(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】導電性皮膜を形成するための組成物及び導電性皮膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20231121BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20231121BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231121BHJP
C08K 5/56 20060101ALI20231121BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20231121BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20231121BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20231121BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231121BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20231121BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20231121BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20231121BHJP
【FI】
C08L83/04 ZNM
C08L75/06
C08K3/04
C08K5/56
C08G18/42 069
C23C26/00 A
H01B1/24 A
H01B13/00 503Z
H01M8/0206
H01M8/0213
H01M8/0228
(21)【出願番号】P 2020031618
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大地
(72)【発明者】
【氏名】柳本 博
(72)【発明者】
【氏名】青柳 太洋
(72)【発明者】
【氏名】土居 誠司
(72)【発明者】
【氏名】一宮 洋介
(72)【発明者】
【氏名】産一 盛裕
(72)【発明者】
【氏名】加東 隆
(72)【発明者】
【氏名】谷川 一平
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-229288(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029988(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109575777(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109439175(CN,A)
【文献】国際公開第2021/020396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00- 75/16
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
C08G 18/00- 18/87
C23C 26/00- 26/02
H01B 1/00- 1/24
H01B 13/00- 13/34
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層カーボンナノチューブ、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤、ケイ素樹脂及び有機金属化合物を含み、
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤が、有機イソシアネート部分、該有機イソシアネート部分とウレタン結合を介して連結された2個以上のポリカプロラクトン部分、該ポリカプロラクトン部分とエステル結合を介して連結された直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する末端部分、及び該有機イソシアネート部分とウレタン結合又は尿素結合を介して連結された3級アミノ基を有する末端部分を有し、且つアミン価が10~100 mgKOH/gであり、
有機金属化合物が、チタン、ジルコニウム及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む、有機金属キレート化合物及び金属アルコキシドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の量が、100質量部の多層カーボンナノチューブあたり50~150質量部の範囲であり、
ケイ素樹脂及び有機金属化合物の量が、20質量部の多層カーボンナノチューブあたり40~70質量部の範囲であり、
界面活性剤
を含まない、
導電性皮膜を形成するための組成物。
【請求項2】
多層カーボンナノチューブが、5~100層を有し、且つ5~150 nmの範囲の直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の固形分含有量が、40~55%の範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の数平均分子量が、4000~8000の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ケイ素樹脂が、アルコキシシリル基、アルコキシシリレン基及びシロキサン結合からなる群より選択される少なくとも1種のケイ素含有基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ケイ素樹脂が、アクリルシリコーン樹脂である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
有機金属化合物が、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテートである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を金属基材に塗布する、塗布工程、
を含む、導電性皮膜の製造方法。
【請求項9】
塗布工程で得られた未硬化の皮膜を熱処理することによって硬化処理する、硬化工程、をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に使用されるセパレーターに好適な導電性皮膜を形成するための組成物及び導電性皮膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素及び酸素を電気化学的に反応させて起電力を得る。燃料電池の発電に伴って生じる生成物は、原理的に水のみである。それ故、地球環境への負荷がほとんどない、クリーンな発電システムとして注目されている。
【0003】
燃料電池は、電解質膜の両面に電極触媒層が配置された、膜電極接合体(以下、「MEA」とも記載する)を基本単位として構成される。燃料電池の運転時には、アノード(燃料極)側の電極触媒層に水素を含む燃料ガスを、カソード(空気極)側の電極触媒層に酸素を含む酸化ガスを、それぞれ供給することにより、起電力を得る。アノードでは酸化反応が、カソードでは還元反応が進行し、外部回路に起電力を供給する。
【0004】
燃料電池においては、通常は、MEAの各電極触媒層の外側にガス拡散層が配置され、ガス拡散層の外側にセパレーターがさらに配置されて、燃料電池セルが構成される。燃料電池は、通常は、所望の電力に基づき、必要となる複数の燃料電池セルの組み合わせ(以下、「燃料電池スタック」とも記載する)として使用される。
【0005】
セパレーターは、各燃料電池セルに供給される燃料ガス及び空気を遮断するだけでなく、外部への電流伝達部としても機能する。このため、セパレーターには、気密性だけでなく、導電性、耐錆性及び熱伝導性が要求される。従来、セパレーターには、カーボン基材が使用されてきたが、近年では、金属基材の表面に導電性皮膜を配置した材料も使用される。
【0006】
