(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20231121BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60C11/03 C
B60C11/12 C
B60C11/03 300C
(21)【出願番号】P 2019224623
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇揮
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184666(JP,A)
【文献】特開平11-129709(JP,A)
【文献】特開平04-138902(JP,A)
【文献】特開2016-000578(JP,A)
【文献】特開2001-294023(JP,A)
【文献】特開2013-103567(JP,A)
【文献】特開2018-079741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ赤道からタイヤ幅方向の外側に向けて延び、前記タイヤ幅方向に対して傾斜する複数の傾斜溝と、
複数の傾斜溝によって区画される複数の陸部と、を備え、
前記陸部は、前記傾斜溝同士を接続する陸溝と、前記陸溝によって区画され、前記タイヤ幅方向で並ぶ複数のブロックと、を備え、
複数のブロックは、最も前記タイヤ幅方向の外側に配置されるショルダーブロックを含み、
前記ショルダーブロックは、第1の幅を有する複数の第1サイプと、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2サイプと、を備え、
前記第2サイプは、前記陸溝に連接され、且つ、タイヤ周方向において前記複数の第1サイプに挟まれるように、配置され
、
前記ショルダーブロックは、前記陸溝に面し且つ互いに交差して連接する第1及び第2幅縁部を備え、
前記第1及び第2幅縁部は、それぞれ前記サイプに連接される、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2サイプは、前記陸溝から、少なくとも接地端まで延びる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1幅縁部が前記タイヤ幅方向に対して傾斜する側は、前記第2幅縁部が前記タイヤ幅方向に対して傾斜する側と、反対である、請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数のサイプの少なくとも一つは、前記陸溝に連接される第1直線部と、接地端を含む第2直線部と、を備え、
前記第1直線部が前記タイヤ幅方向と交差する角度は、前記第2直線部が前記タイヤ幅方向と交差する角度と、異なる、請求項1~
3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、空気入りタイヤは、タイヤ幅方向に対して傾斜する複数の傾斜溝と、複数の傾斜溝によって区画される複数の陸部とを備えている(例えば、特許文献1)。陸部は、傾斜溝同士を接続する陸溝と、陸溝によって区画され、タイヤ幅方向で並ぶ複数のブロックとを備えている。
【0003】
複数のブロックは、最もタイヤ幅方向の外側に配置されるショルダーブロックを含んでおり、ショルダーブロックは、複数のサイプを備えている。ところで、近年、ショルダーブロックの路面に対する追従性を向上させることができる空気入りタイヤが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示の目的は、ショルダーブロックの路面に対する追従性を向上させることができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空気入りタイヤは、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の外側に向けて延び、前記タイヤ幅方向に対して傾斜する複数の傾斜溝と、複数の傾斜溝によって区画される複数の陸部と、を備え、前記陸部は、前記傾斜溝同士を接続する陸溝と、前記陸溝によって区画され、前記タイヤ幅方向で並ぶ複数のブロックと、を備え、複数のブロックは、最も前記タイヤ幅方向の外側に配置されるショルダーブロックを含み、前記ショルダーブロックは、第1の幅を有する複数の第1サイプと、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2サイプと、を備え、前記第2サイプは、前記陸溝に連接され、且つ、タイヤ周方向において前記複数の第1サイプに挟まれるように、配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部展開図
【
図4】同実施形態に係るショルダーブロックの拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、
