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特許7388625ウェアラブルデバイス並びにRF放射および静電気変動による人体への誘起電圧暴露を決定する方法
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  • 特許-ウェアラブルデバイス並びにRF放射および静電気変動による人体への誘起電圧暴露を決定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ウェアラブルデバイス並びにRF放射および静電気変動による人体への誘起電圧暴露を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20231121BHJP
   A61N 1/08 20060101ALI20231121BHJP
   H01P 1/00 20060101ALI20231121BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01R29/08 C
G01R29/08 Z
A61N1/08
H01P1/00 D
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018010238
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2018155735
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】17153864.8
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17158960.9
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】イトカ イルマズ
(72)【発明者】
【氏名】フェヒム チャグラル
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】田邉 英治
【審判官】濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】特表昭60-501230(JP,A)
【文献】特開2009-224959(JP,A)
【文献】特開2003-88005(JP,A)
【文献】特開2001-165973(JP,A)
【文献】特開2005-42223(JP,A)
【文献】特開2000-220010(JP,A)
【文献】特開平10-197581(JP,A)
【文献】特開2009-70335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの少なくとも一部を形成する導電性素子と、
前記導電性素子に接続されたRF-DC変換器であって、その入力においてRFエネルギー及び/又は誘起静電気変動を交流電圧(Vin)の形で採取し、その出力において直流電圧(Vout)を供給するRF-DC変換器と、
前記RF-DC変換器の出力に接続されて、デバイス着用者の身体への誘起電圧暴露を決定する制御装置とを有するウェアラブルデバイスであって、
前記導電性素子は、前記RFエネルギー及び/又は前記誘起静電気を採取するために、導電性の繊維又は糸の形態で生地中に組み込まれており、かつ前記着用者の身体に電気的接触するように構成されていることを特徴とするウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記RF-DC変換器は、ダイオード/コンデンサ乗算回路を有することを特徴とする請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記制御装置は、前記RF-DC変換器の出力における前記直流電圧値Voutと比較するための閾値電圧を設定するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記制御装置及び/又は前記RF-DC変換器は、生地に取り付けられているか、生地中に組み込まれていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
請求項2又は請求項2を引用する請求項3もしくは4に記載のウェアラブルデバイスを着用している人体への誘起電圧暴露を決定する方法であって、
a) RFエネルギー及び/又は前記デバイス着用者の身体上で誘起される静電気変動を、アンテナとして作動する前記導電性素子および前記着用者の身体により、連続的に採取し、
b) 前記採取ステップa)からの交流電圧(Vin)をRF-DC変換器に供給して、前記RF-DC変換器のコンデンサ(C2-C3)を充電し、前記RF-DC変換器の出力において直流電圧(Vout)を獲得し、