導電性皮膜としては、例えば、特許文献1は、透明基材の少なくとも片面上に、カーボンナノチューブ100本中50本以上の割合で内径が3 nm以上のカーボンナノチューブが含まれ、かつ該内径3 nm以上のカーボンナノチューブ100本中に50本以上の割合で、層数が単層から5層であるカーボンナノチューブを含有する層を形成してなる透明導電性フィルムを記載する。当該文献は、カーボンナノチューブを含有してなる液を含む液を基材表面にコーティングすることを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法を記載する。当該文献はまた、前記液が芳香族系イオン性界面活性剤及び/又は芳香族系非イオン性界面活性剤である分散剤を含んでもよいことを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように、導電性皮膜及び該導電性皮膜を形成するための組成物は、燃料電池に使用されるセパレーターの金属基材の表面処理に好適である。しかしながら、従来の導電性皮膜及び該導電性皮膜を形成するための組成物は、導電性及び防錆性の点で課題が存在した。例えば、特許文献1に記載の透明導電性フィルムの場合、層数が単層から5層であるカーボンナノチューブが使用される。このような導電性フィルムを形成するための組成物において、より有効な導電性を付与するためにカーボンナノチューブの層数を多層に変更すると、界面活性剤のような分散剤ではカーボンナノチューブの表面への親和性が不十分である。このため、カーボンナノチューブの分散性が不十分となり、結果として得られる皮膜の導電性及び防錆性が低下し得る。
【0009】
それ故、本発明は、界面活性剤を使用することなく、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成し得る組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤、ケイ素樹脂及び有機金属化合物をカーボンナノチューブの固定剤に用いることにより、多層カーボンナノチューブであっても良好な粘度を示す組成物を調製できることを見出した。この組成物は、良好な分散性を示すことから、燃料電池に使用されるセパレーターの金属基材の表面処理に好適な皮膜の製造に使用することができる。本発明者らは、前記知見に基づき、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 多層カーボンナノチューブ、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤、ケイ素樹脂及び有機金属化合物を含む、導電性皮膜を形成するための組成物。
(2) 多層カーボンナノチューブが、5~100層を有し、且つ5~150 nmの範囲の直径を有する、前記実施形態(1)に記載の組成物。
(3) ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤が、有機イソシアネート部分、該有機イソシアネート部分とウレタン結合を介して連結された2個以上のポリカプロラクトン部分、該ポリカプロラクトン部分とエステル結合を介して連結された直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する末端部分、及び該有機イソシアネート部分とウレタン結合又は尿素結合を介して連結された3級アミノ基を有する末端部分を有し、且つアミン価が10~100 mgKOH/gである、前記実施形態(1)又は(2)に記載の組成物。
(4) 100質量部の多層カーボンナノチューブあたり30~200質量部の範囲のポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5) ケイ素樹脂が、アルコキシシリル基、アルコキシシリレン基及びシロキサン結合からなる群より選択される少なくとも1種のケイ素含有基を有する、前記実施形態(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6) 有機金属化合物が、有機金属キレート化合物及び金属アルコキシドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7) 有機金属化合物が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む、前記実施形態(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8) 界面活性剤を実質的に含まない、前記実施形態(1)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9) 前記実施形態(1)~(8)のいずれかに記載の組成物を金属基材に塗布する、塗布工程、
を含む、導電性皮膜の製造方法。
(10) 塗布工程で得られた未硬化の皮膜を硬化処理する、硬化工程、
をさらに含む、前記実施形態(9)に記載の方法。
(11) 硬化工程における硬化処理が熱処理である、前記実施形態(10)に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、界面活性剤を使用することなく、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成し得る組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<1. 導電性皮膜を形成するための組成物>
本発明の一態様は、多層カーボンナノチューブ、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤、ケイ素樹脂及び有機金属化合物を含む、導電性皮膜を形成するための組成物に関する。本発明者らは、界面活性剤に代えてポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤を用い、且つ多層カーボンナノチューブの固定剤としてケイ素樹脂及び有機金属化合物を用いることにより、良好な粘度を示す組成物を調製できることを見出した。本態様の組成物は、良好な粘度を有することから多層カーボンナノチューブを高分散で含むことができる。それ故、本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0015】
本態様の組成物において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤は、多層CNT、ケイ素樹脂及び/又は有機金属化合物を高分散させることができる。それ故、本態様の組成物は、界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0016】
当該技術分野において、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記載する)は、グラファイトの単層面が筒状の構造を有するカーボン材料を意味する。通常は、1層の筒状の構造を有するCNTを単層CNTと、2層の筒状の構造を有するCNTを2層CNTと、3層以上の筒状の構造を有するCNTを多層CNTと、それぞれ分類する。CNTを含む導電性皮膜において、CNTの層数が増加すると、通常は導電性が向上し得る。本態様の組成物において、多層CNTは、5~100層を有することが好ましく、10~50層を有することがより好ましい。多層CNTの層数が前記下限値未満の場合、結果として得られる皮膜の導電性が低下する可能性がある。それ故、前記範囲の層数を有する多層CNTを含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性を有する皮膜を形成することができる。
【0017】
本態様の組成物において、多層CNTの平均長さは、1~600 μmの範囲であることが好ましく、4~15 μmの範囲であることがより好ましい。また、多層CNTの平均太さ(すなわち平均直径)は、5~150 nmの範囲であることが好ましく、10~90nmの範囲であることがより好ましい。多層CNTの平均長さ及び平均太さが前記下限値未満の場合、結果として得られる皮膜の導電性が低下する可能性がある。多層CNTの平均長さ及び平均太さが前記上限値を超える場合、分子間凝集が起こりやすく、均一分散のための条件に課題が生じる可能性がある。それ故、前記範囲の平均長さ及び平均太さを有する多層CNTを含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性を有する皮膜を形成することができる。
