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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】磁気ギアード回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/08 20060101AFI20231121BHJP
   H02K 49/10 20060101ALI20231121BHJP
   H02K 16/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H02K7/08 Z
H02K49/10 A
H02K16/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020010232
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021118609
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅田 彰彦
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163431(JP,A)
【文献】特開2006-211837(JP,A)
【文献】特表2003-534511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/08
H02K 49/10
H02K 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
ケーシングに固定されて軸線を中心として環状をなすステータコア、該ステータコアのスロット内に設けられたコイル、及び、前記ステータコアの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石を有するステータと、
該ステータの内側で、前記軸線の周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピースを有する第一ロータと、
該第一ロータの内側に設けられたロータコア、及び、該ロータコアに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石を有する第二ロータと、
前記ケーシングに設けられて、前記第一ロータ及び前記第二ロータの少なくとも一方の外周面に当接するとともに周方向に間隔をあけて配置された複数の可動軸受と、
これら可動軸受を、前記軸線に直交する面を含む方向に移動させるアクチュエータと、
を備え
前記ステータの内周面、及び該内周面に径方向から対向する前記第一ロータの外周面は、前記軸線方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に延び、
前記第一ロータを前記軸線方向に移動させるロータ移動部をさらに備える磁気ギアード回転電機。
る磁気ギアード回転電機。
【請求項2】
前記可動軸受は、
前記ケーシングに対して相対変位可能に支持されている可動支持部と、
該可動支持部の先端に設けられ、前記外周面に当接しながら回動するローラー部と、
を有する請求項1に記載の磁気ギアード回転電機。
【請求項3】
前記ケーシング内に設けられ、前記第一ロータと前記ステータとの間の径方向の離間距離であるエアギャップを検出するギャップ検出部と、
該ギャップ検出部の検出結果に基づいて、前記アクチュエータを駆動する制御装置と、
をさらに備える請求項1又は2に記載の磁気ギアード回転電機。
【請求項4】
前記ギャップ検出部は、静電容量型センサである請求項3に記載の磁気ギアード回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ギアード回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、低速ロータ(第一ロータ)、高速ロータ(第二ロータ)、ステータが同軸に相対回転可能とされた磁気ギア―ド回転電機が開示されている。
磁気ギア―ド回転電機を、例えばモータとして用いる場合には、ステータに設けたコイルの起磁力により高速ロータを回転させることで、高調波磁束により出力軸である低速ロータが所定の減速比で回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-163431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような磁気ギアード回転電機では、ステータに対してロータが、転がり軸受を介して回転可能に支持されることが一般的である。しかしながら、ステータやロータの寸法公差や自重または外力による変形、経年使用による摩耗や寸法の変化が生じる場合がある。このため、ステータとロータとの間のエアギャップが変化する虞がある。その結果、磁気ギアード回転電機の安定的な運用が阻害されてしまう。