IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特許-操作ガイド装置 図1
  • 特許-操作ガイド装置 図2
  • 特許-操作ガイド装置 図3
  • 特許-操作ガイド装置 図4
  • 特許-操作ガイド装置 図5
  • 特許-操作ガイド装置 図6
  • 特許-操作ガイド装置 図7
  • 特許-操作ガイド装置 図8
  • 特許-操作ガイド装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】操作ガイド装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20231121BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20231121BHJP
   G05G 23/00 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/20 N
G05G23/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020041832
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143497
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 実
(72)【発明者】
【氏名】山中 伸好
(72)【発明者】
【氏名】大門 正樹
(72)【発明者】
【氏名】新田目 啓敬
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108721(JP,A)
【文献】特開2018-172092(JP,A)
【文献】特開2016-156193(JP,A)
【文献】特開2018-169675(JP,A)
【文献】特開2017-220171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0104391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/20
G05G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のための操作ガイド装置であって、
前記作業機械のオペレータが前記作業機械を動作させるために操作する操作装置と、
前記操作装置を操作する際の規範となる規範データを記憶する記憶部と、
前記作業機械の動作中のある期間における、前記オペレータが前記操作装置を実際に操作した実操作データと前記規範データとの対比の、時間の経過に対する変化を表示する表示部と、を備え、
前記作業機械は、掘削対象物を掬い取る掘削作業を実行し、
前記規範データは、前記掘削作業の開始から終了までの所要時間と、前記掘削作業によって掬い取られた前記掘削対象物の量と、のいずれを優先するかに基づいて抽出された前記掘削作業のデータに基づいて生成される、操作ガイド装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記規範データに対する前記実操作データの差分を表示する、請求項1に記載の操作ガイド装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記差分を色分けして表示する、請求項2に記載の操作ガイド装置。
【請求項4】
前記操作装置は、前記作業機械を走行させるために操作される走行操作部材を有し、
前記規範データと前記実操作データとは、前記走行操作部材の操作量を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の操作ガイド装置。
【請求項5】
前記作業機械は、ブームとバケットとを有する作業機を有し、前記掘削作業は前記バケットに前記掘削対象物を掬い取る作業であり、
前記操作装置は、前記ブームを動作させるために操作されるブーム操作部材と、前記バケットを動作させるために操作されるバケット操作部材とを有し、
前記規範データと前記実操作データとは、前記ブーム操作部材の操作量と、前記バケット操作部材の操作量とを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の操作ガイド装置。
【請求項6】
前記掘削作業の所要時間と、前記バケットに掬い取られた前記掘削対象物の量と、によって、掘削作業の生産性が判定され、
前記規範データは、複数回の掘削作業から、前記生産性の高さに基づいて掘削作業を抽出することにより、生成される、請求項5に記載の操作ガイド装置。
【請求項7】
前記オペレータが、前記掘削作業の前記所要時間と、前記バケットに掬い取る前記掘削対象物の量と、のいずれを優先するかを選択可能な、選択部をさらに備え、
前記オペレータの選択に従って、異なる掘削作業が抽出される、請求項6に記載の操作ガイド装置。
【請求項8】
前記期間は、前記掘削作業の開始から終了までの期間である、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の操作ガイド装置。
【請求項9】
前記表示部に表示される前記期間の開始時点と終了時点とが揃うように、前記規範データと前記実操作データとの時間軸が調整される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の操作ガイド装置。
【請求項10】
作業機械のための操作ガイド装置であって、
前記作業機械のオペレータが前記作業機械を動作させるために操作する操作装置と、
前記操作装置を操作する際の規範となる規範データを記憶する記憶部と、
前記作業機械の動作中のある期間における、前記オペレータが前記操作装置を実際に操作した実操作データと前記規範データとの対比の、時間の経過に対する変化を表示する表示部と、を備え、
前記作業機械は、掘削対象物を掬い取る掘削作業を実行し、
前記掘削作業の開始から終了までの所要時間と前記掘削作業によって掬い取られた前記掘削対象物の量との少なくともいずれか一方に基づいて算出される前記掘削作業の生産性を示すスコアと、複数回の前記掘削作業における前記スコアの履歴と、を併せて前記表示部に表示する、操作ガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、操作ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作ガイド装置に関し、特開2018-169675号公報(特許文献1)には、作業機械のオペレータの操作量と、記憶された標準操作量とを比較して、両者間に所定の閾値以上の乖離量がある場合、操作ガイド画像をディスプレイに表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-169675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の操作ガイド画像は、オペレータの操作量が標準操作量より所定値以上乖離した時点で、その乖離をなくすための操作を表示している。オペレータが間違った操作をした場合に操作ガイド画像を視認して正しい操作を行えるが、ある作業を行なうための好ましい一連の操作の流れをオペレータに認識させることはできなかった。
