(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】遺体ホテル運営システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20231121BHJP
A01N 1/00 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
G06Q50/10
A01N1/00
(21)【出願番号】P 2019200913
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】516217309
【氏名又は名称】株式会社クーロン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】阪口 茂
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-324140(JP,A)
【文献】特開2012-252590(JP,A)
【文献】特開2019-036023(JP,A)
【文献】特開2019-024874(JP,A)
【文献】特開2018-061831(JP,A)
【文献】特開2002-279086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体安置サービス
で用いられる遺体ホテルおよびコンピュータシステムにより構成される遺体ホテル運営システムであって、
前記遺体安置サービスは、
前記遺体ホテルの運営に携わる少なくとも1つの運営業者が、複数の葬儀業者を遺体ホテルの契約者として登録するとともに、前記複数の葬儀業者の中から一の葬儀業者を選択して葬儀の依頼者に斡旋し、
前記登録および斡旋された葬儀業者が、前記遺体ホテルへの遺体の搬入および搬出を実行または手配し、前記遺体ホテルの利用時に前記運営業者に利用料を支払うことにより運営されるサービスであり、
前記コンピュータシステムは、
前記遺体ホテルの利用に係る情報を収集し、前記運営業者の管理下に置かれたコンピュータに転送する利用情報収集手段と、
前記コンピュータ上で、前記収集された情報を一元管理する利用情報管理手段と、を備え、
前記利用情報収集手段が、
前記遺体ホテルへの遺体の搬入および/または搬出、前記遺体ホテルに搬入された遺体の当該遺体ホテル内での移動、および前記遺体ホテル内での所定の人の移動を監視し記録する監視装置
と、
前記遺体ホテルの利用に係る情報を利用登録情報として登録する利用登録端末と、を有し、
前記利用情報管理手段が、
前記監視装置により記録された情報および前記利用登録情報を、前記遺体ホテルの利用履歴として所定の記録媒体に保存する利用履歴保存手段と、
前記記録媒体に保存された情報を閲覧可能な形式で提供する閲覧表示手段と、
前記記録媒体に保存された利用履歴に基づいて、参照目的ごとに利用履歴を集計し、当該集計した結果を前記記録媒体に保存する集計手段と、を有する
ことを特徴とする遺体ホテル運営システム。
【請求項2】
前記監視装置が、
前記遺体ホテルに搬入された遺体に取り付けられ、当該遺体を他の遺体と識別するための遺体識別情報が記録される遺体識別情報記録器と、
前記遺体識別情報記録器に前記遺体識別情報を書き込む遺体識別情報書込器と、
前記遺体識別情報記録器が取り付けられた遺体が前記遺体ホテル内の所定の場所を通過する場合に、当該遺体識別情報記録器に記録されている遺体識別情報を検出する遺体識別情報検出器と、
前記遺体識別情報検出器が検出した遺体識別情報に基づき、前記所定の場所を通過する遺体を識別する遺体識別器と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の遺体ホテル運営システム。
【請求項3】
前記監視装置が、
前記遺体ホテルへの来訪者の認証用情報を登録する認証用情報登録器と、
前記来訪者が前記遺体ホテル内の特定の場所を通過する場合に、当該来訪者の認証用情報を検出する認証用情報検出器と、
前記認証用情報検出器が検出した認証用情報を、前記認証用情報登録器により登録された認証用情報と比較して、前記特定の場所を通過する来訪者の認証を行う認証判別器と、を有する
ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の遺体ホテル運営システム。
【請求項4】
前記遺体ホテルが、複数の遺体を同時に保存するための複数遺体保存装置を備え、
前記複数遺体保存装置は、
外部環境から断熱された、複数の遺体を同時に収納可能な第1庫内空間を画定する遺体収納庫と、
前記第1庫内空間に冷気を循環させて前記第1庫内空間の温度をマイナスの設定温度に制御する庫内温度制御手段と、
前記第1庫内空間に静電波を放出する静電波放出手段と、を有して構成される
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の遺体ホテル運営システム。
【請求項5】
前記遺体ホテルが、単独の遺体を保存するための単独遺体保存装置を備え、
前記単独遺体保存装置は、
外部環境から断熱された、単独の遺体を収納可能な第2庫内空間を画定する遺体収納庫と、
前記第2庫内空間に冷気を循環させて前記第2庫内空間の温度をマイナスの設定温度に制御する庫内温度制御手段と、
前記第2庫内空間に静電波を放出する静電波放出手段と、を有して構成される
ことを特徴とする請求項
4に記載の遺体ホテル運営システム。
【請求項6】
前記遺体ホテルが、前記単独遺体保存装置の遺体収納庫内に収納された遺体と面会者が面会するための面会用スペースを備える
ことを特徴とする請求項
5に記載の遺体ホテル運営システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体安置サービスを提供するための遺体ホテル運営システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に都市部では、火葬場や斎場の混雑により、臨終から火葬までの期間が長期化する傾向にある。また住宅事情の変化により、火葬を待つ間、自宅に遺体を安置できないケースも増えている。このような問題への解決策として、近年、遺体安置ビジネスへの関心が高まっている。
【0003】
遺体ホテルは、遺体を適切な環境下に安置することにより、そのままの姿で長期間保存する施設である。遺体の保存方法として最も一般的なのは、棺内にドライアイスを置いて毎日交換する方法であるが、ドライアイスによる長期間の冷却はコストが嵩むことが知られている。
【0004】
遺体の長期保存に適した設備としては、例えば特許文献1に、複数の遺体を凍結しない状態(氷点下非凍結状態)で保存することができる複数遺体保存装置が開示されている。この装置は、断熱された収納庫内に冷気を循環させて庫内空間をマイナス温度に保ちながら、その庫内空間に静電気(静電波)を放出し、水分子に電子微細振動を与えることで、氷点下の環境に安置された遺体を凍結させることなく保存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
