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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】二次電池装置および二次電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20231121BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231121BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20231121BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
H02J7/35
H02J3/38 150
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020055944
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157926
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】井上 健士
(72)【発明者】
【氏名】山添 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮平
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/211824(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/120620(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/118080(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 -10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、前記二次電池の電圧と電流と温度を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて電池状態を演算する状態演算部と、を備えた二次電池装置であって、
前記状態演算部は、記憶装置と処理装置とを有し、
前記記憶装置は、前記電池状態を演算するための演算情報を記憶する第1記憶領域と、前記演算情報を更新するための更新情報を記憶する第2記憶領域と、を有し、
前記処理装置は、前記演算情報を用いて現状の前記電池状態を演算する状態検知処理と、前記更新情報を用いて新規の前記電池状態を演算する更新検証処理と、前記現状の前記電池状態と前記新規の前記電池状態との間の状態変化量が規定された範囲内である場合に前記更新情報を前記第1記憶領域に記憶させて前記演算情報を更新する更新処理と、を実行することを特徴とする二次電池装置。
【請求項2】
前記更新処理は、前記状態変化量が前記範囲内であるか否かを判定する変化量判定処理と、前記状態変化量が前記範囲内である場合に前記更新した前記電池状態を所定期間にわたって前記状態演算部の出力に設定する仮更新処理と、前記所定期間にわたって異常の有無を判定する異常判定処理と、前記異常判定処理において異常なしと判定された場合に前記更新情報を前記第1記憶領域に記憶させて前記演算情報を更新する実更新処理と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池装置。
【請求項3】
前記演算情報は、前記二次電池の特性パラメータまたは演算処理内容であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池装置。
【請求項4】
前記特性パラメータは、前記二次電池を構成する単電池の内部抵抗、開回路電圧、等価回路における抵抗とコンデンサの並列接続部分の抵抗値とコンデンサの容量、および満充電容量を含むことを特徴とする請求項3に記載の二次電池装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の二次電池装置と、前記二次電池装置に対して通信可能に接続された管理装置と、を備えた二次電池システムであって、
前記管理装置は、記憶装置と処理装置とを備え、
前記管理装置の前記記憶装置は、複数の前記演算情報が記憶され、
前記管理装置の前記処理装置は、前記二次電池装置から取得した情報に基づいて、複数の前記演算情報の中から一の前記演算情報を選択して前記更新情報として前記二次電池装置へ出力するとともに、前記状態変化量の前記範囲を規定して前記二次電池装置へ出力することを特徴とする二次電池システム。
【請求項6】
前記管理装置の前記記憶装置は、前記二次電池の複数の履歴情報と、複数の前記二次電池システムの適用先種別とを関連付けた転用データベースが記憶され、
前記管理装置の前記処理装置は、前記二次電池装置から取得した前記二次電池の履歴情報と、前記転用データベースの前記履歴情報との類似性を判定し、前記類似性に基づいて前記転用データベースの前記適用先種別を選択することを特徴とする請求項5に記載の二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池装置および二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小規模で安価であって、システム運転状態の中でも電池の劣化算出を容易に実施することができる電池劣化算出装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された電池劣化算出装置は、二次電池装置と通信可能に接続する(同文献、要約、請求項1、第0007段落等を参照)。
【0003】
二次電池装置は、不揮発性メモリを有する制御部を含む。不揮発性メモリは、所定時間単位で二次電池の電池容量の平均を示す平均電池容量データ、二次電池の電池温度の平均を示す平均温度データ、および、二次電池の充電または放電のサイクル数のデータを電池使用履歴データとして蓄積する。
【0004】
電池劣化算出装置は、メモリと、受信部と、電池劣化算出部と、を有する。メモリは、予め電池容量と温度をパラメータとして算出されている電池劣化傾向データを格納する。受信部は、制御部から電池使用履歴データを受信する。電池劣化算出部は、電池劣化傾向データと電池使用履歴データとを組み合わせて、電池劣化に応じた電池容量を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015‐007616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の電池劣化算出装置は、二次電池装置の制御部の不揮発メモリに蓄積された電池の使用履歴データを受信部によって受信し、電池劣化算出部が予め電池容量と温度をパラメータとして算出されている電池劣化傾向データと組み合わせることで、電池劣化に応じた電池容量を算出する。ここで、この従来の電池劣化算出装置は、電池容量算出アルゴリズムなどを時間の制約なく自由に更新できるという特徴がある。このようなアルゴリズムなどの更新において、更新する情報が適正な情報か否かの判断を行う機能があれば、制御をより確実に行うことが可能な二次電池装置を実現できると考える。
【0007】
