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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】飛散防止粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231121BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231121BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20231121BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20231121BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231121BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20231121BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/34
C09J7/20
C09J11/06
C09J133/04
C09J175/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018203099
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020070313
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058422(JP,A)
【文献】特開2012-097161(JP,A)
【文献】特開2020-055925(JP,A)
【文献】特開2013-129785(JP,A)
【文献】特開2009-203351(JP,A)
【文献】特開2019-178284(JP,A)
【文献】特開2011-122054(JP,A)
【文献】特開2011-209512(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093526(WO,A1)
【文献】特開2015-052118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0159234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
B32B 27/00
B32B 27/34
C09J 7/20
C09J 11/06
C09J 133/04
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層を構成する粘着剤が、重合体、カルボジイミドと、シランカップリング剤とを含有する粘着性組成物から得られるものであり、
記粘着剤のゲル分率が、10%以上であり、
前記重合体の酸価が、50mgKOH/g以下であり、
前記重合体の水酸基価が、1mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であり、
前記粘着剤中における前記カルボジイミドの含有量が、0.01質量%以上、3質量%以下であり、
前記重合体が、(メタ)アクリル酸エステル重合体の架橋物であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、少なくとも前記カルボジイミドとは別成分のイソシアネート系架橋剤によって架橋されており、
前記イソシアネート系架橋剤の前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する配合量が、0.01質量部以上、1.0質量部以下であり、
ソーダライムガラスに対する粘着力が、8N/25mm以上、50N/25mm以下である
ことを特徴とする飛散防止粘着シート。
【請求項2】
前記基材が、加水分解性基材であることを特徴とする請求項1に記載の飛散防止粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割れた被着体が飛散しないように、当該被着体に貼付される飛散防止粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車にはカーナビゲーションシステムが搭載されることが一般的になっている。カーナビゲーションシステムの表示体(ディスプレイ)においては、通常、液晶モジュールの表面側に保護パネルが設けられている。かかる保護パネルには、事故等の際に、割れた保護パネルが飛散しないように、安全性の観点から、基材フィルムと粘着剤層とからなる飛散防止フィルムが貼付されることが多い。
【0003】
一方、自動車のドライバーは偏光サングラスを着用することがあるが、その偏光軸と液晶モジュールの偏光軸とがなす角度が合致したときに、ディスプレイの表示が全く見えなくなること(ブラックアウト)がある。そのようなブラックアウトを防止するために、上記の飛散防止フィルムの基材フィルムとして、等方性フィルムであるアセチルセルロースフィルムが使用されることがある。
【0004】
ここで、特許文献1は、屈折率が1.45~1.55のトリアセチルセルロースフィルムからなる基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられた屈折率が1.45~1.55の粘着剤層と、を備えてなることを特徴とする画像表示装置用飛散防止フィルムを提案している。
【0005】
また、特許文献2は、タッチパネルモジュールと液晶表示パネルとを有するタッチパネル付き液晶表示装置であって、該タッチパネルモジュールが、最表面のガラス基板と、X方向とそれに直交するY方向に格子状に形成された一対の透明導電膜と、その上面にガラス飛散防止フィルムとを有し、該ガラス飛散防止フィルムの最大弾性率の方向が、該格子状に形成された一対の透明導電膜のX方向又はY方向に対して斜め方向であることを特徴とするタッチパネル付き液晶表示装置を提案するとともに、そのガラス飛散防止フィルムとして、セルロースエステルフィルムを使用することを併せて提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-209512号公報
【文献】特許第5831559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アセチルセルロースフィルムは、湿熱環境下において加水分解し、劣化し易いという問題がある。特に自動車の車内では、高温高湿になり易いため、上記の問題は深刻である。これに対し、特許文献1および特許文献2では、この問題に関して何ら指摘されていない。特許文献1に開示された画像表示装置用飛散防止フィルムの粘着剤について検討すると、アセチルセルロースフィルムの湿熱環境下における加水分解の進行を抑制する効果は、必ずしも十分ではない。また、特許文献2においては、粘着剤の詳細さえ開示されていない。
