(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H01R13/42 F
H01R13/42 Z
(21)【出願番号】P 2019175830
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 好一
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】浜田 賢人
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-082396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に相手側端子と接続される端子本体を有し、前記端子本体が、ランス係止部と、リテーナ係止部と、被駆動部と、を含む端子と、
前記端子が後方から端子挿入方向に挿入されて収容される端子収容室が形成され、前記端子収容室と交差するリテーナ挿入孔が形成され、前記端子の前記ランス係止部に係止するハウジングランスを含むコネクタハウジングと、
前記リテーナ挿入孔に前記端子挿入方向と直交するリテーナ挿入方向に一直線状に挿入されるリテーナと、を備え、
前記リテーナが、前記端子が前記端子収容室の正規挿入位置にあるときに前記リテーナ係止部に係止することにより前記端子を抜け止めする抜止係止部と、前記抜止係止部側の端部である前端部から前記端子挿入方向の反対側に向けて頂部まで上り勾配で傾斜し、前記端子が前記正規挿入位置に達しない半挿入状態にあるときに前記被駆動部を前記リテーナ挿入方向に押圧するに伴って前記端子を正規挿入位置へ押し込む押込駆動面と、を含み、
前記端子の半挿入状態で、前記リテーナ挿入孔に挿入される前記リテーナが、前記押込駆動面で前記端子の前記被駆動部に対して最初に当接する位置である初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向に関して前記前端部と前記頂部の頂点との中央位置よりも前記頂部側に配置される当接領域で、前記被駆動部に当接するように構成されて
おり、
前記端子収容室に挿入される前記端子が前記ハウジングランスに対して最初に当接する位置である初期当接位置に配置される半挿入状態にあって、且つ前記リテーナが初期当接位置にあるときに、前記押込駆動面の前記当接領域が、前記頂部に隣接して配置される、コネクタ。
【請求項2】
前側に相手側端子と接続される端子本体を有し、前記端子本体が、ランス係止部と、リテーナ係止部と、被駆動部と、を含む端子と、
前記端子が後方から端子挿入方向に挿入されて収容される端子収容室が形成され、前記端子収容室と交差するリテーナ挿入孔が形成され、前記端子の前記ランス係止部に係止するハウジングランスを含むコネクタハウジングと、
前記リテーナ挿入孔に前記端子挿入方向と直交するリテーナ挿入方向に一直線状に挿入されるリテーナと、を備え、
前記リテーナが、前記端子が前記端子収容室の正規挿入位置にあるときに前記リテーナ係止部に係止することにより前記端子を抜け止めする抜止係止部と、前記抜止係止部側の端部である前端部から前記端子挿入方向の反対側に向けて頂部まで上り勾配で傾斜し、前記端子が前記正規挿入位置に達しない半挿入状態にあるときに前記被駆動部を前記リテーナ挿入方向に押圧するに伴って前記端子を正規挿入位置へ押し込む押込駆動面と、を含み、
前記端子の半挿入状態で、前記リテーナ挿入孔に挿入される前記リテーナが、前記押込駆動面で前記端子の前記被駆動部に対して最初に当接する位置である初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向に関して前記前端部と前記頂部の頂点との中央位置よりも前記頂部側に配置される当接領域で、前記被駆動部に当接するように構成されており、
前記端子収容室に挿入される前記端子が前記ハウジングランスに対して最初に当接する位置である初期当接位置に対して前記端子挿入方向の反対側に配置される半挿入状態にあって、且つ前記リテーナが初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面の前記当接領域が、前記頂部に隣接して配置される、コネクタ。
【請求項3】
前記リテーナに、前記端子が挿入される断面矩形の端子挿入孔が形成され、
前記端子挿入孔が、前記リテーナ挿入方向に対向する一対の第1縁部と、前記リテーナ挿入方向及び前記端子挿入方向の双方に対して直交する直交方向に対向する一対の第2縁部と、によって取り囲まれ、
前記一対の第1縁部のうち前記リテーナ挿入方向の反対側の前記第1縁部に、前記押込駆動面が形成されている、請求項1
または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記リテーナに、前記端子が挿入される断面矩形の端子挿入孔が形成され、
前記端子挿入孔が、前記リテーナ挿入方向に対向する一対の第1縁部と、前記リテーナ挿入方向及び前記端子挿入方向の双方に対して直交する直交方向に対向する一対の第2縁部と、によって取り囲まれ、
前記端子の前記被駆動部が、前記端子本体から前記直交方向の外向きに突出する一対の被駆動突起を含み、
前記押込駆動面が、前記端子挿入方向の反対側から見て前記一対の第2縁部にそれぞれ段部状に形成され、対応する前記一対の被駆動突起をそれぞれ駆動する一対の押込駆動面を含む、請求項1
または2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前側に相手側端子と接続される端子本体を有し、前記端子本体が、ランス係止部と、リテーナ係止部と、被駆動部と、を含む端子と、