本開示は、二次電池の制御をより確実に行うことが可能な二次電池装置および二次電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、二次電池と、前記二次電池の電圧、電流、および温度を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて電池状態を演算する状態演算部と、を備えた二次電池装置であって、前記状態演算部は、記憶装置と処理装置とを有し、前記記憶装置は、前記電池状態を演算するための演算情報を記憶する第1記憶領域と、前記演算情報を更新するための更新情報を記憶する第2記憶領域と、を有し、前記処理装置は、前記演算情報を用いて現状の前記電池状態を演算する状態検知処理と、前記更新情報を用いて新規の前記電池状態を演算する更新検証処理と、前記現状の前記電池状態と前記新規の前記電池状態との間の状態変化量が規定された範囲内である場合に前記更新情報を前記第1記憶領域に記憶させて前記演算情報を更新する更新処理と、を実行することを特徴とする二次電池装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、二次電池の制御をより確実に行うことが可能な二次電池装置および二次電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の二次電池システムの一実施形態を示すブロック図。
図2図1の二次電池システムを構成する二次電池装置の概略構成図。
図3図2の二次電池装置の状態演算部の機能ブロック図。
図4図2の二次電池装置の単電池の開回路電圧とSOCとの関係を示すグラフ。
図5図2の二次電池装置の単電池群を構成する単電池の等価回路図。
図6】電池に流れる電流と電池の電圧の時間変化の一例を示すグラフ。
図7A】電池の電圧の時間変化を示すグラフ。
図7B】電池の抵抗増加率と容量維持率との関係の一例を示すグラフ。
図8図2の二次電池装置の単電池群の履歴情報の一例を示すヒストグラム。
図9図1の二次電池システムを構成する管理装置の機能ブロック図。
図10図9の管理装置の処理の流れの一例を示すフロー図。
図11図9の管理装置の演算機能の機能ブロック図。
図12図11の演算機能が算出する状態変化量の一例を示すグラフ。
図13図3の状態演算部の処理の流れの一例を示すフロー図。
図14図3の状態演算部の処理の流れの変形例を示すフロー図。
図15図9の管理装置の変形例を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の二次電池装置および二次電池システムの一実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本開示の二次電池システムの一実施形態を示すブロック図である。図1に示す例において、本実施形態の二次電池システム1は、たとえば、太陽光発電システムPGSの一部を構成している。太陽光発電システムPGSは、たとえば、二次電池システム1に加えて、太陽光発電パネル2と、電力系統3と、パワーコンディショナー(PCS)4,5と、制御装置6と、を備えている。
【0013】
二次電池システム1は、たとえば、電力配線を介してPCS5に接続される。太陽光発電パネル2は、たとえば、電力配線を介してPCS4に接続される。電力系統3は、たとえば、電力配線を介してPCS4およびPCS5に接続される。制御装置6は、たとえば、情報通信回線を介して、二次電池システム1、PCS4、およびPCS5に接続されている。制御装置6は、情報通信回線を介して二次電池システム1、PCS4、およびPCS5と情報通信を行うことで、これらを制御するコンピュータシステムである。
【0014】
太陽光発電システムPGSは、制御装置6の制御の下、たとえば、以下のように動作する。太陽光発電パネル2は、太陽光を受けて直流電力を発電する。PCS4は、太陽光発電パネル2から出力された直流電力を交流電力に変換して電力系統3へ供給する。PCS5は、PCS4から出力されて電力系統3へ供給される交流電力の一部または全部を、状況に応じて直流電力に変換し、二次電池システム1へ供給する。
【0015】
二次電池システム1は、PCS5から供給された直流電力によって充電され、電気エネルギーを蓄積する。二次電池システム1は、蓄積した電気エネルギーを、状況に応じて直流電力として出力する。PCS5は、二次電池システム1から出力された直流電力を交流電力に変換して電力系統3へ供給する。このように、太陽光発電システムPGSは、天候によって変動する太陽光発電パネル2の発電電力を、二次電池システム1の出力によって補償することができ、電力系統3に対する出力を平滑化することができる。二次電池システム1は、たとえば、二次電池装置11と管理装置12とを備えている。
【0016】
図2は、図1の二次電池システム1を構成する二次電池装置11の概略構成図である。二次電池装置11は、たとえば、単電池群111と、一対の外部端子112と、電流センサ113と、温度センサ114と、電池管理部115と、状態演算部116と、情報入力端子117と、情報出力端子118と、を備えている。
【0017】
単電池群111は、たとえば、直列に接続された複数の単電池によって構成されている。単電池は、特に限定はされないが、たとえば、角形のリチウムイオン二次電池である。なお、図示を省略するが、二次電池装置11は、たとえば、複数の単電池群111を備えてもよい。複数の単電池群111は、たとえば、直列または並列に接続される。また、直列に接続された複数の単電池群111を、並列に接続してもよい。
【0018】
一対の外部端子112は、一方の外部端子112が電力配線を介して単電池群111の負極端子に接続され、他方の外部端子112が電力配線を介して単電池群111の正極端子に接続されている。また、一対の外部端子112は、たとえば、電力配線を介して、図1に示すPCS5に接続されている。
【0019】
電流センサ113は、たとえば、単電池群111と外部端子112との間の電力配線に接続され、単電池群111に流れる電流を測定する。温度センサ114は、たとえば、単電池群111を構成する複数の単電池のうちの少なくとも一つに取り付けられ、単電池群111の温度を測定する。
【0020】
電池管理部115および状態演算部116は、たとえば、CPUなどの処理装置、RAMやROMなどの記憶装置、タイマー、および信号入出力部などを備えたマイクロコントローラまたはファームウェアである。電池管理部115および状態演算部116は、たとえば、記憶装置に記憶されたプログラムを処理装置によって実行することで、以下に説明する様々な機能を実現する。
【0021】
電池管理部115は、たとえば、単電池群111を構成する個々の単電池の電圧を測定する電圧センサとしての機能と、個々の単電池の間の電圧を均一化する機能と、を有している。状態演算部116は、たとえば、信号入出力部を介して、電流センサ113、温度センサ114、および電池管理部115に接続されている。状態演算部116は、たとえば、単電池群111の状態である電池状態を演算する機能を有している。
【0022】
状態演算部116が演算する単電池群111の電池状態は、たとえば、単電池群111の充電状態(SOC)、劣化状態(SOH)、入出力可能な最大電力または最大電流、異常の有無、特性パラメータ、履歴情報などを含む。また、状態演算部116は、たとえば、電流センサ113から取得した電流値と、電池管理部115から取得した個々の単電池の電圧とを乗じることで、単電池群111の出力電力および入力電力を算出する機能を有する。
【0023】
状態演算部116は、たとえば、算出した単電池群111の電池状態を含む情報を、情報出力端子118を介して、図1に示す二次電池システム1の管理装置12や、太陽光発電システムPGSの制御装置6へ出力する。また、状態演算部116は、たとえば、各種の演算に用いる情報を、情報入力端子117を介して管理装置12から取得する。
【0024】
図3は、図2に示す状態演算部116の機能ブロック図である。状態演算部116は、たとえば、データの受信機能F1と、特性パラメータの記憶機能F2と、更新パラメータの記憶機能F3と、演算アルゴリズムの記憶機能F4と、更新アルゴリズムの記憶機能F5と、電池状態の演算機能F6とを有している。また、状態演算部116は、たとえば、履歴の管理機能F7と、電池状態の判定機能F8と、データの送信機能F9とを有している。
【0025】
受信機能F1は、たとえば、図1に示す二次電池システム1の管理装置12から二次電池装置11の情報入力端子117に入力された情報を受信する。また、受信機能F1は、受信した情報を、たとえば、記憶機能F2、記憶機能F3、記憶機能F4、記憶機能F5、判定機能F8などの各機能へ出力する。また、受信機能F1は、判定機能F8から判定結果を受信する。
