(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】軌間整正器
(51)【国際特許分類】
E01B 35/02 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
E01B35/02
(21)【出願番号】P 2021074608
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】595135671
【氏名又は名称】第一建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】志村 泰昇
(72)【発明者】
【氏名】米山 泰広
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友昭
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-064211(JP,A)
【文献】特開2016-061129(JP,A)
【文献】特開平09-302602(JP,A)
【文献】特開2006-343260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車が通る一対のレール間の間隔である軌間を整正する軌間整正器であって、
一対のレールそれぞれを保持するレールキャッチ部が外側端部に設けられた一対のロッド部と、
前記一対のロッド部それぞれの内側端部の間に設けられ、前記一対のロッド部を近付けたり遠ざけて前記一対のレールキャッチ部の間隔を伸縮させて軌間整正を行う伸縮機構部とを備え、
前記伸縮機構部には、軌間整正を行う際の指標が設けられた指標板または前記指標板上を指し示す指標指示部を有する指標
指示板のいずれか一方が設けられ、
前記伸縮機構部によって前記伸縮機構部に対し移動するロッド部の内側端部には、前記指標板または前記指標
指示板の他方が設けられていることを特徴とする軌間整正器。
【請求項2】
請求項1に記載の軌間整正器において、
前記一対のレールキャッチ部は、それぞれ、レールの内側に当接して軌間を広げるレール内側当接板部と、レールの外側に当接して軌間を狭めるレール外側当接板部とがレールの短手方向の幅よりも大きい間隔を空けて設けられており、
前記指標板には、前記指標として、
前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール内側当接板部がレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際の指標となる軌間広げ時用指標と、
前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール外側当接板部がレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際の指標となる軌間狭め時用指標とが設けられていることを特徴とする軌間整正器。
【請求項3】
請求項2に記載の軌間整正器において、
前記指標板には、前記軌間広げ時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール内側当接板部がレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を示す軌間広げ時用正常軌間指示線が設けられている一方、
前記軌間狭め時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール外側当接板部がレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を示す軌間狭め時用正常軌間指示線とが設けられていることを特徴とする軌間整正器。
【請求項4】
請求項3に記載の軌間整正器において、
前記指標板には、前記指標として、さらに、
前記軌間広げ時用正常軌間指示線と前記軌間狭め時用正常軌間指示線との間の中間点に中間線が設けられていることを特徴とする軌間整正器。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか一の請求項に記載の軌間整正器において、
前記指標板には、前記軌間広げ時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール内側当接板部がレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を0として所定間隔の目盛りが設けられた軌間広げ時用ゲージが設けられている一方、
前記軌間狭め時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール外側当接板部がレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を0として所定間隔の目盛りが設けられた軌間狭め時用ゲージが設けられていることを特徴とする軌間整正器。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一の請求項に記載の軌間整正器において、
前記一対のロッド部の内、一方のロッド部の内側端部には、外周面にネジ部が設けられたネジ棒を回転可能に支持し、そのネジ棒を回転させる前記伸縮機構部が取り付けられている一方、他方のロッド部の内側端部には、前記伸縮機構部のネジ棒のネジ部に螺合する雌ネジ部が設けられており、
前記伸縮機構部は、
前記一方のロッド部の内側端部に固定された伸縮機構部本体と、
前記伸縮機構部本体に回転可能に支持され、工具が連結される工具連結部および駆動用歯部を有する駆動歯車と、
前記伸縮機構部本体に回転可能に支持されると共に、前記ネジ棒に固定され、前記駆動歯車の駆動用歯部に噛み合う従動用歯部を有し、前記駆動歯車の回転によって前記ネジ棒と一体に回転する従動歯車とを備え、
前記駆動歯車の回転によって前記従動歯車および前記ネジ棒が一体で回転することにより、前記一対のロッド部を近付けたり遠ざけて前記一対のレールキャッチ部の間隔を伸縮させるように構成されていることを特徴とする軌間整正器。
【請求項7】
請求項6に記載の軌間整正器において、
前記伸縮機構部の工具連結部には、電動工具の回転軸先端のビットやビットのチャック部が嵌合する電動工具嵌合用凹部が設けられていることを特徴とする軌間整正器。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の軌間整正器において、
前記ネジ棒には、さらに、そのネジ部に螺合するネジ部が内側に形成されたナット部と、そのナット部の外側に設けられたハンドル部とを有し、当該軌間整正器をレールから外した際に前記ハンドル部を把持して回転させることによって前記ナット部を前記伸縮機構部に当接させることによりダブルナットの原理により前記ネジ部の回転をロックする回転ロック体を設けたことを特徴とする軌間整正器。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一の請求項に記載の軌間整正器において、
