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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ガス感知体
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/22 20060101AFI20231121BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01N31/22 121C
G01N21/78 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019165418
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021043067
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】織野 稔久
(72)【発明者】
【氏名】篠原 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】島田 聖士
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-107240(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209366(WO,A1)
【文献】特開2015-184332(JP,A)
【文献】特表2009-543076(JP,A)
【文献】特開2008-082980(JP,A)
【文献】特開2007-278926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00 -31/22
G01N 21/75 -21/83
B65D 67/00 -81/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の検知対象物質の存在によって色が変化する指示薬を含む粘着剤層と、
前記粘着剤層に接し、前記検知対象物質を透過させる樹脂基材と
前記粘着剤層の前記樹脂基材とは反対の面に設けられた基材と、
前記基材の前記粘着剤層とは反対の面に設けられた第2の粘着剤層とを備えたガス感知体。
【請求項2】
請求項1に記載のガス感知体において、
前記検知対象物質は、アンモニア及びアミンの少なくとも一方であるガス感知体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス感知体において、
前記指示薬の変色域は、pH3以上10以下の範囲内にあるガス感知体。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1つに記載のガス感知体において、
前記指示薬は、ブロモチモールブルー又はブロモクレゾールパープルであるガス感知体。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1つに記載されたガス感知体において、
前記樹脂基材は、ポリエチレンフィルム又はポリウレタンフィルムであるガス感知体。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1つに記載されたガス感知体において、
前記粘着剤層は、前記検知対象物質による色の変化を通して食品の鮮度変化を感知させるものであるガス感知体。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1つに記載されたガス感知体において、
少なくとも一部の領域を空けて樹脂基材の一方の面に形成された印刷層をさらに備えているガス感知体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、ガス状の検知対象物質を感知するガス感知体に関する。
【背景技術】
【0002】
肉や魚等の窒素を含む食品は、比較的腐敗しやすく、しばしば深刻な食中毒を引き起こす。しかし、これらの食品を購入した消費者は、すぐに調理せずに冷蔵庫等に貯蔵してから調理することが多い。このため、食品の鮮度を、その包装を開封することなく知りたいというニーズは多い。
【0003】
特許文献1には、アンモニアを検知することによって食品の鮮度を知ることができるガス感知体が記載されている。このガス感知体は、アンモニアガス等に反応するガス反応部と、ガス反応部の外縁に設けられた粘着剤層とを備えている。また、特許文献2には、pH指示薬を含む感応部と、感応部の色調を表す比色部とを備えた感知体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-82980号公報