【0026】
記憶機能F2は、たとえば、単電池群111の電池状態を演算するための演算情報に含まれる特性パラメータを、状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域に記憶する機能である。記憶機能F3は、たとえば、演算情報を更新するための更新情報に含まれる更新パラメータを、状態演算部116の記憶装置の第2記憶領域に記憶する機能である。
【0027】
記憶機能F4は、たとえば、単電池群111の電池状態を演算するための演算情報に含まれる演算アルゴリズムを、状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域に記憶する機能である。記憶機能F5は、たとえば、演算情報を更新するための更新情報に含まれる更新アルゴリズムを、状態演算部116の記憶装置の第2記憶領域に記憶する機能である。
【0028】
演算機能F6は、たとえば、状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域記憶に記憶された演算情報を用い、更新情報によって演算情報を更新する前の現状の単電池群111の電池状態を演算する機能である。また、演算機能F6は、たとえば、状態演算部116の記憶装置の第2記憶領域記憶に記憶された更新情報を用いて、演算情報が更新情報によって更新された場合の新規の単電池群111の電池状態を演算する機能である。
【0029】
なお、前述のように、単電池群111の電池状態を演算するための演算情報は、たとえば、特性パラメータと、演算アルゴリズムと、を含む。また、演算情報を更新するための更新情報は、たとえば、更新パラメータと、更新アルゴリズムと、を含む。
【0030】
管理機能F7は、たとえば、電流センサ113、温度センサ114、および電池管理部115から、電流値I、温度Tおよび電圧値Vを含む単電池群111の情報が入力され、演算機能F6から、現状の単電池群111の電池状態が入力される。管理機能F7は、たとえば、後述する単電池群111の履歴情報を算出して、状態演算部116の記憶装置に記憶させ、必要に応じて送信機能F9へ出力するなど、履歴情報を管理する機能である。
【0031】
判定機能F8は、たとえば、演算機能F6から入力された単電池群111の現状の電池状態および新規の電池状態との間の状態変化量が、規定された範囲内であるか否かを判定する機能である。判定機能F8は、たとえば、判定結果を受信機能F1へ出力する。送信機能F9は、たとえば、演算機能F6および管理機能F7から入力された情報を、二次電池装置11の情報出力端子118を介して、図1に示す二次電池システム1の管理装置12や、太陽光発電システムPGSの制御装置6へ出力する。
【0032】
以下、演算機能F6によって算出される単電池群111の電池状態について説明する。前述のように、単電池群111の電池状態は、たとえば、単電池群111のSOC、SOH、入出力可能な最大電力または最大電流、異常の有無、および履歴情報などを含む。
【0033】
図4は、単電池群111を構成する単電池の開回路電圧OCVとSOCとの関係の一例を示すグラフである。単電池群111のSOCは、たとえば、電圧基準によって算出することができる。この場合、図4に示すように、単電池群111を構成する個々の単電池の開回路電圧OCVとSOCとの関係をあらかじめ特定して、状態演算部116の記憶装置に記憶させておく。これにより、単電池の開回路電圧OCVを算出することで、図4に示す単電池の開回路電圧OCVとSOCとの関係から、単電池のSOCを推定することができる。単電池の開回路電圧OCVは、たとえば、以下のように算出することができる。
【0034】
図5は、単電池群111を構成する単電池の等価回路図の一例である。図5は、単電池の開回路電圧OCVと内部抵抗Rとが直列に接続され、さらに、並列に接続された分極抵抗成分Rpとキャパシタンス成分Cとが、開回路電圧OCVと内部抵抗Rとに直列に接続された状態を表している。この単電池に電流Iが流れると、単電池の端子間の電圧CCVは、開回路電圧OCV、内部抵抗R、分極電圧Vpを用いて、以下の式(1)で表される。なお、分極電圧Vpは、並列に接続された分極抵抗成分とキャパシタンス成分の両端の電圧である。
【0035】
CCV=OCV+I・R+Vp ・・・(1)
【0036】
単電池が充電され、または放電している場合、単電池の開回路電圧OCVは、直接、測定することはできない。しかし、この場合、以下の式(2)のように、単電池の端子間の電圧CCVから、内部抵抗による電圧降下I・Rと分極電圧Vpとを減算することで、単電池の開回路電圧OCVを算出することができる。
【0037】
OCV=CCV-I・R-Vp ・・・(2)
【0038】
詳細については後述するが、図1に示す管理装置12は、図示を省略するCPUなどの処理装置と、ROMやRAMなどの記憶装置を備えている。単電池の開回路電圧OCVとSOCとの関係や内部抵抗R、分極抵抗成分Rpとキャパシタンス成分Cは、たとえば、管理装置12の処理装置によって算出され、管理装置12の記憶装置に演算情報である特性パラメータとして蓄積される。管理装置12の記憶装置に演算情報として記憶された単電池の特性パラメータは二次電池装置11に配信され、二次電池装置11で取得された単電池の端子間の電圧CCVと電流Iの時系列情報とを用いて、前述したような演算処理は実現される。
【0039】
なお、単電池の特性パラメータは、SOCの推定精度を向上させるために、あらかじめ単電池のSOCや温度ごとに特定し、状態演算部116の記憶装置に記憶させることが好ましい。しかし、単電池を構成する材料が異なると開回路電圧OCVとSOCとの関係などが異なってくる。そのため、この電圧基準のSOCの推定方法では、単電池の特性に応じて、SOCの推定精度に差が生じる場合がある。
【0040】
また、電池のSOCは、たとえば、電流値の積算によって算出することも可能である。この場合、電池に入力された電流値と電池から出力された電流値とを測定し、それらの電流値を積分してSOCを算出する。具体的には、最初に前述の電圧基準でSOCを推定する。そして、その電圧基準のSOCを初期値SOCvとして用い、さらに、電流センサ113で測定した電流Iと、電池の満充電容量Qmaxとを用いて、以下の式(3)により電流値の積算によるSOCであるSOCiを算出する。
【0041】
SOCi=SOCv+100×∫Idt/Qmax ・・・(3)
【0042】
この電流値の積算によるSOCの推定方法では、電流Iの測定値に含まれる測定誤差も積分してしまうため、時間の経過と共にSOCの誤差が拡大する可能性がある。そのため、所定の時間にわたって電流値を積分した後に、SOCの誤差を補正するなどの対策が求められる。以上のように、電圧基準または電流値の積算によるSOCの推定方法には、それぞれの長所と短所がある。そのため、単電池の特性、センサの性能、および周囲の環境などの条件に応じて、SOCの推定方法を適切に選定して、SOCの推定精度を確保する。
【0043】
また、電圧基準よるSOCの推定と電流値の積算によるSOCの推定を組み合わせて、より高精度にSOCを推定してもよい。この場合、電圧基準によって推定したSOCであるSOCvと、電流値の積算によって推定したSOCであるSOCiとを組み合わせるための係数Wを適切に設定する。これにより、電圧基準と電流値の積算との組み合せによるSOCであるSOCcを、以下の式(4)により算出することができる。
【0044】
SOCc=W×SOCv+(1-W)×SOCi ・・・(4)
【0045】
以上のように、SOCの算出に必要な単電池の特性パラメータは、推定方法によって異なる。電池の特性パラメータは、たとえば、図4に示すような電池の開回路電圧OCVとSOCとの関係、図5に示すような、電池の内部抵抗R、分極抵抗成分RpおよびキャパシタンスCなどを含む。また、特性パラメータは、たとえば、電池の満充電容量Qmaxを含む。これらの特性パラメータは、電池の劣化にともなって変化する。したがって、SOCの推定精度を向上させるためには、電池の劣化にともなう特性パラメータの変化を把握する必要がある。さらに、SOCの算出方法についても適切な選定が必要である。