前記指標板と前記指標指示板とは、それぞれ、前記伸縮機構部または前記伸縮機構部によって前記伸縮機構部に対し移動するロッド部の内側端部に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする軌間整正器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用レールの敷設や修復の際に使用し、レールの軌間変位(通り変位も含む。)を適切な状態に整える軌間整正器に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの各部には、列車の走行に伴い繰り返しかかる列車加重によって歪みと変形が頻繁に生じるため、レールには軌間変位・水準変位・高低変位等の様々なレール変位が生じ得る。これらレール変位が増大するとレール上を走行する列車の動揺が増大し、乗り心地が悪化するのみならず、走行安定性も損なわれる。このような事態に陥らないためには、日常の巡回検査や検測車による定期的な検査によってレール変位の状態を常に把握して、不良箇所は速やかに適切な整正作業を行い常に良好な状態に保つ必要がある。
【0003】
そのため、左右のレールに上からかぶせてジャッキ状の機構を回転させることにより左右のレールの間隔を調整する小型軽量な軌間整正器が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007―247328号公報
【文献】特開2016-61129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1,2に記載の軌間整正器は、軌間整正器を操作する作業員と、軌間の間隔を棒状のスケールによって計測して軌間整正器を操作する作業員に軌間整正量を指示する作業員の2名が必要であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、作業員一人でも容易に軌間整正を行うことができる軌間整正器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る軌間整正器は、列車が通る一対のレール間の間隔である軌間を整正する軌間整正器であって、一対のレールそれぞれを保持するレールキャッチ部が外側端部に設けられた一対のロッド部と、前記一対のロッド部それぞれの内側端部の間に設けられ、前記一対のロッド部を近付けたり遠ざけて前記一対のレールキャッチ部の間隔を伸縮させて軌間整正を行う伸縮機構部とを備え、前記伸縮機構部には、軌間整正を行う際の指標が設けられた指標板または前記指標板上を指し示す指標指示部を有する指標指示板のいずれか一方が設けられ、前記伸縮機構部によって前記伸縮機構部に対し移動するロッド部の内側端部には、前記指標板または前記指標指示板の他方が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記一対のレールキャッチ部は、それぞれ、レールの内側に当接して軌間を広げるレール内側当接板部と、レールの外側に当接して軌間を狭めるレール外側当接板部とがレールの短手方向の幅よりも大きい間隔を空けて設けられており、前記指標板には、前記指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール内側当接板部がレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際の指標となる軌間広げ時用指標と、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール外側当接板部がレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際の指標となる軌間狭め時用指標とが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記指標板には、前記軌間広げ時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール内側当接板部がレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を示す軌間広げ時用正常軌間指示線が設けられている一方、前記軌間狭め時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール外側当接板部がレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を示す軌間狭め時用正常軌間指示線とが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記指標板には、前記指標として、さらに、前記軌間広げ時用正常軌間指示線と前記軌間狭め時用正常軌間指示線との間の中間点に中間線が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記指標板には、前記軌間広げ時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール内側当接板部がレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を0として所定間隔の目盛りが設けられた軌間広げ時用ゲージが設けられている一方、前記軌間狭め時用指標として、前記一対のレールキャッチ部それぞれの前記レール外側当接板部がレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際に正常な軌間となる箇所を0として所定間隔の目盛りが設けられた軌間狭め時用ゲージが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記一対のロッド部の内、一方のロッド部の内側端部には、外周面にネジ部が設けられたネジ棒を回転可能に支持し、そのネジ棒を回転させる前記伸縮機構部が取り付けられている一方、他方のロッド部の内側端部には、前記伸縮機構部のネジ棒のネジ部に螺合する雌ネジ部が設けられており、前記伸縮機構部は、前記一方のロッド部の内側端部に固定された伸縮機構部本体と、前記伸縮機構部本体に回転可能に支持され、工具が連結される工具連結部および駆動用歯部を有する駆動歯車と、前記伸縮機構部本体に回転可能に支持されると共に、前記ネジ棒に固定され、前記駆動歯車の駆動用歯部に噛み合う従動用歯部を有し、前記駆動歯車の回転によって前記ネジ棒と一体に回転する従動歯車とを備え、前記駆動歯車の回転によって前記従動歯車および前記ネジ棒が一体で回転することにより、前記一対のロッド部を近付けたり遠ざけて前記一対のレールキャッチ部の間隔を伸縮させるように構成されていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記伸縮機構部の工具連結部には、電動工具の回転軸先端のビットやビットのチャック部が嵌合する電動工具嵌合用凹部が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記ネジ棒には、さらに、そのネジ部に螺合するネジ部が内側に形成されたナット部と、そのナット部の外側に設けられたハンドル部とを有し、当該軌間整正器をレールから外した際に前記ハンドル部を把持して回転させることによって前記ナット部を前記伸縮機構部に当接させることによりダブルナットの原理により前記ネジ部の回転をロックする回転ロック体を設けたことも特徴とする。