前記端子が後方から端子挿入方向に挿入されて収容される端子収容室が形成され、前記端子収容室と交差するリテーナ挿入孔が形成され、前記端子の前記ランス係止部に係止するハウジングランスを含むコネクタハウジングと、
前記リテーナ挿入孔に前記端子挿入方向と直交するリテーナ挿入方向に一直線状に挿入されるリテーナと、を備え、
前記リテーナが、前記端子が前記端子収容室の正規挿入位置にあるときに前記リテーナ係止部に係止することにより前記端子を抜け止めする抜止係止部と、前記抜止係止部側の端部である前端部から前記端子挿入方向の反対側に向けて頂部まで上り勾配で傾斜し、前記端子が前記正規挿入位置に達しない半挿入状態にあるときに前記被駆動部を前記リテーナ挿入方向に押圧するに伴って前記端子を正規挿入位置へ押し込む押込駆動面と、を含み、
前記端子の半挿入状態で、前記リテーナ挿入孔に挿入される前記リテーナが、前記押込駆動面で前記端子の前記被駆動部に対して最初に当接する位置である初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向に関して前記前端部と前記頂部の頂点との中央位置よりも前記頂部側に配置される当接領域で、前記被駆動部に当接するように構成されており、
前記リテーナに、前記端子が挿入される断面矩形の端子挿入孔が形成され、
前記端子挿入孔が、前記リテーナ挿入方向に対向する一対の第1縁部と、前記リテーナ挿入方向及び前記端子挿入方向の双方に対して直交する直交方向に対向する一対の第2縁部と、によって取り囲まれ、
前記端子の前記被駆動部が、前記端子本体から前記直交方向の外向きに突出する一対の被駆動突起を含み、
前記押込駆動面が、前記端子挿入方向の反対側から見て前記一対の第2縁部にそれぞれ段部状に形成され、対応する前記一対の被駆動突起をそれぞれ駆動する一対の押込駆動面を含む、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
リテーナの押込みに伴って、半挿入状態の端子を正規挿入位置に矯正することのできるコネクタが提案されている。
例えば、特許文献1では、ハウジングの端子収容孔と連通可能な連絡孔を有するリテーナが、ハウジングのリテーナ差込溝に差し込まれる。連絡孔の上面に形成された係止用段部が、端子金具の主部の後方に形成されるアゴ状凹部内に嵌まることにより、端子の抜け止めが達成される。
【0003】
リテーナの凸部が、ハウジングのガイド溝によって案内される。ガイド溝は、前後に位置をずらして配置された2条の直線部と、2条の直線状部間を接続する傾斜部とを有するクランク状に形成されている。
リテーナの凸部が、ガイド溝の傾斜部の底面に乗り上げている状態で、リテーナが、仮係止位置になる。仮係止位置では、リテーナの係止用段部の前縁に配置される小さな面取り状の当接面が、端子金具の主部の後縁(アゴ状凹部との境に相当)に当接する。
【0004】
仮係止位置のリテーナが、さらに押し込まれると、リテーナが仮係止位置から本係止位置に向かって前方の斜め下方に変位する過程で、端子金具が前方への押圧力を受けて、正規挿入位置に押し込まれる。また、端子がハウジングランスに係止され、リテーナの係止用段部が端子のアゴ内に嵌められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、リテーナの凸部をハウジングのガイド溝によってクランク状の2段階に案内する構造を採用しているため、構造が複雑になる。また、リテーナが小さな面取り状の当接面を用いて、端子を正規挿入位置に押し込む構造である。このため、正規挿入位置からのずれ量が大きいときの半挿入状態の端子を正規挿入位置に矯正することができず、矯正可能な前記ずれ量の範囲が狭い。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構造で、矯正可能な正規挿入位置からのずれ量の範囲を広くすることができるコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、前側に相手側端子と接続される端子本体(20)を有し、前記端子本体が、ランス係止部(25)と、リテーナ係止部(26)と、被駆動部(27;27P)と、を含む端子(2)と、前記端子が後方から端子挿入方向(K1)に挿入されて収容される端子収容室(80)が形成され、前記端子収容室と交差するリテーナ挿入孔(89)が形成され、前記端子の前記ランス係止部に係止するハウジングランス(88)を含むコネクタハウジング(3)と、前記リテーナ挿入孔に前記端子挿入方向と直交するリテーナ挿入方向(R1)に一直線状に挿入されるリテーナ(5;5P)と、を備え、前記リテーナが、前記端子が前記端子収容室の正規挿入位置にあるときに前記リテーナ係止部に係止することにより前記端子を抜け止めする抜止係止部(71)と、前記抜止係止部側の端部である前端部(72a;60a)から前記端子挿入方向の反対側(K2)に向けて頂部(72b;60b)まで上り勾配で傾斜し、前記端子が前記正規挿入位置に達しない半挿入状態にあるときに前記被駆動部を前記リテーナ挿入方向に押圧するに伴って前記