【0046】
また、SOC以外にも、電池状態に含まれる他の情報、たとえば、充電および放電が可能な最大電流および最大電力、供給可能な電力量などを算出する場合にも、前述の様々な特性パラメータを把握する必要がある。具体的には、電池の充電が可能な最大電流Ic_maxと、電池が放電可能な最大電流Id_maxとは、たとえば、以下の式(5)、(6)によって表される。
【0047】
Ic_max=(電池上限電圧-OCV)/Rt ・・・(5)
Id_max=(OCV-電池下限電圧)/Rt ・・・(6)
【0048】
上記の式(5)、(6)において、内部抵抗Rtは、電池の内部抵抗R、分極抵抗成分Rp、およびキャパシタンス成分Cのすべてを考慮し、充放継続時間に基づいて決定する。したがって、電池の内部抵抗R、分極抵抗成分Rp、およびキャパシタンス成分Cの劣化に伴う影響を把握することで、最大電流Ic_max,Id_maxを高精度に推定することができる。また、推定した最大電流Ic_max,Id_maxに電圧を乗じることで、充電と放電が可能な最大電力を高精度に推定することができる。
【0049】
以上のように、演算情報である電池の特性パラメータを正確に把握すること、算出方法についても適切に選定することで、二次電池装置11を構成する状態演算部116の演算機能F6によって、電池状態を正確に算出することができる。以下では、電池状態を算出するための演算情報の例として、劣化を示す指標である内部抵抗とSOHの算出方法を説明する。
【0050】
電池が劣化すると、図5に示す等価回路の構成要素のパラメータが変化する。具体的には、たとえば、電池の内部抵抗が増加して、前記式(3)における電池の満充電容量Qmaxも減少する。電池のSOHは、たとえば、電池の内部抵抗の増加率としての抵抗増加率SOHRと、電池の満充電容量の維持率としての容量維持率SOHQとを含む。以下では、まず、図6を参照して、抵抗増加率SOHRの算出方法を説明する。この抵抗増加率SOHRは、たとえば、二次電池装置11を構成する状態演算部116の演算機能F6によって算出される。
【0051】
図6は、電池に流れる電流と、電池の電圧の時間変化の一例を示すグラフである。時刻t0から時刻t1までの間は、電池を流れる電流が0の休止状態である。時刻t1において、電池の放電が開始され、時刻t2まで放電を継続する。このとき、電池に電流Iが流れ、電池の電圧が電流Iと内部抵抗Rの積だけ降下する。各時刻の電圧をCCV(t)とし、各時刻の電流をI(t)とし、電圧および電流の測定間隔をΔtとすると、内部抵抗Rは、以下の式(7)によって表される。図6の例では、以下の式を用いることで、電流の変化が発生する時刻t1と時刻t2の2点でRを求めることができる。
【0052】
R={CCV(t)-CCV(t-Δt)}/{I(t)-I(t-Δt)}
・・・(7)
【0053】
なお、内部抵抗Rの算出方法は、上記の方法に限定されない。次に、以下の式(8)のように、電池の使用開始時または初期の内部抵抗Roに対する、上記式(7)で求めた電池の現在の内部抵抗Rの100分率を算出することで、電池の抵抗増加率SOHRを推定することができる。
【0054】
SOHR=100×(R/Ro) ・・・(8)
【0055】
内部抵抗Rは、たとえば、上記の式(7)、(8)を、二次電池装置11を構成する状態演算部116の記憶機能F4によって、状態演算部116の記憶装置に記憶させ、状態演算部116の演算機能F6により式(7)、(8)を用いて算出することができる。次に、図7Aおよび図7Bを参照して、電池の容量維持率SOHQの算出方法を説明する。
【0056】
図7Aは、電池の電圧の時間変化を示すグラフである。電池の満充電容量Qmaxは、たとえば、以下のように算出することができる。図7Aに示す例では、図6に示す例と同様に、時刻t0から時刻t1までの間は、電池が休止状態である。その後、時刻t1で電池の放電が開始され、時刻t1から時刻t2まで放電を継続し、時刻t2以降は放電を休止している。
【0057】
この場合、図4に示すような電池の開回路電圧OCVとSOCとの間の関係に基づいて、時刻t1より前の放電開始前の電池のSOC(SOC1)を推定する。同様に、時刻t2以降の放電休止後に十分に時間が経過して電圧が安定した時刻t3における電池のSOC(SOC2)を推定する。これらの電池の放電前後の休止状態におけるSOCであるSOC1とSOC2を用いて、以下の式(9)により、電池の満充電容量Qmaxを算出することができる。
【0058】
Qmax=100×∫Idt/(SOC2-SOC1) ・・・(9)
【0059】
また、式(9)により、電池の使用開始時または初期の満充電容量Qmax_oと、電池の現在の満充電容量Qmaxとを求める。そして、以下の式(10)のように、電池の初期の満充電容量Qmax_oに対する現在の満充電容量Qmaxの百分率を算出することで、電池の容量維持率SOHQを推定することができる。
【0060】
SOHQ=100×(Qmax/Qmax_o) ・・・(10)
【0061】
この電池の容量維持率SOHQの推定方法では、前記式(9)のように電流Iの測定値に含まれる測定誤差も積分してしまうため、時間の経過と共に電池の満充電容量Qmaxの誤差が拡大する可能性がある。そのため、たとえば、短時間で充放電前の電池のSOC(SOC1)と充放電後の電池のSOC(SOC2)との差が大きくなるような充放電パターンを選定して前記式(9)の演算を行うことで、誤差を抑制することが可能になる。
【0062】
図7Bは、電池の抵抗増加率SOHRと容量維持率SOHQとの関係の一例を示すグラフである。以下では、前述の推定方法とは異なる容量維持率SOHQの推定方法を説明する。この推定方法では、図7Bに示すように、あらかじめ抵抗増加率SOHRと、容量維持率SOHQとの関係を特定して、状態演算部116の記憶装置に記憶させておく。
【0063】
これにより、前記式(8)によって抵抗増加率SOHRを算出することで、図7Bに示すように、抵抗増加率SOHRに基づいて、容量維持率SOHQを推定することができる。また、この方法によって推定した容量維持率SOHQと、電池の初期の満充電容量Qmax_oとを用い、式(10)に基づいて、電池の現在の満充電容量Qmaxを推定することができる。
【0064】
この方法では、前記式(9)のように電流Iの積分を行わないため、測定値に含まれる測定誤差が累積することがない。しかし、図7Bに示すような抵抗増加率SOHRと、容量維持率SOHQとの関係は、電池の使用条件を含む履歴情報に応じて変化することがある。そのため、電池の容量維持率SOHQを高精度に推定するためには、電池を様々な履歴情報で劣化させる試験を行って、履歴情報ごとに図7Bに示すような抵抗増加率SOHRと容量維持率SOHQとの関係を特定する。
【0065】
このような試験によって得られた、様々な履歴情報ごとの電池の抵抗増加率SOHRと容量維持率SOHQとの関係は、たとえば、管理装置12の記憶装置に、電池の演算情報である特性パラメータとして記憶される。管理装置12の処理装置は、たとえば、二次電池装置11から取得した単電池群111の使用履歴を含む履歴情報に応じて、管理装置12の記憶装置に記憶された特性パラメータ、たとえば、電池の抵抗増加率SOHRと容量維持率SOHQとの関係を選定する。
【0066】
図8は、二次電池装置11の単電池群111の履歴情報の一例を示すヒストグラムである。図8は、電池の滞在SOC、電池の滞在温度、および電池の充放電電流のそれぞれの発生頻度を示している。二次電池装置11の状態演算部116において、図3に示す履歴の管理機能F7は、たとえば、記憶装置に記憶されたSOC、温度、および充放電電流の時系列データから、単電池群111の履歴情報を、図8に示すようなヒストグラム形式で抽出する機能を有する。さらに、状態演算部116の送信機能F9は、管理機能F7によって抽出された単電池群111の履歴情報を、情報出力端子118を介して管理装置12へ出力する機能を有する。
