(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント阻害薬の有効性判定バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231121BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231121BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231121BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20231121BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20231121BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P35/02
G01N33/574 A
C12Q1/68
(21)【出願番号】P 2020522606
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2019021633
(87)【国際公開番号】W WO2019230919
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2018105017
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018189370
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】西川 博嘉
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 庸介
(72)【発明者】
【氏名】大山 行也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】幸田 健一
(72)【発明者】
【氏名】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】大八木 篤
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 桃瑠
(72)【発明者】
【氏名】村田 昌行
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】VAN DE VEN R. et al.,High PD-1 expression on regulatory and effector T-cells in lung cancer draining lymph nodes,ERJ Open Res,2017年,Vol.3,Article ID 00110-2016,ISSN 2312-0541, Abstract、Discussion、等
【文献】WU, S.P. et al.,Stromal PD-L1-Positive Regulatory T cells and PD-1-Positive CD8-Positive T cells Define the Response,J Thorac Oncol,2018年04月,Vol.13, No.4,p.521-32,ISSN 1556-0864, Abstract、Discussion、等
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 39/395
G01N 33/00
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率が約0.7以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項2】
請求項1記載の比率が約1.0以上である、請求項1記載の剤。
【請求項3】
請求項1記載の比率が約1.2以上である、請求項1記載の剤。
【請求項4】
請求項1記載の比率が約1.5以上である、請求項1記載の剤。
【請求項5】
(a1)
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率、もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合に対する、当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合の比率の何れかが約0.8以上であり、かつ(b)当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合が約35%以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項6】
請求項5記載の(a1)または(a2)記載の比率が約0.9以上である、請求項5記載の剤。
【請求項7】
請求項5記載の(a1)または(a2)記載の比率が約1.0以上である、請求項5記載の剤。
【請求項8】
請求項5記載の(a1)または(a2)記載の比率が約1.1以上である、請求項5記載の剤。
【請求項9】
請求項5記載の(b)の比率が約40%以上である、請求項5~8の何れか一項記載の剤。
【請求項10】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率に、当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値が約25以上である、悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項11】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のCD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織
内のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値が約25以上である、悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項12】
請求項10または11記載の当該数値が約60以上である、請求項10または11記載の剤。
【請求項13】
Treg細胞が、Treg細胞(Fr.II)である、請求項1~12の何れか一項記載の剤。
【請求項14】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率が約1.0以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項15】
(a1)
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率、もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合に対する、当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合の比率の何れかが約1.0以上であり、かつ(b)当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合が約40%以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項16】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率に、当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値が約60以上である、悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項17】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のCD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織
内のTreg細胞(Fr.II)のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値が約60以上である、悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項18】
当該悪性腫瘍が、固形がんまたは血液がんである、請求項1~
17の何れか一項記載の剤。
【請求項19】
当該固形がんが、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、漿液性卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌、精巣癌、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫およびカポジ肉腫から選択される一以上の癌である、請求項
18記載の剤。
【請求項20】
当該悪性腫瘍患者が他の抗悪性腫瘍薬による治療歴のない、請求項1~
19の何れか一項記載の剤。
【請求項21】
TPSまたはCPSが、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満または1%未満である、請求項1~
20の何れか一項記載の剤。
【請求項22】
当該悪性腫瘍が、MSI-Hおよび/またはdMMRを有しない、請求項1~
21の何れか一項記載の剤。
【請求項23】
当該悪性腫瘍のTMBが低頻度である、請求項1~
22の何れか一項記載の剤。
【請求項24】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組
織より
採取されたTreg細胞およびCD8
+T細胞を含む細胞集団を必要に応じて精製し、フローサイトメトリー法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、当該Treg細胞および当該CD8
+T細胞におけるPD-1発現強度を各々測定して、当該Treg細胞でのPD-1発現強度に対する当該CD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率を決定し、当該比率に基づいて、
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法
であって、当該悪性腫瘍患者が、当該比率が約0.7以上の患者である、方法。
【請求項25】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる患者が、当該比率が約1.0以上の患者である、請求項
24記載の方法。
【請求項26】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる患者が、当該比率が約1.2以上の患者である、請求項
24記載の方法。
【請求項27】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる患者が、当該比率が約1.5以上の患者である、請求項
24記載の方法。
【請求項28】
(i)
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組
織より
採取されたCD8
+T細胞およびTreg細胞を含む細胞集団
を必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法、免疫染色法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、(iia)当該CD8
+T細胞および当該Treg細胞における各々のPD-1発現強度もしくは(iib)CD8
+T細胞数およびTreg細胞数ならびにそれらのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)(a1)当該Treg細胞でのPD-1発現強度に対する、当該CD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率、もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の比率、および(b)当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を決定し、当該(a1)もしくは(a2)の比率および当該(b)の割合の組合せに基づいて、
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法
であって、当該悪性腫瘍患者が、(a1)もしくは(a2)記載の比率が約0.8以上であり、かつ(b)記載の割合が約35%以上である患者である、方法。
【請求項29】
請求項
28の(a1)または(a2)記載の比率が約0.9以上である、請求項
28記載の方法。
【請求項30】
請求項
28記載の(a1)または(a2)記載の比率が約1.0以上である、請求項
28記載の方法。
【請求項31】
請求項
28記載の(a1)または(a2)記載の比率が約1.1以上である、請求項
28記載の方法。
【請求項32】
請求項
28記載の(b)の割合が約40%以上である、請求項
28~
31の何れか一項記載の方法。
【請求項33】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる悪性腫瘍患者が、請求項
28の(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.0以上であり、かつ同項(b)記載の割合が約40%以上である患者である、請求項
28記載の方法。
【請求項34】
(i)
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組
織より
採取されたCD8
+T細胞およびTreg細胞を含む細胞集団
を必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法、免疫染色法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、当該CD8
+T細胞およびTreg細胞での各々のPD-1発現強度ならびに当該CD8
+T細胞の細胞数およびそのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)当該Treg細胞でのPD-1発現強度に対する、当該CD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率に、当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値を決定し、当該数値に基づいて、
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法
であって、当該悪性腫瘍患者が、当該数値が約60以上である患者である、方法。
【請求項35】
(i)
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組
織より
採取されたCD8
+T細胞およびTreg細胞を含む細胞集団
を必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法または免疫染色法にて、当該CD8
+T細胞およびTreg細胞の各々の細胞数ならびにそれらのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値を決定し、当該数値に基づいて、
ニボルマブを有効成分とする薬剤の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法
であって、当該悪性腫瘍患者が、当該数値が約60以上である患者である、方法。
【請求項36】
Treg細胞が、Treg細胞(Fr.II)である、請求項
24~
35の何れか一項記載の方法。
【請求項37】
ニボルマブを有効成分とする薬剤による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率のバイオマーカーとしての使用
であって、当該比率が約0.7以上である場合、前記有効性が予測される、使用。
【請求項38】
ニボルマブを有効成分とする薬剤による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、(a1)
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内
のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率、もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の比率、ならびに(b)当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の組合せのバイオマーカーとしての使用
であって、(a1)もしくは(a2)記載の比率が約0.8以上であり、かつ(b)記載の割合が約35%以上である場合、前記有効性が予測される、使用。
【請求項39】
ニボルマブを有効成分とする薬剤による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現強度の比率に、当該CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値のバイオマーカーとしての使用
であって、当該数値が約60以上である場合、前記有効性が予測される、使用。
【請求項40】
ニボルマブを有効成分とする薬剤による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のCD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織
内のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値のバイオマーカーとしての使用
であって、当該数値が約60以上である場合、前記有効性が予測される、使用。
【請求項41】
Treg細胞が、Treg細胞(Fr.II)である、請求項
37~
40の何れか一項記載の使用。
【請求項42】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織
内のCD8
+T細胞でのPD-1発現について、フローサイトメトリー法により測定されたMFIが約400以上である
との指標のみに基づき選択された悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【請求項43】
ニボルマブを有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織内
のCD8
+T細胞数のうちのPD-1発現細胞数の比率が約45%以上である
との指標のみに基づき選択された悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、
ニボルマブを有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法ならびにそれに基づく処方を特徴とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん免疫療法とは、外科的手術、放射線療法、抗悪性腫瘍薬や分子標的薬による薬物療法などの従来の治療法と異なり、悪性腫瘍患者自身に元来備わっている免疫監視機構に作用して、悪性腫瘍に対する免疫力を強化することによって、悪性腫瘍の進行を抑制ないし治療する療法である。近年の腫瘍免疫研究によって、悪性腫瘍の進展には腫瘍局所を中心とした免疫抑制環境がかかわっており、腫瘍自身が免疫監視機構を回避するシステムを利用していることが知られるようになってきた。そのような回避システムに利用される分子として、PD-1あるいはそのリガンドであるPD-L1などの所謂免疫チェックポイント分子群が知られており、既に、これら阻害薬が臨床において一定の成果を上げている。
【0003】
しかしながら、依然として、これら免疫チェックポイント阻害薬によっても十分な治療効果が認められない悪性腫瘍患者が存在しているのは事実であり、その効果が期待できる患者を特定できる有効性マーカーの特定が急務となっている。
【0004】
本発明は、腫瘍組織内に存在するCD8+T細胞とTreg細胞での各々のPD-1発現強度やPD-1発現割合などの組合せからなる評価項目が、投与される免疫チェックポイント阻害薬の有効性の予測に活用できるという知見に基づくものである。
【0005】
これまで、末梢血におけるCD8+T細胞数とTreg細胞数との比率が悪性腫瘍患者の予後に相関する可能性を示唆する報告(非特許文献1)はあるが、腫瘍組織内の各免疫細胞分画群での各々のPD-1発現強度やPD-1発現割合などの組合せを評価することによって、免疫チェックポイント阻害薬の有効性の有無を投与前に予測でき、そのバイオマーカーに基づいて特定された患者に当該免疫チェックポイント阻害薬を処方する治療法は報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of Clinical Oncology 34, no. 8 (March 2016) 833-842.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法ならびにそれに基づく処方を特徴とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、Treg細胞およびCD8+T細胞でのPD-1発現強度ならびにPD-1発現割合などの組合せからなる評価項目が、各々、免疫チェックポイント阻害薬の有効性を予測できるバイオマーカーとなり得ることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率(以下、本明細書において、同比率を「バイオマーカー1」と略記することがある。)が約0.7以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2] 前項[1]記載の比率が約0.74以上である前項[1]記載の剤。
[3] 前項[1]記載の比率が約0.8以上である前項[1]記載の剤。
[4] 前項[1]記載の比率が約0.9以上である前項[1]記載の剤。
[5] 前項[1]記載の比率が約1.0以上である前項[1]記載の剤。
[6] 前項[1]記載の比率が約1.1以上である前項[1]記載の剤。
[7] 前項[1]記載の比率が約1.2以上である前項[1]記載の剤。
[8] 前項[1]記載の比率が約1.25以上である前項[1]記載の剤。
[9] 前項[1]記載の比率が約1.27以上である前項[1]記載の剤。
[10] 前項[1]記載の比率が約1.3以上である前項[1]記載の剤。
[11] 前項[1]記載の比率が約1.4以上である前項[1]記載の剤。
[12] 前項[1]記載の比率が約1.5以上である前項[1]記載の剤。
[13] 前項[1]記載の比率が約1.6以上である前項[1]記載の剤。
[14] 前項[1]記載の比率が約1.7以上である前項[1]記載の剤。
[15] 前項[1]記載の比率が約1.8以上である前項[1]記載の剤。
[16] 前項[1]記載の比率が約1.9以上である前項[1]記載の剤。
[17] 前項[1]記載の比率が約0.7~約1.9の間の任意の比率以上である前項[1]記載の剤。
[18] 前項[1]記載の比率が、約2.6~約5.9の間の任意の比率以下である前項[1]~[17]の何れか一項記載の剤。
[19] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度について、フローサイトメトリー法により測定された平均蛍光強度(Mean Fluorescence Intensity(以下、MFIと略記する。また、本明細書において、同MFIを「バイオマーカー2」と略記することがある。))が約400以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[20] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約410以上である前項[19]記載の剤。
[21] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約450以上である前項[19]記載の剤。
[22] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約500以上である前項[19]記載の剤。
[23] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約550以上である前項[19]記載の剤。
