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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】紫外線照射装置及びカテーテル殺菌器
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
A61L2/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019165775
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021040982
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聖
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 玄敏
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0334974(US,A1)
【文献】特開2019-076624(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009343(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/70
A61L 2/08ー2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する装置本体と、
凹部を有し、当該凹部と前記装置本体の前記凹部とが対向して収容空間を形成すると共に前記装置本体の前記凹部全体を塞ぎ、上底部が、断面が円弧状となるように形成されている蓋部と、
前記収容空間の内壁に設けられた紫外線反射性部材と、
複数の区画に分割され当該区画毎にすり鉢状に形成された複数の区画部を有し、当該区画部それぞれの底部が前記装置本体の前記凹部の底部側となるように前記装置本体側の前記凹部内に配置された内面反射構造体と、
前記区画部それぞれの底部に配置され、前記装置本体の前記凹部の開口部に向けて紫外線を発光する複数の固体発光体と、を備え
前記複数の固体発光体は、前記収容空間の長手方向に沿って配置されている紫外線照射装置。
【請求項2】
記固体発光体は、直線状に複数個配置されている請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
少なくとも前記固体発光体の発光面を覆う紫外線透過性部材を備える請求項1又は請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線反射性部材は、少なくとも表面がポリテトラフルオロエチレン製の部材である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記固体発光体は、発光ダイオードを含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記固体発光体は、波長220nm以上300nm以下の光を発光する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記固体発光体が発光する光の強度を検出する光検出部と、
当該光検出部の検出信号をもとに、所定時間当たりの前記固体発光体が発光する光の発光量を演算する演算部と、
当該演算部で演算した前記発光量が予め設定したしきい値を上回るタイミングに応じて通知する通知部と、
を備える請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記光検出部は、
紫外線の励起によって可視光域に蛍光を発する蛍光ガラス素子と、
前記蛍光ガラス素子が発する蛍光の強度を検出する光検出素子とを備える請求項7に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記固体発光体は基板の一方の面に配置され、
前記基板に対して前記固体発光体の配置側とは反対側に、複数の電子部品からなる電子部品群を備え、
当該電子部品群は、前記複数の電子部品のうちの少なくとも一部で構成されて前記光検出部が検出した前記固体発光体が発光する光の強度に基づいて前記固体発光体を管理する管理回路を有する請求項7又は請求項8に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記固体発光体の温度を検出する温度検出部をさらに有し、
前記管理回路は、
前記固体発光体を駆動する駆動部と、
前記固体発光体を所望の発光強度に維持する自動パワー制御部と、
を備え、
前記自動パワー制御部は、前記温度検出部が検出した温度に基づいて前記駆動部を制御する請求項9に記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
前記収容空間は、長さが20cm以上5m以内であり、直径が2mm 以上20mm以内の中空の円筒状である請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項12】
カテーテルの殺菌を行うカテーテル殺菌器であって、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の紫外線照射装置を備え、
前記装置本体の前記凹部の縁部と前記蓋部の前記凹部の縁部との少なくともいずれか一方に、前記収容空間に連通する連通孔を形成する複数の切欠きを有し、
前記収容空間は、カテーテルコネクタと略相似形を有し、
