(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】作業機械の較正のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
E02F9/20 M
(21)【出願番号】P 2020045458
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】竃門 光彦
(72)【発明者】
【氏名】澤木 隆
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6068730(JP,B2)
【文献】特許第5328830(JP,B2)
【文献】特開2019-061502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定部分を含む作業機械において、前記作業機械における基準位置からの前記所定部分の位置の算出に用いられるパラメータを較正するためにコンピュータによって実行される方法であって、
前記所定部分の位置の真の値を取得することと、
前記基準位置を取得することと、
前記基準位置から前記パラメータに基づいて算出された前記所定部分の位置の計算値が前記真の値に一致するように用いられる前記パラメータの複数の補正候補値を決定することと、
前記複数の補正候補値のそれぞれについて、前記真の値と前記計算値との間の差を示す評価値を算出することと、
前記評価値に基づいて、前記複数の補正候補値のなかから前記パラメータの確定補正値を決定すること、
を備える方法。
【請求項2】
前記所定部分の位置に対する複数の真の値と複数の計算値との間の複数の差に基づいて、前記評価値を算出することを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の差のそれぞれに重み係数を乗じることで、前記評価値を算出することを備える、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の補正候補値は、
前記基準位置から前記パラメータに基づいて算出された前記所定部分の位置の計算値が前記真の値に一致するように用いられる基本補正値と、
前記基本補正値の近傍において決定された補正値と、
を含む、
請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記基本補正値の近傍において決定された前記補正値は、前記基本補正値を変位させた値である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記確定補正値を前記基本補正値として前記複数の補正候補値を決定することと、前記評価値を算出することを繰り返すことで、前記確定補正値を更新することをさらに備える、
請求項4又は5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記作業機械は、
前記基準位置を含む本体と、
前記所定部分を含み、前記本体に対して動作可能に取り付けられた作業機と
を含む、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータは、前記本体における前記基準位置を示す第1位置データを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータは、前記作業機における前記所定部分の位置を示す第2位置データを含む、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記評価値を最小とする前記補正候補値を、前記確定補正値として決定することを備える、
請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
オペレータによって選択された前回の較正時の前記所定部分の位置を記憶することと、
今回の較正時にオペレータによって選択された前記所定部分の位置と、前回の較正時の前記所定部分の位置とが同じであるときには、他の位置を前記所定部分の位置として選択するように勧める報知信号を出力すること、
を備える、
請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
所定部分を含む作業機械と、
前記作業機械における基準位置を検出する位置センサと、
前記基準位置からの前記所定部分の位置の算出に用いられるパラメータを較正するコンピュータと、
を備え、
前記コンピュータは、
前記所定部分の位置の真の値を取得し、
前記位置センサが検出した前記基準位置を取得し、
前記基準位置から前記パラメータに基づいて算出された前記所定部分の位置の計算値が前記真の値に一致するように用いられる前記パラメータの複数の補正候補値を決定し、
前記複数の補正候補値のそれぞれについて、前記真の値と前記計算値との間の差を示す評価値を算出し、
前記評価値に基づいて、前記複数の補正候補値のなかから前記パラメータの確定補正値を決定する、
システム。
【請求項13】
