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特許7388792エスプレッソマシン及びコーヒーマシン用の抽出装置ならびにそれを備えたエスプレッソ及びコーヒーマシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】エスプレッソマシン及びコーヒーマシン用の抽出装置ならびにそれを備えたエスプレッソ及びコーヒーマシン
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/36 20060101AFI20231121BHJP
   A47J 31/18 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A47J31/36 310
A47J31/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023510445
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021071537
(87)【国際公開番号】W WO2022033908
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】20190510.6
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517452338
【氏名又は名称】カップ・ウント・チーノ カッフェーシステム-フェアトリーブ ゲーエムベーハー ウント コンパニー コマンディット ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】CUP&CINO Kaffeesystem-Vertrieb GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Paderborner Strasse 33,33161 Hovelhof,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エピング,フランク,ヨーゼフ,パウル
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第03422432(DE,A1)
【文献】特表2018-519043(JP,A)
【文献】特表2015-518381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0017767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/36-31/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスプレッソマシン及びコーヒーマシン用の抽出装置(10)であって、
フレーム構造(11)と、
回転軸(12)を中心に回転可能に前記フレーム構造(11)に取り付けられているハンドレバー(14)と、
抽出ピストンエレメント(20)であって、前記抽出ピストンエレメント(20)は、レバー機構(16)によって前記ハンドレバー(14)に動作的に接続されており、それによって、前記ハンドレバー(14)の動作に結合され、垂直軸(18)に沿って第1の位置と少なくとも一つの第2の位置との間で移動可能であり、
前記抽出ピストンエレメント(20)は、
前記抽出ピストンエレメント(20)の前記第2の位置において、保持装置に挿入可能なフィルタ支持体と共に抽出室を区画し、かつ、高温加圧された抽出水が分配こし器(24)を通して前記抽出室に導入可能な分配こし器(24)と、
前記分配こし器(24)が接続可能なピストンロッド(22)と
を有するところの抽出ピストンエレメント(20)と、
前記垂直軸(18)に沿った少なくともひとつの調節可能な位置で、前記抽出ピストンエレメント(20)を保持するように設計されたロック手段(30)と
を備え、
前記ロック手段(30)は、第1の端部(33)で担持され、かつ、前記ピストンロッド(22)が案内される嵌合ボア(34)を有するロックレバー(32)を含み、前記抽出ピストンエレメント(20)との解放可能なクランプ接続を形成する、ことを特徴とする抽出装置(10)。
【請求項2】