[24] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約600以上である前項[19]記載の剤。
[25] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約650以上である前項[19]記載の剤。
[26] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約700以上である前項[19]記載の剤。
[27] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約750以上である前項[19]記載の剤。
[28] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約800以上である前項[19]記載の剤。
[29] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約810以上である前項[19]記載の剤。
[30] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約850以上である前項[19]記載の剤。
[31] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが約400~約850の間の任意の数値以上である前項[19]記載の剤。
[32] 前項[19]記載のPD-1発現のMFIが、約2050~約2810の間の任意の数値以下である前項[19]~[31]の何れか一項記載の剤。
[33] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(以下、本明細書において、同割合を「バイオマーカー3」と略記することがある。)が約35%以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[34] 前項[33]記載の割合が約40%以上である前項[33]記載の剤。
[35] 前項[33]記載の割合が約45%以上である前項[33]記載の剤。
[36] 前項[33]記載の割合が約49.7%以上である前項[33]記載の剤。
[37] 前項[33]記載の割合が約50%以上である前項[33]記載の剤。
[38] 前項[33]記載の割合が約50.7%以上である前項[33]記載の剤。
[39] 前項[33]記載の割合が約60%以上である前項[33]記載の剤。
[40] 前項[33]記載の割合が約70%以上である前項[33]記載の剤。
[41] 前項[33]記載の割合が約35~約70%の間の任意の割合以上である前項[33]記載の剤。
[42] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(以下、本明細書において、同割合を「バイオマーカー4」と略記することがある。)が約65%未満である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[43] 前項[42]記載の割合が約60%未満である前項[42]記載の剤。
[44] 前項[42]記載の割合が約58.4%未満である前項[42]記載の剤。
[45] 前項[42]記載の割合が約55%未満である前項[42]記載の剤。
[46] 前項[42]記載の割合が約65~約55%の間の任意の割合未満である前項[42]記載の剤。
[47] (a1)悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率(バイオマーカー1)もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(バイオマーカー4)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(バイオマーカー3)との比率の何れかが約0.8以上であり、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(バイオマーカー3)が約35%以上である(以下、本明細書において、当該(a1)もしくは(a2)の比率および当該(b)の割合の組合せを「バイオマーカー5」と略記することがある。)悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[48] 前項[47]の(a1)または(a2)記載の比率が約0.9以上である前項[47]記載の剤。
[49] 前項[47]の(a1)または(a2)記載の比率が約1.0以上である前項[47]記載の剤。
[50] 前項[47]の(a1)または(a2)記載の比率が約1.1以上である前項[47]記載の剤。
[51] 前項[47]の(a1)または(a2)記載の比率が約1.2以上である前項[47]記載の剤。
[52] 前項[47]の(b)記載の割合が約40%以上である前項[47]~[51]の何れか一項記載の剤。
[53] 前項[47]の(b)記載の割合が約45%以上である前項[47]~[51]の何れか一項記載の剤。
[54] (a1)悪性腫瘍患者の腫瘍組織内のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れかが約1.0以上であり、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約40%以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[55] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率(バイオマーカー1)に、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(バイオマーカー3)を乗じて算出される数値(以下、本明細書において、同数値を「バイオマーカー6」と略記することがある。)が約25以上である、悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[56] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(バイオマーカー3)の自乗を、同組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)(バイオマーカー4)で除して算出される数値(以下、本明細書において、同数値を「バイオマーカー7」と略記することがある。)が約25以上である、悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[57] 前項[55]または[56]記載の数値が約40以上または約44.4以上である、前項[55]または[56]記載の剤。
[58] 前項[55]または[56]記載の数値が約46.0以上または約50以上である、前項[55]または[56]記載の剤。
[59] 前項[55]または[56]記載の数値が約60以上である、前項[55]または[56]記載の剤。
[60] 前項[55]または[56]記載の数値が約90以上である、前項[55]または[56]記載の剤。
[61] 前項[55]または[56]記載の数値が約100以上である、前項[55]または[56]記載の剤。
[62] 腫瘍組織内または血液中のTreg細胞およびCD8+T細胞での各々のPD-1発現強度が、フローサイトメトリー法によって測定されるMFI、多重免疫組織染色法によって測定される発現強度もしくは発現強度スコア、in situ ハイブリダイゼーション法によって測定されるシグナル強度もしくは発現強度スコア、マスサイトメトリー法によって測定される発現強度もしくはシグナル強度、シングルセルRNAシーケンス法によって測定される発現レベルもしくは遺伝子カウント値またはマスイメージング法によって測定される発現強度もしくは発現強度スコアで表される前項[1]~[18]、[47]~[55]および[57]~[61]の何れか一項記載の剤。
[63] 腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞およびTreg細胞の各々の細胞数ならびにそれらのうちの各々のPD-1発現細胞数が、フローサイトメトリー法または免疫染色法にて測定される、前項[33]~[61]の何れか一項記載の剤。
[64] 当該Treg細胞が、Fraction II Treg細胞(以下、「Treg細胞(Fr.II)」または「eTreg細胞」と略記することがある。)である、前項[1]~[18]および[42]~[63]の何れか一項記載の剤。
[65] 当該免疫チェックポイント阻害物質が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、PD-1拮抗剤、PD-L1/VISTA拮抗剤、PD-L1/TIM3拮抗剤、抗PD-L2抗体、PD-L1融合タンパク質、PD-L2融合タンパク質、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、LAG-3融合蛋白質、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CSF-1R抗体またはCSF-1R阻害剤である、前項[1]~[64]の何れか一項記載の剤。
[66] 当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283である前項[65]記載の剤。
[67] 当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072である前項[65]記載の剤。
[68] 当該抗CTLA-4抗体が、Ipilimumab、AGEN1884またはTremelimumabである前項[65]記載の剤。
[69] 当該悪性腫瘍が、固形がんまたは血液がんである前項[1]~[68]の何れか一項記載の剤。
[70] 当該固形がんが、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、高頻度マイクロサテライト不安定性(以下、「MSI-H」と略記する。)および/またはミスマッチ修復欠損(以下、「dMMR」と略記する。)陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上のがんである前項[69]記載の剤。
[71] 当該血液がんが、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、慢性または急性リンパ球性白血病、末梢性T細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病、B細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病およびリンパ形質細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫(例えば、古典的ホジキンリンパ腫および結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫))、白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)、中枢神経系原発悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんである、前項[69]記載の剤。
[72] 当該悪性腫瘍が非小細胞肺癌の場合、前項[1]記載の比率が、1.2以上である前項[1]、[18]、[62]および[64]~[70]の何れか一項記載の剤。
[73] 当該悪性腫瘍が非小細胞肺癌の場合、前項[19]記載のPD-1発現のMFIが、800以上である前項[19]、[32]および[65]~[70]の何れか一項記載の剤。
[74] 当該悪性腫瘍が非小細胞肺癌の場合、前項[56]記載の数値が、約40以上である前項[56]および[63]~[70]の何れか一項記載の剤。
[75] 当該悪性腫瘍が胃癌の場合、前項[1]記載の比率が、0.7以上である前項[1]、[18]、[62]および[64]~[70]の何れか一項記載の剤。
[76] 当該悪性腫瘍が胃癌の場合、前項[19]記載のPD-1発現のMFIが、410以上である前項[19]、[32]および[65]~[70]の何れか一項記載の剤。
[77] 当該悪性腫瘍が、小児がんまたは原発不明がんである、前項[1]~[69]の何れか一項記載の剤。
[78] 当該悪性腫瘍が、他の抗悪性腫瘍薬による治療効果が不十分あるいは十分ではない悪性腫瘍である、前項[1]~[77]の何れか一項記載の剤。
[79] 当該悪性腫瘍が、他の抗悪性腫瘍薬による治療後に増悪した悪性腫瘍である、前項[1]~[77]の何れか一項記載の剤。
[80] 悪性腫瘍患者が、他の抗悪性腫瘍薬による治療歴のない、前項[1]~[77]の何れか一項記載の剤。
[81] 術後補助療法または術前補助療法において処方される前項[1]~[80]の何れか一項記載の剤。
[82] 当該悪性腫瘍が、根治もしくは切除不能、転移性、再発性、難治性および/または遠隔転移性である、前項[1]~[81]の何れか一項記載の剤。
[83] 腫瘍組織内の腫瘍細胞のうちPD-L1を発現した腫瘍細胞が占める割合(以下、「TPS」と略記する。)またはPD-L1陽性細胞数(腫瘍細胞、リンパ球およびマクロファージ)を総腫瘍細胞数で除し、100を乗じた数値(以下、「CPS」と略記する。)が、50%以上、25%以上、10%以上、5%以上または1%以上である、前項[1]~[82]の何れか一項記載の剤。
[84] TPSまたはCPSが50%未満、25%未満、10%未満、5%未満または1%未満である、前項[1]~[82]の何れか一項記載の剤。
[85] 当該悪性腫瘍が、MSI-Hおよび/またはdMMRを有する、前項[1]~[84]の何れか一項記載の剤。
[86] 当該悪性腫瘍が、MSI-Hおよび/またはdMMRを有しない、もしくは低頻度マイクロサテライト不安定性(以下、「MSI-L」と略記する。)を有する、前項[1]~[84]の何れか一項記載の剤。
[87] 悪性黒色腫または非小細胞肺癌が、BRAF V600E変異陽性である、前項[70]、[72]~[74]および[77]~[86]の何れか一項記載の剤。
[88] 悪性黒色腫または非小細胞肺癌が、BRAF V600野生型である、前項[70]、[72]~[74]および[77]~[86]の何れか一項記載の剤。
[89] 非小細胞肺癌が、EGFR遺伝子変異陽性および/またはALK融合遺伝子陽性である、前項[70]、[72]~[74]および[77]~[88]の何れか一項記載の剤。
[90] 非小細胞肺癌が、EGFR遺伝子変異陰性および/またはALK融合遺伝子陰性である、前項[70]、[72]~[74]および[77]~[88]の何れか一項記載の剤。
[91] 当該悪性腫瘍の腫瘍変異負荷(以下、「TMB」と略記する。)が高頻度(106塩基当たりの変異数が10個以上)である、前項[1]~[90]の何れか一項記載の剤。
[92] 当該悪性腫瘍のTMBが低頻度(106塩基当たりの変異数が10個未満)である、前項[1]~[90]の何れか一項記載の剤。
[93] さらに、他の抗悪性腫瘍薬と併用される前項[1]~[92]の何れか一項記載の剤。
[94] 当該他の抗悪性腫瘍薬が、アルキル化薬、白金製剤、代謝拮抗剤(例えば、葉酸代謝拮抗薬、ピリジン代謝阻害薬、プリン代謝阻害薬)、リボヌクレオチドリダクターゼ阻害薬、ヌクレオチドアナログ、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管重合阻害薬、微小管脱重合阻害薬、抗腫瘍性抗生物質、サイトカイン製剤、抗ホルモン薬、分子標的薬およびがん免疫治療薬から選択される一以上の薬剤である前項[78]~[80]または[93]記載の剤。
[95] 当該悪性腫瘍患者が、当該免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする薬剤の投与前における患者である前項[1]~[94]の何れか一項記載の剤。
[96] 抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする薬剤の投与前における、悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度(例えば、MFI)に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度(例えば、MFI)との比率が約0.7以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、当該抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤であって、当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283であり、当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072であり、当該悪性腫瘍が、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上の悪性腫瘍である、当該薬剤。
[97] (a1)抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする薬剤の投与前における悪性腫瘍患者の腫瘍組織内のTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度(例えば、MFI)に対する、同組織内のCD8+T細胞でのPD-1発現強度(例えば、MFI)との比率もしくは(a2)当該Treg細胞(Fr.II)のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れかが約1.0以上であり、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約40%以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする、当該抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤であって、当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283であり、当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072であり、当該悪性腫瘍が、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上の悪性腫瘍である、当該薬剤。
[98] 当該腫瘍組織が、少なくとも腫瘍塊自体、腫瘍の浸潤性周辺部あるいは腫瘍に隣接するリンパ節を含む組織である前項[1]~[97]の何れか一項記載の剤。
[1-1] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率が0.7以上である(または当該比率が0.7以上であることが確認された)悪性腫瘍患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含む、悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
[1-2]悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現について、フローサイトメトリー法により測定されたMFIが約400以上である(または当該MFIが約400以上であることが確認された)悪性腫瘍患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含む、悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
[1-3] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約35%以上である(または当該割合(%)が約35%以上であることが確認された)悪性腫瘍患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含む、悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
[1-4] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約65%未満である(または当該割合(%)が約65%未満であることが確認された)悪性腫瘍患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含む、悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
[1-5] (a1)悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れかが約0.8以上であり(または当該比率の何れかが約0.8以上であることが確認され)、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約35%以上である(または当該割合(%)が約35%以上であることが確認された)悪性腫瘍患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含む、悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
[1-6] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率に、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値が約25以上である(または当該数値が約25以上であることが確認された)悪性腫瘍患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含む、悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
[1-7] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値が約25以上である(または当該数値が約25以上であることが確認された)悪性腫瘍患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含む、悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
なお、前記[1-1]~[1-7]における各方法は、各バイオマーカーに基づき特定された悪性腫瘍患者のみに有効量の免疫チェックポイント阻害薬を投与するという治療方法等を意味し、また、そのような患者を特定するプロセスを含む場合がある。
[2-1] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率が約0.7以上である悪性腫瘍患者に対する悪性腫瘍の進行および/もしくは再発の抑制ならびに/または治療における使用のための免疫チェックポイント阻害薬。
[2-2]悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現について、フローサイトメトリー法により測定されたMFIが約400以上である悪性腫瘍患者に対する悪性腫瘍の進行および/もしくは再発の抑制ならびに/または治療における使用のための免疫チェックポイント阻害薬。
[2-3] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約35%以上である悪性腫瘍患者に対する悪性腫瘍の進行および/もしくは再発の抑制ならびに/または治療における使用のための免疫チェックポイント阻害薬。
[2-4] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約65%未満である悪性腫瘍患者に対する悪性腫瘍の進行および/もしくは再発の抑制ならびに/または治療における使用のための免疫チェックポイント阻害薬。
[2-5] (a1)悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れかが約0.8以上であり、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約35%以上である悪性腫瘍患者に対する悪性腫瘍の進行および/もしくは再発の抑制ならびに/または治療における使用のための免疫チェックポイント阻害薬。
[2-6] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率に、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値が約25以上である悪性腫瘍患者に対する悪性腫瘍の進行および/もしくは再発の抑制ならびに/または治療における使用のための免疫チェックポイント阻害薬。