図1~
図4を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1は、一対のビード部(図示していない)と、各ビード部からタイヤ径方向の外側に延びるサイドウォール部(図示していない)と、一対のサイドウォール部のタイヤ径方向の外端部に連接され、外表面がトレッド面2aを構成するトレッド部2とを備えている。
【0010】
なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着されており、タイヤ1の内部は、空気により加圧されている。そして、タイヤ1の用途は、特に限定されないが、本実施形態に係るタイヤ1は、スノー路面及びドライ路面の両方で用いられる、所謂、オールシーズン用のタイヤである。
【0011】
各図において、第1の方向D1は、タイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D2である。なお、タイヤ径方向とは、タイヤ1の直径方向のことである。
【0012】
また、タイヤ赤道面とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面であって、タイヤ赤道面と直交する面のことである。なお、タイヤ赤道L1は、タイヤ赤道面のうち、トレッド面2aと交差する線である。
【0013】
タイヤ幅方向D1において、内側とは、タイヤ赤道L1に近い側となり、外側とは、タイヤ赤道L1から遠い側となる。また、タイヤ幅方向D1のうち、一方側D1aは、第1幅方向側D1aといい、他方側D1bは、第2幅方向側D1bという。
【0014】
タイヤ周方向D2のうち、一方側D2aは、第1周方向側D2aといい、他方側D2bは、第2周方向側D2bという。特に限定されないが、本実施形態においては、第1周方向側D2aは、車両が前進する際の回転方向、即ち、タイヤ1の回転方向である。これにより、本実施形態においては、第1周方向側D2aは、踏込側であり、第2周方向側D2bは、蹴出側となる。
【0015】
また、
図2に示すように、第1幅方向側D1aに行くにつれて、第1周方向側D2aへ向かう側(及び、第2幅方向側D1bへ行くにつれて、第2周方向側D2bへ向かう側)D3は、第1傾斜側D3という。また、
図3に示すように、第1幅方向側D1aに行くにつれて、第2周方向側D2bへ向かう側(及び、第2幅方向側D1bに行くにつれて、第1周方向側D2aへ向かう側)D4は、第2傾斜側D4という。
【0016】
そして、「タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側が同じである」とは、同じ傾斜側(例えば、第1傾斜側D3,D3同士、第2傾斜側D4,D4同士)であることをいう。即ち、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角度が異なっていても、同じ傾斜側D3,D3(D4,D4)であれば、「タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側が同じである」に含まれる。
【0017】
また、「タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側が反対である」とは、反対の傾斜側(第1傾斜側D3と第2傾斜側D4)であることをいう。即ち、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角度が同じであっても、反対の傾斜側D3,D4であれば、「タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側が反対である」に含まれる。
【0018】
図1に戻り、トレッド面2aは、路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外側端は、接地端2b,2bという。また、当該接地面は、タイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面2aを指す。
【0019】
正規リムは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1ごとに定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRA及びETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0020】
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」である。なお、タイヤ1が乗用車用である場合には、180kPaとし、さらに、Extra Load又はReinforcedと記載されたタイヤ1である場合には、220kPaとする。
【0021】