前記収容空間に前記カテーテルコネクタを収納し、当該カテーテルコネクタと接続されるカテーテルを前記切欠き部分で挟むようになっているカテーテル殺菌器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置及びカテーテル殺菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線照射を行うことにより、カテーテルを殺菌する装置として、特許文献1に示す装置が提案されている。この装置においては、カテーテルコネクタの内壁と外壁との間に、紫外線発光ダイオードを設置することにより、カテーテル内及びカテーテルコネクタ内の流体の、紫外線による殺菌を可能にしている。
また、非特許文献1には、必要な時だけカテーテルの外部から紫外線を照射し、カテーテル内面を殺菌するデバイスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-50282号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】計測自動制御学会東北支部 第289回研究集会(2014.6.24) 資料番号289-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カテーテルコネクタの内壁と外壁との間に、紫外線発光ダイオードを設ける方法にあっては、カテーテルの殺菌は、菌が付着しやすい接続時とその直後だけ行えばよいため、それ以外の時間においては、カテーテルコネクタに、単に不要なデバイスが装着されていることになる、また、カテーテルコネクタ内に紫外線発光ダイオードを設けることは、不意の事故の時に電気リークの原因となる電気回路を備えていることになる。特に、尿路カテーテルのカテーテルコネクタの場合には、電気リークの原因となる電気回路が患者のそばにあることになり好ましくない。
【0006】
また、必要なときだけカテーテルの外部から紫外線を照射する方法においては、紫外線を、カテーテルを貫通させて、内壁に付着した菌を殺菌する必要がある。これはすなわち、カテーテルのコネクタ全体に対して、ある一定量以上の紫外線を照射する必要があることになる。そのため、光源として水銀灯を用いる場合には、管状の水銀灯を、カテーテルに平行となるように配置する必要がある。このように、カテーテルの側に水銀灯を設けるということは、特に、尿路カテーテルの場合、必要な時だけとはいえ、患者のそばに割れやすいガラス管が存在し、その中には毒性のある水銀が存在することになり、このような殺菌装置をベッドサイドで利用することは好ましくない。
【0007】
このように、電気回路が患者のそばにあるという危険を排除し、且つ、毒性物質である水銀灯を使用せずに紫外線をカテーテルに照射しようとする方法として、カテーテル外部に、水銀灯に代えて、LED(light emitting diode)といった固体発光体を載置することが考えられる。しかしながら、LEDは点光源であるため、管状のカテーテルを均一に照射することは難しく、さらに、表面の反射による損失があるため、内壁を有効に照射することは難しい。
【0008】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、安全に且つ効率良く、カテーテル等を殺菌することの可能な紫外線照射装置及びカテーテル殺菌器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置は、凹部を有する装置本体と、凹部を有し、当該凹部と前記装置本体の前記凹部とが対向して収容空間を形成すると共に前記装置本体の前記凹部全体を塞ぎ、上底部が、断面が円弧状となるように形成されている蓋部と、前記収容空間の内壁に設けられた紫外線反射性部材と、複数の区画に分割され当該区画毎にすり鉢状に形成された複数の区画部を有し、当該区画部それぞれの底部が前記装置本体の前記凹部の底部側となるように前記装置本体側の前記凹部内に配置された内面反射構造体と、前記区画部それぞれの底部に配置され、前記装置本体の前記凹部の開口部に向けて紫外線を発光する複数の固体発光体と、を備え、前記複数の固体発光体は、前記収容空間の長手方向に沿って配置されていることを特徴としている。
【0010】
また、他の実施形態に係るカテーテル殺菌器は、カテーテルの殺菌を行うカテーテル殺菌器であって、上記態様の紫外線照射装置を備え、前記装置本体の前記凹部の縁部と前記蓋部の前記凹部の縁部との少なくともいずれか一方に、前記収容空間に連通する連通孔を形成する複数の切欠きを有し、前記収容空間は、カテーテルコネクタと略相似形を有し、前記収容空間に前記カテーテルコネクタを収納し、当該カテーテルコネクタと接続されるカテーテルを前記切欠き部分で挟むようになっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、安全に且つ効率良く、カテーテル等を殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る紫外線照射装置の一例を示す斜視図である。
図2】紫外線照射部の一例を示す、(a)は上面図、(b)は(a)のA-A′線断面図である。
図3】拡散透過率の測定に用いる装置の一例である。
図4】紫外線照射部の要部の一例を示す断面図である。
図5】蓋部の一例を示す、(a)は斜視図、(b)は(a)のA-A′線断面図、(c)は(a)のB-B′線断面図である。
図6】紫外線照射部のその他の例を示す(a)は上面図、(b)は(a)のA-A′線断面図である。
図7】紫外線照射装置の変形例を示す斜視図である。
図8】紫外線照射装置の変形例を示す斜視図である。
図9】紫外線照射装置の変形例を示す紫外線照射部の断面図である。
図10】紫外線照射装置の変形例における管理回路の一例を示す構成図である。
図11】殺菌能力の測定結果の一例である。
図12】比較例として用いた水銀器を有する殺菌器の一例である。
図13】実施例及び比較例の光源付近の温度の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
