(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】メチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤及びメチオニンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 309/15 20060101AFI20231121BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20231121BHJP
C07C 319/28 20060101ALI20231121BHJP
C07C 323/58 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C07C309/15
C07F7/18 Y
C07C319/28
C07C323/58
(21)【出願番号】P 2022539205
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 CN2020122134
(87)【国際公開番号】W WO2021135523
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】201911412213.4
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517223657
【氏名又は名称】浙江新和成股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG NHU CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 418 Dadao West Road, Xinchang Shaoxing, Zhejiang 312500, China
(73)【特許権者】
【識別番号】517223646
【氏名又は名称】山東新和成▲アン▼基酸有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG NHU AMINO ACID CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 02999 Zhujiang West Third Road, Yangzi Street, Binhai District Weifang, Shandong 262737, China
(73)【特許権者】
【識別番号】519164770
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】NO.20, YUGU ROAD, XIHU DISTRICT, HANGZHOU, ZHEJIANG 310027, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 志 榮
(72)【発明者】
【氏名】尹 紅
(72)【発明者】
【氏名】王 志 軒
(72)【発明者】
【氏名】陳 聰
(72)【発明者】
【氏名】張 双 双
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ユ▼
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-515458(JP,A)
【文献】特表2016-534144(JP,A)
【文献】特開平10-306071(JP,A)
【文献】特公昭46-019610(JP,B1)
【文献】LI,S. et al.,Synthesis and Properties of Modified Polysiloxanes Defoaming Agents,Journal of Changchun University of Science and Technology,中国,2006年,Vol. 29,No. 2,pp. 91-93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 309/00
C07F 7/00
C07C 319/00
C07C 323/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤であって、下記一般式(1)で表される構造式を有するA成分と、下記一般式(2)で表される構造式を有するB成分と、シリコーンオイルであるC成分とを含む混合物である、添加剤。
RCON(CH
3)CH
2CH
2SO
3Na(1)
(式(1)中、Rは、飽和もしくは不飽和のC
7~C
36炭化水素基で
ある。)
【化1】
(式(2)中、X及びYはそれぞれ1~30の整数であり、R
1~R
4は互いに同一でも異なっていてもよく、かつ、独立して水素、C
1~C
3アルキル基、飽和もしくは不飽和の脂肪族ヒドロキシル基、又は飽和もしくは不飽和のポリエーテル基を表す。なお、R
1~R
4の少なくとも1つは、飽和もしくは不飽和のポリエーテル
基である。
【請求項2】
前記A成分が、オクタノイルメチルタウリンナトリウム、デカノイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミチルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウム、リノレオイルメチルタウリンナトリウム、リノレノイメチルタウリンナトリウム、エルコイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、大豆油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、ピーナッツ油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、ゴマ油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、マスタード油アシルメチルタウリンナトリウム、硬化牛脂脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、及び硬化植物油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウムからなる群から選択される1種又は複数種で
ある、請求項1に記載のメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤。
【請求項3】
前記B成分の分子量が1,000~10,000で