少なくとも1つの調整可能な位置が、前記抽出ピストンエレメント(20)の前記第2の位置に対応し、前記抽出ピストンエレメント(20)は、押圧位置に保持される、ことを特徴とする請求項1に記載の抽出装置(10)。
【請求項3】
前記嵌合ボア(34)が前記ピストンロッド(22)を近接して囲む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の抽出装置(10)。
【請求項4】
前記ロックレバー(32)が、水平位置から、前記抽出ピストンエレメント(20)が所定位置に保持される傾斜位置に、回動方向に移動され得る、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の抽出装置(10)。
【請求項5】
前記ロックレバー(32)は、互いに平行に配置された2つのプレート(32.1、32.2)を有し、それぞれが前記ピストンロッド(22)を近接して囲むための前記嵌合ボア(34)を含む、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の抽出装置(10)。
【請求項6】
前記ロック手段(30)が、前記抽出ピストンエレメント(20)のロックを作動および/または解除するための作動手段(40)を含む、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の抽出装置(10)。
【請求項7】
前記作動手段(40)が、回転軸(62)に対して回転可能で、かつ、円周面(65)を含む偏心器(64)を有する偏心アレンジメント(60)を有し、それによって、円周面(65)が、回転時に、円弧とは異なる軌跡を構成する、ことを特徴とする請求項6に記載の抽出装置(10)。
【請求項8】
前記偏心器(64)は、伝達手段(66、68)によって、前記ロックレバー(32)と相互作用することができ、それによって前記ロックレバー(32)は、前記偏心器(64)の回転位置の関数として解放位置および/またはロック位置に移動可能となる、ことを特徴とする請求項7に記載の抽出装置(10)。
【請求項9】
前記偏心アレンジメント(60)は、制御可能な駆動装置によって作動させることができる、ことを特徴とする請求項7または8に記載の抽出装置(10)。
【請求項10】
前記作動手段(40)は、前記ロックレバー(32)に接続可能なばね部材(50)を有し、前記ばね部材(50)は、前記ロックレバー(32)をロック位置に移動させるように設計及び配置され、前記偏心アレンジメント(60)は、前記ロックレバー(32)を水平位置に移動させるように設計及び配置されている、ことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の抽出装置(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の抽出装置(10)と、
前記フィルタ支持体が挿入可能な保持装置と、
高温の加圧水を生成して分配する手段であって、前記フィルタ支持体と、前記抽出装置(10)の前記抽出ピストンエレメント(20)の前記分配こし器(24)によって区画された抽出室内にそれを供給するための手段と、
コーヒー粉を製造するためのグラインダーと、
前記保持装置に挿入されたフィルタ支持体にコーヒー粉を導入するためのドーズ装置と
を備えるエスプレッソ及びコーヒーマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスプレッソマシンまたはコーヒーマシンで使用するための機械式抽出装置に関するものである。本発明は、同様に、そのような機械式抽出装置を含むエスプレッソ・コーヒーマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