【0008】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、湿熱環境下における耐久性が高い飛散防止粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層を構成する粘着剤が、重合体を含有するとともに、カルボジイミドを含有し、前記粘着剤のゲル分率が、10%以上であり、前記重合体の酸価が、50mgKOH/g以下であることを特徴とする飛散防止粘着シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る飛散防止粘着シートは、湿熱環境下に置かれて、通常であれば基材(加水分解性基材)が加水分解するような状況になっても、当該基材の割れ等の劣化が抑制される。そして、それに伴い、基材と粘着剤層との界面における剥がれも抑制される。すなわち、上記発明(発明1)に係る飛散防止粘着シートは、湿熱環境下における耐久性が高いものである。なお、本発明に係る飛散防止粘着シートは、飛散防止を目的としない粘着シートとしても使用することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記重合体が、イソシアネート系架橋剤によって架橋されていることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記重合体の水酸基価が、1mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1~3)においては、前記重合体が、(メタ)アクリル酸エステル重合体であることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明1~4)においては、前記粘着剤中におけるカルボジイミドの含有量が、0.01質量%以上、10質量%以下であることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1~5)においては、前記基材が、加水分解性基材であることが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る飛散防止粘着シートは、湿熱環境下における耐久性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る飛散防止粘着シートの断面図である。
図2】表示装置の一構成例を示す断面図である。
図3】表示装置の他の構成例を示す断面図である。
図4】乗り物用インストルメント・パネルの一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る飛散防止粘着シートは、基材と、当該基材の少なくとも一方の面側に設けられた粘着剤層とを備えた粘着シートであり、好ましくは、当該粘着剤層における基材とは反対側の面に剥離シートを積層してなる粘着シートである。
【0019】
基材としては、特に限定されず、飛散防止粘着シートの基材として通常用いられる基材(各種プラスチックフィルム)を使用することができる。ただし、本実施形態では、粘着剤層による湿熱耐久性の効果が直接的に発現される加水分解性基材を使用することが好ましい。
【0020】
本実施形態に係る飛散防止粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。この具体的構成では、基材の一例として、加水分解性基材11を使用するが、これに限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る飛散防止粘着シート1は、加水分解性基材11と、粘着剤層12と、剥離シート13とをその順に積層してなる。剥離シート13は、その剥離面が粘着剤層12と接触するように積層されている。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0022】
1.各部材
1-1.加水分解性基材
本実施形態における加水分解性基材とは、湿熱環境下、例えば85℃、85%RHの環境下において、加水分解し易い基材をいう。本実施形態における加水分解性基材11としては、例えば、アセチルセルロースフィルム、ポリ乳酸(PLA)等の生分解性プラスチックフィルム、それらフィルムを有する積層フィルム等が挙げられる。アセチルセルロースフィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。
【0023】
加水分解性基材11がアセチルセルロースフィルムを有する積層フィルムの場合、当該加水分解性基材11の少なくとも粘着剤層12と接する部分が、アセチルセルロースフィルムであることが好ましい。かかる構成であると、粘着剤層12による湿熱耐久性の向上効果がより発揮され易くなる。
【0024】
加水分解性基材11の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには30μm以上であることが好ましい。また、加水分解性基材の厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。加水分解性基材11の厚さが上記範囲内にあることで、被着体の光学特性を損なうことなく、かつ、被着体が、衝撃等によって割れ易い部材(例えば、ガラス板、プラスチック板等)である場合、割れた被着体の飛散を防止する飛散防止効果を発揮することができる。
【0025】
1-2.粘着剤層
本実施形態における粘着剤層12を構成する粘着剤は、重合体を含有するとともに、カルボジイミドを含有する。また、上記粘着剤のゲル分率は、10%以上であり、上記重合体の酸価は、50mgKOH/g以下である。これにより、本実施形態に係る飛散防止粘着シート1が湿熱環境下に置かれて、通常であれば加水分解性基材11が加水分解するような状況になっても、加水分解性基材11の割れ等の劣化が抑制される。そして、それに伴い、加水分解性基材11と粘着剤層12との界面における剥がれも抑制される。
【0026】
本実施形態において、カルボジイミドは、加水分解によって生じる活性水素を捕捉して当該加水分解を抑制する加水分解抑制剤として機能する。また、重合体の酸価が上記のように低いことにより、粘着剤層12によって、加水分解性基材11の加水分解が促進されない。さらに、粘着剤のゲル分率が上記のようにある程度高いことにより、粘着剤の凝集力が高くなって粘着剤層12自体の耐久性が向上し、加水分解性基材11からの剥離がより効果的に抑制される。これらによって、本実施形態に係る飛散防止粘着シート1は、湿熱環境下における耐久性が高いものとなる。
【0027】
本実施形態におけるカルボジイミドは、カルボジイミド基(-N=C=N-)を有するものであり、上記粘着剤中で独立してカルボジイミド化合物として存在してもよいし、上記重合体と結合して存在してもよい。また、上記粘着剤中にそれらが混在してもよい。カルボジイミドが上記重合体と結合して存在する場合には、例えば、末端に反応性官能基(例えばイソシアネート基)を有するカルボジイミド化合物と、反応性官能基(例えば水酸基)を有する重合体とが反応して結合したもの(場合によって架橋体)として存在する。
【0028】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基を少なくとも1つ有していればよく、2以上のカルボジイミド基を有していてもよい。すなわち、カルボジイミド化合物は、モノカルボジイミド化合物(1つのカルボジイミド基を有する化合物)であってもよいし、ポリカルボジイミド化合物(2以上のカルボジイミド基を有する化合物)であってもよい。また、カルボジイミド化合物において、カルボジイミド基は、炭化水素基または炭化水素骨格に結合していてもよい。カルボジイミド化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本実施形態では、湿熱環境下における耐久性の観点から、ポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
【0030】
モノカルボジイミド化合物としては、例えば、脂肪族モノカルボジイミド化合物、脂環式モノカルボジイミド化合物、芳香族モノカルボジイミド化合物等が好ましく挙げられる。
【0031】
