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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ヒューズ、及びヒューズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/175 20060101AFI20231121BHJP
   H01H 69/02 20060101ALI20231121BHJP
   H01H 85/12 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01H85/175
H01H69/02
H01H85/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020122710
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019113
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000204044
【氏名又は名称】太平洋精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 健司
(72)【発明者】
【氏名】北川 宗幸
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004634(JP,A)
【文献】特開2018-129309(JP,A)
【文献】特開2020-107538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶断部を有するヒューズエレメントと、
前記溶断部を収容するケーシングと、を備えたヒューズであって、
前記ヒューズエレメントは、前記ケーシングの長手方向に延出する長尺状形状であると共に、少なくとも2つ以上備えられており、
前記ヒューズエレメントは、連結部によって、一方の端部側が互いに連結された状態となっており、
前記ケーシングの一方の開口部に、前記ヒューズエレメントを保持する第一保持部が設けられ、
当該第一保持部には、前記ヒューズエレメントの連結部を係止するための係止部が設けられており、
前記第一保持部は、前記ヒューズエレメントを前記ケーシング内に挿通可能な挿通孔を備えており、
前記係止部は、前記挿通孔の間に位置している、ことを特徴とするヒューズ。
【請求項2】
前記ケーシングの他方の開口部に、前記ヒューズエレメントを保持する第二保持部が設けられ、
前記第二保持部は、前記ヒューズエレメントの他方の端部側を差し込む差込孔を備えることを特徴とする請求項に記載のヒューズ。
【請求項3】
前記各ヒューズエレメントは、一枚の平坦な金属板から屈曲形成されており、
前記連結部において屈曲させることで、前記各ヒューズエレメントの他方の端部側が同じ方向に向くと共に、前記各ヒューズエレメントは、前記ケーシングの長手方向に延出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒューズ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のヒューズの製造方法であって、
前記ケーシングを略水平方向に寝かせた状態で、前記ケーシングの一方の開口部の側方から、前記ケーシング内に、前記ヒューズエレメントを挿入し、当該ヒューズエレメントの連結部を前記第一保持部の係止部に係止させて、前記ヒューズエレメントを前記ケーシング内に収容することを特徴とするヒューズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に自動車用電気回路等に用いられるヒューズに関し、特に、ケーシング内にヒューズエレメントを収容するヒューズ、及びヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒューズは、自動車等に搭載されている電気回路や、電気回路に接続されている各種電装品を保護するために用いられてきた。詳しくは、電気回路中に意図しない過電流が流れた場合に、ヒューズに内蔵されたヒューズエレメントの溶断部が過電流による発熱により溶断して、各種電装品に過度な電流が流れないように保護している。
【0003】
そして、このヒューズは用途に応じて様々な種類があり、例えば、比較的大きい過電流から保護するための特許文献1に記載のヒューズが知られている。
【0004】