遺体の一時預かりを行う業者は、従来は葬儀の専門業者、すなわち葬儀社、斎場、火葬場に限られていた。しかし、保存期間の長期化、保存技術の進歩、終活ブームに伴う葬儀の多様化により、これまで葬儀と無縁だった業者が、遺体安置ビジネスに関心を示し始めている。今後は、例えば、冷却設備の提供および保守管理を行う設備業者、ポータルサイトを介して各種サービスの紹介・斡旋を行う斡旋業者、土地活用に関心のある不動産業者など、葬儀に直接関わることがない業者が、遺体ホテルの運営に関わるようになることが予想される。複数多業種の業者が運営に関わる場合、遺体ホテルの利用に係る情報を効率的に参照し、業者間で情報を共有するためのしくみが必要になる。
【0007】
ここで、多業種の業者が運営に関わる場合、各業者が利用情報を参照する目的は必ずしも同じではない。例えば、葬儀に直接関わる業者は、指定日に間違いなく遺体が搬入出されたことを確認するために利用情報を参照するであろう。利用申込みの窓口となる業者は請求書を発行する目的で利用情報を参照し、収益を得ることのみを目的として運営に参画する業者は稼働率や売上げを確認するために利用情報を参照するであろう。あるいは、遺体ホテルの警備に関わる業者が、不正利用を防止するために、利用情報を確認する場合もあるだろう。
【0008】
本発明は、上記のように複数多業種の業者が協働して遺体ホテルを運営する場合に、遺体ホテルの利用情報を一元的に管理し、活用しやすい形式で提供するためのしくみを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、遺体安置サービスで用いられる遺体ホテルおよびコンピュータシステムにより構成される遺体ホテル運営システムである。遺体安置サービスでは、まず、遺体ホテルの運営に携わる少なくとも1つの運営業者が、複数の葬儀業者を遺体ホテルの契約者として登録する。ここで「葬儀業者」とは、葬儀に直接関わる業者を意味し、葬儀社のほか斎場なども含むものとする。運営業者は、一方で、複数の葬儀業者の中から一の葬儀業者を選択して葬儀の依頼者に斡旋する。登録および斡旋された葬儀業者は、遺体ホテルへの遺体の搬入および搬出を実行または手配し、遺体ホテルの利用時に運営業者に利用料を支払う。
【0010】
遺体ホテル運営システムのコンピュータシステムは、上記遺体安置サービスを提供するにあたり、遺体ホテルの利用に係る情報を収集し、運営業者の管理下に置かれたコンピュータに転送する利用情報収集手段と、そのコンピュータ上で、収集された情報を一元管理する利用情報管理手段とを備える。
【0011】
利用情報収集手段として、遺体ホテルへの遺体の搬入および/または搬出、遺体ホテルに搬入された遺体の遺体ホテル内での移動、および遺体ホテル内での所定の人の移動を監視し記録する監視装置を有することが好ましい。搬入と搬出は両方とも監視することが望ましいが、いずれか一方のみの監視でもよい。
【0012】
監視装置は、例えば、遺体ホテルに搬入された遺体に取り付けられ、当該遺体を他の遺体と識別するための遺体識別情報が記録される遺体識別情報記録器と、遺体識別情報記録器に遺体識別情報を書き込む遺体識別情報書込器と、遺体識別情報記録器が取り付けられた遺体が遺体ホテル内の所定の場所を通過する場合に、遺体識別情報記録器に記録されている遺体識別情報を検出する遺体識別情報検出器と、遺体識別情報検出器が検出した遺体識別情報に基づき、前記所定の場所を通過する遺体を識別する遺体識別器と、を有して構成される。このような監視装置としては、例えば、無線通信によりタグやカードに識別情報を書き込んだり読み出したりすることが可能なRFID(Radio Frequency Identifier)等の情報通信システムを用いることができる。
【0013】
監視装置は、遺体ホテルへの来訪者の認証用情報を登録する認証用情報登録器と、来訪者が遺体ホテル内の特定の場所を通過する場合に、当該来訪者の認証用情報を検出する認証用情報検出器と、認証用情報検出器が検出した認証用情報を、認証用情報登録器により登録された認証用情報と比較して、前記特定の場所を通過する来訪者の認証を行う認証判別器と、を有する構成としてもよい。このような監視装置としては、例えば、顔認証や指紋認証、静脈認証、虹彩認証等の生体認証システムを用いることができる。また、ID情報を記録したICカード等により認証を行う認証システムを用いることもできる。
【0014】
利用情報収集手段として、例えば、遺体ホテルの利用に係る情報を利用登録情報として登録する利用登録端末を有することが好ましい。また、利用情報管理手段としては、以下に説明するような利用履歴保存手段および閲覧表示手段を備えることが好ましい。
【0015】
利用登録端末は、例えば、遺体ホテルの出入口付近に設置されるパソコンあるいはタブレット等であり、遺体ホテルの利用に係る情報を利用登録情報として登録する。ここで、利用に係る情報とは、例えば、契約者名、利用者名、利用開始日、利用終了日などである。利用登録情報は、例えば入力画面において所定の入力操作を行うことにより登録する。
【0016】
利用履歴保存手段と閲覧表示手段は、遺体ホテルの運営に関わるいずれかの業者の管理下に置かれたコンピュータ上に、プログラムとして実装される。利用履歴保存手段は、監視装置により取得された情報と、利用登録端末により取得された利用登録情報を、遺体ホテルの利用履歴として所定の記録媒体に保存する。閲覧表示手段は、記録媒体に保存され
た情報を閲覧可能な形式で提供する。閲覧表示手段は、例えばログイン認証により閲覧を制限できるWebサイトなどとすることが好ましい。
【0017】
また、上記遺体ホテル運営システムは、記録媒体に保存された利用履歴に基づいて、参照目的ごとに利用履歴を集計する集計手段を備えることが好ましい。この際、集計された結果は、利用履歴が記録されていたのと同じ記録媒体に保存されることが好ましい。ここで「参照目的ごとに」とは、利用情報を参照する目的が業種ごと業者ごとに異なるため、それぞれの業者が必要とする集計結果を提供するという意味である。
【0018】
また、遺体ホテルは、搬入された遺体を所定期間保存するために、以下に説明するような複数遺体保存装置や単独遺体保存装置を備えることが好ましい。また、遺体ホテルは、搬入された遺体との面会を希望する面会者が遺体と面会するための面会用スペースを備えることが好ましい。
【0019】
複数遺体保存装置は、外部環境から断熱された、複数の遺体を同時に収納可能な第1庫内空間を画定する遺体収納庫と、第1庫内空間に冷気を循環させて第1庫内空間の温度をマイナスの設定温度に制御する庫内温度制御手段と、第1庫内空間に静電波を放出する静電波放出手段と、を有して構成される。
【0020】