また、本発明に係る軌間整正器では、前記指標板と前記指標指示板とは、それぞれ、前記伸縮機構部または前記伸縮機構部によって前記伸縮機構部に対し移動するロッド部の内側端部に着脱可能に取り付けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る軌間整正器では、一対のレールそれぞれを保持するレールキャッチ部が外側端部に設けられた一対のロッド部と、その一対のロッド部それぞれの内側端部の間に設けられ、一対のロッド部を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部の間隔を伸縮させて軌間整正を行う伸縮機構部とを備え、伸縮機構部には、軌間整正を行う際の指標が設けられた指標板または指標板上を指し示す指標指示部を有する指標指示板のいずれか一方を設け、伸縮機構部によって伸縮機構部に対し移動するロッド部の内側端部には、指標板または指標指示板の他方を設けている。
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器では、作業員は指標指示板の指標指示部が指標板上において指し示す指標を参照しながら伸縮機構部の操作によって一対のロッド部を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部の間隔を伸縮させることにより軌間整正を行うことができるので、作業員一人でも容易に軌間整正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を、軌間整正を行うべきレールに装着した状態を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を、軌間整正を行うべきレールに装着した状態を示す平面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を構成する移動側ロッド部のレールキャッチ部を拡大して示す拡大正面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を構成する移動側ロッド部のレールキャッチ部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図5】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を構成する移動側ロッド部のレールキャッチ部を拡大して示す拡大側面図である。
【
図6】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を構成する移動側ロッド部の指標板を拡大して示す拡大平面図である。
【
図7】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を構成する伸縮機構部を拡大して示す拡大正面図である。
【
図8】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を構成する伸縮機構部を拡大して示す拡大平面図である。
【
図9】(a)~(c)それぞれ発明に係る実施形態1の軌間整正器を構成する回転ロック体の正面図、側面図、平面図である。
【
図10】本発明に係る実施形態1の軌間整正器を軌間が正常なレールに装着した際の指標板における指標指示板の指標指示部の指示状態を示す部分拡大平面図である。
【
図11】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態1の軌間整正器を軌間が正常なレールに装着した際の左右のレールキャッチ部の状態を示す拡大図である。
【
図12】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態1の軌間整正器を軌間が正常な軌間より狭くなったレールに装着し、レールを内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際の状態を示す左右それぞれのレールキャッチ部とレールとの位置関係を示す部分拡大正面面図である。
【
図13】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態1の軌間整正器を軌間が正常な軌間より狭くなったレールに装着し、レールを内側から外側に向かって押し広げて軌間整正を開始する際の指標板における指標指示板の指標指示部の指示状態の一例を示す部分拡大平面図、レールを内側から外側に向かって押し広げる軌間整正が完了した際の指標板における指標指示板の指標指示部の指示状態を示す部分拡大平面図である。
【
図14】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態1の軌間整正器を軌間が正常な軌間より広くなったレールに装着し、レールを外側から内側に向かって引いて軌間整正を行う際の状態を示す左右それぞれのレールキャッチ部とレールとの位置関係を示す部分拡大正面面図である。
【
図15】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態1の軌間整正器を軌間が正常な軌間より広くなったレールに装着し、レールを外側から内側に向かって引いて軌間整正を開始する際の指標板における指標指示板の指標指示部の指示状態の一例を示す部分拡大平面図、レールを外側から内側に向かって引く軌間整正が完了した際の指標板における指標指示板の指標指示部の指示状態を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態の軌間整正器1の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態はあくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
<本発明に係る実施の形態の軌間整正器1の構成>
本発明に係る実施の形態の軌間整正器1は、列車が通る一対のレール間の間隔である軌間を整正する機器であって、
図1や
図2等に示すように、一対のレールR,Rそれぞれを保持するレールキャッチ部11b,12bがそれぞれ外側端部に設けられた一対のロッド部である移動側ロッド部11および固定側ロッド部12と、伸縮機構部13と、回転ロック体14等を備えて構成される。尚、
図1において、2は、レールR,RそれぞれをマクラギM,Mに固定するためのレール締結装置であり、レールRの軌間整正を行う場合は、レール締結装置2を緩めた状態で行う。
【0012】
<移動側ロッド部11>
移動側ロッド部11は、棒状の移動側ロッド部本体11aと、移動側ロッド部本体11aの外側端部に設けられたレールキャッチ部11bと、移動側ロッド部本体11aの内側端部に形成され、伸縮機構部13の後述するネジ棒13bの外周に形成されたネジ部13a1が螺合する雌ネジ部11cと、移動側ロッド部本体11aの内側端部に設けられ指標板11dとを備える。
【0013】
(移動側ロッド部本体11a)
移動側ロッド部本体11aは、断面が正方形の棒状の鋼材等から構成されており、その長さは、軌間Gに応じた長さのものが用意されている。
【0014】
(レールキャッチ部11b)
レールキャッチ部11bは、
図3~