ある、請求項1に記載のメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤。
【請求項4】
前記B成分のHLB値が7~15で
ある、請求項1~3のいずれか1項に記載のメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤。
【請求項5】
前記B成分がポリエーテルグラフト修飾シリコーンオイルで
ある、請求項1~4のいずれか1項に記載のメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤。
【請求項6】
前記C成分が、ジメチルシリコーンオイル、ヒドロキシシリコーンオイル及び水素含有シリコーンオイルの1種又は複数種を含
む、請求項1~5のいずれか1項に記載のメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤。
【請求項7】
A成分、B成分及びC成分を含む含水混合物である添加剤であって、前記添加剤の合計質量に対して、前記A成分の含有量が1~8wt%であり、前記B成分の含有量が0.5~8wt%であり、前記C成分の含有量が0.5~4wt%で
ある、請求項1~6のいずれか1項に記載のメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の添加剤の存在下で、メチオニンの結晶化及び/又は再結晶化を行うことを含む、メチオニンの製造方法。
【請求項9】
(1)添加剤及び二酸化炭素の存在下で、5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液を反応させ、結晶化を行うことで、粗メチオニン結晶を得る工程と、
(2)上記粗メチオニン結晶と、水及び/又は結晶母液とをメチオニン懸濁液に調製した上、添加剤を加え、得られた添加剤含有メチオニン溶液を再結晶化し、メチオニン結晶製品を得る工程と、
を含む、請求項8に記載のメチオニンの製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)において、前記添加剤の使用量が前記メチオニン塩水溶液の合計質量に対して50ppm~500ppmで
ある、請求項9に記載のメチオニンの製造方法。
【請求項11】
前記工程(2)において、前記メチオニン懸濁液の濃度が8~15wt%で
ある、請求項9又は10に記載のメチオニンの製造方法。
【請求項12】
さらに、前記工程(2)において、前記添加剤の使用量が前記メチオニン懸濁液の合計質量に対して100ppm~1000ppmで
ある、請求項9~11のいずれか1項に記載のメチオニンの製造方法。
【請求項13】
前記工程(2)において、前記結晶化は、冷却による降温又は蒸発による降温で行われ、
蒸発による降温で行われる際に、蒸発により発生した蒸気が、蒸気圧縮機で加圧昇温された後に、メチオニン懸濁液の昇温・溶解工程に用いられる、請求項9~12のいずれか1項に記載のメチオニンの製造方法。
【請求項14】
前記工程(2)で使用される晶析装置は、攪拌型晶析装置、強制循環晶析装置、オスロ型晶析装置及びドラフトチューブバッフル晶析装置を含
む、請求項9~13のいずれか1項に記載のメチオニンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチオニンの結晶化プロセスで用いられる添加剤及びその使用方法に関し、特に、結晶化プロセスで用いられ、消泡作用のある化合物と結晶成長を調整する化合物とを含む添加剤及びメチオニンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチオニンは、動物の成長に必要なアミノ酸の1つであり、タンパク質の合成に関与するとともに、唯一の硫黄含有アミノ酸でもある。アミノ酸のバランスを補うために飼料の栄養強化剤として用いられる。
【0003】
現在、メチオニンは主に化学方法により合成され、原料経路で分類すると、マロネート法、アクロレイン法、アミノラクトン法等に大別できる。比較して言えば、シアン化水素及びその塩とメチオナールとを縮合して5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを製造し、さらに、炭酸カリウムで加水分解し、二酸化炭素で酸性化晶析する合成経路が最も有利である。
【0004】
上記の合成プロセスでは、気体状態の二酸化炭素で酸性化晶析するため、非常に深刻な泡立ち現象が起こり、結晶化プロセスが連続且つ順調に進めることができない。また、反応に基づく結晶化又は冷却再結晶化により得られるメチオニン結晶はいずれも、結晶形が鱗片状であり、かさ密度が小さく、流動性が悪く、粉じんが発生しやすく、その後の使用が不便になる。
【0005】
反応に基づく結晶化プロセスにおける泡立ち現象を制御し、よりよい結晶形を得るために、EP1256571A1には、二酸化炭素でメチオニンアルカリ金属塩の水溶液からメチオニンを放出する方法が開示されている。この方法において、メチオニンを放出する前に、メチオニンアルカリ金属塩を含む水溶液に消泡剤を加える。泡立ちを抑制できるすべての化合物を消泡剤として用いることができ、好ましくは、消泡剤を分散液として溶液に加えることで、消泡剤のメチオニンの反応に基づく結晶化プロセスに対する作用を高め、特に葉状又は薄片状の結晶生成物への形成を抑制し、球状結晶が得られると共に、乾燥後にほとんど粉末が生じない。
【0006】
JPH04-244056A、JPH11-158140A、JPH04-169570Aにおいて、住友社は、二酸化炭素で反応して結晶化を行う際に、添加剤を加えることを提案している。各特許文献で用いられた添加剤がそれぞれ、カゼイン又は半合成セルロース系水溶性高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシルエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含む。)、凝集剤(ソルビタンモノラウレート、ポリビニルアルコール又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、及びポリビニルアルコールである。最終的に得られたメチオニン結晶は顆粒状又は厚い板状であり、かさ密度が0.55~0.60g/ccであった。
【0007】
JPH10-306071A及びJP2004-292324Aにおいて、曹達社は、ポリビニルアルコール又はグルテリンを添加することで、DL-メチオニン含有溶液からDL-メチオニン結晶を析出させ、粒状であるDL-メチオニン結晶製品を製造することを提案している。当該製品の比容積が1.3~1.6mL/gであった。
