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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】充填装置および充填方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/42 20060101AFI20231121BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231121BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20231121BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20231121BHJP
【FI】
A23L2/00 N
A23L2/00 T
A23L2/54
A23L2/42
A23L5/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019050537
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020150813
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-10-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 賢一
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-240891(JP,A)
【文献】特開2002-240896(JP,A)
【文献】特開2015-067326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合部と、
前記混合部から供給される混合液を一時的に貯留しながら、容器に充填する充填部と、を備え、
前記混合部は、
第1原料を供給する第1原料供給部と、
第2原料を供給する第2原料供給部と、
前記第1原料と前記第2原料を含む前記混合液を前記充填部に送る第1流路と、
前記第1流路に供給される前記第1原料の目標流量を設定し前記目標流量となるように前記第1原料の実流量を制御する第1流量制御部と、
前記第1流路に供給される前記第2原料の目標流量を設定し前記目標流量となるように前記第2原料の実流量を制御する第2流量制御部と、
前記第1原料と前記第2原料とが合流する第1合流部位よりも上流において、
前記第1原料の実流量を測定する第1流量計と、
前記第2原料の実流量を測定する第2流量計と、を備え、
前記第1原料の方が前記第2原料よりも前記混合液における混合量が大きい場合に、前記第1原料の目標流量の設定が前記第2原料の目標流量の設定より先に行われ、
前記第1流量制御部は、
前記充填部における前記混合液の貯留状態に応じて、前記第1原料の実流量を制御し、
前記第1流量計で測定された前記第1原料の実流量と前記第2流量計で測定された前記第2原料の実流量に基づいて評価される、前記第1原料と前記第2原料の混合比が、適正範囲から外れていれば、前記第1原料の実流量の制御および前記第2原料の実流量の制御が停止され、前記充填部に貯留されている前記混合液を排出する排液処理が行われる、
ことを特徴とする充填装置。
【請求項2】
前記第2流量制御部は、
前記貯留状態に応じて制御される前記第1原料の実流量に基づいて前記第2原料の実流量を制御する、
請求項1に記載の充填装置。
【請求項3】
前記第1流路が、前記充填部に直接的に接続される、
請求項1または請求項2に記載の充填装置。
【請求項4】
前記第1流量制御部および前記第2流量制御部は、
前記充填部における前記混合液の貯留量が一定の範囲に収まるように、
前記第1原料の実流量および前記第2原料の実流量を制御する、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項5】
前記第1流量制御部および前記第2流量制御部は、
前記第1流路において、前記第1原料と前記第2原料とが合流する前記第1合流部位よりも上流に設けられる、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項6】
前記第1原料および前記第2原料は、
双方が液体であるか、または、一方が液体であり他方が気体である、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項7】
第3原料を供給する第3原料供給部と、
前記第1流路に供給される前記第3原料の目標流量を設定し前記目標流量になるように前記第3原料の実流量を制御する第3流量制御部と、