エスプレッソマシンおよびコーヒーマシンは、その自動化の度合いに応じて区別することができる。したがって、いわゆる「ポルタフィルタ機」または「半自動機」のグループ、「全自動機」のグループ、およびハイブリッド機とも呼ばれるその間の様々な種類が存在する。半自動エスプレッソマシンおよびコーヒーマシンの場合、1杯以上のコーヒーまたはエスプレッソの準備は、完全自動ではないが、オペレータが個別に実行できる1つ以上のステップを含む。特に、ポルタフィルタマシンは、所望の量の挽いたコーヒー粉を装填し、高くて均一に圧縮されたコーヒーベッドを生成できる取り外し可能なポルタフィルタを含んでいる。コーヒー粉の種類、量、挽き方、使用する抽出こし器の種類、タンピング(圧縮)のために加える力を決めるのは、バリスタまかせである。充填されたこし器、またはこし器を挿入したポルタフィルタは、コーヒーメーカーに設けられたホルダーに固定することができる。バリスタが操作可能なハンドレバーによって、圧縮されたコーヒー粉を通して抽出水を圧縮することができる。この方法として、油圧システムおよび/またはトグルレバーシステムによってサポートされるバリエーションが知られている。このような機械で達成可能なコーヒーの品質は、アロマとクレマの点で非常に高いが、オペレータの技能と直感に大きく依存する。経験豊富なバリスタのみが、このような技術的に単純なポルタフィルタマシンを使用して、ほぼ一貫した高い抽出結果を達成することができる。
【0003】
別の変形例を挙げると、抽出用こし器を備えたポルタフィルタがポルタフィルタホルダーに挿入されるが、抽出用こし器が、コーヒーマシン内で自動的に充填される、すなわち、一体型コーヒーグラインダーから挽いたコーヒーが抽出用こし器にドーズされる、ハイブリッドマシンが知られている。コーヒー製造後のコーヒー挽き粕、またはコーヒー粕の除去は、手動で行うことができる。抽出工程中の抽出ピストンの移動は、駆動装置によってほぼ自動化することができる。
【0004】
全自動機は、さらに高度な自動化を実現し、オペレータが選択したコーヒーの種類に応じて、コーヒー製造の全工程が自動的に行われる。安定した品質が得られるが、オペレータが直接工程に影響を与えることができない。
【0005】
エスプレッソの製造は、対応する規格によって定義される一連のパラメータを遵守する必要がる。これは、エスプレッソについて、88℃から94℃の間の温度の22.5から27.5mlの湯が、20から30秒のサイクル時間中に8から10気圧の圧力下で均一に圧縮された6.5から7.5gの挽いたコーヒーを通して押されることを規定するものである。さらに、製造される品質は、挽いたコーヒーの流動抵抗にも大きく依存し、その流動抵抗は、挽き方の程度、抽出用こし器における挽いたコーヒーの高さ、および充填された挽いたコーヒーの圧縮の程度に影響されることが知られている。エスプレッソの製造には高い圧力がかかるため、エスプレッソマシンの構造には一定の堅牢性が求められ、特に、抽出プロセス中に高い圧力を達成し維持するための道具が利用可能であることが必要である。
【0006】
欧州特許第2811876号には、抽出プロセスのために設けられたホルダーに挿入することができるフィルタ支持体を備えたハイブリッドマシンに関連するコーヒーマシンが記載されている。さらに、フィルタ支持体と共に抽出室を区画する分配こし器エレメントを備え、それによって高温の加圧水が分配こし器を通して抽出室内に導入されることが記載されている。分配こし器エレメントは、フィルタ支持体が開いていて、適切な装置によって一体型コーヒーグラインダーから挽いたコーヒーを入れることができる第1の位置と、分配こし器エレメントがフィルタ支持体を圧密的に閉じる第2の位置との間を往復することができる。電気的または油圧的に作動する駆動装置が、分配こし器エレメントを第1位置と第2位置との間で移動させるために設けられている。
【0007】
中国特許第201578093号から知られているのは、トグルレバー機構と動作的に接続された手動動作レバーによって、抽出ピストンが抽出位置に移動される得るコーヒーマシンである。スライドガイドの複雑なシステムにより、抽出ピストンは、垂直方向だけでなく、水平方向にも移動し、フィルタ支持体に挿入することができ、そのフィルタ支持体には、統合されたミル出口で挽いたコーヒーが計量されるようになっている。トグル機構は、最大伸長を超えて移動させることができ、加圧抽出作業中にかかる力に対して抽出ピストンを保持する停止位置で固定される。
【0008】
