(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ポリブチレンナフタレート樹脂組成物およびそれを用いた成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20231121BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20231121BHJP
C08G 63/189 20060101ALI20231121BHJP
C08F 8/46 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L23/26
C08G63/189
C08F8/46
(21)【出願番号】P 2020022545
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 良平
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-351647(JP,A)
【文献】特開2010-111759(JP,A)
【文献】特開2001-279093(JP,A)
【文献】特開2018-199789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
C08L 23/00-23/36
C08G 63/189
C08F 8/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンナフタレート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が
5.2~28dl/gである変性超高分子量ポリエチレン(B成分)を5~40重量部含有
し、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が5dl/g以下であるポリエチレンを含有しない、樹脂組成物。
【請求項2】
B成分が無水マレイン酸で変性された変性超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動性および耐加水分解性に優れるポリブチレンナフタレート樹脂組成物およびそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂は、機械特性、耐熱性、耐薬品性に優れており、電気電子部品用途や家電用途、自動車用部品用途に広く使用されている。中でもポリブチレンナフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂等と比較して摺動性や耐加水分解性に優れるという特徴を有しているため各種ギヤや研磨パッド用途に用いられている。しかしながら、摺動部品の高寿命化や高荷重化に伴って、ポリブチレンナフタレート樹脂単体では耐加水分解性や摺動性が不足する課題があることがわかってきた。
【0003】
芳香族ポリエステル樹脂の耐加水分解性を向上させる手段として、特許文献1には耐衝撃性および耐湿熱特性に優れた樹脂組成物としてポリブチレンナフタレンジカルボキシレート樹脂並びにグリシジルエステル基および酸無水物基を変性成分として含有するポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物が提案されている。しかしながら、耐衝撃性の評価はなされているものの耐湿熱性に関しては何ら記載されていない。特許文献2にはポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびエポキシ化合物からなるポリエステル樹脂組成物が提案されている。特許文献3には芳香族ポリエステル樹脂、エポキシ基含有オレフィン共重合体およびビニル共重合体からなる多層構造熱可塑性樹脂並びに変性ポリオレフィン重合体からなる耐加水分解性ポリエステル樹脂組成物が提案されている。しかしながら、いずれもポリブチレンナフタレート樹脂に関する記載はなく、また耐加水分解性の効果は若干の改善が見られるもののその効果は限定的であり十分なものではなかった。特許文献4には摺動性に優れたポリブチレンナフタレート樹脂組成物およびそれを用いた摺動部品として、ポリブチレンナフタレート樹脂、高密度ポリエチレン樹脂および酸変性ポリエチレン樹脂からなる樹脂組成物が提案されている。しかしながら、摺動時荷重が低い領域では摺動性の改善がみられるものの、摺動時荷重が高い領域では摺動性が不足しており更なる改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-339478号公報
【文献】特開平1-221448号公報
【文献】特開平4-89858号公報
【文献】特開2010-111759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、摺動性および耐加水分解性に優れるポリブチレンナフタレート樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上述の従来技術の欠点を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、ポリブチレンナフタレート樹脂に特定の極限粘度を有する変性超高分子量ポリエチレンを配合することにより、上記目的を達成することを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は(A)ポリブチレンナフタレート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が5~28dl/gである変性超高分子量ポリエチレン(B成分)5~40重量部からなる樹脂組成物により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、摺動性および耐加水分解性に優れるポリブチレンナフタレート樹脂組成物を提供することができ、本発明の樹脂組成物は、摺動性および耐加水分解性に優れるため、本発明の樹脂組成物より得られる成形体は電気電子部品や自動車用部品に加え、耐久性の要求の高い建築部材に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、更に本発明の詳細について説明する。
【0010】
<A成分について>