前記第1流路において、前記第1原料および前記第2原料を含む前記混合液と前記第3原料とが合流する第2合流部位よりも上流であって、前記第1原料と前記第2原料とが合流する前記第1合流部位よりも下流に設けられる、前記混合液の実流量を測定する第4流量計と、を備える、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の充填装置。
【請求項8】
前記第3原料の実流量を測定する第3流量計を備え、
前記第4流量計で測定された前記混合液の実流量と前記第3流量計で測定された前記第3原料の実流量に基づいて、前記第3原料の混合量が評価される、
請求項7に記載の充填装置。
【請求項9】
前記第1原料および前記第2原料は液体であり、
前記第3原料は気体である、
請求項7または請求項8に記載の充填装置。
【請求項10】
第1原料と第2原料を混合して得られる混合液を送給するステップ(a)と、
前記ステップ(a)により送給される前記混合液を一時的に貯留しながら、連続的に供給される複数の容器のそれぞれに前記混合液を充填するステップ(b)と、
前記ステップ(a)における前記第1原料の設定された目標流量になるように前記第1原料の実流量および前記第2原料の設定された目標流量になるように前記第2原料の実流量を制御するステップ(c)とを備え、
前記ステップ(c)において、
前記第1原料の方が前記第2原料よりも前記混合液における混合量が大きい場合に、前記第1原料の目標流量の設定が前記第2原料の目標流量の設定より先に行われ、
前記第1原料は、前記混合液の一時的な貯留状態に基づいてその実流量が制御され、
前記第1原料の実流量と前記第2原料の実流量に基づいて評価される、前記第1原料と前記第2原料の混合比が、適正範囲から外れていれば、前記第1原料の実流量の制御および前記第2原料の実流量の制御が停止され、貯留されている前記混合液を排出する排液処理が行われる、充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の液体を混合したり、液体と気体とを混合した後に容器に充填したりする充填装置および充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼飲料水、乳飲料は、通常、複数種類の原料を混合部において混合して得られる。例えば、清涼飲料水は水とシロップが混合された後に充填部において容器に充填される。混合部および充填部を含む飲料充填装置は、例えば特許文献1(図1)に示すように、混合部と充填部のタンク(充填タンク)との間に混合液を溜めておくクッションタンクと称される貯留槽を備えている。
【0003】
混合部は、例えば水とシロップを混合する場合に、水とシロップの流量が予め定められた比率になるように、水とシロップのそれぞれに流量制御が行われている。
充填部は充填量の精度を確保するために、充填タンク内の混合液(製品液)の液面の高さを一定に保つようにしている。そのために、充填タンクに流入される混合液の液量が流量制御弁で制御される。
以上のように、混合部の側と充填部の側のそれぞれで個別に流量制御を行っているため、混合部と充填部を直接的に接続すると、両者の間に流量に不均衡が生ずる。そこで、混合部と充填部の間にクッションタンクを設けることで、この混合部と充填部の流量の不均衡を是正する。飲料充填装置においては、通常、混合部の流量を充填部の流量よりも多くして、クッションタンクに常に製品液が溜まるように運転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-143174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、クッションタンクを備える飲料充填装置には以下の課題がある。
クッションタンクに常に製品液が溜まるように運転されるため、所定量の飲料製品の充填を終えた時点で、クッションタンクの内部には製品液が残留する。残留した製品液は廃棄されるので、製品液の残留は製品液の製造歩留まりを落とす。
また、例えば飲料製品Xの製造から飲料製品Yの製造に切り替える際には、クッションタンクに残留する飲料製品Xをクッションタンクから排出するとともに、クッションタンクの内部を洗浄する必要がある。クッションタンクは相当の容量を有しているので、この排出および洗浄に費やす時間が長い。
【0006】
本発明は、以上の課題を解消できる混合装置および混合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の充填装置は、混合部と、混合部から供給される混合液を一時的に貯留しながら、容器に充填する充填部と、を備える。
