(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】衝突緩衝装置
(51)【国際特許分類】
E01F 15/02 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
E01F15/02
(21)【出願番号】P 2020086381
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高室 和俊
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199978(JP,A)
【文献】特開2019-210800(JP,A)
【文献】特開平07-003729(JP,A)
【文献】特開平06-073714(JP,A)
【文献】特表2007-502390(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103890(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両進行方向に沿って並設される複数の緩衝部材と、該各緩衝部材に係合する係合部材
であり、前記車両進行方向以外の方向への前記緩衝部材の移動を規制する係合部材を備える衝突緩衝装置であって、
前記係合部材は長手方向を前記車両進行方向へ向けて配置されると共に、車両の衝突が想定される前記係合部材の前端を含む移動部が後方へ移動可能に設けられ、
前記移動部が収納される収納部が後方に設けていることを特徴とする衝突緩衝装置。
【請求項2】
前記収納部が、前記移動部を収納可能な管状体の中空部分で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の衝突緩衝装置。
【請求項3】
前記収納部が、柵体のビームの中空部分で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の衝突緩衝装置。
【請求項4】
長手方向を車両進行方向へ向けて設置面に設置されるレール状の台材と、該台材に下端を係合させて立設される複数の支持部材を備え、
前記支持部材は係合部材の前記移動部を支持するように設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の衝突緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する車両が衝突したときにその衝撃を緩和するための衝突緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路脇などに設置されている柵やガードレールなどの構造物の端付近に設置して、この構造物へ車両が直接衝突することを妨げると共に、衝突する車両の衝撃を緩和する衝突緩衝装置は、従来より利用されており、種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、 外部からの衝撃に対し座屈変形してその衝撃を緩和する緩衝体と、前記緩衝体を載置するベースプレートと、前記ベースプレートを路面に固定するアンカーと、を備える衝突緩衝装置であって、前記アンカーが、前記ベースプレートを固定するアンカーボルトと、前記アンカーボルトを垂直に支持するアンカープレート部材と、路面内のスラブに固着されるアンカーベース部材と、前記アンカーベース部材と前記アンカープレート部材とを着脱可能に結合する結合部材と、を少なくとも備えてなる、衝突緩衝装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される衝突緩衝装置は、緩衝体を載置するベースプレートを路面に固定するアンカーの交換や補修等の作業を簡素化するものであり、複数個並設させた緩衝ボックス60に飛散防止ワイヤー71を貫通させて連結した構成が
図1、2などに示されている。
しかしながら、前記衝突緩衝装置は、自由に変形できる飛散防止ワイヤー71によって各緩衝ボックス60を連結しているので、車両が衝突したときに飛散防止ワイヤー71の変形が規制されず、車両が走行する道路側などへ移動する可能性があった。
【0006】
本発明は、車両が衝突したときに、緩衝部材に係合する係合部材が道路側へ移動しにくい衝突緩衝装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る衝突緩衝装置は、車両進行方向に沿って並設される複数の緩衝部材と、該各緩衝部材に係合する係合部材であり、前記車両進行方向以外の方向への前記緩衝部材の移動を規制する係合部材を備える衝突緩衝装置であって、
前記係合部材は長手方向を前記車両進行方向へ向けて配置されると共に、車両の衝突が想定される前記係合部材の前端を含む移動部が後方へ移動可能に設けられ、
前記移動部が収納される収納部が後方に設けていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る衝突緩衝装置によれば、車両進行方向に沿って並設する複数の緩衝部材に長手方向を前記車両進行方向へ向けて配置した係合部材を係合するので、車両衝突の衝撃を緩和する緩衝部材を安定的に設置できる。また、車両の衝突が想定される前記係合部材の前端を含む移動部を後方へ移動可能に設けると共に、前記移動部を収納する収納部を後方に設けるので、車両が衝突したときに係合部材の移動部が後方の収納部に収納され、車両が走行する道路側への係合部材の移動が抑制される。
【0009】
また、前記移動部を収納可能な管状体の中空部分で前記収納部を形成すれば、収納部の内側以外への移動部の移動が効果的に規制されるので、好ましい。
【0010】
また、前記収納部を柵体のビームの中空部分で形成すれば、柵体の近傍に衝突緩衝装置を容易に設置できるので、好ましい。
【0011】
また、長手方向を車両進行方向へ向けて設置面に設置するレール状の台材と、この台材に下端を係合させて立設する複数の支持部材を備えさせ、前記支持部材が係合部材の前記移動部を支持するように設ければ、車両が衝突したときに前記支持部材の下端と前記台材との係合が外れて、支持部材が前記移動部の移動を妨げないようになされ、収納部以外への移動部の移動が効果的に規制されるので、好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る衝突緩衝装置によれば、車両が衝突したときに、緩衝部材に係合する係合部材が道路側へ移動して他の車両へ接触するような問題が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る衝突緩衝装置の実施の一形態を示す側面図である。