【0005】
本開示では、作業を行なう際に実際にした操作と、その作業のための規範となる操作との違いを、オペレータが容易に認識できる、操作ガイド装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、作業機械のための操作ガイド装置が提供される。操作ガイド装置は、操作装置と、記憶部と、表示部とを備えている。操作装置は、作業機械のオペレータが作業機械を動作させるために操作する装置である。記憶部は、操作装置を操作する際の規範となる規範データを記憶する。表示部は、作業機械の動作中のある期間における、オペレータが操作装置を実際に操作した実操作データと規範データとの対比の、時間の経過に対する変化を表示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の操作ガイド装置によれば、作業を行なう際に実際にした操作と、その作業のための規範となる操作との違いを、オペレータが容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に基づく作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
図2】実施形態に基づくホイールローダの構成を示す概略ブロック図である。
図3】実施形態に基づくホイールローダによる掘削作業を説明する図である。
図4】掘削作業の生産性について示す概略図である。
図5】掘削土量ごとのブーム角度とブーム圧力との関係の一例を示すグラフである。
図6】あるブーム角度における、ブーム圧力と掘削土量との関係を示すグラフである。
図7】表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図8】時間軸調整前の実操作データを示す模式図である。
図9】時間軸調整後の実操作データを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
<全体構成>
実施の形態においては、作業機械の一例としてホイールローダ1について説明する。図1は、実施形態に基づく作業機械の一例としてのホイールローダ1の側面図である。
【0011】
図1に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを備えている。車体フレーム2、キャブ5などからホイールローダ1の車体が構成されている。ホイールローダ1の車体には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。
【0012】
走行装置4は、ホイールローダ1の車体を走行させるものであり、走行輪4a、4bを含んでいる。ホイールローダ1は、走行輪4a、4bが回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。
【0013】
車体フレーム2は、前フレーム2aと後フレーム2bとを含んでいる。前フレーム2aと後フレーム2bとは、互いに左右方向に揺動可能に取り付けられている。前フレーム2aと後フレーム2bとに亘って、一対のステアリングシリンダ11が取り付けられている。ステアリングシリンダ11は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ11がステアリングポンプ12(図2参照)からの作動油によって伸縮することによって、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更される。
【0014】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0015】
前フレーム2aには、作業機3および一対の走行輪(前輪)4aが取り付けられている。作業機3は、車体の前方に配設されている。作業機3は、作業機ポンプ13(図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機ポンプ13は、エンジン21により駆動され、吐出する作動油によって作業機3を作動させる油圧ポンプである。作業機3は、ブーム14と、作業具であるバケット6とを含んでいる。バケット6は、作業機3の先端に配置されている。バケット6は、ブーム14の先端に着脱可能に装着されたアタッチメントの一例である。作業の種類に応じて、アタッチメントが、グラップル、フォーク、またはプラウなどに付け替えられる。
【0016】
ブーム14の基端部は、ブームピン9によって前フレーム2aに回転自在に取付けられている。バケット6は、ブーム14の先端に位置するバケットピン17によって、回転自在にブーム14に取付けられている。
【0017】
前フレーム2aとブーム14とは、一対のブームシリンダ16により連結されている。ブームシリンダ16は、油圧シリンダである。ブームシリンダ16の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。ブームシリンダ16の先端は、ブーム14に取り付けられている。ブームシリンダ16が作業機ポンプ13(図2参照)からの作動油によって伸縮することによって、ブーム14が昇降する。ブームシリンダ16は、ブームピン9を中心としてブーム14を上下に回転駆動する。
【0018】
作業機3は、ベルクランク18と、バケットシリンダ19と、リンク15とをさらに含んでいる。ベルクランク18は、ブーム14のほぼ中央に位置する支持ピン18aによって、ブーム14に回転自在に支持されている。バケットシリンダ19は、ベルクランク18と前フレーム2aとを連結している。リンク15は、ベルクランク18の先端部に設けられた連結ピン18cに連結されている。リンク15は、ベルクランク18とバケット6とを連結している。
【0019】
バケットシリンダ19は、油圧シリンダであり作業具シリンダである。バケットシリンダ19の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。バケットシリンダ19の先端は、ベルクランク18の基端部に設けられた連結ピン18bに取り付けられている。バケットシリンダ19が作業機ポンプ13(図2参照)からの作動油によって伸縮することによって、バケット6が上下に回動する。バケットシリンダ19は、バケットピン17を中心としてバケット6を回転駆動する。