本発明における混合部は、第1原料を供給する第1原料供給部と、第2原料を供給する第2原料供給部と、第1原料と第2原料を含む混合液を充填部に送る第1流路と、第1流路に供給される第1原料の目標流量を設定し目標流量となるように第1原料の実流量を制御する第1流量制御部と、第1流路に供給される第2原料の目標流量を設定し目標流量となるように第2原料の実流量を制御する第2流量制御部と、を備える。
第1流量制御部は、充填部における混合液の貯留状態に応じて、第1原料の実流量を制御する。
本発明の充填装置において、好ましくは、第2流量制御部は、貯留状態に応じて制御される第1原料の実流量に基づいて第2原料の実流量を制御する。
本発明の充填装置において、好ましくは、第1流路が、充填部に直接的に接続される。
【0008】
本発明における第1流量制御部および第2流量制御部は、好ましくは、充填部における混合液の貯留量が一定の範囲に収まるように、第1原料の実流量および第2原料の実流量を制御する。
【0009】
本発明における第1流量制御部および第2流量制御部は、好ましくは、第1流路において、第1原料と第2原料とが合流する第1合流部位よりも上流に設けられる。
【0010】
本発明における充填装置において、好ましくは、第1合流部位よりも上流において、第1原料の実流量を測定する第1流量計と、第2原料の実流量を測定する第2流量計と、を備える。そして、第1流量計で測定された第1原料の実流量と第2流量計で測定された第2原料の実流量に基づいて、第1原料と第2原料の混合比が評価される。
【0011】
本発明における充填装置において、第1原料および第2原料は、双方が液体であるか、または、一方が液体であり他方が気体である。
【0012】
本発明における充填装置は、第3原料を供給する第3原料供給部と、第1流路に供給される第3原料の目標流量を設定し目標流量になるように第3原料の実流量を制御する第3流量制御部とを備えることができる。加えて、本発明における充填装置は、第1流路において、第1原料および第2原料を含む混合液と第3原料とが合流する第2合流部位よりも上流であって、第1原料と第2原料とが合流する第1合流部位よりも下流に設けられる、混合液の実流量を測定する第4流量計とを備えることができる。
【0013】
本発明における充填装置は、好ましくは、第3原料の実流量を測定する第3流量計を備え、第4流量計で測定された混合液の実流量と第3流量計で測定された第3原料の実流量に基づいて、第3原料の混合量が評価される。
【0014】
本発明における充填装置は、好ましくは、第1原料および第2原料は液体であり、第3原料は気体である。
【0015】
本発明は、第1原料と第2原料を混合して得られる混合液を送給するステップ(a)と、ステップ(a)により送給される混合液を一時的に貯留しながら、連続的に供給される複数の容器のそれぞれに混合液を充填するステップ(b)と、ステップ(a)における第1原料の設定された目標流量になるように第1原料の実流量および第2原料の設定された目標流量になるように第2原料の実流量を制御するステップ(c)とを備える充填方法を提供する。
本発明におけるステップ(c)において、好ましくは、混合液の一時的な貯留状態に基づいて実流量が制御される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の充填装置によれば、充填部における混合液の貯留状態に応じて、第1原料の目標流量を制御するので、混合部における流量を充填部における貯留状態に整合させることができる。したがって、本発明の充填装置によれば、混合部と充填部における流量の不均衡を是正するためのクッションタンクを設ける必要がなくなる。したがって、本発明の充填装置によれば、クッションタンクを設けるのに比べて、液状製品の充填を終えた時点で充填装置に残留する製品を著しく低くできるので、製品の製造歩留まりを向上できる。
【0017】
また、例えば飲料製品Xの製造から飲料製品Yの製造に切り替える際には、クッションタンクから飲料製品Xの排出およびクッションタンクの洗浄の必要がなくなる。したがって、飲料充填装置1によれば、クッションタンクを設けるのに比べて、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る飲料充填装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る飲料充填装置の制御手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係る飲料充填装置の概略構成を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る飲料充填装置の制御手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の第3実施形態に係る飲料充填装置の概略構成を示す図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る飲料充填装置の制御手順を示すフローチャートである。
