として出力される。
【0060】
(特徴量別の不良骨格検出の構成例)
図7は、特徴量別の不良骨格検出の機能例を示すブロック図である。図7では、特徴量の大きさ(ひねり量)別の不良骨格の検出例を説明する。図7に示す不良骨格検出の機能は、図6に示す技認識部605に設けられる。
【0061】
図7において、図2と同様の構成には同一の符号を付している。図7に示す骨格推定装置100は、図2同様の骨格取得部201、特徴量算出部202、近似3次曲線算出部203、尤度算出部204、不良骨格検出部205、を含む。また、算出方法判定部703、算出区間記憶部704、複数区間近似3次曲線算出部705、複数相関係数算出部706、相関係数算出部707、最大最小値算出部708、誤差算出部709を含む。
【0062】
ここで、算出方法判定部703は、技全体の運動特徴量の大きさ別に異なる尤度の算出方法を判定する。下記例では、運動特徴量の大きさ別にケース1~ケース3の3通りに場合分けする。
【0063】
ケース1:例えば、運動特徴量が予め設定した範囲未満の場合、各フレームの特徴量の最大値と最小値から尤度を算出する。ケース1では、最大最小値算出部708が機能する。
【0064】
ケース2:運動特徴量が予め設定した範囲内の場合、予め設定した複数の分割区間毎に多次元関数による近似線を算出する。そして、複数の算出した近似線と運動特徴量との相関係数のうち、最大の相関係数から尤度を算出する。ケース2では、算出区間記憶部704、複数区間近似3次曲線算出部705と複数相関係数算出部706が機能する。
【0065】
ケース3:運動特徴量が予め設定した範囲を超える場合、技の開始ts~終了teまでの特徴量から多次元関数による近似線を算出する。ケース3では、近似3次曲線算出部203と相関係数算出部707が機能する。このケース3は、図2の機能構成に対応している。
【0066】
骨格取得部201は、3Dレーザーセンサー等から選手の3次元の骨格情報を取得する。特徴量算出部202は、技の開始ts~終了teまでの各フレームの特徴量を算出する。
【0067】
算出方法判定部703は、特徴量算出部202が算出した特徴量の大きさに応じてケース1~ケース3を場合分けし、各ケース1~ケース3に応じた機能部を機能させる。
【0068】
特徴量の大きさが予め設定した範囲未満の場合、算出方法判定部703は、ケース1と判定し、該当する最大最小値算出部708を機能させる。また、特徴量の大きさが予め設定した範囲以内の場合、算出方法判定部703は、ケース2と判定し、該当する複数区間近似3次曲線算出部705と複数相関係数算出部706を機能させる。また、特徴量の大きさが予め設定した範囲を超える場合、算出方法判定部703は、ケース3と判定し、該当する近似3次曲線算出部203と相関係数算出部707を機能させる。
【0069】
ケース1の場合、特徴量が範囲未満、例えば、跳馬でひねり量がない技の場合に相当する。この場合、最大最小値算出部708は、技の開始ts~終了teまでの間の特徴量の最大値と最小値を算出する。
【0070】
ケース2の場合、特徴量が範囲以内、例えば、跳馬でひねり量が1/2回のひねり技の場合に相当する。この場合、複数区間近似3次曲線算出部705は、算出区間記憶部704に記憶された分割区間、すなわち、技の開始ts~終了teまでの所定期間を複数に分割した分割区間のそれぞれで近似3次曲線を算出する。また、複数相関係数算出部706は、分割区間のそれぞれについて累積ひねり角度と近似3次曲線の相関係数を算出する。
【0071】
ケース3の場合、特徴量が範囲を超え、例えば、跳馬でひねり量が1回を超えるひねり技の場合に相当する。この場合、近似3次曲線算出部203は、技の開始ts~終了teまでの特徴量から多次元関数による近似線を算出する。また、相関係数算出部707は、累積ひねり角度と近似3次曲線の相関係数を算出する。
【0072】
尤度算出部204は、上記ケース1~ケース3それぞれの出力に基づき、算出した近似線と運動特徴量との相関係数から尤度を算出する。誤差算出部709は、尤度算出部204が算出した尤度が予め設定した閾値との差(誤差)を算出する。不良骨格検出部205は、誤差尤度が予め設定した閾値より小さい場合、近似線と運動特徴量の差が最大のフレームを算出する。これにより、推定した骨格情報のうち、不良骨格の部分の最大誤差のフレームを検出できる。また、最大誤差のフレームに対する再度の骨格推定を行うことができるようになる。