【文献】特開2007-278926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のガス感知体を食品の包装に使用する場合、包装自体を感知体にするか、感知体を包装に貼り付けるかしなければならない。製造コストの面からは、感知体を包装に貼り付ける方が好ましい。しかしながら、特許文献1に記載のガス感知体では、ガス反応部の外縁に粘着剤層が設けられるため、ガス反応部の大きさは限定される。このため、ガス反応部の変化が視認しにくい場合がある。一方で、ガス反応部を大きくし過ぎると、粘着剤層が小さくなって、ガス感知体を固定するのが困難となる。
【0006】
なお、ガス状の検知対象物質を感知したいというニーズは、食品の鮮度を検知する用途以外でも存在し、容易に視認できることはガス状の検知対象物質を感知する感知体に共通の課題である。
【0007】
本発明の目的は、被着体に固定された状態で、ガス状の検知対象物質を視覚的に検知しやすくさせるガス感知体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示されたガス感知体の一例は、ガス状の検知対象物質の存在によって色が変化する指示薬を含む粘着剤層を備えている。
前記検知対象物質は特に限定されないが、アンモニア及びアミンの少なくとも一方や、これら物質を主として含む混合物であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示されたガス感知体によれば、ガス状の検知対象物質の存在及びその量が指示薬を含む粘着剤層自体の色の変化によって感知される。このため、使用者が容易に色の変化を視認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本明細書に開示された食品鮮度感知体の一例を示す断面図である。
図2図2は、第2の実施形態に係る食品鮮度感知体を示す断面図である。
図3図3は、第3の実施形態に係る食品鮮度感知体を示す断面図である。
図4図4は、試験1の結果を示す写真図である。
図5図5は、試験2の結果を示す写真図である。
図6図6は、試験3の結果を示す図である。
図7図7は、試験4の結果を示す図である。
図8図8は、試験5の結果を示す図である。
図9図9は、試験6の結果を示す図である。
図10図10は、試験7の結果を示す図である。
図11図11は、試験8の結果を示す図である。
図12図12は、試験9の結果を示す図である。
図13図13は、試験10の結果を示す図である。
図14図14は、試験11の結果のうち、試験開始時から3日経過後までの結果を示す図である。
図15図15は、試験11の結果のうち、4日経過時から7日経過時までの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本明細書に開示された食品鮮度感知体の一例を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の食品鮮度感知体20は、透明な基材7と、基材7の一方の面に接して設けられた粘着剤層5と、基材7の他方の面上に形成された印刷層15とを備えている。粘着剤層5には、検知対象物質の存在によって色が変化する指示薬が含まれている。食品鮮度感知体20の使用前において、粘着剤層5の面のうち基材7の逆側の面には、樹脂フィルム又は紙製の剥離ライナーが設けられていてもよい。
【0012】
検知対象物質は食品の鮮度の指標となる物質であれば特に限定されないが、例えばアンモニア及びアミン類や、硫化水素、好気性細菌の繁殖によって濃度が変化する二酸化炭素などから選ばれた1種、またはこれらから選ばれた2種以上の混合物であってもよい。これらの検知対象物質は、常温常圧でガス状である。アンモニア及びアミン類の少なくとも一方を検知対象物質とする場合、それらの水溶液は弱塩基性を示すことから、指示薬として公知のpH指示薬を用いることができる。用いられる指示薬の変色域は、例えばpH3以上10以下の範囲内にあればよい。
【0013】
食品13が肉や魚等のたんぱく質性の食品である場合、腐敗によってアンモニアやアミン類が多く発生する。この場合、指示薬として例えば、クリスタルバイオレット、ブロモフェノールブルー、コンゴーレッド、ブロモクレゾールパープル(BCP)、ブロモチモールブルー(BTB)、フェノールレッド等を用いることにより、粘着剤層5がアンモニア等の存在及び量を効果的に感知できるようになる。
【0014】