[2-7] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値が25以上である悪性腫瘍患者に対する悪性腫瘍の進行および/もしくは再発の抑制ならびに/または治療における使用のための免疫チェックポイント阻害薬。
[3-1] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率が約0.7以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤を製造するための免疫チェックポイント阻害物質の使用。
[3-2] (a1)悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れかが約0.8以上であり、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約35%以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤を製造するための免疫チェックポイント阻害物質の使用。
[3-3] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率に、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値が約25以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤を製造するための免疫チェックポイント阻害物質の使用。
[3-4] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値が25以上である悪性腫瘍患者に投与されることを特徴とする悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療剤を製造するための免疫チェックポイント阻害物質の使用。
[4-1] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりTreg細胞およびCD8+T細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、フローサイトメトリー法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、当該Treg細胞および当該CD8+T細胞におけるPD-1発現強度を各々測定して、当該Treg細胞でのPD-1発現強度に対する、当該CD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率を決定し、当該比率に基づいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者、あるいは免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない悪性腫瘍患者を特定する方法。
[4-2] 当該免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者として、当該比率が約0.7以上である患者を特定する、前項[4-1]記載の方法。
[4-3] 前項[4-2]記載の比率が約0.74以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-4] 前項[4-2]記載の比率が約0.8以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-5] 前項[4-2]記載の比率が約0.9以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-6] 前項[4-2]記載の比率が約1.0以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-7] 前項[4-2]記載の比率が約1.1以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-8] 前項[4-2]記載の比率が約1.2以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-9] 前項[4-2]記載の比率が約1.25以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-10] 前項[4-2]記載の比率が約1.27以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-11] 前項[4-2]記載の比率が約1.3以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-12] 前項[4-2]記載の比率が約1.4以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-13] 前項[4-2]記載の比率が約1.5以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-14] 前項[4-2]記載の比率が約1.6以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-15] 前項[4-2]記載の比率が約1.7以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-16] 前項[4-2]記載の比率が約1.8以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-17] 前項[4-2]記載の比率が約1.9以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-18] 前項[4-2]記載の比率が約0.7~約1.9の間の任意の比率以上である前項[4-2]記載の方法。
[4-19] 前項[4-2]記載の比率が、約2.6~約5.9の間の任意の比率以下である前項[4-2]~[4-18]の何れか一項記載の方法。
[4-20] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりCD8+T細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、フローサイトメトリー法にて当該CD8+T細胞におけるPD-1発現のMFIを測定して、当該MFIに基づいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者、あるいは免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない悪性腫瘍患者を特定する方法。
[4-21] 当該免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者として、当該MFIが約400以上である患者を特定する、前項[4-20]記載の方法。
[4-22] 前項[4-21]記載のMFIが約410以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-23] 前項[4-21]記載のMFIが約450以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-24] 前項[4-21]記載のMFIが約500以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-25] 前項[4-21]記載のMFIが約550以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-26] 前項[4-21]記載のMFIが約600以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-27] 前項[4-21]記載のMFIが約650以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-28] 前項[4-21]記載のMFIが約700以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-29] 前項[4-21]記載のMFIが約750以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-30] 前項[4-21]記載のMFIが約800以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-31] 前項[4-21]記載のMFIが約810以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-32] 前項[4-21]記載のMFIが約850以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-33] 前項[4-21]記載のMFIが約400~約850の間の任意の数値以上である前項[4-21]記載の方法。
[4-34] 前項[4-21]記載のPD-1発現のMFIが、約2050~約2810の間の任意の数値以下である前項[4-21]~[4-33]の何れか一項記載の方法。
[4-35] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりCD8+T細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、フローサイトメトリー法または免疫染色法にて、CD8+T細胞数およびそのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を決定し、当該割合に基づいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者、あるいは免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない悪性腫瘍患者を特定する方法。
[4-36] 当該免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者として、当該割合が約35%以上である患者を特定する、前項[4-35]記載の方法。
[4-37] 前項[4-36]記載の割合が約40%以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-38] 前項[4-36]記載の割合が約45%以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-39] 前項[4-36]記載の割合が約49.7%以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-40] 前項[4-36]記載の割合が約50%以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-41] 前項[4-36]記載の割合が約50.7%以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-42] 前項[4-36]記載の割合が約60%以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-43] 前項[4-36]記載の割合が約70%以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-44] 前項[4-36]記載の割合が約35~70%の間の任意の割合以上である前項[4-36]記載の方法。
[4-45] 悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりTreg細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、フローサイトメトリー法または免疫染色法にて、Treg細胞数およびそのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を決定し、当該割合に基づいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者、あるいは免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない悪性腫瘍患者を特定する方法。
[4-46] 当該免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者として、当該割合が約65%未満である患者を特定する、前項[4-45]記載の方法。
[4-47] 前項[4-46]記載の割合が約60%未満である前項[4-46]記載の方法。
[4-48] 前項[4-46]記載の割合が約58.4%未満である前項[4-46]記載の方法。
[4-49] 前項[4-46]記載の割合が約55%未満である前項[4-46]記載の方法。
[4-50] 前項[4-46]記載の割合が約65~約55%の間の任意の割合未満である前項[4-46]記載の方法。
[4-51] (i)悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりCD8+T細胞およびTreg細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法、免疫染色法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、(iia)当該CD8+T細胞および当該Treg細胞における各々のPD-1発現強度もしくは(iib)CD8+T細胞数およびTreg細胞数ならびにそれらのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)(a1)当該Treg細胞でのPD-1発現強度に対する、当該CD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率および(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を決定し、当該(a1)もしくは(a2)の比率および当該(b)の割合の組合せに基づいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者、あるいは免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない悪性腫瘍患者を特定する方法。
[4-52] 当該免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者として、前項[4-51]の(a1)もしくは(a2)記載の比率が約0.8以上であり、かつ同項(b)記載の割合が約35%以上である患者を特定する、前項[4-51]記載の方法。
[4-53] 前項[4-52]記載の(a1)もしくは(a2)記載の比率が約0.9以上である前項[4-52]記載の方法。
[4-54] 前項[4-52]記載の(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.0以上である前項[4-52]記載の方法。
[4-55] 前項[4-52]記載の(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.1以上である前項[4-52]記載の方法。
[4-56] 前項[4-52]記載の(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.2以上である前項[4-52]記載の方法。
[4-57] 前項[4-52]記載の(b)記載の割合が約40%以上である前項[4-52]~[4-56]の何れか一項記載の方法。
[4-58] 前項[4-52]記載の(b)記載の割合が約45%以上である前項[4-52]~[4-56]の何れか一項記載の方法。
[4-59] 免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法であって、(i)悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりTreg細胞およびCD8+T細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法、免疫染色法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、(iia)当該CD8+T細胞および当該Treg細胞における各々のPD-1発現強度もしくは(iib)当該CD8+T細胞およびTreg細胞の各々の細胞数ならびにそれらのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)当該免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる患者として、(a1)当該Treg細胞でのPD-1発現強度に対する当該CD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れかが約1.0以上であり、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約40%以上である患者を特定する方法。
[4-60] (i)悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりCD8+T細胞およびTreg細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法、免疫染色法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、当該CD8+T細胞およびTreg細胞での各々のPD-1発現強度ならびに当該CD8+T細胞の細胞数およびそのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)当該Treg細胞でのPD-1発現強度に対する、当該CD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率に、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値を決定し、当該数値に基づいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者、あるいは免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない悪性腫瘍患者を特定する方法。
[4-61] (i)悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりCD8+T細胞およびTreg細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法または免疫染色法にて、当該CD8+T細胞およびTreg細胞の各々の細胞数ならびにそれらのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値を決定し、当該数値に基づいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者、あるいは免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない悪性腫瘍患者を特定する方法。
[4-62] 当該免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者として、当該数値が約25以上である患者を特定する、前項[4-60]または[4-61]記載の方法。
[4-63] 前項[4-62]記載の数値が約40以上または約44.4以上である患者を特定する、前項[4-62]記載の方法。
[4-64] 前項[4-62]記載の数値が約46.0以上または約50以上である患者を特定する、前項[4-62]記載の方法。
[4-65] 前項[4-62]記載の数値が約60以上である患者を特定する、前項[4-62]記載の方法。
[4-66] 前項[4-62]記載の数値が約90以上である患者を特定する、前項[4-62]記載の方法。
[4-67] 前項[4-62]記載の数値が約100以上である患者を特定する、前項[4-62]記載の方法。
[4-68] 当該Treg細胞が、Treg細胞(Fr.II)である、前項[4-1]~[4-19]および[4-45]~[4-67]の何れか一項記載の剤。
[4-69] 免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、PD-1拮抗剤、PD-L1/VISTA拮抗剤、PD-L1/TIM3拮抗剤、抗PD-L2抗体、PD-L1融合タンパク質、PD-L2融合タンパク質、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、LAG-3融合蛋白質、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CSF-1R抗体またはCSF-1R阻害剤である、前項[4-1]~[4-68]の何れか一項記載の方法。
[4-70] 当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283である前項[4-69]記載の方法。
[4-71] 当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072である前項[4-69]記載の方法。
[4-72] 当該抗CTLA-4抗体が、Ipilimumab、AGEN1884またはTremelimumabである前項[4-69]記載の方法。
[4-73] 当該悪性腫瘍が、固形がんまたは血液がんである、前項[4-1]~[4-72]の何れか一項記載の方法。
[4-74] 当該固形がんが、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上のがんである前項[4-73]記載の方法。
[4-75] 当該血液がんが、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、慢性または急性リンパ球性白血病、末梢性T細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病、B細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病およびリンパ形質細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫(例えば、古典的ホジキンリンパ腫および結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫))、白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)、中枢神経系原発悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんである、前項[4-73]記載の剤。
[4-76] 当該悪性腫瘍が非小細胞肺癌の場合、前項[4-1]記載の比率が、1.2以上である前項[4-1]、[4-2]、[4-19]および[4-68]~[4-74]の何れか一項記載の方法。
[4-77] 当該悪性腫瘍が非小細胞肺癌の場合、前項[4-20]記載のPD-1発現のMFIが、800以上である前項[4-20]、[4-34]および[4-68]~[4-74]の何れか一項記載の方法。
[4-78] 当該悪性腫瘍が非小細胞肺癌の場合、前項[4-62]記載の数値が、約40以上である前項[4-62]および[4-68]~[4-74]の何れか一項記載の方法。
[4-79] 当該悪性腫瘍が胃癌の場合、前項[4-1]記載の比率が、0.7以上である前項[4-1]、[4-2]、[4-19]および[4-68]~[4-74]の何れか一項記載の方法。
[4-80] 当該悪性腫瘍が胃癌の場合、前項[4-20]記載のPD-1発現のMFIが、410以上である前項[4-20]、[4-34]および[4-68]~[4-74]の何れか一項記載の方法。
[4-81] 当該悪性腫瘍が、小児がんまたは原発不明がんである、前項[4-1]~[4-73]の何れか一項記載の方法。
[4-82] 当該悪性腫瘍が、他の抗悪性腫瘍薬による治療効果が不十分あるいは十分ではない癌である、前項[4-1]~[4-81]の何れか一項記載の方法。
[4-83] 当該悪性腫瘍が、他の抗悪性腫瘍薬による治療後に増悪した癌である、前項[4-1]~[4-82]の何れか一項記載の方法。
[4-84] 当該悪性腫瘍患者が、他の抗悪性腫瘍薬による治療歴のない、前項[4-1]~[4-81]の何れか一項記載の方法。