単独遺体保存装置は、外部環境から断熱された、単独の遺体を収納可能な第2庫内空間を画定する遺体収納庫と、第2庫内空間に冷気を循環させて第2庫内空間の温度をマイナスの設定温度に制御する庫内温度制御手段と、第2庫内空間に静電波を放出する静電波放出手段と、を有して構成される。この単独遺体保存装置は、例えば、面会用スペースに設置される。面会用スペースでは、面会を希望された遺体が、例えば、単独遺体保存装置の遺体収納庫内に収納された状態で面会者との面会が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の遺体ホテル運営システムによれば、遺体ホテルの利用に係る情報は、自動的に収集され、一元的に管理され、遺体ホテルを運営または利用する業者間で、共有される。利用情報を共有し、必要に応じて参照できるようにすることで、遺体ホテルを効率的に運営することができる。また、遺体ホテルへの遺体の搬入および/または搬出、遺体ホテルに搬入された遺体の遺体ホテル内での移動、および遺体ホテル内での所定の人の移動が、監視装置により監視され記録されるので、遺体ホテルが不正利用されたり誤搬送されたりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】複数業者が遺体ホテルの運営に関わる場合の業者間の関係性を例示する図である。
【
図3】遺体ホテルの運営について説明するための図である。
【
図4】遺体ホテル運営システムの構成例を示す図である。
【
図6】複数遺体保存装置の構成例を示す斜視図である。
【
図7】複数遺体保存装置の構成例を示す平断面図である。
【
図8】単独遺体保存装置の構成例を示す斜視図である。
【
図9】単独遺体保存装置の構成例を示す縦断面図である。
【
図10】遺体ホテルに設置される監視装置の構成例を示すブロック図である。
【
図11】遺体ホテルの利用の流れを示すフローチャートである。
【
図12】契約内容を登録するマスター登録画面の一例を示す図である。
【
図14】利用履歴の一覧表示画面の一例を示す図である。
【
図15】利用履歴の個別表示画面の一例を示す図である。
【
図16】利用履歴の集計結果表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための具体的な形態について説明する。はじめに、遺体ホテルの位置づけについて、
図1を参照して説明する。
【0024】
矢印R0は、従来型の葬儀における遺体の搬送経路である。従来型の葬儀では、故人の遺体は、亡くなった場所(病院・施設等2)から故人宅3へと搬送され、故人宅3から葬儀が行われる斎場4へと搬送され、葬儀終了後に斎場4から火葬場5へと搬送されることが一般的である。
【0025】
これに対し近年、搬送経路R0とは異なる経路でご遺体が搬送されるケースも増えている。例えばマンションの管理規約により故人宅3に遺体を搬入することができず、病院・施設等2から斎場4に遺体を直接搬送するケースや、斎場4での儀式を行わず、故人宅3から火葬場5に遺体を直接搬送するケースなどがある。
【0026】
遺体ホテル1は、各搬送経路において、受け入れ先の準備が整わず、長時間(例えば、24時間以上)の待ち時間が発生してしまった場合の、遺体の一時的な受け入れ先として位置づけられる。搬送経路R1として示されるように、遺体ホテル1には、病院・施設等2、故人宅3、斎場4など、様々な場所から遺体が搬入される。また、搬送経路R2として示されるように、遺体ホテル1から搬出される遺体は、故人宅3、斎場4、火葬場5など、様々な場所に搬送される。また、遺体ホテル1が、斎場4や火葬場5とは切り離された独立した施設として運営される場合には、搬送先となる斎場4や火葬場5は1箇所とは限らない。
【0027】
遺体ホテルでは、遺体の搬入元と搬出先は上記のとおり多岐に亘る。また、遺体ホテルの利用は、突然の臨終で混乱する中、急遽決まることが少なくない。さらに、遺体ホテルの利用者である故人は、一般のホテルの宿泊者と異なり、自身の身元を自ら示すことができない。このため、遺体ホテルの運営では、遺体の取り違えや誤搬送がないよう、出入りに関して慎重な管理が求められる。
【0028】
遺体ホテルは、斎場等が単独で運営することも可能であるが、規模によっては設営コストもかかるため、複数の業者が互いに業務提携しながら運営に関わるケースが多くなることが予想される。
【0029】
図2は、複数の業者が遺体ホテルの運営に関わる場合の業者間の関係性を例示する図である。斡旋業者6は、葬儀依頼者9(遺族または生前の故人)から葬儀に関する希望を聞きとり、一緒に葬儀のプランを練り、提携している葬儀社8および斎場4の中から希望の葬儀プランを実現できる葬儀社等を選択、斡旋する。設備業者7は、土地を確保して遺体ホテルを設営し、設営後も継続的にホテル内の遺体保存設備を保守・管理する。
【0030】
同図の例では、斡旋業者6と設備業者7が遺体ホテルの運営母体となり、葬儀社8や斎場4を介して遺体安置サービスを提供する。遺体の搬送は、葬儀社8や斎場4の遺体搬送係、もしくは葬儀社8や斎場4が手配した遺体搬送業者が行う。遺体搬送業者を利用する場合、その手配は、斡旋業者6や設備業者7が行ってもよい。
【0031】
遺体安置サービスを提供するにあたり、斡旋業者6は、提携している葬儀社8や斎場4と、遺体ホテルの利用契約を締結する。利用契約が締結されると、契約者に対し、後述す
る遺体ホテル運営システムを利用するためのパスワードが発行される。遺体ホテルの利用を、利用契約を締結した葬儀社、斎場を限定し、契約により予め利用条件を定めておくことで、急な利用申込みにも対応できるようにするためである。さらには、遺体ホテルへの遺体の搬入出を、契約者とその関係者に限定することで、遺体ホテルが不正に利用されることを防止するためでもある。
【0032】
図3は、遺体ホテルの運営について説明するための図である。葬儀依頼者9からの葬儀依頼を受けると、斡旋業者6は葬儀社8を斡旋し、葬儀依頼者9と葬儀社8の間で葬儀契約が結ばれる。葬儀社8により、遺体ホテル1の利用が必要と判断された場合、遺体は搬送元から遺体ホテル1へと搬送される。遺体の搬送は、葬儀社8の係が自ら実行する場合と、葬儀社8が手配した搬送業者81が行う場合がある。遺体ホテル1が利用された場合、遺体ホテル1の運営者(斡旋業者6および設備業者7)から葬儀社8に対し、利用料が請求され、葬儀社8から運営者側に利用料が支払われる。これにより運営者側が得た収益は、運営に関わる業者間で分配される。
【0033】
ここで、運営者が利用料の請求を行うためには、遺体ホテルの利用者、利用日、利用日数などを、正確に把握する必要がある。遺体ホテルの利用情報の収集・管理は、人手により行うこともできなくはないが、遺体ホテル運営の効率化を図るためには、運営者側が遺体ホテルの利用状況を把握するための何らかのシステムが必要である。
【0034】