【0018】
本態様の組成物において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤は、有機イソシアネート部分、該有機イソシアネート部分とウレタン結合を介して連結された2個以上のポリカプロラクトン部分、該ポリカプロラクトン部分とエステル結合を介して連結された直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する末端部分、及び該有機イソシアネート部分とウレタン結合又は尿素結合を介して連結された3級アミノ基を有する末端部分を有することが好ましい。
【0019】
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤において、有機イソシアネート部分は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート若しくはノルボルネンジイソシアネート等、又はそれらの組み合わせのような2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネート化合物に由来する有機部分であることが好ましい。有機イソシアネート部分が2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネート化合物に由来することにより、ポリウレタン系高分子分散剤が2個以上のポリカプロラクトン部分を有することができる。有機イソシアネート部分は、2個以上の前記で例示した有機イソシアネート化合物の重合体、例えば該有機イソシアネート化合物のイソシアヌレート(3量体)に由来する有機部分であってもよい。有機イソシアネート化合物の重合体に由来する有機イソシアネート部分を有することにより、ポリウレタン系高分子分散剤の重合度を向上させることができる。例えば、有機イソシアネート部分がイソシアヌレート(3量体)に由来する有機部分である場合、ポリウレタン系高分子分散剤が3個のポリカプロラクトン部分を有することができる。それ故、前記構造を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0020】
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤において、ポリカプロラクトン部分は、ε-カプロラクトンの重合体(すなわち、ポリε-カプロラクトン)に由来する部分であることが好ましい。この場合、ポリε-カプロラクトンの分子量は、500~10000の範囲であることが好ましい。前記で例示した特徴を有するポリカプロラクトン部分を有することにより、多層CNT及び/又はケイ素樹脂に対する親和性を向上させることができる。それ故、前記構造を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0021】
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤において、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する末端部分は、直鎖又は分岐鎖のC6~C20アルキル、C6~C20アルケニル又はC6~C20アルキニルであることが好ましく、直鎖又は分岐鎖のC8~C18アルキル、C6~C20アルケニル又はC6~C20アルキニルであることがより好ましく、オクチル又はステアリルであることがさらに好ましい。前記で例示した特徴を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する末端部分を有することにより、多層CNT及び/又はケイ素樹脂に対する親和性を向上させることができる。それ故、前記構造を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0022】
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤において、3級アミノ基を有する末端部分は、5~6員のヘテロアリール、5~6員のヘテロアリール-C1~C5アルキル又は3級アミノ基を有するC1~C5アルキルであることが好ましく、ピリジル、2-ピリジルメチル又はジエチルアミノプロピルであることがより好ましい。前記で例示した特徴を有する3級アミノ基を有する末端部分を有することにより、多層CNT及び/又はケイ素樹脂に対する親和性を向上させることができる。それ故、前記構造を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0023】
ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤は、前記で例示した直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する末端部分及び3級アミノ基を有する末端部分だけでなく、有機イソシアネート部分と尿素結合を介して連結されたポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はそれらの組み合わせ)を有する末端部分を有してもよい。前記で例示した特徴を有するポリアルキレンオキシドを有する末端部分を有することにより、多層CNT及び/又はケイ素樹脂に対する親和性をさらに向上させることができる。それ故、前記構造を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、より高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0024】
本発明の各態様において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の構造は、限定するものではないが、例えば、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)、紫外吸収スペクトル(UV)及び質量分析(MS)等の分析手段により決定することができる。
【0025】
本態様の組成物において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の固形分含有量は、30~60%の範囲であることが好ましく、40~55%の範囲であることがより好ましい。固形分含有量が前記下限値未満の場合、十分な分散性を発現しない可能性がある。また、固形分含有量が前記上限値を超える場合、ポリウレタン系高分子分散剤自体が凝集する可能性がある。それ故、前記範囲の固形分含有量を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0026】
本発明の各態様において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の固形分含有量は、限定するものではないが、例えば、高温(例えば約150℃)の恒温層で恒量に達するまでサンプルを乾燥して、乾燥前の質量に対する乾燥後の質量の百分率を算出することにより、決定することができる。
【0027】
本態様の組成物において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤が3級アミノ基を有する末端部分を有する実施形態の場合、アミン価は、10~100 mgKOH/gの範囲であることが好ましく、15~50 mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。アミン価が前記下限値未満の場合、多層CNT及び/又はケイ素樹脂に対する親和性が低下して、該成分の分散性が低下する可能性がある。それ故、前記範囲のアミン価を有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0028】