[4-85] 術後補助療法または術前補助療法において処方される前項[4-1]~[4-84]の何れか一項記載の方法。
[4-86] 当該悪性腫瘍が、根治もしくは切除不能、転移性、再発性、難治性および/または遠隔転移性である、前項[4-1]~[4-85]の何れか一項記載の方法。
[4-87] TPSまたはCPSが、50%以上、25%以上、5%以上または1%以上である、前項[4-1]~[4-86]の何れか一項記載の方法。
[4-88] TPSまたはCPSが、50%未満、25%未満、5%未満または1%未満である、前項[4-1]~[4-86]の何れか一項記載の方法。
[4-89] 当該悪性腫瘍が、MSI-Hおよび/またはdMMRを有する、前項[4-1]~[4-88]の何れか一項記載の方法。
[4-90] 当該悪性腫瘍が、MSI-Hおよび/またはdMMRを有しない、もしくはMSI-Lを有する、前項[4-1]~[4-88]の何れか一項記載の方法。
[4-91] 悪性黒色腫または非小細胞肺癌が、BRAF V600E変異陽性である、前項[4-74]、[4-76]~[4-78]および[4-81]~[4-90]の何れか一項記載の方法。
[4-92] 悪性黒色腫または非小細胞肺癌が、BRAF V600野生型である、前項[4-74]、[4-76]~[4-78]および[4-81]~[4-90]の何れか一項記載の方法。
[4-93] 非小細胞肺癌が、EGFR遺伝子変異陽性および/またはALK融合遺伝子陽性である、前項[4-74]、[4-76]~[4-78]および[4-81]~[4-92]の何れか一項記載の方法。
[4-94] 非小細胞肺癌が、EGFR遺伝子変異陰性および/またはALK融合遺伝子陰性である、前項[4-74]、[4-76]~[4-78]および[4-81]~[4-92]の何れか一項記載の方法。
[4-95] 当該悪性腫瘍のTMBが高頻度である、前項[4-1]~[4-94]の何れか一項記載の方法。
[4-96] 当該悪性腫瘍のTMBが低頻度である、前項[4-1]~[4-94]の何れか一項記載の方法。
[4-97] 当該悪性腫瘍患者が、当該免疫チェックポイント阻害薬の投与前における患者である前項[4-1]~[4-96]の何れか一項記載の方法。
[4-98] 抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする薬剤の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法であって、(i)当該抗体を有効成分とする薬剤の投与前における、悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりTreg細胞(Fr.II)およびCD8+T細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法、免疫染色法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、当該Treg細胞(Fr.II)および当該CD8+T細胞におけるPD-1発現強度を各々測定して、(iii)当該薬剤の効果がより期待できる患者として、当該Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度に対する当該CD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率が約0.7以上である患者を特定し、当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283であり、当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072であり、当該悪性腫瘍が、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上の悪性腫瘍である、当該方法。
[4-99] 抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする薬剤の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定する方法であって、(i)当該抗体を有効成分とする薬剤の投与前における、悪性腫瘍患者の腫瘍組織または血液よりTreg細胞(Fr.II)およびCD8+T細胞を含む細胞集団を採取、必要に応じて精製し、(ii)フローサイトメトリー法、免疫染色法、多重免疫組織染色法、in situ ハイブリダイゼーション法、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法にて、(iia)当該CD8+T細胞および当該Treg細胞(Fr.II)における各々のPD-1発現強度もしくは(iib)CD8+T細胞数およびTreg細胞(Fr.II)の各々の細胞数ならびにそれらのうちのPD-1発現細胞数を各々測定して、(iii)当該薬剤の効果がより期待できる患者として、(a1)当該Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度に対する当該CD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞(Fr.II)のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れかが約1.0以上であり、かつ(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)が約40%以上である患者を特定し、当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283であり、当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072であり、当該悪性腫瘍が、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上の悪性腫瘍である、当該方法。
[4-100] 当該腫瘍組織が、少なくとも腫瘍塊自体、腫瘍の浸潤性周辺部あるいは腫瘍に隣接するリンパ節を含む組織である前項[4-1]~[4-99]の何れか一項記載の方法。
[4-101] 当該Treg細胞もしくはTreg細胞(Fr.II)および当該CD8+T細胞での各々のPD-1発現強度が、フローサイトメトリー法によって測定されるMFIで表わされる前項[4-1]~[4-19]および[4-51]~[4-100]の何れか一項記載の方法。
[5-1] 免疫チェックポイント阻害薬による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率のバイオマーカーとしての使用。
[5-2] 免疫チェックポイント阻害薬による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞におけるPD-1発現強度のバイオマーカーとしての使用。
[5-3] 免疫チェックポイント阻害薬による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)のバイオマーカーとしての使用。
[5-4] 免疫チェックポイント阻害薬による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)のバイオマーカーとしての使用。
[5-5] 免疫チェックポイント阻害薬による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、(a1)当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率、ならびに(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の組合せのバイオマーカーとしての使用。
[5-6] 免疫チェックポイント阻害薬による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率に、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値のバイオマーカーとしての使用。
[5-7] 免疫チェックポイント阻害薬による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除して算出される数値のバイオマーカーとしての使用。
[5-8] 当該PD-1発現強度が、フローサイトメトリー法によって測定されるMFI、多重免疫組織染色法によって測定される発現強度もしくは発現強度スコア、in situ ハイブリダイゼーション法によって測定されるシグナル強度もしくは発現強度スコア、マスサイトメトリー法によって測定される発現強度もしくはシグナル強度、シングルセルRNAシーケンス法によって測定される発現レベルもしくは遺伝子カウント値またはマスイメージング法によって測定される発現強度もしくは発現強度スコアで表わされる前項[5-1]、[5-2]、[5-5]および[5-6]の何れか一項記載の使用。
[5-9] 腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞数およびTreg細胞数ならびにそれらのうちの各々のPD-1発現細胞数が、フローサイトメトリー法または免疫染色法にて測定される、前項[5-3]~[5-7]の何れか一項記載の使用。
[5-10] 当該Treg細胞が、Treg細胞(Fr.II)である、前項[5-1]および[5-4]~[5-9]の何れか一項記載の使用。
[5-11] 当該免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、PD-1拮抗剤、PD-L1/VISTA拮抗剤、PD-L1/TIM3拮抗剤、抗PD-L2抗体、PD-L1融合タンパク質、PD-L2融合タンパク質、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、LAG-3融合蛋白質、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CSF-1R抗体またはCSF-1R阻害剤である、前項[5-1]~[5-10]の何れか一項記載の使用。
[5-12] 当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283である前項[5-11]記載の使用。
[5-13] 当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072である前項[5-11]記載の使用。
[5-14] 当該抗CTLA-4抗体が、Ipilimumab、AGEN1884またはTremelimumabである前項[5-11]記載の使用。
[5-15] 当該悪性腫瘍が、固形がんまたは血液がんである、前項[5-1]~[5-14]の何れか一項記載の使用。
[5-16] 当該固形がんが、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上のがんである前項[5-15]記載の使用。
[5-17] 当該血液がんが、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、慢性または急性リンパ球性白血病、末梢性T細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病、B細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病およびリンパ形質細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫(例えば、古典的ホジキンリンパ腫および結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫))、白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)、中枢神経系原発悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群および骨髄増殖症候群から選択される1以上のがんである、前項[5-15]記載の使用。
[5-18] 当該悪性腫瘍が、小児がんまたは原発不明がんである、前項[5-1]~[5-15]の何れか一項記載の使用。
[5-19] 当該悪性腫瘍患者が、当該免疫チェックポイント阻害薬の投与前における患者である前項[5-1]~[5-18]の何れか一項記載の使用。
[5-20] 抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする薬剤による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、当該薬剤の投与前における当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率のバイオマーカーとしての使用であって、当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283であり、当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072であり、当該悪性腫瘍が、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上の悪性腫瘍である、当該使用。
[5-21] 抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を有効成分とする薬剤による悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療の有効性予測のための、(a1)当該薬剤の投与前における当該悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞(Fr.II)のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率、ならびに(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の組合せのバイオマーカーとしての使用であって、当該抗PD-1抗体が、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、AMP-514、Dostarlimab、Toripalimab、Camrelizumab、Genolimzumab、Sintilimab、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188またはJNJ-63723283であり、当該抗PD-L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、Durvalumab、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502、JS003またはCX-072であり、当該悪性腫瘍が、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上の悪性腫瘍である、当該使用。
[5-22] 当該腫瘍組織が、少なくとも腫瘍塊自体、腫瘍の浸潤性周辺部あるいは腫瘍に隣接するリンパ節を含む組織である前項[5-1]~[5-21]の何れか一項記載の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバイオマーカーを測定することにより、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】Nivolumabについて、RECISTガイドラインに基づく完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を示した非小細胞肺癌患者群(7例)および同ガイドラインに基づく安定(SD)または進行(PD)を示した同患者群(7例)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のTreg細胞のPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞のPD-1発現MFIの比率を表す。
【
図2】Nivolumabの効果がCRまたはPRであった非小細胞肺癌患者群(7例)およびSDまたはPDであった同患者群(7例)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)のPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞のPD-1発現MFIの比率を表す。
【
図3】Nivolumabの効果がPRであった胃癌患者群(3例)およびSDまたはPDであった同患者(14例)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のTreg細胞のPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞のPD-1発現MFIの比率を表す。
【
図4】Nivolumabの効果がPRであった胃癌患者群(3例)およびSDまたはPDであった同患者群(14例)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)のPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞のPD-1発現MFIの比率を表す。
【
図5】Nivolumabの効果がCRまたはPRであった非小細胞肺癌患者群(7例)およびSDまたはPDであった同患者群(7例)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のCD8
+T細胞のPD-1発現MFI値を表す。
【
図6】Nivolumabの効果がPRであった胃癌患者群(3例)およびSDまたはPDであった同患者群(14例)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のCD8
+T細胞のPD-1発現MFI値を表す。
【
図7】Nivolumabの効果がCRまたはPRであった非小細胞肺癌患者群(7例)およびSDまたはPDであった同患者群(7例)各々にについて、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のCD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を表す。
【
図8】Nivolumabの効果がPRであった胃癌患者群(3例)およびSDまたはPDであった同患者群(14例)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のCD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を表す。
【
図9】左図:Nivolumabの効果がCR、PRまたは少なくとも6カ月間SDが維持された非小細胞肺癌患者群(Responder群:7名)およびSDが6カ月未満またはPDであった同癌患者群(Non-Responder群:5名)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来CD8
+T細胞のPD-1発現割合(%)を表す。右図:Nivolumabの効果がCR、PRまたは少なくとも6カ月間SDが維持された胃癌患者群(Responder群:7名)およびSDが6カ月未満またはPDであった同患者群(Non-Responder群:16名)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来CD8
+T細胞のPD-1発現割合(%)を表す。
【
図10】上図:腫瘍組織由来CD8
+T細胞のPD-1発現割合(%)の中央値(52.9%)にて2群に分けられた非小細胞肺癌患者(12名)の各群における、Nivolumab投与後の無増悪生存期間(PFS)を表す。下図:腫瘍組織由来CD8
+T細胞のPD-1発現割合(%)の中央値(55.8%)にて2群に分けられた胃癌患者(23名)の各群における、Nivolumab投与後の無増悪生存期間(PFS)を表す。
【
図11】Nivolumabが投与された胃癌患者のうち、Responder群(7名)およびNon-Responder群(16名)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来Treg細胞(Fr.II)のPD-1発現割合(%)を表す。なお、図中「eTreg」は、Treg細胞(Fr.II)を表す。
【
図12】腫瘍組織由来Treg細胞(Fr.II)のPD-1発現割合(%)の中央値(62.3%)にて2群に分けられた胃癌患者(23名)の各群における、Nivolumab投与後の無増悪生存期間(PFS)を表す。
【
図13】左図:Nivolumabが投与された非小細胞肺癌患者のうち、Responder群(7名)およびNon-Responder群(5名)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来Treg細胞のPD-1発現MFIに対するCD8
+T細胞のPD-1発現MFIの比率を表す。右図:Nivolumabが投与された胃癌患者のうち、Responder群(7名)およびNon-Responder群(16名)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来Treg細胞のPD-1発現MFIに対するCD8
+T細胞のPD-1発現MFIの比率を表す。
【
図14】非小細胞肺癌患者(12名)および胃癌患者(23名)の各々の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)およびCD8
+T細胞における各々のPD-1発現割合(%)に基づき、Nivolumabの効果が期待できる患者を特定するための解析結果を表す。同CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を横軸に、同Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)を縦軸にプロットした。「Group R」は、CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)が40%以上であり、かつ、Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)に対する、CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)の比率が1.0以上である条件を満たす患者群として定義される。
【
図15】Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+T細胞における各々のPD-1発現MFIならびにCD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)に基づき、Nivolumabの効果が期待できる患者を特定するための解析結果を表す。CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を横軸に、Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対するCD8
+T細胞でのPD-1発現MFIとの比率を縦軸にプロットした。「Group R」は、CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)が40%以上であり、かつ、Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対するCD8
+T細胞でのPD-1発現MFIとの比率が1.0以上である条件を満たす患者群として定義される。
【
図16】癌患者(非小細胞肺癌患者12名および胃癌患者23名)における「Group R」群(CD8
+T細胞のPD-1発現割合≧40%、かつTreg細胞(Fr.II)のPD-1発現MFIに対するCD8
+T細胞のPD-1発現MFIとの比率≧1.0)およびそれ以外の患者群(「The other」)の各々における、Nivolumab投与後の無増悪生存期間(PFS)を表す。
【
図17】非小細胞肺癌(7名)の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)およびCD8
+T細胞における各々のPD-1発現MFIならびに同CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)に基づき、Nivolumabの効果が期待できる患者を特定するための解析結果を表す。腫瘍容積変化率(%)を横軸に、同Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対する同CD8