【0020】
後フレーム2bには、キャブ5および一対の走行輪(後輪)4bが取り付けられている。キャブ5は、ブーム14の後方に配置されている。キャブ5は、車体フレーム2上に載置されている。キャブ5内には、ホイールローダ1のオペレータが着座するシート、および後述する操作装置8などが配置されている。
【0021】
<システム構成>
図2は、実施形態に基づくホイールローダ1の構成を示す概略ブロック図である。図2に示されるように、ホイールローダ1は、駆動源としてのエンジン21、走行装置4、作業機ポンプ13、ステアリングポンプ12、操作装置8、制御装置10、表示部50などを備えている。
【0022】
エンジン21は、たとえばディーゼルエンジンである。駆動源として、エンジン21に代えて、蓄電体により駆動するモータが用いられてもよく、またエンジンとモータとの双方が用いられてもよい。エンジン21は燃料噴射ポンプ24を有している。燃料噴射ポンプ24には、電子ガバナ25が設けられている。シリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより、エンジン21の出力が制御される。この調整は、電子ガバナ25が制御装置10によって制御されることで行われる。
【0023】
エンジン回転数は、エンジン回転数センサ91によって検出される。エンジン回転数センサ91の検出信号は、制御装置10に入力される。
【0024】
走行装置4は、エンジン21からの駆動力によりホイールローダ1を走行させる装置である。走行装置4は、動力伝達装置23、ならびに上述した前輪4aおよび後輪4bなどを有している。
【0025】
動力伝達装置23は、エンジン21からの駆動力を前輪4aおよび後輪4bに伝達する装置であり、たとえばトランスミッションである。ホイールローダ1においては、前フレーム2aに取り付けられた前輪4aと、後フレーム2bに取り付けられた後輪4bとの両方が、駆動力を受けてホイールローダ1を走行させる駆動輪を構成している。動力伝達装置23は、入力軸27の回転を変速して出力軸28に出力する。
【0026】
出力軸28には、出力回転数センサ92が設けられている。出力回転数センサ92は、出力軸28の回転数を検出する。出力回転数センサ92からの検出信号は、制御装置10に入力される。制御装置10は、出力回転数センサ92の検出信号に基づいて車速を算出する。
【0027】
動力伝達装置23から出力された駆動力は、シャフト32などを介して車輪4a,4bに伝達される。これにより、ホイールローダ1が走行する。エンジン21からの駆動力の一部が走行装置4に伝達されて、ホイールローダ1が走行する。
【0028】
エンジン21の駆動力の一部は、動力取出部33を介して、作業機ポンプ13およびステアリングポンプ12に伝達される。動力取出部33は、エンジン21の出力を、動力伝達装置23と、作業機ポンプ13およびステアリングポンプ12からなるシリンダ駆動部とに振り分ける装置である。
【0029】
作業機ポンプ13およびステアリングポンプ12は、エンジン21からの駆動力によって駆動される油圧ポンプである。作業機ポンプ13から吐出された作動油は、作業機制御弁34を介してブームシリンダ16およびバケットシリンダ19に供給される。ステアリングポンプ12から吐出された作動油は、ステアリング制御弁35を介してステアリングシリンダ11に供給される。作業機3は、エンジン21からの駆動力の一部によって駆動される。
【0030】
第1油圧検出器95は、ブームシリンダ16に取り付けられている。第1油圧検出器95は、ブームシリンダ16の油室内の作動油の圧力を検出する。第1油圧検出器95の検出信号は、制御装置10に入力される。
【0031】
第2油圧検出器96は、バケットシリンダ19に取り付けられている。第2油圧検出器96は、バケットシリンダ19の油室内の作動油の圧力を検出する。第2油圧検出器96の検出信号は、制御装置10に入力される。
【0032】
第1角度検出器29は、たとえば、ブームピン9に取り付けられたポテンショメータである。第1角度検出器29は、車体に対するブーム14の持ち上がり角度(チルト角度)を表すブーム角度を検出する。第1角度検出器29は、ブーム角度を示す検出信号を制御装置10に出力する。
【0033】
具体的には、図1に示すように、ブーム基準線Aは、ブームピン9の中心とバケットピン17の中心とを通る直線である。ブーム角度θ1は、ブームピン9の中心から前方に延びる水平線Hと、ブーム基準線Aとの成す角度である。ブーム基準線Aが水平である場合をブーム角度θ1=0°と定義する。ブーム基準線Aが水平線Hよりも上方にある場合にブーム角度θ1を正とする。ブーム基準線Aが水平線Hよりも下方にある場合にブーム角度θ1を負とする。
【0034】
なお第1角度検出器29は、ブームシリンダ16に配置されたストロークセンサであってもよい。
【0035】
第2角度検出器48は、たとえば、支持ピン18aに取り付けられたポテンショメータである。第2角度検出器48は、ブーム14に対するベルクランク18の角度を表すベルクランク角度を検出する。第2角度検出器48は、ベルクランク角度を示す検出信号を制御装置10に出力する。
【0036】
具体的には、図1に示すように、ベルクランク基準線Bは、支持ピン18aの中心と連結ピン18bの中心とを通る直線である。ベルクランク角度θ2は、ブーム基準線Aとベルクランク基準線Bとの成す角度である。バケット6を接地した状態でバケット6の背面6bが地上において水平となる場合をベルクランク角度θ2=0°と定義する。バケット6を掘削方向(上向き)に移動した場合にベルクランク角度θ2を正とする。バケット6をダンプ方向(下向き)に移動した場合にベルクランク角度θ2を負とする。
【0037】
第2角度検出器48は、ブーム14に対するバケット6の角度(バケット角度)を検出してもよい。バケット角度は、バケットピン17の中心とバケット6の刃先6aとを通る直線と、ブーム基準線Aとの成す角度である。第2角度検出器48は、バケットピン17に取り付けられたポテンショメータまたは近接スイッチであってもよい。または第2角度検出器48は、バケットシリンダ19に配置されたストロークセンサであってもよい。
【0038】
操作装置8は、オペレータによって操作される。操作装置8は、オペレータがホイールローダ1を動作させるために操作する、複数種類の操作部材を備えている。具体的には操作装置8は、アクセル操作部材81aと、ステアリング操作部材82aと、ブーム操作部材83aと、バケット操作部材84aと、変速操作部材85aと、FR操作部材86aとを備えている。
【0039】