本発明の各態様において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤のアミン価は、限定するものではないが、例えば、以下の手順で決定することができる。サンプル0.1質量部を、100 mlのトルエン/イソプロパノール=1/1で希釈して、0.1 N塩化水素プロパノール溶液を滴定液とし、ブロモクレゾールグリーンを指示薬として滴定して算出する。
【0029】
本態様の組成物において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の数平均分子量(以下、「Mn」とも記載する)は、3000~10000の範囲であることが好ましく、4000~8000の範囲であることがより好ましい。また、分子量分布(以下、「PDI」とも記載する)は、2.0~4.0の範囲であることが好ましく、2.5~3.3の範囲であることがより好ましい。Mnが前記下限値未満の場合、多層CNT及び/又はケイ素樹脂に対する親和性が低下して、該成分の分散性が低下する可能性がある。また、Mnが前記上限値を超える場合、固形分含有量が増加して、ポリウレタン系高分子分散剤自体が凝集する可能性がある。PDIが前記上限値を超える場合、ポリウレタン系高分子分散剤の化学的性質が不均質となる可能性がある。それ故、前記範囲のMn及びPDIを有するポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0030】
本発明の各態様において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤のMn及びPDIは、限定するものではないが、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記載する)により決定することができる。
【0031】
本態様の組成物において、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤の量は、100質量部の多層CNTあたり30~200質量部の範囲であることが好ましく、50~150重量部の範囲であることがより好ましい。ポリウレタン系高分子分散剤の量が前記下限値未満の場合、十分な分散性を発現しない可能性がある。また、ポリウレタン系高分子分散剤の量が前記上限値を超える場合、ポリウレタン系高分子分散剤自体が凝集する可能性がある。それ故、前記範囲の量でポリウレタン系高分子分散剤を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0032】
本態様の組成物において、ケイ素樹脂としては、例えば、場合により少なくとも1種のケイ素含有基を有するシリコーン樹脂及び各種樹脂(例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂等)を挙げることができる。ケイ素樹脂は、アルコキシシリル基、アルコキシシリレン基及びシロキサン結合からなる群より選択される少なくとも1種のケイ素含有基を有することが好ましい。ケイ素樹脂は、アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%)であることが好ましい。前記で例示した特徴を有するケイ素樹脂を固定剤として用いることにより、結果として得られる導電性皮膜において、多層CNTを安定的に固定することができる。それ故、前記で例示した特徴を有するケイ素樹脂を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0033】
本態様の組成物において、有機金属化合物は、有機金属キレート化合物及び金属アルコキシドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。有機金属化合物に含まれる金属は、チタン、ジルコニウム、アルミニウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属であることが好ましい。有機チタン化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラtert-ブチルチタネート及びテトラオクチルチタネート等のチタンアルコキシド化合物;並びにチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチルオキシビスエチルアセトアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンジイソプロポキシビスエチルアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩及びチタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート等のチタンキレート化合物等を挙げることができる。有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート及びノルマルブチルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド化合物;並びにジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスエチルアセトアセテート及びジルコニウムトリブトキシモノステアレート等のジルコニウムキレート化合物等を挙げることができる。アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート及びアルミニウムブチレート等のアルミニウムアルコキシド化合物;並びにエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリエチルアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート及びアルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。有機金属化合物は、前記で例示したアルミニウム化合物であることが好ましく、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテートであることがより好ましい。前記で例示した特徴を有する有機金属化合物を固定剤として用いることにより、結果として得られる導電性皮膜において、多層CNTを安定的に固定することができる。それ故、前記で例示した特徴を有する有機金属化合物を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0034】
本態様の組成物において、固定剤であるケイ素樹脂及び有機金属化合物の量は、20質量部の多層CNTあたり30~80質量部の範囲であることが好ましく、40~70重量部の範囲であることがより好ましい。ケイ素樹脂及び有機金属化合物の量が前記下限値未満の場合、結果として得られる導電性皮膜において、多層CNTを十分に固定できない可能性がある。また、ケイ素樹脂及び有機金属化合物の量が前記上限値を超える場合、膜抵抗及び/又は接触抵抗が悪化する可能性がある。それ故、前記範囲の量でケイ素樹脂及び有機金属化合物を含む本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0035】
本態様の組成物の粘度は、25℃において10~200 mPa・sの範囲であることが好ましく、50~100 mPa・sの範囲であることがより好ましい。前記範囲の粘度を有する本態様の組成物を用いることにより、高い導電性及び防錆性を有する皮膜を形成することができる。
【0036】
本発明の各態様において、組成物の粘度は、限定するものではないが、例えば、E型粘度計(TV-25、東機産業社製)により25℃における粘度を測定することにより、決定することができる。
【0037】
<2. 導電性皮膜を形成するための組成物の製造方法>
本発明の別の一態様は、本発明の一態様の導電性皮膜を形成するための組成物の製造方法に関する。本態様の製造方法は、ポリウレタン形成工程、末端部分導入工程及び混合工程を含む。
【0038】
[2-1. ポリウレタン形成工程]
本工程は、ポリカプロラクトン及び有機イソシアネートを反応させて、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤を得ることを含む。
【0039】