+T細胞でのPD-1発現MFIとの比率に、同CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を乗じた数値を縦軸にプロットした。
【
図18】非小細胞肺癌(7名)の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)およびCD8
+T細胞における各々のPD-1発現割合(%)に基づき、Nivolumabの効果が期待できる患者を特定するための解析結果を表す。腫瘍容積変化率(%)を横軸に、同CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)の自乗を、Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)で除した数値を縦軸にプロットした。なお、当該数値が極端に低い(0.0010付近)患者を破線枠で示した。
【
図19】非小細胞肺癌患者(18名)について、基準値(CUT)を各々25、40および60とした場合における、基準値陽性群(各基準値以上である群:BM+)および陰性群(各基準値未満である群:BM-)各々のNivolumab投与後の無増悪生存期間(PFS)を表す。
【
図20】非小細胞肺癌患者(18名)について、基準値(CUT)を各々90および100とした場合における、基準値陽性群(各基準値以上である群:BM+)および陰性群(各基準値未満である群:BM-)各々のNivolumab投与後の無増悪生存期間を表す。
【
図21】胃癌患者(29名)について、基準値(CUT)を各々25、40および60とした場合における、基準値陽性群(各基準値以上である群:BM+)および陰性群(各基準値未満である群:BM-)各々のNivolumab投与後の無増悪生存期間を表す。
【
図22】胃癌患者(29名)について、基準値(CUT)を各々90および100とした場合における、基準値陽性群(各基準値以上である群:BM+)および陰性群(各基準値未満である群:BM-)各々のNivolumab投与後の無増悪生存期間を表す。
【
図23】Nivolumabが投与された頭頚部癌患者のうち、Responder群(2名)およびNon-Responder群(1名)各々について、Nivolumab投与前における本発明のバイオマーカー1(Treg細胞である場合)の比率(左図)およびバイオマーカー1(Treg細胞(Fr.II)である場合)の比率(右図)を各々表す。
【
図24】Nivolumabが投与された頭頚部癌患者のResponder群(2名)およびNon-Responder群(1名)各々について、Nivolumab投与前における本発明のバイオマーカー3(左図)およびバイオマーカー4(Treg細胞(Fr.II)である場合)(右図)の各PD-1発現割合(%)を表す。
【
図25】Nivolumabが投与された頭頚部癌患者のResponder群(2名)およびNon-Responder群(1名)各々について、Nivolumab投与前における本発明のバイオマーカー6の数値を表す。
【
図26】Nivolumabが投与された頭頚部癌患者のResponder群(2名)およびNon-Responder群(1名)各々について、Nivolumab投与前における本発明のバイオマーカー7(Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)に基づく。)の数値を表す。
【
図27】Nivolumabが投与された頭頚部癌患者(3名)各々について、Nivolumab投与前における腫瘍組織由来のCD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を横軸に、同患者群各々の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)を縦軸にプロットした結果を表す。「Group R」は、本発明のバイオマーカー5で表される条件を満たす患者群が含まれる領域を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における「免疫チェックポイント阻害物質」とは、例えば、抗PD-1抗体(例えば、Nivolumab、Cemiplimab(REGN-2810)、Pembrolizumab(MK-3475)、Spartalizumab(PDR-001)、Tislelizumab(BGB-A317)、AMP-514(MEDI0680)、Dostarlimab(ANB011/TSR-042)、Toripalimab(JS001)、Camrelizumab(SHR-1210)、Genolimzumab(CBT-501)、Sintilimab(IBI308)、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、HLX10、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188およびJNJ-63723283など)、抗PD-L1抗体(例えば、Atezolizumab(RG7446/MPDL3280A)、Avelumab(PF-06834635/MSB0010718C)、Durvalumab(MEDI4736)、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、HLX20、SHR-1316、CS1001(WBP3155)、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502(TQB2450)、JS003およびCX-072など)、PD-1拮抗剤(例えば、AUNP-12、BMS-M1~BMS-M10の各化合物(WO2014/151634、WO2016/039749、WO2016/057624、WO2016/077518、WO2016/100285、WO2016/100608、WO2016/126646、WO2016/149351、WO2017/151830およびWO2017/176608参照)、BMS-1、BMS-2、BMS-3、BMS-8、BMS-37、BMS-200、BMS-202、BMS-230、BMS-242、BMS-1001、BMS-1166(WO2015/034820、WO2015/160641、WO2017/066227およびOncotarget. 2017 Sep 22; 8(42): 72167-72181.参照)、Incyte-1~Incyte-6の各化合物(WO2017/070089、WO2017/087777、WO2017/106634、WO2017/112730、WO2017/192961およびWO2017/205464参照)、CAMC-1~CAMC-4(WO2017/202273、WO2017/202274、WO2017/202275およびWO2017/202276参照)、RG_1(WO2017/118762参照)およびDPPA-1(Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 11760-11764参照)など)、PD-L1/VISTA拮抗剤(例えば、CA-170など)、PD-L1/TIM3拮抗剤(例えば、CA-327など)、抗PD-L2抗体、PD-L1融合タンパク質、PD-L2融合タンパク質(例えば、AMP-224など)、抗CTLA-4抗体(例えば、Ipilimumab(MDX-010)、AGEN1884およびTremelimumabなど)、抗LAG-3抗体(例えば、Relatlimab(BMS-986016/ONO-4482)、LAG525、REGN3767およびMK-4280など)、LAG-3融合蛋白質(例えば、IMP321など)、抗Tim3抗体(例えば、MBG453およびTSR-022など)、抗KIR抗体(例えば、Lirilumab(BMS-986015、ONO-4483)、IPH2101、LY3321367およびMK-4280など)、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体(例えば、Tiragolumab(MTIG-7192A/RG-6058/RO-7092284)およびBMS-986207(ONO-4686など)、抗VISTA抗体(例えば、JNJ-61610588など)および抗CSF-1R抗体もしくはCSF-1R阻害剤(例えば、Cabiralizumab(FPA008/BMS-986227/ONO-4687)、Emactuzumab(RG7155/RO5509554)、LY3022855、MCS-110、IMC-CS4、AMG820、Pexidartinib、BLZ945およびARRY-382など)などが挙げられる。また、本明細書において、これら物質を有効成分として含む薬剤を「免疫チェックポイント阻害薬」という。なお、Nivolumabは、WO2006/121168に記載された方法に準じて製造することができ、Pembrolizumabは、WO2008/156712に記載された方法に準じて製造することができ、BMS-936559は、WO2007/005874に記載された方法に準じて製造することができ、イピリムマブは、WO2001/014424に記載された方法に準じて製造することができる。
【0012】
本発明における「免疫チェックポイント阻害物質」として好ましくは、抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体であり、特に、好ましい抗PD-1抗体としては、Nivolumab、Cemiplimab、Pembrolizumab、Spartalizumab、Tislelizumab、Toripalimab、SintilimabおよびCamrelizumabが挙げられ、抗PD-L1抗体については、Atezolizumab、Avelumab、DurvalumabおよびBMS-936559が挙げられる。
【0013】
本発明書において、CD8+T細胞とは、T細胞のうち、表面抗原のCD8が陽性である細胞を意味し、例えば、CD3陽性、CD4陰性およびCD8陽性細胞として同定できる。なお、本明細書において「陽性」とは、あるマーカー分子が細胞表面上に発現しており、当該マーカー分子に対する抗体による特異的結合がある一定の強度をもって確認できることを意味し、「陰性」とは、当該マーカー分子に対する抗体による特異的結合がある一定の強度で確認できないことを意味する。
【0014】
本発明書において、Treg細胞あるいは制御性T細胞とは、免疫応答に対して抑制活性を示すT細胞であり、例えば、CD3陽性、CD4陽性、CD8陰性およびFoxP3陽性細胞として同定することができる。そのうち、「Fraction II Treg細胞」、「Treg細胞(Fr.II)」または「eTreg細胞」とは、Treg細胞の中でも特に免疫抑制作用が強く、免疫抑制活性を担うエフェクターTreg細胞であり、例えば、CD45RA陰性、CD25陽性およびFoxP3強陽性のTreg細胞として同定することができる(Immunity, Volume 30, Issue 6, 2009, pp. 899-911およびInternational Immunology, Volume 28, No. 8, 2016, pp.401-409参照)。
【0015】
本発明における「腫瘍組織」としては、例えば、少なくとも腫瘍塊自体、腫瘍の浸潤性周辺部あるいは腫瘍に隣接するリンパ節などを含む組織が挙げられ、公知の方法、例えば、鉗子生検、穿刺吸引、針生検、外科的生検あるいは腫瘍摘出のための外科的手術によって採取することができる。
【0016】
本発明における、CD8+T細胞およびTreg細胞は、公知の方法により、腫瘍組織を機械的に破砕したのち抽出し、さらに必要に応じて単離、さらに精製されたものでもよい。また、腫瘍組織の破壊は酵素処理をしたものでもよい。
【0017】
本発明において、CD8+T細胞あるいはTreg細胞が採取される「血液」としては、例えば、末梢血が挙げられ、血中のCD8+T細胞およびTreg細胞は、さらに必要に応じて、比重遠心法などのよって単離、さらには精製されたものでもよい。
【0018】
本発明において、CD8+T細胞数、PD-1発現CD8+T細胞数、Treg細胞数、PD-1発現Treg細胞数ならびにCD8+T細胞およびTreg細胞での各々のPD-1発現強度は、例えば、フローサイトメトリー等で測定して、算出することができる。具体的には、腫瘍組織および末梢血等から単離した単核球を蛍光色素標識抗体により染色する。ここで、蛍光色素標識抗体は、非標識一次抗体とそれに対する蛍光色素標識された2次抗体で染色することをも含む。当該抗体で染色された単核球をフローサイトメトリーにて検出する。また、CD8+T細胞数およびPD-1発現CD8+T細胞数ならびにTreg細胞数およびPD-1発現Treg細胞数は、免疫染色法によっても測定することができ、一方、PD-1発現強度は、公知の多重免疫組織染色法(例えば、蛍光またはマスサイトメトリー)、in situ ハイブリダイゼーション法(例えば、FISH、CISH、SISHおよびDISH)、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法によっても測定し、算出することができる。ここで、PD-1発現強度は、フローサイトメトリー法によって測定されるMFI、多重免疫組織染色法によって測定される発現強度もしくは発現強度スコア、in situ ハイブリダイゼーション法によって測定されるシグナル強度もしくは発現強度スコア、マスサイトメトリー法によって測定される発現強度もしくはシグナル強度、シングルセルRNAシーケンス法によって測定される発現レベルもしくは遺伝子カウント値またはマスイメージング法によって測定される発現強度もしくは発現強度スコアで表される場合がある。
【0019】
バイオマーカー3~7において各々測定される、PD-1発現CD8+T細胞あるいはPD-1発現Treg細胞とは、ある閾値以上でPD-1を発現する細胞集団であり、例えば、フローサイトメトリー測定において、PD-1を認識しないネガティブコントロール蛍光色素標識抗体を使用した場合、もしくはPD-1の蛍光色素標識抗体を使用しない場合では検出されず、抗PD-1蛍光色素標識抗体を使用した場合のみにて検出される蛍光強度を有する細胞集団である。なお、本明細書における「CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)」、「Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)」および「Treg細胞(Fr.II)のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)」を、各々「CD8+T細胞におけるPD-1発現割合(%)」、「Treg細胞におけるPD-1発現割合(%)」および「Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)」と記載する場合がある。
【0020】
本発明書における、「免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする薬剤の投与前」または「免疫チェックポイント阻害薬の投与前」とは、過去に当該免疫チェックポイント阻害物質を有効成分とする薬剤による治療歴がなく、全く初めて投与される場合にくわえて、過去に、当該免疫チェックポイント阻害薬あるいはその他の抗悪性腫瘍薬(当該免疫チェックポイント阻害薬以外の免疫チェックポイント阻害薬も含む。)による治療歴がある場合における当該薬剤の投与前という場合をも含む。
【0021】
本発明書において、バイオマーカーにおいて設定される比率、割合もしくはMFIまたはそれらの組合せから算出される各数値に用いられる「約」とは、表記される数値を10%も下回って、または上回って変化してよいことを意味する。
【0022】
本発明のバイオマーカーの基準値(カットオフ値)は、免疫チェックポイント阻害薬が投与される前の悪性腫瘍患者の各バイオマーカーを測定し、その後、当該免疫チェックポイント阻害薬を投与して、奏効群と非奏効群に分け、各群における当該投与前のバイオマーカーの測定値に基づいてあらかじめ定めることができる。奏効したかどうかの判定は、例えば、癌が固形癌の場合、RECISTガイドライン(Response Evaluation Criteria in Solid Tumor, 2000)に従って判定される、完全奏効(Complete Response:CR)、部分奏効(Partial Response:PR)、進行(Progressive Disease:PD)、安定(Stable Disease:SD)に基づき決定することができる。例えば、CR、PRおよびSDの各患者を奏効(本明細書中、「Responder」と記載する場合がある。)と判断し、PDの各患者を非奏効(本明細書中、「non-responder」と記載する場合がある。)と判断する場合があり、または、CRおよびPRの各患者を奏効と判断し、SDおよびPDの各患者を非奏効と判断する場合もある。また、CRおよびPRの各患者ならびにSDが少なくとも6カ月維持された患者を奏効と判断し、SDが6カ月未満である患者およびPDの患者を非奏効と判断する場合もある。同基準に基づく判断は、例えば、免疫チェックポイント阻害薬投与による治療開始から、12カ月までの時点で、好ましくは10カ月までの時点で、さらに好ましくは8カ月の時点で、さらに好ましくは6カ月の時点で行えばよい。また、全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、生存率または生存期間の中央値等によっても奏効あるいは非奏効であるかを判断することができる。
【0023】
本発明のバイオマーカーの基準値(カットオフ値)は、例えば、ROC(receiver operating characteristic curve:受信者動作特性曲線)解析により定めることができる。ROC解析は、検体として免疫チェックポイント阻害薬が投与される前の悪性腫瘍患者の各バイオマーカーを測定し、その後、当該免疫チェックポイント阻害薬を投与して、奏効群と非奏効群に分け、各基準値での感度(sensitivity)および特異性(specificity)を算出し、横軸を特異性とし、縦軸を感度とした座標上にプロットすることにより最適な値を設定することができる。
【0024】
また、本発明のバイオマーカーの基準値(カットオフ値)は、例えば、奏効群と非奏効群の各々における95%信頼区間を算出し、同区間の上限値または下限値に基づき設定することができる。両群の同区間が明確に乖離していると予測される場合には、両群の同区間の乖離領域において設定することができる。例えば、バイオマーカー1~3、6および7の場合には、奏効群の95%信頼区間の下限値から、非奏効群の同区間の上限値の間の任意の値を基準値として設定することができる。一方、両群の同区間が乖離していない場合であって、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果が期待できる患者を選択する場合には、例えば、バイオマーカー1~3、6および7の場合には、奏効群の95%信頼区間の下限値を基準値として設定することもできる。
【0025】
本発明におけるバイオマーカー1~3は、各々についてあらかじめ設定されている基準値の比率もしくは割合またはMFI値以上である悪性腫瘍患者を、バイオマーカー4については、あらかじめ設定されている基準値の割合未満である悪性腫瘍患者を、バイオマーカー5については、あらかじめ設定されている基準値の組合せに関する条件を満たした悪性腫瘍患者を、バイオマーカー6および7については、あらかじめ設定されている基準値の数値以上である悪性腫瘍患者を、各々、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる患者として特定する際に用いられるが、逆に、各々についてあらかじめ設定されている当該基準値の比率もしくは割合またはMFI値未満(バイオマーカー1~3)、当該基準値の割合以上(バイオマーカー4)、当該基準値の組合せに関する条件を満たさない(バイオマーカー5)あるいは当該基準値の数値未満(バイオマーカー6および7)である悪性腫瘍患者を、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない患者として特定する際にも用いることができる。
【0026】
本発明におけるバイオマーカー1である比率の基準値(カットオフ値)は、約0.7~約1.9の間の任意の比率であり、具体的には、約0.7、約0.74、約0.8、約0.9、約0.95、約1.0、約1.1、約1.2、約1.25、約1.27、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8または約1.9である。また、同比率の基準値は、必要により、約2.6~約5.9の間の任意の比率以下という上限を設けてもよい。また、特に、非小細胞肺癌の場合、同比率の基準値は約1.2であることが好ましく、一方、胃癌の場合、約0.7であることが好ましい。なお、同比率の基準値の算出のための測定において、Treg細胞を、Treg細胞(Fr.II)の分画に限定してもよい。また、同バイオマーカーにおける「PD-1発現強度」を細胞あたりのPD-1発現数(発現量)に代えて、同比率の算定に用いてもよい。なお、細胞当たりのPD-1発現数の決定には、抗原分子定量のための検量線作成に使用する蛍光標識ビーズを用いた公知の測定法(例えば、BD QuantiBRITE(登録商標) PE KitおよびQuantum(登録商標) FITC MESF Kit等を用いた方法)が適宜使用され得る。また、それら測定法において使用される細胞表面抗原分子の発現数(発現量)の単位として、例えば、Molecules of Equivalent Soluble Fluorochrome(MESF)が用いられることがある。
【0027】
本発明におけるバイオマーカー2であるMFIの基準値(カットオフ値)は、約400~約850の間の任意のMFIであり、具体的には、約400、約410、約450、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約810または約850である。また、同MFIは、必要により、約2050~約2810の間の任意のMFI以下という上限を設けてもよい。また、特に、非小細胞肺癌の場合、同MFIの基準値は約800であることが好ましく、一方、胃癌の場合、約410であることが好ましい。
【0028】
本発明におけるバイオマーカー3である割合(%)の基準値(カットオフ値)は、約35%~約70%の間の任意の割合であり、具体的には、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約49.7%、約50%、約50.7%、約51.8、約56.8%、約60%または約70%である。特に、非小細胞肺癌の場合、同割合の基準値は、約49.7~51.8%の間の任意の割合であることが好ましく、一方、胃癌の場合、約50.7~56.8%の間の任意の割合であることが好ましい。
【0029】
本発明におけるバイオマーカー4である割合(%)の基準値(カットオフ値)は、約65%~約55%の間の任意の割合であり、具体的には、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58.4%、約58%、約57%、約56%または約55%である。特に、胃癌の場合、同割合の基準値は、約58.4%であることが好ましい。同割合の基準値の算出のための測定においても同様に、Treg細胞を、Treg細胞(Fr.II)の分画に限定してもよい。
【0030】
本発明におけるバイオマーカー5、すなわち、(a1)悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率もしくは(a2)当該Treg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)に対する、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)との比率の何れか、および(b)当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の組合せは、その組合せにおいてあらかじめ定めた基準値(カットオフ値)の条件を満たす患者を、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる患者として、あるいは当該条件を満たさない患者を免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない患者としてより精度よく特定する際に用いることができる。
