(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】磁気エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
(21)【出願番号】P 2019168159
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上池 孝明
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095544(JP,A)
【文献】特開2008-292386(JP,A)
【文献】特開2016-038294(JP,A)
【文献】特開平10-293003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に移動自在に配置されるとともに、その移動量を磁気検出部により磁気的に検出するために使用される磁気エンコーダであって、
磁性材料としてフェライト磁性粉が用いられ、前記磁気検出部に対向して配置される被検出面を有した磁性体を含み、
前記磁性体は、移動方向の一方の側に形成されるとともに前記被検出面に対して垂直方向にN極及びS極からなる一対の磁極が並ぶように配置された第1磁極部と、
前記移動方向の他方の側に形成され前記被検出面に対して垂直方向に並ぶように配置されるとともに、前記第1磁極部とは反対の一対の磁極が形成された第2磁極部と、
前記第1磁極部と前記第2磁極部との間に磁化されていない非磁化領域とを備え
、
前記磁性体は、異方性磁石であり、前記フェライト磁性粉の磁化容易軸が前記磁気検出部側に向うように配向され、
前記磁性体を構成する前記フェライト磁性粉のバインダーがゴム材であることを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項2】
請求項1において、
前記磁性体は、前記移動方向が長手方向となる棒形状であることを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記磁性体には、移動方向における前記第1磁極部側又は前記第2磁極部側の少なくともいずれか一方に、前記第1磁極部又は前記第2磁極部の位置を示唆する第1指標部が設けられていることを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項において、
前記磁性体には、前記被検出面又は前記被検出面とは反対側の面の少なくともいずれか一方に、前記被検出面の位置を示唆する第2指標部が設けられていることを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2指標部は、前記被検出面とは反対側の面に設けられ且つ前記反対側の面から突出して形成されていることを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項において、
前記非磁化領域は、前記第1磁極部及び前記第2磁極部よりも広い領域に設けられていることを特徴とする磁気エンコーダ。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項において、
前記第1磁極部及び前記第2磁極部は、前記非磁化領域よりも広い領域に設けられていることを特徴とする磁気エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線的に移動自在に配置されるとともに、その移動量を磁気検出部により磁気的に検出するために使用される磁気エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサ等の磁気検出部との相対移動量を磁気検出部により磁気的に検出するために使用される磁気エンコーダとして、例えば下記特許文献1や下記特許文献2が挙げられる。
下記特許文献1及び下記特許文献2には、N極及びS極に着磁された磁化領域に加え、所定の位置に無磁化領域を備える磁性体を含む磁気エンコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-250857号公報
【文献】特開2006-292396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の