本工程で使用されるポリカプロラクトンは、前記で説明したポリカプロラクトン部分に相当する材料であって、前記で説明した特徴を有するポリカプロラクトンであることが好ましい。ポリカプロラクトンは、製品を購入等して準備してもよく、以下において説明するポリカプロラクトン形成工程を実施して自ら調製して準備してもよい。
【0040】
本工程で使用される有機イソシアネートは、前記で説明した有機イソシアネート部分に相当する材料であって、前記で説明した特徴を有する2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネート化合物であることが好ましい。有機イソシアネートは、製品を購入等して準備してもよく、自ら調製して準備してもよい。
【0041】
本工程は、当該技術分野でウレタン重合反応に通常使用される反応条件に基づき実施することができる。本工程の反応は、例えばスズジラウレートのような有機スズ触媒の存在下で実施することが好ましい。
【0042】
[2-2. ポリカプロラクトン形成工程]
本態様の方法は、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する開始剤及びカプロラクトンを反応させてポリカプロラクトンを得る、ポリカプロラクトン形成工程を含んでもよい。
【0043】
本工程で使用される直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する開始剤は、前記で説明した直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する末端部分に相当する材料である。直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する開始剤は、直鎖又は分岐鎖のC6~C20アルキルアルコール、C6~C20アルケニルアルコール又はC6~C20アルキニルアルコールであることが好ましく、直鎖又は分岐鎖のC8~C18アルキルアルコール、C8~C18アルケニルアルコール又はC8~C18アルキニルアルコールであることがより好ましく、オクタノール又はステアリルアルコールであることがさらに好ましい。直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する開始剤は、製品を購入等して準備することができる。
【0044】
本工程で使用されるカプロラクトンは、前記で説明したポリカプロラクトン部分に相当する材料であって、ε-カプロラクトンであることが好ましい。カプロラクトンは、製品を購入等して準備することができる。
【0045】
本工程は、当該技術分野でカプロラクトンの開環重合反応に通常使用される反応条件に基づき実施することができる。
【0046】
[2-3. 末端部分導入工程]
本工程は、ポリウレタン形成工程の後で、該工程の反応生成物及び3級アミノ基を有する有機アミンを反応させて、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤を得ることを含む。本工程を実施することにより、ポリカプロラクトン鎖を有し、且つ有機イソシアネート部分とウレタン結合又は尿素結合を介して連結された3級アミノ基を有する末端部分を有するポリウレタン系高分子分散剤を得ることができる。
【0047】
本工程で使用される3級アミノ基を有する有機アミンは、前記で説明した3級アミノ基を有する末端部分に相当する材料である。3級アミノ基を有する有機アミンは、5~6員のヘテロアリールアミン、5~6員のヘテロアリール-C1~C5アルキルアルコール又は3級アミノ基を有するC1~C5アルキルアミンであることが好ましく、メチルアミノピリジン、2-ピリジンメタノール又はジエチルアミノプロピルアミンであることがより好ましい。3級アミノ基を有する有機アミンは、製品を購入等して準備することができる。
【0048】
本工程において、3級アミノ基を有する有機アミンに加えて、ポリアルキレングリコールアミンをポリウレタン形成工程の反応生成物と反応させてもよい。この場合、ポリアルキレングリコールアミンは、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアミンであることが好ましい。ポリアルキレングリコールアミンを用いて本工程を実施することにより、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤に、有機イソシアネート部分と尿素結合を介して連結されたポリアルキレンオキシドを有する末端部分を導入することができる。
【0049】
本工程は、当該技術分野でウレタン重合反応における末端基導入反応に通常使用される反応条件に基づき実施することができる。
【0050】
[2-4. 混合工程]
本工程は、多層カーボンナノチューブ、ポリカプロラクトン鎖を有するポリウレタン系高分子分散剤、ケイ素樹脂及び有機金属化合物を混合して、本発明の一態様の導電性皮膜を形成するための組成物を得ることを含む。
【0051】
本工程は、ディゾルバー又はビーズミル等の当該技術分野で通常使用される手段によって均一に分散させることによって実施することができる。
【0052】
<3. 導電性皮膜の製造方法>
本発明の別の一態様は、導電性皮膜の製造方法に関する。本態様の製造方法は、塗布工程を含む。
【0053】
[3-1. 塗布工程]
本工程は、本発明の一態様の導電性皮膜を形成するための組成物を金属基材に塗布することを含む。
【0054】
本工程において使用される金属基材は、発泡焼結金属等の当該技術分野で通常使用される各種の多孔質基材であればよい。
【0055】
本工程は、スプレー噴霧法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法又はコーター塗布法等の当該技術分野で通常使用される手段によって実施することができる。
【0056】
[3-2. 硬化工程]
本態様の方法は、塗布工程で得られた未硬化の皮膜を硬化処理する、硬化工程をさらに含んでもよい。
【0057】
本工程において、硬化処理は、熱処理であることが好ましい。
【0058】
本工程により、金属基材の表面に塗布された未硬化の皮膜を硬化させることができる。それ故、本工程により、硬化した導電性皮膜及び金属基材を有する導電性材料を得ることができる。
【0059】
<4.セパレーター>
前記で説明したように、本発明の一態様の製造方法により、導電性皮膜及び金属基材を有する導電性材料を得ることができる。前記導電性材料の導電性皮膜は、高い導電性及び防錆性を有することから、燃料電池用セパレーターに好適である。それ故、本発明の別の一態様は、セパレーターに関する。
【0060】
本態様のセパレーターは、前記で説明した特徴を有する金属基材と、該金属基材の表面に配置された導電性皮膜とを有する。導電性皮膜は、前記で説明した特徴を有する本発明の一態様の組成物によって形成される。
【0061】
以上、詳細に説明したように、本発明の一態様の組成物により、高い導電性及び防錆性を有する導電性皮膜を得ることができる。これにより、燃料電池に好適に使用することができるセパレーターを得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
<I:高分子分散剤の合成>
[合成例1]
攪拌装置、冷却管及び温度計を装着した1 Lセパラブルフラスコに、ステアリルアルコールを開始剤として開環重合して得られたポリε-カプロラクトン(水酸基価27.3 mgKOH/g、分子量2055)を174.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMAc)を204.8質量部仕込んで、50℃に加熱して溶解、均一化させた。次いで、このフラスコに、トルエンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート(3量体)であるイソシアネート(60.0質量%PGMAc溶液、NCO含有量 10.7%、固形分NCO含有量 17.8%)を83.3質量部仕込んで、スズジラウレートの1%PGMAc溶液を1部添加して、80℃で2時間反応させた。IRにて、反応生成物から水酸基が消失したことを確認した。次いで、このフラスコに、2-ピリジンメタノールを13.8質量部仕込んで、同様に反応させた。IRにて、反応生成物からイソシアネート(2100~2200 cm-1のピーク)が消失したことを確認した。150℃の恒温層で恒量に達するまで反応生成物を乾燥して固形分含有量を算出したところ、50.1%であった。次いで、反応生成物のアミン価を測定した。固形分換算のアミン価、すなわち得られた樹脂のアミン価は、29.6 mgKOH/gであった。アミン価は、サンプル0.1質量部を、100 mlのトルエン/イソプロパノール=1/1で希釈して、0.1 N塩化水素プロパノール溶液を滴定液とし、ブロモクレゾールグリーンを指示薬として滴定して算出した。GPCにて反応生成物の分子量を測定したところ、数平均分子量(以下、Mn)は5500、分子量分布(以下、PDI)は2.67であった。合成例1で得られた反応生成物を、高分子分散剤-1と記載する。