【0031】
例えば、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約0.8以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上もしくは約45%以上である場合、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約0.9以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上もしくは約45%以上である場合、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.0以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上もしくは約45%以上である場合、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.1以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上もしくは約45%以上である場合、または上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.2以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上もしくは約45%以上である場合、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる患者として特定することができる。より好ましくは、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約0.9以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約39%以上、約40%以上もしくは約41%以上である場合、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.0以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約39%以上、約40%以上もしくは約41%以上である場合、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.1以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約39%以上、約40%以上もしくは約41%以上である場合であり、さらに好ましくは、上記(a1)もしくは(a2)記載の比率が約1.0以上であり、かつ上記(b)記載の割合(%)が約40%以上である場合である。なお、同割合の基準値の算出のための測定においても同様に、Treg細胞を、Treg細胞(Fr.II)の分画に限定してもよい。また、同バイオマーカーにおける「PD-1発現強度」を細胞あたりのPD-1発現数(発現量)に代えて、同比率の算定に用いてもよい。
【0032】
本発明におけるバイオマーカー6、すなわち、悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のTreg細胞でのPD-1発現強度に対する、同組織内または血液中のCD8+T細胞でのPD-1発現強度との比率に、当該CD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値が、あらかじめ定めた基準値(カットオフ値)の条件を満たす患者を、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる患者として、あるいは当該条件を満たさない患者を免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない患者としてより精度よく特定する際に用いることができる。例えば、同数値が約25以上、約40以上、約46.0以上、約50以上、約60以上、約90以上または約100以上である場合、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる患者として特定することができ、同数値が約46.0以上、約50以上、約60以上、約90以上または約100以上である場合がより好ましい。
【0033】
本発明におけるバイオマーカー7、すなわち、悪性腫瘍患者の腫瘍組織内または血液中のCD8+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)の自乗を、同組織内または血液中のTreg細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)で除した数値が、あらかじめ定めた基準値(カットオフ値:CUT)の条件を満たす患者を、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる患者として、あるいは当該条件を満たさない患者を免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できない患者としてより精度よく特定する際に用いることができる。例えば、同数値が約25以上、約40以上、約44.4以上、約50以上、約60以上、約90以上または約100以上である場合、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる患者として特定することができ、特に、非小細胞肺癌患者においては、約40以上、約44.4以上、約50以上、約60以上、約90以上または約100以上である場合が好ましい。何れの悪性腫瘍に対しても、同数値が約60以上、約90以上または約100以上である場合がより好ましい。
【0034】
[適用疾患および患者]
本発明の薬剤あるいは患者特定方法が適用できる悪性腫瘍としては、固形がんの場合、例えば、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌(例えば、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌および舌癌)、腎細胞癌(例えば、淡明細胞型腎細胞癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌および卵巣明細胞腺癌)、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌(例えば、MSI-Hおよび/またはdMMR陽性大腸癌)、直腸癌、結腸癌、肝細胞癌、食道癌、食道腺癌、胃癌、食道胃接合部癌、小腸癌、膵癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、悪性胸膜中皮腫、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫およびメルケル細胞癌)、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脊椎腫瘍、脳腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫および神経膠肉腫)および髄膜腫)、扁平上皮癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫、子宮体部平滑筋肉腫、軟骨肉腫、肺肉腫、骨肉腫および先天性繊維肉腫)およびカポジ肉腫から選択される一以上の癌が挙げられる。
【0035】
一方、血液がんである場合、例えば、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、慢性または急性リンパ球性白血病、末梢性T細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病、B細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病およびリンパ形質細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫(例えば、古典的ホジキンリンパ腫および結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫))、白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)、中枢神経系原発悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんが挙げられる。
【0036】
本明細書において「悪性腫瘍治療」とは、例えば、(i)腫瘍細胞の増殖を減少させる、(ii)悪性腫瘍に起因する症状を低減させる、(iii)悪性腫瘍患者の生活の質を向上させる、(iv)既に投与されている他の抗悪性腫瘍薬またはがん治療補助薬の用量を低減させる、および/または(v)悪性腫瘍患者の生存を延長させるために行われる治療を含み、「悪性腫瘍の進行抑制」とは、悪性腫瘍の進行を遅延、悪性腫瘍に関連する症状を安定化および症状の進行を後退させることを意味する。また、「悪性腫瘍の再発抑制」とは、悪性腫瘍治療あるいは癌切除手術によって癌病変が完全にあるいは実質的に消滅あるいは取り除かれた患者における悪性腫瘍の再発を予防的に抑止することを意味する。
【0037】
本発明において、免疫チェックポイント阻害薬は、本発明にかかるバイオマーカー1~7の何れか少なくとも一つのバイオマーカーの条件を満たす、次の悪性腫瘍患者、すなわち、(a)他の抗悪性腫瘍薬による治療効果が不十分あるいは十分ではない悪性腫瘍の患者もしくは他の抗悪性腫瘍薬による治療後に増悪した悪性腫瘍の患者、(b)根治もしくは切除不能、転移性、再発性、難治性および/または遠隔転移性の悪性腫瘍の患者、(c)TPSまたはCPSが50%以上、25%以上、10%以上、5%以上もしくは1%以上である悪性腫瘍の患者、(d)MSI-HもしくはdMMRを有する悪性腫瘍の患者、(e)BRAF V600E変異陽性である悪性黒色腫もしくは非小細胞肺癌の患者、(f)EGFR遺伝子変異陽性またはALK融合遺伝子陽性である悪性腫瘍の患者、または(g)TMBが高頻度である悪性腫瘍の患者に処方することがある。
【0038】
また、一方で、本発明において、免疫チェックポイント阻害薬は、本発明にかかるバイオマーカー1~7の何れか少なくとも一つのバイオマーカーの条件を満たす、次の悪性腫瘍患者、すなわち、(a)他の抗悪性腫瘍薬による治療歴のない悪性腫瘍患者、(b)TPSまたはCPSが50%未満、25%未満、10%未満、5%未満もしくは1%未満である悪性腫瘍の患者、(c)MSI-Hおよび/またはdMMRを有しない、もしくはMSI-Lを有する悪性腫瘍の患者、(d)BRAF V600野生型である悪性黒色腫もしくは非小細胞肺癌の患者、(e)EGFR遺伝子変異陰性および/またはALK融合遺伝子陰性である非小細胞肺癌の患者、または(f)TMBが低頻度である悪性腫瘍の患者への処方がより求められる場合もある。
【0039】
さらに、悪性腫瘍の外科的切除術後の再発あるいは転移を予防的に抑止する術後補助療法または外科的切除前に行われる術前補助療法として処方することもできる。
【0040】
ここで、「他の抗悪性腫瘍薬」としては、下記の[併用および配合剤]に関する項において列記された抗悪性腫瘍薬、すなわち、アルキル化薬、白金製剤、代謝拮抗剤(例えば、葉酸代謝拮抗薬、ピリジン代謝阻害薬、プリン代謝阻害薬)、リボヌクレオチドリダクターゼ阻害薬、ヌクレオチドアナログ、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管重合阻害薬、微小管脱重合阻害薬、抗腫瘍性抗生物質、サイトカイン製剤、抗ホルモン薬、分子標的薬およびがん免疫治療薬として各々例示された薬剤が挙げられる。また、「抗悪性腫瘍薬による治療効果が不十分或いは十分ではない」とは、例えば、RECISTにおいて、抗悪性腫瘍薬による治療によっても安定(SD)あるいは進行(PD)と判定される場合が挙げられる。
【0041】
[処方]
本発明にかかる免疫チェックポイント阻害物質の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから1000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.1ngから100mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日30分から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0042】
例えば、抗PD-1抗体であるNivolumabの場合には、次の用法・用量にて投与されている。すなわち、悪性黒色腫患者には、Nivolumabとして1回3mg/kg(体重)を2週間間隔または1回2mg/kg(体重)を3週間間隔で点滴静注投与され、非小細胞肺癌、腎細胞癌、古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部癌、胃癌および悪性胸膜中皮腫の各患者には、Nivolumabとして1回3mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注投与される。また、別の用法・用量として、例えば、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、尿路上皮癌、MSI-HまたはdMMR陽性大腸癌(12歳以上の小児の患者も含む。)、胃癌、肝細胞癌、小細胞肺癌および悪性胸膜中皮腫の各患者には、Nivolumabとして1回240mgを2週間間隔で、あるいは1回480mgを4週間間隔で点滴静注投与される。さらに、別の用法・用量として、例えば、悪性黒色腫患者に対して、Ipilimumabとの併用において、Nivolumabとして1回1mg/kg(体重)を3週間間隔で4回点滴静注され、その後、Nivolumabとして1回3mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注されるか、あるいはNivolumabとして1回80mgを3週間間隔で4回点滴静注され、その後、Nivolumabとして1回240mgを2週間間隔で点滴静注される場合がある。また、例えば、腎細胞癌患者に対して、Ipilimumabとの併用において、Nivolumabとして1回240mgを3週間間隔で4回点滴静注され、その後、Nivolumabとして1回240mgを2週間間隔で点滴静注される場合もある。また、同じ抗PD-1抗体であるPembrolizumabの場合には、次の用法・用量で投与されている。すなわち、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、古典的ホジキンリンパ腫、頭頚部癌、MSI-HもしくはdMMR陽性固形癌または大腸癌、尿路上皮癌、子宮頸癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫、肝細胞癌、胃癌およびメルケル細胞癌の各患者には、Pembrolizumabとして1回200mgを3週間間隔で点滴静注投与される。また、別の用法・用量として、例えば、2歳以上の小児の古典的ホジキンリンパ腫、MSI-HもしくはdMMR陽性固形癌または大腸癌および原発性縦隔B細胞リンパ腫の各患者には、Pembrolizumabとして1回2mg/kg(体重)(1回200mgまで)を3週間間隔で点滴静注投与される。
【0043】
また、抗PD-L1抗体であるAvelumabは、メルケル細胞癌および尿路上皮癌の各患者には、Avelumabとして1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注投与される。同じPD-L1抗体であるAtezolizumabは、非小細胞肺癌および尿路上皮癌の各患者には、Atezolizumabとして1回1200mgを3週間間隔で点滴静注投与され、トリプルネガティブ乳癌患者には、パクリタキセルとの併用において、Atezolizumabとして1回840mgを2週間間隔で点滴静注投与される。さらに、同じPD-L1抗体であるDurvalumabは、非小細胞肺癌および尿路上皮癌の各患者には、Durvalumabとして1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注投与される。
【0044】
また、抗CTLA-4抗体であるIpilimumabの場合には、悪性黒色腫患者に対して、単独もしくはNivolumabとの併用において、Ipilimumabとして1日1回3mg/kg(体重)を3週間間隔で4回点滴静注され、腎細胞癌およびMSI-HまたはdMMR陽性大腸癌の各患者には、Nivolumabとの併用において、Ipilimumabとして1日1回1mg/kg(体重)を3週間間隔で4回点滴静注される。
【0045】
[併用および配合剤]
本発明にかかる免疫チェックポイント阻害薬は、(1)悪性腫瘍の進行抑制、再発抑制および/または治療効果の増強のために、(2)組み合わせて使用される他の薬剤の投与量の低減および/または(3)組み合わせて使用される他の薬剤の副作用の軽減のために、上記の悪性腫瘍の治療目的に使用される一種以上の他の薬剤(主に、抗悪性腫瘍薬)とともに組み合わせて使用してもよい。本発明において、他の薬剤とともに組み合わせて処方する場合の投与形態には、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態であっても、また別々の製剤としての投与形態であってもよい。免疫チェックポイント阻害薬と他の薬剤を別々に投与する場合には、免疫チェックポイント阻害薬を先に投与し、その投与の後に他の薬剤を投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、免疫チェックポイント阻害薬を後に投与してもよく、また、上記投与において、一定期間、両薬剤が同時に投与される期間があってもよい。また、各々の薬剤の投与方法は同じでも異なっていてもよい。薬剤の性質により、免疫チェックポイント阻害薬と他の薬剤を含むキットとして提供することもできる。ここで、他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、前記他の薬剤には、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0046】
他の薬剤の主な一例として挙げられる抗悪性腫瘍薬としては、例えば、アルキル化薬(例えば、Dacarbazine、Nimustine、Temozolomide、Fotemustine、bendamustine、Cyclophosphamide、Ifosfamide、Carmustine、ChlorambucilおよびProcarbazineなど)、白金製剤(例えば、Cisplatin、Carboplatin、NedaplatinおよびOxaliplatinなど)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸代謝拮抗薬(例えば、Pemetrexed、LeucovorinおよびMethotrexateなど)、ピリジン代謝阻害薬(例えば、TS-1(登録商標)、5-fluorouracil、UFT、Carmofur、Doxifluridine、FdUrd、CytarabineおよびCapecitabineなど)、プリン代謝阻害薬(例えば、Fludarabine、CladribineおよびNelarabineなど))、リボヌクレオチドリダクターゼ阻害薬、ヌクレオチドアナログ(例えば、Gemcitabineなど))、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、Irinotecan、NogitecanおよびEtoposideなど)、微小管重合阻害薬(例えば、Vinblastine、Vincristine、Vindesine、VinorelbineおよびEribulinなど)、微小管脱重合阻害薬(例えば、DocetaxelおよびPaclitaxel)、抗腫瘍性抗生物質(例えば、Bleomycin、Mitomycin C、Doxorubicin、Daunorubicin、Idarubicin、Etoposide、Mitoxantrone、Vinblastine、Vincristine、Peplomycin、Amrubicin、AclarubicinおよびEpirubicinなど)、サイトカイン製剤(例えば、IFN-α2a、IFN-α2b、ペグIFN-α2b、天然型IFN-βおよびInterleukin-2など)、抗ホルモン薬(例えば、Tamoxifen、Fulvestrant、Goserelin、Leuprorelin、Anastrozole、LetrozoleおよびExemestaneなど)、分子標的薬、がん免疫治療薬およびその他の抗体医薬などが挙げられる。
【0047】
ここで、分子標的薬としては、例えば、ALK阻害剤(例えば、Crizotinib、Ceritinib、Ensartinib、AlectinibおよびLorlatinib)、BCR-ABL阻害剤(例えば、ImatinibおよびDasatinib)、EGFR阻害剤(例えば、Erlotinib、EGF816、Afatinib、Osimertinib mesilate、GefitinibおよびRociletinib)、B-Raf阻害剤(例えば、Sorafenib、Vemurafenib、TAK-580、Dabrafenib、Encorafenib、LXH254、EmurafenibおよびBGB-3111)、VEGFR阻害剤(例えば、Bevacizumab、Apatinib、Lenvatinib、AfliberceptおよびAxitinib)、FGFR阻害剤(例えば、AZD4547、B-701、FGF401およびINCB054828)、c-Met阻害剤(例えば、Savolitinib、merestinib、Capmatinib、INC280およびGlesatinib)、Axl阻害剤(例えば、ONO-7475およびBGB324)、Mek阻害剤(例えば、Cobimetinib、Binimetinib、SelumetinibおよびTrametinib)、CDK阻害剤(例えば、Dinaciclib、Abemaciclib、Palbociclibおよびtrilaciclib)、Btk阻害剤(例えば、ONO-4059、IbrutinibおよびAcalabrutinib)、PI3K-δ/γ阻害剤(例えば、TGR-1202、INCB050465およびIPI-549)、JAK-1/2阻害剤(例えば、ItacitinibおよびRuxolitinib)、ERK阻害剤(例えば、SCH 900353)、TGFbR1阻害剤(例えば、Galunisertib)、Cancer cell stemness キナーゼ阻害剤(例えば、Amcasertib)、FAK阻害剤(例えば、Defactinib)、Syk/FLT3 dual阻害剤(例えば、TAK-659)、ATR阻害剤(例えば、AZD6738)、Wee1キナーゼ阻害剤(例えば、AZD1775)、マルチチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、Sunitinib、Pazopanib、Cabozantinib、Regorafenib、Nintedanib、SitravatinibおよびMidostaurin)、mTOR阻害剤(例えば、Temsirolimus、Everolimus、VistusertibおよびIrinotecan)、HDAC阻害剤(例えば、Vorinostat、Romidepsin、Entinostat、Chidamide、Mocetinostat、Citarinostat、PanobinostatおよびValproate)、PARP阻害剤(例えば、Niraparib、Olaparib、Veliparib、RucaparibおよびBeigene-290)、アロマターゼ阻害剤(例えば、ExemestaneおよびLetrozole)、EZH2阻害剤(例えば、tazemetostat)、ガレクチン-3阻害剤(例えば、GR-MD-02)、STAT3阻害剤(例えば、Napabucasin)、DNMT阻害剤(例えば、Azacitidine)、SMO阻害剤(例えば、Vismodegib)、Hsp90阻害剤(例えば、XL888)、γ-チューブリン特異的阻害剤(例えば、Glaziovianin AおよびPlinabulin)、HIF2α阻害剤(例えば、PT2385)、グルタミナーゼ阻害剤(例えば、CB-839)、E3リガーゼ阻害剤(例えば、Avadomide)、Nrf2活性化剤(例えば、Omaveloxolone)、アルギナーゼ阻害剤(例えば、CB-1158)、細胞周期阻害剤(例えば、Trabectedin)、Ephrin B4阻害剤(例えば、sEphB4-HAS)、IAP拮抗剤(例えば、Birinapant)、抗Her2抗体(例えば、Trastuzumab、Trastuzumab emtansine、PertuzumabおよびMargetuximab)、抗EGFR抗体(例えば、Cetuximab、Panitumumab、NecitumumabおよびNimotuzumab)、抗VEGF抗体(例えば、Bevacizumab)、抗VEGFR2抗体(例えば、Ramucirumab)、抗CD20抗体(例えば、Rituximab、Ofatumumab、UblituximabおよびObinutuzumab)、抗CD30抗体(例えば、Brentuximab Vedotin)、抗CD38抗体(例えば、Daratumumab)、抗DR5抗体(例えば、DS-8273a)、抗CA125抗体(例えば、Oregovomab)、抗DLL4抗体(例えば、Demcizumab)、抗フコシルGM1抗体(例えば、BMS-986012)、抗gpNMB抗体(例えば、Glembatumumab vedotin)、抗Mesothelin抗体(例えば、BMS-986148)、抗MMP9抗体(例えば、Andecaliximab)、抗GD2抗体(例えば、Dinutuximab-β)、抗c-Met抗体(例えば、ABT-399)、抗FOLR1抗体(例えば、Mirvetuximab soravtansine)、抗Ang2-VEGF二重特異性抗体(例えば、Vanucizumab)、抗CD30-CD16A二重特異性抗体(例えば、AFM13)、抗CD79b抗体(例えば、Polatuzumab Vedotin)、抗FAP抗体/IL-2融合蛋白質(例えば、RO6874281)、抗CEA抗体/IL-2融合蛋白質(例えば、Cergutuzumab amunaleukin)、抗CEA-CD3二重特異性抗体(例えば、RO6958688)、抗DLL3抗体(例えば、Rovalpituzumab tesirine)、抗CD3-CD19二重特異性抗体(例えば、Blinatumomab)および抗CD20-CD3二重特異性抗体(例えば、REGN1979)などが挙げられる。