図7】本発明において、2種類の液体原料(第1原料と第2原料)を混合する場合であって、第1原料の方が第2原料よりも混合量が大きい場合の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、第1実施形態に係る飲料充填装置1は、混合部10と、充填部50と、を備えている。飲料充填装置1は、混合部10と充填部50の間にクッションタンクが設けられておらず、混合部10と充填部50が第1流路6、第2流路7で直接的に接続されている。これにより、製品歩留まりの向上および生産性の向上がなされた飲料充填装置1が実現される。
以下、混合部10および充填部50の構成および動作、飲料充填装置1の制御手順を説明する。
【0020】
[混合部10]
混合部10は、第1原料供給部20と第2原料供給部30を備えている。第1原料供給部20は第1原料としての水を供給し、第2原料供給部30は第2原料としてのシロップを供給する。ここで、シロップとは、濃度の高い糖液の総称であり、第1原料供給部20から供給される水に希釈される希釈対象物である。水とシロップは、通常、水の比率が高く、一例として水が3に対してシロップが1、または、水が5に対してシロップが1といった比率で混合される。
なお、飲料充填装置1において、上流(U)および下流(D)は水、シロップおよび水とシロップの混合液の流れる向きを基準に定められる。この上流(U)および下流(D)の定義は相対的な意味を有している。
【0021】
第1原料供給部20は、水供給源21と、水供給源21に貯留される水を送り出す第1送液ポンプ23と、水の目標流量を制御する第1流量調整弁25と、供給される水の流量を測定する第1流量計27と、を備える。
水供給源21、第1送液ポンプ23、第1流量調整弁25および第1流量計27は、第1流路6により充填部50と接続されている。つまり、第1送液ポンプ23から送り出される水は、第1流路6に設けられる第1流量調整弁25によりその流量が調整され、第1流路6を通って充填部50の充填タンク51に供給される。また、第1流量計27は第1流路6を流れる水の流量を測定する。
【0022】
第1流量調整弁25は、後述する制御部60の指示にしたがって弁の開閉量が調整される。
第1流量計27は、第1流路6を流れる水の流量を継続して測定する。測定された水の流量(水実流量)に関する情報は後述する制御部60に送られる。
【0023】
第2原料供給部30は、シロップ供給源31と、シロップ供給源31に貯留されるシロップを送り出す第2送液ポンプ33と、シロップの目標流量を制御する第2流量調整弁35と、供給されるシロップの流量を測定する第2流量計37と、を備える。
シロップ供給源31、第2送液ポンプ33、第2流量調整弁35および第2流量計37は、第2流路7により充填部50と接続されている。つまり、第2送液ポンプ33から送り出されるシロップは、第2流路7に設けられる第2流量調整弁35によりその流量が調整され、第2流路7および第1流路6を通って充填部50に供給される。また、第2流量計37は第2流路7を流れるシロップの流量を測定する。
【0024】
第2流量調整弁35は、後述する制御部60の指示にしたがって弁の開閉量が調整される。
第2流量計37は、第2流路7を流れるシロップの流量を継続して測定する。測定されたシロップの流量(シロップ実流量)に関する情報は後述する制御部60に送られる。
【0025】
第1原料供給部20と第2原料供給部30において、第2流路7は第1合流部位CP1において第1流路6に接続される。この第1合流部位CP1において、第1流路6を流れてきた水と第2流路7を流れてきたシロップが混合される。ここでは図示を省略するが、第1合流部位CP1に水とシロップの混合を促進するための機器を設けることができる。
【0026】
第1実施形態においてはこの混合液に他の液体成分およびガス成分を加えることがないので、水とシロップの混合液は飲料充填装置1における製品液を構成する。
【0027】
[充填部50]
充填部50は、混合部10で混合された製品液を容器に充填する。
充填部50は、混合部10で混合して得られた製品液を一時的に貯留する充填タンク51と、充填タンク51に充填された製品液を容器に充填する図示を省略する充填機と、充填タンク51に貯留される製品液の充填タンク51における液表面の位置である液位を測定する液位センサ53と、充填タンク51に残留する製品液を排出する排出路55と、を備えている。この液位センサ53で測定される液位は、製品液の貯留量または貯留状態を示している。