BTBは変色域がpH6.0~7.6程度であり、酸性から塩基性になるに従って黄色から緑色、青色に変化する。粘着剤層5にBTBを添加することにより、粘着剤層5の色の変化に基づいてアンモニアの発生を検知することができる。また、BCPは変色域がpH5.2~6.8程度であり、酸性から塩基性になるに従って黄色から緑色、青紫色に変化する。粘着剤層5にBCPを添加することによっても、色の変化に基づいてアンモニアの発生を検知することができる。BCPには、BTBに比べて高濃度で粘着剤に添加してもブリードアウトしにくいという利点がある。
【0015】
基材7としては、一方の面に印刷層15が形成可能な透明樹脂により構成されていればよく、その構成材料や厚みは特に限定されない。基材7の構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂やポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)等を用いることができる。
【0016】
印刷層15においては、粘着剤層5の変色前から変色後までの色見本や、食品の鮮度と色とを関連付けた記載等が印刷され、消費者がこれに基づいて食品の鮮度を判断できるようなっていてもよい。印刷層15は、粘着剤層5が消費者から見えるように、少なくとも一部の領域を空けて形成される。
【0017】
粘着剤層5を形成するための粘着剤は、水性粘着剤であってもよいし、溶剤系粘着剤であってもよい。溶剤系粘着剤の場合、例えばゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などを用いることができる。食品13は冷蔵庫などの冷所で保存されることが多いので、使用される粘着剤は、硬化後に少なくとも0℃~10℃以下において被着体から脱落しないだけの粘着力を維持できるものであることが好ましい。
【0018】
粘着剤層5に含まれる指示薬の濃度は使用される指示薬によっても異なるが、例えば5質量%以上80質量%以下としてもよく、20質量%以上60質量%以下としてもよい。指示薬の濃度が低過ぎると検知対象物質に対する感度が落ちて検知しにくくなり、指示薬の濃度が高過ぎると、指示薬が粘着剤層5からブリードアウトしやすくなり、粘着力が低下する恐れも出てくる。
【0019】
粘着剤層5の膜厚は特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上30μm以下であってもよい。粘着剤層5が余りに薄いと製膜するのが難しく、粘着剤層5が厚すぎると製膜に時間がかかり、製造コストが上がる。粘着剤層5は、厚い方が検知対象物質に対する感度が高くなる。
【0020】
本実施形態の食品鮮度感知体20は、食品13が入れられた容器を包むラップフィルム等の包装材10に、粘着剤層5を貼り付けて使用する。包装材10は、ポリ塩化ビニル製やポリメチルペンテン製等のラップフィルム、不織布や紙等、ガス透過性の良いものであることが好ましい。
【0021】
食品13から発生した検知対象物質は、包装材10を透過して粘着剤層5に到達する。すると、粘着剤層5は初期の色から徐々に変化する。色の変化は、検知対象物質の量が多い程大きく且つ速やかであるので、消費者は、基材7を通して粘着剤層5の変化を見ることで、包装を開封することなく食品13の鮮度を知ることができる。
【0022】
本実施形態の食品鮮度感知体20によれば、粘着剤層5全体の色が食品13の鮮度に応じて変化するので、鮮度を感知できる部分と粘着剤層とが別個に設けられている場合に比べて食品鮮度感知体20のサイズを小さくしても消費者が容易に食品の鮮度を認識できるようになっている。また、粘着剤層5の色を視認するための窓領域(印刷層15が形成されない領域)を小さくすることができるので、印刷層15のデザインの自由度を大きくすることもできる。
【0023】
-食品鮮度感知体の製造方法-
まず、公知のコーターを用いて、指示薬及び溶媒が添加された粘着剤を公知の剥離ライナー(図示せず)の離型面上に所定の膜厚になるように塗布し、乾燥及び硬化させることにより、粘着剤層5を形成する。次いで、剥離ライナー上の粘着剤層5にPET等からなる透明な基材7を貼り合わせる。続いて、公知の印刷法を用いて基材7の、粘着剤層5とは反対側の面に印刷層15を形成することにより、ロール状の食品鮮度感知体20を作製する。その後、当該ロール状の食品鮮度感知体をスリット及び裁断し、必要に応じて抜き加工を行うことにより、所定のサイズ及び形状にする。
【0024】
なお、上記の方法に代えて、下から順に第1の剥離ライナー、指示薬を含む粘着剤層5、第2の剥離ライナーを有する基材レスタイプの食品鮮度感知体を形成した後、基材7と粘着剤層5とを貼り合わせる方法を採ってもよい。
【0025】
(第2の実施形態)