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、長期にわたってエアギャップを適正に維持することが可能な磁気ギアード回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る磁気ギアード回転電機は、ケーシングと、ケーシングに固定されて軸線を中心として環状をなすステータコア、該ステータコアのスロット内に設けられたコイル、及び、前記ステータコアの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石を有するステータと、該ステータの内側で、前記軸線の周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピースを有する第一ロータと、該第一ロータの内側に設けられたロータコア、及び、該ロータコアに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石を有する第二ロータと、前記ケーシングに設けられて、前記第一ロータ及び前記第二ロータの少なくとも一方の外周面に当接するとともに周方向に間隔をあけて配置された複数の可動軸受と、これら可動軸受を、前記軸線に直交する面を含む方向に移動させるアクチュエータと、を備え、前記ステータの内周面、及び該内周面に径方向から対向する前記第一ロータの外周面は、前記軸線方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に延び、前記第一ロータを前記軸線方向に移動させるロータ移動部をさらに備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、長期にわたってエアギャップを適正に維持することが可能な磁気ギアード回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る磁気ギアード回転電機の構成を示す断面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る磁気ギアード回転電機を軸線方向から見た図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る制御装置のハードウェア構成図である。
図5】本開示の第一実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図6】本開示の第二実施形態に係る磁気ギアード回転電機の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(磁気ギアード回転電機の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る磁気ギアード回転電機100について、図1から図5を参照して説明する。図1から図3に示すように、磁気ギアード回転電機100は、ステータ1と、第一ロータ2と、第二ロータ3と、ケーシング4と、軸受Bと、アクチュエータ8と、ギャップ検出部Sgと、制御装置90と、を備えている。磁気ギアード回転電機100は、軸線Acに沿って延びる回転軸6に取り付けられている。外部から電力供給した場合、第一ロータ2、及び第二ロータ3が軸線Ac回りに回転することで電動機として機能する。一方で、回転軸6に外部から回転力(トルク)を与えた場合、第一ロータ2、及び第二ロータ3の回転に伴う誘導起電力によって発電機として機能する。
【0010】
(ケーシング、ステータの構成)
ケーシング4は、軸線Acを中心とする円環状をなしている。ケーシング4の内部には空間が形成されている。ステータ1は、このケーシング4の内面のうち、軸線Acに対する径方向内側を向く面(ケーシング内周面5A)に設けられている。
【0011】
図2に示すように、ステータ1は、ステータコア1Aと、複数のコイルCと、複数のステータ磁石1Bと、を有している。ステータコア1Aは、軸線Acを中心とする円環状のバックヨーク71と、バックヨーク71から径方向内側に突出するとともに、周方向に間隔をあけて配列された複数のティース7Tと、を有している。ティース7Tは、バックヨーク71から径方向内側に延びるティース本体72と、ティース本体72の径方向内側の端部に一体に設けられたティース先端部73と、を有している。ティース先端部73は、周方向の両側に向かって張り出している。
【0012】
ティース本体72にはコイルCが取り付けられている。コイルCは、銅線等をティース本体72の周囲に巻き掛けることで形成されている。バックヨーク71と、互いに隣接する一対のティース本体72、及びティース先端部73とによって囲まれた領域は、コイルCを収容するためのスロットSとされている。
【0013】
ステータコア1Aの内周面、つまりティース先端部73の径方向内側の面には、周方向に隣接するように複数のステータ磁石1Bが配列されている。ステータ磁石1Bは、例えばフェライト磁石やネオジム磁石のような永久磁石である。互いに隣接するステータ磁石1B同士では、極が異なっている。つまり、異なる極のステータ磁石1Bが周方向に交互に配列されている。
【0014】
(第一ロータの構成)
図1に示すように、第一ロータ2は、ステータ1の内側に設けられている。第一ロータ2は、円板部5と、第一ロータ本体2Hと、ポールピース2Pと、を有している。円板部5は、軸線Acを中心とする円板状をなし、回転軸6に取り付けられている。円板部5の外周側には、第一ロータ本体2Hが取り付けられている。第一ロータ本体2Hは、軸線Acを中心とする円筒状の筒部21と、この筒部21の外周面から径方向外側に張り出す一対の支持部22と、を有している。筒部21は、後述する軸受B(外側軸受B1)を介してケーシング4の内周面上で支持されている。一対の支持部22の径方向外側の端縁には、複数のポールピース2Pが設けられている。ポールピース2Pは、磁性体であり、ステータ磁石1B、及び後述するロータ磁石3Bの磁力との相互作用により、磁束の高周波を発生させる。図2に示すように、ポールピース2Pは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0015】
(第二ロータの構成)
