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特許7388925シート状基板の縁処理のための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】シート状基板の縁処理のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/02 20060101AFI20231121BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20231121BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B24B55/02 Z
B24B9/00 601B
B24B55/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019528645
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017063561
(87)【国際公開番号】W WO2018102327
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】62/427,293
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェームス ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェイミン
(72)【発明者】
【氏名】パニデス,イライアス
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-030051(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059389(WO,A1)
【文献】特開2013-022717(JP,A)
【文献】特開2008-290241(JP,A)
【文献】特開平06-037075(JP,A)
【文献】特表2009-521386(JP,A)
【文献】中国実用新案第205254793(CN,U)
【文献】特開2006-346803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/02
B24B 9/00
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基板の縁を処理する装置であって、
前記シート状基板の前記縁を処理する仕上げ部材、
前記仕上げ部材を回転可能に保つチャンバを画定するシュラウドであって、
第一の長縁で終端する第一の壁部、
前記第一の壁部の前記第一の長縁に対向する第二の長縁で終端する第二の壁部を含み、
前記第一の長縁と前記第二の長縁が共同して、前記チャンバに開口したスロットであって、前記仕上げ部材と相互作用する前記シート状基板の前記縁をスライド可能に受容するように構成されたスロットの少なくとも一部を画定し、
さらに、前記第一の壁部および/または前記第二の壁部が、流体を吐出する複数のノズル通路を画定し、前記第一の壁部および/または前記第二の壁部のZ方向に沿って延在する複数のノズル通路が、前記第一の長縁の開口および/または前記第二の長縁の開口で終端する、シュラウドであって、前記Z方向は、前記仕上げ部材の平面に直交する、シュラウド、および
前記第一の長縁の前記開口および/または前記第二の長縁の前記開口から突出し、前記複数のノズル通路と流体連通した通路を画定する複数の管状部材であって、冷却剤の流れを、該複数のノズル通路から前記仕上げ部材の外周方向に向かわせるように、そのうちのいくつかが周方向に突出するよう構成された、複数の管状部材、
前記チャンバと流体連通する排出通路、
該排出通路と流体連通し、前記チャンバ内を陰圧または真空にするよう構成された真空源、
を含み、
前記複数の管状部材は、該複数の管状部材のそれぞれによって開設される流路が前記仕上げ部材の外周上の一つの交点で交差するよう角度づけられ、それぞれの前記流路が交差した交点が、前記仕上げ部材の周となり、前記冷却剤の流れの崩壊が減少するよう構成され、
前記第一の長縁に対する前記複数の管状部材の配置が調整可能である、装置。
【請求項2】
前記複数の管状部材が、前記第一の長縁とは反対側の分配端で終端し、該分配端と前記仕上げ部材の間の距離が、該第一の長縁と該仕上げ部材の間の距離未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第一の壁部が、互いに反対向きの外面および内面をさらに画定し、前記第一の長縁が、該外面と該内面の間に延在し、該外面および該内面に隣接する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
シート状基板の縁を処理する方法であって、
処理装置のシュラウドのスロットを通して、かつ該シュラウドのチャンバ内に前記シート状基板の前記縁を向かわせるステップであって、前記シュラウドが、第一の長縁で終端する第一の壁部、前記第一の壁部の前記第一の長縁に対向する第二の長縁で終端する第二の壁部を含み、前記第一の長縁と前記第二の長縁が共同して前記スロットの少なくとも一部を画定し、さらに、前記第一の壁部および/または前記第二の壁部が、流体を吐出する複数のノズル通路を画定し、前記第一の壁部および/または前記第二の壁部のZ方向に沿って延在する該複数のノズル通路が、前記第一の長縁の開口および/または前記第二の長縁の開口で終端し、前記Z方向は、前記仕上げ部材の平面に直交し、前記スロットは、前記チャンバに開口し、該チャンバ内に配置された仕上げ部材と相互作用する前記シート状基板の前記縁をスライド可能に受容するように構成される、ステップ、
前記チャンバ内を陰圧または真空にするステップ、
前記上げ部材によって前記シート状基板の前記縁を処理するステップ、
前記処理するステップの間、前記第一の長縁の前記開口および/または前記第二の長縁の前記開口から突出している複数の管状部材を介して前記シート状基板の前記縁と前記仕上げ部材の間の接触面であって、前記仕上げ部材の外周方向に冷却剤の流れを向かわせるように、前記複数の管状部材のいくつかを前記外周方向に突出させるステップであって、該複数の管状部材が、前記複数のノズル通路と流体連通した中心通路を画定する、ステップ、
前記第一の長縁に対する前記複数の管状部材の配置を調整するステップを含み、
前記複数の管状部材は、前記複数の管状部材のそれぞれによって開設される流路が前記仕上げ部材の外周上の一つの交点で交差するよう角度づけられ、それぞれの前記流路が交差した交点が、前記仕上げ部材の周となるよう冷却剤の流れを向かわせて、前記冷却剤の流れの崩壊を減少させる、方法。
