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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】窒化物半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/14 20100101AFI20231121BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20231121BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L33/14
H01L33/32
H01L33/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019177794
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021057418
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 陽
(72)【発明者】
【氏名】永富 隆清
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037660(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された、AlおよびGaを含む第1導電型窒化物半導体層と、
前記第1導電型窒化物半導体層上の少なくとも一部に形成された、AlおよびGaを含む発光層と、
前記発光層上の少なくとも一部に形成された、Gaを含む、前記第1導電型窒化物半導体層とは異なる導電型である第2導電型窒化物半導体層と、を備え、
前記発光層と前記第2導電型窒化物半導体層との間に、キャリア拡散層を含み、
前記キャリア拡散層の前記基板側に隣接する層がAlを含む隣接窒化物半導体層Xであり、
前記キャリア拡散層に含まれるAl含有窒化物のAl組成は、前記隣接窒化物半導体層XのAl含有窒化物のAl組成よりも高く、
前記キャリア拡散層の厚みは1原子層以上10原子層以下であり、
前記キャリア拡散層は各原子の配列が(0002)面方向に対して75°以上90°以下で傾いている、
ことを特徴とする窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記キャリア拡散層の前記第2導電型窒化物半導体層側に隣接する層が隣接窒化物半導体層Yであり、
前記隣接窒化物半導体層X及び前記隣接窒化物半導体層Yの各原子の配列が、(0002)面方向に対して75°以上90°以下で傾いている
ことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項3】
前記キャリア拡散層に含まれる前記Al含有窒化物のAl組成は前記隣接窒化物半導体層XのAl含有窒化物のAl組成より15%以上多い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体素子。
【請求項4】
前記発光層と前記第2導電型窒化物半導体層の間に、電子ブロック層と組成傾斜層とを備え、
前記組成傾斜層の厚みは5nm以上100nm以下であり、前記組成傾斜層に含まれるAl含有窒化物のAl組成が10%以上90%以下の範囲で前記発光層側から前記第2導電型窒化物半導体層側に向かって傾斜している
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
【請求項5】
前記基板は、AlN基板または基板上に形成されたAlN薄膜である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記基板がAlN単結晶であり、転位密度が1×10cm-2以下である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
前記第1導電型窒化物半導体層はn型のAlGa(1-x)N(0.6≦x≦0.9)であり、前記第2導電型窒化物半導体層はp型のAlGa(1-y)N(0≦y≦0.2)である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体素子は、発光層のバンドギャップエネルギーを制御することにより発光波長を制御することができるとともに、寿命が長く信頼性が高い。そのため、照明、計測器用光源、殺菌用光源など様々な用途に利用されている。一般的な窒化物半導体素子は、基板上に、発光層をp型窒化物半導体とn型窒化物半導体で挟んだPIN構造を有する。
【0003】
発光素子の発光出力(発光強度)を高めるためには、正孔注入効率と発光分布を高めることが重要である。例えば、特許文献1には、AlGaN/AlGaNの多積層体を用いることで多重量子バリアを作製し、正孔の注入効率を向上させ、発光素子の発光強度を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5843238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化物半導体素子には、さらなる発光効率の向上が求められている。本開示の目的は、発光強度を高めることができる窒化物半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