図5等に示すように固定側ロッド部12の外側端部に設けられた一対のレールキャッチ部取付板部11b1,11b1と、レールキャッチ部取付板部11b1,11b1間に溶接等して設けられ、レールRの頭部に上方から被さるコ字形状のレールキャッチ部本体11b2と、一対のレールキャッチ部取付板部11b1,11b1それぞれの外側に設けられ、平面視、コ字形状で、レールRの上を走行するローラ11b31を回転可能に支持する回転軸11b32が設けられた一対のローラ支持部11b3,11b3とを有する。尚、一対のローラ支持部11b3,11b3には、ローラ11b31が回転軸11b32を中心に回転する際、回転軸11b32の軸心方向にスライドしても容易に初期位置に戻るようにローラ11b31の両側にスプリング11b33が設けられている。
【0015】
レールキャッチ部本体11b2は、レールR頭部の上側面(踏み面)に当接するレール上側当接板部11b21と、レールRの頭部の内側に位置して軌間整正を行う際、レールR頭部の内側面に当接して軌間を広げるレール内側当接板部11b22と、レールRの頭部の外側に位置して軌間整正を行う際、レールR頭部の外側面に当接して軌間を狭めるレール外側当接板部11b23とを備え、正面視コ字形状に形成されている。
【0016】
ここで、レールRの上方からレールキャッチ部本体11b2を容易に被せることができるように、レール内側当接板部11b22とレール外側当接板部11b23との間の間隔W1は、
図3に示すように、レールRの頭部の幅W2よりも大きく、すなわちW1>W2の関係になるように形成している
【0017】
(雌ネジ部11c)
雌ネジ部11cは、移動側ロッド部11の内側端部に設けられており、伸縮機構部13の後述するネジ棒13bの外周に形成されたネジ部13a1が螺合し、ネジ棒13bが伸縮機構部13によって回転することによって移動側ロッド部11を固定側ロッド部12に対し進退させてレールキャッチ部11b,12b間の間隔を伸縮させる。
【0018】
(指標板11d)
指標板11dは、
図6等に示すようにネジ部側ロッド部本体11bの内側端部であってネジ棒13bの上方にネジやビス等によって基端部が固定される指標板本体11d1と、指標板本体11d1の上面に接着剤や両面テープ等によって貼り付けられた軌間広げ時用ゲージ11d2および軌間狭め時用ゲージ11d3とを有する。
【0019】
指標板本体11d1には、
図6等に示すように一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール内側当接板部11b22,12b22をレールR,R頭部の内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際に指標指示板13fの指標指示部13f1が正常な軌間G
Cとなる箇所を示す軌間広げ時用正常軌間指示線11d11が軌間広げ時用指標として表記されていると共に、一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール外側当接板部11b23,12b23をレールR,R頭部の外側に当接させて軌間を内側から外側に向かって狭めて軌間整正を際に指標指示板13fの指標指示部13f1が正常な軌間G
Cとなる箇所を示す軌間狭め時用正常軌間指示線11d12が軌間狭め時用指標として表記されている。
【0020】
また、指標板本体11d1には、
図6等に示すように軌間広げ時用正常軌間指示線11d11と軌間狭め時用正常軌間指示線11d12との間に、さらに、一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール内側当接板部11b22,12b22およびレール外側当接板部11b23,12b23がそれぞれレールR,R頭部の内側および外側に当接しないことを示す中間線11d13を表記している。これにより指標板本体11d1の中間線11d13に指標指示板13fの指標指示部13f1を合わせておくと、レールR,R間が正常な軌間Gの場合には、移動側ロッド部11および固定側ロッド部12それぞれのレールキャッチ部11b,12bがレールR,Rの上から簡単に被せることができると共に、取り外すことが可能となる。
【0021】
軌間広げ時用ゲージ11d2は、レールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール内側当接板部11b22,12b22によって軌間を内側から外側に向かって広げる際の軌間調整量を計測する際に参照する軌間広げ時用指標であって、
図6等に示すように1mm間隔等の所定間隔の目盛りが設けられて、基準点である0は、指標板本体11d1に刻まれた軌間広げ時用正常軌間指示線11d11に合わせて、指標板本体11d1にネジやビス等によって取り付けられている。
【0022】
軌間狭め時用ゲージ11d3は、レールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール外側当接板部11c23,12b23によって軌間を外側から内側に向かって狭める際の軌間調整量を計測する際に参照する軌間広げ時用指標であって、
図6等に示すように1mm間隔等の所定間隔の目盛りが設けられて、基準点である0は、指標板本体11d1に刻まれた軌間狭め時用正常軌間指示線11d12を0に合わせて、指標板本体11d1にネジやビス等によって取り付けられている。
【0023】
(固定側ロッド部12)
固定側ロッド部12は、棒状の固定側ロッド部本体12aと、固定側ロッド部本体12aの外側端部に設けられた固定側ロッド部12側のレールRを保持するレールキャッチ部12bと、固定側ロッド部本体12aの内側端部に設けられた伸縮機構固定部12c等を備えており、伸縮機構部13にボルトおよびナット等によって伸縮機構部13が固定されている。
【0024】
(固定側ロッド部本体12a)
固定側ロッド部本体12aは、断面が正方形の棒状の鋼材等から構成されており、その長さ
【0025】
(レールキャッチ部12b)
レールキャッチ部12bは、移動側ロッド部11側のレールキャッチ部12bと同様に構成されており、一対のレールキャッチ部取付板部12b1,12b1と、レールRの頭部に上方から被さるコ字形状のレールキャッチ部本体12b2と、一対のレールキャッチ部取付板部12b1,12b1それぞれの外側に設けられ、平面視、コ字形状で、レールRの上を走行するローラ12b31を回転可能に支持する回転軸12b32が設けられた一対のローラ支持部12b3,12b3とを備え、ローラ12b31の両側にはスプリング12b33が設けられている。
【0026】
そして、レールキャッチ部本体12b2もレールキャッチ部本体12b2と同様に、レール当接板部12b21と、レール内側当接板部12b22と、レール外側当接板部12b23とを備え、正面視コ字形状に形成されており、レールRの上からレールキャッチ部本体12b2を容易に被せることができるように、レール内側当接板部12b22とレール外側当接板部12b23との間の間隔W1は、レールRの頭部の幅W2よりも大きく形成している
【0027】
(伸縮機構部13)
伸縮機構部13は、
図7等に示すように、固定側ロッド部12の内側端部の伸縮機構固定部12cにボルトおよびナット等により固定される伸縮機構部本体13aと、伸縮機構部本体13aに回転可能に支持されたネジ棒13bと、伸縮機構部本体13aに回転可能に支持される共に、ネジ棒13bに中心が固定され、外歯部13c1が設けられた従動傘歯車13cと、伸縮機構部本体13aに回転可能に支持される共に、従動傘歯車13cの外歯部13c1に螺合する外歯部13d1を有し、従動傘歯車13cとネジ棒13bを一体で回転させる駆動傘歯車13dと、駆動傘歯車13dの上部に設けられ、電動工具3の回転軸3aの先端部が嵌合する嵌合凹部13c1が設けられた工具連結部13eと、伸縮機構部本体13aに固定される指標指示板13f等を備える。