【0073】
(ケース1の処理例)
図8は、特徴量が範囲未満のケース1の場合の説明図である。図8の横軸は時間、縦軸は累積ひねり角度である。図8においては、技がひねりなし、例えば、跳馬の第二空中局面の累積ひねり角度を示す。体操の技定義として、最終累積ひねり角度が90°以上では1/2ひねり技となり、1回ひねり以上ではひねりあり技になる。このため、ひねりなし技は、最終累積ひねり角度が90°未満である。最大最小値算出部708は、技の開始ts~終了teまでの所定期間におけるひねりの最大最小の角度を算出する。
【0074】
ここで、最終的な累積ひねり角度が90°未満でひねりなし技と判定されたとしても、例えば、図8に示すように技を実施した区間の途中で一度90°以上になった期間(T1)があったとする。この場合、一度90°以上となったにも関わらず、最終的に累積ひねり角度が90°未満になった場合は空中で逆回転をしたことになる。これは人体の動作として不可能な動きである。この場合、尤度算出部204は、所定期間の特徴量の累積量に基づき、尤度を低く出力することで、不良骨格検出部205により不良骨格として検出できる。
【0075】
(ケース3の処理例)
図9図10は、特徴量が範囲を超えたケース3の場合の説明図である。技が1回以上ひねりの場合、例えば、跳馬の第二空中局面の累積ひねり角度の場合を示す。図9(a),(b)は、ケース3における近似線と運動特徴量との相関係数の例を示す図表である。横軸は時間、縦軸は累積ひねり角度である。近似3次曲線算出部203は、所定期間、すなわち技の開始ts~終了teまでの間における累積ひねり角度a(図中実線)から近似3次曲線b(図中点線)を算出する。相関係数算出部707は、累積ひねり角度aと近似3次曲線bの相関係数を算出する。
【0076】
尤度算出部204は、予め設定したパラメータの指数関数を利用して相関係数から尤度を算出する。図10には、相関係数から尤度を算出する指数関数の一例を示す。図10の横軸は相関係数、縦軸は尤度である。図10に示すように、相関係数が予め設定した数値Xまでは尤度は高い数値になり、予め設定した数値Y以下になると急激に尤度が低くなるように変換する指数関数を用いる。
【0077】
そして、不良骨格検出部205は、累積ひねり角度と近似3次曲線の類似の度合い(相関係数)に基づき、不良骨格の有無を検出する。骨格が正しい場合は、図9(a)に示すように、累積ひねり角度aと近似3次曲線bが類似しており、相関係数が高い。これにより、制御部110は、所定期間(技の開始ts~終了teまでの間)において推定した骨格情報が正しいと判断する。
【0078】
一方、骨格が誤っている場合は、図9(b)に示すように、累積ひねり角度aと近似3次曲線bに差があり、相関係数が低い。これにより、不良骨格検出部205は、所定期間(技の開始ts~終了teまでの間)において推定した骨格情報が誤っている部分があると判断する。この場合、不良骨格検出部205は、例えば、累積ひねり角度aと近似3次曲線bに差があり、相関係数が低い期間T1,T2に対し、再度の骨格判定を行うことができる。
【0079】
(ケース2の処理例)
図11A図11Bは、特徴量が範囲以内のケース2の場合の説明図である。技が1/2ひねり、例えば、跳馬の第二空中局面の累積ひねり角度の場合を示す。このケース2では、特徴量の検出について、基本的に上記ケース3の1回以上ひねりと同じ手法とする。但し、1/2ひねり技ではひねり数が少ないため、実施した技全体でひねらず、技を実施した区間の最初付近だけでひねるパターンや、技を実施した区間の最後付近だけでひねるパターンが存在することを考慮する。
【0080】
図11Aは、全体の技のうち最初付近だけでひねりの技を実施した時の説明図、図11Bは、全体の技のうち最後付近だけでひねりの技を実施した時の説明図である。これらの図の横軸は時間、縦軸は累積ひねり角度である。
【0081】
図11A図11Bに示すパターンにおいて、実施した技全体で累積ひねり角度aと近似3次曲線bの相関係数を算出すると、これら図11A(a),図11B(a)に示すように尤度が低くなる。
【0082】
