(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20231121BHJP
H01H 3/12 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01H13/14 A
H01H3/12 E
(21)【出願番号】P 2020018598
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土岐 侑丞
(72)【発明者】
【氏名】境井 貴行
(72)【発明者】
【氏名】石見 崇
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-130411(JP,A)
【文献】実開昭55-022912(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/14
H01H 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置ケースと、
前記装置ケース内に設けられ、互いの接触が可能な第1固定接点及び第1可動接点と、
前記第1可動接点を移動させるための操作子と、
前記装置ケース内に設けられ、前記操作子に作用して当該操作子を元の位置に復帰させる復帰バネと、
を備え、
前記操作子には、当該操作子の側面から突出した鍔部が設けられ、前記装置ケースの内面には、前記鍔部を保持する保持部が設けられており、
前記操作子の移動方向から見たときに、前記復帰バネは、当該復帰バネの付勢力に抗して前記操作子を操作するときの操作位置からずれた位置に設けられており、前記装置ケースの内面のうちの、前記復帰バネの位置と前記操作位置とを通る直線と交差する位置に、前記保持部が設けられている、スイッチ装置。
【請求項2】
前記鍔部は、前記操作子の側面から突出した左右一対の鍔部であり、
前記保持部は、前記左右一対の鍔部を両側から保持する、請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記鍔部は、前記操作子の側面のうちの少なくとも前記第1可動接点と対向する位置に設けられている、請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記装置ケース内にて、前記操作子の移動方向において前記第1固定接点及び前記第1可動接点からずれた位置に設けられ、互いの接触が可能な第2固定接点及び第2可動接点を更に備え、
前記操作子は、前記第1可動接点及び前記第2可動接点の両方を移動させるためのものであり、
前記鍔部は、前記操作子の側面のうちの少なくとも、前記第1可動接点と対向する位置及び前記第2可動接点と対向する位置に設けられている、請求項3に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
装置ケースと、
前記装置ケース内に設けられ、互いの接触が可能な第1固定接点及び第1可動接点と、
前記第1可動接点を移動させるための操作子と、
前記装置ケース内に設けられ、前記操作子に作用して当該操作子を元の位置に復帰させる復帰バネと、
を備え、
前記装置ケース内にて、前記操作子の移動方向において前記第1固定接点及び前記第1可動接点からずれた位置に設けられ、互いの接触が可能な第2固定接点及び第2可動接点を更に備え、
前記操作子は、前記第1可動接点及び前記第2可動接点の両方を移動させるためのものであり、
前記操作子には、当該操作子の側面から突出した
左右一対の鍔部が設けられ、前記装置ケースの内面には、前記
左右一対の鍔部を
両側から保持する保持部が設けられており、
前記
左右一対の鍔部は、前記操作子の側面のうちの少なくとも、前記第1可動接点と対向する位置及び前記第2可動接点と対向する位置に設けられている、スイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復帰バネの作用で操作子が元の位置に復帰するスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