<紫外線照射装置の構成>
図1は、本発明に係る紫外線照射装置1の一例を示す外観図である。
紫外線照射装置1は、装置本体2と装置本体2に蝶番等で一辺が取り付けられた蓋部3とを備え、蓋部3を閉じたとき、略直方体形状の装置本体2と装置本体2よりも高さの低い略直方体形状の蓋部3とが積層された形状を有する。
装置本体2は、略直方体形状を有する紫外線照射部11と、紫外線照射部11の長手方向両端に設けられた支持部12及び13とを備える。
【0015】
図2は紫外線照射部11の一例を示す概略構成図であって、(a)は上面図、(b)は(a)のA-A′線断面図である。
紫外線照射部11は、上端が開放された、断面がカタカナの「コ」の字型の筐体51と、筐体51内に、筐体51の開口部を塞ぎ、筐体51内を、開口部側と底部側とに区画する内面反射構造体52と、一方の面に深紫外領域の光を発光する複数の固体発光体53が直線状に一列に実装された回路基板54と、ヒートシンク55と、透過性窓部56と、固体発光体53を駆動制御する駆動回路57と、を備える。
【0016】
内面反射構造体52は、図1及び図2に示すように、同一形状の3つの区画に区分されている。各区画は、上面視が長方形であって、長方形の対角線の交点である中央部分Pが凹み、中央部分Pから区画をなす長方形の各辺に向かってなだらかに立ち上がる、いわゆるすり鉢状に形成されている。また、中央部分Pには貫通孔52aが形成されている。内面反射構造体52は、その上端部が、筐体51の上端部近傍の上端部よりも低い位置となるように筐体51に固定されている。
【0017】
内面反射構造体52は、紫外線反射性材料で形成され、この紫外線反射性材料は、紫外線領域における全反射率が50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。紫外線反射性材料は、全反射率が100%であることが最も望ましいが、現実に存在する物質では到達困難であり、99%以下であっても本発明の効果を発揮できる。このような目的で内面反射構造体52として適用される紫外線反射性材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene PTFE)や窒化ホウ素粉末をシリカで固着させた複合材、高純度なシリカ微結晶を凝結させた素材等の拡散反射性に優れた物質を挙げることができる。PTFEとしては、具体的には、例えば、平均結晶化度が0.51以上0.61以下であり、(110)方向の結晶子サイズが60nm以上250nm以下であるPTFEであることが好ましい。
【0018】
さらに、内面反射構造体52に用いられる紫外線反射性材料は、肉厚が1mm以上50mm以下であり、拡散透過率が1%/1mm以上20%/1mm以下であり、且つ紫外線領域における全反射率が80%/1mm以上99%/1mm以下であるPTFEが好ましい。さらに、拡散透過率と紫外線領域における全反射率との和が90%/1mm以上であることが好ましい。紫外線反射性材料としては、他に、シリコーン樹脂、内部に0.05μm以上10μm以下の気泡を含む石英ガラス、内部に0.05μm以上10μm以下の結晶粒を含む部分結晶化石英ガラス、0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のアルミナ焼結体、及び0.05μm以上10μm以下の結晶粒状のムライト焼結体等が挙げられる。
【0019】
ここで、内面反射構造体52として、拡散反射性の材料を用いる場合、拡散透過率を20%/1mm以下にすると、内面反射構造体52の肉厚を薄くしても有効な紫外線反射量を確保することができ、光学的な設計が容易かつ紫外線照射装置全体を小型化できる。散乱体の光学密度が高く、拡散透過率は低いほど好ましいが、非多孔質の場合は、結晶部と非晶部等、材料内部の粗密差が散乱体となるため、1%/1mmとすることは困難である。
また、内面反射構造体52の紫外線領域における有効な紫外光線の多重反射効果を得るために全反射率は80%/mm以上であることが好ましい。全反射率は高いほど好ましいが、非多孔質の場合は、結晶部と非晶部等、材料内部の粗密差が散乱体となるため、全反射率を99%/1mm以上とすることは一般に困難である。
【0020】
さらに、有効な紫外光線の多重反射効果を得る観点から、拡散透過率と紫外線領域における全反射率との和が90%/1mm以上、すなわち、内部で吸収されるエネルギーが10%以下である素材が、内面反射構造体52の構成部材として好ましい。
なお、拡散透過率は、紫外線反射性材料をスライスした板状サンプルを用いて測定する。具体的には、例えば紫外線反射性材料としてPTFEの拡散透過率を測定する場合には、積分球を用いて、例えば図3に示すようにして行う。分光光度計等としては、懸濁性物質の拡散透過率を測定する際に一般的に用いられる装置を用いることができる。
【0021】
なお、図3において、101は板状サンプル、102は検出器、103は測定光、104は対照光、105は標準白板である。
固体発光体53は、水銀を含まない発光体であり、220nm以上300nm以下の、好ましくは250nm以上280nm以下の、UVC領域の紫外線を発光する発光体であればよく、無機EL(Electro Luminescence)やUVC領域より短波長の光を蛍光体等によって長波長化した光源を用いることもでき、またUVC領域より長波長の光を波長変換素子等によって短波長化した光源を用いることもできるが、バンドギャップの遷移によってUVC光を輻射する発光ダイオードであることが望ましく、耐久性、発光効率の観点から、窒化アルミニウム単結晶上に作製された発光ダイオードであることがより好ましい。
【0022】