このため、技が1/2ひねりの場合には、技を実施した区間全体に対してではなく、技を実施した開始ts~終了teまでを複数の分割区間に分割し、各分割区間同士の一部を時間的に重ならせる。例えば、図11Aに示すように、3つの分割区間に分割し、前半の2/3の分割区間と後半の2/3の分割区間とし、各分割区間でそれぞれ近似3次曲線を算出する。
【0083】
例えば、全体の技のうち最初付近だけでひねりの技を実施する場合には、図11A(b)に示すように、技の開始ts~時期t2までの前半の2/3の分割区間と、時期t1~終了teまでの後半の2/3の分割区間でそれぞれ近似3次曲線を算出する。これにより、前半の2/3の分割区間における尤度が高くなり、前半で実施したひねりの技を推定した骨格情報に対して不良骨格を精度よく検出できるようになる。
【0084】
同様に、全体の技のうち最後付近だけでひねりの技を実施する場合においても、図11B(b)に示すように、前半の2/3の分割区間と後半の2/3の分割区間でそれぞれ近似3次曲線を算出する。これにより、後半の2/3の分割区間における尤度が高くなり、後半で実施したひねりを推定した骨格情報に対して不良骨格を精度よく検出できるようになる。
【0085】
図12は、特徴量別の不良骨格検出の処理例を示すフローチャートである。骨格推定装置100の制御部110が行う図7の機能、および図8図11Bの各説明に対応した処理例を示す。
【0086】
はじめに、制御部110は、3Dレーザーセンサー等から選手の3次元の骨格情報を取得する(ステップS1201)。次に、制御部110は、技の開始ts~終了teまでの各フレームの特徴量を算出する(ステップS1202)。
【0087】
次に、制御部110は、特徴量の大きさを判断し、大きさ別の処理に移行する(ステップS1203)。特徴量が予め設定した範囲未満の場合、ケース1と判定し(ステップS1203:ケース1)、ステップS1204の処理に移行する。また、特徴量が予め設定した範囲内の場合、ケース2と判定し(ステップS1203:ケース2)、ステップS1205の処理に移行する。また、特徴量が予め設定した範囲を超える場合、ケース3と判定し(ステップS1203:ケース3)、ステップS1207の処理に移行する。
【0088】
ケース1の場合、制御部110は、所定期間(技の開始ts~終了te)までの間の特徴量の最大値と最小値を算出し(ステップS1204)、ステップS1209の処理に移行する。
【0089】
ケース2の場合、制御部110は、所定期間(技の開始ts~終了te)までの期間について、予め記憶した複数の区間別に多次元関数による近似線を算出する(ステップS1205)。この後、制御部110は、複数区間のそれぞれで算出した近似線と運動特徴量との相関係数を求め(ステップS1206)、ステップS1209の処理に移行する。
【0090】
ケース3の場合、制御部110は、所定期間(技の開始ts~終了te)までの間の特徴量から近似3次曲線を算出する(ステップS1207)。この後、制御部110は、算出した3次近似曲線と特徴量との相関係数を算出し(ステップS1208)、ステップS1209の処理に移行する。
【0091】
次に、制御部110は、尤度を算出する(ステップS1209)。ここで、ケース2,3の処理データに対しては、算出した近似線と運動特徴量との相関係数から尤度を算出する。一方、ケース1の処理データに対しては、制御部110は、相関を用いず特徴量(ひねり角度の最大値と最小値、図8の説明)に基づき、不可能な動きに対して尤度を低く出力する。
【0092】
この後、制御部110は、尤度が予め設定した閾値より小さい場合、近似線と運動特徴量の誤差を算出する(ステップS1210)。そして、制御部110は、誤差が所定値以上のフレームを算出することで、推定した骨格情報のうち、不良骨格の部分のフレームを検出する(ステップS1211)。
【0093】
これにより、制御部110は、所定期間(技の開始ts~終了te)において推定した骨格に対する不良骨格の有無を検出できるようになる。例えば、図5のCGフレームK3~K6が不良骨格NGとして検出できる。これにより、制御部110は、検出した不良骨格NGの部分に対し再度の骨格判定を行うことができる。
【0094】
(他の技に対する不良骨格の検出例)
上述した実施の形態では、体操の跳馬の競技を例とし、運動特徴量が”運動ひねり量”である場合の不良骨格の検出例について説明した。実施の形態では、体操競技に限らず、人体の関節の移動変化に基づき推定した骨格に対する不良骨格を検出できる。