図4に、本発明の一実施形態における遺体ホテル運営システムの概要を示す。遺体ホテル運営システム10は、遺体ホテル1に設置される監視装置11および利用登録端末12と、斡旋業者6または設備業者7の元で管理される履歴管理装置15とにより構成される。監視装置11、利用登録端末12および履歴管理装置15は、インターネット等のネットワークを介して接続されている。遺体ホテル1の主な設備としては、監視装置11と利用登録端末12のほかに、遺体収納庫13と面会室14がある。
【0035】
図5に、遺体ホテルの構成例を示す。遺体ホテル1は、例えば、斎場等の施設の建築物内に設置されるか、そのような施設に付属する建築物として、あるいは施設とは独立した単独の建築物として設置される。遺体ホテル1は、遺体ホテル1に遺体を搬入出するための遺体搬入出口101と、遺体との面会を希望する人などが遺体ホテル1に出入りするための面会者出入口103を備える。遺体搬入出口101と面会者出入口103には、遺体搬入出口扉102と面会者出入口扉104が、それぞれ開閉可能に設けられる。遺体ホテル1の内部には、遺体保存スペース105、遺体面会スペース106、遺体移動スペース107、面会待機スペース108および受付事務スペース109が設けられている。
【0036】
遺体保存スペース105は、遺体ホテル1に搬入された遺体を保存するために他のスペースと区画されたスペースであり、そこに、複数の遺体を同時に保存可能な複数遺体保存装置200(詳細後述)が設置されている。遺体面会スペース106は、遺体との対面を希望する遺族その他関係者(総称して「面会者」と称する)が遺体と会えるようにするために他のスペースと区画されたスペースであり、
図4に示した面会室14を構成する。この遺体面会スペース106は、面会時に使用される単独遺体保存装置300(詳細後述)を設置できるように構成されている。遺体移動スペース107は、遺体搬入出口101と遺体保存スペース105と遺体面会スペース106との間で、遺体を移動させる際に利用するスペースである。面会待機スペース108は、面会者が遺体との面会前に待機するスペースであり、面会者が座る椅子等が適宜設置される。
【0037】
遺体保存スペース105と遺体移動スペース107との間には、遺体移動スペース107から遺体保存スペース105に出入りする際に開閉される第1区画扉121が設けられており、遺体面会スペース106と遺体移動スペース107との間には、遺体移動スペー
ス107から遺体面会スペース106に出入りする際に開閉される第2区画扉122が設けられている。遺体面会スペース106と面会待機スペース108との間には、面会待機スペース108から遺体面会スペース106に出入りする際に開閉される第3区画扉123が設けられている。なお、遺体保存スペース105と遺体面会スペース106との間に別の区画扉を設け、その区画扉を開閉して遺体保存スペース105から遺体面会スペース106に直接出入りできるようにしてもよい。受付事務スペース109は、遺体の搬入出者や面会希望者が遺体ホテル1を利用するための受付けを行うスペースであり、そこで、受付事務を行う事務員が待機できるように構成されている。遺体移動スペース107と受付事務スペース109との間には、遺体搬入出者用の第1受付カウンタ124が設けられており、面会待機スペース108と受付事務スペース109との間には、面会者用の第2受付カウンタ125が設けられている。
【0038】
図6および
図7に、複数遺体保存装置の構成例を示す。複数遺体保存装置200は、複数遺体保存装置200は、外部環境から断熱された、複数の遺体を同時に収容可能な庫内空間(第1庫内空間)を画成する遺体収納庫210と、遺体収納庫210内に設置された6個の遺体載置用ラック220を備えている。遺体収納庫210には、開口部211,212が設けられており、それぞれの開口部211,212には、開口部開閉用の扉213,214が設置されている。また、開口部211,212の前面下部には、遺体収納庫210が設置される床面(遺体保存スペース105の床面)と遺体収納庫210内の床面との段差を無くすためのスロープ215,216がそれぞれ設置されている。遺体収納庫210内の床面には、遺体収納庫210の長手方向に沿って直線的に、互いに平行に延びる2本の軌道部241が設けられている。
【0039】
各遺体載置用ラック220は、3段の棚部(図示せず)を備えている。遺体は、棺内に収納(納棺)された状態、または、遺体載置トレイTRに寝具等を介して載置された状態で、各棚部上に載置、収納される。遺体収納庫210に対する遺体の搬入・搬出、および各棚部に対する遺体の出し入れは、遺体搬送用の移動架台250を用いて行われる。移動架台250は、4個の車輪(図示せず)を備えており、種々の場所に自在に移動できる。遺体収納庫210内において、6個の遺体載置用ラック220は、並列状態で一列に並んで2本の軌道部241上に設置されている。各遺体載置用ラック220は、軌道部241に載る車輪(図示せず)を備えており、それぞれが独立して、軌道部241上を遺体収納庫210の長手方向に沿って移動できる。
【0040】
遺体収納庫210内には、2個の冷却ユニット270が設置されている。この冷却ユニット270は、庫内温度制御手段を構成するものであり、前面部に送風口及び吸気口(いずれも図示せず)を備えるとともに、内部に冷却器やブロアファン等(いずれも図示せず)を備えている。冷却ユニット270は、庫内空間に送り込む冷気の温度や冷気の量を調整しながら庫内空間内に冷気を循環させることにより、庫内空間内の温度が、-5℃から0℃の範囲内の所定の温度となるように制御する。
【0041】
遺体収納庫210内には、18個の静電波放出器281が、6個の遺体載置用ラック220の周囲に設置されている。また、遺体収納庫210の外部上面には、6個の電場制御装置282が並んで設置されている。静電波放出器281および電場制御装置282は、静電波放出手段を構成するものであり、電気的に互いに接続されている。そして、電場制御装置282の作動によって、静電波放出器281から静電波(静電気)を放出して、対向する庫内空間に電場を形成する。また、遺体収納庫210内には、3個の除菌・脱臭機器285が設置されている。この除菌・脱臭器285は、庫内空間にオゾンを放出して、庫内空間における細菌の除菌(殺菌)および臭気の脱臭を行う。
【0042】
複数遺体保存装置200では、遺体収納庫210により画成された、外部環境から断熱
された庫内空間内において、複数の遺体が、棺に入れられた状態または遺体載置トレイTRに載置された状態で、遺体載置用ラック220に収納される。また、複数の遺体が収納された庫内空間内に冷気を循環させて庫内空間の温度を-5℃から0℃の範囲内の設定温度に制御するとともに、静電波放出器281から庫内空間に静電波を放出して庫内空間に電場を形成するので、複数の遺体をマイナスの温度環境下で冷却しながらも非凍結状態で良好に保存することができる。
【0043】
図8および