端子を正規挿入位置へ押し込む押込駆動面(72;60)と、を含み、前記端子の半挿入状態で、前記リテーナ挿入孔に挿入される前記リテーナが、前記押込駆動面で前記端子の前記被駆動部に対して最初に当接する位置である初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向に関して前記前端部と前記頂部の頂点(72c;60c)との中央位置(C1)よりも前記頂部側に配置される当接領域(A)で、前記被駆動部に当接するように構成されており、前記端子収容室に挿入される前記端子が前記ハウジングランスに対して最初に当接する位置である初期当接位置に対して前記端子挿入方向の反対側に配置される半挿入状態にあって、且つ前記リテーナが初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面(72)の前記当接領域(A)が、前記頂部(72b)に隣接して配置されている、コネクタ(1;1P)を提供する。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前側に相手側端子と接続される端子本体を有し、前記端子本体が、ランス係止部と、リテーナ係止部と、被駆動部と、を含む端子と、前記端子が後方から端子挿入方向に挿入されて収容される端子収容室が形成され、前記端子収容室と交差するリテーナ挿入孔が形成され、前記端子の前記ランス係止部に係止するハウジングランスを含むコネクタハウジングと、前記リテーナ挿入孔に前記端子挿入方向と直交するリテーナ挿入方向に一直線状に挿入されるリテーナと、を備え、前記リテーナが、前記端子が前記端子収容室の正規挿入位置にあるときに前記リテーナ係止部に係止することにより前記端子を抜け止めする抜止係止部と、前記抜止係止部側の端部である前端部から前記端子挿入方向の反対側に向けて頂部まで上り勾配で傾斜し、前記端子が前記正規挿入位置に達しない半挿入状態にあるときに前記被駆動部を前記リテーナ挿入方向に押圧するに伴って前記端子を正規挿入位置へ押し込む押込駆動面と、を含み、前記端子の半挿入状態で、前記リテーナ挿入孔に挿入される前記リテーナが、前記押込駆動面で前記端子の前記被駆動部に対して最初に当接する位置である初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向に関して前記前端部と前記頂部の頂点との中央位置よりも前記頂部側に配置される当接領域で、前記被駆動部に当接するように構成されており、前記端子収容室に挿入される前記端子が前記ハウジングランスに対して最初に当接する位置である初期当接位置に対して前記端子挿入方向の反対側に配置される半挿入状態にあって、且つ前記リテーナが初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面(60)の前記当接領域(A)が、前記頂部(60b)に隣接して配置されている、コネクタを提供する。
【0011】
請求項3に記載の発明のように、請求項1または2において、前記リテーナに、前記端子が挿入される断面矩形の端子挿入孔が形成され、前記端子挿入孔が、前記リテーナ挿入方向に対向する一対の第1縁部(53b,55a;55b,56a;56b,54a)と、前記リテーナ挿入方向及び前記端子挿入方向の双方に対して直交する直交方向に対向する一対の第2縁部(59a)と、によって取り囲まれ、前記一対の第1縁部のうち前記リテーナ挿入方向の反対側(R2)の前記第1縁部(55a,56a,54a)に、前記押込駆動面(72)が形成されていてもよい。
【0012】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1または2において、前記リテーナに、前記端子が挿入される断面矩形の端子挿入孔が形成され、前記端子挿入孔が、前記リテーナ挿入方向に対向する一対の第1縁部と、前記リテーナ挿入方向及び前記端子挿入方向の双方に対して直交する直交方向に対向する一対の第2縁部と、によって取り囲まれ、前記端子の前記被駆動部が、前記端子本体から前記直交方向の外向きに突出する一対の被駆動突起(27P)を含み、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向の反対側から見て前記一対の第2縁部にそれぞれ段部状に形成され、対応する前記一対の被駆動突起をそれぞれ駆動する一対の押込駆動面(60)を含んでいてもよい。
請求項5に記載の発明は、前側に相手側端子と接続される端子本体を有し、前記端子本体が、ランス係止部と、リテーナ係止部と、被駆動部と、を含む端子と、前記端子が後方から端子挿入方向に挿入されて収容される端子収容室が形成され、前記端子収容室と交差するリテーナ挿入孔が形成され、前記端子の前記ランス係止部に係止するハウジングランスを含むコネクタハウジングと、前記リテーナ挿入孔に前記端子挿入方向と直交するリテーナ挿入方向に一直線状に挿入されるリテーナと、を備え、前記リテーナが、前記端子が前記端子収容室の正規挿入位置にあるときに前記リテーナ係止部に係止することにより前記端子を抜け止めする抜止係止部と、前記抜止係止部側の端部である前端部から前記端子挿入方向の反対側に向けて頂部まで上り勾配で傾斜し、前記端子が前記正規挿入位置に達しない半挿入状態にあるときに前記被駆動部を前記リテーナ挿入方向に押圧するに伴って前記端子を正規挿入位置へ押し込む押込駆動面と、を含み、前記端子の半挿入状態で、前記リテーナ挿入孔に挿入される前記リテーナが、前記押込駆動面で前記端子の前記被駆動部に対して最初に当接する位置である初期当接位置に配置されるときに、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向に関して前記前端部と前記頂部の頂点との中央位置よりも前記頂部側に配置される当接領域で、前記被駆動部に当接するように構成されており、前記リテーナに、前記端子が挿入される断面矩形の端子挿入孔が形成され、前記端子挿入孔が、前記リテーナ挿入方向に対向する一対の第1縁部と、前記リテーナ挿入方向及び前記端子挿入方向の双方に対して直交する直交方向に対向する一対の第2縁部と、によって取り囲まれ、前記端子の前記被駆動部が、前記端子本体から前記直交方向の外向きに突出する一対の被駆動突起(27P)を含み、前記押込駆動面が、前記端子挿入方向の反対側から見て前記一対の第2縁部にそれぞれ段部状に形成され、対応する前記一対の被駆動突起をそれぞれ駆動する一対の押込駆動面(60)を含んでいる、コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、リテーナがリテーナ挿入孔に対してリテーナ挿入方向に一直線状に挿入される。