前記コンピュータは、前記所定部分の位置に対する複数の真の値と複数の計算値との間の複数の差に基づいて、前記評価値を算出する、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータは、前記複数の差のそれぞれに重み係数を乗じることで、前記評価値を算出する、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の補正候補値は、
前記基準位置から前記パラメータに基づいて算出された前記所定部分の位置の計算値が前記真の値に一致するように用いられる基本補正値と、
前記基本補正値の近傍において決定された補正値と、
を含む、
請求項12から14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記基本補正値の近傍において決定された前記補正値は、前記基本補正値を変位させた値である、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コンピュータは、前記確定補正値を前記基本補正値として前記複数の補正候補値を決定することと、前記評価値を算出することを繰り返すことで、前記確定補正値を更新する、
請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
前記作業機械は、
前記基準位置を含む本体と、
前記所定部分を含み、前記本体に対して動作可能に取り付けられた作業機と
を含む、
請求項12から17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記パラメータは、前記本体における前記基準位置を示す第1位置データを含む、
請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記パラメータは、前記作業機における前記所定部分の位置を示す第2位置データを含む、
請求項18又は19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コンピュータは、前記評価値を最小とする前記補正候補値を、前記確定補正値として決定する、
請求項12から20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記コンピュータは、
オペレータによって選択された前回の較正時の前記所定部分の位置を記憶し、
今回の較正時にオペレータによって選択された前記所定部分の位置と、前回の較正時の前記
所定部分の位置とが同じであるときには、他の位置を前記所定部分の位置として選択するように勧める報知信号を出力する、
請求項12から21のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所定部分を含む作業機械において、作業機械における基準位置からの所定部分の位置の算出に用いられるパラメータを較正するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械の所定部分の位置から、他の部分の位置を算出する技術が知られている。例えば、特許文献1に開示されている油圧ショベルの位置検出装置は、GPSを用いて、本体におけるGPSアンテナの位置を検出する。位置検出装置は、GPSアンテナの位置から、所定のパラメータを用いて、バケットの刃先の位置を算出する。所定のパラメータは、例えばGPSアンテナとブームピンとの位置関係、ブームとアームとバケットとのそれぞれの長さ、ブームとアームとバケットとのそれぞれの角度などを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
演算されたバケットの刃先の位置の精度は、上述したパラメータの精度の影響を受ける。しかし、これらのパラメータは、設計値に対して誤差を有することが通常である。このため、上記の特許文献1は、パラメータの較正を自動的に行う較正システムを開示している。その較正システムは、位置検出装置によって算出された作業点の位置を、外部の計測装置によって計測された作業点の位置と比較することによって、自動的にパラメータの較正を行う。それにより、位置検出の精度を向上させることができる。しかし、位置検出の精度のさらなる向上が求められている。
【0005】
本開示の目的は、作業機械における位置検出の精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る方法は、作業機械のためのパラメータを較正するためにコンピュータによって実行される方法である。作業機械は、所定部分を含む。パラメータは、作業機械における基準位置からの所定部分の位置の算出に用いられる。当該方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、所定部分の位置の真の値を取得することである。第2の処理は、基準位置を取得することである。第3の処理は、基準位置からパラメータに基づいて算出された所定部分の位置の計算値が真の値に一致するように用いられる、パラメータの複数の補正候補値を決定することである。第4の処理は、複数の補正候補値のそれぞれについて、真の値と計算値との間の差を示す評価値を算出することである。第5の処理は、評価値に基づいて、複数の補正候補値のなかからパラメータの確定補正値を決定することである。なお、各処理の実行の順番は、上述した順番に限らず、変更されてもよい。