[1]
基板と、
前記基板上に形成された、AlおよびGaを含む第1導電型窒化物半導体層と、
前記第1導電型窒化物半導体層上の少なくとも一部に形成された、AlおよびGaを含む発光層と、
前記発光層上の少なくとも一部に形成された、Gaを含む、前記第1導電型窒化物半導体層とは異なる導電型である第2導電型窒化物半導体層と、を備え、
前記発光層と前記第2導電型窒化物半導体層との間に、キャリア拡散層を含み、
前記キャリア拡散層の前記基板側に隣接する層がAlを含む隣接窒化物半導体層Xであり、
前記キャリア拡散層に含まれるAl含有窒化物のAl組成は、前記隣接窒化物半導体層XのAl含有窒化物のAl組成よりも高く、
前記キャリア拡散層の厚みは1原子層以上10原子層以下であり、
前記キャリア拡散層は各原子の配列が(0002)面方向に対して75°以上90°以下で傾いている、
ことを特徴とする窒化物半導体素子。
[2]
前記キャリア拡散層の前記第2導電型窒化物半導体層側に隣接する層が隣接窒化物半導体層Yであり、
前記隣接窒化物半導体層X及び前記隣接窒化物半導体層Yの各原子の配列が、(0002)面方向に対して75°以上90°以下で傾いている
ことを特徴とする[1]に記載の窒化物半導体素子。
[3]
前記キャリア拡散層に含まれる前記Al含有窒化物のAl組成は前記隣接窒化物半導体層XのAl含有窒化物のAl組成より15%以上多い
ことを特徴とする[1]又は[2]に記載の窒化物半導体素子。
[4]
前記発光層と前記第2導電型窒化物半導体層の間に、電子ブロック層と組成傾斜層とを備え、
前記組成傾斜層の厚みは5nm以上100nm以下であり、前記組成傾斜層に含まれるAl含有窒化物のAl組成が10%以上90%以下の範囲で前記発光層側から前記第2導電型窒化物半導体層側に向かって傾斜している
ことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の窒化物半導体素子。
[5]
前記基板は、AlN基板または基板上に形成されたAlN薄膜である
ことを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
[6]
前記基板がAlN単結晶であり、転位密度が1×10cm-2以下である、
ことを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
[7]
前記第1導電型窒化物半導体層はn型のAlGa(1-x)N(0.6≦x≦0.9)であり、前記第2導電型窒化物半導体層はp型のAlGa(1-y)N(0≦y≦0.2)である
ことを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発光強度を高めることができる窒化物半導体素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の窒化物半導体発光素子の一例を示す断面図である。
図2】実施形態の窒化物半導体発光素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<窒化物半導体素子の構成>
図1に示すように、本実施形態の窒化物半導体素子は、基板と、上記基板上に形成される窒化物半導体積層体と、を備える。上記窒化物半導体積層体は、第1導電型窒化物半導体層と、発光層と、キャリア拡散層と、第2導電型窒化物半導体層と、を有する。つまり、本実施形態の窒化物半導体素子は、基板と、第1導電型窒化物半導体層と、発光層と、キャリア拡散層と、第2導電型窒化物半導体層と、を備える。窒化物半導体素子はさらに電極を備え得る。
【0010】
(基板)
基板はAlを含む窒化物半導体を含むことが好ましい。Alを含む窒化物半導体は、例えば、AlNである。Alを含む窒化物半導体は、AlNに限定されず、例えば、AlGaNであってよい。
ここで、「基板は…窒化物半導体を含む」という表現における「含む」という文言は、窒化物半導体を主に層内に含むことを意味するが、その他の元素を含む場合もこの表現に含まれる。具体的には、他の元素を少量(例えばGa(Gaが主元素でない場合)、In、As、P、またはSb等の元素を数%以下)加える等してこの層の組成に軽微な変更を加える場合についてもこの表現に含まれる。その他の層の組成の表現においても、「含む」という文言は、同様の意味を有する。また、含まれる少量元素については前述の限りではない。
【0011】
また、基板は単結晶基板だけでなく、異種基板上に形成されたAlN薄膜やAlGaN薄膜を含む。上記基板は、AIN基板又は基板上に形成されたAIN薄膜であることが好ましい。上記基板は、AIN単結晶であることが好ましい。
例えば、AlN、AlGaN等の窒化物半導体単結晶基板、または、異種基材上にAlN、AlGaN等の窒化物半導体層が形成された基板(テンプレート基板)を用いると、基板の上側に形成する窒化物半導体層との格子定数差が小さくなり、窒化物半導体層を格子整合系で成長させることで貫通転位を少なくできる。