欧州特許第0634903号から知られているのは、家庭用エスプレッソマシン用の抽出装置であり、この装置では、ポルタフィルタまたはフィルタ支持体が、充填のための充填位置または抽出位置に水平方向に回動または移動することが可能である。この抽出装置は、ロック位置に作動力に抗して手動で垂直方向に移動可能なピストンを備え、このピストンは、抽出位置においてフィルタ支持体に挿入可能であり、それによって圧力チャンバを形成している。ロックレバーは、ピストンロッドと解放可能な摩擦ロックを形成し、ピストンロッドをクランプ接続によってほぼ無段階に位置決めすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの先行技術に基づき、本発明の目的は、異なるタイプのエスプレッソ及びコーヒーマシンにおいてモジュールとして使用することができる、エスプレッソ及びコーヒーマシンで使用するための機械式抽出装置を提供することである。特に、オペレータによって作動させることができる機構を有する本発明による抽出装置は、高品質のエスプレッソまたはコーヒーの製造に、直接かつ即座に関与する可能性を提供し、個人に即した体験を作り出す。さらに、本発明による機械式抽出装置は、エスプレッソを生成するための圧力を生成し維持するために高い努力を必要としない、十分に単純な操作を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるエスプレッソ・コーヒーマシン用の抽出装置は、フレーム構造体と、フレーム構造体に回転可能又は枢動可能に取り付けられたハンドレバーと、レバー機構によってハンドレバーに作動的に接続された抽出ピストンエレメントとを備え、抽出ピストンエレメントは、垂直軸に沿って第1位置と少なくとも1つの第2位置との間で移動可能である。さらに、抽出ピストンエレメントは、抽出ピストンエレメントの第2位置において、ホルダーに挿入されたフィルタ支持体と共に抽出空間を区画し、高温の加圧された抽出水が分配こし器を通して抽出空間に導入可能な分配こし器と、分配こし器が接続可能なピストンロッドとから構成されている。さらに、ロック手段が設けられており、このロック手段は、抽出ピストンエレメントを垂直軸に沿った少なくとも1つの調整可能な位置に保持するか、調整可能な停止位置から解放するためのものである。
【0011】
特に、分配こし器は、ねじ締結によって抽出ピストンエレメントのピストンロッドに解放可能に接続される。抽出ピストンエレメントは、フィルタ支持体に繰り返し挿入されたときに抽出室を圧力密に閉鎖するように、シール手段が設けられている。抽出ピストンエレメントは、フィルタ支持体が開いており、かつ、挽いたコーヒー粉がフィルタ支持体に収容された抽出こし器に充填される第1の位置と、第2の位置との間で、前後に移動可能である。圧縮位置の第2位置では、抽出室が圧密的に密閉される。ハンドレバー、レバー機構、および抽出ピストンエレメントとロック手段との間の結合により、オペレータはエスプレッソとコーヒーの生産を手動で行うことができ、特にロック手段によって高い圧力が維持されることになる。
【0012】
ロック手段は、抽出ピストンエレメントを垂直軸に沿った調整可能な位置でほぼ無段階にロックし、この位置から再び解放するために設けられている。特に、抽出ピストンエレメントは、抽出ピストンエレメントの押圧位置に対応する第2の位置に保持される。
【0013】
ハンドレバーは、コーヒー生産プロセスの個々のステップを少なくとも部分的に自動運転することもできるが、半自動機で有利であると認識されているように、生産プロセスに直接関与している印象をオペレータに与えることができる。このようにして、生産されるコーヒーの一貫した品質が保証される。
【0014】
例えば、ハンドレバー及び付属のレバー機構の動きは、挽いたコーヒー粉を、開いたフィルタ支持体に充填するための計量装置を作動又は非作動にする解放可能なロック動作に結合させることができる。ロックが解除されると、規定量の挽きたてのコーヒー粉が、提供されたフィルタ支持体に入る。特に、ハンドレバーと結合されたレバー機構の動きは、フィルタ支持体に導入されたコーヒー粉が圧縮され、抽出ピストンエレメントが抽出プロセスのための抽出位置にもたらされるように、抽出ピストンエレメントの定義された動きを引き起こす。
【0015】
抽出装置のフレーム構造において、ピボット軸を取り付けることができ、その上にハンドレバーが配置され、フレーム構造に回転可能又は枢動可能に接続されるようにすることができる。ハンドレバーは、フォークの形態とすることができ、その脚部は、フレーム構造体の両側に回転可能に取り付けられる。ハンドレバーは、近位端にハンドルを備えることができ、遠位端でフレーム構造体に回転可能又は枢動可能に取り付けられる。特に、ハンドレバーは、説明されるように、バネ力に抗して枢動可能であってもよい。
【0016】