アクセル操作部材81aは、エンジン21の目標回転数を設定するために操作される。アクセル操作部材81aは、たとえばアクセルペダルである。アクセル操作部材81aの操作量(アクセルペダルの場合、踏み込み量。以下ではアクセル開度とも称する)を増大すると、車体は加速する。アクセル操作部材81aの操作量を減少すると、車体は減速する。アクセル操作部材81aは、ホイールローダ1を走行させるために操作される、実施形態の走行操作部材に相当する。アクセル操作検出部81bは、アクセル操作部材81aの操作量を検出する。アクセル操作検出部81bは、検出信号を制御装置10へ出力する。制御装置10は、アクセル操作検出部81bからの検出信号に基づいてエンジン21の出力を制御する。
【0040】
ステアリング操作部材82aは、車両の移動方向を操作するために操作される。ステアリング操作部材82aは、たとえばステアリングハンドルである。ステアリング操作検出部82bは、ステアリング操作部材82aの位置を検出し、検出信号を制御装置10に出力する。制御装置10は、ステアリング操作検出部82bからの検出信号に基づいてステアリング制御弁35を制御する。ステアリングシリンダ11が伸縮して、車両の進行方向が変更される。
【0041】
ブーム操作部材83aは、ブーム14を動作させるために操作される。ブーム操作部材83aは、たとえば操作レバーである。ブーム操作検出部83bは、ブーム操作部材83aの位置を検出する。ブーム操作検出部83bは、検出信号を制御装置10に出力する。制御装置10は、ブーム操作検出部83bからの検出信号に基づいて、作業機制御弁34を制御する。ブームシリンダ16が伸縮して、ブーム14が動作する。
【0042】
バケット操作部材84aは、バケット6を動作させるために操作される。バケット操作部材84aは、たとえば操作レバーである。バケット操作検出部84bは、バケット操作部材84aの位置を検出する。バケット操作検出部84bは、検出信号を制御装置10に出力する。制御装置10は、バケット操作検出部84bからの検出信号に基づいて、作業機制御弁34を制御する。バケットシリンダ19が伸縮して、バケット6が動作する。
【0043】
変速操作部材85aは、動力伝達装置23による変速を設定するために操作される。変速操作部材85aは、たとえばシフトレバーである。変速操作検出部85bは、変速操作部材85aの位置を検出する。変速操作検出部85bは、検出信号を制御装置10に出力する。制御装置10は、変速操作検出部85bからの検出信号に基づいて、動力伝達装置23を制御する。
【0044】
FR操作部材86aは、車両の前進と後進とを切り換えるために操作される。FR操作部材86aは、前進、中立および後進の各位置に切り換えられる。FR操作検出部86bは、FR操作部材86aの位置を検出する。FR操作検出部86bは、検出信号を制御装置10に出力する。制御装置10は、FR操作検出部86bからの検出信号に基づいて動力伝達装置23を制御して、車両の前進と後進と中立状態とを切り換える。
【0045】
表示部50は、制御装置10から指令信号の入力を受けて、各種情報を表示する。表示部50に表示される各種情報は、たとえば、ホイールローダ1により実行される作業に関する情報、燃料残量、冷却水温度および作動油温度などの車体情報、ホイールローダ1の周辺を撮像した周辺画像などであってもよい。表示部50はタッチパネルであってもよく、この場合、オペレータが表示部50の一部に触れることにより生成される信号が、表示部50から制御装置10に出力される。
【0046】
制御装置10は、一般的にCPU(Central Processing Unit)により各種のプログラムを読み込むことにより実現される。制御装置10は、メモリ10Mと、タイマ10Tとを有している。メモリ10Mは、ワークメモリとして機能するとともに、ホイールローダの機能を実現するための各種のプログラムを格納する。制御装置10は、タイマ10Tから現在時刻を読み出す。制御装置10は、たとえば、ホイールローダ1が掘削作業を実行しているときの、掘削作業開始からの経過時間を演算する。
【0047】
制御装置10は、アクセル操作部材81aの操作量に応じた目標回転数が得られるように、エンジン指令信号を電子ガバナ25に送る。制御装置10は、電子ガバナ25の制御に従って変動するエンジン21への燃料供給量に基づいて、エンジン21の単位稼働時間あたりの燃料消費量、ホイールローダ1の単位走行距離あたりの燃料消費量、および、バケット6内の単位積載重量あたりの燃料消費量を、算出可能である。
【0048】
制御装置10は、出力回転数センサ92の検出信号に基づいて、ホイールローダ1の車速を算出する。制御装置10は、ホイールローダ1の車速と牽引力との関係を規定するマップをメモリ10Mから読み出し、当該マップに基づいて、牽引力を算出する。
【0049】
制御装置10は、エンジン回転数センサ91から、エンジン回転数の検出信号の入力を受ける。制御装置10は、エンジン回転数とエンジントルクとの関係を規定するマップをメモリ10Mから読み出し、当該マップに基づいて、エンジントルクを算出する。
【0050】
牽引力およびエンジントルクは、マップの参照とは異なる形態で算出されてもよい。たとえば、テーブルの参照または数式による演算などによって、牽引力およびエンジントルクを算出してもよい。
【0051】
<掘削作業>
本実施形態のホイールローダ1は、土砂などの掘削対象物を掬い取る掘削作業を実行する。図3は、実施形態に基づくホイールローダ1による掘削作業を説明する図である。
【0052】
図3に示されるように、ホイールローダ1は、バケット6の刃先6aを掘削対象物100に食い込ませた後に、図3中の曲線矢印のように、バケット軌跡Lに沿ってバケット6を上昇させる。これにより、バケット6に掘削対象物100を掬い取る掘削作業が実行される。
【0053】
本実施形態のホイールローダ1は、掘削対象物100をバケット6に掬い取る掘削動作と、バケット6内の荷(掘削対象物100)をダンプトラックなどの運搬機械に積み込む積込動作とを実行する。
【0054】
より具体的には、ホイールローダ1は、次のような複数の作業工程を順次に行うことを繰り返して、掘削対象物100を掘削し、ダンプトラックなどの運搬機械に掘削対象物100を積み込む。
【0055】
第一の工程は、掘削対象物100に向かって前進する空荷前進工程である。第二の工程は、バケット6の刃先6aが掘削対象物100に食い込むまでホイールローダ1を前進させる掘削(突込み)工程である。第三の工程は、ブームシリンダ16を操作してバケット6を上昇させるとともにバケットシリンダ19を操作してバケット6をチルトバックさせる掘削(掬込み)工程である。第四の工程は、バケット6に掘削対象物100が掬い込まれた後にホイールローダ1を後進させる積荷後進工程である。
【0056】