この特許文献1に記載のヒューズは、筒型のケーシング内部に、当該ケーシングの長尺方向に延びるヒューズエレメントを収容するタイプのものである。しかしながら、複数のヒューズエレメントをケーシングに収容してヒューズを組み立てる際に、ヒューズエレメントは長尺状をしているため、ケーシング内での位置や姿勢がズレやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-26202号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明は、ヒューズエレメントの位置や姿勢が安定しやすく、組み立てが容易なヒューズ、及びヒューズの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明のヒューズは、溶断部を有するヒューズエレメントと、前記溶断部を収容するケーシングと、を備えたヒューズであって、前記ヒューズエレメントは、前記ケーシングの長手方向に延出する長尺状形状であると共に、少なくとも2つ以上備えられており、前記ヒューズエレメントは、連結部によって、一方の端部側が互いに連結された状態となっており、前記ケーシングの一方の開口部に、前記ヒューズエレメントを保持する第一保持部が設けられ、当該第一保持部には、前記ヒューズエレメントの連結部を係止するための係止部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記特徴によれば、ヒューズエレメントをケーシング内に収容した状態では、連結部が第一保持部の係止部に係止しているので、各ヒューズエレメントのケーシング内での位置や姿勢がズレにくく安定している。そのため、各部品を取り付けてヒューズを組み立てる際に、各ヒューズエレメントのケーシング内での位置や姿勢が安定しているので、ヒューズの組み立てが容易となる。
【0009】
さらに、本願発明のヒューズは、前記第一保持部は、前記ヒューズエレメントを前記ケーシング内に挿通可能な挿通孔を備えており、前記係止部は、前記挿通孔の間に位置していることを特徴とする。
【0010】
上記特徴によれば、係止部は挿通孔に挿入された両側のヒューズエレメントによって、両側から挟まれた状態で、連結部と係止することから、両側のヒューズエレメントと連結部によって、略コ字状になった部分が係止部に係止できるため、各ヒューズエレメントのケーシング内での位置や姿勢がよりズレにくく安定する。
【0011】
さらに、本願発明のヒューズは、前記ケーシングの他方の開口部に、前記ヒューズエレメントを保持する第二保持部が設けられ、前記第二保持部は、前記ヒューズエレメントの他方の端部側を差し込む差込孔を備えることを特徴とする。
【0012】
上記特徴によれば、ヒューズエレメントの他方の端部が、第二保持部の差込孔に差し込まれるため、各ヒューズエレメントのケーシング内での位置や姿勢がよりズレにくく安定する。
【0013】
さらに、本願発明のヒューズは、前記各ヒューズエレメントは、一枚の平坦な金属板から屈曲形成されており、前記連結部において屈曲させることで、前記各ヒューズエレメントの他方の端部側が同じ方向に向くと共に、前記各ヒューズエレメントは、前記ケーシングの長手方向に延出していることを特徴とする。
【0014】
上記特徴によれば、ヒューズの製造が容易であると共に、ヒューズエレメント同士の電気的接続性が高く、さらに、ヒューズエレメントをケーシングに挿入して組み立てやすいのである。
【0015】
さらに、本願発明のヒューズの製造方法は、前記ケーシングを略水平方向に寝かせた状態で、前記ケーシングの一方の開口部の側方から、前記ケーシング内に、前記ヒューズエレメントを挿入し、当該ヒューズエレメントの連結部を前記第一保持部の係止部に係止させて、前記ヒューズエレメントを前記ケーシング内に収容することを特徴とする。
【0016】
上記特徴によれば、ケーシングを略水平方向に寝かした状態でも、ヒューズエレメントのケーシング内での位置や姿勢を安定させてヒューズを組み立てることが出来るため、ヒューズの製造方法を多様化でき、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、本願発明のヒューズ、及びヒューズの製造方法によれば、ヒューズエレメントの位置や姿勢が安定しやすく、組み立てが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本願発明の実施形態1に係るヒューズのヒューズエレメントユニットを展開した状態の平面図、(b)は、ヒューズエレメントユニットを屈曲成形した状態の平面図、(c)はヒューズエレメントユニットを屈曲成形した状態の正面図である。
図2】屈曲成形されたヒューズエレメントユニットの斜視図である。
図3】本願発明の実施形態1に係るヒューズの組み立て途中の分解斜視図である。
図4】本願発明の実施形態1に係るヒューズのケーシング内にヒューズエレメントを収容した状態の斜視図である。
図5】(a)は、本願発明の実施形態1に係るヒューズのケーシング内にヒューズエレメントを収容した状態の正面図、(b)は当該状態の側面図である。