ハンドレバーに動作的に接続されるレバー機構は、少なくとも第1の接続エレメントと第2の接続エレメントからなる。第1の接続エレメントの第1の端部は、ハンドレバーの動きが第1の接続エレメントに伝達されるように、回転軸で受け取られる。第1の接続エレメントの第2端は、第1関節によって第2の接続エレメントの第1端に連結され、第2の接続エレメントの第2端は、第2関節によって抽出ピストンエレメントに連結されている。ハンドレバーが開始位置、例えば上方位置または静止位置から下方の終了位置まで垂直に移動すると、レバー機構はハンドレバーの動きを抽出ピストンエレメントに伝達して、これも垂直に下方に導かれるようにする。あるいは、開始位置は下降位置、終了位置は上昇位置とすることもできる。
【0017】
一実施形態では、ハンドレバーの開始位置からの移動は、例えば、ばね要素または油圧システムとして設計された戻り要素から始まる抵抗力に抗して行われる。あるいは、抵抗力は、空気圧システム、特にガス圧力ばねによって発生させることができ、これは、対応する抵抗力を長期間にわたって集中的に使用している間、常に高いレベルに維持するために特に適しており、また小さな設置スペースしか必要としない。空気圧式または油圧式のシステムには、特にハンドレバーの始動位置を検出して誤操作を防止するためのバルブを追加することができる。このバルブが発生する復元力により、ハンドレバーを離すと自動的にスタートポジションに戻ることができる。第1の接続エレメント、第2の接続エレメント、第1関節部、第2関節部、およびフレーム構造は、大きな力を吸収できるように設計されている。
【0018】
一実施形態では、抽出ピストンエレメントの垂直運動は、安定した運動が可能であるようにガイドすることができる。このようにして、ユーザは、ハンドレバーの動きを異なる速度で個別に実行することができる。ハンドレバーの動きは、抵抗力および解放または阻止に関して、工場で調整することができる。特に、ハンドレバーは、粉砕工程と提供された抽出用こし器への充填が完了するまで、解放されない。ハンドレバー及びレバー機構に作動的に接続される抽出ピストンエレメントは、好ましくは、第1の位置から第2の位置へ移動するだけでなく、抽出用こし器に充填されたコーヒー粉を規定された方法で押すことができる少なくとも1つの中間位置へも移動させることが可能である。充填された挽き豆を圧縮するために抽出ピストンエレメントによって加えられる力は、好ましくは調整可能である。例えば、ハンドレバーによって抽出ピストンエレメントに伝達することができるタンピング力を設定又は制限するために、調整可能なばね要素を設けることができる。したがって、抽出ピストンエレメントが被研磨材料に接触するとき、タンピングばねとも呼ばれるばね要素によって、タンピング力を規定された方法で構築することができる。こし器の中の量やコーヒーケーキの高さに応じて、異なる位置にアプローチすることができる。調整可能なバネ要素のバネ力に達すると、ロック手段の動作によって提供されるフィルタ支持体の方向への抽出ピストンエレメントの経路が制限されるように、さらなる圧縮工程を停止させることができる。
【0019】
ハンドレバーの動きと相まって、抽出ピストンエレメントは少なくとも第2の位置に移動させることができ、この位置では、フィルタ支持体を有する抽出ピストンエレメントの分配こし器が抽出チャンバを区切り、これを圧力密に閉塞させる。対応する供給装置により、高温の加圧水が短い流路に沿って計量されかつ直接的に抽出室に供給され、抽出室に充填されたコーヒー粉を通過して圧縮されることができる。この目的のために、好ましくは、熱湯装置によって加圧生成された抽出水のための横方向入口が、抽出ピストンエレメントに設けられる。抽出水が挽いたコーヒーを通って流れた後、抽出されたコーヒー又はエスプレッソは、出口を介して抽出チャンバの下流で、設けられた1つ又は複数のカップに分配され得る。
【0020】