【0008】
上記の方法により得られた粒状のメチオニン結晶は、実質上鱗片状結晶の凝集体であり、そのかさ密度が小さく、乾燥時や使用時に押されると、崩れやすく、粉じんが発生しやすいため、その後の使用が不便になる。
【0009】
JPS46-019610において、住友社は、再晶析工程でも添加剤及び消泡剤を加える必要があるメチオニンの晶析方法を提案している。この方法において、添加剤が非イオン界面活性剤(例えば、オキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン又はソルビタン脂肪酸エステル)又は陰イオン界面活性剤(例えば、ノナンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩又はジアルキルスルフォンコハク酸塩)である。しかし、製品はかさ密度が低かった。
【0010】
高いかさ密度を有するメチオニン結晶を得るために、CN1599712A(登録公告番号:CN1332926C)において、ドイツのデグサ社は、5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインをメチオニンに変換し且つ二酸化炭素を導入する前に、添加剤(1)と添加剤(2)とを添加することを提案している。ここで、添加剤(1)は、下記一般式
CnH2n+xCOO-[CH2CH2O]m-H
[式中、nは9~19、mは、1~10の範囲であり、xは1、-1、-3、-5であり、且つ2n+x≧1。]で表され、
添加剤(2)は、改質化セルロースから選択され、具体的には、メチルセルロース、メチルヒドロキシセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム、又はカルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロースナトリウムであり、好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。この方法により得られたメチオニン再結晶製品はよい結晶形を示し、かさ密度が最大で620g/Lであった。
【0011】
CN104203912Aにおいて、ドイツのエボニック社は、二酸化炭素を、粗5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインの加水分解製品に供給して、粗メチオニン結晶を得ることを提案している。そして、精製のために、この粗メチオニンの水溶液を、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、又は異なる非イオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の混合物である結晶化添加剤及び消泡剤の存在下で再結晶化する。結晶化添加剤が添加剤(1)及び添加剤(2)から選択される1つである。そのうち、結晶化添加剤(1)が下記3つの構造式で示される化合物の1つ、又はそれらの混合物である。
【0012】
R1-O-SO3M
R2-O-(CH2)n-SO3M
R3-(O-C2H4)n-O-SO3M
[式中、nは1~12の整数であり、好ましくは2であり、Mはナトリウム又はカリウムであり、R1、R2及びR3は、直鎖、分枝鎖又は環状の、飽和又は不飽和のC8~C20アルキル基又はアリール基であり、好ましくは直鎖の、飽和のC8~C18アルキル基である。]
結晶化添加剤(2)が、ソルビタン脂肪酸エステル又は異なるソルビタン脂肪酸エステルの混合物である。ポリエトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、特にポリエトキシル化トリステアリン酸ソルビタンが好ましい。
【0013】
消泡剤では、シリコーンオイルが含まれ、さらに、乳化剤として使用する成分(好ましくはポリエトキシル化脂肪酸とポリエトキシル化脂肪族アルコールとの混合物)も含まれている。消泡剤では、さらにシリカが含まれている。
【0014】
この方法により得られたメチオニンのかさ密度が537~651g/Lであった。
CN105764886Aにおいて、ドイツのエボニック社は、結晶化添加剤及び消泡剤の存在下で、D,L-メチオニンを結晶化させることを提案している。使用される結晶化添加剤では、非イオン性若しくはアニオン性の界面活性剤や多種の非イオン性若しくはアニオン性の界面活性剤の混合物が含まれ、アニオン性界面活性剤が、下記3つの構造式で示される化合物のいずれか1つ又はこれらの混合物である。
【0015】
CnH2n+1-O-SO3Na
[式中、nは12~18である。] (Sulfopon(R) 1218G,Oleochemicals)
CnH2n+1-O-C2H4-SO3Na
[式中、nは8~18である。](Hostapon(R) SCI85,Clariant)
CnH2n+1-(OC2H4)2-O-SO3Na
[式中、nは12である。](Disponil(R) FES27,Cognis)
非イオン性界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルまたは多種のソルビタン脂肪酸エステルの混合物であり、特に好ましくはポリエトキシ化ソルビタントリステアレートである。
【0016】
また、消泡剤では、シリコーンオイルが含まれ、乳化剤として使用する成分(好ましくはポリエトキシ化脂肪酸とポリエトキシ化脂肪アルコールとの混合物)も含まれ、更に、シリカも含まれている。
【0017】
この方法により得られたメチオニン再結晶製品のかさ密度が最大で651g/Lであった。
【0018】
上記の方法で用いられる添加剤はすべてエステル結合を有し、高いメチオニンの配合温度条件では、加水分解しやすく、調整効果や消泡効果がなくなるため、結晶母液をリサイクルする際に、結晶化プロセスが不安定となり、連続結晶化プロセスの安定的進行に影響を与えられる。また、メチオニン結晶製品のかさ密度について、さらに向上する余地がある。
【発明の概要】
【0019】
上記の文献に存在している問題を解決すべく、本発明は、メチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤及びメチオニンの製造方法を提供する。この添加剤を用いることで、高いかさ密度を有し、流動性に優れるメチオニン結晶製品を製造できる。
【0020】
本発明は、メチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤であって、下記一般式(1)で表される構造式を有するA成分と、下記一般式(2)で表される構造式を有するB成分と、シリコーンオイルであるC成分とを含む混合物である、添加剤を提供する。