【0095】
図13は、他の特徴量に対する不良骨格の検出の説明図である。この図13には、跳馬の第二空中局面の累積宙返り角度運動特徴量が”宙返り(上下回転)”の場合の近似線と運動特徴量との相関状態を示す。
【0096】
運動特徴量が”宙返り”の場合、1次直線を用いて累積宙返り角度との相関をとることができる。この場合、制御部110は、累積宙返り角度から近似直線(1次直線)を算出する。この後、制御部110は、累積宙返り角度と近似直線の相関係数を算出する。この後、制御部110は、予め設定したパラメータの指数関数を利用して相関係数から尤度を算出する。ここで、相関係数から尤度を算出する指数関数の一例として、図10に示したひねりの場合と同様の指数係数を利用することができる。
【0097】
そして、制御部110は、累積宙返り角度と近似直線の類似の度合い(相関)に基づき推定した骨格について不良骨格を検出できるようになる。図13(a)に示す例では、累積宙返り角度aと近似直線bが類似しており、相関係数が高いため、推定した骨格が正しいと判定できる。一方、図13(b)のように、累積宙返り角度aと近似直線bに差がある場合、相関係数が低くなり、推定した骨格が誤っている不良骨格を検出できるようになる。
【0098】
このように、各種技等の異なる特徴量であっても、上述した所定期間(技の開始ts~終了teまでの間)における累積角度と、技に適した多次元関数との相関に基づき、不良骨格を検出できる。
【0099】
以上説明した実施の形態によれば、骨格推定装置は、所定期間における骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいて近似線を算出し、算出した特徴量と、近似線との相関状態を算出し、相関状態に基づいて、所定期間の推定情報のうち推定が異常なフレーム部分を不良骨格として検出する。特徴量は骨格の変化に対応し、例えば、体のひねりや回転などである。これにより、推定した骨格のうち実際の動きと異なる部分を不良骨格として検出できるようになる。また、所定期間全体での骨格の変化に基づき不良骨格を判断する。これにより、従来の如く部分的な隣接フレーム間で急激な変化に基づく検出に比して、隣接フレーム間だけでは変化が少なく検出できない場合や、所定期間全体で変化する場合における不良骨格を検出できるようになる。
【0100】
また、骨格推定装置は、特徴量の大きさに応じて不良骨格を異なる方法で検出することで、特徴量、例えば、異なるひねり量別の骨格の推定情報のうち不良骨格を検出できるようになる。特徴量があらかじめ設定した範囲を超える場合、所定期間における特徴量から多次元関数による近似曲線を算出し、算出した特徴量と、近似曲線との相関係数から尤度を算出し、尤度が予め設定した閾値より小さい場合、特徴量と近似曲線との差分が最大のフレームを不良骨格として検出する。これにより、骨格の変化が大きい場合における骨格不良を正確に検出できるようになる。
【0101】
また、骨格推定装置は、特徴量があらかじめ設定した範囲内の場合、所定期間を複数に分割した各分割区間毎に特徴量から多次元関数による近似曲線をそれぞれ算出し、分割区間のそれぞれで算出した特徴量と、近似曲線との相関係数から尤度を算出し、尤度が予め設定した閾値より小さい場合、特徴量と近似曲線との差分が最大のフレームを不良骨格として検出する。ここで、複数の分割区間同士の一部が時間的に重なるよう分割してもよい。これにより、分割区間毎に不良骨格を正確に検出できるようになる。例えば、所定期間のうち前半や後半のみでひねりを行った場合でも、分割区間を用いることで、ひねりの推定情報に対する不良骨格を正確に検出できるようになる。
【0102】
また、骨格推定装置は、特徴量があらかじめ設定した範囲未満の場合、所定期間における特徴量の最大値と最小値を算出し、算出した最大値と最小値を含む特徴量の累積量に基づき尤度を算出し、尤度に基づき不良骨格を検出する。これにより、特徴量の変化が小さい場合でも推定情報に対する不良骨格を正確に検出できるようになる。例えば、所定期間においてひねりを行わない場合における骨格の推定情報に対する不良骨格を正確に検出できるようになる。
【0103】