実際の抽出プロセスは可変に設計することができ、それによって、抽出チャンバのための閉鎖要素としての抽出ピストンエレメントの位置は、様々なコーヒー調製方法に適合させることができる。特に、最初の抽出操作の後に、抽出チャンバがわずかに開放されることが提供される。特に、ロック手段の適切な設計及び構造によって、抽出圧力の上昇中の抽出ピストンエレメントの規定された位置又は戻りを達成することができる。ロック位置、例えば抽出位置における抽出ピストンエレメントの最小限の調整可能な動きで、ロック手段に反力を発生させることができ、これは抽出工程の後にコーヒーケーキを押し出すために使用することができる。抽出ピストンエレメントの自動的な再設定は、乾燥し、容易に除去可能なコーヒーケーキを生成するために、いわゆるコーヒー挽き粕の新たな圧縮を開始させる。特に、これはロック手段のある種の弾性に基づくもので、ロック手段が解除されると、それに応じて弾力的にリセットされる。
【0021】
好ましい実施形態によれば、ロック手段は、抽出ピストンエレメントとの解放可能なクランプ接続を形成するように配置される。したがって、抽出ピストンエレメントの動きは、ロック手段の解放位置ではほとんど妨げられずに行うことができ、一方、クランプ位置では、抽出ピストンエレメントの動きはブロックされ、ロック手段の解放後にのみ可能である。特に、抽出ピストンエレメントの抽出位置の方向への自由な動きと、定められた位置でのロックは、設けられた作動手段によって達成することができる。
【0022】
一実施形態では、ロック手段は、水平軸を中心に枢動可能であり、ピストンロッドが導かれる嵌合ボアを有するロックレバーから構成される。特に、ロックレバーは、硬化材料で作ることができ、一定の弾性を有する。ロックレバーは、抽出ピストンエレメントのピストンロッドがロックレバーに設けられた嵌合ボアを通って少しのクリアランスで延びるように、すなわち嵌合ボアがピストンロッドを近接して囲むように、抽出ピストンエレメントおよびフレーム構造に対して配置されている。ロックレバーは、第1の端部に取り付けられており、これを起点として、水平位置から、抽出ピストンエレメントが所定の位置に保持される、すなわちピストンロッドが嵌合ボア内にクランプ式にロックされる傾斜位置へと、回動方向に移動させることができる。ロックレバーは、好ましくは、一般的な圧力によって変形しないように設計され、抽出ピストンエレメントは、滑ることなく大きなロックが可能である。好ましい実施形態では、ロックレバーは、少なくとも2つの互いに平行なプレートからなり、その結果、1つが他の上に配置されたそれぞれの嵌合ボアでの一種の段階的なロックが可能になる。
【0023】
ロックレバーの第2の反対側の端部は、ロックレバーがピストンロッドに対して水平位置から傾斜位置までその片側軸受位置について枢動可能にもたらされるように、自由に移動することが可能である。ピストンロッドに対するロックレバーのある角度位置から、ピストンロッドは嵌合ボアまたはボア内で傾き、抽出ピストンエレメントは形成された摩擦ロックによって所定の位置にロックされる。
【0024】
ロックレバーと相互作用する作動手段は、抽出ピストンエレメントのロックを達成するため、又はそれを解除するために配置される。作動手段は、一方ではロックし、他方では解除する、すなわちロックを解除して抽出ピストンエレメントを解放することを可能にするいくつかの機能要素で構成することができる。
【0025】
一実施形態では、作動手段は、ロック手段またはロックレバーと作動的に接続されるか、または作動的に接続されるようにすることができる偏心アレンジメントを含んでいる。一実施形態では、偏心アレンジメントは、回転軸を中心に回転可能な制御ディスクとして設計される偏心器から構成することができる。偏心器は、ロックレバーとロック手段とが、場合によってはその間に配置された伝達要素を介して接触することができる円周面を有している。偏心器は、好ましくは制御可能な駆動装置によって、回転軸の周りに回転させることができる。回転により、円周面は円弧とは異なる軌跡を構成する。偏心器が回転軸を中心に回転するとき、ロック手段のロックレバーは、偏心器の円周面と断面的に接触させることができるので、ロックレバーは、抽出ピストンエレメントのピストンロッドに対して傾斜した位置になるようにすることができる。偏心器の別の回転位置、すなわちその円周面がロックレバーと接触していないとき、偏心器は傾斜位置から移動させることができる。あるいは、伝達手段は、偏心器とロックレバーとの間に設けられ、ロックレバーがその水平位置からまたはその水平位置に移動できるように、ロックレバーと相互作用するように設定されることも可能である。これは、設置状況が限定されている場合に特に有利となり得る。
【0026】