本実施形態において、充填機の形態は任意であり、例えば回転する円板状部材の外周縁で複数の容器を支持しながら順に製品液を充填するロータリー式の充填機を採用できる。
【0028】
液位センサ53は、液位を継続して測定し、測定された液位(実液位)は後述する制御部60に送られる。
排出路55は、製造する製品液が切り替えられるとき、または、水とシロップの混合比が適正な範囲からずれたときに、充填タンク51に残留する製品液を外部に排出するのに用いられる。排出路55には開閉弁57が設けられており、製品液を外部に排出する際に開閉弁57は開くが、それ以外の時には開閉弁57は閉じている。開閉弁57は制御部60の指示により開閉がなされる。
【0029】
[制御部60]
制御部60は、混合部10と充填部50の動作を制御する。以下、図2を参照しながら制御部60による飲料充填装置1の制御手順を説明する。なお、制御部60は、キーボード、タッチパネルなどからなる入力手段を備えるコンピュータ装置から構成される。
【0030】
制御部60による制御は、基準液位および水とシロップの混合比が設定されることが前提である(図2 S101)。飲料充填装置1に従事するペレータが制御部60の入力手段から基準液位および水とシロップの混合比が入力されると、制御部60は基準液位および混合比を設定する。
【0031】
制御部60は、基準液位が設定されると、充填タンク51において液位センサ53で測定される製品液の液位、つまり製品液の貯留状態を取得する(図2 S103)。制御部60は、取得した液位が設定された液位に一致するように、第1原料供給部20による水の目標流量および第2原料供給部30におけるシロップの目標流量を以下のように制御して、水とシロップの混合量を調整する(図2 S105~S111)。
【0032】
設定される水とシロップの混合比を3:1と仮定すると、この混合比を満たすための水の流量およびシロップの流量の比も3:1である。そこで、制御部60は、この混合比に基づいて、水の流量を例えば3FRとして算出し(図2 S104)、算出された水流量3FRに基づいて、水流量を制御する(図2 S105)。この制御は、算出された水流量3FRに第1流量計27で測定される実水流量が合致するように、第1原料供給部20における第1送液ポンプ23の吐出量および第1流量調整弁25の開度の一方または双方を制御することにより行われる。
【0033】
制御部60は、水流量の測定値(水実流量)を取得する(図2 S107)。取得した水実流量は後述するシロップ流量の算出および混合比の評価(図2 S121)で用いられる。
【0034】
また、制御部60は、測定された水実流量および水とシロップの混合比に基づいて、シロップ流量を算出し(図2 S109)、シロップ流量を制御する(図2 S111)。シロップ実流量の制御は、第2流量計37で測定されるシロップ実流量が算出されたシロップ流量に合致するように、第2原料供給部30における第2送液ポンプ33の吐出量および第2流量調整弁35の開度の一方または双方を制御することにより行われる。
ここで、制御されるべきシロップ流量は、例えば水とシロップの混合比3:1を考慮すると、測定された水実流量と1/3の積として算出される。
【0035】
制御部60は、シロップ流量の測定値を取得し(図2 S113)、先に取得した水流量の測定値とシロップ流量の測定値から混合比を算出する(図2 S121)。制御部60は、算出した混合比が適正範囲から外れていないか否か(図2 S123)、つまり混合比の評価を行う。
制御部60は、算出した混合比が適正範囲に入っていれば、その後も継続して混合比の算出、混合比の評価を行うとともに(図2 S121,S123)、従前の水流量の制御およびシロップ流量の制御を継続することで、充填タンク51に製品液を供給し続けることで、製品液を貯液する。
【0036】
制御部60は、所定量の製品液の充填を終えたならば(図2 S117 Y)、水流量の制御およびシロップ流量の制御の停止、ならびに、液位の測定、水流量の測定およびシロップ流量の測定を停止する(図2 S119)。これで1バッチ分の飲料製造が完了する。製品液の充填が所定量に達していなければ(図2 S117 N)、液位の測定(図2 S101)以降の手順を継続して行う。つまり、充填部50における製品液の貯留状態に応じて、第1原料である水の流量、ひいては第2原料であるシロップの流量を制御する。
【0037】