本発明のA成分であるポリブチレンナフタレート樹脂は、ナフタレンジカルボン酸および/またはナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体を主とするジカルボン酸成分と、1,4-ブタンジオールを主成分とするグリコール成分を用いて製造することができる。
【0011】
ナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸を主成分とするが、特性を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸を併用することができる。他のジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4′-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。他のジカルボン酸の使用量は全酸成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7-ナフタレンジカルボン酸ジメチルを主成分とするが、特性を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体を併用することができる。他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4′-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4′-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体の使用量は、全ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0012】
また、少量のトリメリット酸のような三官能性以上のジカルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸のような酸無水物を少量用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル等を少量用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。
【0013】
グリコール成分としては1,4-ブタンジオールを主成分とするが、特性を損なわない範囲で他のグリコール成分を併用することができる。他のグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリ(オキシ)テトラメチレングリコール、ポリ(オキシ)メチレングリコール等のアルキレングリコールの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。さらに少量のグリセリンのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。他のグリコール成分の使用量は、全グリコール成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0014】
かかるグリコール成分の使用量は、前記ジカルボン酸もしくはジカルボン酸のエステル形成性誘導体に対して1.1モル倍以上1.4モル倍以下であることが好ましい。グリコール成分の使用量が1.1モル倍に満たない場合にはエステル化あるいはエステル交換反応が十分に進行しない場合があり好ましくない。また、1.4モル倍を超える場合にも、理由は定かではないが反応速度が遅くなり、過剰のグリコール成分からテトラヒドロフラン等の副生物の発生量が大となる場合があり好ましくない。
【0015】
ポリブチレンナフタレート樹脂の製造においては、重合触媒としてチタン化合物が使用される。重合触媒として用いられるチタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的にはテトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-sec-ブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、これらの混合チタネートとして用いても良い。これらのチタン化合物のうち、特にテトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネートが好ましく、最も好ましいのはテトラ-n-ブチルチタネートである。チタン化合物の添加量は生成PBN中のチタン原子含有量として、10ppm以上60ppm以下であることが好ましく、より好ましくは15ppm以上30ppm以下である。生成PBN中のチタン原子含有量が60ppmを超える場合は、本発明のポリブチレンナフタレート組成物の色調および熱安定性が低下する場合があるために好ましくない。一方チタン原子含有量が10ppm未満の場合には、良好な重合活性を得ることができず、充分な高い固有粘度のポリブチレンナフタレート樹脂を得ることができない場合があり好ましくない。本発明のポリブチレンナフタレート樹脂は、ナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体を主とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主とするグリコール成分とをチタン化合物の存在下にてエステル化あるいはエステル交換反応工程と、それに続く重縮合反応工程とを経由して製造されることが好ましいが、エステル化あるいはエステル交換反応終了の際の温度が180℃以上220℃以下の範囲にある事が好ましく、180℃以上210℃以下であることがより好ましい。当該エステル化反応又はエステル交換反応終了の際の温度が220℃を超える場合には反応速度は大きくなるが、テトラヒドロフラン等の副生物が多くなり好ましくない。また、180℃未満では反応が進行しなくなる。エステル化あるいはエステル交換反応により得られた反応生成物(ビスグリコールエーテルおよび/またはその低重合体)は当該反応生成物をポリブチレンナフタレート樹脂の融点以上270℃以下の温度において0.4kPa(3Torr)以下の減圧下で重縮合させることが好ましい。重縮合反応温度が270℃を超える場合にはむしろ反応速度が低下して、着色も大となるので好ましくない。
【0016】
<B成分について>