図3の磁気エンコーダのように、例えば磁気検出部に対向して配置される被検出面に対して平行な方向に並んで一対のN極及びS極が着磁されている場合、希土類磁石等の磁力特性が高い磁石を使用しなければ、磁気検出部により検出される十分な磁束密度を確保できなかった。そのため、従来から、希土類磁石よりも磁力特性が低いフェライト磁石を用いた磁性体を使用しようとしても、磁気検出部による磁性体の移動量の検出精度が低下するおそれがあるため、製品化を図ることはできていなかった。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたものであり、磁気検出部により検出される磁性体の磁束密度を高めることができる磁気エンコーダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気エンコーダは、直線的に移動自在に配置されるとともに、その移動量を磁気検出部により磁気的に検出するために使用される磁気エンコーダであって、磁性材料としてフェライト磁性粉が用いられ、前記磁気検出部に対向して配置される被検出面を有した磁性体を含み、前記磁性体は、移動方向の一方の側に形成されるとともに前記被検出面に対して垂直方向にN極及びS極からなる一対の磁極が並ぶように配置された第1磁極部と、前記移動方向の他方の側に形成され前記被検出面に対して垂直方向に並ぶように配置されるとともに、前記第1磁極部とは反対の一対の磁極が形成された第2磁極部と、前記第1磁極部と前記第2磁極部との間に磁化されていない非磁化領域とを備え、前記磁性体は、異方性磁石であり、前記フェライト磁性粉の磁化容易軸が前記磁気検出部側に向うように配向され、前記磁性体を構成するフェライト磁性粉のバインダーがゴム材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る磁気エンコーダは、上述の構成としたことで、磁気検出部により検出される磁性体の磁束密度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る磁気エンコーダの一例を模式的に示す概略的斜視図である。
【
図2】(a)は同磁気エンコーダの磁束密度の波形を示すグラフである。(b)は同磁気エンコーダにおける磁性体の磁場の配向状態を模式的に示した説明図である。
【
図3】(a)及び(b)は同磁気エンコーダに設けられた指標部を説明するための概略的部分斜視図であり、指標部の異なる例を示す図である。
【
図4】(a)は第2実施形態に係る磁気エンコーダを模式的に示す概略的斜視図であり、(b)は同磁気エンコーダの概略的平面図である。
【
図5】(a)は第3実施形態に係る磁気エンコーダを模式的に示す概略的斜視図であり、(b)は同磁気エンコーダの概略的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図には、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
本実施形態に係る磁気エンコーダ1,1A,1Bは、直線的に移動自在に配置されるとともに、その移動量を磁気検出部Sにより磁気的に検出するために使用される磁気エンコーダである。磁気エンコーダ1は、磁性材料としてフェライト磁性粉4(
図2(b)参照)が用いられ、磁気検出部Sに対向して配置される被検出面2aを有した磁性体2を含む。磁性体2は、移動方向の一方の側に形成されるとともに被検出面2aに対して垂直方向にN極及びS極からなる一対の磁極が並ぶように配置された第1磁極部20と、移動方向の他方の側に形成され被検出面2aに対して垂直方向に並ぶように配置されるとともに、第1磁極部20とは反対の一対の磁極が形成された第2磁極部21と、第1磁極部20と第2磁極部21との間に磁化されていない非磁化領域22とを備えている。以下、詳述する。
【0010】
まずは
図1、
図2を参照しながら、第1実施形態に係る磁気エンコーダ1について説明する。
図1には、移動方向(
図1・白抜矢印参照)が長手方向となる直方体で棒形状の磁性体2を有した磁気エンコーダ1を示している。磁気エンコーダ1は直線的に移動自在に構成された可動部品のホルダー等(不図示)に組付けられ、対向して配置される磁気検出部Sにより磁束密度波形から直線位置を検出し、磁気的にその移動量を検出するために使用される。磁性体2は、磁性材料としてフェライト磁性粉4が用いられたフェライト磁石が用いられる。磁石の性質としては、フェライト磁性粉4を焼き固めてなる焼結磁石、バインダーとしてのゴム材とフェライト磁性粉4とを混合して成形したゴム磁石、バインダーとしてのプラスチック材とフェライト磁性粉4とを混合して成形したプラスチック磁石等、いずれでもよい。
【0011】