【請求項5】
前記調整するステップが、前記複数の管状部材の分配端と前記第一の長縁の間の距離を変えるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記調整するステップが、前記第一の長縁に対する前記複数の管状部材の中心軸の角度関係を変えるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記調整するステップが、
前記仕上げ部材の摩耗を監視するステップ、および
前記仕上げ部材の摩耗に基づいて前記第一の長縁に対する前記複数の管状部材の空間的配置を変えるステップ
を含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2016年11月29日に出願された米国仮出願第62/427,293号の優先権の利益を主張し、当該米国仮出願の内容を信頼し、下記において全て記載されているものとしてそのまま参照によって本願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本願は、概して、シート状基板の縁を処理する装置および方法に関する。より具体的には、本願は、ガラスシートの縁などの基板の縁を研削または研磨する装置および方法による冷却液の吐出に関する。
【背景技術】
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて使用されるガラスシートのような高品質の表面仕上げを必要とするガラスシートの処理は、典型的には、ガラスシートを所望の形状に切断し、次にその切断したガラスシートの縁を研削および/または研磨してあらゆる鋭い角を取り除くことを伴う。研削ステップまたは研磨ステップは、例えば、少なくとも仕上げ部材、例えば、研削ホイール、研磨ホイールなどの砥石車を含む仕上げ装置または仕上げ機械によって行うことができる。多くのこのような機械により、仕上げ部材が駆動、例えば、回転され、駆動させた仕上げ部材に仕上げ対象の縁を接触させるようにガラスシートが連続的に運搬される。この縁は、接触点で機械仕上げされる。一部の仕上げ装置は、外周上に溝を有する研削ホイールまたは研磨ホイールなどの、縁の両角を同時に機械仕上げする仕上げ部材を使用している。
【0004】
高速の処理速度および関連の材料により、ガラスシートと仕上げ部材の接触面には過剰な熱が発生する。したがって、多くのガラス縁仕上げ機械は冷却システムを組み込んでおり、概して、ガラスシートと仕上げ部材の間の接触点の領域の方に冷却剤の流れを向けるように設計されている。冷却剤は、液体、例えば、水である場合が多く、ガラスシートと仕上げ部材の接触面の領域に向かって噴霧または噴射される。
【0005】
仕上げ部材とガラスシートの必要な冷却を行うことに加えて、吐出された冷却剤は、縁仕上げ処理中に発生した粒子、例えば、ガラスの削り屑を洗い流すように有利に機能する。周囲環境の汚染を防止し、かつ、粒子を除去した後の冷却剤を再利用するために、粒子を含む冷却剤をできるだけ回収することが望ましい。したがって、多くのガラス縁仕上げ機械は、シュラウドまたはハウジング内に仕上げ部材を配置している。シュラウドの内部には真空源が流体連通しており、粒子を含む冷却剤を能動的に除去する。参考までに、シュラウドは、従来、予期されるガラスシートと仕上げ部材の接触面にごく近接した壁またはその他の囲いの機能を提供するように構成されている。したがって、冷却剤供給ラインは、典型的には、シュラウド構造自体の内側に形成され、シュラウド壁の出口オリフィスまたはノズルで終端し、概して、予期されるガラスシートと仕上げ部材の接触面の方に向けられている。通常の動作圧では、冷却剤は、噴流としてシュラウドのオリフィスまたはノズルから出ていく。広く受け入れられている一方、シュラウドおよび真空の使用により、冷却剤の最適な吐出が妨げられる場合がある。シュラウドが成す出口オリフィスは、仕上げ部材に間隙を介して効果的に固定されており、ガラスシートと仕上げ部材の接触面に比較的近いが、この出口オリフィスは、任意の噴射方向を提供するができない。また、真空による空気の高速の交差流により、作用する抗力を通して冷却剤の噴射が乱れ、誤った方向に向かう場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本願では、吐出した冷却剤と組み合わせてガラスシートの縁を仕上げるための代替的な装置および方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一部の実施形態は、ガラスシートの縁を処理する装置に関する。この装置は、仕上げ部材、シュラウド、および管状部材を含む。この仕上げ部材は、ガラスシートの縁を処理するように構成され、前記シュラウドのチャンバ内に回転可能に保たれる。前記シュラウドは、第一の長縁で終端する第一の壁部および第二の長縁で終端する第二の壁部を含む。これらの長縁は互いに対向し、共同して前記チャンバに開口したスロットの少なくとも一部を画定する。このスロットは、ガラスシートの縁をスライド可能に受容するように構成され、前記仕上げ部材との前記縁の相互作用を容易にする。前記第一の壁部は、さらに、流体を吐出するノズル通路を画定する。このノズル通路は、前記第一の長縁の開口で終端する。最後に、前記管状部材は、前記第一の長縁から突出し、前記ノズル通路と流体連通している通路を画定する。この構成により、前記ノズル通路に吐出される冷却液は、真空による交差流が存在しても前記管状部材を介して前記仕上げ部材に正確に噴射される。一部の実施形態では、前記管状部材は、前記第一の長縁とは反対側の分配端で終端する。一部の実施形態では、前記仕上げ部材と前記分配端の間の距離が、前記仕上げ部材と前記第一の長縁の間の距離未満である。その他の実施形態では、前記第一の長縁に対する前記管状部材の空間的配置が調整可能である。さらに他の実施形態では、前記壁部のうちの一方または両方に一つ以上のさらなるノズル通路が画定され、それらのさらなるノズル通路のそれぞれに一つ以上のさらなる管状部材を連携させる。
【0008】
本開示のさらに他の実施形態は、ガラスシートの縁を処理する装置に関する。この装置は、仕上げ部材、シュラウド、および管状部材を含む。この仕上げ部材は、ガラスシートの縁を処理するように構成され、前記シュラウドのチャンバ内に回転可能に保たれる。前記シュラウドは、前記チャンバに開口したスロットの少なくとも一部を画定する長縁で終端する壁部を含む。前記スロットは、ガラスシートの縁をスライド可能に受容するように構成され、前記仕上げ部材との前記縁の相互作用を容易にする。前記壁部は、流体を吐出するノズル通路をさらに画定する。このノズル通路は前記長縁の開口で終端する。前記管状部材は、前記壁部に取り外し可能に組み付けられ、前記長縁から突出する。前記管状部材は、前記ノズル通路と流体連通した通路を画定する。一部の実施形態では、前記管状部材は、ねじ接触面または圧入接触面によって前記壁部に取り外し可能に組み付けられる。