【0067】
図9は、図1に示す管理装置12の機能ブロック図である。管理装置12は、たとえば、CPUなどの処理装置、RAMやROMなどの記憶装置、タイマー、および信号の入出力部121などを備えたマイクロコントローラまたはファームウェアである。管理装置12は、たとえば、図2に示す二次電池装置11の情報入力端子117および情報出力端子118に対し、入出力部121を介して通信可能に接続されている。
【0068】
管理装置12は、たとえば、記憶装置に記憶されたプログラムを処理装置によって実行することで、以下に説明する様々な機能を実現する。管理装置12は、たとえば、電池状態を演算するための演算情報の探索機能F10と、演算情報の記憶機能F11と、規定範囲の演算機能F12と、を有している。
【0069】
探索機能F10は、二次電池装置11から出力された単電池群111の履歴情報および電池状態を、入出力部121を介して取得する機能を有する。電池状態は、前述のように、たとえば、電池のSOCやSOH、電池が充電可能な最大電流または最大電力、電池が放電可能な最大電流および最大電力、電池の異常の有無、電池の特性情報、電池の履歴情報などを含む。
【0070】
また、探索機能F10は、履歴情報や電池の種類などを含む電池情報に基づいて、記憶機能F11によって管理装置12の記憶装置に記憶された演算情報を探索して選択する機能を有する。また、探索機能F10は、選択した演算情報を、演算機能F12へ出力するとともに、入出力部121を介して二次電池装置11へ出力する機能を有する。探索機能F10から二次電池装置11へ出力される演算情報は、たとえば、二次電池装置11の状態演算部116によって電池状態を演算するための電池の特性パラメータと演算アルゴリズムの少なくとも一方を含む。
【0071】
記憶機能F11は、たとえば、電池を様々な履歴情報で劣化させる充放電試験を含む電池試験によって得られた電池の履歴情報ごとの特性パラメータを含む演算情報を、管理装置12の記憶装置にデータベースとして記憶させる機能を有する。電池試験は、たとえば、図6に示すような放電パターンを用いることができる。
【0072】
より具体的には、電池試験は、たとえば、二次電池装置11の単電池群111と同様の構成の電池を満充電状態まで充電し、図6に示すような放電パターンで電池の電圧が下限電圧に到達するまで放電する。なお、電池の放電時の電流は、電流値が小さくなるようにする。この電池試験において、電池の放電時の電流値を測定し、測定した電流値を時間積分することで、電池の満充電容量Qmaxを算出することができる。
【0073】
また、電池試験は、たとえば、二次電池装置11の単電池群111と同様の構成の電池を満充電状態まで充電し、図6に示すような放電パターンで、電池が所定のSOCになるまで放電する。この所定のSOCと、放電試験後に十分な時間が経過した後の電池の開回路電圧OCVとの関係を、放電試験を繰り返し実施して記録する。これにより、図4に示すような電池の開回路電圧OCVとSOCとの関係が得られる。
【0074】
また、電池試験を図6に示すような放電パターンで行って、放電開始直前や放電開始直後、又は放電終了直前や放電終了直後の電池の電圧の変動から電池の内部抵抗Rを抽出し、放電終了後の休止中の電圧変化を測定して解析する。これにより、分極抵抗RpとキャパシタンスCを特定することが可能である。
【0075】
充放電試験によって得られた、電池の履歴情報ごとの特性パラメータは、上記の満充電容量Qmax、開回路電圧OCV、分極抵抗RpおよびキャパシタンスCのように、二次電池装置11の使用中にリアルタイムに現在値を求めることが困難な特性パラメータを含む。
【0076】
二次電池装置11の使用中にリアルタイムに現在値を求めることが困難な特性パラメータは、たとえば、図4に示す電池の開回路電圧OCVとSOCとの関係、図5に示す電池の分極抵抗Rp、およびキャパシタンスC、図7Bに示す電池の抵抗増加率SOHRと容量維持率SOHQとの関係、ならびに、満充電容量Qmaxおよび容量維持率SOHQを含む。また、記憶機能F11は、たとえば、管理装置12の記憶装置に、電池の様々な履歴情報ごとに、特性パラメータを記憶させる。また記憶機能F11は、特性パラメータとして、電池の内部抵抗Rを記憶させてもよい。
【0077】
演算機能F12は、二次電池装置11の電池状態を演算するための演算情報を、二次電池装置11から入出力部121を介して取得する機能を有する。また、演算機能F12は、二次電池装置11から取得した現状の演算情報と、探索機能F10によって選択された新規の演算情報とを用い、現状の電池状態と、新規の電池状態と、を算出する機能を有する。また、演算機能F12は、現状の電池状態と新規の電池状態との間の状態変化量を算出する機能を有する。また、演算機能F12は、算出した状態変化量に基づいて、状態変化量の範囲を規定する機能を有する。
【0078】
以下、図10から図14を参照して、本実施形態の二次電池装置11および二次電池システム1の動作を説明する。
【0079】
図10は、二次電池システム1の処理の流れの一例を示すフロー図である。図1に示す二次電池システム1が処理を開始すると、二次電池システム1の管理装置12は、二次電池装置11から電池状態と演算情報を受信する処理P1を実行する。
【0080】
具体的には、処理P1では、図2に示すように、二次電池装置11の状態演算部116は、処理装置により、記憶装置に記憶された演算情報を用いて単電池群111の電池状態を算出し、算出した電池状態を情報出力端子118を介して管理装置12へ出力する。管理装置12は、処理装置により、二次電池装置11から出力された電池状態と電池の履歴情報を、図9に示す入出力部121を介して受信する。
【0081】
より詳細には、二次電池装置11の状態演算部116は、図3に示す演算機能F6により、演算情報を用いて電池状態を演算する。演算機能F6は、演算情報として、たとえば、記憶機能F2と記憶機能F4によって状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域に記憶された電池の特性パラメータと演算アルゴリズムを用いて、電池状態を算出する。演算機能F6が算出する電池状態は、電池のSOC、内部抵抗R、および抵抗増加率SOHRを含む。この電池状態は、演算に用いた演算情報とともに、図3に示す送信機能F9によって情報出力端子118を介して管理装置12へ出力され、図9に示す入出力部121を介して管理装置12の探索機能F10によって受信される。
【0082】
また、二次電池装置11の状態演算部116は、図3に示す管理機能F7により、電池状態として、たとえば、図8に示すような電池の履歴情報を算出して状態演算部116の記憶装置に記憶させる。状態演算部116の記憶装置に記憶された電池の履歴情報は、図3に示す送信機能F9によって情報出力端子118を介して管理装置12へ出力され、図9に示す入出力部121を介して管理装置12の探索機能F10によって受信される。以上により、図10に示す処理P1が終了する。
【0083】
次に、管理装置12の探索機能F10は、二次電池装置11から受信した電池状態に対応する演算情報を、記憶機能F11によって管理装置12の記憶装置に記憶されたデータベースに含まれる複数の演算情報の中から選択して取得する。この管理装置12の記憶装置に記憶されたデータベースは、たとえば、前述の電池試験によって得られた、電池の様々な履歴情報に対応する複数の演算情報を含む。この演算情報は、二次電池装置11の使用中にリアルタイムに現在値を求めることが困難な特性パラメータを含む。
【0084】