図6】(a)及び(b)は、本願発明の実施形態1に係るヒューズのケーシング内にヒューズエレメントを収容した状態の斜視図である。
図7】(a)及び(b)は、本願発明の実施形態1に係るヒューズのケーシング内にヒューズエレメントを収容した状態の斜視図である。
図8】(a)は、本願発明の実施形態2に係るヒューズのヒューズエレメントユニットを展開した状態の平面図、(b)は、ヒューズエレメントユニットを屈曲成形した状態の平面図、(c)はヒューズエレメントユニットを屈曲成形した状態の正面図である。
図9】屈曲成形されたヒューズエレメントユニットの斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
100 ヒューズエレメント
111 端部
120 溶断部
170 連結部
200 ケーシング
220 開口部
300 第一保持部
320 係止部
600 ヒューズ
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本願発明の各実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下で説明する実施形態におけるヒューズの各部材の形状や材質等は、一例を示すものであって、これらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されている「ケーシングの長手方向」とは、ケーシングの両端の端部同士を結んだ軸に平行な方向のことである。
【0021】
(実施形態1)
図1及び図2では、本願発明の実施形態1に係るヒューズのヒューズエレメントユニット101の製造工程について説明する。なお、図1(a)は、ヒューズエレメントユニット101を展開した状態の平面図、図1(b)は、ヒューズエレメントユニット101を屈曲成形した状態の平面図、図1(c)はヒューズエレメントユニット101を屈曲成形した状態の正面図、図2は、屈曲成形されたヒューズエレメントユニット101の斜視図である。
【0022】
まず、銅やその合金等の導電性金属からなる、厚さが均一の平坦な板材を、図1(a)に示すような形状にプレス機等で打ち抜く。この図1(a)に示すような所定の形状にかたどられた一枚の金属板は、中央線Pにおいて線対称となった一対のヒューズエレメント100が設けられている。各ヒューズエレメント100は、一方の端部111と他方の端部112と、両側の端部111と端部112の間の中間部130と、溶断部120が複数形成されて、長尺状となっている。具体的に説明すると、溶断部120は、中間部130において局所的に幅が狭くなった線状の複数の溶断部121から構成されており、各溶断部121が、電気回路等に意図しない過電流が流れた際に、発熱して溶断して過電流を遮断するものである。なお、溶断部120は、幅が狭くなった線状の溶断部121から構成されることに限定されず、電気回路等に意図しない過電流が流れた際に、発熱して溶断して過電流を遮断できるのであれば、中間部130に小穴を設けて幅が狭くなった部分を溶断部とする構成や、中間部130に溶断しやすい金属材料を局所的に配置するなどの任意の構成を採用することができる。
【0023】
また、一対のヒューズエレメント100は、一方の端部111同士が連結部170によって連結されている。この連結部170は、平坦な板状となっており、端部111と連続している基端部171と、基端部171から一方の側方へ延びる延出部172と、基端部171から他方の側方へ延びる延出部173とを備える。
【0024】
次に、図1(a)及び(b)に示すように、ヒューズエレメント100の長尺方向Mに平行な折目線L1において、中間部130を屈曲させる。なお、ヒューズエレメント100の長尺方向Mとは、両側の端部111と端部112とを結んだ軸に平行な方向のことである。したがって、折目線L1も、両側の端部111と端部112を結んだ軸に平行となる。
【0025】
すると、中間部130は、長尺方向Mに沿って直線状に延びる第一平坦面140と、当該第一平坦面140から立ち上がるように屈曲し、長尺方向Mに沿って直線状に延びる第二平坦面150とを備えることになる。第一平坦面140と第二平坦面150は、折目線L1で屈曲した屈曲部131で互いに連続しており、第一平坦面140と第二平坦面150は互いに略直角に交差している。そして、第一平坦面140及び第二平坦面150上に溶断部120が複数設けられた状態となる。
【0026】