脂肪族モノカルボジイミド化合物としては、例えば、1,3-ジメチルカルボジイミド、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド、1-イソプロピル-3-t-ブチルカルボジイミド、1,3-ジヘキシルカルボジイミド、1,3-ジオクチルカルボジイミド、1-イソプロピル-3-ドデシルカルボジイミド、1,3-ジオクチルデシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド等のジアルキルカルボジイミド化合物などが挙げられる。
【0032】
脂環式モノカルボジイミド化合物としては、例えば、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド等のジシクロアルキルカルボジイミド化合物などが挙げられる。
【0033】
芳香族モノカルボジイミド化合物としては、例えば、ジアリールカルボジイミド化合物、アリールシクロアルキルカルボジイミド化合物、アルキルアラルキルカルボジイミド化合物等が挙げられる。ジアリールカルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジo-トリルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジメチルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジエチルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(2-エチル-6-イソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(2-イソブチル-6-イソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジt-ブチルフェニル)カルボジイミド、N-フェニル-N’-トリルカルボジイミド、N,N’-ジ-β-ナフチルカルボジイミド、N,N’-ジ(p-ニトロフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジ(p-アミノフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジ(p-ヒドロキシフェニル)カルボジイミド等が挙げられる。アリールシクロアルキルカルボジイミド化合物としては、例えば、N-トリル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド等が挙げられる。アルキルアラルキルカルボジイミド化合物としては、例えば、ベンジルイソプロピルカルボジイミド等が挙げられる。
【0034】
ポリカルボジイミド化合物は、主として、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。有機ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、脂肪族ポリカルボジイミド化合物、脂環式ポリカルボジイミド化合物、芳香族ポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。脂肪族ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、ポリヘキサメチレンカルボジイミド等のポリアルキレンカルボジイミドなどが挙げられる。脂環式ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等のポリジシクロアルキルアルカンカルボジイミドなどが挙げられる。芳香族ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、ポリアリーレンカルボジイミド、ポリジアリールアルカンカルボジイミド等が挙げられる。ポリアリーレンカルボジイミドとしては、例えば、ポリm-フェニレンカルボジイミド、ポリp-フェニレンカルボジイミド、ポリトリレンカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等が挙げられる。また、ポリジアリールアルカンカルボジイミドとしては、例えば、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)等が挙げられる。
【0036】
ポリカルボジイミド化合物の数平均分子量(Mn)は、200以上であることが好ましく、50000以下であることが好ましい。
【0037】
なお、本明細書における数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0038】
ポリカルボジイミド化合物の末端基は、特に限定されず、例えば、イソシアネート基などの原料由来の基であってもよく、末端の一部又は全部が封鎖又は保護された基であってもよい。例えば、末端イソシアネート基が、アミン、アルコール、モノイソシアネート等の封鎖剤で封鎖された基であってもよい。
【0039】
ポリカルボジイミド化合物は、前述した通り、主として、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造されるため、末端基がイソシアネート基となる場合がある。
【0040】
ポリカルボジイミド化合物が末端イソシアネート基を有する場合、ポリカルボジイミド化合物全体に対するイソシアネート基の割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、特に0.3質量%以上であることが好ましく、さらには0.5質量%以上であることが好ましい。また、当該イソシアネート基の割合は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、特に15質量%以下であることが好ましく、さらには10質量%以下であることが好ましい。
【0041】
粘着剤層12を構成する粘着剤中におけるカルボジイミドの含有量は、下限値として、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、特に0.4質量%以上であることが好ましく、さらには0.9質量%以上であることが好ましい。カルボジイミドの含有量の下限値が上記であることにより、飛散防止粘着シート1の湿熱耐久性をより効果的に向上させることができる。
【0042】
また、粘着剤層12を構成する粘着剤中におけるカルボジイミドの含有量は、上限値として、10質量%以下であることが好ましく、特に5質量%以下であることが好ましく、さらには3質量%以下であることが好ましい。カルボジイミドの含有量の上限値が上記であることにより、粘着剤からの析出を抑制し、より良好な粘着性を発揮することができる。
【0043】
上記粘着剤のゲル分率は、特に粘着剤層12と加水分解性基材11との剥離抑制の観点から、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、特に35%以上であることが好ましく、さらには50%以上であることが好ましい。また、上記粘着剤のゲル分率は、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、特に85%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。これにより、粘着剤が硬くなり過ぎず、良好な粘着力が発現し、被着体との接着性がより優れたものとなる。ここで、粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0044】