【0028】
ネジ棒13bは、外周面にネジ部13b1が形成されており、基部に溝部が形成され、Cリング等によって伸縮機構部本体13aに回転可能に支持される一方、先端部は移動側ロッド部11の雌ネジ部11cに螺合して、従動傘歯車13cと一体で回転して移動側ロッド部11に対し固定側ロッド部12を進退動させ、それぞれの外側端部のレールキャッチ部11b,12b間の間隔を広げたり狭めて軌間の整正を行う。
【0029】
駆動傘歯車13dも、固定側ロッド部12の伸縮機構部本体13aに回転可能に支持されており、電動工具3の回転軸3aの回転によって回転して、従動傘歯車13cを回転させる。
【0030】
工具連結部13eは、
図7や
図8等に示すように、伸縮機構部本体13aに近い下方から二面幅が34mm(工具は35mm幅)の大径頭部13e1と、二面幅が31mm(工具は32mm幅)の中径頭部13e2と、二面幅が29mm(工具は30mm幅)の小径頭部13e3との3段で、大径頭部13e1、中径頭部13e2および小径頭部13e3の軸部11から遠ざかる程、二面幅が小さくなり、かつ、軸心を同一にして一体で段階的に形成されている。
【0031】
ここで、工具連結部13eを構成する大径頭部13e1~小径頭部13e3の二面幅を34mm、31mm、29mmとした理由は、鉄道現場、特に保線作業では、使用率の高い工具(スパナやボックスレンチのソケット)のサイズが35mm、32mm、30mmであるため、作業員がそれらのいずれか1種持っていれば締結が可能で、作業性が向上するからである。
【0032】
また、工具連結部13eを構成する大径頭部13e1~小径頭部13e3の二面幅を、鉄道現場(特に保線作業)では、使用率の高い工具(スパナやボックスレンチのソケット)のサイズを35mm、32mm、30mmよりもそれぞれ1mmずつ小さくした理由は、これらのサイズの工具を素早く掛け易くして作業効率を向上させるため、大径頭部13e1~小径頭部13e3それぞれの二面幅(頭幅)を対応する工具先端の幅よりも意図的に小さくしている。
【0033】
そしてさらに、工具連結部13eの先端の小径頭部13e3には、当該工具連結部13eの二面幅よりも小さく、インパクドドライバー等の電動工具3の回転軸3a先端のビットやビットのチャック部(図示せず。)が嵌合する電動工具嵌合用凹部13e4を設けている。
【0034】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1は、工具連結部13eによって35mm、32mm、30mm等のスパナやレンチ等だけではなく、インパクドドライバー等の電動工具3も連結して使用することができる。
【0035】
(指標指示板13f)
指標指示板13fは、伸縮機構部本体13aの移動側ロッド部11側の先端部に設けられ、移動側ロッド部11の指標板11d上方に重なって指標板11d上の目盛りを指示するもので、指標指示板13fの先端部が指標指示部13f1となる。
【0036】
(回転ロック体14)
回転ロック体14は、軌間整正器1をレールR,Rから外した際にハンドル部14bを把持して回転させることによってナット部14aを伸縮機構部13に当接させることによりダブルナットの原理により一対のロッド部である移動側ロッド部11と固定側ロッド部12との回転をロックするもので、
図9(a)~(c)に示すように、伸縮機構部13によって回転するネジ棒13bのネジ部13a1に螺合するネジ部14a1が内側に形成されたナット部14aと、そのナット部14aの外側に溶接等によって接合されたハンドル部14bとを有する。尚、回転ロック体14は、運搬等する際に移動側ロッド部11と固定側ロッド部12との回転を防止するもので、本発明に必須のものでなく、省略しても勿論良い。
【0037】
<実施形態の軌間整正器1の動作>
次に、以上のように構成された本発明に係る実施形態の軌間整正器1による軌間整正の動作について説明する。
【0038】
(軌間Gに応じた実施形態の軌間整正器1の調整等)
レールR,R頭部の内側面間の間隔である軌間Gとしては、いわゆる狭軌であれば1067mm、新幹線等の標準軌であれば1435mm等というように、鉄道会社等によって各種の長さが予め決められている。
【0039】
そのため、まずは、予め軌間整正すべきレールR,Rの軌間Gに応じた長さを有する移動側ロッド部本体11bと固定側ロッド部本体12bとを選択する。
【0040】
次に、レールキャッチ部11,12それぞれのレール内側当接板部11b22,12b22とレール外側当接板部11b23,12b23の内側面間の間隔をW1、レールRの頭部の幅をW2とする。
【0041】
また、
図1および
図2に示すように固定側ロッド部12b側のレールキャッチ部12のレール内側当接板部12b22の内側面から伸縮機構部13に設けられた指標指示板13fの指標指示部13f1までの長さをL1、
図2に示すように移動側ロッド部11側のレールキャッチ部11のレール内側当接板部11b22の内側面から指標板11dの軌間広げ時用正常軌間指示線11d11までの長さをL2、移動側ロッド部11側のレールキャッチ部11のレール内側当接板部11b22の内側面から指標板11dの軌間狭め時用正常軌間指示線11d12までの長さをL3、移動側ロッド部11側のレールキャッチ部11のレール内側当接板部11b22の内側面から指標板11dの中間線11d13までの長さをL4とする。
【0042】
そして、軌間整正すべきレールRの軌間に応じて、次の(1)~(3)の式が成立するように予め軌間整正器1を構成する移動側ロッド部本体11bと固定側ロッド部本体12bの長さや、移動側ロッド部本体11bにおける指標板11dの取付位置、伸縮機構部13における指標指示板13fの取付位置、ネジ棒13bの長さ等を調整しておく。尚、GCは、正常な軌間Gであり、狭軌のレールRの場合には1067mm、標準軌のレールRの場合には1435mmであり、鉄道会社や鉄道の種類等によって決められている。
【0043】
(1)L1+L2=GC
(2)L1+L3+2・W1=GC+2・W2
(3)L1+L4+W1=GC+W2
【0044】
(保管時や運搬時)
本発明に係る実施形態の軌間整正器1の保管時や運搬時は、作業員は回転ロック体14のハンドル部14bを把持して回転させることによってナット部14aを伸縮機構部13に当接させることによりダブルナットの原理により一対のロッド部である移動側ロッド部11と固定側ロッド部12との回転をロックすることができる。
【0045】
これにより、移動側ロッド部11と固定側ロッド部12とが回転しないため、実施形態の軌間整正器1の保管時や運搬の際における軌間整正器1の使用勝手を向上させることができる。
【0046】
(レールR,Rを内側から外側へ押し広げて軌間整正する場合)
そして、以上のように軌間整正すべきレールR,Rの軌間Gに応じて上述の(1)~(3)の式が成立するように移動側ロッド部本体11bと固定側ロッド部本体12bの長さや、移動側ロッド部本体11bにおける指標板11dの取付位置、伸縮機構部13における指標指示板13fの取付位置、ネジ棒13bの長さ等を調整が完了すると、軌間整正すべきレールR,Rの上に移動側ロッド部11と固定側ロッド部12それぞれの外側端部のレールキャッチ部11b,12bのレールキャッチ部本体11b2,12b2を被せる。