図2は、本明細書に開示された食品鮮度感知体の別の例を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の食品鮮度感知体30は、ガス透過性を有する第1の基材7aと、第1の基材7aの一方の面に接して設けられた第1の粘着剤層5aと、第1の粘着剤層5aの第1の基材7aとは反対の面に設けられた第2の基材3と、第2の基材3の第1の粘着剤層5aとは反対の面に設けられた第2の粘着剤層1とを備えている。第1の粘着剤層5aには、検知対象物質の存在によって色が変化する指示薬が含まれている。食品鮮度感知体30の使用前において、第1の粘着剤層5aの面のうち第1の基材7aの逆側の面には、樹脂フィルム又は紙製の剥離ライナーが設けられていてもよい。第2の基材3の構成材料としては、第1の粘着剤層5aが消費者から視認できるように透明な材料が用いられる。
【0026】
本実施形態の食品鮮度感知体30が第1の実施形態に係る食品鮮度感知体20と異なるのは、第1の基材7aがガス透過性を有しており、必ずしも透明でなくてよい点と、第1の粘着剤層5a及び第1の基材7aに加えて第2の基材3及び第2の粘着剤層1が設けられている点である。
【0027】
この構成により、本実施形態の食品鮮度感知体30は、食品13が封入された包装材10の内側に貼り付けて使用できるようになっている。このため、本実施形態の食品鮮度感知体30は、包装材10のガス透過性が低い場合であっても使用可能となっている。
【0028】
また、粘着剤層に多量の指示薬を添加すると、被着体に対する粘着力は低下する傾向にある。ここで、本実施形態の食品鮮度感知体30では、包装材10に貼り付けられるのは第2の粘着剤層1であるので、第1の粘着剤層5aに多量の指示薬を添加した場合でも、包装材10から脱落しにくくなっている。
【0029】
食品鮮度感知体30において、第1の基材7aの強度が低い場合等には、第1の基材7aの第1の粘着剤層5aとは反対側の面を覆う保護材(図示せず)が設けられていてもよい。この保護材と第2の粘着剤層1に接する剥離ライナーとが設けられている状態の食品鮮度感知体30を使用する際に、剥離ライナーの第2の粘着剤層1に対する剥離力と、保護材の第1の基材7aに対する剥離力との間のバランスを適切に調整することができ、剥離ライナーを保護材より先に剥がしやすくすることができる。
【0030】
第1の基材7aの材料としては、例えばPEフィルム、PPフィルム及びPUフィルム等の樹脂フィルムやこれらの積層体、不織布、紙等を使用することができる。これらのうち、PEフィルム、PPフィルム及びPUフィルムは、ガス状の検知対象物質を透過させながら液体をほとんど通過させないので、これらのフィルムを用いた場合には、第1の粘着剤層5a中の指示薬が食品容器内に溶出するのを抑えることができる。なお、第1の基材7aの厚みはガス状の検知対象物質を透過可能で且つ防水性を確保できる範囲であればよいが、できるだけ薄い方が検知対象物質を透過させやすい。例えば、第1の基材7aがポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリウレタンで構成されている場合、膜厚を100μm以下とすることで食品の鮮度変化を検知しやすくでき、50μm以下とすれば食品の鮮度をより検知しやすくでき、10μm以下とすることにより、より速やか且つ感度良く食品の鮮度変化を検知しやすくできる。
【0031】
以上で説明した以外の構成については、第1の実施形態に係る食品鮮度感知体20と同様である。図2には記載していないが、第1の基材7aの一方の面に印刷層が形成されていてもよい。
【0032】
(第3の実施形態)
図3は、本明細書に開示された食品鮮度感知体の別の例を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の食品鮮度感知体40は、ガス透過性を有する第1の基材7aと、第1の基材7aの一方の面に接して設けられ、検知対象物質の存在によって色が変化する指示薬を含む粘着剤層5とを備えている。
【0033】
本実施形態の食品鮮度感知体40は、第2の基材3と第2の粘着剤層1が設けられていない点で、第2の実施形態に係る食品鮮度感知体30と異なっている。このため、本実施形態の食品鮮度感知体40は、第2の実施形態に係る食品鮮度感知体30に比べて簡易な構成となっており、製造コストを下げることが可能となっている。
【0034】
本実施形態の食品鮮度感知体40は、粘着剤層5を包装材10の内側に貼り付けて使用する。食品13から発生した検知対象物質は第1の基材7aを透過して粘着剤層5に到達する。粘着剤層5が検知対象物質に触れると、その量に応じて変色する。本実施形態の食品鮮度感知体40は、包装材10がガス透過性を有していない場合であっても使用することができる。本実施形態の食品鮮度感知体40においても、第2の実施形態に係る食品鮮度感知体30と同様に、第1の基材7aの存在によって、粘着剤層5が直接食品13に触れないようになっている。