c) 前記ウェアラブルデバイスの制御装置に供給される前記直流電圧(Vout)に基づき、誘起電圧暴露の量を求めることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記制御装置は、前記直流電圧(Vout)を、予め設定した閾値電圧レベルと比較し、前記直流電圧(Vout)が、前記予め設定した閾値電圧レベルを超えた場合に、内部カウンタの整数値を増加させるようにプログラムされていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コンデンサ(C2-C3)は、前記直流電圧(Vout)が、前記予め設定した閾値電圧レベルを超えた場合に、放電されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記閾値電圧レベルは、デジタル値として前記制御装置に記録されており、前記直流電圧(Vout)は、前記比較の前に、前記制御装置によりアナログ値からデジタル値に変換されることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記内部カウンタに記録された整数値を伝え、前記着用者の身体上での誘起電圧暴露を決定するために、前記内部カウンタの整数値は定期的に読み取られることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記内部カウンタの整数値は、前記記録された整数値が読み取られた後、リセットされることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
RF放射および静電気変動による人体への誘起電圧暴露を決定するための、請求項1~4のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルデバイスおよび低電圧変動又は誘起静電気変動による人体への誘起電圧暴露を決定する方法に関し、さらに、RF放射および誘起静電気変動による人体への誘起電圧暴露の決定におけるウェアラブルデバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は、静電気により容易に帯電し、人体に有害な作用を及ぼすRF放射に対して非常に敏感であることが知られている。
【0003】
人が履く靴や横たわるベッドは、人を地面から絶縁しているので、電気接地されていない。静電気は、高圧電気であり、物体表面の正負の電荷量の不均衡によって生じるものである。このような電荷の周囲には常に強い電場が存在し、この電場は、電流を伴わない電圧とみなされる。この電圧を実際に測定するのは非常に困難である。なぜなら、通常の電圧計を用いると、その電気抵抗により、数千分の一秒で人体から放電されるためである。
【0004】
人は、無線放射又はマイクロ波放射として知られる無線周波(RF)放射を介して「エレクトロスモッグ」に暴露されている。RF放射は、電磁放射であり、電磁スペクトルにおける3kHz~300GHzの周波数範囲に含まれる。RF放射は、非電離放射であるので、分子間の化学結合を破壊するほどのエネルギーは有しておらず、人体に生化学的な変化は引き起こさない。しかしながら、最近の研究によれば、RF放射は人間にとって有害であることが分かっている。3kHz~300GHzの周波数範囲のRFフィールドへの暴露による健康への悪影響として、短期暴露による組織加熱および神経刺激(睡眠障害,頭痛等)が生じることとの関連が確認されている。
【0005】
多数の文献により、RF及び/又は電磁放射を検出及び監視する異なるタイプの装置が開示されている。
【0006】
米国特許出願公開第2002/075189号(特許文献1)は、電磁場,無線周波又はマイクロ波を測定する放射線検出装置を開示している。この放射線検出装置は、RFを遮蔽することができる、帽子等の装着可能な衣料品、又は眼鏡等の装着可能なアクセサリーに取り付けられ、遮蔽効果を検出するのに使用される。動作周波数は、アンテナの特性をチューニング又は調整するとともに、適切な鉱石検波器のインピーダンスをチューニングすることにより、決定される。装置のアンテナ手段は、電磁エネルギー又は無線周波エネルギーを受信し、RF電気信号に変換し、アンテナ装置の出力ターミナルポートから出力する。この出力ターミナルポートは鉱石検波器手段に接続されており、鉱石検波器手段は、その出力ターミナルポートにおいて、変換されたモニタリングDC電圧信号を発生する。刺激インジケータ手段は、モニタリングDC電圧信号入力を、検証装置インジケータ手段出力フォームに変換する変換手段として作動する。
【0007】
ヨーロッパ特許出願公開第0600143号(特許文献2)は、RF放射が予め設定した閾値を超えた場合に、可聴警報及び可視警報を発する装置を有することができるウェアラブル電磁放射モニタに関するが、ウェアラブルデバイスに直接回路を組み込むことの可能性については言及していない。
【0008】