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には内圧の対応荷重の88%とする。
【0022】
トレッド部2は、タイヤ幅方向D1の中央に配置されるセンター主溝3と、センター主溝3からタイヤ幅方向D1の外側に向けて延び、タイヤ幅方向D1に対して傾斜する傾斜溝4,5とを備えている。センター主溝3は、一つのみ備えられており、傾斜溝4,5は、複数備えられている。
【0023】
センター主溝3は、タイヤ周方向D2に延びている。具体的には、センター主溝3は、タイヤ周方向D2に対して平行に延びている。そして、センター主溝3は、タイヤ赤道L1上に配置されている。なお、センター主溝3は、タイヤ周方向D2に沿ってジグザグ状に延びている、という構成でもよい。また、センター主溝3は、備えられていなくてもよい。
【0024】
傾斜溝4,5は、少なくともタイヤ赤道L1から接地端2bまで延びている。具体的には、傾斜溝4,5は、センター主溝3から、少なくとも接地端2bまで延びている。そして、複数の傾斜溝4,5は、センター主溝3から第1幅方向側D1aに向けて延びる第1傾斜溝4と、センター主溝3から第2幅方向側D1bに向けて延びる第2傾斜溝5とを含んでいる。
【0025】
傾斜溝4,5は、タイヤ幅方向D1の外側に行くにつれて、第2周方向側D2bに向けて延びている。具体的には、第1傾斜溝4は、タイヤ幅方向D1の外側、即ち、第1幅方向側D1aに行くにつれて、第2周方向側D2bに向けて延びており、第2傾斜溝5は、タイヤ幅方向D1の外側、即ち、第2幅方向側D1bに行くにつれて、第2周方向側D2bに向けて延びている。
【0026】
これにより、第1傾斜溝4がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4は、第2傾斜溝5がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D3と、反対である。具体的には、第1傾斜溝4の傾斜側D4は、第2傾斜側D4であり、第2傾斜溝5の傾斜側D3は、第1傾斜側D3である。そして、第1傾斜溝4と第2傾斜溝5とは、タイヤ周方向D2で交互に配置されている。
【0027】
なお、特に限定されないが、センター主溝3及び傾斜溝4,5は、例えば、接地端2b,2b間の距離(タイヤ幅方向D1の寸法)の3%以上の溝幅を有している、という構成でもよい。また、特に限定されないが、センター主溝3及び傾斜溝4,5は、例えば、5mm以上の溝幅を有している、という構成でもよい。
【0028】
また、トレッド部2は、センター主溝3と複数の傾斜溝4,4(5,5)とによって区画される複数の陸部6を備えている。複数の陸部6は、タイヤ周方向D2で隣接される一対の第1傾斜溝4,4とセンター主溝3とによって区画される第1陸部6と、タイヤ周方向D2で隣接される一対の第2傾斜溝5,5とセンター主溝3とによって区画される第2陸部6とを含んでいる。
【0029】
陸部6は、傾斜溝4,4(5,5)同士を接続する陸溝7と、陸溝7によって区画され、タイヤ幅方向D1で並ぶ複数のブロック8,9,10とを備えている。本実施形態においては、それぞれの陸部6において、陸溝7は、二つ備えられ、ブロック8,9,10は、三つ備えられている。
【0030】
複数のブロック8,9,10は、タイヤ幅方向D1の内側から、センターブロック8、クオーターブロック9、ショルダーブロック10という。即ち、複数のブロック8,9,10は、最もタイヤ幅方向D1の内側に配置されるセンターブロック8と、最もタイヤ幅方向D1の外側に配置されるショルダーブロック10と、センターブロック8とショルダーブロック10との間に配置されるクオーターブロック9とを含んでいる。
【0031】
なお、特に限定されないが、本実施形態においては、陸部6の陸溝7がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D3(D4)は、傾斜溝4(5)がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4(D3)と、反対である。具体的には、第1傾斜溝4の傾斜側が第2傾斜側D4であることに対して、第1陸部6の陸溝7の傾斜側は、第1傾斜側D3であり、一方、第2傾斜溝5の傾斜側が第1傾斜側D3であることに対して、第2陸部6の陸溝7の傾斜側は、第2傾斜側D4である。
【0032】
そして、本実施形態においては、傾斜溝4,5がタイヤ幅方向D1に対して傾斜する角度は、タイヤ幅方向D1の外側に行くにつれて、小さくなっている。なお、傾斜溝4,5の構成は、斯かる構成に限定されない。
【0033】
図4に示すように、ショルダーブロック10は、タイヤ周方向D2において、端部領域10a,10aと中央領域10bとに区分けされる。具体的には、端部領域10a及び中央領域10bは、ショルダーブロック10の接地領域(接地端2bからタイヤ幅方向D1の内側の領域)に対して、周方向D2の各端点10c,10c間を三等分して区分けされている。なお、