図9に、単独遺体保存装置の構成例を示す。単独遺体保存装置300は、外部環境から断熱された、単独の遺体を棺CKに入れられた状態で収容可能な庫内空間(第2庫内空間)を画成する遺体収納庫310を備えている。遺体収納庫310の上面部には、遺体収納庫310の内部を覗くための窓部Wが揺動開閉可能に設けられている。遺体収納庫310の下部には、ストッパ機構付きの6個の車輪320(手前の3個のみを図示)が設けられており、各車輪320の回転により遺体保存装置300(遺体収納庫310)を移動させることが可能となっている。遺体収納庫310の左側面部を構成するパネル部材311は、上開きに揺動開閉可能に形成されている。
【0044】
遺体収納庫310には、3個の冷気生成吹出装置330が設置されている。この冷気生成吹出装置330は、遺体収納庫310の側面部を貫通するように設けられており、内部に、サーモモジュールと送風ファン(いずれも図示せず)を備えている。そして、サーモモジュールにより生成された冷気を、送風ファンによって遺体収納庫310内に吹き出すとともに、サーモモジュールにより生成された暖気を外部吹出口331から遺体収納庫310外に吹き出すように構成されている。
【0045】
遺体収納庫310には、制御ユニット340も設置されている。この制御ユニット340は、その筐体内に、冷気生成吹出装置330に対し電源を供給する電源装置341、庫内空間の設定温度を指定するための操作盤342、電場制御装置343等を収納保持して構成されている。電源装置341および操作盤342は、冷気生成吹出装置330と共に庫内温度制御手段を構成する。冷気生成吹出装置330は、電源装置341からの供給電源により駆動し、庫内空間に吹き出す冷気の温度や冷気の量を調整しながら、庫内空間内に冷気を循環させることにより、庫内温度が、操作盤342によって指定された温度(-5℃から0℃の範囲内の所定温度に指定される)となるように制御する。
【0046】
遺体収納庫310の庫内側の上面には、静電波放出器350が2位置にそれぞれ設置されている。静電波放出器350は、上述の静電波放出器281と同様の構成のものであり、電場制御装置343と共に静電波放出手段を構成する。また、遺体収納庫310の庫内側の上面には、遺体の頭部を上方から照明する照明灯351と、庫内空間にオゾンを放出して除菌・脱臭を行う除菌・脱臭器352と、紫外線を遺体に照射する医療用の殺菌灯353も設置されている。
【0047】
遺体収納庫310の庫内側底面には、棺CKが載置される24個の円筒ローラ360(
図9において手前側の8個のみを図示)が、遺体収納庫310の長手方向に沿って8個ずつ3列に配置されている。各円筒ローラ360は、パネル部材311を開けて庫内空間へ棺CKを出し入れする際に棺CKの下面と当接する、回転自在に支持された円筒状のローラ部を有しており、円筒ローラ360上に載置された棺CKを、ローラ部の回転によって軽い力で移動させることができるようになっている。
【0048】
単独遺体保存装置300では、遺体収納庫310により画成された、外部環境から断熱された庫内空間に、単独の遺体が棺CKに入れられた状態で、あるいは遺体載置トレイTRに載置された状態で収納される。また、遺体が収納された庫内空間に冷気を循環させて庫内空間の温度を-5℃以上0℃未満の設定温度に制御するとともに、静電波放出器34
1から庫内空間に静電波を放出して庫内空間に電場を形成するので、遺体をマイナスの温度環境下で冷却しながらも遺体を非凍結状態で良好に保存することができる。単独遺体保存装置300は、遺体面会スペース106での遺体と遺族等との面会において利用される。面会対象となる遺体は、複数遺体保存装置200の遺体収納庫210から単独遺体保存装置300の遺体収納庫310に移され、非凍結状態に保存された状態のまま遺族等との面会が行われる。
【0049】
図10に、遺体ホテルに設置される監視装置の構成例を示す。監視装置11は、遺体ホテルへの遺体の搬入および搬出と、遺体ホテルに搬入された遺体のホテル内での移動と、遺体ホテル内での遺体搬送者や遺体との面会者等の移動とを、それぞれ監視して記録する機能を備えている。監視装置11は、遺体監視装置111、来訪者監視装置113および映像監視装置115から構成される。
【0050】
遺体監視装置111は主に、遺体ホテルへの遺体の搬入出と遺体ホテル内での遺体の移動を監視する装置であり、遺体識別情報記録器111a、遺体識別情報書込器111b、遺体識別情報検出器111cおよび遺体識別器111dを備えている。遺体識別情報記録器111aは、遺体ホテルに搬入された遺体を他の遺体と識別するための遺体識別情報を記憶する機能を有しており、遺体の手首や足首等に着脱可能(例えば留め具付きバンド状)に構成されている。遺体識別情報書込器111bは、遺体識別情報記録器111aへの遺体識別情報の書込み(書替え)や消去する機能を有している。遺体識別情報検出器111cは、遺体識別情報記録器111aに記録されている遺体識別情報を検出する機能を有している。遺体識別器111dは、遺体識別情報検出器111cが検出した遺体識別情報に基づき、遺体を判別する機能を有している。
【0051】
遺体識別情報記録器111a、遺体識別情報書込器111b、および遺体識別情報検出器111cとしては、それぞれ、RFIDシステムにおいて利用されるRFタグ、RFライタ、およびRFリーダを用いることができる。RFタグは必要な遺体識別情報を記憶可能なメモリやICチップを搭載しており、RFライタ、RFリーダとの無線通信によって遺体識別情報の読出し・書替えが可能である。遺体識別器111dとしては、表示画面、入力インタフェースを備えたパソコンやタブレット端末を用いることができる。本実施形態では、利用登録端末12を遺体識別器111dとして兼用する。
【0052】
遺体識別情報書込器111bと、遺体識別器111dとして使用される利用登録端末12は、例えば
図5に示すように、第1受付カウンタ124上に設置される。また、遺体識別情報記録器111aは、遺体識別情報が消去された状態で、1個または複数個が第1受付カウンタ124上に置かれる。一方、遺体識別情報検出器111cは、遺体ホテル1内の所定の場所、例えば、第1区画扉121近傍の遺体保存スペース105側の天井部分と、第2区画扉122近傍の遺体面会スペース106側の天井部分とに設置される。利用登録端末12(遺体識別器111d)は、表示画面、入力インタフェースを備えたパソコンまたはタブレット端末であり、以下に説明する機能を実現するためのプログラムが組み込まれている。利用登録端末12は、遺体の搬入(チェックイン)時や搬出(チェックアウト)時に、契約者(葬儀社、斎場等)、利用者名(故人名)、遺体搬入出者名、利用開始日、利用終了日(予定日)等の入力画面を表示し、同画面で入力された情報を利用登録情報として保存する。これらの情報の入力は、遺体搬入出者が行ってもよいし、受付事務員が行ってもよい。
【0053】