第五の工程は、バケット6を上昇させた状態を維持しながら、またはバケット6を上昇させながら、ホイールローダ1を前進させてダンプトラックに接近させる、積荷前進工程である。第六の工程は、所定位置でバケット6をダンプして掘削対象物100をダンプトラック荷台上に積み込む排土工程である。第七の工程は、ホイールローダ1を後進させながらブーム14を下げ、バケット6を掘削姿勢に戻す、後進・ブーム下げ工程である。以上が、掘削積込作業の1サイクルをなす典型的な作業工程である。
【0057】
ホイールローダ1の現在の作業工程が掘削工程であり作業機3が掘削作業中であるか、現在の作業工程が掘削工程ではなく作業機が掘削作業中でないかは、たとえば、ホイールローダ1を前後進させるオペレータの操作、作業機3に対するオペレータの操作、および作業機3のシリンダの現在の油圧についての判定条件の組み合わせを用いることにより、判定することができる。
【0058】
<掘削作業の生産性>
図4は、ホイールローダ1による掘削作業の生産性について示す概略図である。図4に示されるグラフの横軸は、掘削作業の開始から終了までの所要時間(以下では掘削時間と称する)を示す。掘削作業を開始した時刻を時刻0とする。図4の縦軸は、掘削作業によってバケット6内に掬い取られた掘削対象物の量(以下では掘削土量と称する)を示す。実際の掘削作業が行なわれたときの掘削時間と掘削土量とが、図4に示されるグラフにプロットされる。複数のオペレータによる掘削作業、望ましくは数万回以上の掘削作業が、図4にプロットされる。
【0059】
掘削時間と掘削土量とによって、掘削作業の生産性が判定される。掘削時間が同じ2回の掘削作業を比較した場合、掘削土量の大きい方が生産性が高いと判定される。掘削土量が同じ2回の掘削作業を比較した場合、掘削時間の短い方が生産性が高いと判定される。掘削時間と燃料消費量とには強い相関があり、図4の横軸は燃料消費量を示すものといえる。燃料消費量が少なくかつ掘削土量が多い掘削作業が、生産性の高い掘削であると判定される。複数回の掘削作業から、生産性の高さに基づいていくつかの掘削作業が抽出される。たとえば図4中に楕円で囲って示す、比較的燃料消費量が少なくかつ掘削土量が多い掘削作業を、生産性が高い掘削作業であると判定して抽出する。
【0060】
抽出された掘削作業のデータに基づいて、掘削作業のためにオペレータが操作装置8を操作する際の規範となる規範データが生成される。抽出された複数の掘削作業のデータの加重平均を取ることで、規範データを生成することができる。制御装置10は、抽出された掘削作業時における、アクセル開度と、ブーム角度θ1と、ベルクランク角度θ2とから、規範データを生成する。生成された規範データは、メモリ10Mに記憶される。メモリ10Mは、規範データを記憶する、実施形態の記憶部に相当する。
【0061】
メモリ10Mは、アクセル操作部材81aを操作する際の規範となる規範データを記憶する。メモリ10Mは、ブーム操作部材83aを操作する際の規範となる規範データを記憶する。メモリ10Mは、バケット操作部材84aを操作する際の規範となる規範データを記憶する。メモリ10Mは、複数種類の操作部材を操作する際の規範となる規範データを、操作部材の種類毎に記憶する。
【0062】
掘削土量の算出方法の一例について説明する。図5は、掘削土量ごとのブーム角度θ1とブーム圧力Pτとの関係の一例を示すグラフである。図5のグラフにおける横軸はブーム角度θ1、縦軸はブーム圧力Pτである。ブーム圧力Pτは、第1油圧検出器95により検出されるブームシリンダ16の油室内の作動油の圧力をいう。図5において、カーブA、B、Cはそれぞれ、バケット6が空、1/2積載、満杯積載の場合を示している。予め計測された2個以上の掘削土量におけるブーム角度θ1とブーム圧力Pτとの関係のグラフに基づき、図5に示すように、ブーム角度θ1ごとの掘削土量とブーム圧力Pτとの関係のグラフを求めることができる。
【0063】
ある時刻におけるブーム角度θ1とブーム圧力Pτとが判明すると、その時刻での掘削土量を求めることができる。たとえば、図5に示されるように、ある時刻mkにおいてブーム角度θ1=θk、ブーム圧力Pτ=Pτkであったとすると、図6からその時刻mkにおける掘削土量WNを求めることが可能となる。図6は、ブーム角度θ1=θkにおける、ブーム圧力Pτと荷重Wとの関係を示すグラフである。図6のグラフにおける横軸はブーム圧力Pτ、縦軸は掘削土量Wである。
【0064】
図5に示されるように、PτAとは、ブーム角度θ1=θkにおける、バケット6が空の場合のブーム圧力である。PτCとは、ブーム角角度θ1=θkにおける、バケット6が満杯積載の場合のブーム圧力である。図6に示されるWAとは、ブーム角度θ1=θkにおける、バケット6が空の場合の荷重である。またWCとは、ブーム角度θ1=θkにおける、バケット6が満杯積載の場合の荷重である。
【0065】
図5に示されるように、PτkがPτAとPτCとの間に位置する場合、線形補間を行うことにより、時刻mkにおける掘削土量WNを決定することができる。または、このような関係を予め記憶した数値テーブルに基づいて、掘削土量WNを求めることも可能である。
【0066】
バケット6内の掘削土量の算出方法は、図5,6に示される例に限られない。ブーム圧力およびブーム角度θ1に加えて、またはこれらに代えて、バケットシリンダ19のヘッド圧とボトム圧との差圧、バケット角度、作業機3の寸法などを、バケット6内の掘削土量を算出するためのパラメータとして考慮することができる。これらのパラメータを考慮して算出することにより、より精度の高い掘削土量の算出が可能になる。
【0067】
<表示画面>
図7は、表示部50に表示される表示画面の一例を示す図である。図7に示されるように、表示部50には、差分データ51と、バケット角度対比部55と、シリンダ圧対比部56と、掘削土量61と、掘削時間62と、選択部63と、スコア64と、スコア履歴65とが、一例として表示される。表示部50に表示される表示画面は、1回の掘削作業が終了したときに、更新される。
【0068】
バケット6の刃先6aが掘削作業物に突っ込むと、ブームシリンダ16の油室内の作動油の圧力が上昇する。たとえば、ホイールローダ1の前進走行中にブームシリンダ16の油室内の作動油の圧力が上昇したことを検出することにより、掘削作業が開始したと判定することができる。たとえば、掘削作業中には前進走行しているホイールローダ1が後進へと切り替えられたことを検出することにより、掘削作業が終了したと判定することができる。
【0069】
差分データ51は、ベルクランク操作差分データ52と、ブーム操作差分データ53と、アクセル開度差分データ54とを含む。
【0070】
ベルクランク操作差分データ52は、規範データのベルクランク角度θ2と、オペレータによるバケット操作部材84aの実際の操作に従って動作したベルクランク18の成すベルクランク角度θ2との対比を示す。より具体的には、ベルクランク操作差分データ52は、規範データのベルクランク角度θ2に対する、オペレータの実際の操作に従う実操作データのベルクランク角度θ2の差分を示す。