図4において、各領域10a,10b間の境界は、破線で示されている。
【0034】
そして、ショルダーブロック10は、複数のサイプ11,12を備えている。なお、サイプ11,12とは、2.0mm以下の幅を有する凹部のことであり、陸溝7とは、2.0mmを越える幅を有する凹部のことである。なお、サイプ11,12の個数は、特に限定されないが、本実施形態においては、3つであり、それにより、ショルダーブロック10は、サイプ11,12によって分断されるブロック片10dを4つ備えている。
【0035】
複数のサイプ11,12は、陸溝7に連接されている。これにより、接地した際に、陸溝7に連接されているサイプ11,12の端部が、開き易いため、サイプ11,12が閉じることを抑制することができる。これにより、サイプ11,12のエッジ効果を十分に発揮させることができる。
【0036】
複数のサイプ11,12は、第1の幅を有する複数の第1サイプ(「標準サイプ」ともいう)11と、第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2サイプ(「幅広サイプ」ともいう)12とを含んでいる。特に限定されないが、例えば、第2の幅は、第1の幅の1.5倍~3.0倍としてもよい。また、特に限定されないが、例えば、第1の幅は、0.5mm~0.8mmとしてもよく、また、例えば、第2の幅は、0.8mm~2.0mmとしてもよく、また、0.8mm~1.2mmとしてもよい。
【0037】
また、特に限定されないが、サイプ11,12の幅は、サイプ11,12の全長に亘って、一定(同じだけでなく、製造誤差を含む略同じも含む)としてもよい。また、複数の第1サイプ11,11同士間において、幅(第1の幅)は、例えば、同じであってもよく、また、例えば、異なっていてもよい。特に限定されないが、本実施形態においては、ショルダーブロック10のサイプ11,12のうち、最も幅広なサイプ12が、第2サイプ12である。
【0038】
そして、第2サイプ12は、タイヤ周方向D2において複数の第1サイプ11,11に挟まれるように、配置されている。しかも、第2サイプ12は、接地端2bまで延びている。具体的には、第2サイプ12は、接地端2bよりも、タイヤ幅方向D1の外側まで延びている。これにより、ショルダーブロック10は、第2サイプ12によって分断されている。したがって、ショルダーブロック10の路面に対する追従性を効果的に向上させることができる。
【0039】
その結果、ショルダーブロック10の路面に対する追従性を向上させるために、ショルダーブロック10にサイプ11,12を数多く設ける必要がないため、ショルダーブロック10の剛性を低下させることを抑制することができる。したがって、例えば、スノー路面性能を向上させることができたり、また、例えば、ドライ路面性能が低下することを抑制することができたりする。
【0040】
特に限定されないが、第2サイプ12の少なくとも一部は、ショルダーブロック10の中央領域10bに配置されていることが好ましい。本実施形態においては、第2サイプ12の全部は、ショルダーブロック10の中央領域10bに配置されている。これにより、ショルダーブロック10は、第2サイプ12によって、タイヤ周方向D2の中央領域10bで分断されている。したがって、ショルダーブロック10の路面に対する追従性を効果的に向上させることができる。
【0041】
また、複数のサイプ11,12は、直線状に延びる直線サイプと、屈曲を有する屈曲サイプとを含んでいる。屈曲サイプは、両方の端部に直線部を備えており、直線部間に複数の曲線の屈曲部を備えている。なお、屈曲サイプは、全長に亘って複数の屈曲部を備えていてもよく、屈曲部は、直線の屈曲、即ち、屈折して形成されていてもよい。
【0042】
特に限定されないが、本実施形態においては、第1サイプ11は、全て屈曲サイプとしている。また、特に限定されないが、本実施形態においては、第2サイプ12は、直線サイプとしている。斯かる構成によれば、第2サイプ12の幅(第2の幅)が大きいことに対して、サイプ長さが直線で短くなるため、ショルダーブロック10の剛性が低下することを抑制することができる。
【0043】
また、第2サイプ12は、陸溝7に連接される第1直線部12aと、第1直線部12aに傾斜して交差する第2直線部12bと、第2直線部12bに傾斜して交差する第3直線部12cとを備えている。そして、第2サイプ12は、陸溝7に連接される溝連接部12dと、接地端2bに位置する接地端部12eとを備えている。
【0044】
なお、溝連接部12dは、第1直線部12aの端部に配置されており、接地端部12eは、第2直線部12bの中途部に配置されている。これにより、溝連接部12d(即ち、第1直線部12a)がタイヤ幅方向D1に対して交差する第1角度θ1(≦90°)は、接地端部12e(即ち、第2直線部12b)がタイヤ幅方向D1に対して交差する第2角度θ2(≦90°)と、異なっている。
【0045】