また、基板は、ドナー不純物またはアクセプタ不純物によって、n型またはp型にドーピングされてよい。また、基板は、AlN等の窒化物半導体と、サファイア(Al23)、Si、SiC、MgO、Ga23、ZnO、GaNまたはInNとの混晶であり得る。
【0012】
基板の作製方法としては、昇華法もしくはHVPE法等の気相成長法および液相成長法等の一般的な基板成長法が適用できる。
【0013】
基板の厚さは一例として100μm以上かつ600μm以下であってよい。
【0014】
上記基板の転位密度は、1×105cm-2以下であることが好ましい。
【0015】
基板の面方位はc面(0001)、a面{11-20}、m面{10-10}などが挙げられるが、より好ましくはc面基板である。
【0016】
(第1導電型窒化物半導体層)
第1導電型窒化物半導体層は、導電性を有し、AlおよびGaを含む窒化物半導体の層である。第1導電型窒化物半導体層は基板上に形成される。上記第1導電型窒化物半導体層は、上記基板上に直接積層されていてもよい。
ここで、例えば「第1導電型窒化物半導体層は基板上に形成される」という表現における「上に」という文言は、基板の上に第1導電型窒化物半導体層が形成されることを意味するが、基板と第1導電型窒化物半導体層との間に別の層がさらに存在する場合もこの表現に含まれる。その他の層同士の関係においても、「上の」という文言は、同様の意味を有する。例えば、発光層上に電子ブロック層を介して第2導電型窒化物半導体層が形成される場合も、「第2導電型窒化物半導体層は発光層上に形成される」という表現に含まれる。
【0017】
第1導電型窒化物半導体層が含む窒化物半導体は、例えば、AlxGa(1-x)N(0<x<1)である。深紫外領域のバンドギャップエネルギーに対応する材料を発光層として形成する場合に、その結晶性を高め、発光効率を向上させることが可能となる。高い発光効率を実現する観点から、第1導電型窒化物半導体層が含む窒化物半導体は、AlNおよびGaNの混晶であることが好ましい。第1導電型窒化物半導体層の窒化物半導体には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、不純物元素の種類としてはこの限りではない。紫外線透過率の観点とコンタクト抵抗の観点から、AlxGa(1-x)N(0.6≦x≦0.9、好ましくは0.6<x<0.9)であることがより好ましい。
また、第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層とは、互いに異なる導電性を有する窒化物半導体の層である。一般に、n型半導体の方がp型半導体より結晶性に優れており、発光層への影響が低い。そのため、第1導電型窒化物半導体層がn型で、第2導電型窒化物半導体層がp型であることが好ましい。
【0018】
(発光層)
発光層は、Alおよび/またはGaを含む窒化物半導体の層であることが好ましい。
発光層が含む窒化物半導体は、高い発光効率を実現する観点から、例えば、AlN、GaNの混晶であることが好ましい。発光層には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、不純物元素の種類としてはこの限りではない。また、発光層は、量子井戸構造も単層構造も取り得る。高い発光効率を実現する観点から、発光層は少なくとも1つの量子井戸構造を有することが好ましい。
【0019】
発光層は、第1導電型窒化物半導体層上の少なくとも一部に形成され、第1導電型窒化物半導体層上の一部に形成されることが好ましい。上記発光層は、上記第1導電型窒化物半導体層上に直接積層されていてもよい。
【0020】
また、窒化物半導体素子の発光波長を深紫外領域の波長(280nm以下)としたい場合には、発光層が含む窒化物半導体はAl、GaおよびNを含むことが好ましい。また、発光効率を高める観点から、発光層は、Al、GaおよびNを含む量子井戸層と、AlNを含む量子障壁層とを有する多重量子井戸構造(MQW)であることが好ましい。
【0021】
(第2導電型窒化物半導体層)
第2導電型窒化物半導体層は、Gaを含み、第1導電型窒化物半導体層と異なる導電性を有する窒化物半導体の層である。第2導電型窒化物半導体層は、発光層上に形成される。上記第2導電型窒化物半導体層は、上記発光層上に、キャリア拡散層、第2導電型窒化物半導体層の順に直接積層されていてもよいし、電子ブロック層、組成傾斜層、キャリア拡散層、第2導電型窒化物半導体層の順に直接積層されていてもよい。
上記第2導電型窒化物半導体層は、上記発光層上の少なくとも一部に形成され、上記発光層上の一部に形成されることが好ましい
【0022】
第2導電型窒化物半導体層が含む窒化物半導体は、例えば、GaN、AlN、InN、およびそれらを含む混晶などである。第2導電型窒化物半導体層の窒化物半導体には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si、Be等の不純物が混入していてよい。ただし、上記のように、第1導電型窒化物半導体層の導電性がn型で、第2導電型窒化物半導体層の導電性がp型であることが好ましい。
窒化物半導体としては、AlyGa(1-y)N(0≦y≦0.2)であることが好ましい。
【0023】
(キャリア拡散層)