上記重合体の酸価は、加水分解性基材11の加水分解抑制の観点から、50mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以下であることがより好ましく、特に20mgKOH/g以下であることが好ましく、さらには10mgKOH/g以下であることが好ましい。なお、重合体の酸価の下限値は、小さいほど好ましいため、0mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0045】
また、上記重合体の水酸基価は、1mgKOH/g以上であることが好ましく、3mgKOH/g以上であることがより好ましく、特に5mgKOH/g以上であることが好ましく、さらには9mgKOH/g以上であることが好ましい。一方、上記重合体の水酸基価は、300mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましく、特に100mgKOH/g以下であることが好ましく、さらには50mgKOH/g以下であることが好ましい。上記重合体の水酸基価が上記範囲にあることにより、重合体の架橋点が適度に確保されて、粘着剤が所定の凝集力を有することとなる。その結果、湿熱耐久性がより優れたものとなる。
【0046】
ここで、本明細書における酸価および水酸基価は、基本的には重合体を構成するモノマーの配合割合から導き出される理論値とし、当該理論値が導き出せない場合には、JIS K0070に基づいて測定した値とする。
【0047】
上記の重合体の種類、すなわち粘着剤層12を構成する粘着剤の種類は、加水分解性基材11および被着体に対して所望の粘着力を発揮し、かつ、上記効果が発揮され得る粘着剤であれば、特に限定されない。
【0048】
粘着剤層12を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した物性を満たし易く、粘着物性、光学特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0049】
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいし、熱架橋性のものであってもよいし、非架橋性のものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。中でも、硬化反応の安定性の観点から、活性エネルギー線非硬化性のものであることが好ましい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
【0050】
粘着剤層12を構成する粘着剤の種類がアクリル系粘着剤の場合、粘着剤に含まれる上記重合体は、(メタ)アクリル酸エステル重合体またはその架橋物(カルボジイミドを含有するものを含む)であることが好ましい。この場合、粘着剤層12は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有する粘着性組成物から得られるアクリル系粘着剤からなることが好ましい。
【0051】
具体的には、粘着剤層12を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、カルボジイミド化合物(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)から得られるものであることが好ましい。粘着性組成物Pは、さらに架橋剤(C)を含有することが好ましく、その場合、上記粘着剤は、粘着性組成物Pを架橋して得られる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0052】
(1)各成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。かかる観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、下限値として50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、特に70質量%以上含有することが好ましく、さらには80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は好適な粘着性を発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、上限値として99質量%以下含有することが好ましく、特に98質量%以下含有することが好ましく、さらには97質量%以下含有することが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの上限値が上記であることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
【0053】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等が挙げられ、中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが含まれることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基とは、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基をいう。
【0054】
また、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃を超える(好ましくは70℃以上の)ハードモノマーと、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃以下(好ましくは-40℃以下)のソフトモノマーとを組み合わせて使用することも好ましい。ソフトモノマーにより柔軟性を確保しつつ、ハードモノマーで凝集力を向上させることにより、粘着力をより高いものにすることができるからである。この場合、ハードモノマーとソフトモノマーとの質量比は、5:95~40:60であることが好ましく、特に15:85~30:70であることが好ましい。
【0055】
上記ハードモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル(Tg10℃)、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
上記ハードモノマーの中でも、粘着性や透明性等の他の特性への悪影響を防止しつつハードモノマーの性能をより発揮させる観点から、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸イソボルニルが好ましい。粘着性をも考慮すると、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルがより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0057】
上記ソフトモノマーとしては、炭素数が2~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられる。例えば、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-70℃)、アクリル酸n-ブチル(Tg-54℃)等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基は、後述する架橋剤(C)と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが挙げられる。これらの中でも、架橋剤(C)との反応性に優れ、加水分解性基材11への悪影響の少ない水酸基含有モノマーが特に好ましい。