【0047】
その際、レールR,Rの軌間Gが正常な軌間G
Cの場合は、レールキャッチ部本体11b2,12b2のレール内側当接板部11b22とレール外側当接板部11b23との間の間隔W1は、レールRの頭部の幅W2よりも大きく形成されており、しかも
図10に示すように指標指示板13fの指標指示部13f1の位置が指標板11dの指標板本体11d1の中間線11d13に一致している場合には、上記(3)式のL1+L4+W1=G
C+W2が成立する。
【0048】
そのため、この場合には、例えば、
図11(a),(b)に示すように各レールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール内側当接板部11b22,12b22およびレール外側当接板部11b23,12b23がそれぞれレールR,R頭部の内側および外側に当接しない状態でレールキャッチ部本体11b2,12b2をセットしたり、取り外すことが可能となるので、軌間整正の作業効率を向上させることができる。
【0049】
(レールR,Rを内側から外側へ押し広げて軌間整正する場合)
しかし、本発明に係る実施形態の軌間整正器1をレールR,R上で転がして進めていき、例えば、レールR,Rの軌間Gが例えば1067mm等の正常な軌間G
Cより狭くなっていて、例えば、
図12(a),(b)に示すように左右のレールR,R頭部それぞれがレールキャッチ部本体11b2,12b2のレール内側当接板部11b22,12b22側に偏ってきた場合は、レールR,Rを内側から外側へ押し広げて軌間整正する必要が生じる。
【0050】
図13(a)は、レールR,Rの軌間Gが例えば正常な軌間G
Cより狭くなり、
図12(a),(b)に示すように左右のレールキャッチ部本体11b2,12b2のレール内側当接板部11b22,12b22の内側面にそれぞれレールR,Rの頭部を当接させた状態における指標板11dの指標板本体11d1において指標指示板13fの先端部の指標指示部13f1の指し示す位置の一例を示している。
図13(a)では、レールR,Rの軌間Gが例えば正常な軌間G
Cより6mm前後狭くなった状態を示している。
【0051】
そのため、伸縮機構部13の工具連結部13eを回転させて移動側ロッド部11と固定側ロッド部12との間を伸長させて左右のレールキャッチ部11b,12bのレールキャッチ部本体11b2,12b2のレール内側当接板部11b22,12b22をそれぞれレールR,R頭部の内側に当接させて、指標指示板13fの先端部の指標指示部13f1が軌間広げ時用ゲージ11d2の0の位置または指標板本体11d1に刻まれた軌間広げ時用正常軌間指示線11d11に一致するまで、レールR,Rを内側から外側へ押し広げる。
【0052】
そして、
図13(b)に示すように指標指示板13fの先端部の指標指示部13f1が軌間広げ時用ゲージ11d2の0の位置または指標板本体11d1に刻まれた軌間広げ時用正常軌間指示線11d11に一致すると、6mm前後だけ軌間Gの幅を広げたことになり、G=G
Cとなる。
【0053】
そのため、上記(1)式であるL1+L2=GC=Gの関係が成立し、その箇所の軌間Gが例えば1067mm等の正常な軌間GCと一致して軌間整正が完了したことになる。
【0054】
これにより、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、作業員は指標指示板13fの指標指示部13f1が指標板11d上の軌間広げ時用ゲージ11d2の0の位置や軌間広げ時用正常軌間指示線11d11に位置するように伸縮機構部13を操作し一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を広げることにより軌間整正を行うことができる。
【0055】
(レールR,Rを内側から外側へ押し広げて軌間整正する場合)
レールキャッチ部11b,12b外側のローラ11b31,12b3でレールR,Rを転がして走行しながら次の軌間整正箇所へ移動した際に、レールR,Rの軌間Gが例えば1067mm等の所定の軌間G
Cより広くなっている箇所があると、
図14(a),(b)に示すように左右のレールR,Rにレールキャッチ部11b,12bのレールキャッチ部本体11b2,12b2のレール外側当接板部11b23,12b23側に偏り、レールR,Rを外側から内側へ引いて狭める軌間整正する必要が生じる。
【0056】
図15(a)は、レールR,Rの軌間Gが例えば正常な軌間G
Cより広くなり、
図14(a),(b)に示すように左右のレールキャッチ部本体11b2,12b2のレール外側当接板部11b23,12b23の内側面にそれぞれレールR,Rの頭部を当接させた状態における指標板11dの指標板本体11d1において指標指示板13fの先端部の指標指示部13f1の指し示す位置の一例を示している。
図15(a)では、レールR,Rの軌間Gが例えば正常な軌間G
Cより5mm程広くなった状態を示している。
【0057】
そのため、伸縮機構部13の工具連結部13eに電動工具の先端部を嵌合して回転させ、
図14(a),(b)に示すようにレールキャッチ部11b,12bのレールキャッチ部本体11b2,12b2のレール外側当接板部11b23,12b23をそれぞれレールR,R頭部の外側に当接させて、指標指示板13fの先端部の指標指示部13f1が軌間狭め時用ゲージ11d3の0の位置または指標板本体11d1に刻まれた軌間狭め時用正常軌間指示線11d12に一致するまで、レールR,Rを外側から内側へ引き寄せる。
【0058】
そして、
図15(b)に示すように指標指示板13fの先端部の指標指示部13f1が軌間狭め時用ゲージ11d3の0の位置または指標板本体11d1に刻まれた軌間狭め時用正常軌間指示線11d12に一致すると、5mm前後だけ軌間Gの幅を狭めたことになり、G=G
Cとなる。
【0059】
そのため、上記(2)式であるL1+L3+2・W1=GC+2・W2の関係が成立し、その箇所の軌間Gが例えば1067mm等の正常な軌間GCと一致して軌間整正が完了したことになる。
【0060】
これにより、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、作業員は指標指示板13fの指標指示部13f1が指標板11d上において指し示す目盛りや軌間狭め時用正常軌間指示線11d12等を参照しながら伸縮機構部13を操作して移動側ロッド部11を固定側ロッド部12の方へ引寄せて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を収縮させて軌間整正を行うことができる。
【0061】
そして、指標指示板13fの先端部の指標指示部13f1が軌間狭め時用ゲージ11d3の0の位置または指標板本体11d1に刻まれた軌間狭め時用正常軌間指示線11d12に一致すると、レールR,Rの間隔が例えば1067mm等の正常な軌間GCと一致して軌間整正が完了したことになる。そのため、次の軌間整正箇所に移動する。
【0062】
(ある箇所の軌間整正が完了し、次の軌間整正箇所に移動する場合)
ある箇所の軌間整正が完了し、次の軌間整正箇所に移動する場合、本発明に係る実施形態の軌間整正器1には、レールキャッチ部11b,12bの外側には、それぞれ、ローラ11b31,12b3が設けられているため、レールR,Rを転がして走行しながら移動することができる。