復帰バネの作用で操作子が元の位置に復帰するスイッチ装置においては、操作子と復帰バネとが直列に配置されることにより、操作子の移動方向から見たときに、復帰バネが、当該復帰バネの付勢力に抗して操作子を操作するときの通常の操作位置と同じ位置となるように設けられることが多い(例えば、特許文献1参照)。なぜなら、操作子と復帰バネとを直列に配置することにより、スイッチ装置の厚さ方向における小型化が可能になるからである。また、スイッチ装置の操作時において通常の操作位置が押されている限りは、操作子に対する復帰バネの作用点と操作位置とが互いに一致することになるため、操作子に傾きが発生しにくくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したスイッチ装置であっても、通常の操作位置からずれた位置(例えば、操作子の縁など)が押された場合には、操作子に対する復帰バネの作用点と操作位置との間にずれが生じ、それが原因で、操作子に傾きが発生するおそれがある。
【0005】
また、操作子と復帰バネとを直列に配置した場合、スイッチ装置の装置ケースの高さ寸法が、復帰バネが配置されるスペース分だけ必ず大きくなってしまう。従って、操作子と復帰バネとが直列に配置された構成では、スイッチ装置の高さ方向における小型化に限界があった。
【0006】
そこで、スイッチ装置の高さ方向における更なる小型化を可能にするべく、操作子と復帰バネとを並列に配置することが考えられる。しかし、操作子と復帰バネとを並列に配置すると、通常の操作位置からずれた位置に復帰バネが設けられることになるため、スイッチ装置の操作時において、そのときの操作位置と操作子に対する復帰バネの作用点との間にはずれが生じ、それが原因で、操作子に傾きが発生しやすくなる。
【0007】
このように、上述した何れのスイッチ装置においても、操作子には傾きが発生するおそれがある。操作子に傾きが発生すると、操作子の一部が装置ケースの内壁に当たりやすくなる。このため、その状態のまま操作子を上下動させると、操作子が装置ケースの内面を擦ってしまい、それが原因で操作子又は装置ケースが削れてしまうおそれがある。また、操作子又は装置ケースが削れることで摩耗粉(樹脂カスなど)が発生すると、当該摩耗粉が、スイッチ装置の接点に付着して接点の導通不良を生じるおそれがある。
【0008】
そこで本発明の目的は、操作子の傾きを抑制することが可能なスイッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスイッチ装置は、装置ケースと、第1固定接点及び第1可動接点と、操作子と、復帰バネと、を備える。ここで、第1固定接点及び第1可動接点は、装置ケース内に設けられ、互いの接触が可能な接点である。操作子は、第1可動接点を移動させるためのものである。復帰バネは、装置ケース内に設けられ、操作子に作用して当該操作子を元の位置に復帰させるバネである。そして、操作子には、当該操作子の側面から突出した鍔部が設けられ、装置ケースの内面には、鍔部を保持する保持部が設けられている。
【0010】
上記スイッチ装置によれば、鍔部が常に保持部によって保持されるため、操作子に、それを傾けようとする力が作用している場合であっても、保持部による鍔部の保持により、操作子が傾いて装置ケースの内面から離れることを抑止することが可能になる。
【0011】
上記スイッチ装置において、操作子の移動方向から見たときに、復帰バネは、当該復帰バネの付勢力に抗して前記操作子を操作するときの操作位置からずれた位置に設けられていてもよい。このような位置関係の場合、操作子には、復帰バネの位置と操作位置とを通る直線に沿った方向へ当該操作子を傾けようとする力が作用しやすくなる。そこで、そのような構成においては、装置ケースの内面のうちの、復帰バネの位置と操作位置とを通る直線と交差する位置に、保持部が設けられてもよい。これにより、操作子が傾いて装置ケースの内面から離れることが抑止されやすくなる。
【0012】
上記スイッチ装置において、鍔部は、操作子の側面から突出した左右一対の鍔部であってもよく、保持部は、左右一対の鍔部を両側から保持するものであってもよい。
【0013】
上記スイッチ装置において、鍔部は、操作子の側面のうちの少なくとも第1可動接点と対向する位置に設けられていてもよい。この構成によれば、鍔部が操作子の側面から突出している分だけ、復帰バネと第1可動接点との間の絶縁距離を大きくすることができる。
【0014】
上記スイッチ装置は、装置ケース内に設けられた第2固定接点及び第2可動接点を更に備えていてもよい。ここで、第2固定接点及び第2可動接点は、互いの接触が可能な接点であり、操作子の移動方向において第1固定接点及び第1可動接点からずれた位置に設けられている。そして、このような構成において、操作子は、第1可動接点及び第2可動接点の両方を移動させるためのものであってもよい。また、鍔部は、操作子の側面のうちの少なくとも、第1可動接点と対向する位置及び第2可動接点と対向する位置に設けられていてもよい。この構成によれば、鍔部が操作子の側面から突出している分だけ、復帰バネと第1可動接点との間の絶縁距離を大きくすることができ、且つ、復帰バネと第2可動接点との間の絶縁距離を大きくすることができる。よって、第1可動接点と第2可動接点とが、復帰バネを経由して電気的に短絡することが防止されやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スイッチ装置において操作子の傾きを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るスイッチ装置を概念的に示した(A)正面図及び(B)平面図である。