利用登録が完了すると、利用登録端末12は、保存された利用登録情報を、ネットワークを介してリアルタイムに履歴管理装置15に転送する。また、利用登録情報のうち、利用者(故人)名の情報等が遺体識別情報として遺体識別情報書込器111bに転送される。この遺体識別情報は、遺体識別情報記録器111aにより遺体識別情報記録器111a
に書き込まれ、遺体識別情報が書き込まれた遺体識別情報記録器111aが遺体に取り付けられる。また、利用登録端末12は、利用者(故人)名、利用開始日、利用終了日が記載された名札ラベル(図示せず)を、端末に接続されたラベルプリンタ(図示せず)に出力する。出力された名札ラベルは遺体の胸などに貼り付けられ、遺体ホテル1内における遺体の識別や管理に利用される。
【0054】
遺体識別情報を記憶した遺体識別情報記録器111aが取り付けられた遺体が、遺体保存スペース105に出入りする際には、その遺体識別情報が、第1区画扉121の近傍に設置された遺体識別情報検出器111cにより検出される。同様に、遺体が、遺体面会スペース106に出入りする際には、その遺体識別情報が、第2区画扉122の近傍に設置された遺体識別情報検出器111cにより検出される。検出された遺体識別情報は、リアルタイムに利用登録端末12(遺体識別器111d)に転送され、その遺体識別情報に基づき利用登録端末12が遺体を判別する。また、利用登録端末12は、判別した遺体が第1区画扉121や第2区画扉122を通過したことや通過時刻等の情報を、当該遺体による遺体ホテル1の利用情報(以下「第1監視情報」と称する)として記録する。この第1監視情報は、遺体が取り違えられて誤搬出されることを防止するために利用することができる。例えば、遺体ホテル1から遺体を搬出するために、当該遺体を複数遺体保存装置200から出して第1区画扉121を通過させる際に取得される第1監視情報に基づき判別された遺体の情報が、チェックアウトのために利用登録端末12に入力された遺体の情報と異なる場合には、利用登録端末12が画面表示や音声出力より警告を行う。これにより、遺体が誤搬出される可能性を確実に低減することができる。なお、遺体識別情報検出器111cは、遺体ホテル1から遺体が搬出される際に、当該遺体から取り外されて返却される。
【0055】
図10に戻り来訪者監視装置113は主に、遺体ホテルへの来訪者(遺体搬入出者や面会者)の遺体ホテル内での移動を監視する装置であり、認証用情報登録器113a、認証用情報検出器113bおよび認証判別器113cを備えている。認証用情報登録器113aは、来訪者を他の人物と識別して認証することが可能な認証用情報を登録する機能を有している。認証用情報検出器113bは、来訪者の認証用情報を検出する機能を有している。認証判別器113cは、認証用情報検出器113bが検出した認証用情報を、認証用情報登録器111aにより登録された認証用情報と比較して、来訪者の認証を行う機能を有している。
【0056】
認証用情報登録器113aおよび認証用情報検出器113bとしては、生体認証システムの1つとして知られる指静脈認証システムにおける指静脈読取装置を用いることができる。指静脈読取装置は、所定位置に置かれた指に近赤外光を照射することによって指の静脈パターンを読み取ったり、読み取った指の静脈パターンを認証のため登録したりすることができる。認証判別器113cとしては、表示画面、入力インタフェースを備えたパソコンやタブレット端末を用いることができる。本実施形態では、利用登録端末12を認証判別器113cとして兼用する。
【0057】
認証用情報登録器113aと、認証判別器113cとして使用される利用登録端末12は、例えば
図5に示すように、第1受付カウンタ124上と第2受付カウンタ上とに設置される。一方、認証用情報検出器113bは、遺体ホテル1内の特定の場所、例えば、遺体移動スペース105側における第1区画扉121の側方と、面会待機スペース108側における第3区画扉123の側方とに設置される。第1受付カウンタ124上の認証用情報登録器113aは、遺体の搬入時や搬出時に、遺体搬入出者の生体情報(指の静脈パターン)を読取り、それを遺体搬入出者の認証用情報として登録し、登録した認証用情報を第1受付カウンタ124上の利用登録端末12(認証判別器113c)に転送する。第1受付カウンタ124上の利用登録端末12は、登録された認証用情報を遺体搬入出者名と
関連付け、当該遺体搬入出者による遺体ホテル1の利用情報(以下「第2監視情報」と称する)として保存する。
【0058】
第2受付カウンタ125上の利用登録端末12(認証判別器113c)は、遺体と面会する面会者の氏名、面会対象となる遺体の故人名等の入力画面を表示し、同画面で入力された情報を保存する。第2受付カウンタ125上の認証用情報登録器113aは、面会者の指の静脈パターンを読取り、それを面会者の認証用情報として登録し、登録した認証用情報を第2受付カウンタ125上の利用登録端末12(認証判別器113c)に転送する。第2受付カウンタ125上の利用登録端末12は、登録された認証用情報を、面会者名および面会対象となる遺体の情報(遺体搬入時に登録済みの情報)等と関連付け、当該面会者による遺体ホテル1の利用情報(以下「第3監視情報」と称する)として保存する。面会に際し必要とされる情報の入力は、面会者が行ってもよいし、受付事務員が行ってもよい。
【0059】
遺体搬入出者が、遺体保存スペース105に入る際には、自身の認証用情報(指の静脈パターン)を第1区画扉121の脇に設置された認証用情報検出器113bに読み取らせる。認証用情報検出器113bは、読み取った認証用情報を第1受付カウンタ124上の利用登録端末12(認証判別器113c)に転送する。当該利用登録端末12は、転送された認証用情報を登録済みの認証用情報と比較して、第1区画扉121を通り遺体保存スペース105に入ろうとする遺体搬入出者の認証を行う。また、利用登録端末12は、遺体搬入出者を認証できた場合には、第1区画扉121の開扉(ロック解除)を許可し、遺体搬入出者が遺体保存スペース105内に入れるようにする。また、利用登録端末12は、第1区画扉121の開扉を許可したことや許可した時刻等の情報を、認証した遺体搬入出者の情報等と関連付け、当該遺体搬入出者による遺体ホテル1の利用情報(以下「第4監視情報」と称する)として保存する。一方、遺体搬入出者を認証できない場合には、第1区画扉121の開扉を許可せず、遺体搬入出者が遺体保存スペース105内に入れないようにする。なお、遺体保存スペース105内の第1区画扉121の近傍にも認証用情報検出器113bを設置し、遺体搬入出者が遺体保存スペース105から出る場合にも同様の認証作業を行うようにしてもよい。
【0060】