図例の磁性体2は、上面が被検出面2aとなっており、移動方向の一方の側に第1磁極部20、移動方向の他方側に第2磁極部21を備えている。また第1磁極部20と第2磁極部21との間には、磁化されていない未着磁の非磁化領域22が設けられている。第1磁極部20及び第2磁極部21は、被検出面2aに対して垂直方向に一対の磁極が並ぶように着磁されている。図例の第1磁極部20は、被検出面2a側にN極、被検出面2a側とは反対側にS極が配置されるように着磁され、第2磁極部21は第1磁極部20とは逆の被検出面2a側にS極、被検出面2a側とは反対側にN極が配置されるように着磁されている。これにより、第1磁極部20のN極及び第2磁極部21のN極から発する磁束密度が増大し、密な磁力線、強い磁場を形成する。そして第1磁極部20の移動方向には非磁化領域22を挟んで対をなす磁極が着磁されている。図例では第1磁極部20の被検出面2a側にN極が着磁されており、第2磁極部21の被検出面2a側にS極が着磁されている。よって、第1磁極部20から発する密な磁力線が非磁化領域22を挟んで第2磁極部21へ向かう(
図1矢印参照)。
【0012】
第1実施形態の磁気エンコーダ1によれば、上述したように被検出面2aに対して垂直方向にN極及びS極からなる一対の磁極が並んで配置され、その一対の磁極が磁性体2の移動方向の両側に設けられている。したがって、被検出面2aに対して垂直方向に発生する磁束密度が増大し、磁気検出部Sにより検出される磁束密度が増加傾向となる。本実施形態では、ネオジム等の希土類と比べて、磁束密度が低いとされるフェライト磁性粉4を磁性材料として用いたにも拘らず、磁気検出部Sが磁性体2の移動量を検出するために必要な磁束密度を確保することができる。また磁性材料としてフェライト磁性粉4を用いているため、希土類等の高価な磁性粉を用いる場合に比べて経済的な磁性体2を構成できる。
また本実施形態の磁性体2は、移動方向が長手方向で移動方向とは直交する方向が短手方向となる棒形状であるので、磁性体2の移動方向とは直交する方向の寸法が拡大されることを抑えつつ、磁気検出部Sにより検出可能な移動量を広げることができる。
【0013】
ところで、磁気エンコーダを構成する磁性体の一例として、被検出面2aに対して平行な方向に並んで一対のN極及びS極が着磁された磁性体の場合は、平行な方向に強い磁束密度が発生するが、被検出面2aに対して垂直方向の磁束密度が弱くなる傾向がある。そのため、磁性体を構成する磁性材料として、ネオジム等の磁力の強い磁性粉を用いる必要が生じる。しかしネオジム等の希土類は高価な点が問題となる。そこで、このような磁性体を上下2段に配し、被検出面2aに対して垂直方向の磁束密度を高くする策が考えられるが、この場合は、磁束密度の波形に直線性が得られず、位置(移動量)の検出に誤差が生じてしまう点が問題となる。
【0014】
図2(a)には、第1実施形態に係る磁気エンコーダ1の磁束密度の波形を示している。横軸は検出範囲(mm)を示し、縦軸は磁束密度(mT)を示す。
図1、
図2(b)に示すように磁性体2には非磁化領域22が存在するため、磁束密度の波形は、被検出面2aのN極の領域からS極の領域の範囲までにおいて、非磁化領域22に対応する箇所では直線性のあるなだらかな波形になる。したがって、磁気検出部Sによって検出される磁束密度の波形の直線性を向上させることができる。
図2(a)に示すように磁束密度の波形の直線性が、磁気検出部Sによる検出範囲の間で高ければ、磁気検出部Sにより検出する磁性体2の移動量の検出精度を高めることができる。
【0015】
また
図1に示すように第1実施形態に係る非磁化領域22は、第1磁極部20及び第2磁極部21よりも広い領域に設けられている。具体的に図例の非磁化領域22は、第1磁極部20の軸方向の寸法の約4倍程度の寸法に設定されている。
このように非磁化領域22は第1磁極部20及び第2磁極部21よりも広く確保されているので、
図2(a)に示すように磁気検出部Sによって検出される磁束密度の波形の直線性をより一層向上させることができ、磁気検出部Sにより検出する磁性体の移動量の精度もより一層高めることができる。
また非磁化領域22の面積の大きさを調整することで、磁気検出部Sが検出する磁性体2の移動量に応じた磁束密度の波形をコントロールできる。よって磁気検出部Sの検出範囲(可動範囲)に対応するように非磁化領域22を設定すればよいともいえる。
【0016】
磁性体2は磁化容易軸がランダムな方向に向く等方性磁石でもよいが、等方性磁力より磁力が強い異方性磁石を用いることが望ましい。この場合、
図2(b)に示すようにフェライト磁性粉4の磁化容易軸3が磁気検出部S側に向うように配向されるよう製造されたものがより望ましい。
この場合、磁性体2の被検出面2aのN極から垂直方向に発生する磁束密度(