【0064】
[合成例2]
合成例1と同様のフラスコに、合成例1と同様の条件で調製したポリε-カプロラクトンを163.5質量部、ジエチレングリコールを2.80質量部、PGMAcを193.3質量部仕込んで、合成例1と同様に加熱して均一化させた。次いで、このフラスコに、合成例1で使用したイソシアネートを83.3質量部仕込んで、合成例1と同様に反応させた。合成例1と同様の方法で、反応生成物から水酸基が消失したことを確認した。次いで、このフラスコを室温に冷却し、ジエチルアミノプロピルアミン10.3質量部を1時間かけて滴下し、2時間攪拌して反応させた。合成例1と同様の方法で、反応生成物からイソシアネートが消失したことを確認した。合成例1と同様の方法で固形分含有量を測定したところ、49.0%であり、樹脂のアミン価は19.7 mgKOH/gであった。Mnは7900であり、PDIは3.21であった。合成例2で得られた反応生成物を、高分子分散剤-2と記載する。
【0065】
[合成例3]
合成例1と同様のフラスコに、オクタノールを開始剤として開環重合して得られたポリε-カプロラクトン(水酸基価53.6 mgKOH/g、分子量1047)を55.4質量部、PGMAcを157.1質量部仕込んで、合成例1と同様に加熱して均一化させた。次いで、このフラスコに、合成例1で使用したイソシアネートを83.3質量部仕込んで、合成例1と同様に反応させた。合成例1と同様の方法で、反応生成物から水酸基が消失したことを確認した。次いで、このフラスコを室温に冷却し、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアミン(EO:POのモル比率=4:1、アミン価56.0 mgKOH/g、分子量1001)を53.0質量部、2-ピリジンメタノールを11.6質量部、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを64.6質量部の混合物を2時間かけて滴下し、そのまま室温で攪拌した。合成例1と同様の方法で固形分含有量を測定したところ、49.3%であり、樹脂のアミン価は35.6 mgKOH/gであった。Mnは4300であり、PDIは2.63であった。合成例3で得られた反応生成物を、高分子分散剤-3と記載する。
【0066】
[合成例4]
合成例1と同様のフラスコに、合成例1と同様の条件で調製したポリε-カプロラクトンを163.5質量部、ジエチレングリコールを2.80質量部、PGMAcを193.3質量部仕込んで、合成例1と同様に加熱して均一化させた。次いで、このフラスコに、合成例1で使用したイソシアネートを83.3質量部仕込んで、合成例1と同様に反応させた。合成例1と同様の方法で、反応生成物から水酸基が消失したことを確認した。次いで、このフラスコを室温に冷却し、メチルアミノピリジン13.6質量部を1時間かけて滴下し、2時間攪拌して反応させた。合成例1と同様の方法で、反応生成物からイソシアネートが消失したことを確認した。合成例1と同様の方法で固形分含有量を測定したところ、49.5%であり、樹脂のアミン価は19.9 mgKOH/gであった。Mnは7600であり、PDIは3.17であった。合成例4で得られた反応生成物を、高分子分散剤-4と記載する。
【0067】
【0068】
<II:導電性皮膜を形成するための組成物の調製>
[実施例1]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例1に記載の高分子分散剤-1の24質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル64質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において81.1 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-1と記載する。CNT分散液-1の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.2 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-1と記載する。なお、分散液及び処理液の粘度は、E型粘度計(TV-25、東機産業社製)により25℃における粘度を測定した。
【0069】
[実施例2]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例1に記載の高分子分散剤-1の24質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル64質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において35.8 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-2と記載する。CNT分散液-2の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において31.8 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-2と記載する。
【0070】
[実施例3]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例1に記載の高分子分散剤-1の20.4質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.6質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において85.4 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-3と記載する。CNT分散液-3の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-1の3.6質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.9質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.2 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-3と記載する。
【0071】
[実施例4]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例1に記載の高分子分散剤-1の20.4質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.6質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において35.9 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-4と記載する。CNT分散液-4の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-1の3.6質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.9質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において31.7 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-4と記載する。