本発明のB成分である変性超高分子量ポリエチレンは、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度[η]が5~28dl/gであり、好ましくは5~25dl/gであり、より好ましくは10~25dl/gである。B成分の極限粘度が5dl/g未満の場合、摺動性および耐加水分解性が不十分になり、28dl/gを超えると射出成形時に層剥離しやすくなり靭性が低下する。
【0017】
変性超高分子量ポリエチレンの製造に使用される変性成分としては、無水マレンイン酸、無水イタコン酸などが挙げられるが、特に無水マレイン酸が好ましい。
【0018】
変性超高分子量ポリエチレンにおける変性基の含有率は0.05~3重量%が好ましい。変性量が0.05重量%未満ではポリブチレンナフタレート樹脂との反応性が低いため層剥離しやすくなり靭性が低下する場合があり、3重量%超えると反応性が過度に高くなりゲル化する場合がある。
【0019】
変性超高分子量ポリエチレンの含有量は、ポリブチレンナフタレート樹脂100重量部に対し5~40重量部であり、好ましくは10~30重量部、より好ましくは10~25重量部である。含有量が5重量部未満の場合、耐加水分解性および摺動性が不十分であり、40重量部を超えると層剥離しやくすなり靭性が低下する。
【0020】
なお、本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲で、他の熱可塑性樹脂を配合し、必要に応じて酸化防止剤、衝撃改質剤、可塑剤、無機充填剤、非ハロゲン系難燃剤、色材、光安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑材、分散剤、流動改質剤、結晶核剤等の各添加材を含むことが出来る。
【0021】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
【0022】
<成形品について>
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。押出成形においては、丸棒を押出成形しその後円盤状に切削加工することにより成形品を得る方法や、厚肉シートを押出成形しその後所定の形状に打ち抜き加工することにより成形品を得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を実施する形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、諸物性の評価は以下の方法により実施した。
【0024】
[樹脂組成物の評価]
(1)摺動性
下記の方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後に射出成形機(東芝機械(株)製 EC130SXII―4Y)によりシリンダー温度280℃、金型温度120℃にてJIS K7218A法に準拠し、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmの中空円筒試験片を成形した。該試験片をJIS K7218A法に準拠し、ステンレス材(SUS304)でできた同様の形状の試験片と摺動させた際の動摩擦係数を測定した。試験は、荷重4000N、滑り速度200mm/s、滑り距離12mの条件で摩擦摩耗試験機(EFM-3-G、(株)オリエンテック製)を用いて実施した。滑り距離12m時点の動摩擦係数は0.1以下であることが必要である。
【0025】
(2)靭性
下記の方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後に射出成形機(東芝機械(株)製 EC130SXII―4Y)によりシリンダー温度280℃、金型温度120℃で試験片を成形し、ISO527-1およびISO527-2に従い引張試験を実施し引張破断伸びにより靭性の評価を行った。引張破断伸びは10%以上であることが必要である。
【0026】
(3)耐加水分解性
下記の方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後に射出成形機(東芝機械(株)製 EC130SXII―4Y)によりシリンダー温度280℃、金型温度120℃にて試験片を成形した。該試験片を120℃、120時間の試験条件にてプレッシャークッカーテスト((株)平山製作所製 HASTEST MODEL PC-III使用)を行い、プレッシャークッカーテスト前後の引張破断伸度保持率を以下の式にて算出した。引張破断伸度保持率は70%以上であることが必要である。
引張破断伸度保持率(%)=[試験後の引張破断伸度/試験前の引張破断伸度]×100
【0027】
[実施例1-8、比較例1-5]
表1で示した添加量に従って、A成分およびB成分を第1供給口より別々に二軸押出機に供給し280℃の温度にて溶融混練押出してペレット化した。ここで第1供給口とは根元の供給口のことである。二軸押出機は、径30mmΦのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α-31.5BW-2V)を使用した。
【0028】
本発明の実施例および比較例には、以下の材料を使用した。
【0029】
(A成分)
A-I:製造例Iで得られたポリブチレンナフタレート樹脂
<製造例I>
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル315.0部、1.4-ブタンジオール200.0部、テトラーn-ブチルチタネート0.062部をエステル交換反応槽に入れ、エステル交換反応槽が210℃となるように昇温しながら150分間エステル交換反応を行なった。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽に移して重縮合反応を開始した。重縮合反応は常圧から0.13kPa(1torr)以下まで40分かけて除々に重縮合反応層内を減圧し、同時に所定の反応温度260℃まで昇温し、以降は重縮合反応温度が260℃、圧力が0.13kPa(1torr)の状態を維持して140分間重縮合反応を行なった。140分が経過した時点で重縮合反応を終了してポリブチレンナフタレート樹脂をストランド状に抜き出し、水冷しながらカッターを用いてチップ状に切断した。次に、得られたポリブチレンナフタレート樹脂を温度213℃、圧力0.13kPa(1Torr)以下の条件にて8時間固相重合をおこないポリブチレンナフタレート樹脂を得た。
【0030】
(B成分)