回路基板54は、その一方の面に実装される固体発光体53からの発熱を逃がす観点から、熱伝導性の良い回路基板であることが望ましい。回路基板54は、例えば、FR-4(ガラス布基材エポキシ樹脂:Flame Retardant Type 4)や、CEM3(複合基材エポキシ樹脂:Composite epoxy material 3)、又はそれらの銅箔を厚くすることによって、熱伝導性を向上させた回路基板が望ましい。より好ましくはアルミニウム、銅などで構成された回路基板が好ましい。回路基板54として、金属製の回路基板を使用する際には、電路と回路基板との電気的な絶縁の確保と、熱的な伝導の確保が重要である。電路と回路基板とを絶縁する層は、熱伝導率が、1W/m・K以上であることが望ましく、2W/m・K以上であることが望ましく、3W/m・K以上であることがより望ましい。電路と回路基板とを絶縁する層の厚みは、200μm以下であることが望ましく、150μm以下であることが望ましく、80μm以下であることがより望ましい。さらに、電路と回路基板とを絶縁する層の体積電気抵抗率は、1012Ω・cm以上であることが望ましく、1013Ω・cm以上であることがより望ましい。
【0023】
ヒートシンク55には、図2及び図4に示すように、回路基板54の固体発光体53が搭載された面とは逆側の面に配置され、且つ、ヒートシンク55を内面反射構造体52に固定したとき、固体発光体53が実装された回路基板54が、内面反射構造体52に形成された貫通孔52aと対向する位置に配置され、固体発光体53が内面反射構造体52を介して筐体51の開口部側に突出するように配置される。
ヒートシンク55は、熱伝導性の良い素材であることが望ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金や、銅や銅合金等の金属や、アルミナ、ムライト、ジルコニア、多結晶窒化アルミニウムセラミック等の、熱伝導性の良いセラミック素材も用いることができる。
【0024】
透過性窓部(紫外線透過性部材)56は、板状の紫外線透過性の部材からなり、筐体51の、内面反射構造体52よりも開口端側であり、開口端近傍の開口端よりも低い位置に設けられ、開口部を塞ぐように設けられる。
駆動回路57は、筐体51内の側面の、内面反射構造体52で閉じられた空間に設けられている。駆動回路57は、固体発光体53の駆動電流の制御を行う。なお、駆動回路57は、紫外線照射装置1本体とは別に設けられていてもよい。
【0025】
図1に戻って、支持部12には、通風口12aが形成されている。通風口12aは、支持部12と紫外線照射部11とを固定したとき、紫外線照射部11の筐体51と内面反射構造体52で閉じられた空間とが対向する位置に配置され、ヒートシンク55や駆動回路57による、空間内の温度上昇を回避するようにしている。また、支持部12の上端の幅方向中央部には、断面が半円であり、装置本体2の長手方向に延びる切欠き12bが形成されている。
支持部13には、例えば、駆動回路57用の電源等が設けられている。また、支持部13の飢え端部の幅方向中央部には、断面が半円であり、装置本体2の長手方向に延びる切欠き13aが形成されている。
【0026】
図5は、蓋部3の一例を示す概略構成図である。図5において(a)は斜視図、(b)は(a)のA-A′線断面図、(c)は(a)のB-B′線断面図である。蓋部3は、図5(c)に示すように、上面視が長方形の上底部と上底部の四辺から立ち上がる四つの側面とを有する。上底部は、幅方向の断面において、幅方向中央部の厚みが最も薄い円弧状を有する。また、蓋部3の長手方向両端の縁部には、幅方向中央部に、図1に示すように、断面が半円であり、蓋部3の長手方向に延びる切欠き3a及び3bが形成されている。
蓋部3は、少なくとも紫外線照射部11の開口部全体を覆い、支持部12及び13に形成された切欠き12b及び13aと、蓋部3に形成された切欠き3a及び3bとが対向するようになっている。
【0027】
蓋部3は、少なくとも蓋部3の内面は、紫外線反射性材料で形成される。この紫外線反射性材料は、紫外線領域における全反射率が50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。全反射率が100%であることが最も望ましいが、現実に存在する物質では到達困難であり、99%以下であっても本発明の効果は発揮できる。このような目的で内筒に適用される紫外線反射性材料としては、PTFEや窒化ホウ素粉末をシリカで固着させた複合材、高純度なシリカ微結晶を凝結させた素材などの拡散反射性に優れた物質を挙げることができる。PTFEとしては、具体的には、例えば、平均結晶化度が0.51以上0.61以下であり、(110)方向の結晶子サイズが60nm以上250nm以下であるPTFEであることが好ましい。また、紫外線反射性材料として、蓋部3の内面に、紫外線反射性材料からなるシートを貼付してもよく、蓋部3自体を紫外線反射性材料で形成してもよい。
【0028】
装置本体2と蓋部3とは、装置本体2と蓋部3とが対向するように蓋部3を閉じたとき、蓋部3に形成された切欠き3aと支持部12に形成された切欠き12bとが対向し、支持部12側からみて円形の連通孔が形成されるようになっている。同様に、蓋部3に形成された切欠き3bと支持部13に形成された切欠き13aとが対向し、支持部13側からみて円形の連通孔が形成されるようになっている。また、切欠き3aと切欠き12bとで形成される連通孔及び切欠き3bと切欠き13aとで形成される連通孔の直径は、紫外線照射対象であるカテーテルコネクタにつながるカテーテル又はチューブの直径と同等又は同等以下に設定され、カテーテルコネクタにつながるカテーテル又はチューブを、変形させることなく、これらカテーテル又はチューブの移動を制限するようになっている。
【0029】