図1矢印参照)を増大させることができる。したがって、磁気検出部Sは磁性体2の移動量を検出するために必要な磁束密度を得ることができ、磁気検出部Sにより検出する磁性体2の移動量の検出精度を一層高めることができる。
【0017】
次に
図3(a)及び
図3(b)を参照しながら、磁気エンコーダ1に設けられた指標部について説明する。
図示されている磁気エンコーダ1は説明のため、第1磁極部20、第2磁極部21、非磁化領域22等、それぞれを区画して示しているが、現物の磁気エンコーダ1に外観上、そのような区画が示されているわけではない。
そこで、
図3(a)や
図3(b)に示すように磁性体2には、移動方向における第1磁極部20側又は第2磁極部21側のいずれか一方に、第1磁極部20又は第2磁極部21の位置を示唆する第1指標部5が設けられてもよい。
この場合、第1指標部5が設けられている箇所が第1磁極部20を示す、といったルールに基づき、それを目安にすることによって、移動方向における第1磁極部20と第2磁極部21の位置関係を認識した上で磁性体2を所定箇所(例えば上述の可動部品のホルダー(不図示)等)に取り付けることができる。したがって、磁気検出部Sに対する磁性体2の第1磁極部20及び第2磁極部21の位置関係を取り違えたままで磁性体2が所定箇所に取り付けられることを回避できる。
【0018】
第1指標部5の構成は、特に限定されず、第1磁極部20又は第2磁極部21の位置を示唆できればよい。
図3(a)には、塗装等のマーキングにより第1磁極部20の位置を示唆した例を示している。具体的には、この例では第1指標部5として、第1磁極部20の下方のS極が着磁された角部にマーキングすることで第1磁極部20を示唆している。また
図3(b)には、形状にて第1磁極部20の位置を示唆した例を示している。具体的には、この例では第1指標部5として、第1磁極部20の下方のS極が着磁された角部を凹状にへこんだ形状にすることで第1磁極部20を示唆している。
【0019】
続いて
図4には第2実施形態に係る磁気エンコーダを示す。
第2実施形態に係る磁気エンコーダ1Aは、第1指標部5の構成、また第1磁極部20及び第2磁極部21が非磁化領域22よりも広い点が第1実施形態とは異なる例である。その他は第1実施形態と同様である。よって、共通する部位には共通の符号を付し、共通する構成、効果の説明は省略する。
【0020】
第2実施形態に係る磁気エンコーダ1Aでは、第1磁極部20の一方角部がR加工状に面取り形成され、被検出面2a側から外観で確認可能な第1指標部5が設けられている。これによれば、第1磁極部20の形成位置が第1指標部5によって示唆されているので、第1指標部5を目安にすることによって、移動方向における第1磁極部20の位置関係を認識した上で所定箇所に取り付けることができる。また
図3(a)、
図3(b)に示す第1指標部5とは異なり、磁気エンコーダ1Aでは第1指標部5を被検出面2a側から確認できるので、第1磁極部20及び第2磁極部21の位置の確認作業が容易になる。
【0021】
また第2実施形態に係る磁気エンコーダ1Aにおいても、被検出面2aに対して垂直方向にN極及びS極からなる一対の磁極が並んで配置されている。そして、一対の磁極が磁性体2の移動方向の両側に設けられている。したがって、被検出面2aに対して垂直方向(
図4矢印参照)に発生する磁束密度を増大させることができる。
そして、磁気エンコーダ1Aにおける第1磁極部20及び第2磁極部21は、非磁化領域22よりも広いので、第1磁極部20及び第2磁極部21が非磁化領域22よりも狭い場合に比べて、被検出面2aから垂直方向に発生する磁束密度のピーク値が、高くなるように設定することができる。
【0022】
続いて
図5には第3実施形態に係る磁気エンコーダを示す。
第3実施形態に係る磁気エンコーダ1Bは、第1指標部5の構成が異なり、第1指標部5に加えて被検出面2aの位置を示唆する第2指標部6が設けられている点でも異なる。第1磁極部20及び第2磁極部21が非磁化領域22よりも広い点は第2実施形態とは同様である。その他は第1実施形態と同様である。よって、共通する部位には共通の符号を付し、共通する構成、効果の説明は省略する。
【0023】