【0007】
本開示の他の態様に係るシステムは、作業機械と、位置センサと、コンピュータとを備える。作業機械は、所定部分を含む。位置センサは、作業機械における基準位置を検出する。コンピュータは、基準位置からの所定部分の位置の算出に用いられるパラメータを較正する。コンピュータは、所定部分の位置の真の値を取得する。コンピュータは、位置センサが検出した基準位置を取得する。コンピュータは、基準位置からパラメータに基づいて算出された所定部分の位置の計算値が真の値に一致するように用いられるパラメータの複数の補正候補値を決定する。コンピュータは、複数の補正候補値のそれぞれについて、真の値と計算値との間の差を示す評価値を算出する。コンピュータは、評価値に基づいて、複数の補正候補値のなかからパラメータの確定補正値を決定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業機械の所定部分の位置の計算値が真の値に一致するように用いられるパラメータの複数の補正候補値に対して評価値が算出される。そして、評価値からパラメータの確定補正値が決定される。そのため、パラメータの較正の精度が向上する。それにより、位置検出の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】作業機械およびその制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】基準位置から所定部分の位置を算出するためのパラメータを示す図である。
【
図5】パラメータを較正する処理を示すフローチャートである。
【
図7】他の実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る作業機械1の制御システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、作業機械1の側面図である。本実施形態において、作業機械1はショベルである。
【0011】
図1に示すように、作業機械1は、本体2と作業機3とを含む。作業機3は、本体2の前部に取り付けられている。本体2は、旋回体4と、走行体5と、キャブ6とを含む。旋回体4は、走行体5に対して旋回可能に取り付けられている。キャブ6は、旋回体4に配置されている。走行体5は、履帯7を含む。なお、
図1では、左右の履帯7のうち一方のみが図示されている。履帯7が駆動されることで、作業機械1は走行する。
【0012】
作業機3は、ブーム11と、アーム12と、バケット13とを含む。ブーム11は、旋回体4に対してブームピン28回りに回転可能に取り付けられている。アーム12は、ブーム11に対して、アームピン29回りに回転可能に取り付けられている。バケット13は、アーム12に対して、バケットピン30回りに回転可能に取り付けられている。
【0013】
作業機3は、ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とを含む。ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とは、例えば油圧シリンダである。ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とは、後述する油圧ポンプ22からの作動油によって、駆動される。ブームシリンダ14は、ブーム11を動作させる。アームシリンダ15は、アーム12を動作させる。バケットシリンダ16は、バケット13を動作させる。
【0014】
図2は、作業機械1およびその制御システムの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、作業機械1は、エンジン21と、油圧ポンプ22と、動力伝達装置23と、コンピュータ24とを含む。エンジン21は、コンピュータ24からの指令信号により制御される。油圧ポンプ22は、エンジン21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ22から吐出された作動油は、ブームシリンダ14と、アームシリンダ15と、バケットシリンダ16とに供給される。
【0015】
作業機械1は、旋回モータ25を含む。旋回モータ25は、例えば油圧モータである。或いは、旋回モータ25は、電動モータであってもよい。旋回モータ25は、油圧ポンプ22からの作動油によって駆動される。旋回モータ25は、旋回体4を旋回させる。なお、
図2では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0016】
油圧ポンプ22は可変容量ポンプである。油圧ポンプ22にはポンプ制御装置26が接続されている。ポンプ制御装置26は、油圧ポンプ22の傾転角を制御する。ポンプ制御装置26は、例えば電磁弁を含み、コンピュータ24からの指令信号により制御される。コンピュータ24は、ポンプ制御装置26を制御することで、油圧ポンプ22の容量を制御する。
【0017】