【0021】
RCON(CH3)CH2CH2SO3Na(1)
(式(1)中、Rは、飽和もしくは不飽和のC7~C36炭化水素基であり、好ましくはC7~C36アルキル基又はアルケニル基である。)
【0022】
【0023】
(式(2)中、X及びYはそれぞれ1~30の整数であり、R1~R4は互いに同一でも異なっていてもよく、かつ、独立して水素、C1~C3アルキル基、飽和もしくは不飽和の脂肪族ヒドロキシル基、又は飽和もしくは不飽和のポリエーテル基を表す。なお、R1~R4の少なくとも1つは、飽和もしくは不飽和のポリエーテル基であって、より好ましくは該ポリエーテル基は、下記一般式(3)で表される基である。
【0024】
-C3H6O(C2H4O)a(C3H6O)bR0(3)
(式(3)中、aは0~50の整数を表し、bは0~50の整数を表し、R0は水素、アルキル基、アシルオキシ基、又はアルコキシ基を表す。))
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤において、前記A成分が、オクタノイルメチルタウリンナトリウム、デカノイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミチルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウム、リノレオイルメチルタウリンナトリウム、リノレノイメチルタウリンナトリウム、エルコイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、大豆油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、ピーナッツ油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、ゴマ油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、マスタード油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、硬化牛脂脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、及び硬化植物油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウムからなる群から選択される1種又は複数種である。
【0025】
好ましくは、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミチルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、及びパルミトイルメチルタウリンナトリウムからなる群から選択される1種又は複数種である。
【0026】
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤において、前記B成分の分子量が1,000~10,000であり、好ましくは3,000~6,000である。
【0027】
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤において、前記B成分のHLB値が7~15であり、好ましくは9~12である。
【0028】
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤において、前記B成分がポリエーテルグラフト修飾シリコーンオイルであり、好ましくはアリルポリオキシアルキルエーテル系グラフト修飾シリコーンオイルである。
【0029】
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤において、前記C成分が、ジメチルシリコーンオイル、ヒドロキシシリコーンオイル及び水素含有シリコーンオイルの1種又は複数種を含み、好ましくは前記C成分の25℃における動的粘度が90mm2/s~1500mm2/sである。
【0030】
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤は、A成分、B成分及びC成分を含む含水混合物であって、前記添加剤の合計質量に対して、前記A成分の含有量が1~8wt%であり、前記B成分の含有量が0.5~8wt%であり、前記C成分の含有量が0.5~4wt%であり、好ましくは、前記A成分の含有量が2~6wt%であり、前記B成分の含有量が2~6wt%であり、前記C成分の含有量が1~3wt%である。
【0031】
本発明はさらに、本発明で提供される添加剤の存在下で、メチオニンの結晶化及び/又は再結晶化を行うことを含むメチオニンの製造方法を提供する。
【0032】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法は、
(1)添加剤及び二酸化炭素の存在下で、5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液を反応させ、結晶化を行うことで、粗メチオニン結晶を得る工程と、
(2)上記粗メチオニン結晶と、水及び/又は結晶母液とをメチオニン懸濁液に調製した上、添加剤を加え、得られた添加剤含有メチオニン溶液を再結晶化し、メチオニン結晶製品を得る工程と、
を含む。
【0033】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法によれば、前記工程(1)において、添加剤の使用量が前記メチオニン塩水溶液の合計質量に対して50ppm~500ppmであり、好ましくは70ppm~300ppmである。
【0034】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法によれば、前記工程(2)において、前記メチオニン懸濁液の濃度が8~15wt%であり、好ましくは10~13wt%である。
【0035】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法によれば、さらに、前記工程(2)において、前記添加剤の使用量が前記メチオニン懸濁液の合計質量に対して100ppm~1000ppmであり、好ましくは200ppm~500ppmである。
【0036】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法よれば、前記工程(2)において、前記結晶化は、冷却による降温又は蒸発による降温で行われ、好ましくは蒸発による降温で行われる。
【0037】