面会者が、遺体との面会のため遺体面会スペース106に入る際には、自身の認証用情報(指の静脈パターン)を第3区画扉123の脇に設置された認証用情報検出器113bに読み取らせる。認証用情報検出器113bは、読み取った認証用情報を第2受付カウンタ125上の利用登録端末12(認証判別器113c)に転送する。当該利用登録端末12は、転送された認証用情報を登録済みの認証用情報と比較して、第3区画扉123を通り遺体面会スペース106に入ろうとする面会者の認証を行う。また、利用登録端末12は、面会者を認証できた場合には、第3区画扉123の開扉(ロック解除)を許可し、面会者が遺体面会スペース106内に入れるようにする。また、利用登録端末12は、第3区画扉123の開扉を許可したことや許可した時刻等の情報を、認証した面会者の情報等と関連付け、当該面会者による遺体ホテル1の利用情報(以下「第5監視情報」と称する)として保存する。一方、面会者を認証できない場合には、第3区画扉123の開扉を許可せず、面会者が遺体面会スペース106内に入れないようにする。なお、遺体面会スペース106内の第3区画扉123の近傍にも認証用情報検出器113bを設置し、遺体搬入出者が遺体面会スペース106から出る場合にも同様の認証作業を行うようにしてもよい。
【0061】
図10に戻り映像監視装置115は、遺体ホテルにおける来訪者や遺体(総称して「被写体」とも称する)を映像により監視する装置であり、映像撮影器115aおよび映像記録通信器115bを備えている。映像撮影器115aは、例えばビデオカメラであり、遺体ホテル内の映像を撮影する機能を有する。映像記録通信器115bは、映像撮影器11
5aにより撮影された映像(映像データ)をディスク等に記憶する機能と、記憶した映像を履歴管理装置15(
図4を参照)に転送するための通信機能を備える。映像記録通信器115bとしては、このような機能を有するパソコンやタブレット端末を用いることができる。本実施形態では、第2受付カウンタ125上の利用登録端末12を映像記録通信器115bとして兼用する。
【0062】
映像撮影器115aは、例えば
図5に示すように、遺体搬入出者等の顔を識別できる程度に高精細な映像を取得できるよう、遺体移動スペース107内の複数箇所(遺体搬入出口101の近傍、第1区画扉121および第2区画扉122の近傍、第1区画扉121と対向する壁面の3箇所)に設置され、設置位置から臨む所定範囲内の映像を撮影する。また、映像撮影器115aは、面会等の顔の映像を取得するため、面会待機スペース107内にも(面会者出入口103と対向する壁面の隅部に1箇所)設置される。各映像撮影器115aにより撮影された監視映像は、第2受付カウンタ125上の利用登録端末12(映像記録通信器115b)により、遺体ホテル1の利用情報(以下「第6監視情報」と称する)として保存されるとともに、映像記録通信器115bからネットワークを介して履歴管理装置15に転送される。監視映像(第6監視情報)の転送は、リアルタイムに、もしくは所定期間ごとに定期的に行われる。
【0063】
利用登録情報や第1~第6監視情報が,利用登録端末12から転送される履歴管理装置15(
図4を参照)は、ネットワークに接続されたコンピュータであり、斡旋業者6または設備業者7の社屋内に設置される。但し、設置場所は特に問わないため、レンタルサーバなどでもよい。履歴管理装置15には、コンピュータを、以下に説明する利用履歴保存手段16、マスター登録手段17、集計手段18および閲覧表示手段19として機能させるためのプログラムが組み込まれている。
【0064】
利用履歴保存手段16は、遺体ホテルから転送された利用登録情報および第1~第6監視情報を、別個に、または関連づけて、遺体ホテルの利用履歴情報として、予め構築されたデータベース20に登録する。マスター登録手段17は、後述するマスター登録画面を表示し、同画面で入力された契約内容、例えば契約者名、閲覧時パスワード、1日あたりの利用料(利用単価)等をデータベース20に登録する。マスター登録画面では、遺体ホテルが複数の業者により運営される場合、それぞれの手数料率(全体の収益に対するその業者の取り分)を登録することもできる。
【0065】
集計手段18は、利用履歴情報とマスター登録された契約内容に基づいて、請求金額や売上金額を集計する。請求書の発行を目的とした集計では、契約者である葬儀社・斎場ごとに利用履歴を集計し、月ごとの請求金額を算出する。遺体ホテル運営の利回りの確認を目的とした集計では、ホテルごとに利用履歴を集計し、月ごとの売上金額や利回りを算出する。また、遺体ホテルが複数の業者により運営される場合には、全ての利用履歴を集計した上で、業者ごとにその業者の収益を算出する。集計結果は、データベースに保存され、定期的に更新される。
【0066】
閲覧表示手段19は、データベースに保存された情報を、インターネットを介して閲覧可能にする手段であり、具体的にはWebサイトとして実装される。Webサイトのログイン画面では、マスター登録画面において登録されたIDとパスワードの入力が求められる。
【0067】
ログイン認証が完了すると、閲覧者の端末のブラウザ画面に、監視情報D1~D6、利用登録情報、各種集計結果等が、表示される。但し、閲覧できる情報の内容および様式は、閲覧者ごとに異なる。例えば、遺体ホテルの運営者である斡旋業者6および設備業者7はすべての情報を閲覧することができるが、葬儀社8や斎場4の担当者は、自身が利用登
録をした遺体の利用情報しか閲覧することができない。
【0068】
図11は、遺体ホテルの利用の流れを、システムの動作と関連づけて示したフローチャートである。前述のとおり、遺体ホテルを利用するためには事前の契約が必要であり、契約が締結された段階でマスター登録が行われる(S101)。
【0069】
遺体ホテルの利用を開始するときは、遺体の搬入者が利用登録端末12でチェックイン操作を行う(S102)。チェックイン操作で入力された利用登録情報は、履歴管理装置15に転送され、利用履歴として記録される(S103)。遺体ホテルの利用を終了するときは、遺体の搬出者が利用登録端末でチェックアウト操作を行う(S104)。チェックアウト操作が行われると、チェックアウトをした利用者の情報が履歴管理装置15に転送され、チェックアウトしたことが利用履歴として記録される(S105)。
【0070】
利用履歴の集計は、予め設定した曜日等にシステムにより自動的に実行される。但し、手動操作により閲覧者が所望する集計処理ができるようにしてもよい。(S106)。ステップS106の利用履歴集計が行われた後は、収集された個々の利用履歴のみならず、集計結果も、閲覧可能となる(S107)。
【0071】
図12は、ステップS101のマスター登録を行う画面の一例を示す図である。マスター登録画面21には、ID、契約者名、パスワード、契約者の連絡先、基本利用料(利用単価)、手数料率を入力する枠31~37が配置されている。各項目の入力後、画面下に配置される登録ボタン22をクリックすると、マスター登録が完了し、画面上に新規登録のための一列分の入力枠が追加される。
【0072】
マスター登録画面21において設定されたID31とパスワード33は、利用情報を閲覧する際のログイン認証に用いられる。基本利用料35や手数料率36は、集計時の計算に用いられる。