作業機械1は、制御弁27を含む。油圧ポンプ22とシリンダ14-16と旋回モータ25とは、制御弁27を介して油圧回路によって接続されている。制御弁27は、コンピュータ24からの指令信号によって制御される。制御弁27は、油圧ポンプ22からシリンダ14-16及び旋回モータ25に供給される作動油の流量を制御する。コンピュータ24は、制御弁27を制御することで、作業機3の動作を制御する。コンピュータ24は、制御弁27を制御することで、旋回体4の旋回を制御する。
【0018】
動力伝達装置23は、エンジン21の駆動力を走行体5に伝達する。履帯7は、動力伝達装置23からの駆動力によって駆動されて、作業機械1を走行させる。動力伝達装置23は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。或いは、動力伝達装置23は、HST(Hydro Static Transmission)、或いはHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの他の形式のトランスミッションであってもよい。
【0019】
コンピュータ24は、CPUなどのプロセッサ31を含む。プロセッサ31は、作業機械1の制御のための処理を行う。コンピュータ24は、記憶装置32を含む。記憶装置32は、RAM或いはROMなどのメモリ、及び、HDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含む。記憶装置32は、作業機械1の制御のためのデータ及びプログラムを記憶している。
【0020】
制御システムは、操作装置33を含む。操作装置33は、オペレータによって操作可能である。操作装置33は、例えば、レバー、ペダル、或いはスイッチを含む。操作装置33は、オペレータによる操作に応じた操作信号をコンピュータに出力する。コンピュータは、オペレータによる操作装置33の操作に応じて、作業機3を動作させるように、制御弁を制御する。コンピュータは、オペレータによる操作装置33の操作に応じて、旋回体4を旋回させるように、制御弁27を制御する。コンピュータ24は、オペレータによる操作装置33の操作に応じて、作業機械1を走行させるように、エンジン21及び動力伝達装置23を制御する。
【0021】
制御システムは、入力装置34とディスプレイ35とを含む。入力装置34は、オペレータによって操作可能である。入力装置34は、例えばタッチスクリーンである。ただし、入力装置34は、ハードウェアキーを含んでもよい。オペレータは、入力装置34を操作することで、作業機械1に関する各種の設定を入力する。入力装置34は、オペレータの操作に応じた入力信号を出力する。ディスプレイ35は、例えばLCD、OELD、或いは他の種類のディスプレイである。ディスプレイ35は、コンピュータ24からの表示信号に応じた画面を表示する。
【0022】
制御システムは、位置センサ36と、姿勢センサ37と、作業機センサ38とを含む。位置センサ36は、本体2の位置を検出する。本体2の位置は、作業機械1の外部の座標系で示される。外部の座標系は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)によるグローバル座標系である。或いは、外部の座標系は、作業機械1が使われる作業現場内でのローカル座標系であってもよい。
図3に示すように、位置センサ36は、アンテナ41と受信機42とを含む。アンテナ41は、本体2に取り付けられている。受信機42は、外部の座標系におけるアンテナ41の位置を検出する。受信機42は、外部の座標系におけるアンテナ41の位置を示す外部座標データを出力する。
【0023】
姿勢センサ37は、本体2の姿勢を検出する。本体2の姿勢は、本体2の方位と、本体2のピッチ角θ1を含む。本体2の方位は、本体2の外部の座標系において本体2が向いている方向を意味する。
図3に示すように、本体2のピッチ角θ1は、水平方向に対する本体2の前後方向の傾斜角度である。姿勢センサ37は、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)である。姿勢センサ37は、本体2の姿勢を示す第1姿勢データを出力する。
【0024】
作業機センサ38は、作業機3の姿勢を検出する。作業機3の姿勢は、ブーム角θ2と、アーム角θ3と、バケット角θ4とを含む。作業機センサ38は、ブーム角θ2と、アーム角θ3と、バケット角θ4とを示す第2姿勢データを出力する。ブーム角θ2は、本体2の上下方向に対するブーム11の角度である。アーム角θ3は、ブーム11に対するアーム12の角度である。バケット角θ4は、アーム12に対するバケット13の角度である。詳細には、作業機センサ38は、
図3に示すブーム角センサ38Aと、アーム角センサ38Bと、バケット角センサ38Cとを含む。ブーム角センサ38Aは、ブーム角θ2を検出する。アーム角センサ38Bは、アーム角θ3を検出する。バケット角センサ38Cは、バケット角θ4を検出する。
【0025】
