(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】プラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B65D1/02 220
(21)【出願番号】P 2017163311
(22)【出願日】2017-08-28
【審査請求日】2019-12-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄三
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】中野 裕之
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000869(US,A1)
【文献】特開2016-132500(JP,A)
【文献】特開2016-101975(JP,A)
【文献】特開2000-79925(JP,A)
【文献】特開2014-156287(JP,A)
【文献】特許第6143213(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、前記口部から底面方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部と、前記肩部と連続する胴部と、を備えるプラスチックボトルであって、
前記肩部に、内方に向かって陥没するパネルが少なくとも一つ設けられ、
前記パネルは、前記胴部に向けて広がる三角形状又は台形状に形成され、
前記パネルの底面は、内方に向かって凸となる湾曲面に形成されており、
前記パネルの上下両端を通る平面から前記パネルの前記底面の最深部までの深さが1mm~7mmであり、
隣り合う前記パネルの側辺の間には柱部が設けられており、
前記柱部と前記パネルとの境目は、外方に突出する部分を有さず、
前記胴部の周面は、凹凸のない平滑面に形成されて
おり、
前記パネルは前記胴部と接続されており、前記胴部と前記パネルとの境目が弧状に接続されているプラスチックボトル。
【請求項2】
前記肩部には、前記パネルが3つ以上設けられている請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記柱部と前記パネルとの境目が弧状に形成されている請求項1又は2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記プラスチックボトルが、加温用のプラスチックボトルである請求項1~
3のいずれか一項に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部と、前記口部から底面方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部と、前記肩部と連続する胴部と、を備えるプラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料充填用のプラスチックボトルとして、冷却状態又は常温で陳列されるプラスチックボトルのみならず、加温した状態で陳列される加温用のプラスチックボトルも用いられている。そして、加温用のプラスチックボトルでは、常温の飲料が充填されて、陳列時に加温するというようにして用いられる場合があり、この場合、陳列時の加温による温度変化によりボトルの内圧が充填時よりも上昇してしまう。
【0003】
これに対し、特開2016-132500号公報(特許文献1)には、肩部及び胴部に圧吸収用のパネルを設けたボトルが開示されており、このボトルによれば、この肩部及び胴部のパネルにより、充填後の加温による内圧の上昇を吸収できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のボトルでは、胴部の全体にパネルを設けなければならず、胴部に対し装飾を設けるなど胴部のデザインを変更しようとする際の弊害となっている。そのため、胴部のデザインを変更しようとすると、その分、胴部以外の箇所でボトル内部の増圧を吸収させる必要がある。
【0006】
そこで、肩部における増圧吸収効果を高めるプラスチックボトルの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
口部と、前記口部から底面方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部と、前記肩部と連続する胴部と、を備えるプラスチックボトルであって、
前記肩部に、内方に向かって陥没するパネルが少なくとも一つ設けられ、
前記パネルは、前記胴部に向けて広がる三角形状又は台形状に形成され、
前記パネルの底面は、内方に向かって凸となる湾曲面に形成されており、
前記パネルの上下両端を通る平面から前記パネルの前記底面の最深部までの深さが1mm~7mmであり、
隣り合う前記パネルの側辺の間には柱部が設けられており、
前記柱部と前記パネルとの境目は、外方に突出する部分を有さず、
前記胴部の周面は、凹凸のない平滑面に形成されており、