このため、リテーナが2つの直線状部で案内されて挿入される従来の場合と比較して、構造を簡素化することができる。また、端子が半挿入状態にあって、且つリテーナ挿入孔に挿入されるリテーナが、当該端子の被駆動部に対して押込駆動面で最初に当接する初期当接位置にあるときに、押込駆動面が、端子挿入方向に関して前端部と頂部の頂点との中央位置よりも頂部側に配置される当接領域で、端子の被駆動部に対して当接する。この状態から、リテーナをリテーナ挿入方向にさらに挿入することにより、押込駆動面の前記当接領域から前端部までの領域によって、雌端子が、端子挿入方向に沿って正規挿入位置へ押し込まれる。したがって、端子挿入方向に関して押込駆動面の半分を超える広い範囲の領域を端子の正規挿入位置への押込駆動に寄与させることができる。このため、正規挿入位置からのずれ量が大きいときの半挿入状態の端子を簡単な構造で正規挿入位置に矯正することができる。
【0014】
また、端子がハウジングランスに対する初期当接位置にあって、リテーナが端子の被駆動部に対する初期当接位置にあるときに、リテーナの押込駆動面において頂部に隣接して配置される当接領域が、雌端子の被駆動部に当接する。したがって、端子挿入方向に関して押込駆動面の大部分の領域を端子の正規挿入位置への押込駆動に寄与させることができる。換言すると、リテーナによって矯正可能な、端子の正規挿入位置からのずれ量の範囲を広くすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、端子が初期当接位置に対して端子挿入方向の反対側に配置される半挿入状態にあっても、リテーナによって、端子を正規挿入位置に矯正することができる。すなわち、リテーナによって矯正可能な、端子の正規挿入位置からのずれ量の範囲を格段に広くすることができる。
請求項3に記載の発明では、リテーナの端子挿入孔において、リテーナ挿入方向に対向する一対の第1縁部のうち、リテーナ挿入方向の反対側の縁部に、押込駆動面が形成される。このため、構造を簡素化することができる。
【0016】
請求項4乃至5に記載の発明では、リテーナの端子挿入孔において、リテーナ挿入方向及び端子挿入方向の双方に対して直交する直交方向に対向する一対の第2縁部に、端子の一対の被駆動突起がそれぞれ駆動する段部状の一対の押込駆動面が配置される。このため、半挿入状態の端子をリテーナによって安定した姿勢で押し込んで正規挿入位置に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、雌端子が正規挿入位置に配置されるときのコネクタの断面図であり、
図2のIII-III断面図に相当する。
【
図4】
図4は、雌端子の斜め上方からの斜視図である。
【
図11】
図11は、リテーナ挿入前のコネクタの断面図である。
【
図12】
図12は、コネクタハウジングとリテーナの分解断面図である。
【
図13】
図13Aは、ハウジングランスに対して初期当接位置にある雌端子に対して、リテーナが初期当接位置で当接する状態を示すコネクタの要部の断面図である。
図13Bは、リテーナの挿入によって端子が正規挿入位置に矯正された状態を示すコネクタの要部の拡大断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第2実施形態における雌端子の斜め上方からの斜視図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態における雌端子の平面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態における雌端子の拡大前面図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態におけるリテーナの正面図である。
【
図20】
図20A、
図20B及び
図20Cは、第2実施形態のコネクタの要部の拡大断面図であり、リテーナの挿入によって雌端子が正規挿入位置に矯正される工程を順次に示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図2は、コネクタの正面図である。
図3は、雌端子が正規挿入位置に配置されるときのコネクタの断面図であり、
図2のIII-III断面図に相当する。
【0019】
図1に示すように、コネクタ1は、図示しない相手側コネクタに対して、連結方向X1(前側)に連結される。
図1~
図3に示すように、コネクタ1は、複数の雌端子2と、コネクタハウジング3と、第1シール部材4Aと、第2シール部材4Bと、リテーナ5と、ロックアーム6と、カバー7とを含む。
図1に示すように、ロックアーム6は、コネクタハウジング3に対して、同一軸線上に配置される一対の支軸104(
図1では一方の支軸104のみを示す)の回りに、