【0071】
ベルクランク操作差分データ52は、掘削作業中のある期間、具体的には掘削作業の開始から終了までの期間における、実操作データのベルクランク角度θ2と規範データのベルクランク角度θ2との対比の、時間の経過に対する変化を表示するものである。表示部50は、実操作データのベルクランク角度θ2と規範データのベルクランク角度θ2との対比を、時系列的に表示する。
【0072】
ブーム操作差分データ53は、規範データのブーム角度θ1と、オペレータによるブーム操作部材83aの実際の操作に従って動作したブーム14の成すブーム角度θ1との対比を示す。より具体的には、ブーム操作差分データ53は、規範データのブーム角度θ1に対する、オペレータの実際の操作に従う実操作データのブーム角度θ1との差分を示す。
【0073】
ブーム操作差分データ53は、掘削作業中のある期間、具体的には掘削作業の開始から終了までの期間における、実操作データのブーム角度θ1と規範データのブーム角度θ1との対比の、時間の経過に対する変化を表示するものである。表示部50は、実操作データのブーム角度θ1と規範データのブーム角度θ1との対比を、時系列的に表示する。
【0074】
アクセル開度差分データ54は、規範データのアクセル開度と、オペレータによるアクセル操作部材81aの実際の操作に従ってアクセル操作検出部81bで検出されるアクセル開度との対比を示す。より具体的には、アクセル開度差分データ54は、規範データのアクセル開度に対する、オペレータの実際の操作に従う実操作データのアクセル開度の差分を示す。
【0075】
アクセル開度差分データ54は、掘削作業中のある期間、具体的には掘削作業の開始から終了までの期間における、実操作データのアクセル開度と規範データのアクセル開度との対比の、時間の経過に対する変化を表示するものである。表示部50は、実操作データのアクセル開度と規範データのアクセル開度との対比を、時系列的に表示する。
【0076】
バケット角度対比部55は、掘削作業中のある期間、具体的には掘削作業の開始から終了までの期間における、実操作データのベルクランク角度θ2と規範データのベルクランク角度θ2とを重畳表示する。図中の実線が実操作データのベルクランク角度θ2を示し、図中の破線が規範データのベルクランク角度θ2を示す。バケット角度対比部55は、実操作データのベルクランク角度θ2と規範データのベルクランク角度θ2との、時間の経過に対する変化を表示する。表示部50は、実操作データのベルクランク角度θ2と規範データのベルクランク角度θ2との対比を、時系列的に表示する。
【0077】
シリンダ圧対比部56は、掘削作業中のある期間、具体的には掘削作業の開始から終了までの期間における、実操作データのブーム圧力Pτと規範データのブーム圧力Pτとを重畳表示する。図中の実線が実操作データのブーム圧力Pτを示し、図中の破線が規範データのブーム圧力Pτを示す。シリンダ圧対比部56は、実操作データのブーム圧力Pτと規範データのブーム圧力Pτとの、時間の経過に対する変化を表示する。表示部50は、実操作データのブーム圧力Pτと規範データのブーム圧力Pτとの対比を、時系列的に表示する。
【0078】
差分データ51、バケット角度対比部55、およびシリンダ圧対比部56においては、図中の左右方向が時間の経過を示している。表示の左端が掘削開始時点に対応し、表示の右端が掘削終了時点に対応する。各々の実操作データは、表示部50にそのまま表示されるのではなく、表示部50に表示される期間の開始時点と終了時点とが揃うように時間軸を調整する処理を施された上で、表示部50に表示される。
【0079】
図8は、時間軸調整前の実操作データを示す模式図である。図8の横軸は時間を示す。掘削作業開始時点を時刻0とする。図8に示される取得データ71は、掘削作業が終了した時刻=k1、すなわち掘削時間k1の掘削作業が行なわれたときに取得された実操作データの生データを示す。同様に、取得データ72は、掘削時間k2の掘削作業が行なわれたときに取得された実操作データの生データを示す。取得データ73は、掘削時間k3の掘削作業が行なわれたときに取得された実操作データの生データを示す。
【0080】
このように、各掘削作業毎に掘削時間が異なるので、実操作データを生データのまま規範データと対比させるのではなく、時間軸を揃える処理を生データに施した上で、規範データとの対比を表示部50に表示させるようにする。
【0081】
図9は、時間軸調整後の実操作データを示す模式図である。図9の横軸は時間を示す。実際の掘削時間k1の取得データ71を、掘削時間nとなるように時間軸を調整して、図9に示される正規化データ71Nとする。取得データ72,73についても同様に、掘削時間nの正規化データ72N,73Nとする。規範データもまた、掘削時間nとなるように調整されている。このようにして、各掘削作業における掘削時間の時間軸が揃えられ、実操作データと規範データとを対比できるようになる。
【0082】
掘削時間nを等分割する複数の時刻を設定し、その時刻における実操作データを求めることで、規範データとの対比を容易にすることができる。たとえば、98個の時刻を設定し、時刻0および時刻nを含めた計100個の時刻における実操作データを求めてもよい。実操作データの生データが、設定された時刻に検出された検出結果を含まない場合には、その時刻より前の最も近い時刻に検出された検出結果と、その時刻より後の最も近い時刻に検出された検出結果と、を線形補間することにより、設定された時刻における実操作データを求めることができる。
【0083】
図7に戻って、差分データ51に示される右上から左下に延びるハッチングは、実操作データにより示されるオペレータの実際の操作装置8の操作量が、規範データにより示される手本となる操作量よりも、小さいことを示す。差分データ51に示される左上から右下に延びるハッチングは、実操作データにより示されるオペレータの実際の操作装置8の操作量が、規範データにより示される手本となる操作量よりも、大きいことを示す。ハッチングの細かさが規範データからの解離の大きさを表す。差分データ51に示される空白の領域は、実操作データにより示されるオペレータの実際の操作装置8の操作量が、規範データにより示される手本となる操作量に近く、規範データに対する実操作データの差分が十分に小さいことを示す。
【0084】
差分データ51は、規範データに対する実操作データの差分を色分けして表示することができる。たとえば図7に示される、差分データ51中の空白の領域を緑色、右上から左下に延びるハッチングが付された領域を黄色、左上から右下に延びるハッチングが付された領域を赤色で表示してもよい。
【0085】