【0072】
[実施例5]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例2に記載の高分子分散剤-2の24.5質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル63.5質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において82.4 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-5と記載する。CNT分散液-5の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.4 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-5と記載する。
【0073】
[実施例6]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例2に記載の高分子分散剤-2の24.5質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル63.5質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において36.3 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-6と記載する。CNT分散液-6の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において31.9 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-6と記載する。
【0074】
[実施例7]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例2に記載の高分子分散剤-2の20.8質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.2質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において82.9 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-7と記載する。CNT分散液-7の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-2の3.7質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.8質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.5 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-7と記載する。
【0075】
[実施例8]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例2に記載の高分子分散剤-2の20.8質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.2質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において36.8 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-8と記載する。CNT分散液-8の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-2の3.7質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.8質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において32.0 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-8と記載する。
【0076】
[実施例9]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例3に記載の高分子分散剤-3の24.3質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル63.7質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において82.6 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-9と記載する。CNT分散液-9の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.5 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-9と記載する。
【0077】
[実施例10]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例3に記載の高分子分散剤-3の24.3質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル63.7質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において36.5 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-10と記載する。CNT分散液-10の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において32.2 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-10と記載する。
【0078】
[実施例11]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例3に記載の高分子分散剤-3の20.7質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.3質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において83.0 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-11と記載する。CNT分散液-11の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-3の3.6質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.9質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.6 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-11と記載する。
【0079】
[実施例12]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例3に記載の高分子分散剤-3の20.7質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.3質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において36.9 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-12と記載する。CNT分散液-12の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-3の3.6質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.9質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において32.3 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-12と記載する。