他の従来技術として、低電力センサノードおよび通信基盤のためのエネルギーを採取するRF-DC変換に関するものがあるが、そのウェアラブルデバイスにおける使用について、その公知の従来技術文献は開示していない。実際、採取されるエネルギーが非常に小さいため、この分野の出願において、ウェアラブルデバイスを用いることは魅力的ではない。
【0009】
公開文献Lemey Sam et al. “Textile Antennas as Hybrid Energy Harvesting Platforms”, - PROCEEDINGS OF THE IEEE - IEEE NEW YORK, US, 1 November 2014, Vol. 102, No. 11, pp. 1833-1857(非特許文献1)は、光エネルギーおよび身体の熱エネルギーを採取するためにハードウェアが組み込まれた、テキスタイルアンテナの幾つかの実施例を開示している。非特許文献1は、RFエネルギーを採取する公知の研究について言及しているが、開示の実施例では、その種のエネルギー採取を利用していない。アンテナは、明確に限定された範囲の複数の周波数帯についてセンサで検出した信号を伝送するために使用されている。ハードウェアは、マイクロエネルギーセルに蓄積された採取されたエネルギーにより給電される。この文献は、人体の付近でアンテナの利得減少が生じること、および被験体との相互作用が無いことが保証されなければならないことを述べている。
【0010】
国際公開第85/01358号(特許文献3)は、人へのRF放射暴露を、複数の周波数帯で監視するデバイスを開示している。このデバイスは、非導電性のピンおよびラッチの組み立て部品により、使用者の衣服に取り付けることができる。
【0011】
公開文献Valeri Vountesmeri et al. “Magnetoresistive Power Sensor for Measurement in situ of RF Power Absorbed by Tissue”, - IEEE TRANSACTIONS ON INSTRUMENTATION AND MEASUREMENT, IEEE SERVICE CENTER, PISCATAWAY, NJ, US, 1 June 2000, Vol. 49, No. 3 (非特許文献2)は、RF電力アプリケータによる組織への加熱を決定し、組織の温度を実質的に一定に維持するために、周波数915MHzにおけるRF電流および電圧の瞬間値を検出する電力センサ装置を開示している。
【0012】
従来技術に鑑み、RF放射又は静電気による人体への誘起電圧暴露を決定するのに適したウェアラブルデバイス、並びに人体への誘起電圧暴露の決定を実行するための方法を提供することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第2002/075189号
【文献】ヨーロッパ特許出願公開第0600143号
【文献】国際公開第85/01358号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Lemey Sam et al. “Textile Antennas as Hybrid Energy Harvesting Platforms”, - PROCEEDINGS OF THE IEEE - IEEE NEW YORK, US, 1 November 2014, Vol. 102, No. 11, pp. 1833-1857
【文献】Valeri Vountesmeri et al. “Magnetoresistive Power Sensor for Measurement in situ of RF Power Absorbed by Tissue”, - IEEE TRANSACTIONS ON INSTRUMENTATION AND MEASUREMENT, IEEE SERVICE CENTER, PISCATAWAY, NJ, US, 1 June 2000, Vol. 49, No. 3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の主目的は、人体のRF放射および静電気変動への暴露を測定、監視および決定するのに適したウェアラブルデバイスであって、着用者が適切な措置をとることによりこれらの影響を最小限にすることができるように、着用者自身への潜在的な危害/障害を表示する装置としてのウェアラブルデバイスを提供することである。