キャリア拡散層は第2導電型窒化物半導体層から注入された正孔を横方向(例えば、積層方向(厚さ方向)に対して垂直方向)に拡散させる機能を有する窒化物半導体層である。横方向にキャリアが拡散することで電界集中が緩和され、発光分布が改善されることで発光強度が向上する。また、低抵抗層が界面に存在することで、正孔が縦方向(例えば、積層方向)にも輸送されやすくなることで、正孔注入効率が向上し、発光強度が向上する。キャリア拡散層は、発光層と第2導電型窒化物半導体層の間に形成される。この間には組成傾斜層や電子ブロック層などの機能をもつ層を有していても良い。キャリア拡散層が含む窒化物半導体は、例えば、GaN、AlN、AlGaN、InN、およびそれらを含む混晶などである。キャリア拡散層の窒化物半導体には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si、Be等の不純物が混入していてよい。
【0024】
キャリア拡散層に含まれるAl含有窒化物のAl組成が、キャリア拡散層の基板側に隣接する層であるAlを含む隣接窒化物半導体層XのAl含有窒化物のAl組成よりも高いことにより、第2導電型窒化物半導体層との界面には高濃度の二次元ホールガス(2DHG)が発生する。そこで注入され正孔はこの2DHGによって横方向に伝搬しやすくなる。この観点から、キャリア拡散層に含まれるAl含有窒化物のAl組成は上記隣接窒化物半導体層Xより高いことが好ましい。さらに好ましくは、上記隣接窒化物層XのAl組成より15%以上高いことである。
ここで、隣接窒化物層Xは、例えば、キャリア拡散層の基板側に隣接する発光層(図1)、組成傾斜層(図2)であってよい。キャリア拡散層に含まれるAl含有窒化物とは、キャリア拡散層中の質量割合が最も高いAlを含む窒化物としてよい。組成傾斜層のAl含有窒化物のAl組成は、キャリア拡散層との界面に存在するAl含有窒化物のAl組成としてよい。Al含有窒化物のAl組成とは、AlとNと任意の他の元素とから構成される化合物において、窒素を除く元素の数に対するAlの割合をいう。例えば、AlxGa(1-x)Nでは、x%としてよい。
【0025】
また、キャリア拡散層の膜厚が厚すぎる場合、注入された正孔はトンネル伝導できず、障壁となってしまい、閾値電圧の上昇となる。そのため、キャリア拡散層の膜厚は1原子層以上10原子層以下であることが好ましい。さらに好ましくは1原子層以上5原子層以下である。
また、キャリア拡散層とその上限の窒化物半導体(たとえば第2導電型窒化物半導体層および電子ブロック層)が歪んでいることによって、より高い正孔注入効率が得られる。しかし歪みすぎると歪緩和によって発光特性が低下する。そのため、基板に垂直なc面((0002)面)方向に対して、75°以上90°以下の傾きで歪んでいることが好ましい。さらに好ましくは79%以上86%以下である。
窒化物半導体素子の厚さ方向上側にキャリア拡散層と隣接する隣接窒化物半導体層X及び厚さ方向下側に隣接する隣接窒化物半導体層Yの核原子の配列は、(0002)面方向に対して75°以上90°以下であることが好ましい。
【0026】
(組成傾斜層)
発光層と第2導電型窒化物半導体層との間に、組成傾斜層が配置されていることが好ましい。その材料は、AlzGa(1-z)N(0.2≦z≦1)であって、発光層側の面から第2導電型窒化物半導体層側の面に向けて、Al組成zが減少する層である。組成傾斜層中に含まれるAl含有窒化物は、Al組成が10%以上90%以下の範囲であることが好ましい。
そのAl組成zのプロファイルは、発光層側の面から連続的に減少してもよいし、断続的に減少してもよい。「断続的に減少する」とは、組成傾斜層の膜厚方向にAl組成zが同じになっている部分を含むことを意味する。つまり、組成傾斜層には、発光層側からAl組成zが減少しない部分が含まれていてもよいが、増加する部分は含まれていない。組成傾斜層には、Al組成zが同じになっている部分が例えば数nmの厚さで含まれることがある。
ここで、Al組成の変化は、Al含有窒化物を構成する元素種が同じである窒化物のAl組成を比べてよい。
組成傾斜層にはC、H、F、O、Mg、Siなどの不純物が含まれていてもよい。
組成傾斜層は、分極ドーピング効果により正孔を生成させて、正孔を効率良く活性層に注入する作用を有するため、発光層と第2導電型窒化物半導体層との間に設けることで、発光効率を高めることができる。
【0027】
組成傾斜層の膜厚は、発光効率を高める観点から、5nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0028】
組成傾斜層の代わりに、格子定数の異なる半導体層の短膜周期的構造(SPSL)を設けることもできる。一例としては、AlaGa(1-a)N/AlbGa(1-b)N(a≠b)の周期的構造が挙げられる。上記の構造では、膜中の歪に起因する分極効果により生成する2次元正孔ガスが活性層へ注入される。SPSLには不純物が添加されていてもよい。
【0029】
(電極)
窒化物半導体発光素子は、さらに電極を備えてよい。電極は、n型電極およびp型電極の少なくとも1つであり得る。
【0030】