探索機能F10は、二次電池装置11から受信した履歴情報を基準として、前述のような様々な履歴情報に対応する複数の演算情報の中から、類似する履歴情報に対応する新規の演算情報を選択して取得する。以上により、図10に示す処理P2が終了する。以下では、探索機能F10が二次電池装置11から受信した演算情報を「現状の演算情報」といい、探索機能F10が管理装置12の記憶装置に記憶されたデータベースから取得した新規の演算情報を「更新情報」という。処理P2の終了後、管理装置12の演算機能F12は、たとえば、状態変化量の範囲を規定する処理P4で使用する、電池の仮想的な充放電パターンを設定する処理P3を実行する。
【0085】
図11は、図9に示す演算機能F12の機能ブロック図である。演算機能F12は、たとえば、充放電パターンの設定機能F121と、現状の電池状態の演算機能F122と、新規の電池状態の演算機能F123と、状態変化量の演算機能F124とを有している。
【0086】
処理P3において、設定機能F121は、たとえば、探索機能F10が二次電池装置11から取得した電池の履歴情報D1に含まれる充放電電流の発生頻度を抽出する。さらに、設定機能F121は、管理装置12の記憶装置に記憶された複数の充放電パターンの中から、抽出した充放電電流の発生頻度に類似する充放電パターンを選択して設定する。なお、一例として前述の充放電パターンの選択方法について説明したが、履歴情報の中に二次電池装置11を活用している用途(UPSや自動車など)を識別可能な情報を記録しておき、設定機能F121はこれを参照して管理装置12の記憶装置に記憶された用途に応じた充放電パターンの中から、同じ用途の充放電パターンを選択して設定しても良い。以上により、図10に示す処理P3が終了する。
【0087】
次に、管理装置12の演算機能F12は、たとえば、状態変化量の範囲を設定する処理P4を実行する。具体的には、図11に示すように、演算機能F122と、演算機能F123とは、それぞれ、設定機能F121に設定された充放電パターンD2を取得する。また、演算機能F122と、演算機能F123とは、探索機能F10から、それぞれ、現状の演算情報D3と、新規の演算情報D4とを取得して、設定された充放電パターンD2を用いて電池状態を演算するシミュレーションを行う。なお、電池状態は、前述のように、たとえば、SOC、最大電流および最大電力を含む。
【0088】
ここで、演算機能F122は、探索機能F10によって二次電池装置11から受信した現状の演算情報D3を用いて、現状の電池状態D5を算出する。具体的には、演算機能F122は、たとえば、現状の演算情報D3に含まれる現状の演算アルゴリズムD31と現状の特性パラメータD32とを用いて、現状の電池状態D5を算出する。
【0089】
また、演算機能F123は、新規の演算情報D4を用いて、新規の電池状態D6を算出する。具体的には、演算機能F12は、たとえば、現状の演算情報D3に含まれる現状の演算アルゴリズムD31と、新規の演算情報D4に含まれる新規の特性パラメータD42と、を用いて、新規の電池状態D6を算出する。
【0090】
なお、新規の電池状態D6は、たとえば、新規の演算情報D4に含まれる新規の演算アルゴリズムD41と、新規の特性パラメータD42とを用いて算出してもよい。また、新規の電池状態D6は、たとえば、新規の演算情報D4に含まれる新規の演算アルゴリズムD41と、現状の演算情報D3に含まれる現状の特性パラメータD32と、を用いて算出してもよい。
【0091】
図12は、電池状態の変化量である状態変化量の一例を示すグラフである。演算機能F124は、たとえば、演算機能F122が算出した現状の電池状態D5と、演算機能F123が算出した新規の電池状態D6との差である状態変化量を算出する。より具体的には、状態変化量は、たとえば、図12に示す現状のSOC(a)と、新規のSOC(b)との差であるSOCの変化量ΔSOCを含む。
【0092】
また、状態変化量は、たとえば、最大電流の変化量、および最大電力の変化量などを含む。演算機能F124は、たとえば、想定される状態変化量の変動幅に基づいて、状態変化量の範囲D7を規定する。演算機能F124は、規定した状態変化量の範囲D7を、たとえば、入出力部121を介して二次電池装置11へ出力する。また、演算機能F12は、たとえば、演算機能F123で使用した新規の演算情報D4を、更新情報として、状態変化量の範囲D7とともに、入出力部121を介して二次電池装置11へ出力する。以上により、図10に示す処理P4が終了する。
【0093】
図13は、二次電池装置11の状態演算部116の処理の流れの一例を説明するフロー図である。状態演算部116は、図13に示す処理を開始すると、まず、管理装置12から更新情報を受信したか否かを判定する処理P5を実行する。具体的には、処理P5において、状態演算部116は、たとえば、図3に示す受信機能F1によって管理装置12から更新情報を受信したか否かを判定する。受信機能F1は、処理P5において、更新情報を受信していない(NO)と判定すると、たとえば、図13に示す処理を終了する。
【0094】
一方、処理P5において、受信機能F1が更新情報を受信した(YES)と判定すると、状態演算部116は、たとえば、更新情報を記録する処理P6を実行する。この処理P6において、記憶機能F3またはF5は、受信機能F1によって受信した更新情報を、状態演算部116の記憶装置の第2記憶領域に記憶させる。この第2記憶領域は、演算機能F6が演算に使用している現状の演算情報が記憶された状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域とは異なる記憶領域である。以上により、処理P6が終了する。
【0095】
次に、状態演算部116は、たとえば、現状の電池状態を算出する処理P7を実行する。この処理P7において、状態演算部116は、たとえば、記憶機能F2および記憶機能F4によって記憶装置の第1記憶領域に記憶された現状の演算情報を使用して、演算機能F6によって現状の電池状態を算出する。ここで算出された現状の電池状態は、たとえば、図2に示す電池管理部115へ出力されて単電池群111の制御に用いられるとともに、情報出力端子118を介して図1に示す制御装置6および管理装置12へ出力される。以上により、処理P7が終了する。
【0096】
また、状態演算部116は、たとえば、処理P7と並行して、新規の電池状態を算出する処理P8を実行する。この処理P8において、状態演算部116は、たとえば、記憶機能F3および記憶機能F5によって記憶装置の第2記憶領域に記憶された新規の演算情報である更新情報を使用して、演算機能F6によって新規の電池状態を算出する。以上により、処理P8が終了する。
【0097】
次に、状態演算部116は、たとえば、状態変化量を算出する処理P9を実行する。この処理P9において、状態演算部116は、たとえば、電池状態の判定機能F8によって、演算機能F6から現状の電池状態と新規の電池状態とを取得し、現状の電池状態と新規の電池状態との差である状態変化量を算出する。以上により処理P9が終了する。
【0098】
次に、状態演算部116は、たとえば、状態変化量が規定された範囲内であるか否かを判定する処理P10を実行する。この処理P10において、状態演算部116は、たとえば、判定機能F8により、受信機能F1が管理装置12から更新情報とともに受信した状態変化量の規定の範囲を取得する。さらに、判定機能F8は、処理P9で算出した状態変化量が、受信機能F1から取得した規定の範囲内であるか否かを判定する。
【0099】
この処理P10において、判定機能F8が、処理P9で算出した状態変化量は規定された範囲内ではない(NO)と判定すると、状態演算部116は、図13に示す処理を終了する。一方、処理P10において、判定機能F8が、処理P9で算出した状態変化量は規定された範囲内である(YES)と判定すると、状態演算部116は、演算情報を更新する処理P11を実行する。
【0100】
この処理P11において、状態演算部116は、たとえば、判定機能F8によって判定結果を受信機能F1に通知する。受信機能F1は、判定機能F8から判定結果が通知されると、管理装置12から受信した更新情報を、記憶機能F2または記憶機能F4へ出力する。記憶機能F2または記憶機能F4は、受信機能F1から入力された更新情報を、状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域に記憶させ、演算情報を上書きして更新する。以上により、図13に示す処理が終了する。