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、RF放射又は静電気による人体への誘起電圧暴露を、簡素かつ容易に測定、監視および決定する方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらにもう一つの目的は、RF放射又は静電気による人体への誘起電圧暴露を、広い周波数範囲で測定、監視および決定する方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらにもう一つの目的は、着用者がウェアラブルデバイスとともに、アンテナ手段又は電界プローブが設けられた基板として機能するけれども、ウェアラブルデバイス自身にとっては特有ではなく、その着用者にとって固有/特有のRF放射又は静電気による人体への誘起電圧暴露を、測定、監視および決定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記各々の目的および効果は、請求項1で規定するウェアラブルデバイスおよび請求項5で規定する方法により達成される。
【0020】
本発明による低電圧変動又は誘起静電気変動による人体への誘起電圧暴露を決定するウェアラブルデバイスは、
アンテナの少なくとも一部を形成する導電性素子と、
上記導電性素子に接続されたRF-DC変換器であって、その入力においてRFエネルギーおよび誘起静電気変動を交流電圧の形で採取し、その出力において直流電圧を供給するRF-DC変換器とを有する。
【0021】
上記ウェアラブルデバイスはまた、上記RF-DC変換器の出力に接続されて、デバイス着用者の身体への誘起電圧暴露を決定する制御装置を有する。
【0022】
一実施態様によれば、上記導電性素子は、生地中に組み込まれており、上記着用者の身体に電気的接触するように構成されている。
【0023】
上記ウェアラブルデバイスおよび着用者の身体は、RFエネルギーおよび誘起静電気を採取するアンテナとして作動する。それらの精緻化のために、上記制御装置により、所定の環境において電圧変動が監視および決定される。電圧変動は、上記ウェアラブルデバイスの着用者が暴露されるRF放射を示す。
【0024】
上記RF-DC変換器は、上記ウェアラブルデバイスの生地に取り付けられているか、組み込まれているダイオード/コンデンサ乗算回路を有している。
【0025】
上記制御装置は、上記RF-DC変換器の出力における上記直流電圧値と比較するための閾値電圧を設定するようにプログラムされている。
【0026】
上記制御装置はまた、上記ウェアラブルデバイスの製造に使用される生地に取り付けるか、生地中に組み込むことができる。
【0027】
本発明の上記ウェアラブルデバイスは、限定的ではないが、腕時計,ネックレス,イヤリング,バングル,カチューシャ,靴,シャツ等の一部、ジーンズもしくはその類似物等のズボンの一部、又は着用者の皮膚に接触するのに適した部分を有する既存の物品の形態とすることができる。
【0028】
本発明のウェアラブルデバイスは、既知の方法で上記導電性素子を設けることができる。例えば、上記導電性素子は、非導電性糸とともに生地に織り込まれるか、編み込まれた導電性の繊維又は糸の形態とすることができる。また上記導電性素子は、ウェアラブルデバイスのラベル,ボタン又は類似の部品に組み込むこともできる。
【0029】
上記制御装置に上記RF-DC変換器が組み込まれていてもよい。上記制御装置は、RF暴露監視装置として作動するように、すなわち、アンテナ(着用者の身体およびウェアラブルデバイス)により検出されたエネルギーに該当する情報を精緻に伝えるように、プログラムされている。
【0030】
本発明のウェアラブルデバイスは、RF-DC変換技術(交流電流の形で検出され、直流に変換される無線周波エネルギー)を用いることにより、ウェアラブルデバイスの導電性素子上および着用者の身体上の低電圧変動の量を監視し、決定することを可能にする。ここで、上記着用者の身体およびウェアラブルデバイスの導電性素子をアンテナとして作動させる。連続的に採取されるエネルギーは、誘起される交流電流により、制御装置のコンデンサを充電するのに使用される。続いて、コンデンサは、一定の電圧レベル(すなわち、閾値)に到達すると、リセットされ(すなわち、放電される)、カウンタの値は増加し、計数工程とともに、コンデンサの充電が再開される。上記カウンタはコンデンサの放電回数を計算するので、上記制御装置により測定され、カウンタにより整数値として表される電圧変動が、RF暴露の量を示す。
【0031】
従来、RF-DC変換は、空気中に存在するRFエネルギーを採取し、低電力型電気回路に給電するために主に使用されてきた。ウェアラブルデバイスにおけるその使用は、採取されたエネルギーが、モバイル機器を充電するためには幾分低いので、魅力的なものではない。RF-DC変換技術の従来の使用によれば、アンテナは一般的に金属からなる硬質のものであり、特有の形を有し、特定の周波数(例えば900MHz)のRF信号を受信するために、その周波数に合わせて精密に調整されていた。これにより、所定の周波数におけるパワー変換効率を最大化することができるが、環境に影響する、他にも存在するかもしれない周波数の信号を全く受信できないシステムとなってしまう。
【0032】