結晶化が蒸発による降温で行われる際に、蒸発により発生した蒸気が蒸気圧縮機で加圧昇温された後に、メチオニン懸濁液の昇温・溶解工程に用いられる。
【0038】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法において、前記工程(2)で使用される晶析装置は、攪拌型晶析装置、強制循環晶析装置(FC晶析装置)、オスロ型晶析装置(OSLO晶析装置)及びドラフトチューブバッフル晶析装置(DTB晶析装置)を含み、好ましくはFC晶析装置、OSLO晶析装置及びDTB晶析装置である。
【0039】
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤及びメチオニンの製造方法は下記有利な効果を有する。
【0040】
本発明で提供される添加剤は使用が便利であり、また、メチオニンを製造するための反応に基づく結晶化及び再結晶化において、乳化系を形成する際に、均一に乳化でき、系が安定して分層しにくい。さらに、本発明で提供される添加剤は、安定性に優れ、連続でリサイクルする際に分解しがたく、長期にわたって安定的に使用でき、連続結晶化プロセスに適する。本発明に係る添加剤で製造されるメチオニン結晶は、良好な結晶形を示し、かさ密度が大きく、流動性に優れ、その後の使用が便利であり、かさ密度が786g/L以上であり、場合によって802g/Lと高くなる。また、本発明に係るメチオニンの製造方法によれば、結晶化システムは、明らかな泡立ち現象が観察されずに、長期間連続して安定的に稼働することができ、メチオニン製品の結晶化プロセスを円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、実施例1に係るメチオニン結晶の顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、実施例2に係るメチオニン結晶の顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、実施例3に係るメチオニン結晶の顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、実施例4に係るメチオニン結晶の顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、実施例5に係るメチオニン結晶の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明で提供されるメチオニンの製造プロセスで用いられる添加剤は、A成分と、B成分と、C成分とを含む混合物である。さらに、本発明の好ましい実施の形態において、この添加剤は含水混合物の形態で用いられる。
【0043】
前記A成分が、下記一般式(1)で表される構造式を有する結晶成長調整剤である。
RCON(CH3)CH2CH2SO3Na(1)
(式(1)中、Rは、飽和もしくは不飽和のC7~C36炭化水素基であり、好ましくはC7~C36アルキル基又はアルケニル基である。)
前記A成分の具体的な例として、オクタノイルメチルタウリンナトリウム、デカノイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミチルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウム、リノレオイルメチルタウリンナトリウム、リノレノイメチルタウリンナトリウム、エルコイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、大豆油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、ピーナッツ油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、ゴマ油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、マスタード油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、硬化牛脂脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウム、及び硬化植物油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウムからなる群から選択される1種又は複数種が挙げられる。
【0044】
好ましくは、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミチルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、及びパルミトイルメチルタウリンナトリウムからなる群から選択される1種又は複数種である。
【0045】
上記A成分としての具体的な化合物は、通常、市販により入手できる。
本発明で提供される添加剤において、A成分は、刺激性が非常に低く、毒性がなく、生分解しやすいという特徴を有し、生分解性に優れている。この物質は、動物体内の酵素によって脂肪酸及びアミノ酸に分解され、動物体に利用できる。さらに、従来技術で使用されるエステル系添加剤と比較して、本発明に係る添加剤は、より優れた加水分解安定性を有し、系内で長期間循環することができ、結晶成長への調整作用を安定して発揮することができる。
【0046】
上記B成分が、主に消泡作用及び乳化作用を有する乳化型消泡剤であり、下記一般式(2)で表される構造式を有する。
【0047】
【0048】
(式(2)中、X及びYはそれぞれ1~30の整数であり、R1~R4は互いに同一でも異なっていてもよく、かつ、独立して水素、C1~3アルキル基、飽和もしくは不飽和の脂肪族ヒドロキシル基、又は飽和もしくは不飽和のポリエーテル基を表す。R1~R4の少なくとも1つは、飽和もしくは不飽和のポリエーテル基を表す場合、より好ましくは下記一般式(3)で表される基である。)
-C3H6O(C2H4O)a(C3H6O)bR0(3)
(式中、aは0~50の整数を表し、bは0~50の整数を表し、R0は水素、アルキル基、アシルオキシ基、又はアルコキシ基を表す。)
前記B成分の分子量が1,000~10,000であり、好ましくは3,000~6,000であり、そのHLB値が7~15であり、好ましくは9~12である。
【0049】
前記B成分が好ましくはポリエーテル修飾シリコーンオイルである。より好ましい実施の形態において、B成分がアリルポリオキシアルキルエーテル系グラフト修飾シリコーンオイルであり、より好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルグラフトシリコーンオイルである。
【0050】
前記B成分が、水中で自己乳化するか、または、水と任意の比率で混和することができるため、メチオニンの結晶化及びろ過において、メチオニン製品の表面に付着することなくほとんど水相に入る。これゆえ、その消泡作用が長時間安定して維持することができる。B成分は、本発明の条件下で使用される場合、消泡、抑泡及び乳化機能を果たせるが、主に抑泡及び乳化機能を果たす。
【0051】
メチオニンの製造において、粗メチオニン結晶を得る際に、二酸化炭素を導入することが必要なため、大量の泡が生成される。また、メチオニンの再結晶化時に、A成分を加えると、同様に大量の泡が生成される。これらの泡は、システムの安定稼働を阻害し、製品の形態及びかさ密度にも影響を与えるため、泡立ちを抑制するようにB成分を用いることが必要になる。B成分が存在する場合のみ、A成分とC成分とが乳化状態になり、系内に分散することが可能となる。
【0052】
前記C成分は、消泡を強化する作用を有するシリコーンオイルであり、結晶化プロセスで生成される泡を消し、結晶化環境を安定させ、結晶化の滑らかさを向上させ、製品に良好な流動性を付与することができる。
【0053】
このC成分は、ジメチルシリコーンオイル、ヒドロキシシリコーンオイル又は水素含有シリコーンオイルを含む。好ましくは、C成分は25℃における動的粘度が90mm2/s~1500mm2/sである。
【0054】
5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解し、かつ、二酸化炭素で酸性化晶析及び再結晶化を行う際に、本発明に係る添加剤を用いることで、A成分、B成分及びC成分の相乗効果により、かさ密度がより高く、流動性により優れた粉末状メチオニン結晶製品が得られ、また、結晶化システムは長期間連続して安定稼働することができ、明らかな泡立ちがなくメチオニン製品の結晶化プロセスを円滑に進めることができる。さらに、本発明に係る添加剤は、少しでも添加すれば、消泡、抑泡及び結晶成長促進効果を発揮できる。
【0055】
前記A成分、B成分及びC成分の合計含有量が、含水混合物である添加剤の総重量に対して2%~20%であり、好ましくは5%~15%であり、残りが水である。
【0056】
好ましい実施の形態において、添加剤の添加及び均一分布のために、本発明に係る添加剤は含水混合物の形態で使用してもよい。添加剤において、上記A、B及びCの3成分がともに特定の割合で存在し、即ち前記添加剤の合計質量に対して、前記A成分の含有量が1~8wt%であり、前記B成分の含有量が0.5~8wt%であり、前記C成分の含有量が0.5~4wt%であり、好ましくは、前記A成分の含有量が2~6wt%であり、前記B成分の含有量が2~6wt%であり、前記C成分の含有量が1~3wt%である。A、B及びC成分のそれぞれの含有量が上記の範囲でないと、安定した乳化剤を形成できず、系内に均一に分散できないため、所望の効果を発揮できない。上記3成分のいずれか1つでも上記の範囲でないと、添加剤の相乗効果が崩れるため、所望の効果が低下する。
【0057】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法は、本発明に記載の添加剤の存在下で、メチオニンの結晶化及び/又は再結晶化を行うことを含む。
【0058】
好ましい実施の形態において、本発明に係るメチオニンの製造方法は、
(1)前記添加剤及び二酸化炭素の存在下で、5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液を反応させ、結晶化を行うことで、粗メチオニン結晶を得る工程と、
(2)上記粗メチオニン結晶と、水及び/又は結晶母液とをメチオニン懸濁液に調製した上、前記メチオニン懸濁液と前記添加剤を共に溶解して得られた添加剤含有メチオニン溶液を再結晶化し、メチオニン結晶製品を得る工程と、
を含む。
【0059】
具体的に、本発明に係るメチオニンの製造方法は、
(1)5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液に本発明に係る添加剤を加え、攪拌しながら二酸化炭素を導入し、反応性して結晶化を行うことで、メチオニン結晶を析出させ、ろ過して粗メチオニン結晶を得ることと、
(2)上記粗メチオニン結晶と、水及び/又は結晶母液とを混合してメチオニン懸濁液を得、前記添加剤を加え、攪拌しながら90℃~110℃の温度で粗メチオニン結晶を完全溶解させ、添加剤含有メチオニン溶液を得、上記添加剤含有メチオニン溶液を25~65℃的温度で再結晶化し、得られた結晶スラリーをろ過、洗浄、乾燥させ、メチオニン結晶製品を得ることと、
を含む。
【0060】
結晶母液は、本発明に係るメチオニンの製造方法における工程(2)の再結晶化後にろ過して得られる結晶母液であってもよく、本発明に係るメチオニンの製造方法における工程(1)の結晶化後にろ過して得られる結晶母液と工程(2)の再結晶化後にろ過して得られた結晶母液との混合液であってもよい。
【0061】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法によれば、工程(1)において、5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインは、市販により入手できる。
【0062】
工程(1)において、5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解してメチオニン塩水溶液を得、その後に二酸化炭素を導入して粗メチオニン結晶を析出させる方法は、当業界で一般的に採用される方法であり、その操作条件として、当業界で一般的に使用されるものとすることができる。例えば、この方法として、水酸化カリウム、炭酸カリウム及び/又は重炭酸カリウム又はそれらの混合物の存在下で、温度120~250℃、圧力5~30barの条件下で、5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解してメチオニンのカリウム塩を得、その後に二酸化炭素を用いてメチオニンカリウム塩の水溶液からメチオニン結晶を放出する方法が挙げられる。
【0063】
また、前記工程(1)における添加剤の使用量がメチオニン塩水溶液の合計質量に対して50ppm~500ppmであり、好ましくは70ppm~300ppmである。この工程(1)において、添加剤の添加量は、上記範囲の上限値を超えると、消泡剤が蓄積するため、かさ密度が低下し、コストの増加につながり、上記範囲の下限値を下回ると、元々の作用を発揮できなくなる。
【0064】