制御部60は、算出した混合比が適正範囲から外れていれば、水流量の制御およびシロップ流量の制御を停止、ならびに、液位の測定、水流量の測定およびシロップ流量の測定を停止し(図2 S125)、充填タンク51に貯留されている製品液を排出する排液処理を実行させる(図2 S127)。水流量の制御およびシロップ流量の制御の停止とは、第1送液ポンプ23および第2送液ポンプ33の運転を停止することを意味する。また、排液処理は、これまで閉じていた開閉弁57を開いて排出路55から製品液を排出させることにより実行される。
【0038】
図2において、例えば、液位の測定、水流量の測定およびシロップ流量の測定はこの順番に行われているが、実際にはいずれの測定も継続して行われている。つまり、図2における手順は、あくまで制御の内容を説明するためのものであって、実際に測定などを実行する順番を特定したものではない。
【0039】
[第1実施形態の効果]
次に、飲料充填装置1が奏する効果について説明する。
飲料充填装置1は、充填部50における製品液の貯留状態に応じて、第1原料である水の流量を制御する。さらに、水の実流量に基づいて第2原料であるシロップの目標流量を制御するので、混合部10における流量を充填部50における貯留状態に整合させることができる。したがって、飲料充填装置1によれば、混合部10と充填部50における流量の不均衡を是正するためのクッションタンクを設ける必要がなくなる。つまり、飲料充填装置1によれば、クッションタンクを設けるのに比べて、飲料製品の充填を終えた時点で飲料充填装置1に残留する飲料製品を著しく低くできるので、飲料製品の製造歩留まりを向上できる。この効果は、飲料製品の充填を終えたときに限らず、混合比が適正な範囲からずれたときに製品液を廃棄するときにも当てはまる。
【0040】
また、例えば飲料製品Xの製造から飲料製品Yの製造に切り替える際には、クッションタンクから飲料製品Xの排出およびクッションタンクの洗浄の必要がなくなる。したがって、飲料充填装置1によれば、クッションタンクを設けるのに比べて、生産性を向上できる。
【0041】
さらに、クッションタンクを備えないことにより、飲料充填装置1に関するコストを下げることができる。このコストとしては、クッションタンク自体の製造コストに加えて、クッションタンクを設置するスペースを省くことができるので飲料充填装置1を設置するスペースに要するコストも下げることができる。さらに、クッションタンクの内部は、製品液の酸化を防ぐために不活性ガス、典型的には窒素ガスが加圧状態で充填されるが、飲料充填装置1によればこの不活性ガスの加圧充填に関するコストをも下げることができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る飲料充填装置2について説明する。
第2実施形態に係る飲料充填装置2は、製造される製品液に炭酸ガスが含まれる点で飲料充填装置1と相違することを除けば、飲料充填装置1と同様の構成を備える。したがって、以下ではこの相違点を中心にして飲料充填装置2を説明する。
【0043】
飲料充填装置2は、第1原料供給部20および第2原料供給部30の他に第3原料供給部40を備える。第3原料供給部40は、第3原料としての炭酸ガス(CO)を水とシロップの混合液に混合するために設けられる。
【0044】
第3原料供給部40は、ガス供給源41と、炭酸ガスの流量を制御する第3流量調整弁45と、供給される炭酸ガスの流量を測定する第3流量計47と、を備える。
ガス供給源41、第3流量調整弁45および第3流量計47は、第3流路8により第1流路6と接続されている。つまり、ガス供給源41から送り出される炭酸ガスは、第3流路8に設けられる第3流量調整弁45によりその流量が調整され、第3流路8を通って第1流路6に供給される。また、第3流量計47は第3流路8を流れる炭酸ガスの流量を測定する。
【0045】
第3流量調整弁45は、後述する制御部60の指示にしたがって弁の開閉量が調整される。
第3流量計47は、第3流路8を流れる炭酸ガスの混合液の流量を継続して測定する。測定された混合液の流量に関する情報は制御部60に送られる。
【0046】
第1原料供給部20と第3原料供給部40において、第3流路8は第2合流部位CP2において第1流路6に接続される。この第2合流部位CP2において、第1流路6を流れてきた水とシロップの混合液に第3流路8を流れてきた炭酸ガスが混合される。ここでは図示を省略するが、第2合流部位CP2に混合液と炭酸ガスとの混合を促進するための機器を設けることができる。
【0047】
次に、図4を参照しながら、制御部60による飲料充填装置2の制御手順を説明する。なお、ここでも飲料充填装置1の制御手順の相違点を中心に説明する。なお、図4において、図2と同じ制御手順については図2と同じ符号を付けている。
【0048】
飲料充填装置2は、基準液位および水とシロップの混合比に加えてガスボリューム(GV)を設定する(図4 S101)。ここでいうガスボリュームとは、混合液に含まれる炭酸ガスの濃度である。