従来技術に対し、本発明では、ウェアラブルデバイスの導電性部品上およびデバイスを装着する人体上のRFエネルギーおよび静電気変動を採取する技術を用いて、人体上における一日毎又は単位時間毎の誘起電力の量を監視し、静電荷変動の量を減少させる方法について洞察を得る(すなわち、着用者がどこに行けばよいのか、どこに行かなければよいのか、留まるべきか等を指示する)。さらに、硬質のアンテナを用いる従来技術に比較して、上記着用者の身体およびウェアラブルデバイスのアンテナとしての使用は、本発明のデバイスを着用する人体上で有効に電流を誘起する電荷の計数と、特定の周波数でのみ機能する既知の従来技術より広い周波数範囲でのRFエネルギーの検出を可能にする。
【0033】
本発明の他の実施態様では、本発明のデバイスを着用する人体への誘起電圧暴露を決定する方法を提供する。その方法は、
a) RFエネルギー又は上記デバイス着用者の身体上で誘起される静電気変動を、アンテナとして作動する上記導電性素子および上記着用者の身体により、連続的に採取し、
b) 上記採取ステップa)からの交流電圧をRF-DC変換器に供給して、上記RF-DC変換器のコンデンサを充電し、上記RF-DC変換器の出力において直流電圧を獲得し、
c) 上記ウェアラブルデバイスの制御装置に供給される上記直流電圧に基づき、誘起電圧暴露の量を求める工程を有する。
【0034】
上記導電性素子は、生地中に組み込み、上記着用者の身体に電気的接触するように構成することができる。
【0035】
本発明の方法によるRFエネルギー及び/又は静電気の検出は、アンテナとして作動する上記着用者の身体およびウェアラブルデバイス自身の導電性素子を用いて実行される。上記制御装置のRF-DC変換器は、上記アンテナから交流電流として信号を受信し、検出したエネルギーを直流電流に変換する。このRF-DC変換は、上記制御装置に接続されたコンデンサを、誘起された交流により充電し、コンデンサが所定の電圧レベル、すなわち電圧閾値に到達するとコンデンサを放電し、コンデンサが放電される毎にカウンタの整数値を増加する本発明の方法により、実行される。コンデンサの充電および放電工程、並びに計数工程は、連続的に繰り返される。
【0036】
換言すると、上記制御装置は、上記RF-DC変換器の出力直流電圧を、予め設定した閾値電圧レベルと比較し、上記直流電圧が、上記予め設定した閾値電圧レベルを超えた場合に、カウンタの整数値を増加させるようにプログラムされている。上記直流電圧が、上記予め設定した閾値電圧レベルを超える毎に、上記コンデンサは放電され、上記カウンタの値は増加する。
【0037】
特に、上記比較は、デジタル値として上記制御装置に記録されている閾値電圧レベルと、上記比較の前に、上記制御装置によりアナログ値からデジタル値に変換されるRF-DC変換器の出力直流電圧との間で実行される。
【0038】
従って、上記着用者の身体上におけるRF放射および静電気変動への暴露量は、カウンタに記録される放電回数により示される。記録される回数は定期的に読み取ることができ、必要に応じて、読み取った後リセットされる。
【0039】
上記着用者の身体上で検出される電圧変動と、上記制御装置のカウンタにより伝えられるRF暴露量とは、直線的相関関係にある。
【0040】
本発明はまた、RF放射および誘起静電気変動による人体への誘起電圧暴露の決定におけるウェアラブルデバイスの使用に関する。
【発明の効果】
【0041】
本発明のウェアラブルデバイスおよび本発明の方法は、着用者が暴露されるRF放射量の監視を可能にする。本発明の方法は、人体およびウェアラブルデバイスの導電性素子をアンテナとして利用する本発明に従ってRFエネルギーを採取することにより、交流電場およびRFエネルギーの検出を可能にする。その結果、本発明は、従来技術のような特定の周波数帯に限定されず、異なるタイプのアンテナを形成するか、異なる仕様を有するアンテナを形成する異なる着用者に応じて変化するRFエネルギー放射の広い周波数範囲で作動可能であり、その結果、様々な周波数範囲に対応する感度が得られる。
【0042】
本発明の方法によれば、アンテナとして作動する全ての着用者が異なっており、異なる幾何学形状,密度および電解質組成を有し、従って異なる電子的モデルであるので、本発明のデバイスを着用する人体上でのRF暴露量の測定は、各着用者に応じて適切に適用される。すなわち、各々異なっている人が、重み係数の違いに応じて異なる周波数又は同じ周波数を受信する。これらの異なる「個人別の」特徴は、コンデンサの放電回数が記録される、本発明の方法の「計数」操作に含まれる。従って、着用者の身体上における電圧変動の決定は、各着用者にとってのみ「正確である」。すなわち、それは相関的なものであり、異なる着用者の測定における各々の絶対値は、互いに比較することはできず、それらは相関することが予期される。例として、エレクトロスモッグで覆われた領域は、その領域中の全ての着用者に対して、カウンタを比較的早く増加させるが、絶対的なカウンタ回数が、異なる特徴を有するアンテナを形成する着用者に応じて同じであることは予期されない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