【0063】
<本発明に係る実施形態の軌間整正器1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の軌間整正器1は、一対のレールR,Rそれぞれを保持するレールキャッチ部11b,12bが外側端部に設けられた一対のロッド部である移動側ロッド部11と固定側ロッド部12と、移動側ロッド部11と固定側ロッド部12それぞれの内側端部の間に設けられ、移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させて軌間整正を行う伸縮機構部13とを備え、伸縮機構部13には、軌間整正を行う際の指標が設けられた指標板11d上を指し示す指標指示部13f1を有する指標指示板13fを設ける一方、伸縮機構部13によってスライドする移動側ロッド部11の内側端部には、指標板11dを設けている。
【0064】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1は、作業員は指標指示板13fの指標指示部13f1が指標板11d上において指し示す各種指標等を参照しながら伸縮機構部13を操作して移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させて軌間整正を行うことができるので、作業員一人でも容易に軌間整正を行うことができる。
【0065】
また、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、一対のレールキャッチ部11b,12bは、それぞれ、レールの内側に当接して軌間を広げるレール内側当接板部11b22,12b22と、レールの外側に当接して軌間を狭めるレール外側当接板部11b23,12b23とがレールRの短手方向の幅W2よりも大きい間隔W1を空けて設けており、指標板11dの指標板本体11d1には、指標として、一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール内側当接板部11b22,12bをレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際の指標である軌間広げ時用正常軌間指示線11d11や軌間広げ時用ゲージ11d2等の軌間広げ時用指標と、一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール外側当接板部1b22,12bをレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際の指標である軌間狭め時用正常軌間指示線11d12や軌間広げ時用ゲージ11d2等の軌間狭め時用指標を設けている。
【0066】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、作業員は指標指示板13fの指標指示部13f1が指標板11d上において指し示す軌間広げ時用正常軌間指示線11d11や軌間広げ時用ゲージ11d2等の軌間広げ時用指標、または軌間狭め時用正常軌間指示線11d12や軌間広げ時用ゲージ11d2等の軌間狭め時用指標を参照しながら伸縮機構部13を操作して移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させて軌間整正を行うことができるので、作業員一人でも容易に軌間整正を行うことができる。
【0067】
また、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、指標板11dの指標板本体11d1には、軌間広げ時用指標として一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール内側当接板部11b22,12bをレールの内側に当接させて軌間を内側から外側に向かって広げて軌間整正を行う際に正常な軌間GCとなる箇所を示す軌間広げ時用正常軌間指示線11d11を設ける一方、軌間狭め時用指標として一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール外側当接板部1b22,12bをレールの外側に当接させて軌間を外側から内側に向かって狭めて軌間整正を行う際に正常な軌間GCとなる箇所を示す軌間狭め時用正常軌間指示線11d12を設けている。
【0068】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、作業員は指標指示板13fの指標指示部13f1が指標板11d上において指し示す軌間広げ時用正常軌間指示線11d11または軌間狭め時用正常軌間指示線11d12を参照しながら伸縮機構部13を操作して移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させて軌間整正を行うことができるので、作業員一人でも容易かつ正確に軌間整正を行うことができる。
【0069】
また、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、指標板11dの指標板本体11d1には、指標として、さらに、軌間広げ時用正常軌間指示線11d11と軌間狭め時用正常軌間指示線11d12との間に、一対のレールキャッチ部11b,12bそれぞれのレール内側当接板部11b22,12b22およびレール外側当接板部11b23,12b23がそれぞれレールR,R頭部の内側および外側に当接しないことを示す中間線11d13を設けている。
【0070】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、作業員は指標指示板13fの指標指示部13f1が指標板11d上において指し示す中間線11d13を参照しながら軌間整正を行うことができるので、作業員一人でも正常なGCの箇所を容易に把握することができると共に、軌間GCが正常なレールR,Rに対し容易に装着することができる。
【0071】
また、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、指標板11の指標板本体11d1には、さらに、軌間広げ時用指標として軌間Gを内側から外側に向かって広げる際の軌間調整量を示すため軌間広げ時用正常軌間指示線11d11の箇所を0にして所定間隔の目盛りが設けられた軌間広げ時用ゲージ11d2を設ける一方、軌間狭め時用指標として軌間Gを外側から内側に向かって狭める際の軌間調整量を示すため軌間狭め時用正常軌間指示線11d12の箇所を0にして所定間隔の目盛りが設けられた軌間狭め時用ゲージ11d3を設けている。
【0072】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、作業員は伸縮機構部13を操作して移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させて軌間整正を行う際に、軌間広げ時用正常軌間指示線11d11と軌間狭め時用正常軌間指示線11d12だけなく、指標指示板13fの指標指示部13f1が指標板11d上において指し示す軌間広げ時用ゲージ11d2または軌間狭め時用ゲージ11d3とを参照することにより軌間整正量も認識することが可能となるので、作業員一人でも軌間整正量を認識しながら軌間整正を容易かつより正確に行うことができる。