前記パネルは前記胴部と接続されており、前記胴部と前記パネルとの境目が弧状に接続されているプラスチックボトル。
【0008】
この構成によれば、パネルが三角形状又は台形状であることにより、肩部の上にパネルを広く設けることができる。また、四角形状のパネルに比べ、パネルが動きやすくなり、パネル面積も広く設けられる。また、この構成によれば、内方に向かって凸となる湾曲面を有するパネルを配設することにより、ボトル内部の増圧時にパネルが外方側に大きく動くことが可能になり、肩部における増圧吸収効果を効果的に高めることができる。また、深さが1mm~7mmであることにより、肩部における増圧吸収効果を効果的に高めることができる。つまり、深さが1mm未満であると増圧吸収量が不十分であり、また深さが7mmを超えるとパネルが動きにくく増圧吸収が困難になる。また、この構成によれば、柱部を設けることで、隣接するパネルの動きが、パネル同士互いに影響しないようにすることができる。また、この構成によれば、肩部により効果的に増圧を吸収できるために、胴部をパネルのない平滑面にでき、意匠的効果を高めることができる。さらに、この構成によれば、胴部とパネルとの境目が弧状であることにより、境目が角張っている場合に比べ、増圧時にパネルが外方側に動きやすくなる。
【0009】
以下、本発明に係るプラスチックボトルの好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0012】
1つの態様として、前記肩部には、前記パネルが3つ以上設けられていると好適である。
【0013】
この構成によれば、パネルが3つ以上あることで、パネルが大きくなり過ぎず、増圧時にパネルが動きやすくなる。
【0014】
1つの態様として、前記柱部と前記パネルとの境目が弧状に形成されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、柱部とパネルとの境目が弧状であることにより、境目が角張っている場合に比べ、増圧時にパネルが外方側に動きやすくなる。
【0020】
1つの態様として、前記プラスチックボトルが、加温用のプラスチックボトルであると好適である。
【0021】
本発明に係るプラスチックボトルによれば肩部により効果的に増圧を吸収できるために、この構成のように加温用のプラスチックボトルとしてもボトル内部の増圧による弊害を効果的に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るプラスチックボトルの実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るプラスチックボトル1は、
図1に示すように、液体の注ぎ口としての口部2と、口部2と連続し、底面方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部3と、肩部3と連続する円筒状の胴部4と、プラスチックボトル1の底となる底部5と、から構成されている。そして、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、加温用であり、肩部3に設けられたパネル31に特徴がある。以下、肩部3の構成について詳細に説明する。
【0024】
本実施形態では、
図1~4に示すように、肩部3に、内方に向かって陥没するパネル31が等間隔且つ同形状で4つ設けられている。そして、
図3に示すように、各パネル31の底面31aは、ボトル内方に向かって凸となる湾曲面に形成されている。このように、ボトル内方に向かって凸となる湾曲面であることにより、ボトル内部の増圧時にパネル31が外方側に大きく動くことが可能になる。また、パネル31は、周方向に対して垂直に延びるようになっている。
【0025】
パネルの上下両端31c,31cを通る平面Pからパネル31の底面31aの最深部までの深さD(
図4参照)は1mm~7mmとなっている。深さDが1mm未満であると増圧吸収量が不十分であり、深さDが7mmを超えるとパネルが動きにくく増圧吸収が困難になるためである。なお、深さDは、2mm~6mmであるとより好ましく、3mm~5mmであるとさらに好ましい。
【0026】
本実施形態では、隣り合うパネル31の側辺31bの間には柱部32が設けられている。パネル31を設けることで、隣接するパネルの動きが、パネル同士互いに影響しないようにすることができる。また、柱部32とパネル31との境目が弧状に形成されており、柱部32とパネル31との境目が角張っている場合に比べ、増圧時にパネル31が外方側に動きやすくなっている。さらに、パネル31は胴部4と接続されており、胴部4とパネル31との境目が弧状に形成されている。これにより、胴部4とパネル31との境目が角張っている場合に比べ、増圧時にパネル31が外方側に動きやすくなっている。
【0027】
本実施形態では、パネル31が台形状に形成されている。これにより、肩部3の上にパネル31を広く設けることができるようになっており、肩部3における増圧吸収効果を高めてある。また、四角形状のパネルに比べ、増圧時にパネルが外方側に動きやすくなっており、パネル面積も広く取れる。