さらに、図1(c)及び図2に示すように、ヒューズエレメントユニット101を、折目線L2において略90度立ち上がるように折り曲げる。すると、ヒューズエレメント100は互いに近接して平行状態となる。そして、他方の端部112側が同じ方向に向いたヒューズエレメント100を、2つ備えたヒューズエレメントユニット101が完成する。また、各ヒューズエレメント100は、後述するケーシングの長手方向に延出した状態となっている。なお、折目線L2は、連結部170の基端部171と、ヒューズエレメント100の端部111との境界部分であり、中央線Pと平行になっている。
【0027】
このように、2つのヒューズエレメント100を備えたヒューズエレメントユニット101は、一枚の平坦な金属板から構成され、連結部170において屈曲させることで、ヒューズエレメント100の他方の端部112が同じ方向に向くと共に、各ヒューズエレメント100がケーシングの長手方向に延出するように構成されているので、製造が容易であると共に、ヒューズエレメント100同士の電気的接続性が高く、さらに、ヒューズエレメント100をケーシングに挿入して組み立てやすいのである。なお、各ヒューズエレメント100は、一枚の平坦な金属板から屈曲形成されて一体となっているが、これに限定されず、各ヒューズエレメント100を個別に製造しておき、互いの端部111を、別体として製造した連結部170によって連結して、図2に示すような、2つのヒューズエレメント100が連結された状態としてもよい。また、ヒューズエレメント100は、第一平坦面140及び第二平坦面150を備えた態様であるが、これに限定されず、溶断部120を備え、ケーシングの長手方向に延出する長尺状の形状であれば、任意の形状であってもよい。
【0028】
では次に、図3から図7を参照して、本願発明のヒューズの組み立て方法について説明する。なお、図3は、ヒューズの組み立て途中の分解斜視図である。
【0029】
図3に示すように、まず、水平面に寝かした状態のケーシング200の端部210の一方の開口部220に、第一保持部300を取り付け、他方の開口部220に第二保持部400を取り付ける。なお、ケーシング200は、セラミックや合成樹脂等で形成された筒型形状をしており、両側の端部210に開口部220を備える。そして、ケーシング200は、ヒューズエレメント100を内部に収容できる長さを有している。
【0030】
また、第一保持部300は金属製であり、天板301が平坦な略円盤状で、ケーシング200の端部210に嵌めることができるように、キャップの態様となっている。そして、第一保持部300の平坦な天板301には、ヒューズエレメントユニット101のヒューズエレメント100を挿通させることが出来る挿通孔310があけられ、その隣接する挿通孔310の間の天板301の部分が、ヒューズエレメントユニット101の連結部170を係止出来る係止部320となっている。また、第二保持部400は金属製であり、天板401が平坦な略円盤状で、ケーシング200の端部210に嵌めることができるように、キャップの態様となっている。そして、第二保持部400の平坦な天板401には、ヒューズエレメントユニット101のヒューズエレメント100の端部112を挿通させることが出来る差込孔410があけられている。
【0031】
そして、略水平に寝かした状態のケーシング200の一方の開口部220の側方から、ヒューズエレメントユニット101をケーシング200へ挿入して収容していく。具体的には、上下に隣接する挿通孔310のそれぞれに、ヒューズエレメントユニット101の各ヒューズエレメント100の端部112側を挿入する。次に、ヒューズエレメントユニット101の連結部170が係止部320に当接して係止するまで、ヒューズエレメント100を、ケーシング200の内部に向けて挿通孔310を介して挿入していく。すると、図4及び図5に示すように、ヒューズエレメントユニット101の各ヒューズエレメント100がケーシング200内部に収容された状態となる。なお、ヒューズエレメントユニット101は、背中合わせになるように2つ並べられ、各ヒューズエレメントユニット101は対応する挿通孔310から挿入されていく。そのため、ケーシング200内部には、2つのヒューズエレメントユニット101が収容され、合計4つのヒューズエレメント100が収容されることになる。また、各ヒューズエレメント100は、ケーシング200の長手方向に延出しているため、ケーシング200に挿入して収容しやすくなっている。なお、図4は、ケーシング200内にヒューズエレメント100を収容した状態の斜視図、図5(a)は、ケーシング200内にヒューズエレメント100を収容した状態の正面図、図5(b)は当該状態の側面図である。
【0032】