【
図2】(A)
図1(B)のIIA-IIA線で得られる断面図、及び(B)
図1(B)のIIB-IIB線で得られる断面図である。
【
図3】(A)
図2(A)のIII-III線で得られる断面図、及び(B)
図3(A)のIIIB領域についての拡大図である。
【
図4】第1変形例に係るスイッチ装置について、
図1(B)のIIB-IIB線と同じ線で得られる断面図である。
【
図5】第2変形例に係るスイッチ装置について、
図1(B)のIIA-IIA線と同じ線で得られる断面図である。
【
図6】第2変形例に係るスイッチ装置について、
図1(B)のIIB-IIB線と同じ線で得られる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1]実施形態
図1(A)及び(B)はそれぞれ、本実施形態に係るスイッチ装置を概念的に示した正面図及び平面図である。
図2(A)は、
図1(B)のIIA-IIA線で得られる断面図であり、
図2(B)は、
図1(B)のIIB-IIB線で得られる断面図である。
図3(A)は、
図2(A)のIII-III線で得られる断面図であり、
図3(B)は、
図3(A)のIIIB領域についての拡大図である。これらの図に示されるように、スイッチ装置は、装置ケース1と、端子ユニット2A及び2Bと、スイッチング機構4と、を備える。
【0018】
本実施形態に係るスイッチ装置は、2本の電線W1及びW2の間に接続され(
図2(A)参照)、これらの間の電気的な短絡及び切断を選択的に切り替えるための装置である。そして、装置ケース1の底面1aには、電線W1及びW2がそれぞれ差し込まれる電線挿入穴11a及び11bが左右に設けられている。
【0019】
端子ユニット2A及び2Bは、電線挿入穴11a及び11bに差し込まれた電線W1及びW2との強固な接続状態をそれぞれ形成するユニットであり、一般的にプッシュイン機構と呼ばれるものである。そして本実施形態では、端子ユニット2A及び2Bは、装置ケース1内において、電線挿入穴11a及び11bの奥側に形成された設置空間10a及び10bにそれぞれ設置されている(
図2(A)参照)。
【0020】
スイッチング機構4は、端子ユニット2A及び2Bの間の電気的な短絡及び切断を選択的に切り替えるための機構である。本実施形態では、装置ケース1内における中央部分に、設置空間10a及び10bから隔離された別の空間10cが形成されており、当該空間10c内にスイッチング機構4が構築されている(
図2(A)及び(B)参照)。具体的には、スイッチング機構4は、操作子40と、固定接点41A及び41Bと、可動接点42A及び42Bと、復帰バネ44と、によって構成されている。
【0021】
操作子40は、可動接点42A及び42Bを上下方向に移動させるための操作子であり、装置ケース1の天面1bから一部が上方へ突き出るように配置されている(
図2(A)及び(B)参照)。そして、操作子40の正面40aと対向する装置ケース1の内面101aには、操作子40の移動方向に延びたガイド溝102(
図2(B)参照)が形成されている。また、操作子40の正面40aには、ガイド溝102に摺動可能に嵌まる爪部400が形成されている。そして、ガイド溝102に爪部400が係合することにより、操作子40の上下方向の可動範囲がガイド溝102によって規定されている。
【0022】
固定接点41A及び41Bは、装置ケース1内に固定された接点である(
図2(A)参照)。本実施形態では、端子ユニット2Aは、電線挿入穴11aに差し込まれた電線W1に接続される端子21Aを備え、当該端子21Aが、設置空間10aから延びて空間10c内へ突き出ている。そして、端子21Aのうちの空間10c内へ突き出た部分に、固定接点41Aが固定されている。また、端子ユニット2Bは、電線挿入穴11bに差し込まれた電線W2に接続される端子21Bを備え、当該端子21Bが、設置空間10bから延びて空間10c内へ突き出ている。そして、端子21Bのうちの空間10c内へ突き出た部分に、固定接点41Bが固定されている。