飲料充填装置2において、液位の測定(図4 S103)~シロップ量の測定(図4 S113)までは、第1実施形態と同様に実行される。
【0049】
次に、飲料充填装置2は、シロップ流量の測定(図4 S113)の後に、第3流量計47で測定した混合液の流量(実混合流量)を取得する(図4 S114)。混合液流量の測定は、次のCO流量の算出および混合液に含まれる炭酸ガスの量(ガスボリューム)が適正範囲にあるか否かを判定するのに用いられる。
【0050】
次に、制御部60は、測定された混合液流量と設定されているガスボリュームに基づいて、CO流量を算出し(図4 S131)、算出されたCO流量が得られるようにCO流量を制御する(図4 S133)。CO流量の制御は、第3流量計47で測定されるCO流量が算出されたCO流量に合致するように、第3原料供給部40における第3流量調整弁45の開度を制御することにより行われる。
制御されるべきCO流量は、設定されるガスボリュームをnと、実混合流量をFRmとすると、nとFRmの積として算出される。
【0051】
制御部60は、CO流量の測定値(実CO流量)を取得し(図4 S135)、先に取得した混合液流量の測定値とCO流量の測定値からガスボリューム(GV)を算出する(図2 S141)。制御部60は、算出したガスボリュームが適正範囲から外れているか否か(図2 S143)、つまりガスボリュームの評価を行う。
制御部60は、算出したガスボリュームが適正範囲に入っていれば、その後も継続してガスボリュームの算出、ガスボリュームの評価を行うとともに(図4 S141,S143)、従前の水流量制御、シロップ流量制御およびCO流量制御を継続することで、充填タンク51に炭酸ガスを含む混合液を供給し続けることで、混合液を貯液する。
【0052】
制御部60は、所定量の混合液の充填を終えたならば(図4 S117 Y)、水流量制御、シロップ流量制御およびCO流量制御の停止、ならびに、水流量測定、シロップ流量測定およびCO流量測定を停止する(図4 S119)。これで1バッチ分の炭酸飲料の製造が完了する。
【0053】
制御部60は、算出したガスホリュームが適正範囲から外れていれば、水流量の制御およびシロップ流量の制御を停止し(図2 S125)、充填タンク51に貯留されている混合液を排出する排液処理を実行させる(図2 S127)。水流量の制御およびシロップ流量の制御の停止とは、第1送液ポンプ23および第2送液ポンプ33の運転を停止することを意味する。また、排液処理は、これまで閉じていた開閉弁57を開いて排出路55から混合液を排出させることにより実行される。
【0054】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態に係る飲料充填装置2は、第1実施形態に係る飲料充填装置1が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
飲料充填装置2は、基準液位に加えて設定されたガスボリュームに基づいて、水流量、シロップ流量およびCO流量を制御する。したがって、飲料充填装置2は、炭酸ガスなどのガス成分を含む製品液を製造する場合であっても、混合部10と充填部50における流量の不均衡を是正するためのクッションタンクを設ける必要がない。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る飲料充填装置3について説明する。
第3実施形態に係る飲料充填装置3は、シロップを含まないことを除けば、第2実施形態に係る飲料充填装置2と同様の構成を備える。したがって、以下では第2実施形態との相違点を中心にして飲料充填装置3を説明する。
【0056】
飲料充填装置3は、図5に示すように、シロップを供給する第2原料供給部30を備えておらず、原料の供給源としては、第1原料供給部20と第3原料供給部40の二つを備えている。第1原料供給部20と第3原料供給部40の構成要素としては、飲料充填装置2と同様であるが、飲料充填装置2が備えている第4流量計29は省かれる。
【0057】
飲料充填装置3においては、図6に示すように、基準液位に加えてガスボリューム(GV)を設定する(図6 S101)。この点は第2実施形態と同様である。
その後の、液位の測定(図6 S103)、水流量の制御および水流量の測定(図6 S105,S107)、CO流量の算出、CO流量の制御およびCO流量の測定(図6 S131,S133,S135)などは第2実施形態と同様にして実行される。
また、飲料充填装置3が扱う液体は水だけであるから、水とシロップの混合比の評価は行われないが、ガスボリュームの評価(図6 S141~S147)は実行される。