【0009】
本開示のさらに他の実施形態は、ガラスシートの縁を処理する方法に関連する。この方法は、処理装置のシュラウドのスロットを通して当該シュラウドのチャンバ内へと前記ガラスシートの前記縁を向かわせるステップを含む。前記スロットは、前記シュラウドの壁部の長縁によって少なくとも部分的に画定される。前記ガラスシートの前記縁は、前記チャンバ内に配置された仕上げ部材によって処理される。処理するステップの間、前記長縁から突出した管状部材を介して、前記ガラスシートの前記縁と前記仕上げ部材の間の接触面に冷却液の流れを向かわせる。これに関して、前記管状部材は、前記壁部内に画定されたノズル通路と流体連通している中心通路を画定する。本開示の方法により、前記管状部材は、常にかつ有益に前記冷却液を前記接触面に向かわせる。一部の実施形態では、本開示の方法は、例えば、前記仕上げ部材の摩耗に対処するために、前記長縁に対する、したがって前記仕上げ部材に対する前記管状部材の配置を調整するステップをさらに含む。
【0010】
さらなる特徴および利点は、下記の詳細な説明において述べられることになり、部分的には、その説明から当業者には直ちに明らかになり、または、下記の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含む、本願に記載の実施形態を実施することによって認識されることになるだろう。
【0011】
上記の概説および下記の詳細な説明はいずれも様々な実施形態を説明しており、請求される主題の本質および性質を理解するための概観または枠組みを提供することを意図していると理解すべきである。添付の図面は、その様々な実施形態の理解が深まるように含まれており、本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。それらの図面は、本願に記載の様々な実施形態を示し、その説明とともに、請求される主題の原理および動作の解説に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の原理に係る縁処理装置の斜視図である。
図2図1の装置の一部の単純化した断面図である。
図3】シュラウド壁部および菅状部材を含む、図1の装置の一部を拡大した斜視図である。
図4A図3のシュラウド壁部を拡大した斜視図である。
図4B図3の菅状部材を取り除いた図1の装置の一部の上面図である。
図5図3の壁部および管状部材を拡大して単純化した断面図である。
図6】本開示の原理に係る代替的な管状部材を拡大して単純化した断面図であり、図5の壁部に組み付けられている。
図7図1の装置の一部を単純化した上面図である。
図8A図1の装置の一部を拡大して単純化した断面図であり、管状部材のない冷却剤吐出流パターンを示す。
図8B図1の装置の一部を拡大して単純化した断面図であり、管状部材のある冷却剤吐出流パターンを示す。
図9A】本開示の原理に係る別の縁処理装置の一部を拡大して単純化した断面図であり、一部をブロック形態で示す。
図9B図9Aの装置を拡大して単純化した断面図であり、図9Aの配置とは異なる当該装置の管状部材部品の代替的な配置を示す。
図9C図9Aの装置を拡大して単純化した断面図であり、図9Aおよび図9Bの配置とは異なる管状部材部品の別の代替的な配置を示す。
図10】ガラスシートを処理する際の図1の装置を含むガラス縁処理システムの一部を単純化した上面図である。
図11】前記装置によって処理されているガラスシートの縁を含む、図10のシステムの一部を拡大して単純化した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これから、ガラスシートの縁などのシート状基板の縁を処理する装置および方法の様々な実施形態を詳細に参照する。可能な場合は常に、同一または類似の部分を指すために全図面を通して同一の参照番号を用いる。
【0014】
ガラスシートの縁を処理するための本開示の原理に係る装置10の一実施形態が図1に示されている。装置10は、本願ではガラスシートの縁を研削または研磨するために使用されるものとして説明するが、装置10および本開示のその他の実施形態の装置は、ポリマー、例えば、Plexi-glass(商標)、金属、またはその他のシート状基板などのその他の種類の材料を処理するために使用することもできると理解すべきである。したがって、本開示の装置10は、限定的な意味に解釈すべきではない。
【0015】
装置10は、仕上げ部材12およびシュラウド14を含む。参考までに、シュラウド14の一部は、図1において、シュラウド14内に配置された仕上げ部材12などの部品を図示するために部分的に透明なものとして描かれている。大まかに言えば、仕上げ部材12は、シュラウド14によって画定される、総体的に参照されるチャンバ16内で回転可能に保たれ、ガラスシートの縁を処理、例えば、研削または研磨するように構成されている。また、下記により詳細に説明するように、装置10は、仕上げ部材12の表面上にまたはその表面に向かって冷却剤を吐出するための図示しない一つ以上の管状部材を含む冷却液吐出システムを組み込んでいる。これに関して、装置10は、一つ以上の流入ポート18を含むことができ、流入ポート18には、加圧冷却剤源を流体連通させることができる。
【0016】
仕上げ部材12は、様々な形態をとることができ、一部の実施形態では、ガラスシートの縁を機械仕上げするのに適していることが当業者に知られている種類の砥石車、例えば、研削ホイール、研磨ホイールなどである。非限定的な例として、仕上げ部材12は、研磨粒子または研磨媒体を埋め込みまたは担持したボンドホイールとすることができる。一部の実施形態では、仕上げ部材12は、その外周に所望の断面の一つ以上の溝を形成することができる。仕上げ部材12は、モータ20によって駆動、例えば、回転させることができ、そのモータ20はシュラウド14に取り付けられるか、シュラウドに対して支持される。
【0017】