B-1:製造例IIで得られた変性超高分子量ポリエチレン
<製造例II>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)12重量%、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)88重量%のポリエチレン樹脂混合物100重量部に対し、無水マレイン酸0.8重量部、および有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキシン―25B)0.07重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いB-I成分を得た。得られた変性超高分子量ポリエチレンの135℃デカリン酸中で測定した極限粘度は5.2dl/gであった。
【0031】
B-II:製造例IIIで得られた変性超高分子量ポリエチレン
<製造例III>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)30重量%、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)70重量%のポリエチレン樹脂混合物100重量部に対し、無水マレイン酸0.8重量部、および有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキシン―25B)0.07重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いB-II成分を得た。得られた変性超高分子量ポリエチレンの135℃デカリン酸中で測定した極限粘度は10.4dl/gであった。
【0032】
B-III:製造例IVで得られた変性超高分子量ポリエチレン
<製造例IV>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)80重量%、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)20重量%のポリエチレン樹脂混合物100重量部に対し、無水マレイン酸0.8重量部、および有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキシン―25B)0.07重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いB-III成分を得た。得られた変性超高分子量ポリエチレンの135℃デカリン酸中で測定した極限粘度は25dl/gであった。
【0033】
B-IV:製造例Vで得られた変性超高分子量ポリエチレン
<製造例V>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)90重量%、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)10重量%のポリエチレン樹脂混合物100重量部に対し、無水マレイン酸0.8重量部、および有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキシン―25B)0.07重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いB-IV成分を得た。得られた変性超高分子量ポリエチレンの135℃デカリン酸中で測定した極限粘度は27.8dl/gであった。
【0034】
B-V:製造例VIで得られた変性超高分子量ポリエチレン
<製造例VI>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)100重量部に対し、無水マレイン酸0.8重量部、および有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキシン―25B)0.07重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いB-V成分を得た。得られた変性超高分子量ポリエチレンの135℃デカリン酸中で測定した極限粘度は1.8dl/gであった。
【0035】
B-VI:製造例VIIで得られた超高分子量ポリエチレン
<製造例VII>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)100重量部に対し、無水マレイン酸0.8重量部、および有機過酸化物(日本油脂(株)製パーヘキシン―25B)0.07重量部をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いB-VI成分を得た。得られた変性超高分子量ポリエチレンの135℃デカリン酸中で測定した極限粘度は30dl/gであった。
【0036】
B-VII::製造例VIIIで得られた超高分子量ポリエチレン
<製造例VIII>
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が31dl/gである超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックスミリオン630M)30重量%、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度が2dl/gであるポリエチレン((株)プライムポリマー製ハイゼックス2200J)70重量%のポリエチレン樹脂混合物をナウターミキサーにて混合し、得られた混合物を250℃に設定した一軸押出機(いすず化工機(株)製EXT40m/m押出機)で溶融混練を行いB-VII成分を得た。得られた超高分子量ポリエチレンの135℃デカリン酸中で測定した極限粘度は11dl/gであった。
【0037】
【0038】
<実施例1~8>
本請求の範囲内にある組成物であるため、摺動性、靭性および耐加水分解性に優れる。
【0039】
<比較例1>
B成分を含まないため、摺動性および耐加水分解性に劣る結果であった。
【0040】
<比較例2>
B成分の添加量が多すぎるため、靭性に劣る結果であった。
【0041】
<比較例3>
B成分の極限粘度が下限を下回るため、摺動性、耐加水分解性に劣る結果であった。
【0042】
<比較例4>
B成分の極限粘度が上限を上回るため、靭性に劣る結果であった。
【0043】
<比較例5>
B成分が未変性の超高分子量ポリエチレンであるため、靭性に劣る結果であった。