【0048】
また、がん免疫治療薬としては、例えば、抗PD-1抗体(例えば、Nivolumab、Cemiplimab(REGN-2810)、Pembrolizumab(MK-3475)、Spartalizumab(PDR-001)、Tislelizumab(BGB-A317)、AMP-514(MEDI0680)、Dostarlimab(ANB011/TSR-042)、Toripalimab(JS001)、Camrelizumab(SHR-1210)、Genolimzumab(CBT-501)、Sintilimab(IBI308)、STI-A1110、ENUM 388D4、ENUM 244C8、GLS010、MGA012、AGEN2034、CS1003、BAT-1306、AK105、AK103、BI 754091、LZM009、CMAB819、Sym021、GB226、SSI-361、JY034、HX008、ISU106、ABBV181、BCD-100、PF-06801591、CX-188およびJNJ-63723283など)、抗PD-L1抗体(例えば、Atezolizumab(RG7446/MPDL3280A)、Avelumab(PF-06834635/MSB0010718C)、Durvalumab(MEDI4736)、BMS-936559、STI-1014、KN035、LY3300054、SHR-1316、CS1001(WBP3155)、MSB2311、BGB-A333、KL-A167、CK-301、AK106、AK104、ZKAB001、FAZ053、CBT-502(TQB2450)、JS003またはCX-072など)、PD-1拮抗剤(例えば、AUNP-12、BMS-M1~BMS-M10の各化合物、BMS-1、BMS-2、BMS-3、BMS-8、BMS-37、BMS-200、BMS-202、BMS-230、BMS-242、BMS-1001、BMS-1166、Incyte-1~Incyte-6の各化合物、CAMC-1~CAMC-4、RG_1およびDPPA-1など)、PD-L1/VISTA拮抗剤(例えば、CA-170など)、PD-L1/TIM3拮抗剤(例えば、CA-327など)、抗PD-L2抗体、PD-L1融合タンパク質、PD-L2融合タンパク質(例えば、AMP-224など)、抗CTLA-4抗体(例えば、Ipilimumab(MDX-010)、AGEN1884およびTremelimumabなど)、抗LAG-3抗体(例えば、Relatlimab(BMS-986016/ONO-4482)、LAG525、REGN3767およびMK-4280など)、LAG-3融合蛋白質(例えば、IMP321など)、抗Tim3抗体(例えば、MBG453およびTSR-022など)、抗KIR抗体(例えば、Lirilumab(BMS-986015/ONO-4483)、IPH2101、LY3321367およびMK-4280など)、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体(例えば、Tiragolumab(MTIG-7192A/RG-6058/RO-7092284)およびBMS-986207(ONO-4686))、抗VISTA抗体(例えば、JNJ-61610588など)、抗CD137抗体(例えば、Urelumab(ONO-4481/BMS-663513)およびUtomilumab(PF-05082566)など)、抗CSF-1R抗体もしくはCSF-1R阻害剤(例えば、Cabiralizumab(FPA008/BMS-986227/ONO-4687)、Emactuzumab(RG7155/RO5509554)、LY3022855、MCS-110、IMC-CS4、AMG820、Pexidartinib、BLZ945およびARRY-382など)、抗OX40抗体(例えば、MEDI6469、PF-04518600、MEDI0562、MEDI6383、Efizonerimod、GSK3174998、BMS-986178およびMOXR0916など)、抗HVEM抗体、抗CD27抗体(例えば、Varlilumab(CDX-1127)など)、抗GITR抗体(例えば、MK-4166、INCAGN01876、GWN323およびTRX-518など)、抗CD28抗体、抗CCR4抗体(例えば、Mogamulizumabなど)、抗B7-H3抗体(例えば、Enoblituzumabなど)、抗ICOSアゴニスト抗体(例えば、JTX-2011およびGSK3359609など)、抗CD4抗体(例えば、MTRX-1011A、TRX-1、Ibalizumab、huB-F5、Zanolimumab、4162W94、Clenoliximab、Keliximab、AD-519、PRO-542、Cedelizumab、TNX-355、Dacetuzumab、Tregalizumab、Priliximab、MDX-CD4、CAMPATH-9およびIT1208など)、抗DEC-205抗体/NY-ESO-1融合蛋白質(例えば、CDX-1401など)、抗SLAMF7抗体(例えば、Elotuzumabなど)、抗CD73抗体(例えば、OleclumabおよびBMS-986179など)、抗CD122抗体(例えば、NKTR-214など)、抗CD40アゴニスト抗体(例えば、ABBV-428、APX005MおよびRO7009789など)、IDO阻害剤(例えば、Epacadostat、IndoximodおよびBMS-986205など)、TLRアゴニスト(例えば、Motolimod、CMP-001、G100、IMO-2125、SD-101およびMEDI9197など)、アデノシンA2A受容体拮抗剤(例えば、Preladenant、AZD4635、PBF 509およびCPI-444など)、抗NKG2A抗体(例えば、Monalizumabなど)、抗CSF-1抗体(例えば、PD0360324など)、免疫増強剤(例えば、PV-10など)、IL-15スーパーアゴニスト(例えば、ALT-803など)、可溶性LAG3(例えば、IMP321など)、CD47拮抗剤(例えば、ALX148など)およびIL-12拮抗剤(例えば、M9241など)などが挙げられる。
【0049】
さらに、その他の抗体医薬としては、例えば、抗IL-1β抗体(例えば、Canakinumabなど)および抗CCR2抗体(例えば、Plozalizumabなど)などが挙げられる。
【0050】
[製剤]
本発明にかかる免疫チェックポイント阻害物質もしくは免疫チェックポイント阻害薬を単独であるいはそれらと他の薬剤を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤若しくは内服用液剤、経口投与における徐放性製剤、放出制御製剤または非経口投与のための注射剤、外用剤、吸入剤若しくは坐剤等として用いられる。
【0051】
経口投与のための内服用固形剤には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤及び顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセル及びソフトカプセル等が含まれる。
【0052】
このような内服用固形剤においては、ひとつ又はそれ以上の活性物質はそのままか、又は賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。更に、ゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0053】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤及びエリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつ又はそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノール、又はそれらの混液等)に溶解、懸濁又は乳化される。更に、この液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤又は緩衝剤等を含有していてもよい。
【0054】
また、経口投与における徐放性製剤もまた有効である。これらの徐放性製剤に用いるゲル形成物質とは、溶媒を含んで膨潤し、そのコロイド粒子が互いにつながり、三次元の網目構造をとり、流動性を失ったゼリー様の物体を形成し得る物質である。製剤上は、主に結合剤、増粘剤及び徐放性基剤として使用される。例えば、アラビアゴム、カンテン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアガム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース又はヒドロキシエチルメチルセルロース等が使用できる。
【0055】
注射剤または点滴のための輸液として製剤化されて用いられる場合、当該注射剤または輸液は、水溶液、懸濁液または乳濁液のいずれの形態であってもよく、また、用時に溶剤を加えることにより、溶解、懸濁または乳濁して使用されるように、薬学的に許容できる担体とともに、固形剤として製剤化されていてもよい。注射剤または点滴のための輸液に使用される溶剤として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖溶液および等張液(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、プロピレングリコール等の溶液)等を用いることができる。
【0056】
ここで、薬学的に許容できる担体としては、例えば、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤、防腐剤、pH調整剤および抗酸化剤等が挙げられる。安定剤としては、例えば、各種アミノ酸、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等を用いることができる。溶解補助剤としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート20(登録商標)、ポリソルベート80(登録商標)、HCO-50等)等を用いることができる。懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等を用いることができる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等を用いることができる。防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等を用いることができる。抗酸化剤として、例えば、(1)アスコルビン酸、システインハイドロクロライド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤、(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ハイドロキシアニソール、ブチル化ハイドロキシトルエン、レシチン、プロピルガレート、α-トコフェロール等のような油溶性抗酸化剤および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤等を用いることができる。
【0057】
注射剤または点滴のための輸液は、その最終工程において滅菌するかあるいは無菌操作法、例えば、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することによって製造することができる。また、注射剤または点滴のための輸液は、真空乾燥および凍結乾燥による無菌粉末(薬学的に許容できる担体の粉末を含んでいてもよい。)を、適切な溶剤に用時溶解して使用することもできる。
【0058】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤及び点鼻剤等が含まれる。これらはひとつ又はそれ以上の活性物質を含み、公知の方法又は通常使用されている処方により調製される。
【0059】
噴霧剤、吸入剤およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム或いはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば、米国特許第2868691号及び同第3095355号に詳しく記載されている。
【0060】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤又は吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0061】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(例えば、カルボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0062】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(例えば、ステアリン酸及びその塩等)、結合剤(例えば、デンプン、デキストリン等)、賦形剤(例えば、乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、パラベン等)又は吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0063】
吸入用液剤を投与する際には、通常噴霧器(例えば、アトマイザー、ネブライザー等)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0064】
軟膏剤は、公知又は通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつ又はそれ以上の活性物質を基剤に混和又は溶融させて調製される。軟膏基剤は、公知或いは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸又は高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤又はかぶれ防止剤から選ばれるものが単独で又は2種以上を混合して用いられる。更に、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤又は着香剤等を含んでいてもよい。
【0065】
ゲル剤は、公知又は通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつ又はそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて調製される。ゲル基剤は公知或いは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤及びかぶれ防止剤から選ばれるものが単独で又は2種以上を混合して用いられる。更に、保存剤、抗酸化剤又は着香剤等を含んでいてもよい。
【0066】
クリーム剤は、公知又は通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつ又はそれ以上の活性物質を基剤に溶融又は乳化させて製造される。クリーム基剤は、公知或いは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、高級アルコール(例えば、2-ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤及びかぶれ防止剤から選ばれるものが単独で又は2種以上を混合して用いられる。更に、保存剤、抗酸化剤又は着香剤等を含んでいてもよい。
【0067】
湿布剤は、公知又は通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつ又はそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知或いは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(例えば、尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(例えば、カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤及びかぶれ防止剤から選ばれるものが単独で又は2種以上を混合して用いられる。更に、保存剤、抗酸化剤又は着香剤等を含んでいてもよい。
【0068】
貼付剤は、公知又は通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつ又はそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知或いは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤及びかぶれ防止剤から選ばれるものが単独で又は2種以上を混合して用いられる。更に、保存剤、抗酸化剤又は着香剤等を含んでいてもよい。
【0069】
リニメント剤は、公知又は通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつ又はそれ以上の活性物を水、アルコール(例えば、エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤及び懸濁化剤等から選ばれるものが単独で又は2種以上に溶解、懸濁又は乳化させて調製される。更に、保存剤、抗酸化剤又は着香剤等を含んでいてもよい。
【0070】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつ又はそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤及び腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0071】
[検査・測定キット]
本発明は、本発明にかかるバイオマーカー1~7を各々構成する指標を測定のための検査または測定キットをも含む。当該検査または測定キットは、例えば、PD-1発現強度を測定する場合には、フローサイトメトリー、多重免疫組織染色法(例えば、蛍光またはマスサイトメトリー)、in situ ハイブリダイゼーション法(例えば、FISH、CISH、SISHおよびDISH)、マスサイトメトリー法、シングルセルRNAシーケンス法またはマスイメージング法に基づくものであってもよく、一方、CD8+T細胞数、PD-1発現CD8+T細胞数、Treg細胞数またはPD-1発現Treg細胞数を測定する場合には、フローサイトメトリーまたは免疫染色法に基づくものであってもよい。何れにおいても、フローサイトメトリーに基づく検査または測定キットが好ましい。
【0072】
本明細書において、明示的に引用される全ての特許文献及び非特許文献若しくは参考文献の内容は、全て本明細書の一部としてここに引用し得る。
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
【実施例】
【0073】
実施例1:腫瘍組織からのリンパ球の回収ならびにフローサイトメトリー法による各T細胞の同定
Nivolumab投与前の癌患者から腫瘍組織を採取し、gentleMACS Dissociator(MiltenyiBiotec社)による組織破砕にて腫瘍浸潤リンパ球を分離した。免疫チェックポイント阻害物質非投与前の同患者末梢血からFicollを用いた密度勾配遠心法にて末梢血単核細胞を調整した。分離後の腫瘍浸潤リンパ球及び末梢血単核細胞はウシ胎児血清が最終濃度2%になるように添加したPBS(以下、FACSBuffer)にて懸濁したのち、Human Fc-Receptor Binding Inhibitor(ThermoFisher社)を添加し4℃で10分間反応させた。その後各種細胞表面マーカー(CD3、CD8、CD4、CD45RAおよびPD-1)の蛍光色素標識抗体を添加して、4℃で15分間反応させた。FACS Bufferにて洗浄を行ったのち、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(ThermoFisher社)を用いて細胞の固定及び膜透過処理を行い、細胞内タンパク質FoxP3の蛍光色素標識抗体を添加して、4℃で30分間反応させた。FACS Bufferにて洗浄を行ったのち、各タンパク質の発現をLSRFortessaX-20(ベクトン・ディッキンソン社製)にて解析した。
【0074】
本実施例において、採取したリンパ球細胞のうち、CD3陽性、CD4陽性、CD8陰性およびFoxP3陽性細胞をTreg細胞とし、CD3陽性、CD4陽性、CD8陰性、CD45RA陰性およびFoxP3強陽性細胞をTreg細胞(Fr.II)とし、CD3陽性、CD4陰性およびCD8陽性細胞をCD8+T細胞とした。
【0075】
実施例2:Treg細胞およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現強度に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(非小細胞肺癌)
Nivolumab投与前における非小細胞肺癌患者15例の腫瘍組織由来のTreg細胞またはTreg細胞(Fr.II)ならびにCD8+T細胞の各々におけるPD-1発現強度を、フローサイトメトリー法にて測定し、その平均蛍光強度(MFI)を算出した。
【0076】
当該非小細胞肺癌患者のうち、Nivolumab投与により、7例がCRまたはPRとなる効果を示し、7例がSDまたはPDであった。残りの1例は評価不能であり、以下の評価から除外した。
【0077】
CRまたはPRを示した患者群(以下、「CR/PR群」として表す。)およびSDまたはPDを示した患者群(以下、「SD/PD群」として表す。)各々において、Treg細胞およびTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を各々算出した結果を
図1および2に示す。さらに、各群の同比率の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
なお、表中、比率Aは、Treg細胞でのPD-1発現MFIに対するCD8+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を表し、比率Bは、Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対するCD8+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を表す。
【0080】