【0073】
また、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、固定側ロッド部12の内側端部には、外周面にネジ部13b1が設けられたネジ棒13bを回転可能に支持し、そのネジ棒13bを回転させる伸縮機構部13を取り付けている一方、移動側ロッド部11の内側端部には、伸縮機構部13のネジ棒13bのネジ部13b1に螺合する雌ネジ部11cを設け、伸縮機構部13は、固定側ロッド部12の内側端部の伸縮機構固定部12cにボルトおよびナット等により固定され、ネジ棒13bを回転可能に支持する伸縮機構部本体13aと、伸縮機構部本体13aに回転可能に支持される共に、ネジ棒13bに中心が固定され、外歯部13c1が設けられた従動傘歯車13cと、伸縮機構部本体13aに回転可能に支持される共に、従動傘歯車13cの外歯部13c1に螺合する外歯部13d1を有し、従動傘歯車13cとネジ棒13bを一体で回転させる駆動傘歯車13dと、駆動傘歯車13dの上部に設けられ、電動工具3の回転軸3aの先端部が嵌合する嵌合凹部13c1が設けられた工具連結部13eと、伸縮機構部本体13aに固定される指標指示板13f等を備えている。
【0074】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、ネジ棒13bを回転させる伸縮機構部13は、従動傘歯車13cや駆動傘歯車13d、電動工具3の回転軸3aの先端部が嵌合する嵌合凹部13c1が設けられた工具連結部13e等を備えているため、作業員一人でも容易に軌間整正を行うことができる。
【0075】
また、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、伸縮機構部13の工具連結部13eには、電動工具3の回転軸3a先端のビットやビットのチャック部が嵌合する電動工具嵌合用凹部13e4を設けている。
【0076】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、市販されているインパクトドライバー等の電動工具3等を使用して移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させて軌間整正を行うことができるので、従来のようにターンバックルのレバーを手動で回転させる場合と比較して軌間整正の作業負担を軽減することができる。
【0077】
また、本発明に係る実施形態の軌間整正器1では、伸縮機構部13によって回転するネジ棒13bには、さらに、そのネジ部13a1に螺合するネジ部が内側に形成されたナット部14aと、そのナット部14aの外側に設けられたハンドル部14bとを有する回転ロック体14を設けている。
【0078】
そのため、本発明に係る実施形態の軌間整正器1によれば、軌間整正器1をレールR,Rから外した際に、回転ロック体14のハンドル部14bを把持して回転させることによってナット部14aを伸縮機構部13に当接させ、ダブルナットの原理により一対のロッド部である移動側ロッド部11と固定側ロッド部12との回転をロックして固定することができるので、作業員が軌間整正器1を掴んで運搬等する際に移動側ロッド部11と固定側ロッド部12との回転を防止することが可能となり、この点でも作業員一人ででも容易に軌間整正を行うことができる。
【0079】
尚、上記実施形態の説明では、指標指示板13fおよび指標板11dは、それぞれ、伸縮機構部13と移動側ロッド部11の内側端部にネジやビス等により固定して設けて説明したが、本発明では、これに限らず、磁石等を利用して伸縮機構部13と移動側ロッド部11の内側端部に着脱可能に取り付けるように構成しても勿論良い。
【0080】
また、上記実施形態の説明では、伸縮機構部13には指標指示板13fを固定し、移動側ロッド部11には指標板11dを固定して説明したが、本発明ではこれに限らず、伸縮機構部13側には指標板11dを設け、移動側ロッド部11には指標指示板13fを設けるようにしても勿論良い。
【0081】
また、上記実施形態の説明では、指標板11dに軌間広げ時用指標として軌間広げ時用正常軌間指示線11d11および軌間広げ時用ゲージ11d2を設ける一方、軌間狭め時用指標として軌間狭め時用正常軌間指示線11d12および軌間狭め時用ゲージ11d3を設けて説明したが、本発明では、これに限らず、指標板11dに軌間広げ時用指標として軌間広げ時用正常軌間指示線11d11または軌間広げ時用ゲージ11d2のいずれか一方のみを設け、また軌間狭め時用指標として軌間狭め時用正常軌間指示線11d12または軌間狭め時用ゲージ11d3のいずれか一方を設けるようにしても勿論良い。
【0082】
また、上記実施形態の説明では、移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させて軌間整正を行う伸縮機構部として、伸縮機構部本体13aやネジ棒13b、従動傘歯車13c、駆動傘歯車13d、工具連結部13e等を備えた伸縮機構部13はものを一例に説明したが、本発明ではこれに限らず、従来のターンバックルを伸縮機構部として採用して、ターンバックルによって移動側ロッド部11と固定側ロッド部12を近付けたり遠ざけて一対のレールキャッチ部11b,12bの間隔を伸縮させるようにしても良く、この場合には、ターンバックルの回転体側に指標指示板13fを設ける一方、ターンバックルの回転体によって移動(スライド)するロッド部側に指標板11dを設けて構成すれば、上述した本実施形態の軌間整正器1と同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 軌間整正器
11 移動側ロッド部
11a 移動側ロッド部本体
11b レールキャッチ部
11b1,11b1 レールキャッチ部取付板部
11b2 レールキャッチ部本体
11b21 レール上側当接板部
11b22 レール内側当接板部
11b23 レール外側当接板部
11b3 ローラ支持部
11b31 ローラ
11b32 回転軸
11b33 スプリング
11c 雌ネジ部
11d 指標板
11d1 指標板本体
11d11 軌間広げ時用正常軌間指示線(軌間広げ時用指標)
11d12 軌間狭め時用正常軌間指示線(軌間狭め時用指標)
11d13 中間線(指標)
11d2 軌間広げ時用ゲージ(軌間広げ時用指標)
11d3 軌間狭め時用ゲージ(軌間狭め時用指標)
12 固定側ロッド部
12a 固定側ロッド部本体
12b レールキャッチ部
12b1,12b1 レールキャッチ部取付板部
12b2 レールキャッチ部本体
12b21 レール上側当接板部
12b22 レール内側当接板部
12b23 レール外側当接板部
12b3 ローラ支持部
12b31 ローラ
12b32 回転軸
12b33 スプリング
12c 伸縮機構固定部
13 伸縮機構部
13a 伸縮機構部本体
13b ネジ棒
13b1 ネジ部
13c 従動傘歯車
13c1 外歯部
13d 駆動傘歯車
13d1 外歯部
13e 工具連結部
13e1 大径頭部
13e2 中径頭部
13e3 小径頭部
13e4 電動工具嵌合用凹部
13f 指標指示板
13f1 指標指示部
14 回転ロック体
14a ナット部
14b ハンドル部
2 レール締結装置
3 電動工具
3a 回転軸
R レール
M マクラギ