例示的な実施形態による添付の図面を参照して、本発明の特徴及び優位性をさらに詳細に説明する。
【0044】
図1図1は、本発明の一実施形態による概略図である。
図2図2は、本発明の方法における工程の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、アンテナの少なくとも一部を形成する導電性素子と制御装置30とを含む装置10を装着した人体へのRF暴露の検出および測定について概略的に示す。
【0046】
以下符号10で示すウェアラブルデバイスは、例えば、腕時計10a,ネックレス10b,イヤリング10c,靴10d,シャツ10e等の一部、ジーンズもしくはその類似物等のズボン10fの一部、又は着用者の身体に接触するのに適した部分を有する既存の物品の形態とすることができる。
【0047】
図1に示す電気回路の構成は、制御装置30に接続された、交流を直流に変換するために使用されるRF-DC変換器20を示す。制御装置30は、RF-DC変換器20から出力電圧Voutを受信し、このアナログ値をデジタル値に変換する。
【0048】
RF-DC変換器20および制御装置30は、人により着用される装置10に組み込まれている。これらは、例えばストラップ,ラベル,ボタン又はその類似物等のウェアラブルデバイスの部品中に収容されている。
【0049】
RF-DC変換器20の電気回路は、各々アンテナとして機能する着用者の身体およびウェアラブルデバイスの導電性素子から交流電流の形で受信されるRF放射および静電気からの入力Vinを有するダイオード/コンデンサ乗算回路を有する。特に、この例では、4個のダイオードD1,D2,D3,D4および4個のコンデンサC1,C2,C3,C4を用いているが、これらは、電圧増倍のために、さらに増加することができる。RF-DC変換器20は、交流電流の形の採取されたエネルギーを、コンデンサC1-C4に充電し、入力Vinに対して4倍に増倍された直流電流出力Voutを供給する。
【0050】
この例では、C1およびC4は、直流デカップリングのための入力コンデンサである。C2およびC3は、実際に充電/放電されることにより、カウンタを増加させる。C1およびC4は、通常無極性を有するセラミック型であり、連続的に充電および放電されるが、C2およびC3に比べて幾分小さい容量(例えばnF)を有する。C2およびC3は、極性を有する電解型であり、C1およびC4に比べて幾分大きい容量(例えばμF)を有する。
【0051】
図2に示すように、コンデンサC2-C3は、ステップ100において採取されたエネルギーにより連続的に充電され、RF-DC変換器からの出力電圧Voutは、制御装置30に供給される。制御装置30は、アナログ電圧値Voutを変換し、ステップ200において、相当するデジタル値を、制御装置30の記憶装置に記録されている閾値と、連続的に比較するようにプログラムされている。
【0052】
値Voutが閾値より小さい場合、採取されたエネルギーによりコンデンサC2-C3を充電し、制御装置30に出力Voutを供給するステップは、Voutが閾値を超えるまで続く。一旦この状態に到達すると、コンデンサC2-C3は放電され、ステップ300においてカウンタの整数値は増加し、プロセスはステップ100から再スタートする。
【0053】
少なくとも1つの例示的な実施形態について、前述の概要および詳細な説明で示したが、多くの変形例が存在することは言うまでもない。例えば、本発明のウェアラブルデバイスが、RF周波数を特定の範囲に限定せずに操作されることが既に開示されていたとしても、本発明の原理は、特定の周波数又は狭い範囲の周波数でのウェアラブルデバイスの操作への適用も可能であると理解すべきである。
【0054】
例示的な実施形態は、単なる例示であり、いかなる形であれ、本発明の範囲、適用の可能性、または構成を限定することを意図するものではない。むしろ、前述の詳細な説明は、当業者に、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するが、特許請求の範囲に記載された範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に記述された機能および要素の配置に、様々な変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0055】
10・・・ウェアラブルデバイス
10a・・・腕時計
10b・・・ネックレス
10c・・・イヤリング
10d・・・靴
10e・・・シャツ
10f・・・ズボン
20・・・RF-DC変換器
30・・・制御装置
図1
図2