【0023】
可動接点42A及び42Bはそれぞれ、それらを互いに導通させる導電部材401に、固定接点41A及び41Bと対向する位置(
図2(A)では上方位置)にて固定されている。そして、可動接点42A及び42Bは、導電部材401によって互いの位置関係が保持された状態で、固定接点41A及び41Bから上方へ離間した開放位置(
図2(A)参照)と、固定接点41A及び41Bに接触した閉塞位置(不図示)と、の間を操作子40の上下動に応じて移動する。
【0024】
より具体的には、操作子40にガイド開口部402が形成されている(
図2(A)~
図3(A)参照)。ここで、ガイド開口部402は、これを導電部材401が横方向に貫通した状態で、操作子40に対する導電部材401の相対的な上下動を可能すると共に当該上下動をガイドするものである。そして、ガイド開口部402内において、当該ガイド開口部402の天面と導電部材401との間に圧縮バネ403が配置されており、これにより、導電部材401が常に固定接点41A及び41Bの方(図面では下方)へ向けて押圧されている。尚、圧縮バネ403に代えて、引張バネが、ガイド開口部402の底面と導電部材401との間に配置されることにより、導電部材401が常に固定接点41A及び41Bの方(図面では下方)へ向けて引っ張られてもよい。このように、操作子40には、導電部材401の相対的な上下動を可能にするプランジャ機構が設けられている。
【0025】
そして、上記プランジャ機構によれば、次のような動作が可能になる。即ち、操作子40を押し込んで下方へ移動させることにより、当該操作子40の動作に応じて可動接点42A及び42Bも下方へ移動し、その後、可動接点42A及び42Bがそれぞれ固定接点41A及び41Bに接触した場合には、操作子40が更に押し込まれたとしても、可動接点42A及び42Bの下方への移動が固定接点41A及び41Bによって抑止される。その一方で、可動接点42A及び42Bが固定接点41A及び41Bに接触してから操作子40が更に押し込まれた場合には、ガイド開口部402内を導電部材401が相対的に上方へ移動する。これにより、当該導電部材401の移動分だけ圧縮バネ403が圧縮され、そのときの圧縮バネ403の弾性力が、可動接点42A及び42Bを固定接点41A及び41Bへ向けて押圧する力として、導電部材401を通じて可動接点42A及び42Bに付与される。よって、固定接点41A及び41Bと可動接点42A及び42Bとの間には、これらの閉塞時において良好な接続状態が形成されやすい。
【0026】
このようなスイッチング機構4の構成によれば、端子ユニット2A及び2Bの間の電気的な短絡及び切断が、操作子40の上下動に応じて選択的に切り替わる。そして本実施形態では、スイッチング機構4は更に、可動接点42A及び42Bが常開接点となるように構成されている。
【0027】
具体的には、装置ケース1内に復帰バネ44が設けられており、当該復帰バネ44が操作子40に作用している(
図2(B)~
図3(B)参照)。ここで、復帰バネ44は、操作子40に作用することにより、当該操作子40を、天面1bから上方へ突き出た元の位置(本実施形態では、爪部400がガイド溝102の上端に達した位置)に復帰させる圧縮バネである。
【0028】
より具体的には、操作子40の背面40bに、上下に延びた溝部404が形成されており、当該溝部404内に復帰バネ44が配置されることにより、操作子40と並列に復帰バネ44が配置されている(
図2(B)~3(B)参照)。本実施形態では、操作子40の背面40bのうちの、操作子40が上記元の位置にある場合において装置ケース1の天面1bよりも下側になる領域に、溝部404が形成されている。そして、復帰バネ44を操作子40に作用させるべく、復帰バネ44の上端部に挿入される突起部405が溝部404の上端面に形成されている。また、操作子40の背面40bと対向する装置ケース1の内面101bには、操作子40が下方へ移動したときに突起部405との間で復帰バネ44を圧縮させるべく、当該復帰バネ44の下端部を受ける受け部103が、溝部404内へ突出した状態で形成されている。
【0029】
このような構成によれば、可動接点42A及び42Bは、操作子40を介して常に開放位置へ向けて付勢された状態となる。また、操作子40と復帰バネ44とが並列に配置されるため、スイッチ装置の高さ方向における小型化が可能になる。その一方で、操作子40の移動方向からスイッチ装置を見たときに(
図3(A)参照)、復帰バネ44は、当該復帰バネ44の付勢力に抗して操作子40を操作するときの通常の操作位置Pc(操作子40を下方へ移動させる際に当該操作子40に対して外部から力が付与される通常の位置。