図1に示すように相手側コネクタ(図示せず)に対する連結状態をロックするロック位置と、非ロック位置(図示せず)とに回転変位可能に支持されている。
【0020】
ロックアーム6は、支軸104と平行に配置され相手側コネクタに係止される係止アーム61と、係止アーム61の一対の端部61aから直交状に延設される支持アーム62とを含む。支持アーム62に形成された支軸挿通孔62aに対して、支軸104が挿入嵌合されている。
コネクタハウジング3は、絶縁性の合成樹脂により形成されている。
図3に示すように、コネクタハウジング3は、端子収容部8と、フード10と、電線保持部11とを含む。端子収容部8は、複数の雌端子2をそれぞれ収容する端子収容室80を形成する。フード10は、端子収容部8の後端部8bからフード連結部91を介して一体に形成されており、端子収容部8を取り囲む角筒である。電線保持部11は、角筒状に形成されており、フード10に対して端子収容部8の反対側へ延びている。
【0021】
電線保持部11は、内部に第2シール部材4Bを介して複数の電線200を保持する。第2シール部材4Bには、各電線200を挿通させる電線挿通孔4BHが形成されている。第2シール部材4Bは、電線保持部11の内壁面11aと各電線200との間を封止する。カバー7は、電線保持部11の後端部11bを閉塞するように、電線保持部11に対して着脱可能に取り付けられる。
【0022】
次いで、雌端子2を説明する。
図4は、雌端子2の斜め上方からの斜視図である。
図5は、雌端子2の一部破断側面図である。
図6は、雌端子2の拡大前面図である。
図4~
図6に示すように、雌端子2は、角筒状の端子本体20と、端子本体20と溝形状の接続部30を介して接続された電線接続部40とを含む。雌端子2は、対応する端子収容室80に対して、連結方向X1と同側である端子挿入方向K1に挿入される(
図3を参照)。
【0023】
端子本体20は、天壁部21と、底壁部22と、一対の側壁部23と、ランス駆動部24と、ランス係止部としてのランス係止孔25と、リテーナ係止部26と、被駆動部27と、接触部28を有する弾性舌片29とを含む。
図5に示すように、電線接続部40は、電線200の芯線201に圧着されるワイヤーバレル41と、電線200の被覆部分202に圧着されるインシュレーションバレル42とを含む。
【0024】
図5及び
図6に示すように、底壁部22は、二重に重ね合わされた外側(下側)の底壁部22aと内側(上側)の底壁部22bとを含む。外側の底壁部22aは、一方の側壁部23の下縁から直交状に延設されており、内側の底壁部22bは、他方の側壁部23の下縁から直交状に延設されている。天壁部21は、一対の側壁部23の上縁部間を接続している。天壁部21、底壁部22及び一対の側壁部23によって、角筒状の端子本体20の外壁部が構成されている。
【0025】
図4及び
図5に示すように、端子本体20は、前端部20aと、後端部20bとを含む。端子本体20の前端部20aに、相手側の雄端子(図示せず)が挿入される挿入開口20cが形成されている。
端子本体20の後端部20bの一部が、リテーナ5に係止するアゴ状のリテーナ係止部26を構成している。被駆動部27は、リテーナ係止部26の肩部によって形成されており、リテーナ5の押込駆動面72(
図10及び
図13Aを参照)によって駆動される。
【0026】
端子本体20の後端部20bの他の一部が、接続部30を介してワイヤーバレル41と接続されている。
ランス係止孔25は、天壁部21に形成されている。ランス係止孔25の前側の縁部は、
図5に示すように、側面視で三角形状に膨出されている。ランス駆動部24は、ランス係止孔25の前側に配置される。ランス駆動部24は、前記三角形状に膨出された部分の外面によって形成される傾斜面である。ランス駆動部24は、端子挿入方向K1の反対側K2に向かって上り勾配の傾斜面である。
【0027】
図13Bに示すように、ランス係止孔25に対して、コネクタハウジング3のハウジングランス88が挿入係止される。これにより、雌端子2が、対応する端子収容室80から後方へ抜けないように規制される。ランス駆動部24は、雌端子2の挿入時に、ハウジングランス88の係止突起88aを乗り上げさせるように駆動し、係止突起88aは、ランス駆動部24を乗り越えた後、ランス係止孔25に係止される。
【0028】
図5に示すように、弾性舌片29は、内側の底壁部22bの一部を山形状に切り起こして形成される片持ち状の舌片である。
次いで、コネクタハウジング3を説明する。
図3に示すように、コネクタハウジング3は、端子収容部8と、フード10と、電線保持部11とを含む。
【0029】
図1~
図3に示すように、端子収容部8は、端子挿入方向K1側の端部である前端部8aと、端子挿入方向K1の反対側の端部である後端部8bとを含み、略直方体形状に形成されている。端子収容部8は、合成樹脂によって一体に形成されている。
端子収容部8は、天壁部81と、底壁部82と、一対の側壁部83と、前壁部84と、天壁部81と平行な第1中間壁部85と第2中間壁部86と、左右方向に隣接する端子収容室80間を仕切る複数の隔壁部87(
図2を参照)と、複数のハウジングランス88(
図3を参照)と、リテーナ挿入孔89と、シール配置部90と、フード連結部91とを含む。
【0030】
図1に示すように、フード連結部91は、天壁部81と底壁部82と一対の側壁部83とを取り囲む外向きの四角環状のフランジである。フード連結部91の外縁に対して直交するように、角筒状のフード10が連結されている。
フード10は、筒状であり、端子収容部8を取り囲んでいる。フード10は、天壁部101と、底壁部102と、一対の側壁部103とを含む。一対の側壁部103の外壁面から一対の支軸104が突出形成されている。