詳細には、ブーム角センサ38Aは、ブームシリンダ14のストローク長を検出する。アーム角センサ38Bは、アームシリンダ15のストローク長を検出する。バケット角センサ38Cは、バケットシリンダ16のストローク長を検出する。各シリンダ14-16のストローク長から、ブーム11とアーム12とバケット13との各回転角度が算出される。或いは、ブーム角センサ38Aと、アーム角センサ38Bと、バケット角センサ38Cとは、それぞれブーム11とアーム12とバケット13との回転角度を直接的に検出するセンサであってもよい。
【0026】
コンピュータ24は、操作装置33から操作信号を受信する。コンピュータ24は、入力装置34から入力信号を受信する。コンピュータ24は、ディスプレイ35に表示信号を出力する。コンピュータ24は、位置センサ36から外部座標データを受信する。コンピュータ24は、姿勢センサ37から第1姿勢データを受信する。コンピュータ24は、作業機センサ38から第2姿勢データを受信する。
【0027】
コンピュータ24は、受信したデータに基づいて、本体2の基準位置P1から、作業機3の所定部分の位置を算出する。本実施形態において、基準位置P1は、アンテナ41の位置である。所定部分P2は、バケット13の刃先である。
【0028】
記憶装置32は、第1寸法データと第2寸法データとを記憶している。第1寸法データは、本体2におけるブームピン28に対するアンテナ41の相対位置を示す。
図3に示すように、第1寸法データは、本体2の前後方向における基準位置P1(アンテナ41)とブームピン28との間の距離D1と、本体2の上下方向における基準位置P1(アンテナ41)とブームピン28との間の距離D2を含む。
【0029】
第2寸法データは、ブーム11の長さL1と、アーム12の長さL2と、バケット13の長さL3を含む。詳細には、ブーム11の長さL1は、ブームピン28とアームピン29との間の距離である。アーム12の長さL2は、アームピン29とバケットピン30との間の距離である。バケット13の長さは、バケットピン30と所定部分P2(バケット113の刃先)との間の距離である。
【0030】
コンピュータ24は、第1位置データと第2位置データとに基づいて、基準位置P1から、外部の座標系における所定部分P2の位置を算出する。第1位置データは、本体2における基準位置P1を示す。第1位置データは、上述した第1寸法データと第1姿勢データとを含む。第2位置データは、作業機3における所定部分P2の位置を示す。第2位置データは、上述した第2寸法データと第2姿勢データとを含む。
【0031】
例えば、コンピュータ24は、第1位置データと第2位置データとに基づいて、本体2の座標系における基準位置P1と所定部分P2との位置関係を算出する。そして、コンピュータ24は、本体2の座標系における基準位置P1と所定部分P2との位置関係と、外部の座標系における基準位置P1とから、本体2の座標系における所定部分P2の位置を、外部の座標系における所定部分P2の位置に換算する。
【0032】
以上のように、コンピュータ24は、位置センサ36が検出した基準位置P1から所定部分P2の位置を算出する。
図4に示すように、コンピュータ24は、算出された所定部分P2の位置を示す案内画像50をディスプレイ35に表示する。例えば、案内画像50は、現在の地形51と、作業機械1の所定部分P2とを示す表示を含む。記憶装置32は、現在の地形51の外部の座標系における位置を示す現況地形データを保存している。コンピュータ24は、外部の座標系における現在の地形51と所定部分P2との位置関係を算出して、案内画像50を示す表示信号を生成する。
【0033】
案内画像50は、目標地形52と作業機械1の所定部分P2とを示す表示を含んでもよい。記憶装置32は、目標地形52の外部の座標系における位置を示す目標地形データを保存していてもよい。コンピュータ24は、現在の地形51と所定部分P2との間の距離を算出してもよい。案内画像50は、当該距離を示す表示53を含んでもよい。距離を示す表示53は、目標地形52と所定部分P2との間の距離であってもよい。
【0034】
次に、所定部分P2の位置を算出するために用いられるパラメータを較正する処理について説明する。
図5は、パラメータを較正する処理を示すフローチャートである。較正の対象となるパラメータは、上述した第1位置データおよび第2位置データ、或いはそれらの一部である。
【0035】
ステップS101において、コンピュータ24は、所定部分の位置の真の値を取得する。
図6に示すように、オペレータは、作業機械1を操作して、所定部分P2を位置C1に置く。所定部分の位置C1の外部の座標系における位置は、予め計測されて、記憶装置32に保存されている。或いは、所定部分の位置C1の外部の座標系における位置は、オペレータによって入力されてもよい。
【0036】
ステップS102では、コンピュータ24は、所定部分P2が位置C1に置かれた状態で、基準位置P1を取得する。コンピュータ24は、位置センサ36からの外部座標データにより、基準位置P1の外部の座標系における位置を取得する。
【0037】
ステップS103では、コンピュータ24は、所定部分の位置の真の値と基準位置P1との取得の繰り返し数nが閾値N1に達したかを判定する。例えば、