また、紫外線照射部11と蓋部3とが対向し、透過性窓部56と筐体51の側面と蓋部3の内側の面とで囲まれた収容空間が形成され、この空間に、紫外線照射対象であるカテーテルコネクタを収納するようになっている。なお、図1及び図2では、透過性窓部56を、筐体51の開口端近傍に設ける場合について説明したが、これに限るものではない。固体発光体53の発光面を覆うことができればよく、例えば、区画毎に、固体発光体53の発光面を覆う透過性窓部を個別に設けてもよい。
【0030】
<紫外線照射装置の動作>
このような構成を有する紫外線照射装置1では、蓋部3を閉じた状態では、紫外線照射部11側は、すり鉢状に形成された各区画の中央部分Pに固体発光体53がそれぞれ一つずつ配置されている。また、内面反射構造体52は紫外線反射性材料から形成され、蓋部3の内面は紫外線反射性部材で形成されている。
そのため、固体発光体53が発した紫外線は、内面反射構造体52及び蓋部3の内面で反射することになる。その結果、3つの固体発光体53が発する光は、蓋部3と透過性窓部56との間に配置される紫外線照射対象物全体に対して直接照射されることはないが、固体発光体53が発光した光が内面反射構造体52及び蓋部3の内面で反射して紫外線照射対象物に照射されるため、紫外線照射対象物には、固体発光体53が発した光そのものと、反射した光とが照射されることになる。そのため、結果的に、紫外線照射対象物全体に対して紫外線照射を行うことができ、より少ない固体発光体53数で、紫外線照射対象物に対して効率よく紫外線照射を行うことができる。
【0031】
また、固体発光体53は装置本体2側のみに設け、蓋部3側には設けていない。仮に蓋部3側に固体発光体53を設けた場合、固体発光体53の発熱により蓋部3に熱が伝わり、蓋部3自体が熱を持つ可能性がある。特に、紫外線照射装置1を、ベッドサイドで使用する場合等には、蓋部3が熱を持つことは好ましくない。本実施形態に係る紫外線照射装置1では、蓋部3側には、固体発光体53を設けていない。そのため、人と接する可能性のない方向に装置本体2側がくるように、紫外線照射装置1の配置位置を決めることによって、より安全に使用することができる。
【0032】
また、内面反射構造体52は、3つの区画に分割されて区画毎にすり鉢状に形成されており、最も凹んだ中央部分Pに固体発光体53が配置されている。また、蓋部3は、上底部が、断面が円弧状となるように形成されている。そして、紫外線照射対象物は、蓋部3と紫外線照射部11との境界部分に配置されている。紫外線照射対象物は、紫外線反射性部材で囲まれた空間内に載置され、且つ紫外線照射対象物の上部及び下部に空間が形成されている。その結果、固体発光体53の反射光が蓋部及び紫外線照射部11で囲まれた領域内でいろいろな方向に反射しやすくなり、紫外線照射対象物に対し、より効率よく紫外線照射を行うことができる。
【0033】
また、固体発光体53を、紫外線照射装置1の長手方向に沿って、つまり、収容空間の長手方向に沿って一例に配置している。そのため、収容空間に載置される紫外線照射対象物に対し、紫外線照射対象物に沿って紫外線照射を行うことができ、すなわち効率よく紫外線照射を行うことができる。
紫外線照射対象物としては、例えば、カテーテルコネクタ、或いはカテーテルを適用することができる。カテーテルとしては、尿路の確保に用いられるフォーリーカテーテルなどを適用することができる。
また、装置本体2及び蓋部3により形成される紫外線反射性部材で囲まれた収容空間に収容可能な対象物であれば、適用することができる。つまり、装置本体2及び蓋部3により形成される紫外線反射性部材で囲まれた空間を、紫外線照射対象物を収容可能な大きさや形状に形成すればよい。
【0034】
例えば、紫外線照射対象物としてカテーテルコネクタ或いはカテーテルを適用する場合には、収容空間の形状がカテーテルコネクタと略相似形であり、カテーテルコネクタよりも多少大きくカテーテルコネクタを収容可能な程度の大きさとなるように装置本体2及び蓋部3を形成し、さらに、切欠き3aと12bとにより形成される連通孔、及び切欠き3bと13aとにより形成される連通孔の直径が、カテーテルの直径よりも多少大きくカテーテルが変形することなくその移動を制限することの可能な程度の大きさとなるように、各切欠きを形成する。このような形状を有する紫外線照射装置において、カテーテルコネクタの殺菌を行う場合には、収容空間にカテーテルコネクタを収納し、カテーテルコネクタと接続されるカテーテルを切欠き部分で挟むようにして蓋部3を閉じる。これによって、カテーテルコネクタは変形することなく、収容空間内での移動が制限され、また、カテーテルは、装置本体2及び蓋部3の切欠きにより形成される連通孔によって、変形することなくその移動が制限される。
また、カテーテルの殺菌器として用いる場合には、例えば、収容空間を、長さが20cm以上5m以内であり、直径が2mm以上20mm以内の中空の円筒状となるように形成すれば、各種のカテーテル用の殺菌器として適用することができる。
【0035】
<変形例>
なお、図1に示す紫外線照射装置1は、図4に示すように、3つの固体発光体53を備える場合について説明しているが、より多くの固体発光体を備えていてもよいし、1つの固体発光体53だけを備えていてもよい。複数の固体発光体を備える場合には、図2(a)に示すように、複数の固体発光体53を直線上に一列に配置してもよく、また、図6に示すように、直線上に複数配置した固体発光体53の列を複数列配置してもよい。固体発光体53は必要とされる照射領域の大きさや範囲に応じて、必要とする数だけ配置すればよい。
【0036】
また、直線上に複数配置した固体発光体53の列を複数列配置する場合、固体発光体53の照射方向が、図2(b)に示すように透過性窓部6に対して垂直となるように配置してもよく、図6に示すように、固体発光体53の配置列を2列配置する場合、各列の固体発光体53の照射方向が、紫外線照射装置1の幅方向中央部近傍で交差するように固体発光体を傾斜させて配置してもよい。なお、図6(a)は上面図、(b)は図6(a)のA-A′線断面図である。