図4及び図5に示すように、ヒューズエレメント100をケーシング200内に収容した状態では、連結部170が第一保持部300の係止部320に係止しているので、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がズレにくく安定している。そのため、各部品を取り付けてヒューズを組み立てる際に、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢が安定しているので、ヒューズの組み立てが容易となる。さらに、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がズレないように、ヒューズを組み立てることができるため、設計通りのヒューズの性能を実現しやすいのである。
【0033】
なお、連結部170が第一保持部300の係止部320に係止した状態で、連結部170と係止部320とを溶接して固定してもよい。また、第一保持部300はキャップの態様であるが、これに限定されず、係止部320によってヒューズエレメント100を保持できるのであれば、任意の態様であってもよい。さらに、第一保持部300は、挿通孔310と、挿通孔310の間に係止部320を備える構成であるが、これに限定されず、第一保持部300は、連結部170と係止できる係止部320を備えていれば、その他の任意の構成であってもよい。
【0034】
また、連結部170は両側に延出部172と延出部173を備え、両側の延出部172と延出部173が第一保持部300の係止部320に当接して係止しているので、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がよりズレにくく安定している。なお、連結部170は両側に延出部172と延出部173を備えているが、これに限定されず、連結部170は、両側に延出部172と延出部173を備えない、又は、延出部172と延出部173のいずれか一方のみを備える態様であってもよい。延出部172と延出部173のいずれか一方のみを備える態様であっても、延出部172と延出部173のいずれかが、第一保持部300の係止部320に当接して係止しているので、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がよりズレにくく安定する効果を得ることができる。
【0035】
また、第一保持部300は、ヒューズエレメントユニット101の各ヒューズエレメント100を挿通可能な挿通孔310を備えており、係止部320が挿通孔310の間に位置しているため、図4及び図5に示すように、係止部320は、挿通孔310に挿入された両側のヒューズエレメント100によって、両側から挟まれた状態で、連結部170と係止している。そのため、両側のヒューズエレメント100と連結部170によって、略コ字状になった部分が係止部320に係止できるため、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がよりズレにくくなる。また、ヒューズエレメント100をケーシング200内に挿入する過程においても、ヒューズエレメントユニット101の各ヒューズエレメント100が係止部320を両側から挟みながら挿入されるため、各ヒューズエレメント100の位置や姿勢がズレにくく、ヒューズエレメント100をケーシング200内に挿入しやすくなるのである。
【0036】
また、図5(a)に示すように、挿通孔310の内辺311は略L字形状となっており、ヒューズエレメント100の第一平坦面140と第二平坦面150の略L字形状に沿う形状となっている。そのため、ヒューズエレメント100をケーシング200内に挿入する過程において、挿通孔310の内辺311にヒューズエレメント100の第一平坦面140と第二平坦面150を沿わせれば、各ヒューズエレメント100の位置や姿勢がズレにくく、ヒューズエレメント100をケーシング200内に挿入しやすくなるのである。なお、挿通孔310は内辺311が略L字形状になっているが、これに限定されず、ヒューズエレメント100を挿通させることができるのであれば、任意の形状であってもよい。
【0037】
また、図4及び図5に示すように、ヒューズエレメント100をケーシング200内に収容した状態では、ヒューズエレメント100の他方の端部112が、第二保持部400の差込孔410に差し込まれている。そのため、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がよりズレにくく安定する。なお、ヒューズエレメント100の他方の端部112が、第二保持部400の差込孔410に差し込まれているが、これに限定されず、ヒューズエレメント100の端部112が、後述する端子部520と電気的に接続できる態様であれば、任意の構成であってもよい。
【0038】