図1に示すように、第二ロータ3は、第一ロータ本体2Hにおける一対の支持部22同士の間に設けられている。第二ロータ3は、ロータコア3Aと、ロータ磁石3Bと、を有している。ロータコア3Aは、軸線Acを中心とする円環状をなしている。ロータコア3Aの内周面は、第一ロータ本体2Hにおける筒部21の外周面によって、軸受B(内側軸受B2)を介して回転可能に支持されている。図2に示すように、ロータコア3Aの外周面には、複数のロータ磁石3Bが周方向に複数配列されている。ロータ磁石3Bは、上述のポールピース2Pに対して内周側から対向している。
【0016】
(外側軸受の構成)
図3に示すように、外側軸受B1(可動軸受)は、軸線Acの周方向に間隔をあけて複数(一例として3つ)設けられている。図3の例では、水平方向に延びる軸線Acの下方に一対の外側軸受B1(下部軸受BL)が設けられ、上方に1つの外側軸受B1(上部軸受BU)が設けられている。
【0017】
外側軸受B1は、上述した筒部21の外周面(筒部外周面2S)を支持するとともに、軸線Acに直交する面を含む方向に移動可能とされている。具体的には、外側軸受B1は、可動支持部8Aと、ローラー部8Rと、を有している。可動支持部8Aは、上述のケーシング4上によって支持されている。可動支持部8Aは、軸線Acに直交する面内で、ケーシング4から筒部21に向かって延びる棒状をなしている。可動支持部8Aの先端(筒部21に近接する側の端部)には、ローラー部8Rが設けられている。ローラー部8Rは、軸線Acに平行な方向に延びる回動軸回りに回動可能な車輪である。ローラー部8Rは、筒部外周面2Sに当接しながら回動することで、当該筒部21を支持している。
【0018】
可動支持部8Aの基端(先端とは反対側の端部)には、アクチュエータ8が取り付けられている。アクチュエータ8として具体的には、外部から受け付けた電気信号によって駆動するソレノイドやステッピングモータ等が好適に用いられる。このアクチュエータ8を駆動させることで、可動支持部8Aは、軸線Acに直交する面を含む方向に自在に移動することが可能とされている。アクチュエータ8は、後述する制御装置90から送出された電気信号に基づいて動作する。つまり、アクチュエータ8は、信号線によって制御装置90に電気的に接続されている。
【0019】
(ギャップ検出部の構成)
図1に示すように、ケーシング4の内周面(ケーシング内周面5A)には、ギャップ検出部Sgが設けられている。ギャップ検出部Sgは、ステータ1(ステータ磁石1B)と、第一ロータ2の外周面(第一ロータ外周面22S)との間の径方向の離間距離であるエアギャップを非接触で検出する。ギャップ検出部Sgとして具体的には、静電容量型の距離センサが好適に用いられる。ギャップ検出部Sgが検出したエアギャップの値は、後述する制御装置90に入力される。つまり、ギャップ検出部Sgは、信号線によって制御装置90に電気的に接続されている(図3参照)。
【0020】
(制御装置の構成)
図4に示すように、制御装置90は、CPU91(Central Processing Unit)、ROM92(Read Only Memory)、RAM93(Random Access Memory)、HDD94(Hard Disk Drive)、信号送受信モジュール95(I/O:Input/Output)を備えるコンピュータである。信号送受信モジュール95は、上述のギャップ検出部Sgが検出したエアギャップの値を電気信号として受信する。また、信号送受信モジュール95は、上述のアクチュエータ8に、当該アクチュエータ8の駆動を制御する電気信号を送信する。なお、信号送受信モジュール95は、例えばチャージアンプ等を介して増幅された信号を送受信してもよい。
【0021】
図5に示すように、制御装置90のCPU91は予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、制御部81、記憶部82、判定部83、及び駆動部84、を有する。制御部81は、記憶部82、判定部83、及び駆動部84の動作を制御する。記憶部82は、適正なエアギャップの値と、上述の各外側軸受B1(ローラー部8R)の位置座標との関係をテーブルとして予め記憶している。
【0022】
判定部83は、ギャップ検出部Sgの検出結果と、記憶部82に格納されたテーブルとを照合して、エアギャップの調整(つまり、外側軸受B1の移動)が必要であるか否かを判定する。さらに、判定部83は、外側軸受B1の移動が必要である場合には、その移動量を算出する。駆動部84は、判定部83の判定結果に基づいて、アクチュエータ8を駆動する。
【0023】
(作用効果)
次に、上述の磁気ギアード回転電機100の動作について説明する。磁気ギアード回転電機100を電動機として用いる場合、まずコイルCに外部から電力を供給する。これにより、コイルCが励磁される。このコイルCの磁力によって、第二ロータ3が軸線Ac回りに回転する。さらに、第二ロータ3が回転することによって、第一ロータ2が回転する。第一ロータ2の回転数は、第一ロータ2の極数Ph、及び第二ロータ3の極対数Nsに基づく減速比のもとで減速されている。具体的には、減速比Gは、G=Ph/Nsとなる。
【0024】
一方で、磁気ギアード回転電機100を発電機として用いる場合には、回転軸6に軸線Ac回りの回転力(トルク)を与える。これにより、回転軸6の回転によって第一ロータ2、及び第二ロータ3が回転する。第一ロータ2、及び第二ロータ3の回転に伴って、コイルCで誘導起電力が発生する。この電力を外部に取り出すことで、磁気ギアード回転電機100を発電機として用いることが可能となる。
【0025】