図3に示すように、底壁部102には、リテーナ挿通孔105が形成されている。
【0031】
図3に示すように、リテーナ挿入孔89は、シール配置部90の前側に配置されている。リテーナ5は、フード10の底壁部102のリテーナ挿通孔105を通して、端子収容部8のリテーナ挿入孔89に挿入される。
シール配置部90は、天壁部81と底壁部82と一対の側壁部83との外壁面において、フード連結部91の前側に配置されている。シール配置部90に対して外嵌された第1シール部材4Aが、図示しない相手側コネクタの相手側フードに対して内嵌される。
【0032】
図2及び
図3に示すように、端子収容部8には、対応する隔壁部87を介して左右方向に隣接して並ぶ例えば16個の端子収容室80が、上下3段に配列されている。
上段の各端子収容室80は、天壁部81と第1中間壁部85との間で、左右方向に隣接する隔壁部87によって仕切られている。中段の端子収容室80は、第1中間壁部85と第2中間壁部86との間で、左右方向に隣接する隔壁部87によって仕切られている。下段の端子収容室80は、第2中間壁部86と底壁部82との間で、左右方向に隣接する隔壁部87によって仕切られている。
【0033】
図3に示すように、各ハウジングランス88は、端子収容部8の前端部8aにおいて、天壁部81、第1中間壁部85及び第2中間壁部86のそれぞれの一部を構成しており、対応する端子収容室80内に突出する弾性舌片である。
図13Bに示すように、各ハウジングランス88は、対応する端子収容室80側に突出する係止突起88aを含む。各ハウジングランス88は、対応する端子収容室80の正規挿入位置に挿入された雌端子2のランス係止孔25に対して係止突起88aを挿入係止することにより、雌端子2を抜け止めする。
【0034】
前壁部84は、前面に相当する外壁面84aと、後面に相当する内壁面84bとを含む。前壁部84には、各端子収容室80の前側に連通する雄端子挿入孔92が形成されている。雄端子挿入孔92は、後方に向かって狭くなる四角錐台状に形成されている。
図13Bに示すように、前壁部84の内壁面84bにおける、雄端子挿入孔92の開口縁部が、正規挿入状態の雌端子2の端子本体20の前端部20aが当接する位置決め部93を構成している。すなわち、位置決め部93は、端子収容室80に後方から挿入される雌端子2の端子本体20の前端部20aの前止まり部となり、雌端子2を正規挿入位置に位置決めする。
【0035】
次いで、リテーナ5を説明する。
図7は、リテーナ5の概略斜視図である。
図8は、リテーナ5の正面図である。
図9は、リテーナ5の側面図である。
図10は、リテーナ5の縦断面図であり、
図8のX-X断面図に相当する。
図11は、コネクタハウジング3とリテーナ5との分解断面図であり、リテーナ5が挿入される前の状態を示している。
図12はコネクタ1の底面図であり、リテーナ5が装着された状態を示している。
【0036】
図7~
図9に示すように、リテーナ5は、端子収容部8のリテーナ挿入孔89(
図11を参照)に挿入される本体部50と、本体部50から片持ち状に延設された一対の弾性アーム51とを含む。
本体部50は、上下3段の端子収容室80(
図3を参照)に対応して、上下3段の略格子状に配列された端子挿入孔52を形成している。
【0037】
図7及び
図8に示すように、本体部50は、左右に離隔する一対の上枠53と、下枠54と、第1中間枠55と、第2中間枠56と、2対の第1側枠57と、一対の第2側枠58と、複数の仕切り枠59とを含む。
一対の上枠53と下枠54と第1中間枠55と第2中間枠56とが、横枠である。上枠53と下枠54との間で、第1中間枠55が、第2中間枠56の上方に配置されている。2対の第1側枠57と一対の第2側枠58と複数の仕切り枠59とが、縦枠である。
【0038】
各対の第1側枠57は、対応する上枠53の左右方向の端部と第1中間枠55とを連結している。一対の第2側枠58は、第1中間枠55の左右方向の端部と第2中間枠56の左右方向の端部と下枠54の左右方向の端部とを連結している。
図10に示すように、上枠53は、上縁部53aと下縁部53bとを含む。下枠54は、上縁部54aと下縁部54bとを含む。第1中間枠55は、上縁部55aと下縁部55bとを含む。第2中間枠56は、上縁部56aと下縁部56bとを含む。
【0039】
各上枠53の下縁部53bと第1中間枠55の上縁部55aと(リテーナ挿入方向R1に対向する一対の第1縁部を構成)の間で、左右方向に隣接する上段の端子挿入孔52が、縦枠である仕切り枠59によって仕切られている。
第1中間枠55の下縁部55bと第2中間枠56の上縁部56aと(リテーナ挿入方向R1に対向する一対の第1縁部を構成)の間で、左右方向に隣接する中段の端子挿入孔52が、縦枠である仕切り枠59によって仕切られている。
【0040】
第2中間枠56の下縁部56bと下枠54の上縁部54aと(リテーナ挿入方向R1に対向する一対の第1縁部を構成)の間で、左右方向に隣接する下段の端子挿入孔52が、縦枠である仕切り枠59によって仕切られている。
図8に示すように、上段、中断、下段の端子挿入孔52は、左右方向に位置をずらして配置されている。各端子挿入孔52の両側部を仕切る一対の仕切り枠59における一対の側縁部59aが、リテーナ挿入方向R1及び端子挿入方向K1の双方に対して直交する直交方向V(
図7も参照)に対向する、一対の第2縁部を構成する。
【0041】