シュラウド14は、様々な形式をとることができ、一部の実施形態では、共同でチャンバ16を画定するカバー30およびベース32を含むことができる。この任意の構成を有する場合、カバー30は、チャンバ16を選択的に開けることができるように、ヒンジ34などによってベース32に旋回可能に取り付けることができ、例えば、図1は、ベース32に対して閉じた位置にあるカバー30を示しており、カバー30は、チャンバ16を開けることが望まれるときにベース32から離れるように選択的に旋回することができる。一部の実施形態では、シュラウド14は、三つ以上の部品によって画定することができ、その他の実施形態においては、シュラウド14は、均質な構成または一体的な構成を有することができる。いずれにせよ、シュラウド14は、一部の実施形態では、総体的に参照される排出路38を画定する排出ダクト36をさらに含むまたは設けることができる。排出路38は、チャンバ16に流体連通している。さらに、排出ダクト36は、図示しない真空源に流体接続するように構成され、この真空源の動作により、排出路38を介してチャンバ16内は陰圧または真空になる。あるいは、シュラウド14は、チャンバ16から流体を排出するためのその他の構造または機能を組み込むことができる。
【0018】
厳密な構成にかかわらず、また図1に示すように、シュラウド14の形状または占有面積は、図1で指定したX、Y、Z座標系によって定義されるような少なくともX-Y平面において仕上げ部材12の周囲形状を模倣することができる。したがって、一部の実施形態では、シュラウド14は、円形の仕上げ部材12に比較的近く対応した、X-Y平面における略円形の形状を有する。その他の形状も考えられる。
【0019】
図2の非常に単純化した断面図に示すように、シュラウド14は、チャンバ16に対して開口したスロット40を形成する。理解を深めるために、図1でもスロット40の大体の位置が特定されている。スロット40は、概して、図示しないガラスシートの縁をスライド可能に受容するような構成、例えば、大きさおよび形状を有し、これにより、その縁はチャンバ16に入り、仕上げ部材12と相互作用することができる。図2には排出路38も大まかに示されている。
【0020】
スロット40は、様々な方法でシュラウド14によって形成することができる。一部の実施形態では、シュラウド14は、共同でスロット40の少なくとも一部の周囲を形成する第一および第二の壁部50、52を含むまたは画定するものとみなすことができる。第一および第二の壁部50、52は、異なる形態で設けることができ、例えば、第一の壁部50は、カバー30(図1)の一部とすることまたはカバー30に取り付けることができ、第二の壁部52は、ベース32(図1)の一部とすることまたはベース32に取り付けることができる。他の実施形態では、第一および第二の壁部50、52は、単一の均質な構造の一部として一体的に形成することができる。いずれにせよ、第一の壁部50は第一の長縁60で終端する。第二の壁部52は第二の長縁62で終端する。第一および第二の長縁60、62がそれぞれスロット40の周囲の少なくとも一部を画定する状態で、第一の長縁60が第二の長縁62に対向しかつ第二の長縁62から離間しているように壁部50、52は配置されている。一部の実施形態では、長縁60、62の一方または両方は、対応する壁部50、52の残りの部分に対するY-Z平面の面取り部を含むことができる(例えば、図3を参照)。例えば、第一の壁部50は、外面70および内面72を画定するものとみなすことができる。第一の長縁60は、外面70と内面72に隣接する移行縁を表し、面70、72の両方と直角ではない角度を形成する。スロット40の中心平面Pに関して、任意の面取り配置は、中心平面Pに対して非垂直かつ非平行である第一の長縁60と説明することができる。その代わりに、またはそれに加えて、任意の面取り配置は、外面70から内面72まで延在しながら中心平面Pから離れるように突出する第一の長縁60と説明することができる。第二の長縁62は、第二の壁部52の対応する外面と内面の間で延在している類似または同一の面取り構成を有することができる。最後に、下記で明らかになる理由から、装置10には、総体的に参照される一つ以上の管状部材80が設けられており、第一および第二の長縁60、62の一方または両方から突出している。
【0021】
シュラウド壁部50、52は、総体的に参照される管状部材80とともに、シュラウド14の残りの部分から切り離して図3により詳細に示す。壁部50、52の一方または両方は、少なくとも一つのノズル通路を画定する。例えば、図3の非制限的な実施形態では、第一の壁部50は、第一のノズル通路90a、第二のノズル通路90b、および第三のノズル通路90cをそれぞれ画定し、第二の壁部52は、第一のノズル通路92a、第二ノズル通路92b、および第三のノズル通路92cをそれぞれ画定する。任意のその他の数のノズル通路を等しく受け入れ可能であり、三つより多くても少なくてもよく、例えば、第一の壁部50に一つ以上のノズル通路を設けることができ、第二の壁部50からは任意のノズル通路を排除することができ、またはその逆も可能である。すなわち、本開示は、各壁部50、52に対して三つのノズル通路に制限されない。設けられる厳密な数にかかわらず、ノズル通路90aから90c、92aから92cは、それぞれ流体、例えば、冷却剤または冷却液を輸送または吐出するように構成され、それぞれ、対応する壁部50、52の長縁60、62の開口で終端することができる。例えば、管状部材80を除去した状態で単独で壁部50、52を別様に示す図4Aをさらに参照すると、第一の壁部50の第一のノズル通路90aは、第一の長縁60の第一の開口100aで終端している。第一の開口100aは、加圧流体が通路90aから出ていくノズル状のオリフィスとして機能する。第一の開口100aの平面または形状は、第一の長縁60の平面または形状に対応しており、例えば、第一の開口100aは、第一の長縁60の任意の面取り配置をなぞるまたは模倣している。言い換えれば、第一の長縁60は、連続的で比較的平滑または平坦な表面とすることができ、第一の開口100aは、この連続的で比較的平滑または平坦な表面に形成される。しかし、第一の壁部50の任意で湾曲させた形状により、すなわち、図1に関して上記したように、シュラウド14が、仕上げ部材12の外周の曲率を模倣することができ、第一の壁部50が任意でこの同じ曲率を組み込んでいることにより、第一の長縁60もX-Y平面において湾曲することが分かるだろう。
【0022】
第一の壁部50の第二および第三のノズル通路90b、90cは、上記のように第一のノズル通路90aと実質的に同一とすることができ、第二のノズル通路90bは、第一の長縁60の第二の開口100bで終端し、第三のノズル通路90cは、第一の長縁60の第三の開口100cで終端している。第一の壁部50のノズル通路90aから90cは、互いに離間している。X-Y平面における第一の長縁60の任意で湾曲させた形状により、それぞれの開口100aから100cの中心線CL1からCL3、したがって開口100aから100cの各々によって得られる噴霧方向が、一部の実施形態において、管状部材80(図3)を取り除いた状態で装置10の一部を別様に示す図4Bで表すような仕上げ部材12の中心で概して交差するように、開口100aから100cは、X-Y平面における第一の長縁60の曲率に沿って互いに半径方向にずらすことができる。