【0101】
このように、図13に示す処理によって、状態演算部116の記憶装置の第1領域に記憶された演算情報が更新された後は、この新しい演算情報が演算機能F6によって使用され、より正確な新規の電池状態が算出される。なお、処理P11では、状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域に記憶された演算情報を上書きして更新しなくてもよい。
【0102】
たとえば、処理P11では、記憶装置の第1記憶領域に記憶された演算情報はそのままで、記憶装置の第2記憶領域に記憶された更新情報を演算情報として使用するように設定することで、演算情報を更新してもよい。このような処理P11を採用する場合の一例を、図14を参照して説明する。
【0103】
図14は、図3の状態演算部116の処理の流れの変形例を示すフロー図である。図14において、図13に示す処理と同一の処理は、同一の符号を付して説明を省略する。図14に示す例では、処理P11において、状態演算部116は、たとえば演算機能F6により、記憶機能F3および記憶機能F5によって記憶装置の第2記憶領域に記憶された更新情報を、演算情報として使用するように設定して、演算情報を更新する。
【0104】
次に、状態演算部116は、たとえば、判定機能F8により、単電池群111に過充電、過放電、過剰な高温などの異常や警告が発生したか否かを、所定の時間にわたって判定する処理P12を実行する。
【0105】
この処理P12において、判定機能F8が異常や警告が発生した(YES)と判定すると、状態演算部116は、更新前の演算情報を使用する処理P13を実行する。この処理P13において、状態演算部116は、たとえば、演算機能F6により、記憶装置の第1記憶領域に記憶された更新前の演算情報を、再度、電池状態を算出するための演算情報に設定して、図14に示す処理を終了する。
【0106】
一方、処理P12において、判定機能F8が異常や警告が発生しなかった(NO)と判定すると、状態演算部116は、たとえば、演算情報を上書き更新する処理P14を実行する。この処理P14において、状態演算部116の記憶機能F2および記憶機能F4は、受信機能F1から入力された更新情報を、状態演算部116の記憶装置の第1記憶領域に記憶させることで、演算情報を上書きして更新する。以上により、図14に示す処理が終了する。
【0107】
以下、本実施形態の二次電池装置11および二次電池システム1の作用を説明する。
【0108】
現在、地球環境問題が注目されている。地球温暖化を防止するために、ハイブリッド電気自動車や電気自動車などの環境対応車が普及している。このような環境対応車では、二次電池に蓄えた電気エネルギーによって駆動されるモーターの動力により、従来のエンジンの動力の一部または全部が代替される。
【0109】
また、電力分野では、温室効果ガスを排出しない太陽光発電などの再生可能エネルギーが注目され、導入が進んでいる。太陽光発電による発電出力は天候による変動が大きいため、電力系統の電圧変動や周波数変動を引き起こすおそれがある。そのため、図1に示すように、太陽光発電システムPGSに、電圧等の変動抑制を抑制する二次電池システム1を併設し、二次電池システム1を充放電させることで、電力系統3への出力を平滑化している。
【0110】
このように、環境温暖化の防止を可能にするシステムには、頻繁に二次電池が活用されており、今後は益々、二次電池の適用範囲が拡大していくと予想される。二次電池を適用したシステムでは、そのシステムにおける二次電池の要求性能を満足できなくなった場合、または、規定の使用年数が経過した場合、二次電池の寿命が尽きたと判定され、新しい電池に交換される。今後は、たとえば、環境対応車から取り外された使用済みの二次電池が別の用途に転用されるなど、二次電池のリユースが加速していくことが予想される。
【0111】
二次電池には、たとえば、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池など、様々な種類がある。その中でも、リチウムイオン二次電池は、特に、出力とエネルギー性能に優れるため、適用範囲が拡大している。リチウムイオン二次電池は、動作を保証するための仕様として、たとえば、使用可能な温度範囲、電圧範囲および充電状態の範囲、ならびに充放電可能な最大電流などが規定されている。
【0112】
このような仕様として規定された範囲を逸脱して電池を使用すると、電池が著しく劣化し、最悪の場合は電池を故障させる原因にもなる。そのため、二次電池システム1を構成する二次電池装置11は、電池状態を演算するための状態演算部116を有している。状態演算部116は、二次電池のSOCやSOH、最大に充放電可能な電流や電力、異常の有無、特性情報などを検知する。
【0113】
前記特許文献1に記載された従来の電池劣化算出装置は、二次電池装置の制御部の不揮発メモリに蓄積された電池の使用履歴データを受信部によって受信し、電池劣化算出部が予め電池容量と温度をパラメータとして算出されている電池劣化傾向データと組み合わせることで、電池劣化に応じた電池容量を算出する。ここで、この従来の電池劣化算出装置は、電池容量算出アルゴリズムなどを時間の制約なく自由に更新できるという特徴がある。このようなアルゴリズムなどの更新において、更新する情報が適正な情報か否かの判断を行う機能があれば、制御をより確実に行うことが可能な二次電池装置を実現できると考える。
【0114】
これに対し、本実施形態の二次電池装置11は、前述のように、二次電池である単電池群111と、二次電池の電圧と電流と温度を検知する検知部としての電流センサ113、温度センサ114、および電池管理部115と、を備えている。また、二次電池装置11は、検知部の検知結果に基づいて電池状態を演算する状態演算部116を備えている。また、状態演算部116は、記憶装置と処理装置とを有している。状態演算部116の記憶装置は、電池状態を演算するための演算情報を記憶する第1記憶領域と、演算情報を更新するための更新情報を記憶する第2記憶領域と、を有している。また、状態演算部116の処理装置は、状態検知処理と、更新検証処理と、更新処理と、を実行する。状態検知処理は、演算情報を用いて現状の電池状態を演算する処理P7である。更新検証処理は、更新情報を用いて新規の電池状態を演算する処理P8と現状の電池状態と新規の電池状態との間の状態変化量を算出するP9である。更新処理は、現状の電池状態と新規の電池状態との間の状態変化量が規定された範囲内である場合に更新情報を第1記憶領域に記憶させて演算情報を更新する処理P11である。
【0115】
このような構成により、本実施形態の二次電池装置11は、単電池群111を構成する二次電池の状態に応じた制御をより確実に行うことが可能になる。具体的には、二次電池装置11の状態演算部116は、記憶装置の第1記憶領域に、二次電池の電池状態を算出するための演算情報が記憶されている。演算情報は、たとえば、二次電池の特性パラメータと、その特性パラメータを用いて電池状態を算出するための演算アルゴリズムを含む。電池状態は、前述のように、たとえばSOC、SOH、入出力可能な最大電力または最大電流、異常の有無などを含む。そして、状態演算部116は、たとえば、二次電池の劣化に応じて、管理装置12から演算情報を更新するための更新情報を取得して、記憶装置の第2記憶領域に記憶することができる。そして、状態演算部116は、状態検知処理により現状の演算情報を用いて現状の電池状態を算出し、更新検証処理により更新情報を用いて新規の電池状態を算出し、現状の電池状態と新規の電池状態との間の状態変化量を算出する。さらに、状態演算部116は、更新処理により、現状の電池状態と新規の電池状態との間の状態変化量が規定された範囲内である場合に限り、更新情報を第1記憶領域に記憶させて演算情報を更新する。したがって、本実施形態の二次電池装置11によれば、問題がある更新情報によって演算情報が上書きされるのを防止して、二次電池の状態に応じた制御をより確実に行うことが可能になる。