ところで、上記のような磁気ギアード回転電機100では、ステータ1に対して第一ロータ2が、転がり軸受を介して回転可能に支持されることが従来一般的であった。しかしながら、ステータやロータの寸法公差や自重または外力による変形、経年使用による摩耗や寸法の変化が生じる場合がある。このため、ステータ1と第一ロータ2との間のエアギャップが変化する虞がある。その結果、磁気ギアード回転電機の安定的な運用が阻害されてしまう可能性があった。
【0026】
そこで、本実施形態では、第一ロータ2を上述した外側軸受B1(可動軸受)によって支持する構成を採っている。この構成によれば、第一ロータ2の外周面(筒部外周面2S)は、複数の外側軸受B1によって支持されている。さらに、これら外側軸受B1は、アクチュエータ8によって軸線Acに直交する面を含む方向に移動することが可能とされている。これにより、ステータ1と第一ロータ2との間の離間距離(エアギャップ)が変化した場合には、当該変化の量に応じて外側軸受B1を移動させることで、変化する前のエアギャップを復元することができる。その結果、長期にわたってエアギャップを適正に維持することができる。これにより、磁気ギアード回転電機100をより長期にわたって安定的に運用することが可能となる。
【0027】
さらに、上記構成によれば、可動支持部8Aの先端に設けられたローラー部8Rによって、第一ロータ2を、円滑に回動可能な状態で支持することができる。
【0028】
加えて、上記構成によれば、ギャップ検出部Sgの検出結果に基づいて制御装置90がアクチュエータ8を駆動する。これにより、エアギャップに変化が生じた場合には、直ちにこれを検知し、エアギャップを自律的に適正化することができる。
【0029】
また、上記構成によれば、ギャップ検出部Sgとして、静電容量型センサを用いることから、ステータ1と第一ロータ2との間の離間距離(エアギャップ)を非接触の状態で正確に検出することができる。このため、ギャップ検出部Sgが第一ロータ2の回転を妨げることない。これにより、さらに安定的に磁気ギアード回転電機100を運用することができる。
【0030】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、外側軸受B1のみが可動軸受とされ、この可動軸受によって第一ロータ2のみが支持されている例について説明した。しかしながら、外側軸受B1に加えて内側軸受B2も上述の可動軸受とする構成を採ることも可能である。また、内側軸受B2のみを可動軸受とする構成を採ることも可能である。
【0031】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、ケーシング4、及び第一ロータ2の形状が第一実施形態とは異なっている。ケーシング4、及び第一ロータ2は、軸線Acに対して傾斜する方向に延びている。また、本実施形態に係る磁気ギアード回転電機200は、ロータ移動部8Bをさらに備えている。
【0032】
より具体的には、ケーシング4、及び第一ロータ本体2Hは、軸線Ac方向の一方側から他方側に向かうに従って、径方向内側から外側に向かって延びている。これにより、ステータ1(ステータ磁石1B)の内周面は、軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に向かって延びている。この内周面に径方向から対向する第一ロータ2の外周面(第一ロータ外周面22S)も同様に、軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に向かって延びている。
【0033】
さらに、第一ロータ2は、ロータ移動部8Bによって、軸線Ac方向に移動可能とされている。つまり、ロータ移動部8Bを駆動することによって、第一ロータ2は、ステータ1に対して相対変位する。詳しくは図示しないが、ロータ移動部8Bは、第一実施形態で説明した構成と同様に、ギャップ検出部Sgの検出結果に基づく制御装置90の処理によってその動作が制御される。
【0034】
上記構成によれば、ステータ1の内周面、及び第一ロータ2の外周面(第一ロータ外周面22S)が、軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に延びている。したがって、例えば第一ロータ2を軸線Ac方向他方側に移動させた場合、これらステータ1と第一ロータ2との間の離間距離(エアギャップ)は小さくなる方向に変化する。反対に、第一ロータ2を軸線Ac方向一方側に移動させた場合、これらステータ1と第一ロータ2との間のエアギャップは大きくなる方向に変化する。このように、第一ロータ2をロータ移動部8Bによって移動させることのみによって、容易にエアギャップを調節することができる。その結果、長期にわたってエアギャップが適正に維持され、磁気ギアード回転電機100を安定的に運用することができる。
【0035】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、第二実施形態の構成に、第一実施形態で説明した外側軸受B1(可動軸受)の構成を組み合わせることも可能である。また、上記第二実施形態では、ケーシング4と第一ロータ2の全体が軸線Acに対して傾斜している構成について説明した。しかしながら、上記のように第一ロータ2を軸線Ac方向に移動させることでエアギャップを適正化する上では、少なくともステータ1の内周面、及び第一ロータ2の外周面(第一ロータ外周面22S)のみが、軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に延びていればよい。言い換えれば、これら内周面及び外周面を除く他の部材の構成は設計や仕様に応じて適宜変更することが可能である。
【0036】
<付記>