図2(B)も参照)からずれた位置に設けられることになる。このため、スイッチ装置の操作時において、そのときの操作位置と操作子40に対する復帰バネ44の作用点との間にはずれが生じ、それが原因で、操作子40に傾きが発生しやすくなる。
【0030】
本実施形態では、復帰バネ44は圧縮バネであり、当該復帰バネ44が操作子40の背面40b側に配置されているため、操作子40には、その上部が装置ケース1の内面101bから離れようとする傾き(前方への傾き)が発生しやすくなる。換言すれば、操作子40の移動方向から見たときに、操作子40には、復帰バネ44の位置と通常の操作位置Pcとを通る直線に沿った方向(本実施形態では、復帰バネ44の位置から通常の操作位置Pcへ向かう方向)へ当該操作子40を傾けようとする力が作用しやすくなる。そして、操作子40に傾きが発生すると、操作子40の一部が装置ケース1の内面101bに当たりやすくなる。このため、その状態のまま操作子40を上下動させると、操作子40が装置ケース1の内面101bを擦ってしまい、それが原因で操作子40又は装置ケース1が削れてしまうおそれがある。また、操作子40又は装置ケース1が削れることで摩耗粉(樹脂カスなど)が発生すると、当該摩耗粉が、スイッチ装置の接点(固定接点や可動接点)に付着して接点の導通不良を生じるおそれがある。
【0031】
そこで本実施形態では、操作子40の傾きを抑止するための傾き抑止構造として、次のような構造がスイッチ装置に構築されている(
図3(B)参照)。即ち、操作子40に対して復帰バネ44の位置と同じ側(即ち、操作子40の背面40b側)において、操作子40には、当該操作子40の左側面40c及び右側面40dから突出した左右一対の鍔部45A及び45Bが設けられており、装置ケース1の内面101bには、当該左右一対の鍔部45A及び45Bを両側から保持する保持部104が設けられている。換言すれば、装置ケース1の内面101bのうちの、操作子40の移動方向から見たときに復帰バネ44の位置と通常の操作位置Pcとを通る直線と交差する位置に、保持部104が設けられている。
【0032】
具体的には、鍔部45A及び45Bは、それらの背面が操作子40の背面40bと同一平面で揃うように形成されている。そして、保持部104は、鍔部45A及び45Bを保持したときに、上下方向における鍔部45A及び45Bの摺動を妨げず、且つ、操作子40の背面40bを装置ケース1の内面101bに接触又は近接させると共にその状態を維持できるように構成されている。本実施形態では、保持部104は、左右一対のガイド溝104A及び104Bを有し、当該ガイド溝104A及び104Bに鍔部45A及び45Bがそれぞれ嵌められることにより、鍔部45A及び45Bが、保持部104によって摺動自在に保持されている。
【0033】
このような傾き抑止構造によれば、通常の操作位置Pcからずれた位置に復帰バネ44が設けられることにより、操作子40に、それを傾けようとする力が作用している場合であっても、左右一対の鍔部45A及び45Bが常に保持部104によって保持されるため、その保持により、操作子40が傾いて装置ケース1の内面101bから離れることが抑止される。これにより、操作子40や装置ケース1などの削れが生じにくくなり、従って、摩耗粉の発生が抑制されて接点の導通不良が生じにくくなる。
【0034】
また、このような構成において、操作子40の傾きを効率良く抑止するためには、操作子40が傾いたときに装置ケース1の内面101bから離れる距離が最も大きくなる上部を、保持部104によって保持してもよい。例えば、保持部104は、装置ケース1の内面101bにおける少なくとも上部の位置に設けられる。尚、
図2(A)には、装置ケース1の内面101bにおける比較的上部の位置に保持部104を設けた場合が示されている。
【0035】
このように、本実施形態のスイッチ装置によれば、操作子40の傾きを抑制することが可能になる。
【0036】
更に、上述した傾き抑止構造を備えたスイッチ装置においては、左右一対の鍔部45A及び45Bは、操作子40の左側面40c及び右側面40dのうちの少なくとも可動接点42A及び42Bと対向する位置に設けられていることが好ましい。より好ましくは、操作子40並びに可動接点42A及び42Bが、それらの可動範囲内におけるどの位置にある場合であっても、鍔部45A及び45Bが可動接点42A及び42Bと必ず対向するように、鍔部45A及び45Bは、それらの位置や長さなどが考慮されて左側面40c及び右側面40dに設けられる(
図2(A)参照)。