図10に示すように、第1中間枠55と第2中間枠56と下枠54とは、端子挿入方向K1側の端面で形成される抜止係止部71と、第1中間枠55の上縁部55aと第2中間枠56の上縁部56aと下枠54の上縁部54aにそれぞれ形成された押込駆動面72とを含む。
抜止係止部71は、雌端子2が端子収容室80の正規挿入位置に配置されるときにリテーナ係止部26に係止することにより、雌端子2を抜け止めする(
図13Bを参照)。
【0042】
押込駆動面72は、抜止係止部71側の端部である前端部72aから端子挿入方向K1の反対側K2に向けて頂部72bまで上り勾配で傾斜する傾斜面である。押込駆動面72は、雌端子2が正規挿入位置に達しない半挿入状態(
図13Aを参照)にあるときに、雌端子2の被駆動部27を端子挿入方向K1と直交するリテーナ挿入方向R1に押圧するに伴って、雌端子2を正規挿入位置へ押し込む(
図13Bを参照)。
【0043】
一対の弾性アーム51は、下枠54の一対の端部54cから、一対の第2側枠58と平行に上方に延びる片持ちアームである。一対の弾性アーム51は、先端部51aにおいて内向きに突出する係止突起51bを有している。図示していないが、係止突起51bが端子収容部8の係止部に係止することにより、リテーナ5は、仮係止位置と本係止位置とに位置保持される。
【0044】
図11に示すように、リテーナ5は、リテーナ挿入孔89に下方からリテーナ挿入方向R1に挿入されて、リテーナ5の端子挿入孔52に対して雌端子2を挿通可能な仮係止位置(図示せず)と、仮係止位置よりも上方の位置であって雌端子2を抜け止めする本係止位置(
図3を参照)とに変位可能である。
リテーナ5が仮係止位置にある状態で、各雌端子2をリテーナ5の対応する端子挿入孔52に挿通させつつ、対応する端子収容室80に対して挿入した後、リテーナ5を本係止位置側へ上昇変位させる。
【0045】
図3に示すように、各雌端子2が、端子挿入方向K1に関して正規挿入位置に挿入される場合、リテーナ5を本係止位置に上昇させることができる。本係止位置にあるリテーナ5の第1中間枠55と第2中間枠56と下枠54とが、それぞれの上側の端子収容室80内に進入し、抜止係止部71が、対応する雌端子2のリテーナ係止部26と係止される。これにより、リテーナ5は、各雌端子2の抜け止め機能を果たす。
【0046】
一方、少なくとも1つの雌端子2が、半挿入状態にある場合、当該半挿入状態にある雌端子2に対応する枠(第1中間枠55、第2中間枠56又は下枠54)の押込駆動面72が、当該半挿入状態の雌端子2の被駆動部27と当接する。
端子収容室80に挿入される雌端子2がハウジングランス88に対して最初に当接する位置である初期当接位置(
図13Aを参照)に配置される半挿入状態にあって、且つリテーナ挿入孔89に挿入されるリテーナ5が、押込駆動面72で被駆動部27に対して最初に当接する位置である初期当接位置(
図13Aを参照)に配置されるときに、押込駆動面72が、端子挿入方向K1に関して前端部72aと頂部72bの頂点72cとの中央位置C1よりも頂部72b側に配置される当接領域Aで、被駆動部27に当接する。具体的には、当接領域Aは、頂部72bの端子挿入方向K1側に隣接して配置されている。
【0047】
リテーナ5を初期当接位置からリテーナ挿入方向R1にさらに挿入することにより、押込駆動面72が、被駆動部27をリテーナ挿入方向R1に押圧するに伴って、雌端子2が、端子挿入方向K1に沿って正規挿入位置へ押し込まれる(
図13Bを参照)。
本実施形態では、リテーナ5がリテーナ挿入孔89にリテーナ挿入方向R1に一直線状に挿入される。このため、リテーナが2つの直線状部で案内されて挿入される従来の場合と比較して、構造を簡素化することができる。
【0048】
また、
図13Aに示すように、半挿入状態の雌端子2がハウジングランス88に対する初期当接位置にあって、且つリテーナ挿入孔89に挿入されるリテーナ5が、雌端子2の被駆動部27に対して押込駆動面72で最初に当接する初期当接位置にあるときに、押込駆動面72が、端子挿入方向K1に関して前端部72aと頂部72bの頂点72cとの中央位置C1よりも頂部72b側に配置される当接領域Aで、雌端子2の被駆動部27に当接する。
【0049】
この状態から、リテーナ5をリテーナ挿入方向R1にさらに挿入することにより、押込駆動面72の当接領域Aから前端部72aまでの領域によって、雌端子2が、端子挿入方向K1に沿って正規挿入位置へ押し込まれる(
図13Bを参照)。したがって、端子挿入方向K1に関して押込駆動面72の半分を超える広い範囲の領域を雌端子2の正規挿入位置への押込駆動に寄与させることができる。このため、正規挿入位置からのずれ量が大きいときの半挿入状態の雌端子2を簡単な構造で正規挿入位置に矯正することができる。
【0050】
特に、雌端子2がハウジングランス88に対する初期当接位置にあって、リテーナ5が雌端子2の被駆動部27に対する初期当接位置にあるときに、被駆動部27に対するリテーナ5の押込駆動面72の当接領域Aが、頂部72bの端子挿入方向K1側に隣接して配置される。したがって、端子挿入方向K1に関して押込駆動面72の大部分の領域を雌端子2の正規挿入位置への押込駆動に寄与させることができる。このため、リテーナ5によって矯正可能な、雌端子2の正規挿入位置からのずれ量の範囲を格段に広くすることができる。
【0051】
また、
図10に示すように、リテーナ5の各端子挿入孔52において、リテーナ挿入方向R1に対向する一対の第1縁部(上枠53の下縁部53bと第1中間枠55の上縁部55aとの一対。第1中間枠55の下縁部55bと第2中間枠56の上縁部56aとの一対。第2中間枠56の下縁部56bと下枠54の上縁部54aとの一対)のうち、リテーナ挿入方向R1の反対側R2の第1縁部(上縁部55a、上縁部56a、上縁部54a)に、押込駆動面72が形成される。このため、構造を簡素化することができる。