また、骨格推定装置は、検出された不良骨格のフレーム部分に対して再度、骨格の推定を行うことができる。これにより、所定期間全体にわたり正確な骨格情報を外部に提示できるようになる。
【0104】
また、上記の骨格推定装置は、選手が技を実施する体操競技の体操採点支援システムに適用できる。体操採点支援システムは、3Dレーザーセンサーにより、選手を撮像し、距離情報を含む3次元点群の画像を骨格推定装置がフレーム単位で取得し、3次元点群の画像から深度画像を生成し、深度画像から事前に学習した学習モデルに基づき、選手の3次元の骨格を認識する骨格認識部と、3次元点群と3次元骨格とに基づき、選手の骨格に適合した3次元の骨格を推定情報として出力するフィッティング部と、制御部とを有する。制御部は、技別の特徴量が予め設定され、選手による所定の技の実施に対応してフィッティング部が出力する推定情報のうち不良骨格を検出する。これにより、所定期間にわたる選手の骨格の変化を推定し、選手が所定期間で実施する技に対応した骨格情報を採点者に提示する。採点者は、目視のみに限らず、骨格推定装置が提示する骨格情報を用いて選手が実施した体操の技、例えば、各関節の角度等に基づいてより正確な採点ができるようになる。
【0105】
また、骨格推定装置は、推定情報を体操競技の採点者に提示し、不良骨格の検出時には、不良骨格のフレーム部分に対して再度、骨格の推定を実施した後の推定情報を提示する、これにより、骨格推定装置は、常に正しく推定した骨格情報を採点者に提示でき、骨格推定装置が提示する推定した骨格情報の信頼性を向上できるようになる。
【0106】
以上のことから、実施の形態によれば、所定期間全体で変化する骨格を正しく検出でき、推定した骨格情報の一部に不良骨格がある場合でも、この不良骨格を検出し再度、骨格を推定できるようになる。実施の形態の骨格の推定は、体操競技に限らず、医療における患者の検査や監視等、各種分野における骨格推定に適用できる。
【0107】
なお、本発明の実施の形態で説明した骨格推定方法は、予め用意されたプログラムをサーバ等のプロセッサに実行させることにより実現することができる。本骨格推定方法は、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また本骨格推定方法は、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
【0108】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0109】
(付記1)所定期間における骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、
前記所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、
算出した前記特徴量に基づいて近似線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似線との相関状態を算出し、
前記相関状態に基づいて、前記所定期間の前記推定情報のうち推定が異常な前記フレーム部分を不良骨格として検出する制御部、
を備えたことを特徴とする骨格推定装置。
【0110】
(付記2)前記制御部は、
前記特徴量があらかじめ設定した範囲を超える場合、前記所定期間における前記特徴量から多次元関数による近似曲線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似曲線との相関係数から前記所定期間における前記特徴量に対する尤度を算出し、
前記尤度が予め設定した閾値より小さい場合、前記特徴量と前記近似曲線との差分が最大の前記フレームを前記不良骨格として検出する、
ことを特徴とする付記1に記載の骨格推定装置。
【0111】
(付記3)前記制御部は、
前記特徴量があらかじめ設定した範囲内の場合、前記所定期間を複数に分割した各分割区間毎に前記特徴量から多次元関数による近似曲線をそれぞれ算出し、
前記分割区間のそれぞれで算出した前記特徴量と、前記近似曲線との相関係数から尤度を算出し、
前記尤度が予め設定した閾値より小さい場合、前記特徴量と前記近似曲線との差分が最大の前記フレームを前記不良骨格として検出する、
ことを特徴とする付記1に記載の骨格推定装置。
【0112】
(付記4)前記制御部は、