これにより、第1直線部12aが閉じ易い方向の力は、第2直線部12bが閉じ易い方向の力と、異なる。したがって、第2サイプ12に対して所定方向の力が作用した場合に、第2サイプ12の一方の直線部12a(12b)が閉じても、他方の直線部12b(12a)が閉じないため、第2サイプ12の全体が閉じてしまうことを抑制することができる。その結果、例えば、第2サイプ12の少なくとも一部のエッジ効果を常に発揮させることができる。
【0046】
なお、特に限定されないが、第1角度θ1と第2角度θ2との差は、3°~30°とすることができる。また、特に限定されないが、第1角度θ1及び第2角度θ2は、それぞれ0°~30°とすることができる。また、特に限定されないが、本実施形態においては、第1角度θ1は、第2角度θ2よりも、大きくなっている。
【0047】
また、ショルダーブロック10は、陸溝7に面し且つ互いに交差して連接する第1幅縁部10e,10e及び第2幅縁部10fを備えている。特に限定されないが、本実施形態においては、第1幅縁部10e,10eは、一対備えられており、第2幅縁部10fは、一対の第1幅縁部10e,10eに挟まれるように、配置されている。
【0048】
そして、第1幅縁部10e,10e及び第2幅縁部10fは、それぞれサイプ11,12に連接されている。特に限定されないが、本実施形態においては、第1幅縁部10eは、第1サイプ11に連接されており、第2幅縁部10fは、第2サイプ12に連接されている。このように、第1幅縁部10eが延びる方向が、第2幅縁部10fが延びる方向と、異なっているため、第1サイプ11の端部が開き易い力の方向は、第2サイプ12の端部が開き易い力の方向と、異なっている。
【0049】
しかも、第1幅縁部10eがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4は、第2幅縁部10fがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D3と、反対である。具体的には、第1幅縁部10eの傾斜側は、第2傾斜側D4であり、第2幅縁部10fの傾斜側は、第1傾斜側D3である。
【0050】
これにより、第1サイプ11の端部が開き易い力の方向は、第2傾斜側D4の方向であり、第2サイプ12の端部が開き易い力の方向は、第1傾斜側D3の方向である。したがって、さまざまな方向の力に対して、サイプ11,12の端部が開くため、さまざまな方向の力に対して、サイプ11,12のエッジ効果を有効に発揮させることができる。
【0051】
また、クオーターブロック9は、ショルダーブロック10との間に配置される陸溝7に面する幅縁部9aを備えている。そして、ショルダーブロック10が、直線である幅縁部10e,10fを複数備えていることに対して、クオーターブロック9が、直線である幅縁部9aを一つ備えている。
【0052】
これにより、クオーターブロック9及びショルダーブロック10間の陸溝7は、第2周方向側D2b側に向けて、幅広となっている。即ち、本実施形態においては、陸溝7は、踏込側から蹴出側へ向けて、幅広となっている。これにより、陸溝7の排水性能を向上させることができる。
【0053】
また、クオーターブロック9は、第1周方向側D2aに配置される第1周縁部9bと、第2周方向側D2bに配置される第2周縁部9cとを備えており、ショルダーブロック10は、第1周方向側D2aに配置される第1周縁部10gと、第2周方向側D2bに配置される第2周縁部10hとを備えている。そして、ショルダーブロック10は、クオーターブロック9の第2周縁部9cの延長線L2に対して、第2周方向側D2bに突出する突出部10iを備えている。
【0054】
これにより、突出部10iのタイヤ幅方向D1を向くエッジによって、例えば、スノー路面に対してトラクション(滑らずに引っ掛かる力)が発生する。その結果、例えば、スノー路面に対する旋回性能を向上させたり、スノー路面に対する直進時の横滑り抑止性能を向上させたりすることができる。
【0055】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道L1からタイヤ幅方向D1の外側に向けて延び、前記タイヤ幅方向D1に対して傾斜する複数の傾斜溝4,5と、複数の傾斜溝4,4(5,5)によって区画される複数の陸部6と、を備え、前記陸部6は、前記傾斜溝4,4(5,5)同士を接続する陸溝7と、前記陸溝7によって区画され、前記タイヤ幅方向D1で並ぶ複数のブロック8,9,10と、を備え、複数のブロック8,9,10は、最も前記タイヤ幅方向D1の外側に配置されるショルダーブロック10を含み、前記ショルダーブロック10は、第1の幅を有する複数の第1サイプ11と、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2サイプ12と、を備え、前記第2サイプ12は、前記陸溝7に連接され、且つ、タイヤ周方向D2において前記複数の第1サイプ11,11に挟まれるように、配置される。