作動手段の起動は、好ましくは、駆動装置によって行われ、また、スイッチングアレンジメントによって調節または制御されることが可能である。ハンドレバーの動きとは無関係にロック手段を作動させることによって、抽出ピストンエレメントが規定された位置に保持されることを保証することが可能である。一実施形態では、作動手段は、解除手段として設計された偏心アレンジメントに加えて、ロック手段を起動するように配置されたばね要素で構成することができる。特に、ばね要素は、そのばね力によってロックレバーを傾斜位置に移動させるように、ロックレバーの第2の自由端に接続することができ、一方、設けられた偏心器は、ばね力に抗してロックレバーを解放するための水平位置に移動させるように配置される。このようにして、ロック手段の非常に速い動作が達成され、それによって、抽出ピストンエレメントのロックは、ハンドレバーの動きとは無関係に行われる。
【0027】
さらに、本発明は、本発明による抽出装置を使用することができるエスプレッソ及びコーヒーマシンに関するものである。このエスプレッソ・コーヒーマシンは、フィルタ支持体が挿入可能なホルダーと、高温の加圧水を生成して分配し、フィルタ支持体および抽出装置の抽出ピストンエレメントの分配こし器によって規定される抽出室に供給する手段と、コーヒー粉末を生成するグラインダーと、ホルダーに挿入されたフィルタ支持体にコーヒー粉末を導入するドーズ装置とを更に備えている。
【0028】
本発明の有利な実施形態が、図面を参照して以下で説明されるが、これらは例示に過ぎず、限定的に解釈されるべきではない。図面から明らかになる本発明の特徴は、本発明の開示に属するものと見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、第1の位置にある機械式抽出装置の概略断面図である。
図2図2は、第2の位置にある図1に従う機械式抽出装置の概略断面図である。
図3図3は、第3の位置にある図1に従う機械式抽出装置の概略断面図である。
図4図4は、機械式抽出装置のロック手段の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、機械式抽出装置10の概略断面図であり、この図では、簡略化のために、機械式抽出装置10の動作を説明するのに必要な要素のみを示している。
【0031】
機械式抽出装置10は、フレーム部11のみが示されているフレーム構造体からなり、その上にハンドレバー14が回転軸12を中心に回転可能に取り付けられている。ハンドレバー14は、特にばね要素として設計された戻り要素13の抵抗力に抗して、開始位置、例えば上方位置から下方位置へ移動させることができる。さらに、機械式抽出装置10は、レバー機構16によってハンドレバー14と作動的に接続され、その移動に結合される抽出ピストンエレメント20を含んで構成されている。レバー機構16は、回転軸12を中心とするハンドレバー14の枢動運動がトグル機構のリンク要素を介して抽出ピストンエレメント20に伝達されるように、トグル機構として設計することができる。特に、抽出ピストンエレメント20の動きは、例えば、設けられたスライドガイド15によってガイドされる。したがって、抽出ピストンエレメント20の動きは、ハンドレバー14の動きに結合され、このハンドレバーは、図1に示すような第1の位置と、垂直軸18に沿った少なくとも1つの第2の位置との間で適宜移動させることができる。
【0032】
抽出ピストンエレメント20は、ピストンロッド22と分配こし器24とからなる。分配こし器24は、ピストンロッド22の下端に着脱可能に接続され、少なくとも抽出ピストンエレメント20の第2位置において、ホルダーに挿入されたフィルタ支持体を有する抽出室(図示せず)を密封方法で区画するように配置され、それによって対応する、例えば半径方向に作用する密封手段が設けられる。いわゆる抽出位置では、高温で加圧された抽出水が分配こし器24を通過して抽出室に入り、そこで、抽出室に充填された挽いたコーヒー粉が、開放位置でフィルタ支持体に充填できるように強制的に押し出される。
【0033】
さらに、ロック手段30が設けられており、これは、抽出ピストンエレメント20を垂直軸18に沿ってほぼ連続的に調整可能な位置に保持するようになっている。これは、例えば、実際の抽出工程の前に、フィルタ支持体に充填されたコーヒー粉末が、画定可能なタンピング力でタンピングまたは圧縮される場合に有利である。
【0034】