【0058】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態に係る飲料充填装置3は、第1実施形態に係る飲料充填装置1が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
飲料充填装置3は、基準液位に加えて設定されたガスボリュームに基づいて、水流量およびCO流量を制御する。したがって、飲料充填装置2は、炭酸ガスなどのガス成分を含む混合液を製造する場合であっても、混合部10と充填部50における流量の不均衡を是正するためのクッションタンクを設ける必要がない。
【0059】
[付記]
以上、本発明の好ましい形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択し、他の構成に置き換えることができる。
[適用対象]
第1実施形態~第3実施形態においては、原料として水、シロップおよび炭酸ガスを例示したが、本発明が対象とする原料は例示されたもの限らない。例えば、乳飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、アルコール飲料など多種多様な飲料製品に適用できる。また、ここでは飲料製品を例示したが、本発明は、飲料製品以外の製品液であって、複数の液体原料を混合するか、または、複数の液体原料に単一または複数のガス原料を混合する、さらに、単一の液体原料に単一または複数のガス原料を混合する場合に適用される。
【0060】
以上、本発明の適用対象を整理すると以下の通りであり、混合対象物の一方は液体であり、他方は液体および気体の一方または双方に集約される。
第1形態:液体Aと液体Bの混合
液体A;液体a1,液体a2,液体a3,…液体anの少なくとも1種
液体B;液体b1,液体b2,液体b3,…液体bnの少なくとも1種
第2形態:液体AとガスCの混合
液体A;液体a1,液体a2,液体a3,…液体anの少なくとも1種
ガスC;液体c1,液体c2,液体c3,…液体cnの少なくとも1種
【0061】
本発明は、固形物を含む液体を適用対象にすることができる。本発明の混合設備において固形物を液体に混合することは難しいので、予め固形物を含む液体を作製しておくことが好ましい。
【0062】
[複数種の液体混合の際の設定の順番]
第1実施形態および第2実施形態においては、水流量の設定を先に行ってからシロップ流量の算出、制御を行った。これは、水とシロップの混合比に基づいている。通常、水とシロップの混合において、水の混合量が多い。一例として、水:シロップ=4:1といった具合である。そこで、混合量の多い水について水流量の設定を先に行っている。これは、逆だと誤差が大きくなりやすい。
【0063】
以上の通りであり、2種類の液体原料(第1原料と第2原料)を混合する場合であって、第1原料の方が第2原料よりも混合量が大きい場合には、図7に示すように、第1原料の設定、制御を先行させることが好ましい。
【0064】
[混合比、ガスボリュームの評価]
2種類の液体、例えば水とシロップの混合比を評価する場合には、水流量およびシロップ流量について、瞬間的な流量に基づいて評価することができるし、所定時間の間に積算した流量に基づいて評価することもできる。
【0065】
[混合部10における制御基準]
第1実施形態~第3実施形態は、充填タンク51における基準液位、水とシロップの混合比およびガスボリュームを設定し、この基準液位に基づいて水流量、シロップ流量、炭酸ガス(CO)流量を制御する。つまり、ここで説明した実施形態において、充填タンク51の基準液位が混合部10における制御の基準である。しかし、本発明における混合装置の制御の基準はこの基準液位に限るものではなく、液位と等価な要素を制御の基準にできる。つまり、液位は充填タンク51に貯留される混合液の量を特定するものであり、これと等価な要素として、例えば混合液を含む充填タンク51の質量をロードセルで計量して制御の基準にすることができる。つまり、充填タンク51の質量は既知であるから、混合液を含む充填タンク51の質量を計量すれば、混合液だけの質量を特定できる。
【符号の説明】
【0066】
1,2,3 飲料充填装置
6 第1流路
7 第2流路
8 第3流路
10 混合部
20 第1原料供給部
21 水供給源
23 第1送液ポンプ
25 第1流量調整弁
27 第1流量計
29 第4流量計
30 第2原料供給部
31 シロップ供給源
33 第2送液ポンプ
35 第2流量調整弁
40 第3原料供給部
41 ガス供給源
45 第3流量調整弁
47 第3流量計
50 充填部
51 充填タンク
53 液位センサ
55 排出路
57 開閉弁
60 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7