【0060】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(C)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、0.5質量%以上含有することが好ましく、特に1質量%以上含有することが好ましく、さらには2質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、40質量%以下含有することが好ましく、20質量%以下含有することがより好ましく、特に15質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で水酸基含有モノマーを含有すると、重合体の水酸基価が前述した好ましい範囲に入り、所望の凝集力を有する粘着剤が得られ、湿熱耐久性がより優れたものとなる。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことが好ましい。酸成分であるカルボキシ基が粘着剤中に存在すると、加水分解性基材11の加水分解が促進されるからである。
【0063】
ここで、「カルボキシ基含有モノマーを含まない」とは、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含まないことを意味し、カルボキシ基含有モノマーを全く含まない他、加水分解性基材11の加水分解が促進されない程度にカルボキシ基含有モノマーを含むことを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0064】
一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含む場合、その含有量は、4質量%以下であることが好ましく、特に2質量%以下であることが好ましく、さらには1質量%以下であることが好ましい。ただし、0質量%であることが最も好ましい。これにより、重合体の酸価が前述した好ましい範囲に入り、加水分解性基材11の加水分解の促進をある程度抑制することができる。
【0065】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを含有することにより、ガラス等の被着体への密着性を向上させることができる。窒素原子含有モノマーとしては、アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられ、中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。
【0066】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0067】
なお、窒素原子含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を使用することもできる。
以上の窒素原子含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、その含有量は、ガラス等の被着体への密着性を向上させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。また、上記含有量は、他の成分の配合量を確保する観点から、20質量%以下であることが好ましく、特に15質量%以下であることが好ましく、さらには10質量%以下であることが好ましい。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより高分子量のポリマーが得やすく、湿熱耐久性により優れた粘着剤が得られる。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、20万以上であることが好ましく、40万以上であることがより好ましく、特に60万以上であることが好ましく、さらには80万以上であることが好ましく、110万以上であることが最も好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、300万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましく、特に180万以下であることが好ましく、さらには150万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記の範囲にあると、得られる粘着剤による湿熱耐久性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0073】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(1-2)カルボジイミド化合物(B)
カルボジイミド化合物(B)は、前述した通りのものが好ましい。また、カルボジイミド化合物(B)の含有量は、前述した粘着剤中におけるカルボジイミドの含有量と同じである。なお、粘着剤層12を構成する粘着剤中における含有量と、粘着性組成物P中における含有量とは、同一視することができる。
【0075】
ここで、末端イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を含むカルボジイミド化合物(B)を使用した場合、当該末端イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物は、粘着性組成物Pの加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基等と反応して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と結合し、または(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋する場合がある。
【0076】
(1-3)架橋剤(C)
架橋剤(C)は、粘着性組成物Pの加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造の架橋構造を良好に形成することが可能となる。これにより、所定の凝集力を有する粘着剤が得られ、湿熱耐久性がより優れたものとなる。
【0077】
上記架橋剤(C)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が構成モノマー単位として水酸基含有モノマーを含有する場合には、架橋剤(C)としては、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(C)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0079】
粘着性組成物P中における架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1.0質量部以下であることが好ましく、特に0.8質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。架橋剤(C)の含有量が上記範囲内にあると、所定の架橋構造が形成され、得られる粘着剤による湿熱耐久性がより優れたものとなる。
【0080】
(1-4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0081】
ここで、粘着性組成物Pがシランカップリング剤を含有すると、得られる粘着剤は、ガラス部材やプラスチック板との密着性が向上する。これにより、得られる粘着剤による湿熱耐久性は、より優れたものとなる。