【0023】
図3および図4Aを引き続き参照すると、第二の壁部52のノズル通路92aから92cは、上記したような第一の壁部50のノズル通路90aから90cに類似または同一とすることができる。したがって、第一のノズル通路92aは、第二の長縁62の第一の開口102aで終端することができ、第二のノズル通路92bは、第二の長縁62の第二の開口102bで終端することができ、第三のノズル通路92cは、第二の長縁62の第三の開口102cで終端することができる。壁部50、52は、最終的な組立時に、第一の壁部の開口100aから100cのそれぞれを第二の壁部の開口102aから102cのそれぞれとZ方向に概して整列させるように配置することができ、例えば、第一の壁部50の第一の開口100aは、第二の壁部52の第一の開口102aとZ方向に整列させるなどである。その他の実施形態では、第一および第二の壁部50、52のノズル通路90aから90c、92aから92cおよび/または開口100aから100c、102aから102cは、形状および/または位置に関して互いに異なってもよい。
【0024】
図3を特に参照すると、管状部材80の各々は、下記で詳述するように、対応するノズル通路の延長部として機能する。管状部材80の各々の材料および寸法が、予期される動作条件下で選択した空間定位または所望の空間定位を維持するように選択されることで、管状部材80は、構造的に頑丈な構成を有することができ、例えば、管状部材80は、真空による交差流に関連する抗力を受けるときに過度に撓まないようにシュラウド14(図1)に対して形成および組み付けが行われる。例えば、管状部材80は、プラスチック、金属、例えば、真鍮、硬化ゴムなどから形成することができる。
【0025】
一部の実施形態において、シュラウド14(図1)と連携したノズル通路の開口ごとに一つの管状部材が設けられる。したがって、例えば、第一の管状部材110a、第二の管状部材110bおよび第三の管状部材110cは、それぞれ、第一の壁部50のノズル通路開口90aから90cの対応する一つとそれぞれ連携させることができ、第一の管状部材112a、第二の管状部材112bおよび第三の管状部材112cは、第二の壁部52のノズル通路開口92aから92cの対応する一つとそれぞれ連携させることができる。その他の実施形態では、利用可能なノズル通路開口の全てではなくそのうちのいくつかに対して一つの管状部材が設けられてもよい。さらに他の実施形態では、本開示の装置は、管状部材80をひとつしか含まなくてもよい。壁部50、52の各々に対して三つのノズル通路および三つの管状部材を図示および説明したが、本開示の実施形態は、任意のその他の数を使用することができ、三つより多くても少なくてもよい。
【0026】
図5に示すような第一の管状部材110aに関する下記の解説が、残りの管状部材110b、110c、112aから112cに等しく適用されるように、一部の実施形態では、管状部材110aから110c、112aから112cを類似とすることができる。参考までに、図5は、第一の壁部50の外面70および内面72を特定し、第一のノズル通路90aを、外面70と内面72の間の第一の壁部50の厚み内に形成することができることを示す。一部の非制限的な実施形態では、第一のノズル通路90aの中心の長手軸CAは、外面70および内面72と平行に延在することができる。第一の壁部50または第二の壁部52(図2)がノズル通路、例えば、ノズル通路90aから90c、92aから92c(図3)のうちの二つ以上を提供する実施形態により、対応する壁部の外面および内面に対する対応する中心の長手軸のこの任意の平行な配置は、ノズル通路のいくつかまたは全てに対して行うことができる。
【0027】
管状部材110aは、対向する入口端122aおよび分配端124aに対して開口した中心通路120aを画定する管状体である。管状部材110aは、管状部材110aが第一の長縁60から突出するように、第一の壁部50と連携し、中心通路120aは、入口端122aを介して第一のノズル通路90aと流体連通している。例えば、入口端122aは、総体的に参照される開口100aを介して第一のノズル通路90aに挿入することができ、例えば、管状部材110aの外径は、開口100aの直径に近似している。あるいは、入口端122aは、中心通路120aを開口100aと整列させた状態で、第一の長縁60の面に対して組み付けることができる。第一の壁部50への管状部材110aの組み付けまたは取り付けは、ねじ接触面、圧入、接着剤による接着、溶接などを含むがそれらに限定されない当業者には明らかな様々な方法で行うことができる。関連の実施形態では、本開示の管状部材110aなどの管状部材は、既存のガラス縁処理装置に組み付けるまたは追加することができる。第一の壁部50と管状部材110aの間の接触面における流体密封止をより向上させるために、図示しないガスケットまたはその他のシーリング部品を任意で設けることができる。さらに他の実施形態では、管状部材110aは、第一の壁部50の一体形成部品である。いずれにせよ、管状部材110aは、第一の長縁60の開口100aからノズル通路90aを効果的に延長し、ノズル通路90aに吐出された加圧流体が分配端124aから出ていく。管状部材110aは略線形または直線形のものとして図示されているが、他の実施形態では、湾曲した幾何学的形状または曲線的な幾何学的形状にすることができ、その非制限的な例が、図6の管状部材80‘に関して示されている。
【0028】
図3に戻ると、対応する長縁60、62から延在している各管状部材110aから110c、112aから112cの寸法、幾何学的形状および空間的配置は同一である必要はなく、装置10(図1)の動作パラメータに従って選択することができる。例えば、図7の単純化した上面の断面図は、仕上げ部材12に対して第一の壁部50の第一の長縁60から突出する管状部材110aから110cの非制限的な例を示す。図示のように、第一および第三の管状部材110a、110cの長さおよび角度定位は、第二の管状部材110bのものとは異なっている。この一つの考え得る配置により、管状部材110aから110cによって開設されるそれぞれの流路Q1からQ3のおおよその交点は、仕上げ部材12の周囲または外周になり、その結果、仕上げ作業において仕上げ部材12と図示しないガラスシートの縁の間の予期される接触点に集束して冷却が行われる。比較として、また図4Bを相互参照すると、図4Bは管状部材を除去した状態で装置10の一部を示していることが思い出されるが、管状部材110aから110cがなければ、開口100aから100cの各々から出ていく冷却剤の流れは、個別の箇所で仕上げ部材12の周囲または外周と相互作用することになり、その結果、仕上げ部材12とガラスシートの間の予期される接触点の冷却の効果が低下する。一つ以上の管状部材110aから110cの第一の長縁60に対する大きさ、形状および/または空間的配置によって生じる流路Q1からQ3は、対応する開口100aから100cの中心線CL1からCL3とは異なる。