なお、ケーシング200を略水平方向に寝かした状態で、ヒューズエレメント100をケーシング200へ挿入して収容すると、ヒューズエレメント100の自重によってヒューズエレメント100が下方(鉛直方向)へ傾く虞がある。そのため、従来技術では、長尺状のヒューズエレメントをケーシングに収容してヒューズを組み立てる場合は、後述するように、ケーシングを略垂直方向に立てた状態で、ヒューズエレメントをケーシングへ収容して、ヒューズを組み立てる方法が採用されていた。しかしながら、図4及び図5に示すように、本願発明のヒューズの製造方法では、連結部170が第一保持部300の係止部320に係止しているので、ヒューズエレメント100が下方(鉛直方向)へ傾きにくく、ケーシング200内での位置や姿勢が安定しやすいため、ヒューズの組み立てが容易となる。このように、本願発明のヒューズの製造方法では、ケーシング200を略水平方向に寝かした状態でも、ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢を安定させてヒューズを組み立てることが出来るため、ヒューズの製造方法を多様化でき、利便性が向上する。
【0039】
なお、ケーシング200を略水平方向に寝かした状態で、ヒューズエレメント100をケーシング200へ挿入して収容しているが、これに限定されず、従来と同様に、ケーシング200を略垂直方向(略鉛直方向)に立てた状態で、ヒューズエレメント100をケーシング200へ挿入して収容してもよい。その場合は、ケーシング200を略垂直方向に立てた状態で、一方の開口部220の上方からヒューズエレメント100を挿入していく。そして、連結部170が、第一保持部300の係止部320に当接して係止するまで、ヒューズエレメント100をケーシング200の内部に向けて挿通孔310を介して挿入し、ヒューズエレメント100がケーシング200内に収容された状態となる。そして、連結部170が第一保持部300の係止部320に係止しているので、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がズレにくく安定するのである。
【0040】
では次に、図4に示すように、ヒューズエレメント100をケーシング200に収容した後、第一保持部300に端子付きキャップ500を被せて取り付ける。この端子付きキャップ500は、金属製又は合成樹脂性の本体部510と、本体部510から突出した金属製の端子部520とを備える。端子部520の基部521の裏面は平坦面となっており、端子付きキャップ500を第一保持部300に取り付けると、基部521の裏面がヒューズエレメント100の連結部170に密着する。そのため、端子部520とヒューズエレメント100は、連結部170を介して電気的に接続された状態となる。
【0041】
次に、図6に示すように、第二保持部400の差込孔410から突出したヒューズエレメント100の各端部112を折り曲げる。また、差込孔410からケーシング200内部に粒状等の任意の消弧材を充填する。なお、図6(a)及び(b)は、ケーシング200内にヒューズエレメント100を収容した状態の斜視図である。
【0042】
そして、図6(b)に示すように、ヒューズエレメント100の端部112を折り曲げて、この端部112を、差込孔410周囲の天板401に密着させる。端部112と天板401との密着箇所を溶接して固定してもよい。さらに、図7に示すように、第二保持部400に端子付きキャップ500を被せて取り付ける。なお、図7(a)及び(b)は、ケーシング200内にヒューズエレメント100を収容した状態の斜視図である。
【0043】
端子付きキャップ500を第二保持部400に取り付けると、基部521の裏面がヒューズエレメント100の端部112に密着する。そのため、端子部520とヒューズエレメント100は、端部112を介して電気的に接続された状態となる。これにより、本願発明のヒューズ600の組み立てが完了するのである。このように、本願発明のヒューズ600の一連の組み立て作業においては、連結部170が第一保持部300の係止部320に係止しているので、各ヒューズエレメント100のケーシング200内での位置や姿勢がズレにくく安定していることから、ヒューズ600の組み立てが容易なのである。なお、ヒューズ600は、端子付きキャップ500から突出した両側の端子部520に電気回路の一部を電気的に接続し、電気回路に意図しない過電流が流れた際は、ケーシング200に収容されたヒューズエレメント100の溶断部120が溶断して過電流を遮断し、電気回路を保護するように利用される。
【0044】
(実施形態2)
以下では、図8及び9を参照して、本願発明の実施形態2に係るヒューズについて説明する。なお、このヒューズは、ヒューズエレメントユニット101Aの構成が実施形態1に係るヒューズ600のヒューズエレメントユニット101と異なるだけで、その他の構成は、基本的に実施形態1に係るヒューズ600と共通するので、その共通する構成については詳しい説明を省略する。
【0045】