【0082】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0083】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
粘着性組成物Pがシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、2質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。
【0085】
(2)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、カルボジイミド化合物(B)と、架橋剤(C)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、無溶剤にて重合してもよい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0088】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0089】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0090】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、カルボジイミド化合物(B)、架橋剤(C)、ならびに所望により希釈溶剤および添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0091】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0092】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0093】
(3)粘着剤層の形成
粘着剤層12は、上記粘着性組成物P(塗布溶液)を所望の対象物に塗布し、架橋させることにより形成することが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0094】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0095】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤(粘着剤層12)が形成される。
【0096】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(C)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。
【0097】
(4)粘着剤層の厚さ
粘着剤層12の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、特に15μm以上であることが好ましい。粘着剤層12の厚さの下限値が上記であると、所望の粘着力を発揮し易く、かつ、粘着剤層12による加水分解抑制効果が十分に発揮され得る。
【0098】
また、粘着剤層12の厚さは、上限値として500μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。粘着剤層12の厚さの上限値が上記であると、粘着剤層の圧痕や打痕等の外観不具合を抑制し得る。なお、粘着剤層12は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0099】
1-3.剥離シート
剥離シート13は、飛散防止粘着シート1の使用時まで粘着剤層12を保護するものであり、飛散防止粘着シート1(粘着剤層12)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る飛散防止粘着シート1において、剥離シート13は必ずしも必要なものではない。
【0100】
剥離シート13としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0101】
上記剥離シート13の剥離面(特に粘着剤層12と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0102】
剥離シート13の厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0103】
2.物性
(1)全光線透過率
本実施形態に係る飛散防止粘着シート1における粘着剤層12の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましく、さらには99%以上であることが好ましい。粘着剤層12の全光線透過率が上記であると、透明性が非常に高く、光学用途として特に好適である。なお、本明細書における全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準じて測定した値とする。
【0104】
(2)粘着力
本実施形態に係る飛散防止粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として5N/25mm以上であることが好ましく、特に8N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力の下限値が上記であると、湿熱耐久性がより優れたものとなる。また、上記粘着力は、上限値として、50N/25mm以下であることが好ましく、45N/25mm以下であることがより好ましく、40N/25mm以下であることが特に好ましい。上記粘着力の上限値が上記であると、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合でも貼り直しが可能である。
【0105】
ここで、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に貼付し、0.5MPa、50℃で20分加圧した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
【0106】
3.粘着シートの製造
飛散防止粘着シート1の一製造例としては、剥離シート13の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に加水分解性基材11を貼合する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層12となる。これにより、上記飛散防止粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0107】
上記粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0108】
4.粘着シートの使用
本実施形態に係る飛散防止粘着シート1を使用することにより、例えば、図2または図3に示される、静電容量方式のタッチパネルである表示装置10Aまたは表示装置10Bを製造することができる。
【0109】
本実施形態における表示装置10Aは、下から順に、表示体モジュール7と、その上に粘着剤層6を介して積層されたフィルムセンサー5と、その上に粘着剤層4を介して積層された、パターニングされた透明導電膜3付きの保護パネル2と、保護パネル2の上に、粘着剤層12を介して貼付された飛散防止粘着シート1(剥離シート13は剥離済み)とを備えて構成される。すなわち、この表示装置10Aでは、飛散防止粘着シート1は、保護パネル2の表面側(表示体モジュール7とは反対側)に設けられている。
【0110】