本発明で提供されるメチオニンの製造方法によれば、工程(2)において、粗メチオニンを添加剤、及び水、及び/又は結晶母液とともに溶解させて添加剤含有メチオニン溶液を得る過程は通常、溶解槽で行われる。その後、好ましくは連続的に添加剤含有メチオニン溶液を晶析装置に加え、連続結晶化を実施する。
【0065】
工程(2)において、添加剤含有メチオニン溶液の濃度が8~15wt%であり、好ましくは10~13wt%である。この添加剤含有メチオニン溶液の濃度について、低すぎると、その後に大量の水を蒸発により除去する必要があるため、コストの増加につながり、高すぎると、粗メチオニン結晶を完全に溶解させることができないため、再結晶化時の結晶成長が所望の効果を達成できなくなる。
【0066】
工程(2)において、添加剤の添加量がメチオニン懸濁液の合計質量に対して100ppm~1000ppmであり、好ましくは200ppm~500ppmである。この工程(2)において、添加剤の添加量は、上記範囲の上限値を超えると、消泡剤が蓄積するため、かさ密度が低下し、コストの増加につながり、上記範囲の下限値を下回ると、元々の作用を発揮できなくなる。
【0067】
工程(2)において、好ましくは、冷却による降温又は蒸発による降温で結晶化を行い、より好ましくは蒸発による降温で結晶化を行う。そして、蒸発による降温で結晶化を行う際に、蒸発により発生した蒸気を蒸気圧縮機で加圧昇温した後に、メチオニン懸濁液の昇温・溶解工程に用いることで、エネルギー再利用の効果を達成することができる。
【0068】
工程(2)で使用される晶析装置は、特に制限されることなく、連続結晶化に適した様々な晶析装置であってよい。例えば、外部循環を備える攪拌型晶析装置及び水平攪拌型晶析装置等の攪拌型晶析装置、強制循環晶析装置(FC晶析装置)、オスロ型晶析装置(OSLO晶析装置)及びドラフトチューブバッフル晶析装置(DTB晶析装置)を用いることができ、好ましくはFC晶析装置、OSLO晶析装置及びDTB晶析装置を用いて連続結晶化を実施する。
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
この実施例の添加剤は、ステアロイルメチルタウリンナトリウムを6wt%、分子量が3,000且つHLB値が10であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルグラフトシリコーンオイルを6wt%、25℃における動的粘度が90mm2/sであるヒドロキシシリコーンオイルを3wt%含み、残りが水である含水混合物である。
【0071】
(1)5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液に、このメチオニン塩水溶液に対して300ppmである添加剤を加え、攪拌しながら二酸化炭素を導入し、反応して結晶化を行うことで、メチオニン結晶を析出させ、ろ過により粗メチオニン結晶を得た。
【0072】
(2)上記粗メチオニン結晶を溶解槽に入れ、適量の水及び/又は結晶母液を加え、固形分含有量が11wt%であるメチオニン懸濁液に配合し、メチオニン溶液懸濁液に対して500ppmである添加剤を加え、攪拌しながら槽内温度が100℃まで昇温し、粗メチオニン結晶が完全に溶解するまで一定の時間保持し、濃度が10wt%である添加剤含有メチオニン溶液を得た。上記添加剤含有メチオニン溶液を500L/hで容量1000LのDTB晶析装置に連続して添加し、減圧下(真空度-0.092MPa)で水を蒸発することで晶析装置の温度を25℃に維持して連続結晶化を実施し、液面が変化しないように結晶スラリーを連続的に生成し、結晶スラリーをろ過、洗浄、乾燥させ、3.6Kg/hでメチオニン結晶製品を得た(
図1はその結晶を示す顕微鏡写真である。)。かさ密度が786g/Lであった。
【0073】
工程(2)において、結晶化時に蒸発した水蒸气は、蒸気圧縮機により絶対圧0.09MPaに圧縮された後、粗メチオニン結晶を溶解する際に昇温するための熱媒体として用いることができる。また、この工程(2)及び工程(1)でメチオニン結晶をろ過して得られた結晶母液は、粗メチオニン結晶溶液の配合に用いられた。
【0074】
結晶化システムは15日間連続して稼働し、明らかな泡立ち現象が観察されず、結晶化プロセスが安定していた。
【0075】
実施例2
この実施例の添加剤は、ココイルメチルタウリンナトリウムを2wt%、分子量が6,000且つHLB値が12であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルグラフトシリコーンオイルを2wt%、25℃における動的粘度が1500mm2/sであるジメチルシリコーンオイルを1wt%含み、残りが水である含水混合物である。
【0076】
(1)5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液に、このメチオニン塩水溶液に対して150ppmである添加剤を加え、攪拌しながら二酸化炭素を導入し、反応性して結晶化を行うことで、メチオニン結晶を析出させ、ろ過により粗メチオニン結晶を得た。
【0077】
(2)上記粗メチオニンを溶解槽に入れ、適量の水及び/又は結晶母液を加え、固形分含有量が8wt%であるメチオニン懸濁液に配合し、メチオニン溶液懸濁液に対して200ppmである添加剤を加え、攪拌ながら槽内温度が90℃まで昇温し、粗メチオニン結晶が完全に溶解するまで一定の時間保持し、濃度が11wt%である添加剤含有メチオニン溶液を得た。上記添加剤含有メチオニン溶液を500L/hで容量1000LのOSLO晶析装置に連続して添加し、減圧下(真空度-0.088MPa)で水を蒸発することで晶析装置の温度を40℃に維持して連続結晶化を実施し、液面が変化しないように結晶スラリーを連続的に生成し、結晶スラリーをろ過、洗浄、乾燥させ、1.9Kg/hで粉末状メチオニン結晶製品を得た(
図2はその結晶を示す顕微鏡写真である。)。かさ密度が802g/Lであった。
【0078】
工程(2)において、結晶化時に蒸発した水蒸气は、蒸気圧縮機により絶対圧0.1MPaに圧縮された後、粗メチオニンを溶解する際に昇温するための熱媒体として用いることができる。また、この工程(2)及び工程(1)でメチオニン結晶をろ過して得られた結晶母液は、粗メチオニン結晶溶液の配合に用いられた。
【0079】
結晶化システムは15日間連続して稼働し、明らかな泡立ち現象が観察されず、結晶化プロセスが安定していた。
【0080】
実施例3