【0029】
図4B図7の比較によって明らかになるさらなる利益は、管状部材110aから110cの各々の分配端124aから124cが、対応する開口100aから100cと比べて、仕上げ部材12に物理的により近いということである。その結果、吐出または噴射された冷却剤の流れが崩壊しにくくなる。例えば、図8Aは、第一の管状部材110a(図7)を取り除いた状態の仕上げ部材12に対する第一のノズル通路90aを示す。第一の間隙G1は、開口100aと仕上げ部材12の間の直線距離と定義する。第一のノズル通路90aに提供される加圧流体流(冷却剤)Q1が矢印で表されており、まず、仕上げ部材12と図示しないガラスシートの間の予期される接触点に向けられた集束した噴霧または噴射として開口100aから出ていく。典型的なガラスシートの縁仕上げ、例えば、研削または研磨の条件下では、仕上げ部材12は高速で回転し、空気を取り込み、仕上げ部材の周りに高速の空気の障壁を創出する。さらに、上記したように、粒子を含む流体を除去するために、総体的に参照されるチャンバ16の外側の周囲圧力に対する陰圧、例えば、真空がチャンバ16内に生じる。その結果、典型的には、真空による空気の高速の交差流が存在し、作用する抗力を通して流体流噴射Q1を乱し、誤った方向に向かわせる場合がある。このようにして流体流Q1は崩壊し、仕上げ部材12に到達したときはあまり集束していなくなる。この起こり得る影響を図8Aに概略的に示す。一方、図8Bは、図8Aと同じ配置を示しているが、管状部材110aが含まれている。分配端124aと仕上げ部材12の間には第二の間隙G2が開設されている。第二の間隙G2の距離は、第一の間隙G1(図8A)未満である。第一のノズル通路90aに提供される加圧流体流Q1は、この場合も同様に矢印で表されており、仕上げ部材12にごく近接して、したがって仕上げ部材12と図示しないガラスシートの間の予期される接触点にごく近接して、集束した噴霧または噴射として分配端124aから出ていく。管状部材110aは、上記の交差流抗力から流体流Q1を保護する。可能な限り仕上げ部材12の近くで流体流Q1を噴射することにより、加圧流体流Q1の速度が維持され、したがって、仕上げ部材12の周りに創出される空気の障壁をより容易に破壊することができる。その結果、流体流Q1は、仕上げ部材12に到達したときに、図8Aの場合よりも集束している。
【0030】
図3に戻ると、管状部材110aから110c、112aから112cの大きさ、形状、またはその他の物理的な特性は互いに異なっていてもよく、特定の最終用途に合うように仕上げ部材12(図1)に対する対応する分配端(例えば、図3では第一の管状部材110aに対してラベル付けされている分配端124a)の所望の空間的位置に基づいて個別に選択することができる。一部の実施形態では、管状部材110aから110c、112aから112cのうちの一つ、二つ以上、または全てが、対応する壁部50、52に対して取り外し可能に組み付けられる。この構成により、管状部材110aから110c、112aから112cのうちのいくつかまたは全部を、予期される動作条件が変わるときに交換することができる。例えば、管状部材110aから110c、112aから112cの各々の有益な長さは、仕上げ部材12の直径または大きさ(例えば、経時的に、仕上げ部材12は摩耗し、外径が減る場合がある、異なる仕上げ動作により異なる構成または寸法の仕上げ部材の使用が必要になるなど)、特定の仕上げ用途に関する仕上げ部材12の回転速度、仕上げ装置10(図1)に対する基板が移動する速度などに応じて変えることができる。
【0031】
他の実施形態において、本開示の装置は、管状部材の空間定位を自動的に調整または変更するように構成することができる。例えば、図9Aは、本開示の原理に係る別の実施形態の仕上げ装置200の一部を単純化した形態で示す。装置200は、上記の装置10(図1)に非常に類似したものとすることができ、シュラウド202、図示しないが上記の仕上げ部材12(図1)に類似した仕上げ部材、少なくとも一つの管状部材204、アクチュエータ206、およびコントローラ208を含む。大まかに言えば、管状部材204は、シュラウド202のセグメントから突出しており、アクチュエータ206によって空間的に操作されるように構成されている。コントローラ208は、アクチュエータ206に電子的に連結されており、選択した方法でアクチュエータ206の動作を促すように構成(例えば、プログラム)されている。
【0032】
シュラウド202は、シュラウド14(図1)に関して上記した形式または特徴のうちのいずれを有していてもよく、図示しないガラスシートをスライド可能に受容することができる、総体的に参照されるスロット224の少なくとも一部を画定する長縁222で終端する壁部220を含む。壁部220にはノズル通路226が画定されている。
【0033】
管状部材204は、長縁222の開口を介してノズル通路226と接続しかつ流体連通しており、分配端232に開口した中心通路230を画定している。図9Aの実施形態により、長縁222に対する、したがって図示しない仕上げ部材に対する分配端232の空間的な位置または配置が調整可能である。一部の実施形態では、管状部材204は、例えば、図9Aによって示唆される伸縮構成を介して長さを伸長可能かつ収縮可能なように構成される。ベローズ状部品、関節式連結機構などによるその他の伸長可能かつ収縮可能な構成も考えられる。さらに他の実施形態では、管状部材204と壁部220の間の接続形式は、長縁222に対する管状部材204の選択的な延長/収縮を可能にするように構成することができ、例えば、管状部材204は、壁部220にスライド可能に取り付けることができる。いずれにせよ、管状部材204は、図9Aにおいて矢印「L」で示す方向に長縁222に対して分配端232を延長または収縮するように関節式に連結することができる。図9Bは、延長配置にある管状部材204の一例を示しており、すなわち、図9Aの配置と比べて、分配端232が長縁222から離れるように移動されている。
【0034】