また、本実施形態における表示装置10Bは、下から順に、表示体モジュール7と、その上に粘着剤層6を介して積層されたフィルムセンサー5と、その上に粘着剤層4を介して積層された飛散防止粘着シート1(剥離シート13は剥離済み)と、その飛散防止粘着シート1の粘着剤層12を介して積層された、パターニングされた透明導電膜3付きの保護パネル2とを備えて構成される。すなわち、この表示装置10Bでは、飛散防止粘着シート1は、保護パネル2の裏面側(表示体モジュール7側)に設けられている。
【0111】
なお、上記の表示装置10A,10Bでは、保護パネル2に透明導電膜3が設けられているが、これに限定されるものではなく、透明導電膜3は別の部位に設けられていてもよい。
【0112】
上記表示体モジュール7としては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電子ペーパー等が挙げられる。
【0113】
粘着剤層6および粘着剤層4は、所望の粘着剤または粘着シートによって形成すればよく、上記飛散防止粘着シート1の粘着剤層12と同様の粘着剤によって形成してもよい。上記所望の粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられるが、中でもアクリル系粘着剤が好ましい。
【0114】
フィルムセンサー5は、通常、基材フィルム51と、パターニングされた透明導電膜52とから構成される。基材フィルム51としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレンフィルム等が使用される。
【0115】
透明導電膜52としては、例えば、白金、金、銀、銅等の金属、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化亜鉛等の酸化物、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の複合酸化物、カルコゲナイド、六ホウ化ランタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化化合物などからなるものが挙げられ、中でもスズドープ酸化インジウム(ITO)からなるものが好ましい。
【0116】
なお、上記表示装置10A,10Bにおけるフィルムセンサー5の透明導電膜52は、図2および図3中、フィルムセンサー5の上側に位置しているが、これに限定されるものではなく、フィルムセンサー5の下側に位置してもよい。
【0117】
保護パネル2は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなることが好ましい。
【0118】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~5mmであり、好ましくは0.2~2mmである。
【0119】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~5mmであり、好ましくは0.4~3mmである。
【0120】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、所望の機能性層(ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよい。
【0121】
上記の表示装置10A,10Bでは、保護パネル2に透明導電膜3がパターニングされて設けられている。透明導電膜3の材料としては、上記フィルムセンサー5の透明導電膜52と同様のものを使用することができる。なお、透明導電膜3およびフィルムセンサー5の透明導電膜52は、通常、一方がX軸方向の回路パターンを構成し、他方がY軸方向の回路パターンを構成する。
【0122】
表示装置10Aを製造する場合、飛散防止粘着シート1の剥離シート13を剥離して、露出した粘着剤層12を保護パネル2の表面側(透明導電膜3が存在しない側)に貼付した後、当該飛散防止粘着シート1付きの保護パネル2を使用して、常法により表示装置10Aを製造してもよいし、常法により表示装置(飛散防止粘着シート1が貼付されていない状態の表示装置10A)を製造した後、保護パネル2の表面側(表示体モジュール7とは反対側)に飛散防止粘着シート1を貼付してもよい。
【0123】
また、表示装置10Bを製造する場合、飛散防止粘着シート1の剥離シート13を剥離して、露出した粘着剤層12を、保護パネル2の裏面側に設けられている透明導電膜3に貼付した後、当該飛散防止粘着シート1付きの保護パネル2を使用して、常法により表示装置10Bを製造すればよい。
【0124】
上記表示装置10A,10Bにおいては、落下等により大きな衝撃を受けて保護パネル2が割れた場合であっても、保護パネル2に貼付された飛散防止粘着シート1の存在により、保護パネル2の破片が飛散することが防止される。
【0125】
また、上記飛散防止粘着シート1の加水分解性基材11がアセチルセルロースフィルムであり、表示体モジュール7が液晶モジュールの場合には、当該表示装置10A,10Bを視認する者が偏光サングラスを着用しているときに、ブラックアウトを防止することができる(表示装置10A,10Bが特に車載用表示装置の場合)。
【0126】
また、本実施形態に係る飛散防止粘着シート1を使用することにより、例えば、図4に示される乗り物用インストルメント・パネル8(好ましくは、自動車用インストルメント・パネル)を製造することができる。
【0127】
本実施形態における乗り物用インストルメント・パネル8は、インストルメント・パネル用表示装置81と、当該インストルメント・パネル用表示装置81を覆うカバー82と、当該カバー82の表面側(インストルメント・パネル用表示装置81とは反対側)に、粘着剤層12を介して貼付された飛散防止粘着シート1(剥離シート13は剥離済み)とを備えて構成される。本実施形態における乗り物用インストルメント・パネル8では、インストルメント・パネル用表示装置81とカバー82との間に空隙が存在するが、これに限定されるものではない。
【0128】
なお、上記の例では飛散防止粘着シート1はカバー82の表面側に貼付されているが、これに限定されるものではなく、飛散防止粘着シート1はカバー82の裏面側(インストルメント・パネル用表示装置81に対向する側)に貼付されていてもよい。
【0129】
上記乗り物用インストルメント・パネル8においては、事故等により大きな衝撃を受けてカバー82が割れた場合であっても、カバー82に貼付された飛散防止粘着シート1の存在により、割れたカバー82の破片が飛散することが防止される。
【0130】
また、上記飛散防止粘着シート1の加水分解性基材11がアセチルセルロースフィルムであり、インストルメント・パネル用表示装置81が液晶ディスプレイを有する場合には、当該乗り物用インストルメント・パネル8を視認する者が偏光サングラスを着用しているときに、ブラックアウトを防止することができる。
【0131】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0132】
例えば、飛散防止粘着シート1における剥離シート13は省略されてもよい。また、加水分解性基材11における粘着剤層12とは反対側の面には、他の層が積層されてもよい。
【0133】
また、飛散防止粘着シートの基材は、剥離シートであってもよい。この場合、粘着剤層は後の工程で飛散防止機能を有する部材に貼合されることとなる。さらに、飛散防止粘着シートは、飛散防止を目的としない粘着シートであってもよく、例えば、ブラックアウト防止用の粘着シートであってもよい。
【実施例