図5(b)に示すように第3実施形態に係る磁気エンコーダ1Bでは、複数の第1指標部5,5が第1磁極部20の一方角部だけでなく、第2磁極部21の角部にも斜めにカットされた形状の面取りが形成され、第1指標部5,5が外観でわかるように構成されている。この場合、磁気エンコーダ1Bが組付けられる可動部品のホルダー(不図示)は、第1指標部5,5の形状に応じた形状に形成されている。したがって、第1磁極部20、第2磁極部21が所望する位置に配置されるようにパズルのようにホルダーに嵌め入れられる構造となっている。これによれば、第1磁極部20、第2磁極部21がホルダー内の所望する側に位置していない状態では、磁気エンコーダ1Bをホルダーに適正に嵌め入れられない。つまり、第1指標部5,5を目安にホルダーの所定箇所に適正に嵌め入れられることに基づいて、第1指標部5,5によって第1磁極部20又は第2磁極部21の位置が示唆されていることになる。また磁気エンコーダ1Bも磁気エンコーダ1Aと同様に第1指標部5,5を被検出面2a側から確認できるので、第1磁極部20及び第2磁極部21の位置の確認作業が容易になる。
【0024】
磁気エンコーダ1Bを構成する磁性体2には、被検出面2aとは反対面2bに、被検出面2aの位置を示唆する第2指標部6が設けられている。
図5(a)に示す第2指標部6は、反対面2bから突出して形成された円柱形状に形成され、第1指標部5と同様に第2指標部6が外観でわかるように構成されている。この場合、磁気エンコーダ1Bが組付けられる可動部品のホルダーは、第2指標部6の形状に応じた形状に形成され、第2指標部6が嵌め入れられる構造となっている。この例では円柱形状の第2指標部6に形状に応じて、ホルダー側には円柱形状の凹所が形成される。よって、これによれば、第2指標部6が設けられている箇所が被検出面2aとは反対側の面(2b)を示す、といったルールに基づき、それを目安にすることによって、被検出面2aの位置を認識した上で、磁性体2を可動部品のホルダー等の所定箇所に取り付けることができる。したがって、磁性体2の被検出面2aを識別できるので、磁気検出部Sに対する磁性体2の被検出面2aの位置関係を取り違えたままで磁性体2が所定箇所に取り付けられることを回避できる。
【0025】
また第3実施形態に係る磁気エンコーダ1Bにおいても、被検出面2aに対して垂直方向にN極及びS極からなる一対の磁極が並んで配置されている点は第1及び第2実施形態と共通し、共通の効果を奏する。そして、磁気エンコーダ1Aにおける第1磁極部20及び第2磁極部21は、非磁化領域22よりも広いので、第1磁極部20及び第2磁極部21が非磁化領域22よりも狭い場合に比べて、被検出面2aから垂直方向に発生する磁束密度のピーク値が、高くなるように設定することができる点は第2実施形態と共通する。
【0026】
上記各実施形態では、棒状体の磁性体2とした磁気エンコーダ1,1A,1Bの例について述べたが、これに限らず、例えば、平板形状でも球形状であってもよい。また磁性体2は、上述の焼結磁石等に限定されず、主材となる磁性ゴム材料に樹脂材料を添加してなる磁石でもよい。さらに図例では第1磁極部20は上方がN極、下方がS極で第2磁極部21はその逆とした例を示しているが、これに限定されず、第1磁極部20の上方がS極、下方がN極で、第2磁極部21がその逆であってもよい。また非磁化領域22の設定エリアは、図例に限定されるものでなく、磁気検出部Sによる検出範囲(可動範囲)に応じて直線性を持たせたい領域を考慮して設定するとよい。また、上記実施形態における非磁化領域22は、積極的な着磁を行っていない領域のことを意味し、ごく弱く磁化されている領域を除外するものではない。さらに磁性体2に設けられた第1指標部5も図例に限定されず、第2磁極部21側に設けても良いし、例えば凸状、凹状、凹凸状、壁状であってもよい。またたとえば磁性体2の反対面2bに凹部を設けるようにしてもよい。その形状は円形でも方形でも三角形でもよく、特に限定されない。磁性体2に設けられた第2指標部6も第1指標部5と同様に図例に限定されるものではない。例えば
図5(a)に示す程の大きさに限定されず、目印になる例えば凸状、凹状、凹凸状、壁状のものであってもよいし、
図3(a)に示すように塗装等のマーキングにより被検出面2aの位置を示唆するものであってもよい。要は、第1指標部5も第2指標部6も、外観上、NSの磁極の位置や被検出面2aを認識できる構成であればよい。また、第2指標部6は、第3実施形態の磁性体2に限らず、第1又は第2実施形態の磁性体2に適用してもよい。そして磁気エンコーダ1の適用箇所は特に限定されないが、例えば直動するワイヤー、車両のシフト部分、事務機器、各種産業機械等、直線的に往復移動する部分の移動量を検出したい部位で使用される。
【符号の説明】
【0027】
1,1A,1B 磁気エンコーダ
S 磁気検出部
2 磁性体
2a 被検出面
2b 反対面
20 第1磁極部
21 第2磁極部
22 非磁化領域
3 磁化容易化軸
4 磁性粉
5 第1指標部
6 第2指標部