【0116】
また、本実施形態の二次電池装置11において、状態演算部116の処理装置による更新処理は、変化量判定処理と、仮更新処理と、異常判定処理と、実更新処理と、を含んでもよい。図14に示すように、変化量判定処理は、状態変化量が規定された範囲内であるか否かを判定する処理P10である。また、仮更新処理は、状態変化量が規定された範囲内である場合に更新した電池状態を所定期間にわたって状態演算部の出力に設定する処理P11である。異常判定処理は、所定期間にわたって異常の有無を判定する処理P12である。実更新処理は、異常判定処理において異常なしと判定された場合に更新情報を記憶装置の第1記憶領域に記憶させて演算情報を更新する処理P14である。
【0117】
このような構成により、二次電池装置11は、前述の効果に加えて、更新情報を期間を限定して演算情報として使用し、異常がない場合に演算情報を更新情報によって上書きすることができる。したがって、この二次電池装置11によれば、単電池群111を構成する二次電池の状態に応じた制御をより確実に行うことが可能になる。
【0118】
また、本実施形態の二次電池装置11において、演算情報は、二次電池の特性パラメータを含む。このような構成により、状態演算部116は、更新情報として新規の特性パラメータを管理装置12から取得して記憶装置の第2記憶領域に記憶させ、記憶装置の第1記憶装置に記憶された現状の特性パラメータを、新規の特性パラメータによって更新することができる。
【0119】
また、本実施形態の二次電池装置11において、特性パラメータは、二次電池を構成する単電池の内部抵抗R、開回路電圧OCV、分極抵抗Rpとコンデンサの容量であるキャパシタンスC、および満充電容量Qmaxを含む。このような構成により、本実施形態の二次電池装置11によれば、使用中にリアルタイムに現在値を求めることが困難な特性パラメータを、更新情報として管理装置12から取得して、特性パラメータを更新することができる。なお、上記は特性パラメータの更新について述べたが、演算アルゴリズムについても同様に更新処理を適用する。
【0120】
また、本実施形態の二次電池システム1は、前述の二次電池装置11と、その二次電池装置11に対して通信可能に接続された管理装置12と、を備えている。管理装置12は、記憶装置と処理装置とを備えている。この管理装置12の記憶装置は、前述のように、複数の演算情報が記憶されている。また、管理装置12の処理装置は、二次電池装置11から取得した情報に基づいて、管理装置12の記憶装置に記憶された複数の演算情報の中から一の演算情報を選択して更新情報として二次電池装置11へ出力する。また、管理装置12の処理装置は、二次電池装置11における現状の電池状態と新規の電池状態との間の状態変化量の範囲を規定して、二次電池装置11へ出力する。
【0121】
このような構成により、管理装置12の記憶装置は、複数の演算情報として、たとえば、電池の様々な履歴情報ごとに、複数の特性パラメータを記憶することができる。ここで、特性パラメータには、前述のように、二次電池装置11の使用中にリアルタイムに現在値を求めることが困難な電池の特性パラメータを含む。二次電池装置11の使用中にリアルタイムに現在値を求めることが困難な電池の特性パラメータは、たとえば、満充電容量Qmax、開回路電圧OCVとSOCとの関係、分極抵抗RpおよびキャパシタンスC、電池の抵抗増加率SOHRと容量維持率SOHQとの関係などを含む。
【0122】
すなわち、二次電池システム1の運用開始後に、並行して前述の電池試験を実施し、様々な条件で電池を劣化させて電池の特性パラメータを含む演算情報を特定し、その複数の演算情報を管理装置12の記憶装置に記憶させておくことができる。これにより、二次電池システム1の運用に要する準備期間を大幅に削減することが可能である。さらに、前述の電池試験において、実際の電池の運用よりも劣化が加速する電池試験を実施することで、実際の二次電池システム1の状態を先取りした電池の劣化特性を管理装置12の記憶装置に記憶させることが可能である。すなわち、二次電池システム1の運用開始までの準備期間を短縮させながら、二次電池システム1の運用後に生じる電池の劣化に伴う特性変化を、管理装置12の記憶装置に記憶させた演算情報によって二次電池装置11の制御に反映させることができる。
【0123】
また、管理装置12の処理装置は、二次電池装置11から電池の履歴情報を含む情報を取得し、その履歴情報に応じて、管理装置12の記憶装置に記憶された複数の演算情報の中から一の演算情報を選択し、それを更新情報として二次電池装置11へ出力することができる。これにより、二次電池装置11は、管理装置12から、二次電池装置11の使用中にリアルタイムに現在値を求めることが困難なパラメータを、電池の履歴情報に応じて、随時、取得することができる。さらに、管理装置12の処理装置は、二次電池装置11における現状の電池状態と新規の電池状態との間の状態変化量の範囲を規定して、二次電池装置11へ出力する。これにより、二次電池装置11の処理装置は、管理装置12から取得した状態変化量の規定の範囲を用いて、前述の更新処理を実行することができる。
【0124】
以上説明したように、本実施形態によれば、二次電池の制御をより確実に行うことが可能な二次電池装置11および二次電池システム1を提供することができる。なお、本開示に係る二次電池装置11および二次電池システム1は、前述の実施形態に限定されない。以下、図15を参照して、前述の実施形態の二次電池システム1の変形例を説明する。
【0125】
図15は、図9に示す管理装置12の変形例を示す機能ブロック図である。本変形例に係る二次電池システムは、管理装置12の構成が前述の実施形態に係る二次電池システム1と異なっている。本変形例に係る二次電池システムのその他の点は、前述の実施形態に係る二次電池システムと同様であるため、同様の部分には同様の符号を付して説明を省略する。
【0126】
本変形例の二次電池システムにおいて、管理装置12は、前述の各機能に加えて、二次電池装置11の転用先種別を選択する機能F13を有している。また、本変形例において、管理装置12の演算情報を記憶する機能F11は、管理装置12の記憶装置に二次電池の複数の履歴情報と、複数の二次電池システム1の適用先種別とを関連付けた転用データベースを記憶させる機能を有する。二次電池装置11の転用先種別を選択する機能F13は、二次電池システム1から取得した二次電池の履歴情報と、転用データベースの履歴情報との類似性を判定し、その類似性に基づいて転用データベースの適用先種別を選択する。
【0127】
以上のように、本変形例に係る二次電池システムにおいて、管理装置12の記憶装置は、二次電池の複数の履歴情報と、複数の二次電池システム1の適用先種別とを関連付けた転用データベースが記憶されている。そして、管理装置12の処理装置は、二次電池装置から取得した二次電池の履歴情報と、転用データベースの履歴情報との類似性を判定し、その類似性に基づいて転用データベースの適用先種別を選択する。この構成により、単電池群111の履歴情報と劣化情報を踏まえて、それぞれの二次電池装置11に最も適した転用先を判定することができる。
【0128】
以上、図面を用いて本開示に係る二次電池装置および二次電池システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0129】
1 二次電池システム
11 二次電池装置
111 単電池群(二次電池)
113 電流センサ(検知部)
114 温度センサ(検知部)
115 電池管理部(検知部)
116 状態演算部
12 管理装置
P7 状態検知処理
P8 更新検証処理
P11 更新処理
P10 変化量判定処理
P11 仮更新処理
P12 異常判定処理
P13 実更新処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15