【0134】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0135】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸n-ブチル78質量部、アクリル酸イソボルニル15質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル2質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)150万であった。
【0136】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、カルボジイミド化合物(B)としてのポリカルボジイミド(B1;日清紡ケミカル社製,製品名「カルボジライトV-05」,テトラメチルキシリレンジイソシアネートの脱二酸化炭素縮合物,末端イソシアネート基含有量:8.2質量%)1.0質量部と、架橋剤(C)としてのトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学株式会社製,製品名「TD-75」)0.3質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0137】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
BA:アクリル酸n-ブチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
AA:アクリル酸
[カルボジイミド化合物(B)]
B1:ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル社製,製品名「カルボジライトV-05」,テトラメチルキシリレンジイソシアネートの脱二酸化炭素縮合物,末端イソシアネート基含有量:8.2質量%)
B2:ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル社製,製品名「カルボジライトV-07」,テトラメチルキシリレンジイソシアネートの脱二酸化炭素縮合物,末端イソシアネート基含有量:0.5質量%)
B3:ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル社製,製品名「カルボジライトV-09」,テトラメチルキシリレンジイソシアネートの脱二酸化炭素縮合物,末端イソシアネート基無し)
[架橋剤(C)]
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学株式会社製,製品名「TD-75」)
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム株式会社製,製品名「BHS8515」)
エポキシ:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD-C」)
【0138】
3.飛散防止粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0139】
次いで、上記塗布層に対して、基材(加水分解性基材)としてのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製,製品名「フジタックTD80ULP」,厚さ80μm)を貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、TACフィルム/粘着剤層(厚さ:25μm)/剥離シートの構成からなる飛散防止粘着シートを作製した。
【0140】
なお、上記粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0141】
〔実施例2~8,比較例1~3〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、カルボジイミド化合物(B)の種類および配合量、架橋剤(C)の種類および配合量、ならびにシランカップリング剤の配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして飛散防止粘着シートを製造した。
【0142】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0143】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0144】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表1に示す。
【0145】
〔試験例2〕(全光線透過率の測定)
実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートの粘着剤層について、JIS K7361-1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-2000」)を用いて全光線透過率(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0146】
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表1に示す。
【0147】
〔試験例4〕(湿熱耐久性の評価)
実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置し、これをサンプルとした。
【0148】
得られたサンプルを、85℃、85%RHの湿熱条件下にて1500時間保管した。その後、サンプルの状態(基材の割れ、基材の粘着剤層からの剥がれ等)を目視により確認し、以下の基準により湿熱耐久性を評価した。結果を表1に示す。
◎…基材割れ、基材の粘着剤層からの剥がれ等無し
〇…基材にわずかなひび割れが発生したが、基材の粘着剤層からの剥がれは無し
△…基材にひび割れが生じているが、基材の粘着剤層からの剥がれは無し
×…基材に割れ発生
【0149】
〔試験例5〕(飛散防止性の評価)
長さ170mm×幅150mm×厚み1mmのソーダライムガラス板(日本板硝子社製)に、実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートを貼り合せた。その後、テーブルの上に設置した高さ10mmの2つの台の上に、上記ガラス板と粘着シートからなる積層体を配置した。このとき、粘着シート側が上向き(上記の台とは反対側の向き)となり、当該積層体の長辺方向の両端部から10mm部分までが上記台上にそれぞれ載置され、中央部が浮いた状態(高さ10mm)となるように配置した。そして、その積層体の中央部に対して、高さ30cmから直径45mmの鉄球を落下させた。その後の積層体の状態を目視により観察し、以下の基準により飛散防止性を評価した。結果を表1に示す。
〇…飛散防止粘着シートが裂けず、ガラスが飛散しなかった。
×…飛散防止粘着シートが裂けて、ガラスが飛散した。
【0150】
【表1】
【0151】
表1から分かるように、実施例で得られた粘着シートは、湿熱耐久性および飛散防止性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の粘着シートは、例えば、カーナビゲーションシステムのディスプレイの飛散防止兼ブラックアウト防止用粘着シートとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0153】
1…飛散防止粘着シート
11…加水分解性基材(基材の一例)
12…粘着剤層
13…剥離シート
2…保護パネル
3…透明導電膜
4…粘着剤層
5…フィルムセンサー
51…基材フィルム
52…透明導電膜
6…粘着剤層
7…表示体モジュール
10A,10B…表示装置
8…乗り物用インストルメント・パネル
81…インストルメント・パネル用表示装置
82…カバー
図1
図2
図3
図4