以上より、比率Aにおいては、SD/PD群の上限値1.27を基準値(カットオフ値)とし、一方、比率Bにおいては、SD/PD群の上限値1.25を基準値とした場合、例えば、それら値以上の比率を示した非小細胞肺癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0081】
実施例3:Treg細胞およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現強度に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(胃癌)
Nivolumab投与前における胃癌患者17例の腫瘍組織由来のTreg細胞またはTreg細胞(Fr.II)ならびにCD8+T細胞の各々におけるPD-1発現強度を、フローサイトメトリー法にて測定し、そのMFIを算出した。
当該胃癌患者のうち、Nivolumab投与により、3例がPRとなる効果を示し、14例がSDまたはPDであった。
【0082】
PRを示した患者群およびSD/PD群各々において、Treg細胞およびTreg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を各々算出した結果を
図3および4に示す。さらに、各群の同比率の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表2に示す。
【0083】
【0084】
なお、表中、比率Aは、Treg細胞でのPD-1発現MFIに対するCD8+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を表し、比率Bは、Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対するCD8+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を表す。
【0085】
以上より、比率Aにおいては、SD/PD群の上限値0.74を基準値とし、一方、比率Bにおいては、SD/PD群の上限値0.70を基準値とした場合、例えば、それら値以上の比率を示した胃癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0086】
実施例4:CD8
+
T細胞におけるPD-1発現強度に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(非小細胞肺癌)
Nivolumab投与前における非小細胞肺癌患者15例(実施例2での患者群と同じ)の腫瘍組織由来のCD8+T細胞におけるPD-1発現強度を、フローサイトメトリー法にて測定し、そのMFIを算出した。
【0087】
CR/PR群およびSD/PD群において同MFIを各々算出した結果を
図5に示す。さらに、各群の同MFIの平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表3に示す。
【0088】
【0089】
以上より、SD/PD群の上限値807を基準値とした場合、例えば、その値以上のMFIを示した非小細胞肺癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0090】
実施例5:CD8
+
T細胞におけるPD-1発現強度に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(胃癌)
Nivolumab投与前における胃癌患者17例(実施例3での患者群と同じ)の腫瘍組織由来のCD8+T細胞におけるPD-1発現強度を、フローサイトメトリー法にて測定し、そのMFIを算出した。
【0091】
PR群およびSD/PD群において同MFIを各々算出した結果を
図6に示す。さらに、各群の同MFIの平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表4に示す。
【0092】
【0093】
以上より、SD/PD群の上限値410を基準値とした場合、例えば、その値以上のMFIを示した胃癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0094】
実施例6:CD8
+
T細胞におけるPD-1発現割合に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(1)(非小細胞肺癌)
Nivolumab投与前における非小細胞肺癌患者15例(実施例2での患者群と同じ)の腫瘍組織由来のCD8+T細胞におけるPD-1発現細胞数を、フローサイトメトリー法にて測定し、CD8+T細胞におけるそのうちのPD-1発現割合(%)を算出した。
【0095】
CR/PR群およびSD/PD群において、同割合を各々算出した結果を
図7に示す。さらに、各群の同割合の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表5に示す。
【0096】
【0097】
以上より、SD/PD群の上限値49.7を基準値とした場合、例えば、その値以上のPD-1発現割合を示した非小細胞肺癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0098】
実施例7:CD8
+
T細胞におけるPD-1発現割合に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(1)(胃癌)
Nivolumab投与前における胃癌患者17例(実施例3での患者群と同じ)の腫瘍組織由来のCD8+T細胞におけるPD-1発現細胞数をフローサイトメトリー法にて測定し、CD8+T細胞におけるそのうちのPD-1発現割合(%)を算出した。
【0099】
PR群およびSD/PD群において、同割合を各々算出した結果を
図8に示す。さらに、各群の同割合の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表6に示す。
【0100】
【0101】
以上より、PR群の下限値50.7を基準値とした場合、例えば、その値以上のPD-1発現割合を示した胃癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0102】
実施例8:CD8
+
T細胞におけるPD-1発現割合に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(2)(非小細胞肺癌:NSCLC)
Nivolumab投与前における非小細胞肺癌患者12例の腫瘍組織由来のCD8+T細胞におけるPD-1発現細胞数をフローサイトメトリー法にて測定し、CD8+T細胞におけるそのうちのPD-1発現割合(%)を算出した。
【0103】
Responder群(CRおよびPRの患者ならびに少なくとも6カ月間SDが維持された患者:7名)およびNon-Responder群(SDが6カ月未満であった患者およびPDの患者:5名)において、同割合を各々算出した結果を
図9左図に示す。さらに、各群の同割合の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表7に示す。
【0104】
【0105】
以上より、Non-Responder群の上限値51.8を基準値とした場合、例えば、その値以上のPD-1発現割合を示した非小細胞肺癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0106】
なお、同非小細胞肺癌患者をPD-1発現割合の中央値(52.9%)にて2群に分け、各群の無増悪生存期間(PFS)を算出した結果を
図10上段に示す。
【0107】
実施例9:CD8
+
T細胞におけるPD-1発現割合に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(2)(胃癌:GC)
Nivolumab投与前における胃癌患者23例の腫瘍組織由来のCD8+T細胞におけるPD-1発現細胞数をフローサイトメトリー法にて測定し、CD8+T細胞におけるそのうちのPD-1発現割合(%)を算出した。
【0108】
Responder群(7名)およびNon-Responder群(16名)(両群とも、実施例8における定義と同じ。)において、同割合を各々算出した結果を
図9右図に示す。さらに、各群の同割合の平均値および標準偏差に基づきに95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表8に示す。
【0109】
【0110】
以上より、Responder群の下限値56.8を基準値とした場合、例えば、その値以上のPD-1発現割合を示した胃癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0111】
なお、同胃癌患者をPD-1発現割合の中央値(55.8%)にて2群に分け、各群の無増悪生存期間(PFS)を算出した結果を
図10下段に示す。
【0112】
実施例10:Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(胃癌:GC)
Nivolumab投与前における胃癌患者23名の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現細胞数をフローサイトメトリー法にて測定し、Treg細胞(Fr.II)におけるそのうちのPD-1発現割合(%)を算出した。
【0113】
Responder群(7名)およびNon-Responder群(16名:両群とも、実施例8における定義と同じ。)において、同割合を各々算出した結果を
図11に示す。さらに、各群の同割合の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表9に示す。
【0114】
【0115】
以上より、Responder群の上限値58.4を基準値とした場合、例えば、その値未満の割合を示した胃癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0116】
なお、同胃癌患者をPD-1発現割合の中央値(62.3%)にて2群に分け、各群の無増悪生存期間(PFS)を算出した結果を
図12に示す。
【0117】
実施例11:Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現強度に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(非小細胞肺癌)
Nivolumab投与前における非小細胞肺癌患者12例の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)ならびにCD8+T細胞の各々におけるPD-1発現強度をフローサイトメトリー法にて測定し、その平均蛍光強度(MFI)を算出した。
【0118】
Responder群(7名)およびNon-Responder群(5名)(両群とも、実施例8における定義と同じ。)において、Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を各々算出した結果を
図13左図に示す。さらに、各群の同比率の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表10に示す。
【0119】
【0120】
以上より、Non-Responder群の上限値1.20を基準値とした場合、例えば、その値以上の比率を示した非小細胞肺癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0121】
実施例12:Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現強度に基づく、Nivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認(胃癌)
Nivolumab投与前における胃癌患者23例の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)ならびにCD8+T細胞の各々におけるPD-1発現強度をフローサイトメトリー法にて測定し、その平均蛍光強度(MFI)を算出した。
【0122】
Responder群(7名)およびNon-Responder群(16名)(両群とも、実施例8における定義と同じ。)において、Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対する、CD8
+T細胞でのPD-1発現MFIの比率を各々算出した結果を
図13右図に示す。さらに、各群の同比率の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表11に示す。
【0123】
【0124】
以上より、Non-Responder群の上限値0.95を基準値とした場合、例えば、その値以上の比率を示した胃癌患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できる。
【0125】
実施例13:Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現割合(%)に基づくNivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認
実施例8および9において解析・算出された、非小細胞肺癌患者(12名)および胃癌患者(23名)の各々の腫瘍組織由来のCD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を横軸に、実施例10に準じて解析・算出された、同患者群の各々の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)を縦軸にプロットした。その結果を
図14に示す。
【0126】
図14に示すように、CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)が40%以上であり、かつ、Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)に対する、CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)の比率が1.0以上である条件を設けることにより、Responder群とNon-Responder群を選別できることが確認された。従って、当該条件を満たす患者をNivolumabの効果がより期待できる患者として判定できることが確認された。
【0127】
また、
図15に示す解析結果から、同様に、CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)が40%以上であり、かつ、Treg細胞(Fr.II)でのPD-1発現MFIに対するCD8
+T細胞でのPD-1発現MFIとの比率が1.0以上である患者を、Nivolumabの効果がより期待できる患者として判定できることも確認された。
【0128】
なお、同非小細胞肺癌患者(12名)および胃癌患者(23名)の各々について、当該条件を満たす患者群「Group R」と満たさなかった患者群「The others」の2群に分け、各群の無増悪生存期間(PFS)を算出した結果を
図16に示す。
【0129】
実施例14:Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現強度ならびにPD-1発現割合(%)に基づくNivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認
Nivolumab投与前における非小細胞肺癌患者13名の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)ならびにCD8
+T細胞の各々におけるPD-1発現強度をフローサイトメトリー法にて測定し、その平均蛍光強度(MFI)を算出した。また、同腫瘍組織由来のCD8
+T細胞の各々におけるPD-1発現細胞数をフローサイトメトリー法にて測定し、CD8
+T細胞におけるそのうちのPD-1発現割合(%)を算出した。腫瘍容積変化率(%)を横軸に、同Treg細胞でのPD-1発現強度に対する、同CD8
+T細胞でのPD-1発現強度との比率に、同CD8
+T細胞のうちのPD-1発現細胞数の割合(%)を乗じて算出される数値を縦軸にプロットした。その結果を
図17に示す。なお、13名のうち1名は欠測データのため、結果から除いた。
【0130】
さらに、腫瘍容積が不変または縮小した群と増大した群の同比率の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表12に示す。
【0131】
【0132】
図17に示すように、例えば、同数値が60以上である条件(破線で示す)あるいは表12に示すように、同数値が46.0以上(増大した群の95%信頼区間の上限)である条件を設けることにより、腫瘍容積が不変または縮小した群と増大した群を選別できることが確認された。従って、当該条件を満たす患者をNivolumabの効果がより期待できる患者として判定できることが確認された。
【0133】
実施例15:Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現割合(%)に基づくNivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認
Nivolumab投与前における非小細胞肺癌患者13名の腫瘍組織由来Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+T細胞の各々におけるPD-1発現細胞数をフローサイトメトリー法にて測定し、同Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+T細胞の各々におけるそのうちのPD-1発現割合(%)を算出した。腫瘍容積変化率(%)を横軸に、同CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)の自乗を、同Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)で除した数値を縦軸にプロットした。その結果を
図18に示す。
【0134】
さらに、腫瘍容積が不変または縮小した群と増大した群の同比率の平均値および標準偏差に基づき95%信頼区間の上限と下限を算出した。その結果を表13に示す。
【0135】
【0136】
図18に示すように、例えば、同数値が60以上である条件(破線で示す)あるいは表13に示すように、同数値が44.4以上(増大した群の95%信頼区間の上限)である条件を設けることにより、腫瘍容積が不変または縮小した群と増大した群を選別できることが確認された。従って、当該条件を満たす患者をNivolumabの効果がより期待できる患者として判定できることが確認された。
【0137】
実施例16:Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+
T細胞における各々のPD-1発現割合(%)に基づくNivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認
実施例15と同様の方法により、非小細胞肺癌患者(18名)および胃癌患者(29名)各々の腫瘍組織由来Treg細胞(Fr.II)およびCD8
+T細胞の各々におけるPD-1発現割合(%)に基づき、同CD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)の自乗を、同Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)で除した数値を算出した。同非小細胞肺癌患者および胃癌患者の各々について、当該数値に基づく基準値(CUT)を各々25、40、60、90および100とした場合における、基準値陽性群(各基準値以上である群:BM+)および陰性群(各基準未満である群:BM-)各々のNivolumab投与後の無増悪生存期間(PFS)を
図19~22に示す。無増悪生存期間での評価では、非小細胞肺癌患者については、例えば、基準値が40以上である患者をNivolumabの効果がより期待できる患者として判定でき、一方、胃癌患者では、基準値が25以上である患者をNivolumabの効果がより期待できる患者として判定できることが確認された。
【0138】
実施例17:頭頚部癌患者におけるNivolumab有効性判定のバイオマーカーの確認
Nivolumab投与前における頭頚部癌患者3例の腫瘍組織由来のTreg細胞およびTreg細胞(Fr.II)ならびにCD8+T細胞に関して、それらのPD-1発現強度およびPD-1発現割合(%)を、各々、フローサイトメトリー法にて測定した。
【0139】
同頭頚部癌患者に対するNivolumab投与後の有効性判定の結果(Response)と本発明のバイオマーカー1の比率、本発明のバイオマーカー2のMFI値ならびに本発明のバイオマーカー3および4の各PD-1発現割合(%)を表14に示す。
【0140】
【0141】
表中、比率Aは、本発明のバイオマーカー1(Treg細胞である場合)の比率を表し、比率Bは、バイオマーカー1(Treg細胞(Fr.II)である場合)の比率を表す。算出値Cは、本発明のバイオマーカー2のMFI値を表し、算出値DおよびEは、各々本発明のバイオマーカー3および4のPD-1発現割合(%)を表す。
【0142】
Nivolumabが投与された頭頚部癌患者のうち、Responder群(2名)およびNon-Responder群(1名)(両群とも、実施例8における定義と同じ。)各々について、Treg細胞における本発明のバイオマーカー1の比率を各々算出した結果を
図23の左図に、Treg細胞(Fr.II)におけるバイオマーカー1の比率をその右図に示す。また、同様に、同頭頚部癌患者のResponder群(2名)およびNon-Responder群(1名)各々における本発明のバイオマーカー3およびTreg細胞(Fr.II)におけるバイオマーカー4の各PD-1発現割合(%)を
図24の左図および右図に各々示す。
【0143】
さらに、同頭頚部癌患者のResponder群(2名)およびNon-Responder群(1名)各々における本発明のバイオマーカー6の数値を
図25に示し、同頭頚部癌患者のResponder群(2名)およびNon-Responder群(1名)各々における本発明のバイオマーカー7(Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)に基づく。)の数値を
図26に示す。
【0144】
さらに、上記で解析・算出された、同頭頚部癌患者(3名)の腫瘍組織由来のCD8
+T細胞におけるPD-1発現割合(%)を横軸に、同患者群各々の腫瘍組織由来のTreg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現割合(%)を縦軸にプロットした結果を
図27に示す。
【0145】
実施例18:MESF値に基づく本発明のバイオマーカー1の比率の算出
非小細胞肺癌患者(2名)、頭頚部癌患者(1名)および大腸癌患者(1名)の腫瘍組織由来のTreg細胞またはTreg細胞(Fr.II)ならびにCD8+T細胞の各々におけるPD-1発現強度を、フローサイトメトリー法にて測定し、その平均蛍光強度(MFI)を算出した。また、蛍光標識ビーズを用いた公知の測定法により、抗原分子定量のための検量線を作成し、同バイオマーカーにおける「PD-1発現強度」から決定した細胞表面抗原分子の発現数(発現量)であるMolecules of Equivalent Soluble Fluorochrome(MESF)を算出した。当該MESF値ならびに当該MESF値に基づく本発明のバイオマーカー1の比率を表15に示す。
【0146】
【0147】
表中、算出値Aは、Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現強度(MFI)を示し、算出値Bは、CD8+T細胞におけるPD-1発現強度(MFI)を示す。算出値Cは、Treg細胞(Fr.II)におけるPD-1発現数(発現量)を示し、算出値Dは、CD8+T細胞におけるPD-1発現数(発現量)を示す。比率Aは、算出値Aに対する算出値Bの比率を表し、比率Bは、算出値Cに対する算出値Dの比率を表す。
バイオマーカー1の比率の算出において、PD-1発現MFIの代わりに、そのMESF値が使用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明により、癌組織内または血液中のTreg細胞とCD8+T細胞での各々のPD-1発現強度の比率を評価することにより、免疫チェックポイント阻害薬の効果がより期待できる悪性腫瘍患者を特定することができる。