n型電極は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zr等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa2O3等の導電性酸化物等を用いることができる。また、n型電極は、第1導電型窒化物半導体層および第2導電型窒化物半導体層のうち、導電性がn型である層とコンタクトするように形成される事が好ましい。
【0031】
p型電極は、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Pt、Cu、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Co、Ir、Zr等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa等の導電性酸化物等を用いることができる。また、p型電極は、第1導電型窒化物半導体層および第2導電型窒化物半導体層のうち、導電性がp型である層とコンタクトするように形成される事が好ましい。
【0032】
電極の形成方法として、抵抗加熱蒸着、電子銃蒸着またはスパッタ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電極は単層であり得る。また、電極は積層であり得る。また、電極は、層の形成後に酸素、窒素または空気雰囲気等で熱処理が行われてもよい。
【0033】
(窒化物半導体素子)
窒化物半導体素子は、例えば、医療・ライフサイエンス分野、環境分野、産業・工業分野、生活・家電分野、農業分野、その他分野の装置に適用可能である。窒化物半導体素子は、薬品または化学物質の合成・分解装置、液体・気体・固体(容器、食品、医療機器等)殺菌装置、半導体等の洗浄装置、フィルム・ガラス・金属等の表面改質装置、半導体・FPD・PCB・その他電子品製造用の露光装置、印刷・コーティング装置、接着・シール装置、フィルム・パターン・モックアップ等の転写・成形装置、紙幣・傷・血液・化学物質等の測定・検査装置に適用可能である。
【0034】
液体殺菌装置の例としては、冷蔵庫内の自動製氷装置・製氷皿および貯氷容器・製氷機用の給水タンク、冷凍庫、製氷機、加湿器、除湿器、ウォーターサーバの冷水タンク・温水タンク・流路配管、据置型浄水器、携帯型浄水器、給水器、給湯器、排水処理装置、ディスポーザ、便器の排水トラップ、洗濯機、透析用水殺菌モジュール、腹膜透析のコネクタ殺菌器、災害用貯水システム等が挙げられるが、この限りではない。
【0035】
気体殺菌装置の例としては、空気清浄器、エアコン、天井扇、床面用または寝具用の掃除機、布団乾燥機、靴乾燥機、洗濯機、衣類乾燥機、室内殺菌灯、保管庫の換気システム、靴箱、タンス等が挙げられるが、この限りではない。
【0036】
固体殺菌装置(表面殺菌装置を含む)の例としては、真空パック器、ベルトコンベヤ、医科用・歯科用・床屋用・美容院用のハンドツール殺菌装置、歯ブラシ、歯ブラシ入れ、箸箱、化粧ポーチ、排水溝のふた、便器の局部洗浄器、便器フタ等が挙げられるが、この限りではない。
【0037】
<製造方法>
窒化物半導体素子は、基板上に各層を形成する工程を経て製造される。この工程は、例えば、分子線エピタキシー(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法、ハイドライド気相成長法(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)または有機金属気相成長(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等で行うことができる。
ここで、基板上に形成された各層のうち窒化物半導体の層は、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)を含むAl原料、例えばトリメチルガリウム(TMGa)またはトリエチルガリウム(TEGa)等を含むGa原料、例えばアンモニア(NH3)を含むN原料を用いて形成することができる。
【0038】
窒化物半導体素子は、基板上に形成された各層に対して、不要部分をエッチングによって除去する工程を経て製造される。この工程は、例えば誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング等で行うことができる。
【0039】
また、窒化物半導体素子は、電極を形成する工程を経て製造され得る。この工程は、例えば電子線蒸着(EB)法や抵抗加熱法によって金属を蒸着させる等の種々の方法で行うことができる。
【0040】
ここで、窒化物半導体素子は、上記の工程を経て各層が形成された基板をダイシングにより個片へと分割して製造される。窒化物半導体素子のように、製造過程に確率要素を含み得る製品については、一般に、中間物の評価(評価工程)が製造工程に含まれる。すなわち、評価工程における中間物の評価結果に基づいて最終製品の特性を予測し、中間物の選別、工程の選択または追加等が実施され得る。
【0041】
窒化物半導体素子の製造における中間物は、例えば電極を形成する前の基板および窒化物半導体積層体である。
【0042】