【0035】
以上で説明した以外の構成については、第2の実施形態に係る食品鮮度感知体30と同様である。
【0036】
図1図3に示す食品鮮度感知体20、30、40は、本明細書に開示された食品鮮度感知体の一例であって、各部材の厚み、材質、形状、指示薬の種類や濃度等は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、食品鮮度感知体は、少なくとも指示薬を含む粘着剤の硬化物により構成された粘着剤層を備えていればよく、必ずしも基材を必要としない。例えば、検知対象物質の存在によって色が変化する粘着剤層と、この粘着剤層を挟む第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーとを備えた食品鮮度感知体であっても、包装材に貼り付けて使用することができる。
【0037】
なお、以上で説明した食品鮮度感知体は、食品の鮮度を感知する用途以外にも、任意のガス状物質の感知体として応用することができる。その場合、所望の検知対象物質を感知するのに適した指示薬を選定して粘着剤層に添加すればよい。
【実施例
【0038】
<食品鮮度感知体の製造>
pH指示薬であるBTB又はBCPをメチルエチルケトン(MEK)に溶解して指示薬溶液を作製した。次いで、この指示薬溶液を市販の溶剤系アクリル系粘着剤に所定の濃度になるよう添加して、塗液を作製した。次に、コンマ型コーターを用いて第1の剥離ライナー上に、この塗液を塗布してから乾燥及び硬化させた後、第2の剥離ライナーと貼り合わせて所定のサイズに裁断することにより、基材レスタイプの食品鮮度感知体を作製した。試験の際には、一方の剥離ライナーを剥がして適宜被着体に貼り合わせて使用した。また、アクリル系粘着剤としては、検知対象物質を速やかに感知できるように、硬化後の透湿性が比較的高いものを用いた。
【0039】
<試験方法>
-試験1-
上述の方法により、20質量%の濃度でBTB含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体を作製した。粘着剤層の厚みはそれぞれ5μm、10μm、15μmとした。食品鮮度感知体の一方の剥離ライナーを剥がして粘着剤層を被着体となる白色PETフィルム片に貼り合わせた後、他方の剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させた。粘着剤層が露出した状態で、濃度が0.28%又は0.028%のアンモニア水を0.05g滴下した密閉容器内に各サンプルを封入し、試験開始前、10分経過後、24時間経過後に目視により粘着剤層の色を観察した。
【0040】
-試験2-
上述の方法により、5質量%、10質量%、15質量%の濃度でBTBを含む粘着剤層を備えた食品鮮度感知体をそれぞれ作製した。粘着剤層の厚みは5μm又は10μmとした。被着体としては、白色PETフィルム片を用いた。粘着剤層が露出した状態で、濃度が0.28%又は0.028%のアンモニア水を0.05g滴下した密閉容器内に各サンプルを封入し、試験開始前、10分経過後、24時間経過後に目視により粘着剤層の色を観察した。
【0041】
-試験3-
上述の方法により、15質量%の濃度でBTBを含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体を作製した。粘着剤層の厚みは5μm又は10μmとした。次に、開口部を有する容器内に濃度が0.28%のアンモニア水を0.05g滴下し、ラップフィルムで当該開口部を塞いだ後、ラップフィルムの外側に食品鮮度感知体の粘着剤層を貼り付けた。使用したラップフィルムの材質は、ポリメチルペンテン(リケンテクノス製「フォーラップ」(登録商標))及びポリ塩化ビニリデン(旭化成製「サランラップ」(登録商標))であった。試験開始前、10分経過後、24時間経過後に目視により粘着剤層の色を観察した。
【0042】
-試験4-
上述の方法により、15質量%の濃度でBTBを含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体を作製した。粘着剤層の厚みはそれぞれ10μm、25μmとした。被着体としては、白色PETフィルム片を用いた。次に、食品鮮度感知体の剥離ライナーを剥がし、基材となる厚さ40μmのPEフィルム片に粘着剤層を貼り合わせることにより、第3の実施形態に係る食品鮮度感知体を作製した。次に、濃度が0.28%又は0.028%のアンモニア水を0.05g滴下した密閉容器内に各サンプルを封入し、試験開始前、10分経過後、24時間経過後に目視により粘着剤層の色を観察した。