この場合には、固体発光体53が一方の面に固定されたヒートシンク55のそれぞれも傾斜させた配置すればよい。
【0037】
また、ヒートシンク55は、配置する固体発光体53の数に応じて十分な放熱効果を得ることのできる性能を有するヒートシンクを用いればよい。
また、図1では、紫外線照射装置1は、ヒートシンク55を備えているが、固体発光体53の駆動電流の大きさに応じて、変更することが可能である。例えば固体発光体53の駆動電流が比較的大きく、固体発光体53による発熱量が大きいと予測されるときには、ヒートシンク55だけでなく冷却ファン(図示せず)を用いてもよく、固体発光体53により予測される発熱量を十分に放熱することの可能な大きさのヒートシンクや、予測される発熱量を十分に放熱することの可能な冷却性能を有する冷却ファンを用いればよい。
【0038】
また、必ずしもヒートシンクと冷却ファンとを両方設ける必要はなく、固体発光体53による発熱量を十分に放熱することができれば、冷却ファンは設けずに、ヒートシンク55と回路基板54とにより放熱を図るようにしてもよく、さらにヒートシンク55も設けずに回路基板54のみにより放熱を図るようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、紫外線照射装置1が二つの直方体状が重なった形状を有する場合について説明したがこれに限るものではない。
【0039】
図7に示すように、上面視が長方形であり且つ長手方向両端が円弧となる形状であり、装置本体2側が円柱を長手方向に半分にした形状であり、紫外線照射部11や支持部12、13に相当する装置本体2′部分が、紫外線照射装置1の載置面と直接接しないように、装置本体2′部分を支える支持部材21、22が設けられ、載置面と支持部材21、22のみとが接するような形状であってもよく、このように、支持部材21、22を設けることによって、装置本体2′の下側からも放熱することができる。また、紫外線照射装置1の両端を円弧状にすることで、使用者の衣服等への絡みつきを防止することができ、よりベッドサイドの利用に適した構造となる。
【0040】
また、紫外線照射装置1は、図8に示すように、紫外線照射部11にすり鉢形状を設けるのではなく、紫外線照射部11の上端に、紫外線照射対象物の高さ方向半分の部分を収容可能な、底面が平面である凹部を設け、同様に、蓋部3の内面にも紫外線照射対象物の高さ方向半分の部分を収容可能な、紫外線照射部11側に形成された凹部と面対象な形状を有する凹部を形成し、紫外線照射部11の凹部と蓋部3の凹部とから形成される空間(収容空間)に紫外線照射対象物を収納するようにしてもよい。そして、紫外線照射部11側の凹部の平坦な底面に固体発光体53を配置するための孔を設け、固体発光体53が埋め込まれた孔の開口部全体を塞ぐように、透過性窓部56を固体発光体53毎に設ける。
【0041】
この状態で、紫外線照射部11と蓋部3との間に形成される収容空間に紫外線照射対象物を収容することで、紫外線照射を行うようにしてもよい。
この場合、紫外線照射部11と蓋部3とで形成される収容空間の形状が、紫外線照射対象物の形状と同等となるように形成することによって、紫外線照射装置1内での、紫外線照射対象物の移動を制限することができる。その結果、紫外線照射を行う際に紫外線照射対象物を紫外線照射装置1内に収容することにより、例えば、カテーテルのチューブに過度な負担がかかること等を回避することができる。さらに収容空間の内容積を減ずることにより、UVC光が多重反射するなかで、よりカテーテル本体に照射される確率を上げることができる。また、この場合も、固体発光体53は、装置本体2側にのみ設けられているため、装置本体2側に人が接しないように、紫外線照射装置1を配置することによって、紫外線照射装置1をベッドサイドなどで使用する場合であっても紫外線照射装置1の発熱により人に影響を与えることを回避することができる。
【0042】
また、装置本体2側は、図8に示すように、略直方体状の矩形の上端が開口した一つの箱体とし、この箱体の中に、3つの固体発光体53を支持する内面反射構造体52を設け、内面反射構造体52と箱体との間の空間に、上述のように、ヒートシンク55や、駆動回路57、さらに電源、各種回路等を収納するように構成してもよい。さらに、箱体の四つの側面に通風口2aを設け、固体発光体53や電源や各種回路が発する熱を放熱するように構成してもよい。装置本体2の長手方向に延びる側面に通風口2aを設ける場合には、図8に示すように、固体発光体53それぞれに対応する通風口2aを個別に設けてもよく、或いは一つながりの通風口を側面全体に設けてもよい。
【0043】
また、上記実施形態において、光源としての固体発光体53が発する光の強度を検出する光検出部71を設けるようにしてもよい。光検出部71は、例えば、図9に示すように、内面反射構造体52の固体発光体53が配置されている面と同じ面の、固体発光体53の近傍に配置すればよい。そして、内面反射構造体52と筐体51とで囲まれる空間内に、光検出部71の検出信号を入力する検出信号処理回路(演算部)72を設け、検出信号処理回路72において、光検出部71の検出信号に基づき、固体発光体53による紫外線の発光量の積算値を演算し、紫外線の積算値が予め設定したしきい値を超えたとき、紫外線照射対象物に対して所定量の紫外線照射が終了し、すなわち、紫外線照射対象物に対する十分な殺菌が行われたものとみなし、駆動回路57による固体発光体53の駆動を停止する。また、検出信号処理回路72は、紫外線の積算値がしきい値を超えたとき等、積算値がしきい値を上回るタイミングに応じて、これを音声や表示等によって外部に通知するための警報回路(通知部)(図示せず)を駆動し、紫外線照射対象物に対する紫外線照射が終了したことを通知する。このように警報回路を設けることによって、紫外線照射が終了したことを外部に通知することができ、使い勝手を向上させることができる。光検出部71としては、例えば紫外線の励起によって可視光域に蛍光を発する蛍光ガラス素子と、蛍光ガラス素子が発する蛍光の強度を検出する光検出素子とを適用することができる。