キャリア拡散層の膜厚測定方法として、薄膜を薄片化して、断面を高分解能TEM(HRTEM:透過電子顕微鏡法)観察することにより観察される膜厚を測定する方法が挙げられる。より詳細には<11-20>面に対して、一般的に100nm以下の切片厚さまで薄片化された試料を用意する。日本電子のJEM-ARM200Fを用い、200kVの印加電圧で観察して膜厚の測定を行う。断面画像の観察範囲は20nmの観察幅を有することとし、素子内の3箇所でそれぞれ観察を行い、3箇所の平均をキャリア拡散層の膜厚とする。同様に第2導電型窒化物半導体層の歪量と歪膜厚に関しても、HRTEM法によって評価できる。前記の手法で得られた原子像に対して、基板の格子定数を配置し、それに対して、原子1個がずれるのに必要な原子数を計算することで格子のc面に対する傾きが算出できる。
【0043】
また、キャリア拡散層のAl組成を評価する方法として、アトムプローブトモグラフィー(APT)がある。窒化物半導体積層体のAPT解析では、収束イオンビーム(FIB)加工技術を用いて、観察したい多層膜部位を先端の曲率半径100nm程度の針状試料へ加工する。半導体多層膜表面に電極が形成されている場合は電極が着いた状態で、電極がない場合はWなどの保護膜を形成した状態で、FIBにより針状試料へ加工する。半導体積層体の膜の垂直方向が針状試料の軸方向になるように、かつ観察したい膜部分が針の先端付近にくるように加工することが一般的である。この針状試料へ電圧パルス印加、あるいは電圧パルス印加と観察部位へのレーザーパルス照射を行うことによって、針状試料先端からの単原子イオン、あるいは複数の原子からなるクラスターイオンを電界蒸発させる。これら電界蒸発によって針状試料先端から放出されたイオンを質量分析することによってイオン種を同定し、かつイオンが放出された針状試料内の位置を二次元検出器によって同定することで、針状試料内の原子の3次元分布を原子レベルの分解能で得ることができる。(https://www.nanoanalysis.co.jp/business/device_01.html)
以上の原理によって、APTによって膜中の原子のマッピングを深さ方向、面内方向で観察することが可能である。
このAPT法によってAl組成の中心値Xを測定する方法を下記に記載する。形成された針状試料に対して、深さ方向に垂直な面内では、試料中心の25%の領域を除去し、残りの領域におけるマッピングの平均値をAl組成の中心値Xとする。
【実施例
【0044】
[実施例1]
厚さが550μmのc面AlN基板(転位密度1×104cm-2以下)に対して、有機金属気相成長(MOCVD)装置を用いて、1300℃においてアニール処理が行われた。次に、ホモエピタキシャル層であるAlN層が、1200℃において、500nmの厚さで形成された。このとき、V/III比は50であった。また、真空度は50mbarであった。また、成長レートは0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)が用いられた。また、N原料としてアンモニア(NH3)が用いられた。
上記のように形成されたAlN層上に第1導電型窒化物半導体層が形成された。第1導電型窒化物半導体層は、Siをドーパント不純物として用いたn型AlGaN層(Al:70%)である。n型AlGaN層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で500nmの厚さで成膜された。このときの成長レートは0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)が用いられた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)が用いられた。また、N原料としてアンモニア(NH3)が用いられた。また、Si原料としてモノシラン(SiH4)が用いられた。
上記のように形成されたn型AlGaN層上に発光層が形成された。発光層は、量子井戸層と量子障壁層とを5周期積層させた多重量子井戸構造を有するように成膜された。ここで、量子井戸層は、3.0nmの厚さを有するAlGaN(Al:52%)、すなわちAl0.52Ga0.48Nである。また、6.0nmの厚さを有する量子障壁層は、AlGaN(Al:75%)、すなわちAl0.75Ga0.25Nである。発光層は、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で製膜された。このときの量子井戸層の成長レートは0.18μm/hrであった。
上記のように形成された発光層上に電子ブロック層が成膜された。電子ブロック層は、AlGaN(Al:85%)である。上記のように形成された電子ブロック層上に組成傾斜層が成膜された。組成傾斜層は(Al:85%から30%)まで傾斜され、その膜厚は35nmである。上記のように形成された組成傾斜層上にキャリア拡散層が成膜された。NH3の流量はそのままに維持し、TMAlとTEGaの流量を量子井戸層形成時の1/10にする。この状態で、TMAlとTEGaを供給:2秒間、停止:5秒間のパルス的に供給する。これを35周期実施する。
また、キャリア拡散層上にp型GaN層である第2導電型窒化物半導体層を形成した。このように、AlN基板上に、窒化物半導体積層体が形成された。