なお、図8(a)は、ヒューズエレメントユニット101Aを展開した状態の平面図、図8(b)は、ヒューズエレメントユニット101Aを屈曲成形した状態の平面図、図8(c)はヒューズエレメントユニット101Aを屈曲成形した状態の正面図、図9は、屈曲成形されたヒューズエレメントユニット101Aの斜視図である。
【0046】
まず、ヒューズエレメントユニット101Aを屈曲成形する際は、銅やその合金等の導電性金属からなる、厚さが均一の平坦な板材を、図8(a)に示すような形状にプレス機等で打ち抜く。この図8(a)に示すような所定の形状にかたどられた一枚の金属板は、中央線Pにおいて線対称となった一対のヒューズエレメント100Aが計4つ設けられている。各ヒューズエレメント100Aは、一方の端部111Aと他方の端部112Aと、両側の端部111Aと端部112Aの間の中間部130Aと、溶断部120Aが複数形成されて、長尺状となっている。
【0047】
また、一対のヒューズエレメント100Aは、一方の端部111A同士が連結部170Aによって連結されている。この連結部170Aは、平坦な板状となっており、端部111Aと連続している基端部171Aと、基端部171Aから一方の側方へ延びる延出部172Aと、基端部171Aから他方の側方へ延びる延出部173Aとを備える。さらに、隣接する延出部172A同士は連結されているので、隣接する連結部170A同士は、全体として直線状の平坦な板状となっている。
【0048】
次に、図8(a)及び(b)に示すように、ヒューズエレメント100Aの長尺方向Mに平行な折目線L1において、中間部130Aを屈曲させる。すると、中間部130Aは、長尺方向Mに沿って直線状に延びる第一平坦面140Aと、当該第一平坦面140Aから立ち上がるように屈曲し、長尺方向Mに沿って直線状に延びる第二平坦面150Aとを備えることになる。第一平坦面140と第二平坦面150は、折目線L1で屈曲した屈曲部131Aで互いに連続しており、第一平坦面140Aと第二平坦面150Aは互いに略直角に交差している。
【0049】
さらに、図8(c)及び図9に示すように、各ヒューズエレメント100Aを、折目線L2において略90度立ち上がるように折り曲げる。すると、ヒューズエレメント100Aは互いに近接して平行状態になる。すると、他方の端部112A側が同じ方向に向いたヒューズエレメント100Aを、4つ備えたヒューズエレメントユニット101Aが完成する。
【0050】
このように、4つのヒューズエレメント100Aを備えたヒューズエレメントユニット101Aは、一枚の平坦な金属板から構成され、連結部170Aにおいて屈曲させることで、ヒューズエレメント100Aの他方の端部112Aが同じ方向に向くと共に、各ヒューズエレメント100Aがケーシングの長手方向に延出するように構成されているので、製造が容易であると共に、ヒューズエレメント100A同士の電気的接続性が高く、さらに、ヒューズエレメント100Aをケーシングに挿入して組み立てやすいのである。なお、各ヒューズエレメント100Aは、一枚の平坦な金属板から屈曲形成されているが、これに限定されず、各ヒューズエレメント100Aを個別に製造しておき、互いの端部111Aを、別体として製造した連結部170Aによって連結して、図9に示すような、4つのヒューズエレメント100Aが連結された状態としてもよい。また、ヒューズエレメントユニット101Aは、合計4つのヒューズエレメント100Aを備えているが、これに限定されず、合計3つのヒューズエレメント100Aを備える、又は、合計5つ以上のヒューズエレメント100Aを備えるなど、少なくとも2つ以上のヒューズエレメント100Aを備えることができる。
【0051】
そして、ヒューズエレメントユニット101Aは、図3と同様に、略水平に寝かした状態のケーシング200の一方の開口部220の側方からケーシング200へ挿入して収容される。具体的には、上下に隣接する挿通孔310のそれぞれに、ヒューズエレメントユニット101Aの各ヒューズエレメント100Aの端部112Aを挿入する。次に、ヒューズエレメントユニット101Aの連結部170Aが、第一保持部300の係止部320に当接して係止するまで、ヒューズエレメント100Aをケーシング200の内部に向けて挿通孔310を介して挿入し、ヒューズエレメントユニット101Aの各ヒューズエレメント100Aがケーシング200内部に収容された状態とする。そして、ヒューズエレメント100Aをケーシング200内に収容した状態では、連結部170Aが第一保持部300の係止部320に係止するので、各ヒューズエレメント100Aのケーシング200内での位置や姿勢がズレにくく安定し、ヒューズの組み立てが容易なのである。
【0052】
なお、本願発明のヒューズ及びヒューズの製造方法は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9