【0043】
-試験5-
上述した方法により、10質量%の濃度でBTBを含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体と、10質量%又は20質量%の濃度でBCPを含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体をそれぞれ作製した。粘着剤層の厚みはそれぞれ10μm、25μmとした。被着体としては、白色PETフィルム片を用いた。粘着剤層が露出した状態で、濃度が0.28%又は0.028%のアンモニア水を0.05g滴下した密閉容器内に各サンプルを封入し、試験開始前、10分経過後、24時間経過後に目視により粘着剤層の色を観察した。
【0044】
-試験6-
上述の方法により、20質量%の濃度でBCPを含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体と、この粘着剤層を基材に貼り合わせることにより作製された食品鮮度感知体とを作製した。基材としては、厚さ40μmのPEフィルム片と、厚さ7μmのPUフィルム片を用いた。粘着剤層の厚みはそれぞれ10μm、25μmとした。被着体としては、白色PETフィルム片を用いた。基材レスタイプの食品鮮度感知体については粘着剤層が露出した状態で、基材を有する食品鮮度感知体については粘着剤層が基材に覆われた状態で、それぞれ濃度が0.28%又は0.028%のアンモニア水を0.05g滴下した密閉容器内に封入し、試験開始前、10分経過後、24時間経過後に目視により粘着剤層の色を観察した。
【0045】
-試験7-
上述の方法により、20質量%の濃度でBCPを含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体を作製した。基材として、厚さ7μmのPUフィルム片を用いた。粘着剤層の厚みは10μm又は25μmとした。120~140gの鶏ミンチ肉が入った樹脂製トレーを、内側に食品鮮度感知体が貼り付けられたラップフィルム(旭化成製「サランラップ」(登録商標))を用いて個別に包装した。この状態のトレーを冷蔵庫内で約4℃の環境下、14日間保存し、保存中の所定時刻に粘着剤層の色を観察した。なお、比較のために、基材レスタイプの食品鮮度感知体と基材を有するタイプの食品鮮度感知体とを並べて本試験を実施した。
【0046】
-試験8-
上述の方法により、20質量%又は30質量%の濃度でBCPを含む粘着剤層を備えた基材レスタイプの食品鮮度感知体を作製した。粘着剤層の厚みは10μm又は25μmとした。被着体としては、白色PETフィルム片を用いた。粘着剤層が露出した状態で、それぞれ濃度が0.28%又は0.028%のアンモニア水を0.05g滴下した密閉容器内に各サンプルを封入し、72時間経過時まで目視により粘着剤層の色を観察した。
【0047】
-試験9-
上述の方法により、20質量%又は30質量%の濃度でBCPを含む粘着剤層と、基材(厚さ7μmのPUフィルム片)とを備えた食品鮮度感知体を作製した。粘着剤層の厚みは10μm又は25μmとした。被着体としては、白色PETフィルム片を用いた。次に、濃度が0.28%又は0.028%のアンモニア水を0.05g滴下した密閉容器内に各サンプルを封入し、72時間経過時まで目視により粘着剤層の色を観察した。
【0048】
-試験10-
上述の方法により、30質量%の濃度でBCPを含む粘着剤層と、基材(厚さ7μmのPUフィルム片)とを備えた食品鮮度感知体を作製した。粘着剤層の厚みは10μm又は25μmとした。120~140gの鶏ミンチ肉が入った樹脂製トレーを、内側に食品鮮度感知体が貼り付けられたラップフィルム(旭化成製「サランラップ」(登録商標))を用いて個別に包装した。この状態のトレーを冷蔵庫内で約4℃の環境下、14日間保存し、保存中の所定時刻に粘着剤層の色を観察した。なお、比較のために、基材レスタイプの食品鮮度感知体と基材を有するタイプの食品鮮度感知体とを並べて本試験を実施した。
【0049】
-試験11-
上述の方法により、40質量%、50質量%又は60質量%の濃度でBCPを含む粘着剤層と、基材(厚さ7μmのPUフィルム片)とを備えた食品鮮度感知体を作製した。また、比較対象として、厚さ25μmのPETフィルム片を基材として用いた食品鮮度感知体を作製した。粘着剤層の厚みは10μm又は25μmとした。次に、120~140gの鶏ミンチ肉が入った樹脂製トレーを、内側に食品鮮度感知体が貼り付けられたラップフィルム(旭化成製「サランラップ」(登録商標))を用いて個別に包装した。この状態で約4℃の環境下、7日間保存し、保存中の所定時刻に粘着剤層の色を観察した。