上記のように形成された窒化物半導体積層体を、高分解能HRTEM測定によって評価したところ、キャリア拡散層の膜厚は3原子層厚みであった。また、APT法によってAl組成を評価したところ、キャリア拡散層のAl組成は38%であった。また、HRTEMによって得られた原子像からc面に対する傾きを算出したところ、83°であった。
また、得られた窒化物半導体積層体をドライエッチングすることによって、n型AlGaN層の一部が露出した。露出したn型AlGaN層上に、Ti、Al、NiおよびAuを含む合金電極(n型電極に相当)が形成された。また、p型GaN層(第2導電型窒化物半導体層)上に、NiおよびAuを含む合金電極(p型電極に相当)が形成された。AlN基板を、厚さが100μmになるように研削した後に、ダイシングにより窒化物半導体素子の個片へと分割した。得られた紫外線発光素子を、電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は6V、ピーク波長265nmにおける発光強度が27mWであった。
【0045】
[実施例2]
実施例1からキャリア拡散層のAl組成を42%へと変化させた以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は6.3V、ピーク波長265nmにおける発光強度が33mWであった。
【0046】
[実施例3]
実施例1からキャリア拡散層のAl組成を45%へと変化させた以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は6.4V、ピーク波長265nmにおける発光強度が47mWであった。
【0047】
[実施例4]
実施例1からキャリア拡散層のAl組成を60%へと変化させた以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は6.5V、ピーク波長265nmにおける発光強度が55mWであった。
【0048】
[実施例5]
実施例1からキャリア拡散層のAl組成を80%へと変化させた以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は7.4V、ピーク波長265nmにおける発光強度が61mWであった。
【0049】
[実施例6]
実施例4からキャリア拡散層が成膜時の繰り返し周期を60周期実施し、キャリア拡散層の原子厚みを5原子層にした以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は7.8V、ピーク波長265nmにおける発光強度が52mWであった。
【0050】
[実施例7]
実施例4からキャリア拡散層が成膜時の繰り返し周期を95周期実施し、キャリア拡散層の原子厚みを8原子層にした以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は8.2V、ピーク波長265nmにおける発光強度が46mWであった。
【0051】
[実施例8]
実施例4からキャリア拡散層が成膜時の繰り返し周期を115周期実施し、キャリア拡散層の原子厚みを10原子層にした以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は8.4V、ピーク波長265nmにおける発光強度が42mWであった。
【0052】
[実施例9]
実施例4からキャリア拡散層が成膜時の繰り返し周期を140周期実施し、キャリア拡散層の原子厚みを12原子層にした以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は9V、ピーク波長265nmにおける発光強度が38mWであった。
【0053】
[実施例10]
実施例4からキャリア拡散層の成長温度を1050℃に設定し、成長V/III比を12000に上昇させ、成膜時の繰り返し周期を30周期実施した。上記のように形成された窒化物半導体積層体を、高分解能HRTEM測定によって評価したところ、キャリア拡散層の膜厚は3原子層厚みであった。また、APT法によってAl組成を評価したところ、キャリア拡散層のAl組成は60%であった。また、HRTEMによって得られた原子像からc面に対する傾きを算出したところ、78°であった。このようにして得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は6.6V、ピーク波長265nmにおける発光強度が43mWであった。
【0054】
[実施例11]
実施例4からキャリア拡散層の成長温度を1030℃に設定し、成長V/III比を12000に上昇させ、成膜時の繰り返し周期を27周期実施した。上記のように形成された窒化物半導体積層体を、高分解能HRTEM測定によって評価したところ、キャリア拡散層の膜厚は3原子層厚みであった。また、APT法によってAl組成を評価したところ、キャリア拡散層のAl組成は60%であった。また、HRTEMによって得られた原子像からc面に対する傾きを算出したところ、73°であった。このようにして得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は6.9V、ピーク波長265nmにおける発光強度が36mWであった。
【0055】
[実施例12]