図7に示される例では、ベルクランク操作差分データ52に示されるバケット操作部材84aの操作量が、掘削作業の開始時点から掘削作業の半ば頃まで、規範データの操作量よりも小さくなっている。掘削作業の半ば過ぎに、バケット操作部材84aの操作量が規範データの操作量とほぼ一致する。掘削作業の終了間際には、バケット操作部材84aの操作量が規範データの操作量よりも大きくなっている。
【0086】
ブーム操作差分データ53に示されるブーム操作部材83aの操作量が、掘削作業を開始した時点で、規範データの操作量よりも小さくなっている。ブーム操作部材83aの操作量は、掘削作業開始してから短時間経過後に、規範データの操作量とほぼ一致する。掘削作業の終了間際には、ブーム操作部材83aの操作量が規範データの操作量よりも大きくなっている。
【0087】
アクセル開度差分データ54に示されるアクセル操作部材81aの操作量が、掘削作業を開始してから掘削作業の後半まで、規範データの操作量とほぼ一致する。掘削作業の終了間際には、アクセル開度が規範データよりも大きくなっている。
【0088】
メモリ10Mには、アクセル操作部材81a、ブーム操作部材83aおよびバケット操作部材84aの操作に対する規範データの、時間の経過に対する変化が記憶されている。制御装置10は、時間が経過するに従って変化する規範データと実操作データとの時間軸を調整した上で、規範データと実操作データとを各時刻毎に対比することにより、各時刻における規範データに対する実操作データの差分を求める。表示部50は、その差分を色分けして表示する。表示部50に表示された差分データ51は、規範データに関連する表示データの一例である。
【0089】
掘削土量61は、表示画面を更新した際の掘削作業においてバケット6内に掬い取られた掘削対象物の量を示す。掘削時間62は、表示画面を更新した際の掘削作業における掘削開始から終了までの所要時間を示す。
【0090】
選択部63は、一例として選択バーの形状に表示されている。オペレータは、選択部63を操作する、たとえば図7中の左右方向に延びるバー上で選択子を左右に動かして選択子の位置を変更することにより、掘削土量と掘削時間とのいずれを優先するかを選択可能である。図7に示される例の場合、選択子を左方向へ動かして「土量」の表示に近づけることにより、掘削土量を優先するとの選択になる。選択子を右方向へ動かして「時間」の表示に近づけることにより、掘削時間を優先するとの選択になる。選択子を左右方向に動かす程度によって、掘削土量または掘削時間をどの程度優先する選択とするのかを調節可能である。
【0091】
オペレータの選択に従って、規範データを生成する際に、異なる掘削作業が抽出される。掘削土量を優先すると選択した場合には、掘削時間が長くても掘削土量のより多い掘削作業が抽出される。掘削時間を優先すると選択した場合には、掘削土量が小さくても掘削時間のより短い掘削作業が抽出される。
【0092】
スコア64は、掘削土量61と掘削時間62とに基づいて算出される。掘削土量61が多いほど、また掘削時間62が短いほど、スコア64として表される数値が大きくなる。スコア64によって、掘削作業の生産性が評価される。オペレータは、スコア64を参照することで、今回の掘削作業の生産性がどの程度であったかを認識することができる。
【0093】
スコア履歴65は、複数回の掘削作業におけるスコア64の履歴を表示する。スコア履歴65によって、複数回の掘削作業における生産性の履歴が評価される。オペレータは、スコア履歴65を参照することで、一連の掘削作業の生産性がどの程度であったかを認識することができる。
【0094】
<作用および効果>
次に、上述した実施形態の作用および効果について説明する。
【0095】
実施形態の操作ガイド装置は、図7に示される表示部50を備えている。表示部50は、ホイールローダ1の動作中のある期間における、オペレータが操作装置8を実際に操作した実操作データと、操作装置8を操作する際の規範となる規範データとの対比の、時間の経過に対する変化を表示する。
【0096】
オペレータは、表示部50の表示を見ることで、掘削作業を行なう際に実際にした操作を示す実操作データと、その掘削作業のための規範となる操作を示す規範データとの対比を認識することができる。規範となる操作に対してオペレータの実際の操作がどのように違ったのかを、オペレータは容易に認識できる。オペレータは、規範データとの違いを認識することで、次回の掘削作業の際には規範データにより近い操作をすることができ、これによりオペレータは自分の作業を改善することができる。
【0097】
図7に示されるように、表示部50は、規範データに対する実操作データの差分を表示する。オペレータは、表示部50に表示された差分を見ることで、規範となる操作に対して実際の操作量が多かったのか少なかったのかを容易に認識できる。オペレータは、規範データに対する差分を認識することで、次回の掘削作業の際には規範データにより近い操作をすることができ、これによりオペレータは自分の作業を改善することができる。
【0098】
図7に示されるように、表示部50は、規範データに対する実操作データの差分を色分けして表示する。オペレータは、表示部50に表示された色分けを見ることで、差分をより容易に認識することができる。
【0099】
図2に示されるように、操作装置8は、ホイールローダ1を走行させるために操作されるアクセル操作部材81aを有している。規範データと実操作データとは、アクセル操作部材81aの操作量を含んでいる。オペレータは、表示部50の表示を見ることで、ホイールローダ1を走行させるためのアクセル操作部材81aの操作が、規範となる操作に対してどのように違ったのかを、容易に認識することができる。
【0100】
図1に示されるように、ホイールローダ1は、ブーム14とバケット6とを有する作業機3を有している。図2に示されるように、操作装置8は、ブーム14を動作させるために操作されるブーム操作部材83aと、バケット6を動作させるために操作されるバケット操作部材84aとを有している。規範データと実操作データとは、ブーム操作部材83aの操作量と、バケット操作部材84aの操作量とを含んでいる。オペレータは、表示部50の表示を見ることで、ブーム14およびバケット6を動作させるためのブーム操作部材83aおよびバケット操作部材84aのそれぞれの操作が、規範となる操作に対してどのように違ったのかを、容易に認識することができる。
【0101】
図4に示されるように、掘削時間と掘削土量とによって、掘削作業の生産性が判定される。規範データは、複数回の掘削作業から、生産性の高さに基づいて掘削作業を抽出することにより、生成される。複数回の掘削作業から、掘削時間が短くかつ掘削土量が多く、したがって生産性の高い掘削作業を抽出して規範データとする。これにより、オペレータが自分の操作を規範データに近づけようとする改善で、掘削作業の生産性を向上することができる。
【0102】