【0073】
停止チェックボタン38は、契約が終了した契約者について、遺体ホテル運営システムの利用を停止する場合に使用する。停止チェックボタン38のチェックにより利用を一時的に停止しておけば、再度契約が締結された際の登録入力の負担を軽減することができる。
【0074】
図13は、ステップS102のチェックインの際、利用登録端末12が表示する利用登録画面の一例を示す図である。利用登録画面23には、自動的に付与される利用番号41と、契約者名、利用者名、喪主連絡先、搬送担当業者、利用開始日、利用終了日、利用日数、基本利用料、合計金額、備考を入力または表示するための枠32,35、42~49が配置されている。搬送担当業者枠44には、業者名だけではなく搬送担当者(遺体の搬入出者)の氏名も入力できるようになっている。
【0075】
契約者名の入力枠32では、マスター登録された契約者の名称がドロップダウンリストとして表示される。ドロップダウンリストでは、マスター登録されていない業者もしくは停止ボタンにチェックがついている業者は、選択することができない。契約者名を選択すると、基本利用料の入力枠35に、その契約者のマスター登録で登録された基本利用料の額が表示される。
【0076】
利用開始日、利用終了日の入力枠45、46では、日付がリスト表示またはカレンダー表示され、選択操作により開始日、終了日を登録することができる。利用開始日と利用終了日が入力されると、利用日数の入力枠47に自動的に利用日数が表示され、その利用日数と枠35の基本利用料から自動計算された合計金額が、枠48に表示される。契約者名
、利用者名、利用開始日、利用終了日の入力後に、画面上の確認画面へボタン22をクリックすると、確認画面へと表示が切り替わり、確認画面上にある確認ボタンを押すと、利用登録が完了する。
【0077】
図14は、閲覧表示手段19により表示される画面の一例であり、利用履歴を一覧表示する画面である。この利用履歴一覧表示画面25は、1件の利用ごとに、利用番号41、契約者名32、利用開始日45、利用終了日46、利用日数47、利用者名42、搬送担当業者44、基本利用料35、合計金額48が横並びに表示され、列ごとにその列の右端に表示ボタン26、修正ボタン27、削除ボタン28が表示される。
【0078】
表示ボタン26がクリックされると、
図15に示すような利用履歴の個別表示画面29が表示される。個別表示画面29では、利用登録画面23において登録された内容がそのまま表示される。
【0079】
修正ボタン27がクリックされると、利用登録端末が表示する利用登録画面23と同じ仕様の修正画面が現れる。修正画面の各項目枠には、先に登録された内容が編集可能な状態で表示されている。修正したい項目を編集し、画面上の確定ボタンをクリックすると、データベースに記録されている利用登録情報が、修正後の内容に更新される。
【0080】
削除ボタン28がクリックされると、画面上から該当する列の表示が消え、同時にデータベースに記録されている利用登録情報のうち該当する情報が削除される。
【0081】
図16に、閲覧表示手段19により表示される画面の、他の例を示す。
図14と
図15の画面は、利用履歴保存手段16が保存した情報を表示形式を整えてほぼそのまま表示したものであるが、
図16に示す画面は、集計手段18が出力した集計結果を表示する画面である。
【0082】
売上集計画面60では、利用履歴が契約者ごとに分類され、利用料の合計金額のみならず、斡旋業者6の手数料率と、その手数料率で計算された手数料、すなわち斡旋業者の売上額が表示される。延べ利用日数、合計利用料および合計手数料は、契約者ごとに集計されて小計欄61に表示され、さらに3社分の小計61を集計した延べ日数、合計利用料および合計手数料が総計欄62に表示される。
【0083】
売上集計画面60に表示される情報は、画面上のExcel出力ボタン63をクリックすることで、Excel形式のデータとして出力ことができる。出力されたExcelデータは、他のソフトに取り込んで、請求書の発行や毎月の売上管理に活用することができる。
【0084】
図16に例示する画面は、利用情報の参照目的が、斡旋業者6の売上げ確認である場合に適しているが、この画面では設備業者7の売上げは確認することができない。一般に、利用情報の参照目的は、運営側か利用側かによって異なるものであり、同じ運営側でも業者ごとに異なっている。このため、本実施形態のシステムでは、集計手段18は、利用情報の参照目的に応じて複数種類の集計処理を選択的に実行し、閲覧表示手段19も、利用情報の参照目的に応じて画面表示を選択的に切り替えるように設計されている。
【0085】
例えば、設備業者7の売上確認用の画面として、
図16の売上確認画面60における手数料率を差し替えた集計画面を表示する。また、運営する遺体ホテルが複数ある場合、ホテル別の売上確認画面として、利用履歴をホテルごとに分類して集計した画面を表示する。集計方法および閲覧画面の仕様は、遺体ホテルを運営または利用する者の要望に応じてカスタマイズすることができる。
【0086】
以上に、利用登録情報とその集計結果を表示する画面を例示したが、閲覧表示手段19により表示される情報としては、利用登録情報以外に、監視装置11により取得された第1~第6監視情報がある。前述のとおり、第1~第6監視情報は、利用履歴としてデータベース20に保存されているため、閲覧表示手段19は、第1~第6監視情報も画面に表示することができる。例えば、
図15の個別表示画面29を表示するときに、その個別表示画面に表示される利用開始日から利用終了日までに取得された第1~第6監視情報を、あわせて表示するようにしてもよい。第1~第6監視情報を表示することにより、遺体ホテルの利用状況(遺体の移動状況や面会状況)を的確に把握することができる。また、遺体ホテルが不正に利用されることを抑止することもできる。
【0087】
また、利用登録情報を集計する集計手段18とは別に、映像(第6監視情報)を加工する加工手段(図示せず)を設け、加工した動画または静止画をデータベース20に保存しておいてもよい。例えば、映像データに顔識別処理を施して、搬送係の顔部分のみを静止画像として抽出し、個別表示画面29と並べて表示してもよい。
【0088】
データベース20に保存される利用履歴の集計、加工、その他の活用方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、遺体ホテル運営システムを提供または利用する者の要望に応じて適宜カスタマイズすることが好ましい。
【符号の説明】
【0089】
1 遺体ホテル
10 遺体ホテル運営システム
11 監視装置
20 データベース
21 マスター登録画面
23 利用登録画面
25 利用履歴一覧表示画面
29 利用履歴個別表示画面
60 売上集計画面
200 複数遺体保存装置
300 単独遺体保存装置