【0037】
このような構成によれば、左右一対の鍔部45A及び45Bが左側面40c及び右側面40dから突出している分だけ、復帰バネ44と導電部材401(可動接点42A及び42B)との間の絶縁距離を大きくすることができる(
図3(B)参照)。ここで、絶縁距離は、絶縁部材である操作子40を迂回して導電部材401から復帰バネ44に至るまでの最短経路Riの長さであり、本実施形態では、当該最短経路Riは、操作子40の背面40bと左側面40c又は右側面40dとを経由して復帰バネ44から導電部材401に至る経路である。
【0038】
[2]変形例
[2-1]第1変形例
図4は、第1変形例に係るスイッチ装置について、
図1(B)のIIB-IIB線と同じ線で得られる断面図である。
図4のスイッチ装置においては、操作子40と復帰バネ44とが直列に配置されることにより、復帰バネ44が、通常の操作位置Pcと同じ位置となるように設けられている。このような構成によれば、スイッチ装置の操作時において通常の操作位置Pcが押されている限りは、操作子40に対する復帰バネ44の作用点と操作位置とが互いに一致することになるため、操作子40には傾きが生じにくい。一方、このようなスイッチ装置であっても、
図4に示されるように通常の操作位置Pcからずれた位置(操作位置Pd。例えば、操作子40の縁など)が押された場合には、操作子40に対する復帰バネ44の作用点と操作位置との間にずれが生じ、それが原因で、操作子40に傾きが発生するおそれがある。
【0039】
そこで、
図4のスイッチ装置においても、上記実施形態で説明した傾き抑止構造が設けられることが好ましく、それにより、操作子40の傾きを抑制することが可能になる。
【0040】
[2-2]第2変形例
上述したスイッチ装置は、同じ構成のものを上下2段重ねにして構成されたスイッチ装置に変形されてもよい。
図5は、そのようなスイッチ装置の一例を第1変形例として示したものであり、
図1(B)のIIA-IIA線と同じ線で得られる断面図である。また、
図6は、第1変形例に係るスイッチ装置について、
図1(B)のIIB-IIB線と同じ線で得られる断面図である。
図5及び
図6では、
図2(A)及び(B)に示されたスイッチ装置を1段目として、その下に2段目のスイッチ装置を構成したものが示されている。
【0041】
具体的には、
図2(A)及び(B)に示された装置ケース1を1段目の部分131として、その底面131a(
図2(A)に示された装置ケース1の底面1aに相当)のうちの左右の電線挿入穴11a及び11bの間の領域から下方に2段目の部分132が拡がっている。そして、当該2段目の部分132の底面132aには、電線挿入穴11a及び11bに差し込まれる電線W1及びW2とは別の電線W3及びW4が差し込まれる電線挿入穴14a及び14bが左右に設けられている(
図5参照)。
【0042】
そして、2段目の部分132においても、1段目の部分131と同様、左右の電線挿入穴14a及び14bにそれぞれ対応させて、プッシュイン機構である端子ユニット2A及び2Bが設けられている(
図5参照)。
【0043】
また、スイッチング機構4は、2段目の部分132における端子ユニット2A及び2Bの間の電気的な短絡及び切断(即ち、2段目の部分132における固定接点41A及び41Bと可動接点42A及び42Bとの接触及び離間)と、1段目の部分131における端子ユニット2A及び2Bの間の電気的な短絡及び切断とが、1つの操作子40の上下動に応じて連動して切り替わるように構成されている(
図5参照)。
【0044】
具体的には、装置ケース1内において空間10cが1段目の部分131から2段目の部分132まで下方へ拡がっている(
図5及び
図6参照)。また、操作子40及び復帰バネ44も、空間10c内を2段目の部分132まで下方へ延びている。そして、操作子40には、1段目の部分131及び2段目の部分132のそれぞれに、可動接点42A及び42Bが設けられると共に、それらを支持する導電部材401の相対的な上下動を可能にするプランジャ機構が設けられている。
【0045】
このような2段構造のスイッチ装置においては、装置ケース1の空間10c内にて、1段目の部分131の固定接点41A及び41B並びに可動接点42A及び42Bと、2段目の部分132の固定接点41A及び41B並びに可動接点42A及び42Bとが、操作子40の移動方向において互いにずれた位置に設けられることになる。また、操作子40は、1段目の部分131の可動接点42A及び42Bと2段目の部分132の可動接点42A及び42Bの両方を移動させるためのものになる。
【0046】