各実施形態に記載の磁気ギアード回転電機100は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係る磁気ギアード回転電機100は、ケーシング4と、ケーシング4に固定されて軸線Acを中心として環状をなすステータコア1A、該ステータコア1AのスロットS内に設けられたコイルC、及び、前記ステータコア1Aの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石1Bを有するステータ1と、該ステータ1の内側で、前記軸線Acの周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピース2Pを有する第一ロータ2と、該第一ロータ2の内側に設けられたロータコア3A、及び、該ロータコア3Aに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石3Bを有する第二ロータ3と、前記ケーシング4に設けられて、前記第一ロータ2及び前記第二ロータ3の少なくとも一方の外周面に当接するとともに周方向に間隔をあけて配置された複数の可動軸受と、これら可動軸受を、前記軸線Acに直交する面を含む方向に移動させるアクチュエータ8と、を備える。
【0038】
上記構成によれば、第一ロータ2及び第二ロータ3の少なくとも一方の外周面は、複数の可動軸受によって支持されている。さらに、これら可動軸受は、アクチュエータ8によって軸線Acに直交する面を含む方向に移動することが可能とされている。これにより、ステータ1と第一ロータ2との間の離間距離(エアギャップ)が変化した場合には、当該変化の量に応じて可動軸受を移動させることで、変化する前のエアギャップを復元することができる。その結果、長期にわたってエアギャップを適正に維持することができる。
【0039】
(2)第2の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記可動軸受は、前記ケーシング4に対して相対変位可能に支持されている可動支持部8Aと、該可動支持部8Aの先端に設けられ、前記外周面に当接しながら回動するローラー部8Rと、を有する。
【0040】
上記構成によれば、可動支持部8Aの先端に設けられたローラー部8Rによって、第一ロータ2及び第二ロータ3の少なくとも一方を、円滑に回動可能な状態で支持することができる。
【0041】
(3)第3の態様に係る磁気ギアード回転電機100は、前記ケーシング4内に設けられ、前記第一ロータ2と前記ステータ1との間の径方向の離間距離であるエアギャップを検出するギャップ検出部Sgと、該ギャップ検出部Sgの検出結果に基づいて、前記アクチュエータ8を駆動する制御装置90と、をさらに備える。
【0042】
上記構成によれば、ギャップ検出部Sgの検出結果に基づいて制御装置90がアクチュエータ8を駆動する。これにより、エアギャップに変化が生じた場合には、直ちにこれを検知し、エアギャップを自律的に適正化することができる。
【0043】
(4)第4の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記ギャップ検出部Sgは、静電容量型センサである。
【0044】
上記構成によれば、ギャップ検出部Sgとして、静電容量型センサを用いることから、ステータ1と第一ロータ2との間の離間距離(エアギャップ)を非接触の状態で正確に検出することができる。このため、ギャップ検出部Sgが第一ロータ2の回転を妨げることない。これにより、さらに安定的に磁気ギアード回転電機100を運用することができる。
【0045】
(5)第5の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記ステータ1の内周面、及び該内周面に径方向から対向する前記第一ロータ2の外周面は、前記軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に延び、前記第一ロータ2を前記軸線Ac方向に移動させるロータ移動部8Bをさらに備える。
【0046】
上記構成によれば、ステータ1の内周面、及び第一ロータ2の外周面が、軸線Ac方向一方側から他方側に向かうに従って、径方向外側から内側に延びている。したがって、例えば第一ロータ2を軸線Ac方向他方側に移動させた場合、これらステータ1と第一ロータ2との間の離間距離(エアギャップ)は小さくなる方向に変化する。反対に、第一ロータ2を軸線Ac方向一方側に移動させた場合、これらステータ1と第一ロータ2との間のエアギャップは大きくなる方向に変化する。このように、第一ロータ2をロータ移動部8Bによって移動させることのみによって、容易にエアギャップを調節することができる。
【符号の説明】
【0047】
100,200 磁気ギアード回転電機
1 ステータ
1A ステータコア
1B ステータ磁石
1S 円筒内周面
2 第一ロータ
21 筒部
22 支持部
22S 第一ロータ外周面
2H 第一ロータ本体
2P ポールピース
2S 筒部外周面
3 第二ロータ
3A ロータコア
3B ロータ磁石
4 ケーシング
5 円板部
5A ケーシング内周面
6 回転軸
8 アクチュエータ
8A 可動支持部
8B ロータ移動部
8R ローラー部
71 バックヨーク
72 ティース本体
73 ティース先端部
81 制御部
82 記憶部
83 判定部
84 駆動部
90 制御装置
91 CPU
92 ROM
93 RAM
94 HDD
95 信号送受信モジュール
Ac 軸線
B 軸受
B1 外側軸受(可動軸受)
B2 内側軸受
BL 下部軸受
BU 上部軸受
C コイル
S スロット
Sg ギャップ検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6