【0056】
斯かる構成によれば、第2サイプ12が、陸溝7に連接されているため、接地した際に、第2サイプ12の端部が開き易いため、第2サイプ12が閉じることを抑制することができる。これにより、第2サイプ12のエッジ効果を十分に発揮させることができる。
【0057】
そして、幅の大きい第2サイプ12は、タイヤ周方向D2において第1サイプ11,11に挟まれるように、配置されている。これにより、ショルダーブロック10が第2サイプ12によってタイヤ周方向D2に分断されるため、ショルダーブロック10の路面に対する追従性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記第2サイプ12は、前記陸溝7から、少なくとも接地端2bまで延びる、という構成である。
【0059】
斯かる構成によれば、ショルダーブロック10の接地する領域は、第2サイプ12によって、タイヤ幅方向D1の全長に亘って分断される。これにより、ショルダーブロック10の路面に対する追従性を効果的に向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記ショルダーブロック10は、前記陸溝7に面し且つ互いに交差して連接する第1及び第2幅縁部10e,10fを備え、前記第1及び第2幅縁部10e,10fは、それぞれ前記サイプ11,12に連接される、という構成である。
【0061】
斯かる構成によれば、第1及び第2幅縁部10e,10fが交差して連接しているため、第1幅縁部10eが延びる方向は、第2幅縁部10fが延びる方向と、異なっている。これにより、第1幅縁部10eに連接されるサイプ11の端部が開き易い力の方向は、第2幅縁部10fに連接されるサイプ12の端部が開き易い力の方向と、異なっている。
【0062】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記第1幅縁部10eが前記タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4は、前記第2幅縁部10fが前記タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D3と、反対である、という構成である。
【0063】
斯かる構成によれば、第1幅縁部10eが延びる方向の傾斜する側D4は、第2幅縁部10fが延びる方向の傾斜する側D3と、反対である。これにより、第1幅縁部10eに連接されるサイプ11の端部が開き易い力の方向は、第2幅縁部10fに連接されるサイプ12の端部が開き易い力の方向と、大きく異なっている。
【0064】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数のサイプ11,12の少なくとも一つ12は、前記陸溝7に連接される第1直線部12aと、接地端2bを含む第2直線部12bと、を備え、前記第1直線部12aが前記タイヤ幅方向D1と交差する角度θ1は、前記第2直線部12bが前記タイヤ幅方向D1と交差する角度θ2と、異なる、という構成である。
【0065】
斯かる構成によれば、第1直線部12aがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1が、第2直線部12bがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2と、異なるため、第1直線部12aが閉じ易い方向の力は、第2直線部12bが閉じ易い方向の力と、異なる。これにより、サイプ12に対して所定方向の力が作用し、一方の直線部12a(12b)が閉じた場合でも、他方の直線部12b(12a)が閉じないため、サイプ12の全体が閉じてしまうことを抑制することができる。
【0066】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0067】
(1)空気入りタイヤ1においては、第2サイプ12の深さは、例えば、第1サイプ11の深さと、同じとしてもよく、また、例えば、第1サイプ11の深さよりも、深くしてもよい。また、ショルダーブロック10の剛性が低下することを抑制するために、第2サイプ12の深さは、例えば、第1サイプ11の深さよりも、浅くしてもよい。
【0068】
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1サイプ11は、陸溝7に連接され、且つ、接地端2bまで延びている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1サイプ11は、陸溝7から離れている、という構成でもよい。また、例えば、第1サイプ11は、接地端2bから離れている、という構成でもよい。
【0069】