図6に示すように、コンピュータ24は、互いに異なる複数の所定部分の位置C1-C3において、真の値と基準位置P1とを取得する。なお、
図6に示す例では、複数の所定部分の位置C1-C3は、第1位置C1と第2位置C2と第3位置C3とを含む。従って、複数の所定部分の位置C1-C3の数、すなわち閾値N1は3である。ただし、複数の所定部分の位置C1-C3の数は3より少なくてもよく、或いは3より多くてもよい。繰り返し数nが閾値N1に達したときには、処理はステップS104に進む。
【0038】
ステップS104では、コンピュータ24は、パラメータの基本補正値を取得する。コンピュータ24は、以下の式(1)に示すように、ステップS102で取得した基準位置P1と、ステップS104で取得したパラメータの補正値と、上述したパラメータとを用いて、第1~第3位置C1-C3の計算値A1-A3を算出する。
Q1-Q3は、第1~第3位置の真の値である。A1-A3は、第1~第3位置の計算値である。xは、上述した複数のパラメータのうちの1つの値である。Δx0は、パラメータの基本補正値である。コンピュータ24は、上述した複数のパラメータの全て、或いは一部のそれぞれについて、所定部分の位置C1-C3の計算値A1-A3が真の値Q1-Q3に一致するように、第1~第3位置C1-C3の計算値A1-A3を算出する。
【0039】
なお、前回の較正により、記憶装置32に後述する確定補正値が記憶されている場合には、コンピュータ24は、記憶されている確定補正値を基本補正値として取得してもよい。確定補正値が記憶されていない場合には、コンピュータ24は、0などの所定の値を基本補正値として取得してもよい。或いは、コンピュータ24は、オペレータが入力装置34によって入力した値を、基本補正値として取得してもよい。
【0040】
ステップS105では、コンピュータ24は、補正候補値を決定する。補正候補値は、基本補正値Δx0の近傍において決定する。例えば、補正候補値は、基本補正値Δx0を変位させた値と、基本補正値Δx0とを含む。例えば、補正候補値は、基本補正値Δx0を所定割合だけ増大させた値を含む。補正候補値は、基本補正値Δx0を所定割合だけ減少させた値を含む。例えば、補正候補値は、基本補正値Δx0の他に、候補値ΔX1とΔX2とを含む。
式(2)において、所定割合aは、例えば0.1である。ただし、所定割合aは0.1と異なる値であってもよい。
【0041】
なお、補正候補値は、3次元座標(x,y,z)において基本補正値Δx0の近傍であればよい。変位の量は、所定割合に限らず、3次元座標(x,y,z)の軸毎に異なる変位量が与えられてもよい。例えば、x方向は±0.1、y方向は±0.1,z方向は±0.05で変位させてもよい。或いは、x方向は±0.1、y方向は±0.1,z方向は±0で変位させてもよい。
【0042】
ステップS106では、コンピュータ24は、評価値を算出する。評価値は、所定部分の位置の真の値と計算値との間の誤差の大きさを示す。詳細には、コンピュータ24は、以下の式(3)により、評価値Eを算出する。
式(3)において、α,β,γは重み係数である。ただし、重み係数α,β,γは省略されてもよい。その場合、式(3)において、重み係数α,β,γに代えて、サンプル数が入力されてもよい。或いは、重み係数α,β,γのうち、重視する姿勢の重み係数が大きくされてもよい。
【0043】
コンピュータ24は、補正候補値ΔX0,ΔX1,ΔX2のそれぞれについて、式(3)により、評価値E0,E1,E2を算出する。なお、補正候補値は、3つに限らず、3つより少なくてもよく、或いは3つより多くてもよい。
【0044】
ステップS107において、コンピュータ24は、確定補正値を決定する。コンピュータ24は、評価値E0,E1,E2に基づいて、確定補正値を決定する。詳細には、コンピュータ24は、評価値E0,E1,E2のうち最小のものの補正候補値を、確定補正値として決定する。例えば評価値E1が最小であるときには、補正候補値ΔX1を確定補正値として決定する。
【0045】
ステップS108では、コンピュータ24は、基本補正値Δx0を更新する。コンピュータ24は、基本補正値Δx0を、ステップS107で決定された確定補正値に置き換えることで、基本補正値Δx0を更新する。更新された基本補正値Δx0は、記憶装置32に保存される。次の較正が行われるときには、コンピュータ24は、更新された基本補正値Δx0に対して、上述したステップS101からS108の処理を実行する。コンピュータ24は、パラメータの全て、或いは一部に対して、上述した処理を実行することで、各パラメータの基本補正値Δx0を決定する。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る制御システムによれば、基本補正値Δx0から決定された複数の補正候補値に対して評価値が算出される。そして、評価値からパラメータの確定補正値が決定される。そのため、パラメータの較正の精度が向上する。それにより、位置検出の精度が向上する。なお、上記の処理が繰り返されることで、確定補正値が更新されてもよい。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