図7に示されるように、表示部50は、選択部63をさらに有している。オペレータは、選択部63を操作することにより、掘削時間と掘削土量とのいずれを優先するかを選択可能である。規範データを生成するときに、オペレータの選択に従って異なる掘削作業が抽出される。掘削時間の短縮と掘削土量の増大との優先度をオペレータが選択して、その選択に対応した掘削作業が抽出されて規範データが生成される。これにより、オペレータの選択に合わせた規範データを生成することができる。
【0103】
図7に示されるように、表示部50は、掘削作業の開始から終了までの期間における実操作データと規範データとの対比の時間の経過に対する変化を表示する。これにより、オペレータは、実操作データと規範データとの対比を掘削作業の全期間に亘って認識できる。オペレータは、次回の掘削作業の際に、掘削作業の開始から終了までの全期間の操作装置8の操作を改善することができる。
【0104】
図7~9に示されるように、表示部50に表示される期間の開始時点と終了時点とが揃うように、規範データと実操作データとの時間軸が調整される。実操作データを取得した際の掘削時間が規範データと異なっていても、時間軸を揃えるように調整することで、実操作データと規範データとをより正確に対比することができる。
【0105】
実施形態の操作システムは、ホイールローダ1のための操作システムであって、図2に示されるように、オペレータがホイールローダ1を動作させるために操作する複数種類の操作部材と、記憶部とを備えている。記憶部は、操作部材を操作する際の規範となる規範データを、操作部材の種類毎に記憶する。
【0106】
操作部材の種類毎の規範データを用いて、各操作部材毎に、オペレータが操作部材を実際に操作した操作量と規範データとを対比することができる。この対比の結果に基づいて、オペレータは、各操作部材毎に、規範となる操作に対して実際の操作がどのように違ったのかを容易に認識できる。オペレータは、規範データとの違いを認識することで、次回の掘削作業の際には操作部材の操作量を規範データにより近づけることができる。したがって、実施形態の操作システムを、オペレータに操作部材の操作を指導するために好適に用いることができる。
【0107】
記憶部が、ホイールローダ1の動作中のある期間、たとえば掘削作業の開始から終了までの期間における、時間の経過に対する規範データの変化を記憶していることにより、オペレータは、作業のどの時点で規範となる操作に対して実際の操作がどのように違ったのかを、各操作部材毎に容易に認識することができる。
【0108】
図7に示されるように、操作システムが規範データに関連する表示データを表示する表示部50をさらに備えることにより、オペレータは、表示部50の表示を見ることで、規範となる操作に対して実際の操作がどのように違ったのかを、各操作部材毎に容易に認識することができる。
【0109】
図2に示されるように、操作部材は、ホイールローダ1を走行させるために操作されるアクセル操作部材81aを有している。オペレータは、ホイールローダ1を走行させるためのアクセル操作部材81aの実際の操作が、規範となる操作に対してどのように違ったのかを、容易に認識することができる。
【0110】
図1に示されるように、ホイールローダ1は、ブーム14とバケット6とを有する作業機3を有している。図2に示されるように、操作部材は、ブーム14を動作させるために操作されるブーム操作部材83aと、バケット6を動作させるために操作されるバケット操作部材84aとを有している。オペレータは、ブーム14およびバケット6を動作させるためのブーム操作部材83aおよびバケット操作部材84aのそれぞれの実際の操作が、規範となる操作に対してどのように違ったのかを、容易に認識することができる。
【0111】
これまでの実施形態の説明では、バケット6に掘削対象物を掬い取る掘削作業を行なうための規範データがメモリ10Mに記憶され、掘削作業中のある期間における実操作データと規範データとが対比される例について説明した。上述した実施形態の思想は、作業機械が掘削作業を行なう場合に限られず、作業機械がたとえば走行などの他の動作を行なう場合にも、適用することが可能である。表示部50に表示される実操作データと前記規範データとの対比は、上述した差分データ51に限られず、たとえば三次元モデル化した作業機械の実際の動作と規範となる動作との重畳表示であってもよい。
【0112】
実施形態では、ホイールローダ1が制御装置10を備えており、ホイールローダ1に搭載されている表示部50に実操作データと規範データとの対比を表示する例について説明した。制御装置10および表示部50は、必ずしもホイールローダ1に搭載されていなくてもよい。ホイールローダ1に搭載された制御装置10とは別に設けられた外部のコントローラおよびディスプレイが、実操作データと規範データとの対比を表示するシステムを構成してもよい。外部のコントローラおよびディスプレイは、ホイールローダ1の作業現場に配置されてもよく、ホイールローダ1の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0113】
実施形態では、ホイールローダ1はキャブ5を備えており、オペレータがキャブ5に搭乗する有人車両である例について説明した。ホイールローダ1は、無人車両であってもよい。ホイールローダ1は、オペレータが搭乗してホイールローダ1を操作するためのキャブを備えていなくてもよい。ホイールローダ1は、搭乗したオペレータによる操縦機能を搭載していなくてもよい。ホイールローダ1は、遠隔操縦専用の作業機械であってもよい。ホイールローダ1の操縦は、遠隔操縦装置からの無線信号により行なわれてもよい。
【0114】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、3 作業機、4 走行装置、5 キャブ、6 バケット、6a 刃先、6b 背面、8 操作装置、10 制御装置、10M メモリ、10T タイマ、11 ステアリングシリンダ、12 ステアリングポンプ、13 作業機ポンプ、14 ブーム、16 ブームシリンダ、18 ベルクランク、19 バケットシリンダ、21 エンジン、29 第1角度検出器、34 作業機制御弁、35 ステアリング制御弁、48 第2角度検出器、50 表示部、51 差分データ、52 ベルクランク操作差分データ、53 ブーム操作差分データ、54 アクセル開度差分データ、55 バケット角度対比部、56 シリンダ圧対比部、61 掘削土量、62 掘削時間、63 選択部、64 スコア、65 スコア履歴、81a アクセル操作部材、83a ブーム操作部材、84a バケット操作部材、95 第1油圧検出器、96 第2油圧検出器、100 掘削対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9