そして、このような構成においては、左右一対の鍔部45A及び45Bは、操作子40の左側面40c及び右側面40dのうちの少なくとも、1段目の部分131の可動接点42A及び42Bと対向する位置、並びに2段目の部分132の可動接点42A及び42Bと対向する位置に設けられていることが好ましい。より好ましくは、操作子40、1段目の部分131の可動接点42A及び42B、並びに2段目の部分132の可動接点42A及び42Bが、それらの可動範囲内におけるどの位置にある場合であっても、鍔部45A及び45Bが1段目の部分131の可動接点42A及び42B並びに2段目の部分132の可動接点42A及び42Bの何れとも必ず対向するように、鍔部45A及び45Bは、それらの位置や長さなどが考慮されて左側面40c及び右側面40dに設けられる(
図2(A)参照)。
【0047】
一例として
図5のスイッチ装置では、鍔部45A及び45Bは、1段目の部分131の可動接点42A及び42Bと対向する位置から2段目の部分132の可動接点42A及び42Bと対向する位置まで下方へ連続的に延びている。
【0048】
このような構成によれば、左右一対の鍔部45A及び45Bが左側面40c及び右側面40dから突出している分だけ、復帰バネ44と1段目の部分131の導電部材401(可動接点42A及び42B)との間の絶縁距離を大きくすることができ、且つ、復帰バネ44と2段目の部分132の導電部材401(可動接点42A及び42B)との間の絶縁距離を大きくすることができる。よって、1段目の部分131の導電部材401と2段目の部分132の導電部材401とが、復帰バネ44を経由して電気的に短絡することが防止されやすくなる。
【0049】
[2-2]他の変形例
端子ユニット2Aには、電線W1と端子21Aとの強固な接続状態を形成できるものであれば、プッシュイン機構に限らず、ネジ留めで電線W1と端子21Aとの強固な接続状態を形成するネジ留め機構などが用いられてもよい。端子ユニット2Bについても同様である。
【0050】
上記実施形態のスイッチ装置(
図2(A))において、可動接点42A及び42Bは、通常の常開接点に限らず、アーリーメイクされた常開接点(通常の常開接点よりも早く閉塞する接点)となるように構成されてもよいし、常閉接点となるように構成されてもよい。また、上記第1変形例のスイッチ装置(
図5)において、1段目の部分131及び2段目の部分132の少なくとも何れか一方が、通常の常開接点に限らず、アーリーメイクされた常開接点となるように構成されてもよいし、常閉接点となるように構成されてもよい。
【0051】
上述したスイッチ装置において、復帰バネ44は、引張バネや板バネなどであってもよい。復帰バネ44として引張バネが用いられた場合には、操作子40の傾きの方向が、圧縮バネが用いられた場合とは逆になる。この場合、左右一対の鍔部45A及び45Bと保持部104とで構成される傾き抑止構造は、操作子40に対して復帰バネ44の位置と反対側(即ち、操作子40の正面40a側)に設けられてもよい。また、傾き抑止構造は、操作子40に対して復帰バネ44の位置と同じ側及び反対側の両方に設けられてもよい。
【0052】
上述したスイッチ装置において、傾き抑止構造は、左右一対の鍔部45A及び45Bを保持部104で保持したものに限らず、操作子40に1つの鍔部を設け、当該1つの鍔部を保持部で保持したものに適宜変更されてもよい。また、傾き抑止構造を構成する鍔部及び保持部は、操作子40の傾きを抑止できるものであれば、上述した構成(形状など)以外のものに適宜変更されてもよい。
【0053】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態及び変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 装置ケース
1a 底面
1b 天面
2A、2B 端子ユニット
4 スイッチング機構
10a、10b 設置空間
10c 空間
11a、11b、14a、14b 電線挿入穴
21A、21B 端子
40 操作子
40a 正面
40b 背面
40c 左側面
40d 右側面
41A、41B 固定接点
42A、42B 可動接点
44 復帰バネ
45A、45B 鍔部
Pc、Pd 操作位置
Ri 最短経路
W1、W2、W3、W4 電線
101a、101b 内面
102 ガイド溝
103 受け部
104 保持部
104A、104B ガイド溝
131 1段目の部分
132 2段目の部分
131a、132a 底面
400 爪部
401 導電部材
402 ガイド開口部
403 圧縮バネ
404 溝部
405 突起部