延長および収縮を行うことに加え、またはその代わりに、管状部材204および/または管状部材204と壁部220の間の接続形式は、長縁222に対する分配端232の横断方向の偏向または関節式連結を可能にするように構成される。例えば、管状部材204と壁部220の間には、ヒンジ接続部または旋回接続部、例えば、ボールジョイントを設置することができる。その代わりに、またはそれに加えて、管状部材204は、互いに枢動可能に接続される、フレキシブルであるなどの複数の部品または部分からなることができる。いずれにせよ、管状部材204は、概して図9Aに矢印「T」で示すような長縁222に対して任意の横断方向に分配端232を偏向させるように関節式に連結することができる。図9Cは、図9Bの配置と比較して、横断方向に関節式に連結した配置における管状部材204の一例を示す。
【0035】
図9Aに戻ると、アクチュエータ206は、長縁222に対して管状部材204を調整するのに適した様々な形態をとることができ、管状部材204の具体的な設計に応じて変わるだろう。例えば、アクチュエータ206は、サーボモータの動作により、管状部材204の少なくとも一つの部品が別の部品に対して移動するように、管状部材204の一つ以上の部品に機械的に連結したサーボモータとすることができ、または当該サーボモータを含むことができる。その他のアクチュエータ形式、例えば、油圧式アクチュエータ、空気圧式アクチュエータなども等しく受け入れ可能である。装置200が複数の管状部材204を含む場合、管状部材204の各々に対して別々のアクチュエータ206を設けることができる。
【0036】
コントローラ208は、コンピュータまたはコンピュータ型デバイス、例えば、プログラマブルロジックコントローラとすることができ、または当該コンピュータまたはコンピュータ型デバイスを含むことができる。コントローラ208は、プロセッサ、および当該プロセッサに通信可能に結合されたメモリを含むことができる。このメモリにはコンピュータ可読命令セットを記憶することができ、プロセッサによって実行されると、少なくともアクチュエータ206に命令を出すことによって、長縁222に対する分配端232の空間的位置を修正する。コントローラ208は、任意で、所定の方法でアクチュエータ206の動作を促すようにプログラムされており、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、電気回路部品である。例えば、コントローラ208は、前記仕上げ部材の特定の形式、例えば、大きさ、溝の数などに基づいて、前記仕上げ部材の予期される摩耗または検知された摩耗に基づいてなど、所定の方法で管状部材204を延長または収縮させるようにアクチュエータ206を促すようにプログラムすることができる。一部の実施形態では、コントローラ208は、長縁222に対する分配端232の所定の空間的位置を前記仕上げ部材の動作時間と相関させる一つ以上のアルゴリズムおよび/またはルックアップテーブルを用いてプログラムすることができ、例えば、新たな仕上げ部材が最初に設置されるとき、このアルゴリズムおよび/またはルックアップテーブルは、分配端232の第一の空間的位置を特定し、基板の縁を仕上げるために当該仕上げ部材が使用された第一の期間の後、当該アルゴリズムおよび/またはルックアップテーブルは、概して前記第一の空間的位置よりも長縁222から遠い分配端232の第二の空間的位置を特定し、基板の縁を仕上げるために当該仕上げ部材がさらに使用された次の第二の期間後、当該アルゴリズムおよび/またはルックアップテーブルは、概して前記第二の空間的位置よりも長縁222から遠い分配端232の第三の空間的位置を特定する、などである。その他の実施形態では、コントローラ208は、ユーザが管状部材204の所望の空間的配置を選択することができるユーザ入力デバイスを含むことができ、または当該ユーザ入力デバイスからなることができる。コントローラ208は、有線接続または無線接続によってアクチュエータ206に電子的に接続することができる。一部の実施形態では、コントローラ208は、装置200のその他の動作および/または装置200が設置される仕上げシステムのその他の動作を制御するように作動するコントローラとすることができる。
【0037】
図1に戻ると、本開示の方法は、ガラスシートの縁などの基板の縁を処理するように装置10を作動させるステップを含む。一部の実施形態では、また図10をさらに参照すると、技術的に既知の種類の輸送デバイス302をさらに含む縁処理システム300の一部として一つ以上の縁処理装置10を設けることができる。輸送デバイス302は、縁処理装置10に向かってガラスシート304またはその他の基板を輸送するように作動する。ガラスシート304が図10の矢印で示す方向に引き続き輸送されると、ガラスシート304の縁306が、総体的に参照されるスロット40を介してシュラウド14に入る。一部の実施形態では、システム300は、ガラスシート304の反対側の縁308を処理するため、装置10の下流でのさらなる縁処理のためなどの、一つ以上のさらなる処理装置を含むことができる。いずれにせよ、また図11を参照すると、シュラウド14に入ると、縁306は仕上げ部材12と接触し、仕上げ部材12は、その一方で所望の処理、例えば、研削、研磨などを達成するように駆動、例えば、回転している。同時に、矢印で表されている冷却剤の流れQ1がノズル通路90aに吐出される。冷却剤の流れQ1は、管状部材110aの中心通路120aから押し出され、次に、分配端124aを介して仕上げ部材12と縁306の間の接触面310に向けられるまたは噴射される。冷却剤は、図示しないその他の管状部材が設けられている場合は、その他の管状部材からも接触面310に噴射することができる。本開示の方法は、さらに、上記のような長縁60に対する、したがって仕上げ部材12に対する管状部材110aの空間的配置を周期的に調整するステップを任意で含む。一部の実施形態では、管状部材110aの調整は、仕上げ部材12の摩耗に応じて自動的に行われる。
【0038】
本願に記載の実施形態には、請求する主題の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変形が可能である。したがって、本明細書は、本願に記載の様々な実施形態の修正および変形が添付の請求項およびそれらの均等物の範囲内であれば、そのような修正および変形を包含することを意図している。
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0040】
実施形態1
シート状基板の縁を処理する装置であって、
前記シート状基板の前記縁を処理する仕上げ部材、
前記仕上げ部材を回転可能に保つチャンバを画定するシュラウドであって、
第一の長縁で終端する第一の壁部、
前記第一の長縁に対向する第二の長縁で終端する第二の壁部を含み、