複数の前記分割区間同士の一部が時間的に重なるよう分割することを特徴とする付記3に記載の骨格推定装置。
【0113】
(付記5)前記制御部は、
前記特徴量があらかじめ設定した範囲未満の場合、前記所定期間における前記特徴量の最大値と最小値を算出し、
算出した前記最大値と最小値を含む前記特徴量の累積量に基づき尤度を算出し、
前記尤度に基づき前記不良骨格を検出する、
ことを特徴とする付記1に記載の骨格推定装置。
【0114】
(付記6)前記制御部は、
検出された前記不良骨格の前記フレーム部分に対して再度、骨格の推定を行うことを特徴とする付記1に記載の骨格推定装置。
【0115】
(付記7)前記特徴量は、前記所定期間において予め想定した人体の所定の運動に対応する運動特徴量であることを特徴とする付記1~6のいずれか一つに記載の骨格推定装置。
【0116】
(付記8)コンピュータが、
所定期間における骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、
前記所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、
算出した前記特徴量に基づいて近似線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似線との相関状態を算出し、
前記相関状態に基づいて、前記所定期間の前記推定情報のうち推定が異常な前記フレーム部分を不良骨格として検出する、
処理を実行することを特徴とする骨格推定方法。
【0117】
(付記9)選手が技を実施する体操競技の体操採点システムであって、
所定期間にわたる前記選手の骨格の変化を推定した推定情報をフレーム単位で取得し、
前記所定期間における骨格の変化の特徴量を算出し、
算出した前記特徴量に基づいて近似線を算出し、
算出した前記特徴量と、前記近似線との相関状態を算出し、
前記相関状態に基づいて、前記所定期間の前記推定情報のうち推定異常な前記フレーム部分を不良骨格として検出する制御部、
を備えたことを特徴とする体操採点システム。
【0118】
(付記10)前記選手を撮像し、距離情報を含む3次元点群の画像をフレーム単位で出力する3Dレーザーセンサーと、骨格推定装置と、を備え、
前記骨格推定装置は、
前記3次元点群の画像から深度画像を生成し、前記深度画像から事前に学習した学習モデルに基づき、前記選手の3次元の骨格を認識する骨格認識部と、
前記3次元点群と前記3次元の骨格とに基づき、前記選手の骨格に適合した3次元の骨格を推定情報として出力するフィッティング部と、を有し、
前記制御部は、
前記技別の特徴量が予め設定され、前記選手による所定の技の実施に対応して前記フィッティング部が出力する前記推定情報のうち前記不良骨格を検出する、
ことを特徴とする付記9に記載の体操採点システム。
【0119】
(付記11)前記制御部は、前記推定情報を体操競技の採点者に提示し、
前記不良骨格の検出時には、前記不良骨格の前記フレーム部分に対して再度、骨格の推定を実施した後の前記推定情報を提示する、
ことを特徴とする付記10に記載の体操採点システム。
【0120】
(付記12)前記特徴量は、前記選手が実施する技別に異なる運動特徴量であることを特徴とする付記11に記載の体操採点システム。
【0121】
(付記13)前記技は、ひねり、宙返りを含むことを特徴とする付記12に記載の体操採点システム。
【符号の説明】
【0122】
100 骨格推定装置
110 制御部
201 骨格取得部
202 特徴量算出部
203 近似3次曲線算出部
204 尤度算出部
205 不良骨格検出部
301 CPU
302 メモリ
303 ネットワークインタフェース
305 記録媒体
310 ネットワーク
601 3Dレーザーセンサー
602 骨格認識部
603 機械学習部
604 フィッティング部
605 技認識部
633 学習モデル
651 技認識テーブル
660 技データベース
703 算出方法判定部
704 算出区間記憶部
705 複数区間近似3次曲線算出部
706 複数相関係数算出部
707 相関係数算出部
708 最大最小値算出部
709 誤差算出部
F1~F11 複数フレーム
K1~K11 CGデータ
NG 不良骨格
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13