この実施例の添加剤は、ラウロイルメチルタウリンナトリウムを3wt%、分子量が5,300且つHLB値が11であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルグラフトシリコーンオイルを4wt%、25℃における動的粘度が1100mm2/sであるジメチルシリコーンオイルを3wt%含み、残りが水である含水混合物である。
【0081】
(1)5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解させて得られたメチオニン塩水溶液に、このメチオニン塩水溶液に対して70ppmである添加剤を加え、攪拌しながら二酸化炭素を導入し、反応性して結晶化を行うことで、メチオニン結晶を析出させ、ろ過により粗メチオニン結晶を得た。
【0082】
(2)上記粗メチオニンを溶解槽に入れ、適量の水及び/又は結晶母液を加え、固形分含有量が13wt%であるメチオニン懸濁液に配合し、メチオニン溶液懸濁液に対して400ppmである添加剤(ラウロイルメチルタウリンナトリウムを3wt%、分子量が5,300且つHLB値が11であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルグラフトシリコーンオイルを4wt%、25℃における動的粘度が1100mm
2/sであるジメチルシリコーンオイルを3wt%を含み、残りが水である。)を加え、攪拌ながら槽内温度が110℃まで昇温し、粗メチオニン結晶が完全に溶解するまで一定の時間保持し、濃度が12wt%である添加剤含有メチオニン溶液を得た。上記添加剤含有メチオニン溶液を500L/hで容量1000LのFC晶析装置に連続して添加し、減圧下(真空度-0.07MPa)で水を蒸発することで晶析装置の温度を65℃に維持して連続結晶化を実施し、液面が変化しないように結晶スラリーを連続的に生成し、結晶スラリーをろ過、洗浄、乾燥させ、2.5Kg/hで粉末状メチオニン結晶製品を得た(
図3はその結晶を示す顕微鏡写真である。)。かさ密度が798g/Lであった。
【0083】
工程(2)において、結晶化時に蒸発した水蒸气は、蒸気圧縮機により絶対圧0.15MPaに圧縮された後、粗メチオニンを溶解する際に昇温するための熱媒体として用いることができる。また、この工程(2)及び工程(1)でメチオニン結晶をろ過して得られた結晶母液は、粗メチオニン結晶溶液の配合に用いられた。
【0084】
結晶化システムは15日間連続して稼働し、明らかな泡立ち現象が観察されず、結晶化プロセスが安定していた。
【0085】
実施例4
この実施例の添加剤は、パルミトイルメチルタウリンナトリウムを3wt%、分子量が4,200且つHLB値が9であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルグラフトシリコーンオイルを3wt%、25℃における動的粘度が510mm2/sであるジメチルシリコーンオイルを2wt%、残りが水である含水混合物である。
【0086】
(1)5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液に、このメチオニン塩水溶液に対して100ppmである添加剤を加え、攪拌しながら二酸化炭素を導入し、反応性して結晶化を行うことで、メチオニン結晶を析出させ、ろ過により粗メチオニン結晶を得た。
【0087】
(2)上記粗メチオニンを溶解槽に入れ、適量の水及び/又は結晶母液を加え、固形分含有量が10wt%であるメチオニン懸濁液に配合し、メチオニン溶液懸濁液に対して250ppmである添加剤を加え、攪拌しながら槽内温度が105℃まで昇温し、粗メチオニン結晶が完全に溶解するまで一定の時間保持し、濃度が13wt%である添加剤含有メチオニン溶液を得た。上記添加剤含有メチオニン溶液を500L/hで容量1000LのDTB晶析装置に連続して添加し、減圧下(真空度-0.082MPa)で水を蒸発することで晶析装置の温度を50℃に維持して連続結晶化を実施し、液面が変化しないように結晶スラリーを連続的に生成し、結晶スラリーをろ過、洗浄、乾燥させ、2.0Kg/hで粉末状メチオニン結晶製品を得た(
図4はその結晶を示す顕微鏡写真である。)。かさ密度が791g/Lであった。
【0088】
工程(2)において、結晶化時に蒸発した水蒸气は、蒸気圧縮機により絶対圧0.13MPaに圧縮された後、粗メチオニンを溶解する際に昇温するための熱媒体として用いることができる。また、この工程(2)及び工程(1)でメチオニン結晶をろ過して得られた結晶母液は、粗メチオニン結晶溶液の配合に用いられた。
【0089】
結晶化システムは15日間連続して稼働し、明らかな泡立ち現象が観察されず、結晶化プロセスが安定していた。
【0090】
実施例5
この実施例の添加剤は、ミリストイルメチルタウリンナトリウムを5wt%、分子量が3,600且つHLB値が10.5であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルグラフトシリコーンオイルを5wt%、25℃における動的粘度が270mm2/sであるジメチルシリコーンオイルを2wt%含み、残りが水である含水混合物である。
【0091】
(1)5-[2-(メチルチオ)エチル]ヒダントインを加水分解して得られたメチオニン塩水溶液に、このメチオニン塩水溶液に対して200ppmである添加剤を加え、攪拌しながら二酸化炭素を導入し、反応性して結晶化を行うことで、メチオニン結晶を析出させ、ろ過により粗メチオニン結晶を得た。
【0092】
(2)上記粗メチオニンを溶解槽に入れ、適量の水及び/又は結晶母液を加え、固形分含有量が9wt%であるメチオニン懸濁液に配合し、メチオニン溶液懸濁液に対して400ppmである添加剤を加え、攪拌しながら槽内温度が95℃まで昇温し、粗メチオニン結晶が完全に溶解するまで一定の時間保持し、濃度が14wt%である添加剤含有メチオニン溶液を得た。上記添加剤含有メチオニン溶液を500L/hで容量1000LのDTB晶析装置に連続して添加し、減圧下(真空度-0.09MPa)で水を蒸発することで晶析装置の温度を30℃に維持して連続結晶化を実施し、液面が変化しないように結晶スラリーを連続的に生成し、結晶スラリーをろ過、洗浄、乾燥させ、2.4Kg/hでメチオニン結晶製品を得た(
図5はその結晶を示す顕微鏡写真である。)。かさ密度が795g/Lであった。
【0093】
工程(2)において、結晶化時に蒸発した水蒸气は、蒸気圧縮機により絶対圧0.095MPaに圧縮された後、粗メチオニンを溶解する際に昇温するための熱媒体として用いることができる。また、この工程(2)及び工程(1)でメチオニン結晶をろ過して得られた結晶母液は、粗メチオニン結晶溶液の配合に用いられた。
【0094】
結晶化システムは15日間連続して稼働し、明らかな泡立ち現象が観察されず、結晶化プロセスが安定していた。