ロック手段30は、抽出ピストンエレメント20と解放可能なクランプ接続を形成するように構成されている。したがって、抽出ピストンエレメント20は、ロック手段30の解放位置では垂直軸18に沿って自由に移動可能であり、クランプ位置と呼ばれるロック手段30の位置ではブロックされる。
【0035】
ロック手段30は、ロックレバー32からなる。ロックレバー32は、第1端33がシャフト31に取り付けられ、自由な第2端35を有しているので、水平位置から傾斜位置に移動することができる。特に、後述する作動手段40は、ロックレバー32の第2の自由端35に係合する。
【0036】
ロックレバー32には嵌合ボア34が設けられ、このボアを通して抽出ピストンエレメント20のピストンロッド22が案内される。図1による実施形態では、ロックレバー32は、互いに平行な2つのプレート32.1、32.2によって形成されており、これらはそれぞれ、嵌合ボア34の領域でピストンロッド22とのクランプ接続を形成することができる。この多段式の特徴の結果、多段式のロックおよびリセットが可能である。
【0037】
ロック手段30を傾斜位置または解除位置に移動させるために、作動手段40が設けられている。図示の実施形態では、作動手段40は、ロックレバー32の第2端部35に係合するばね要素50からなり、そのばね力によってロックレバー32を傾斜位置に移動させるように配置されている。したがって、抽出ピストンエレメント20は、常にロックされている。
【0038】
ロック位置を解除するために、偏心アレンジメント60が設けられている。図示の実施形態では、この偏心アレンジメント60は、回転軸62を中心に回転可能に配置され、円周面65を構成する偏心器64からなる。円周面65は、回転軸62を中心とした回転時に、円弧から逸脱した軌跡を構成する。図示の実施形態では、偏心器64の円周面は、その上に配置されたロッカー要素66および伝達要素68によって、ロックレバー32と動作的に接続されている。偏心器64の位置に応じて、ロックレバー32は、ばね要素50のばね力に抗してその水平位置に移動され、その際、抽出ピストンエレメントは解放され、すなわち、ピストンロッド22は、嵌合ボア34内で自由に移動可能である。
【0039】
図示の実施形態では、ばね要素50は、偏心器60とロックレバー32との間の動作接続が中断されると、ロックレバー32を直ちに傾斜位置に置くように構成され、配置されている。
【0040】
図2において、機械式抽出装置10は第2の位置で示されており、それによって、ハンドレバー14が開始位置から下方に移動し、それに対応して、抽出ピストンエレメント20がフィルタ支持体の方に移動していることが分かる。また、図2において、ロック手段30は、ピストンロッド22が嵌合ボア34内に摺動可能に受容される解放位置にある。この目的のために、偏心アレンジメント60は、ロックレバー32が水平位置にあるようにして、ばね要素50のばね力を打ち消す。
【0041】
図3において、機械式抽出装置10は、ハンドレバー14が低い位置に示されており、それによって抽出ピストンエレメント20は、実際の抽出操作のためにフィルタ支持体と共に密閉抽出室が形成されたようにフィルタ支持体の中に十分に移動していることが表されている。この抽出位置では、ロックレバー32が傾斜位置に移動され、ピストンロッド22のための摩擦ロックを形成するように、作動手段40が作動される。偏心器アレンジメント60の偏心器64は、ロックレバー32との直接的な相互作用がない回転軸62を中心とする回転位置を取ることが分かる。したがって、ばね要素50のばね力は、ロックレバー32の第2の自由端35を上方に引っ張り、したがって、ロックレバー32は、傾斜した位置をとる。
【0042】
図4は、ロック位置におけるロック手段30の詳細図である。ここで、ロックレバー32に係合するばね要素は、ロック手段30を傾斜位置にもたらし、それによって同時に偏心器60はロックレバー32と動作的に接続されない。嵌合ボア34に案内されたピストンロッドは、第1ロックプレート32・1および第2ロックプレート32・2とクランプ接続され、多段クランプ効果が達成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
特許文献1 欧州特許第2811876号
特許文献2 中国特許第201578093号
特許文献3 欧州特許第0634903号
図1
図2
図3
図4