【0028】
以上のような構成を備える肩部3により、肩部3における増圧吸収効果を高めてあり、胴部4に増圧吸収機能を有する構成を設けることなく、加温時のボトル内部の増圧を吸収可能になっている。そこで、本実施形態では、肩部3で増圧を吸収するため、胴部4には、凹凸のない平滑面で周面を構成するという特徴的な構成を採用でき、意匠的効果を高めることができるようになっている。
【0029】
次に、肩部3における増圧吸収効果の一例について説明する。本実施形態に係るプラスチックボトル1と同形状の500mlのボトルについて、飲料を充填した状態で所定時間75℃の湯で湯煎した後のボトル形状の変化を比較した。具体的には、(1)肩部にパネル自体を設けなかったボトル、(2)パネルを肩部に4つ設けたもののパネルの底面を平面としたボトル、(3)底面がボトル内方に向かって凸となる湾曲面に形成されているパネルを肩部に4つ設けたボトルでパネル最深部の深さが3mmのボトル、(4)(3)のボトルにおいてパネル最深部の深さが4mmのボトル、(5)(3)のボトルにおいてパネル最深部の深さが5mmのボトルの(1)~(5)のそれぞれ肩部の構成のみが異なるボトルについて比較を行ったところ、(1),(2)のボトルについては、湯煎を続けることでボトルの底部が変形することにより自立不可又は自立しても傾く状態に至ったものの、(3)~(5)のボトルについては(1),(2)のボトルの状態まで至ることはなく正常に自立可能な状態を維持している。このように、底面がボトル内方に向かって凸となる湾曲面に形成されているパネルを肩部に設けることにより、肩部における増圧吸収効果が高められていることがわかる。
【0030】
なお、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成型等の延伸成形法によって一体的に成型することができる。プラスチックボトル1の容量は特に限定されず、一般的に流通している280ml、350ml、500mlなど、200ミリリットル~2リットル程度とすることができる。また、ボトル1に充填させる液体は特に限定されず、例えば、飲料水、茶、果汁、コーヒー、ココア、清涼飲料水、アルコール飲料、乳飲料、スープなどの飲料や、ソースや醤油などの液体調味料などが挙げられる。
【0031】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るプラスチックボトルのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0032】
(1)上述の実施形態では、パネル31を肩部3に4つ設けた構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、パネル31は少なくとも一つ設けられていればよく、より好ましくは3つ以上設けられていればよい。
【0033】
(2)上述の実施形態では、パネル31を台形状に形成した構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、パネル31は三角形状であってもよく、その他適宜変更可能である。
【0034】
(3)上述の実施形態では、パネル31に何らの装飾も施さなかった構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、パネル31に所定の文字や図形等の装飾を設けるようにしてもよい。
【0035】
(4)上述の実施形態では、柱部32とパネル31との境目や胴部4とパネル31との境目を弧状に形成した構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、柱部32とパネル31との境目や胴部4とパネル31との境目を角張らせるように形成してもよいし、また、胴部4とパネル31とが接続されないようにしてもよい。
【0036】
(5)上述の実施形態では、胴部4の周面4aを平滑面にした構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、胴部4にパネルやリブ等の構成を設けてもいいし、所定の文字や図形等の装飾を設けるようにしてもよい。
【0037】
(6)上述の実施形態では、パネル31の上下両端31c,31cを通る平面Pからパネル31の底面31aの最深部までの深さDを1mm~7mmとした構成を例に説明した。しかし、参考例として、パネル31の左右両側辺31b,31bを通る平面からパネル31の底面31aの最深部までのパネルの深さを1mm~7mmとすることも考えられる。
【0038】
(7)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば加温用のプラスチックボトルに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 プラスチックボトル
2 口部
3 肩部
3a 周面の位置
31 パネル
31a 底面
31b 側辺
31c 上下両端
32 柱部
4 胴部
4a 周面
D 深さ
P パネルの上下両端を通る平面