作業機械1は、油圧ショベルに限らず、ホイールローダ、ブルドーザ、或いはモータグレーダなどの他の種類の作業機械であってもよい。作業機械1の構成は上述したものに限らず変更されてもよい。
【0049】
コンピュータ24は、複数のプロセッサを備えてもよい。複数のプロセッサによって上記の処理が分散して実行されてもよい。コンピュータは1台に限らず、複数のコンピュータによって、上記の処理が分散して実行されてもよい。例えば、
図7は、他の実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
【0050】
図7に示すように、システムは、第1コンピュータ24Aと第2コンピュータ24Bとを含む。第1コンピュータ24Aは、上述した実施形態のコンピュータ24と同様の構成を有する。作業機械1は、通信装置39を含む。第1コンピュータ24Aは、通信装置39を介して、第2コンピュータ24Bと通信する。第2コンピュータ24Bは、作業機械1の外部に配置されている。第2コンピュータ24Bは、作業機械1が配置された作業現場から離れた管理センタ内に配置されてもよい。
【0051】
第2コンピュータ24Bは、4G,5Gなどの移動体通信ネットワーク、衛星通信ネットワーク、LAN、或いはインターネットなどの通信ネットワークを介して、第1コンピュータ24Aと通信を行う。第2コンピュータ24Bは、複数の作業機械と通信を行うサーバーであってもよい。
【0052】
第2コンピュータ24Bは、第1コンピュータ24Aと同様に、プロセッサ43と記憶装置44とを含む。第1コンピュータ24Aと第2コンピュータ24Bとは、上述した較正の処理を分散して実行する。例えば、第1コンピュータ24Aは、所定部分の位置の真の位置と計算値とを第2コンピュータ24Bに送信する。また、第1コンピュータ24Aは、上述したパラメータを第2コンピュータ24Bに送信する。なお、第1寸法データ及び第2寸法データは、予め第2コンピュータ24Bの記憶装置44に保存されていてもよい。
【0053】
第2コンピュータ24Bは、ステップS104~S108の処理を実行する。第2コンピュータ24Bは、更新された基本補正値Δx0を第1コンピュータ24Aに送信する。第1コンピュータ24Aは、更新された基本補正値Δx0を記憶装置32に保存する。第1コンピュータ24Aは、更新された基本補正値Δx0に基づいて、基準位置P1から所定部分P2の位置を算出する。
【0054】
基準位置P1から所定部分P2の位置を算出する処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更、省略、或いは追加されてもよい。パラメータは、上記の実施形態のものに限らず、変更、省略、或いは追加されてもよい。例えば、パラメータは、作動油の油圧、作業機械の重量、或いは重心位置を含んでもよい。パラメータは、走行装置(例えば履帯、或いはタイヤ)の重量と寸法とを含んでもよい。
【0055】
上記の実施形態では、説明の容易のために、作業機械1の左右方向における位置については説明を省略している。しかし、コンピュータ24は、作業機械1の左右方向における位置に関するパラメータに基づいて、基準位置P1から所定部分P2の位置を算出してもよい。本体2の第1姿勢データは、本体2のロール角を含んでもよい。本体2のロール角は、水平方向に対する本体2の左右方向の傾斜角度である。第1寸法データは、本体2における基準位置P1の左右方向の位置を含んでもよい。第2寸法データは、作業機3における所定部分P2の左右方向の位置を含んでもよい。
【0056】
上記の実施形態では、算出された所定部分P2の位置を用いて案内画像50がディスプレイ35に表示されている。しかし、コンピュータ24は、算出された所定部分P2の位置を用いて、上記の実施形態と異なる処理を実行してもよい。例えば、コンピュータ24は、算出された所定部分P2の位置を用いて、作業機3を自動的に制御してもよい。コンピュータ24は、
図4に示す目標地形52に沿って所定部分P2が移動するように、作業機3を自動的に制御してもよい。
【0057】
コンピュータ24は、今回の較正時の所定部分の位置と、前回の較正時の所定部分の位置とが同じであるときには、報知信号をディスプレイ35に出力してもよい。報知信号は、他の位置を所定部分の位置として選択するように勧める報知表示を含んでもよい。例えば、
図8に示すように、オペレータが、前回の較正時にも選択した第1~第3位置C1-C3を、今回の較正時にも選択したときには、コンピュータ24は、他の位置C4-C6を選択するように、報知信号を出力してもよい。或いは、コンピュータ24は、前回選択された第1~第3位置C1-C3の近傍に無い、所定部分の位置C4-C6が今回の較正時に選択されたときに、報知信号を出力してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示によれば、作業機械における位置検出の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 作業機械
2 本体
3 作業機
24 コンピュータ
36 位置センサ
P1 基準位置
P2 所定部分