【0050】
<試験結果>
上記の試験1の結果を図4に示す。同図に示す結果から、アンモニア(検知対象物質)を密閉容器内に添加した場合には、粘着剤層の色が黄色から褐色及び黒色へと変化することで、アンモニアを感知できることが確認された。また、10分後及び24時間後の各時点で粘着剤層の厚みが同じサンプルを比べた結果から、アンモニアの濃度が濃い方が粘着剤層の色の変化が大きく且つ速やかであることが分かった。
試験2の結果を図5及び表1に示す。
【表1】
【0051】
図5及び表1に示す結果から、粘着剤層に添加されたBTBの濃度が高い方が色の変化が大きいことが分かった。また、BTBの濃度が同じサンプルを比べた場合、粘着剤層が厚いサンプルの方が色の変化が大きいことが確認できた。
試験3の結果を図6及び表2に示す。
【表2】
【0052】
図6及び表2に示す結果から、ガス透過性に優れた材料(ポリメチルペンテン)製のラップフィルムを包装体として使用した場合には、包装体の外側に食品鮮度感知体を貼り付けた場合でも色の明確な変化が生じ、アンモニアを検知できることが確認できた。
試験4の結果を図7及び表3に示す。
【表3】
【0053】
図7及び表3に示す結果から、40μmのPEフィルムを基材を備えたタイプの食品鮮度感知体であっても、当該基材を透過したアンモニアによって粘着剤層の色が変化するので、この変化に基づくアンモニアの検知が可能であることが確認できた。なお、粘着剤層が厚い方が色の変化が大きくなる傾向が見られた。
試験5の結果を図8及び表4に示す。
【表4】
【0054】
図8及び表4に示すように、粘着剤層に10質量%のBCPを含むサンプル、20質量%のBCPを含むサンプルの両者とも、0.28%のアンモニア水を封入した場合には10分程度で黄色から青紫色へと大きく変色し、0.028%のアンモニア水を封入した場合でも24時間経過後には粘着剤層の変色が見られた。
試験6の結果を図9及び表5に示す。
【表5】
【0055】
図9及び表5に示すように、同じ濃度のアンモニア水を封入した場合、基材レスタイプ>PU基材>PE基材の順で変色の度合いが大きいことが分かった。基材のガス透過性の違いによってアンモニアに対する検知感度が変わること、PEフィルムだけでなくPUフィルムも基材の材料として使用できることが確認できた。
試験7の結果を図10及び表6に示す。
【表6】
【0056】
図10及び表6に示すように、粘着剤層に20質量%のBCPが含まれる場合、粘着剤層がPU製の基材で覆われていても、食肉から発生するアンモニア等を粘着剤層の変色に基づいて、検知できることが確認できた。粘着剤層の変色は経時的に進むことから、食肉の鮮度を変色度合いと関連付けることができる。
試験8の結果を図11及び表7に示す。また、試験9の結果を図12、表8に示す。
【表7】
【表8】
【0057】
図11及び表7に示す結果から、粘着剤層の厚みが同じ場合、粘着剤層に含まれるBCPの濃度が高い方が、アンモニアに対する感度が高くなっていることが確認できた。また、図12及び表8に示す結果から、PUフィルム製の基材によって粘着剤層が覆われている場合であっても、BCP濃度を高くすることで、アンモニアに対する感度を高めることが確認できた。
試験10の結果を図13及び表9に示す。また、試験11の結果を図14、15及び表10~12に示す。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0058】
図13及び表9に示すように、粘着剤層中のBCP濃度が30質量%でPUフィルムを基材とする食品鮮度感知体のサンプルは、食肉から発生するアンモニア等によって少なくとも10日目までには黄色から深紫色まで色が大きく変化していた。また、図14、15及び表10~12に示すように、粘着剤層に含まれるBCPの濃度を40質量%から、50質量%、60質量%へと高めることにより、試験開始から7日経過した時点までに色の大きな変化が認められ、早期にアンモニア等の発生を感知できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本明細書に開示されたガス感知体は、食品の鮮度を表すラベル等として利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 第2の粘着剤層
3 第2の基材
5 粘着剤層
5a 第1の粘着剤層
7 基材
7a 第1の基材
10 包装材
13 食品
15 印刷層
20、30、40 食品鮮度感知体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15