【0080】
[実施例13]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例4に記載の高分子分散剤-4の24.2質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル63.8質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において82.9 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-13と記載する。CNT分散液-13の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.7 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-13と記載する。
【0081】
[実施例14]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例4に記載の高分子分散剤-4の24.2質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル63.8質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において36.6 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-14と記載する。CNT分散液-14の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において32.3 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-14と記載する。
【0082】
[実施例15]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例4に記載の高分子分散剤-4の20.6質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.4質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において83.5 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-15と記載する。CNT分散液-15の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-4の3.6質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.9質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.8 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-15と記載する。
【0083】
[実施例16]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例4に記載の高分子分散剤-4の20.6質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.4質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ6μm、平均太さ150 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において36.9 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-16と記載する。CNT分散液-16の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、高分子分散剤-3の3.6質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの0.9質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において32.6 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-16と記載する。
【0084】
[実施例17]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例1に記載の高分子分散剤-1の24質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル76質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において98.2 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-17と記載する。CNT分散液-17の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物7.6質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの3.4質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において51.1 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-17と記載する。
【0085】
[実施例18]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例1に記載の高分子分散剤-1の24質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル76質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において104.1 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-18と記載する。CNT分散液-18の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物4.3質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの6.7質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において54.8 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-18と記載する。
【0086】
[実施例19]
合成例1と同様のフラスコを使用して、合成例1に記載の高分子分散剤-1の20.4質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル67.6質量部に溶解した。その溶液に、平均長さ10μm、平均太さ50 nmの多層CNT(15層)を12質量部加えて、ディゾルバーを用いて撹拌し均一化させたスラリーを作製した。このスラリーを、ビーズミルを用い、解砕メディアにジルコニアビーズ(φ0.3 mm)を使用して、300 rpmにて60分間の分散処理を行い、CNT分散液を得た。このCNT分散液の粘度は、25℃において81.3 mPa・sであった。得られた分散液を、CNT分散液-19と記載する。CNT分散液-19の9質量部、ケイ素樹脂(アクリルシリコーン樹脂(重量平均分子量:約2万、アルコキシシリル基含有量:40質量%))及び有機金属化合物(アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート)の混合物6.5質量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルの4.5質量部を混合して、導電性皮膜を形成するための組成物(処理液)を得た。この処理液の粘度は、25℃において40.8 mPa・sであった。得られた処理液を、処理液-19と記載する。
【0087】
【0088】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。