【0044】
また、上記実施形態において、固体発光体53が発光する光の強度を検出する光検出部として、蛍光ガラス素子と光検出素子とを備える光検出部71を用い、光検出部71で検出された蛍光の強度と、温度センサで検出した温度とに基づいて、固体発光体53の発光状態を監視する管理回路を設け、固体発光体53の発光強度を維持しつつ、光検出部71に用いられる部品の劣化や他の電子部品などの電子部品群の劣化を抑制し長寿命化を図るように固体発光体53を駆動制御することも可能である。
管理回路としては、国際公開第2019/009343号に記載された発光素子管理回路を好ましく適用することができる。
【0045】
図10に、管理回路111の回路構成の一例を示す。
管理回路111は、固体発光体53を所望の発光強度で発光させるための目標値として固体発光体53の駆動電流の電流値を設定する設定回路111aと、固体発光体53を所望の発光強度に維持する自動パワー制御回路(自動パワー制御部)(Auto Power Control:APC)111bと、駆動回路(駆動部)111c、とを備える。駆動回路111cは、図2に示す駆動回路57に対応する。
【0046】
蛍光ガラス素子121は、上述のとおり、固体発光体53が発光する紫外線(例えば波長は265nm)に励起されて例えば緑色の蛍光(例えば波長は560nm)を発する素子である。つまり、蛍光ガラス素子121は、波長265nmの光を波長560nmの光に光変換する素子である。
光検出素子114は例えばフォトダイオード(Photodiode:PD)で構成され、蛍光ガラス素子121から発せられる蛍光を電流に変換して電流/電圧変換回路(IV変換回路)1114に出力する。
【0047】
設定回路111aは、光検出素子114の検出信号に基づく電圧を増幅する増幅部(PGA)1110と、増幅部1110が出力する出力電圧の直流バイアスを調節するバイアス調節部(DAC)1111と、増幅部1110が出力する出力電圧に含まれるオフセット電圧を調整するオフセット調節部(DAC)1112と、増幅部1110の出力電圧、バイアス調節部1111の出力電圧及びオフセット調節部1112の出力電圧を加算する加算部1113と、を有し、固体発光体53の目標駆動電流の設定時には、目標駆動電流で駆動された固体発光体53の発光強度に基づく電圧をフィードバック電圧Vfbとして出力する。また、加算部1113は、固体発光体53による殺菌対象物の殺菌動作時には、固体発光体53の発光強度に基づく電圧をフィードバック電圧Vfbとして出力する。
【0048】
自動パワー制御回路111bは、光検出素子114の陽極に入力端子が接続された電流/電圧変換回路1114を有している。電流/電圧変換回路1114は、光検出素子114から入力された電流を電圧に変換して増幅部1110に出力する。
自動パワー制御回路111bは、さらに設定回路111aから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部(ADC)1115と、アナログ/デジタル変換部1115で変換されたデジタル信号に基づいて固体発光体53が所望の発光強度を維持しているか否かを判定すると共に、固体発光体53が所望の発光強度を維持するように制御するための目標駆動電流を設定するマイクロプロセッサ(μP)1116と、マイクロプロセッサ1116からの指示に基づいて駆動回路111c(駆動回路57)を制御するパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)信号を生成するパルス幅変調信号生成部(PWM)1117と、を有している。自動パワー制御回路111bは、殺菌動作時のフィードバック電圧Vfbに基づいて、固体発光体53が所望の発光強度で動作しているか否かを判定する。また、自動パワー制御回路111bは、固体発光体53の温度を検出する温度センサ(温度検出部)115を備えており、温度センサ115が検出した温度に基づいて駆動回路111cを制御する。温度センサ115は、例えサーミスタ及び抵抗を有し、さらにサーミスタ及び抵抗の接続点の電圧と所定電圧とを比較する比較器(コンパレータ)を有している。この比較器の出力端子が温度センサ115の出力端子となる。この所定電圧は、固体発光体53の所定温度(例えば80℃)に相当する電圧に設定される。マイクロプロセッサ1116は、サーミスタによって検出された固体発光体53の温度が所定温度よりも高いか低いかに応じてデューティ信号Sdutyのデューティ比を変更することをパルス幅変調信号生成部1117に指示し、温度センサ115から固体発光体53の温度が所定温度よりも高いことが通知されたときには、デューティ信号Sdutyのデューティ比を大きくすることをパルス幅変調信号生成部1117に指示し、これにより、固体発光体53に流れる駆動電流の電流量が増加させ、固体発光体53が高温になって低下した発光強度を補償する。
【0049】
また、マイクロプロセッサ1116は、固体発光体53の目標駆動電流の設定状態及び固体発光体53による殺菌対象物の殺菌動作状態のときに、バイアス調節部1111及びオフセット調節部1112の入力ビット値を必要に応じて変更する。また、マイクロプロセッサ1116は、固体発光体53の目標駆動電流の設定状態のときに、増幅部1110の増幅率を必要に応じて変更する。