(第2実施形態)
次いで、本発明の第2実施形態のコネクタを説明する。第2実施形態が第1実施形態と主に異なるのは、雌端子2Pの構成とリテーナ5Pの構成とである。
【0052】
まず、雌端子2Pを説明する。
図14は、本発明の第2実施形態における雌端子2Pの斜め上方からの斜視図である。
図15は、雌端子2Pの平面図である。
図16は、雌端子2Pの拡大前面図である。
図14~
図16に示すように、雌端子2Pは、被駆動部として、端子本体20の一対の側壁部23から、リテーナ挿入方向R1及び端子挿入方向K1の双方に対して直交する直交方向Vの外向き(外側方)に突出する一対の被駆動突起27Pを含む。
【0053】
次いで、リテーナ5Pを説明する。
図17は、第2実施形態におけるリテーナ5Pの正面図である。
図18は、
図17の端子挿入孔52の周辺の部分の拡大図である。
図19は、
図18のXIX-XIX断面図である。
図18に示すように、端子挿入方向K1の反対側K2から見て、各端子挿入孔52を仕切る一対の仕切り枠59において互いに直交方向Vに対向する一対の側縁部59a(第2縁部)に、一対の被駆動突起27Pをそれぞれ駆動する段部状の一対の押込駆動面60が形成されている。
【0054】
図19に示すように、押込駆動面60は、抜止係止部71側の端部である前端部60aから端子挿入方向K1の反対側K2に向けて頂部60bまで上り勾配で傾斜する傾斜面である。押込駆動面60は、側縁部59aの端子挿入方向K1の長さの略全域に配置されている。
図20A、
図20B及び
図20Cは、第2実施形態のコネクタ1Pの要部の拡大断面図であり、リテーナ5Pの挿入によって雌端子2が正規挿入位置に矯正される工程を順次に示している。
【0055】
図20Aに示すように、端子収容室80に挿入される雌端子2がハウジングランス88に対して最初に当接する位置である初期当接位置(
図20Bを参照)に対して端子挿入方向K1の反対側K2に配置される半挿入状態にあって、且つリテーナ挿入孔89に挿入されるリテーナ5Pが、押込駆動面60で被駆動突起27Pに対して最初に当接する位置である初期当接位置(
図20Aを参照)にあるときに、押込駆動面60が、頂部60bに隣接して配置される当接領域Aで、被駆動突起27Pに当接する。
【0056】
リテーナ5Pを初期当接位置(
図20A)からリテーナ挿入方向R1にさらに挿入することにより、押込駆動面60が、
図20Bに示すように、被駆動突起27Pをリテーナ挿入方向R1に押圧するに伴って、雌端子2Pが、端子挿入方向K1に沿って正規挿入位置へ押し込まれる(
図20Cを参照)。
なお、
図20Bに示すように、半挿入状態の雌端子2がハウジングランス88に対する初期当接位置にあって、且つリテーナ挿入孔89に挿入されるリテーナ5Pが、押込駆動面60で被駆動突起27Pに対して当接する状態において、当接領域Aは、端子挿入方向K1に関して、押込駆動面60の前端部60aと頂部60bとの中央位置C1に対して、端子挿入方向K1の反対側K2に配置されているが、これに限らず、当接領域Aが、中央位置C1に配置されてもよいし、中央位置C1に対して端子挿入方向K1側に配置されてもよい。
【0057】
本実施形態では、リテーナ5Pの端子挿入孔52において、リテーナ挿入方向R1及び端子挿入方向K1の双方に対して直交する直交方向Vに対向する一対の第2縁部(側縁部59a)に、雌端子2Pの一対の被駆動突起27Pをそれぞれ駆動する段部状の一対の押込駆動面60が配置される。このため、半挿入状態の雌端子2が、リテーナ5Pによって安定した姿勢で押し込まれて正規挿入位置に矯正される。
【0058】
また、半挿入状態の雌端子2Pが初期当接位置(
図20Bを参照)に対して端子挿入方向K1の反対側K2に配置される状態(
図20Aを参照)でも、リテーナ5Pによって、雌端子2Pを正規挿入位置に矯正することができる(
図20Cを参照)。すなわち、リテーナ5Pによって矯正可能な、雌端子2Pの正規挿入位置からのずれ量の範囲を格段に広くすることができる。
【0059】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図示していないが、端子収容室80が、上下に1段や2段や4段以上で配置されてもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 コネクタ
1P コネクタ
2 雌端子
2P 雌端子
3 コネクタハウジング
5 リテーナ
5P リテーナ
8 端子収容部
20 端子本体
25 ランス係止孔(ランス係止部)
26 リテーナ係止部
27 被駆動部
27P 被駆動突起
52 端子挿入孔
53b 下縁部(第1縁部)
54a 上縁部(リテーナ挿入方向の反対側の第1縁部)
55a 上縁部(リテーナ挿入方向の反対側の第1縁部)
55b 下縁部(第1縁部)
56a 上縁部(リテーナ挿入方向の反対側の第1縁部)
56b 下縁部(第1縁部)
59a 側縁部(第2縁部)
60 押込駆動面
60a 前端部
60b 頂部
60c 頂点
71 抜止係止部
72 押込駆動面
72a 前端部
72b 頂部
72c 頂点
80 端子収容室
88 ハウジングランス
88a 係止突起
89 リテーナ挿入孔
A 当接領域
C1 中央位置
K1 端子挿入方向
K2 (端子挿入方向の)反対側
R1 リテーナ挿入方向
R2 (リテーナ挿入方向の)反対側