(3)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸部6は、傾斜溝4,4(5,5)同士を接続する陸溝7,7を二つ備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、陸部6は、傾斜溝4,4(5,5)同士を接続する陸溝7,7を一つ又は三つ以上備えている、という構成でもよく、それにより、ブロック8,9,10を二つ又は四つ以上備えている、という構成でもよい。
【0070】
(4)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1サイプ11は、第2サイプ12に対して、第1周方向側D2a及び第2周方向側D2bにそれぞれ一つずつ配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1サイプ11は、第2サイプ12に対して、第1周方向側D2aに複数配置されている、という構成でもよい。また、例えば、第1サイプ11は、第2サイプ12に対して、第2周方向側D2bに複数配置されている、という構成でもよい。
【0071】
(5)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第2サイプ12は、陸溝7から、接地端2bのタイヤ幅方向D1の外側まで延びている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第2サイプ12は、接地端2bまで延びていない、即ち、接地端2bから離れている、という構成でもよい。
【0072】
(6)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ショルダーブロック10は、陸溝7に面する直線の幅縁部10e,10fを複数備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、ショルダーブロック10は、陸溝7に面する直線の幅縁部10e(10f)を一つ備えている、という構成でもよい。
【0073】
(7)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1幅縁部10eがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4は、第2幅縁部10fがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D3と、反対である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1幅縁部10eの傾斜側D4(D3)は、第2幅縁部10fの傾斜側D4(D3)と、同じである、という構成でもよい。
【0074】
(8)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝7に連接される第1直線部12aがタイヤ幅方向D1と交差する第1角度θ1は、接地端2bを含む第2直線部12bがタイヤ幅方向D1と交差する第2角度θ2と、異なる、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1角度θ1は、第2角度θ2と同じである、という構成でもよい。しかも、例えば、第1直線部12aと第2直線部12bとは、一直線となるように連接されている、という構成でもよい。
【0075】
(9)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝7に連接される第1直線部12aは、接地端2bを含む第2直線部12bと、連接されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0076】
例えば、陸溝7に連接される第1直線部12aは、別の直線部と交差するように連接され、接地端2bを含む第2直線部12bは、当該別の直線部と交差するように連接されている、という構成でもよい。即ち、第1直線部12aと第2直線部12bとの間に、少なくとも一つの直線部又は屈曲部が設けられている、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…空気入りタイヤ、2…トレッド部、2a…トレッド面、2b…接地端、3…センター主溝、4…第1傾斜溝、5…第2傾斜溝、6…陸部、7…陸溝、8…センターブロック、9…クオーターブロック、9a…幅縁部、9b…第1周縁部、9c…第2周縁部、10…ショルダーブロック、10a…端部領域、10b…中央領域、10c…端点、10d…ブロック片、10e…第1幅縁部、10f…第2幅縁部、10g…第1周縁部、10h…第2周縁部、10i…突出部、11…第1サイプ、12…第2サイプ、12a…第1直線部、12b…第2直線部、12c…第3直線部、12d…溝連接部、12e…接地端部、D1…タイヤ幅方向、D1a…第1幅方向側、D1b…第2幅方向側、D2…タイヤ周方向、D2a…第1周方向側、D2b…第2周方向側、D3…第1傾斜側、D4…第2傾斜側、L1…タイヤ赤道