前記第一の長縁と前記第二の長縁が共同して、前記チャンバに開口したスロットであって、前記仕上げ部材と相互作用する前記シート状基板の前記縁をスライド可能に受容するように構成されたスロットの少なくとも一部を画定し、
さらに、前記第一の壁部が、流体を吐出する第一のノズル通路を画定し、当該第一のノズル通路が、前記第一の長縁の第一の開口で終端する、シュラウド、および
前記第一の長縁から突出し、前記第一のノズル通路と流体連通した通路を画定する第一の管状部材
を含む装置。
【0041】
実施形態2
前記第一の管状部材が、前記第一のノズル通路からの冷却剤の流れを前記仕上げ部材に向かわせるように構成される、実施形態1に記載の装置。
【0042】
実施形態3
前記第一の管状部材が、前記第一の長縁とは反対側の分配端で終端し、当該分配端と前記仕上げ部材の間の距離が、当該第一の長縁と当該仕上げ部材の間の距離未満である、実施形態1に記載の装置。
【0043】
実施形態4
前記第一の壁部が、互いに反対向きの外面および内面をさらに画定し、前記第一の長縁が、当該外面と当該内面の間に延在し、当該外面および当該内面に隣接する、実施形態1に記載の装置。
【0044】
実施形態5
前記第一のノズル通路が、前記外面と前記内面の間の前記第一の壁部の厚み内に画定される、実施形態4に記載の装置。
【0045】
実施形態6
前記第一の長縁が、前記第一の壁部の残りの部分に対して面取りされている、実施形態1に記載の装置。
【0046】
実施形態7
前記第一の長縁に対する前記第一の管状部材の配置が調整可能である、実施形態1に記載の装置。
【0047】
実施形態8
前記第一の管状部材に連結され、前記第一の長縁に対して当該第一の管状部材を調整するように構成されたアクチュエータをさらに含む、実施形態7に記載の装置。
【0048】
実施形態9
前記第一の管状部材が、前記第一の壁部に対して取り外し可能に組み付けられる、実施形態1に記載の装置。
【0049】
実施形態10
流体を吐出する第二のノズル通路が前記第一の壁部内に画定され、当該第二のノズル通路が、前記第一のノズル通路から離間し、前記第一の長縁の第二の開口で終端し、当該装置が、当該第一の長縁から突出しかつ当該第二の開口と流体連通する通路を画定する第二の管状部材をさらに含む、実施形態1に記載の装置。
【0050】
実施形態11
流体を吐出する第二のノズル通路が前記第二の壁部に画定され、当該第二のノズル通路が、前記第二の長縁の第二の開口で終端し、当該装置が、当該第二の長縁から突出しかつ当該第二の開口と流体連通する通路を画定する第二の管状部材をさらに含む、実施形態1に記載の装置。
【0051】
実施形態12
前記シュラウドが、前記チャンバと流体連通した排出通路であって、当該排出通路に施された真空が存在するときに当該チャンバから汚染物質を除去する排出通路をさらに画定する、実施形態1に記載の装置。
【0052】
実施形態13
シート状基板の縁を処理する装置であって、
前記シート状基板の前記縁を処理する仕上げ部材、
前記仕上げ部材を回転可能に保つチャンバを画定するシュラウドであって、
長縁で終端する壁部であって、当該長縁が、前記チャンバに開口しかつ前記仕上げ部材と相互作用するために前記シート状基板の前記縁をスライド可能に受容するように構成されたスロットの少なくとも一部を画定し、当該壁部が、流体を吐出するノズル通路を画定し、当該ノズル通路が当該長縁の開口で終端する、壁部
を含むシュラウド、および
前記壁部に取り外し可能に組み付けられ、前記長縁から突出する管状部材であって、前記ノズル通路と流体連通する通路を画定する管状部材
を含む装置。
【0053】
実施形態14
前記管状部材が、ねじ接続部と圧入接続部のうちの少なくとも一方によって前記壁部に取り外し可能に組み付けられる、実施形態13に記載の装置。
【0054】
実施形態15
シート状基板の縁を処理する方法であって、
処理装置のシュラウドのスロットを通して、かつ当該シュラウドのチャンバ内に前記シート状基板の前記縁を向かわせるステップであって、当該スロットが、当該シュラウドの壁部の長縁によって少なくとも部分的に画定される、ステップ、
前記チャンバ内に配置された仕上げ部材によって前記シート状基板の前記縁を処理するステップ、および
前記処理するステップの間、前記長縁から突出している管状部材を介して前記シート状基板の前記縁と前記仕上げ部材の間の接触面に冷却剤の流れを向かわせるステップであって、当該管状部材が、前記壁部内に画定されたノズル通路と流体連通した中心通路を画定する、ステップ
を含む方法。
【0055】
実施形態16
前記長縁に対する前記管状部材の配置を調整するステップをさらに含む、実施形態15に記載の方法。
【0056】
実施形態17
前記調整するステップが、前記管状部材の分配端と前記長縁の間の距離を変えるステップを含む、実施形態16に記載の方法。
【0057】
実施形態18
前記調整するステップが、前記長縁に対する前記管状部材の中心軸の角度関係を変えるステップを含む、実施形態16に記載の方法。
【0058】
実施形態19
前記調整するステップが、
前記仕上げ部材の摩耗を監視するステップ、および
前記仕上げ部材の摩耗に基づいて前記長縁に対する前記管状部材の空間的配置を変えるステップ
を含む、実施形態16に記載の方法。
【0059】
実施形態20
前記監視するステップが、前記長縁に対する前記管状部材の前記空間的配置における変更を促すようにプログラムされたソフトウェア上で動作するコンピュータデバイスによって行われる、実施形態19に記載の方法。
【符号の説明】
【0060】
10 縁処理装置
12 仕上げ部材
14、202 シュラウド
16 チャンバ
18 流入ポート
20 モータ
30 カバー
32 ベース
34 ヒンジ
36 排出ダクト
38 排出路
40、224 スロット
50、52、220 壁部
60、62、222 長縁
70 外面
72 内面
80、80‘、110a、110b、110c、112a、112b、112c、204 管状部材
90a、90b、90c、92a、92b、92c、226 ノズル通路
100a、100b、100c、102a、102b、102c 開口
120a、230 中心通路
122a 入口端
124a、124b、124c、232 分配端
200 仕上げ装置
206 アクチュエータ
208 コントローラ
300 縁処理システム
302 輸送デバイス
304 ガラスシート
306、308 ガラスシートの縁
310 接触面
CA 中心の長手軸
CL1、CL2、CL3 中心線
G1、G2 間隙
L 方向
P 中心平面
Q1、Q2、Q3 流路(流体流)
T 横断方向
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11