実施例4からキャリア拡散層の成長温度を1100℃に設定し、成長V/III比を1500に減少させ、成膜時の繰り返し周期を45周期実施した。上記のように形成された窒化物半導体積層体を、高分解能HRTEM測定によって評価したところ、キャリア拡散層の膜厚は3原子層厚みであった。また、APT法によってAl組成を評価したところ、キャリア拡散層のAl組成は60%であった。また、HRTEMによって得られた原子像からc面に対する傾きを算出したところ、88°であった。このようにして得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は6.8V、ピーク波長265nmにおける発光強度が48mWであった。
【0056】
[実施例13]
実施例4からキャリア拡散層の成長温度を1120℃に設定し、成長V/III比を1500に減少させ、成膜時の繰り返し周期を50周期実施した。上記のように形成された窒化物半導体積層体を、高分解能HRTEM測定によって評価したところ、キャリア拡散層の膜厚は3原子層厚みであった。また、APT法によってAl組成を評価したところ、キャリア拡散層のAl組成は60%であった。また、HRTEMによって得られた原子像からc面に対する傾きを算出したところ、93°であった。このようにして得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は7.1V、ピーク波長265nmにおける発光強度が39mWであった。
【0057】
[比較例1]
厚さが550μmのc面AlN基板(転位密度1×104cm-2以下)に対して、有機金属気相成長(MOCVD)装置を用いて、1300℃においてアニール処理が行われた。次に、ホモエピタキシャル層であるAlN層が、1200℃において、500nmの厚さで形成された。このとき、V/III比は50であった。また、真空度は50mbarであった。また、成長レートは0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)が用いられた。また、N原料としてアンモニア(NH3)が用いられた。
上記のように形成されたAlN層上に第1導電型窒化物半導体層が形成された。第1導電型窒化物半導体層は、Siをドーパント不純物として用いたn型AlGaN層(Al:70%)である。n型AlGaN層は、1080℃の温度で、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で500nmの厚さで成膜された。このときの成長レートは0.5μm/hrであった。また、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)が用いられた。また、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)が用いられた。また、N原料としてアンモニア(NH3)が用いられた。また、Si原料としてモノシラン(SiH4)が用いられた。
上記のように形成されたn型AlGaN層上に発光層が形成された。発光層は、量子井戸層と量子障壁層とを5周期積層させた多重量子井戸構造を有するように成膜された。ここで、量子井戸層は、3.0nmの厚さを有するAlGaN(Al:52%)、すなわちAl0.52Ga0.48Nである。また、6.0nmの厚さを有する量子障壁層は、AlGaN(Al:75%)、すなわちAl0.75Ga0.25Nである。発光層は、真空度を50mbarに設定し、V/III比を4000とした条件で製膜された。このときの量子井戸層の成長レートは0.18μm/hrであった。
上記のように形成された発光層上に電子ブロック層が成膜された。電子ブロック層は、AlGaN(Al:85%)である。上記のように形成された電子ブロック層上に組成傾斜層が成膜された。組成傾斜層は(Al:85%から30%)まで傾斜され、その膜厚は35nmである。また、組成傾斜層上にp型GaN層である第2導電型窒化物半導体層を形成した。このように、AlN基板上に、窒化物半導体積層体が形成された。
得られた窒化物半導体積層体をドライエッチングすることによって、n型AlGaN層の一部が露出した。露出したn型AlGaN層上に、Ti、Al、NiおよびAuを含む合金電極(n型電極に相当)が形成された。また、p型GaN層(第2導電型窒化物半導体層)上に、NiおよびAuを含む合金電極(p型電極に相当)が形成された。AlN基板を、厚さが100μmになるように研削した後に、ダイシングにより窒化物半導体素子の個片へと分割した。得られた紫外線発光素子を、電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は8.2V、ピーク波長265nmにおける発光強度が18mWであった。
【0058】
[比較例2]
実施例4からキャリア拡散層のAl組成を20%とし、原子厚みを5原子層にした以外は同じ条件で得られた窒化物半導体素子を電流100mAで駆動させたところ、駆動電圧は8.7V、ピーク波長265nmにおける発光強度が16mWであった。
【0059】
【表1】
【0060】
本開示は、以上に記載した実施形態および変形例に限定されうるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様は本開示の範囲に含まれる。
図1
図2