駆動回路111cは、制御部1118と定電流源1119とを有している。制御部1118は、パルス幅変調信号生成部1117から入力されるデューティ信号Sdutyに基づいて定電流源1119が出力する電流の電流量を制御し、デューティ信号Sdutyのデューティ比が小さくなった場合には、出力する電流の電流量が小さくなるように定電流源1119を駆動する。一方、デューティ信号Sdutyのデューティ比が大きくなった場合には、出力する電流の電流量が大きくなるように定電流源1119を駆動する。
【0050】
定電流源1119には、固体発光体53が直列に接続されるため、固体発光体53には定電流源1119が出力する電流量の定電流が流れ、固体発光体53が発光する紫外線の強度は、定電流源1119が出力する定電流の電流量で決定される。
蛍光ガラス素子121と、光検出素子114と、温度センサ115は、例えば、固体発光体53が搭載された回路基板54に取り付けられる。また、管理回路111は、図1に示す駆動回路57と同様に、内面反射構造体52と筐体51との間の、筐体51の内面等に配置される。
【0051】
<実施例>
以下に、本発明に係る紫外線照射装置1の実施例を説明する。
<殺菌能力評価>
上記構成の紫外線照射装置1を、エラストマー製のカテーテルコネクタ用のカテーテル殺菌器として用い、その殺菌性能を、大腸菌を含む水の殺菌能力を測定することにより評価した。
【0052】
[殺菌操作]
1.シリコーン製カテーテル(18Fr)(株式会社トップ製「オールシリコーンフォーリーカテーテル」(商品名))を滅菌済み袋から取り出し、バッグ接続部から約7cmのところでクランプして封止する。
2.大腸菌(ATCC8739)の菌液(約1.0×10CFU/ml)をカテーテルコネクタから導入し、滅菌済みプラグで封止する。
3.菌液を封止したカテーテルコネクタを、紫外線照射装置1からなるカテーテル殺菌器に静置する。物理的なダメージでの殺菌と区別し、UVC照射による殺菌効果を分離するようにUVC非照射で同様の操作を行う対照サンプルを作成する。対照サンプルについては、この時にアルミホイルで装置本体2の透過性窓部56を被覆し、UVC光が菌液に照射されないようにする。
4.カテーテル殺菌器の蓋部3を閉じ、所定の時間固体発光体53を点灯する。
5.カテーテル殺菌器の蓋部3を開け、カテーテルコネクタを取り出し、滅菌済みのバイアル(遠沈管を利用)に菌液を採取する。
6.シャーレにて、標準寒天培地、温度35℃×24時間の期間に混釈法で大腸菌を培養し、菌数を計数した。
【0053】
[殺菌性能LRVの計算]
殺菌性能LRV(Log Reduction Value)を次式(1)から算出した。
LRV
=-log10(照射後の菌液の菌数(CFU/ml)/菌液原液の菌数(CFU/ml)) ……(1)
【0054】
図11に殺菌能力の測定結果を示す。図11において、横軸は照射時間(sec)、縦軸は殺菌性能LRVである。
図11に示すように、紫外線照射装置1を適用した実施例におけるカテーテル殺菌器は、特性線L1に示すように1分以内にLRV6に到達している。一般的にLRV6は滅菌レベルと言われているので、使用者にストレスを感じさせない1分間の待ち時間の間に滅菌ができているということになる。
一方、同様の操作を行った、水銀器を用いた比較例においては、特性線L2に示すように、滅菌レベルに到達するのに2分以上かかり、使用者にとって大きなストレスになる。
なお、比較例としての殺菌器として、例えば図12に示す水銀器を用いた殺菌器を用いた。
【0055】
図12に示す殺菌器200は、装置本体201と装置本体201に一辺が回動自在に取り付けられた蓋部202とを備え、装置本体201及び蓋部202のそれぞれには、断面が半円の殺菌器200の長手方向に延びる凹部が形成され、蓋部202を閉じて装置本体201と蓋部202とを重ね合わせたとき、略円柱状の空間が、殺菌器200内に形成されるようになっている。また、装置本体201及び蓋部202のそれぞれには、凹部の底部に相当する部分に水銀灯203が長手方向に沿って配置されている。そして、殺菌器200内に形成される略円柱状の空間に、紫外線照射対象物を載置することによって、紫外線照射対象物に紫外線照射を行うようになっている。
【0056】
<光源温度評価>
次に、図1に示す紫外線照射装置1を適用したカテーテル殺菌器(実施例)及び図12に示す比較例としての水銀器を用いた殺菌器とについて、連続運転中の光源付近の温度をK熱電対で測定した。
【0057】
図13に示すように、LEDを用いた紫外線照射装置1からなるカテーテル殺菌器(実施例 L11)は、300秒ほどで定常状態になり、40℃以上にはならず、外壁はほぼ室温と同じ温度であった。一方、比較例の水銀器を用いた殺菌器は、図13に示すように、内部は、300秒ほどで60℃を超え(L12)、外壁部においても300秒ほどで55℃を超えてしまった(L13)。43℃を超えると人体に低温やけどを発生させるリスクが高まるため、比較例の殺菌器を、人体付近において使用することは、好ましくないと考えられる。一方、実施例のカテーテル殺菌器では内部であっても40℃を超えず、外壁においては実質的に室温と差がないため、安心して人体のそばにおいて使用することができることがわかる。
なお、図13において、横軸は経過時間、縦軸はK熱電対で測定した、光源付近の温度である。
【0058】
ここで、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせにも含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 紫外線照射装置
2 装置本体
3 蓋部
11 紫外線照射部
12 支持部
13 支持部
51 筐体
52 内面反射構造体
53 固体発光体
54 回路基板
55 ヒートシンク
56 透過性窓部
71
111 管理回路
111b 自動パワー制御回路
114 光検出素子
115 温度センサ
121 蛍光ガラス素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13