【
図2】
図1の衝突緩衝装置を拡大して示す図である。
【
図3】
図2の衝突緩衝装置の台材を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は側面図である。
【
図5】
図2の衝突緩衝装置の台材を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は側面図である。
【
図6】
図3の台材を設置面へ設置させた状態を示す正面図である。
【
図7】
図2の衝突緩衝装置の支持部材を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図である。
【
図9】
図2の衝突緩衝装置の支持部材を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図である。
【
図12】
図6の台材へ
図7の支持部材を係合させた状態を示す正面図である。
【
図13】
図2の衝突緩衝装置の緩衝部材を示す斜視図である。
【
図14】
図13の緩衝部材を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図である。
【
図16】
図2の衝突緩衝装置の係合部材を示す斜視図である。
【
図18】
図1の柵体と衝突緩衝装置とが並設された部分を拡大して示す図である。
【
図19】本発明に係る衝突緩衝装置の実施の他の一形態を示す側面図である。
【
図22】衝突緩衝装置の支持部材の実施の他の一形態を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1は本発明に係る衝突緩衝装置1の実施の一形態を示す側面図であり、
図2は
図1の衝突緩衝装置1を拡大して示す図である。
図1は、衝突緩衝装置1を柵体Fに並設させた状態を示している。
図1、2において図中左右方向を長手方向とし、長手方向に対して垂直な図中上下方向を縦方向とし、長手方向および縦方向に対して垂直な方向を幅方向として以下の説明を行う。また、
図1、2において、長手方向のうち左方向を前方、右方向を後方として説明する。
【0015】
衝突緩衝装置1は、台材2、支持部材3、係合部材4、緩衝部材6、及び弾性柱Pを備えている。
台材2は台材2a、2bを1個づつ備え、各台材2a、2bを長手方向へ並べて設置面Gに設置させている。
支持部材3は、長手方向へ間隔をあけて複数設置させており、前記台材2a、2bの上に立設させている。支持部材3は、長手方向の最も前方に配置させる支持部材3aと、その後方に配置させる支持部材3bとを備えている。
緩衝部材6は、各支持部材3の間に配置して設置させている。
係合部材4は、各支持部材3へ取り付けて、各緩衝部材6の上部に係合するように配置させて設置させている。前記弾性柱Pは、衝突緩衝装置1の長手方向の前端に配置させて、前記台材2aの上に立設させている。
【0016】
図3は
図2の衝突緩衝装置1の台材2bを示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は側面図であり、
図4は
図3の台材2bの正面図である。
図3(イ)の平面図は、その向きを
図3(ロ)の側面図にあわせて描いている。
前記台材2bは、レール状の長尺体であり、板面を縦方向へ向けた平板状の基部21と、この基部21の幅方向の両端から上方へそれぞれ延設させる平板状の係止部22とを備えた、略Uの字形状の断面に形成している。
前記各係止部22は、下方から上方に至るほど間隔が小さくなる傾斜状にそれぞれ配置させており、各係止部22の間に開口部分の幅が溝の内側の幅よりも小さく形成されて上方へ開口する蟻溝状の係止溝22aが形成されるように設けている。
また、前記基部21には長孔形状の貫通孔21aが形成されており、この貫通孔21aへ挿通させたアンカーナットB1によって設置面Gへ設置させるように設けている。
前記台材2bは、金属板を曲げ加工して形成しているが、押出成形など他の加工方法によって形成してもよい。
【0017】
図5は
図2の衝突緩衝装置1の台材2aを示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は側面図である。
図5(イ)の平面図は、その向きを
図5(ロ)の側面図にあわせて描いている。
台材2aは、長手方向の前端部分に前記弾性柱Pを設置させるための柱取付部23を形成している点が、前記台材2bと異なる主な事項である。
前記柱取付部23は、各係止部22を形成させずに前記基部21が前方へ突出するような形状に設けており、この基部21に貫通孔21bを形成している。この貫通孔21bは、後述する弾性柱Pの設置に利用される。
また、台材2aの各係止部22には、前記取付部23の近傍に位置する前端部分に、貫通孔22bをそれぞれ形成しており、後述する前記支持部材2aの取り付けに利用している。
【0018】
図6は
図3の台材2bを設置面へ設置させた状態を示す正面図である。
前記台材2bは、基部21の下面を設置面Gへ当接させ、貫通孔21aに挿通させたアンカーボルトB1の雄ねじ部分を設置面Gへ埋設固定させたアンカーナットNへ螺結させて、設置させている。
また、前記台材2aは、
図3に示す台材2bと同様の方法で、設置面Gに設置させている。
【0019】
図7は
図2の衝突緩衝装置1の支持部材3bを示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図であり、
図8は
図7の支持部材3bの平面図である。
支持部材3は、全体を平板状に形成した本体部31を備え、この本体部31から長手方向両側へそれぞれ突出するように設けた緩衝部材支持部36を形成している。
前記本体部31は、下部に係合部32を形成しており、この係合部32を前記台材2a、2bの係止溝22aの内側へ係合可能に設けている。具体的には、係合部32は、前記台材2a、2bの係止溝22aの内側形状に対応する形状に設けており、幅方向の両縁が下方に至るほど外側へ向かう略台形形状に設けている。
また、本体部31は、係合部32よりも上方の形状を幅方向の大きさが一定の略矩形板状に設けており、上部に略矩形状に貫通する係合部材支持部33を形成している。係合部材支持部33は、後述する矩形筒形状の係合部材4を挿通可能な大きさに設けている。
【0020】
前記各緩衝部材支持部36は、
図8に示すように、平面視における形状を略コの字状にそれぞれ形成している。
具体的には、本体部31の板面に対して垂直方向に延設される平板状の突出部36aを2個備えると共に、各突出部36aの端を連結する平板状の連結部36bを備えている。
図7、8に示す前記各緩衝部材支持部36は、平板状の本体部31へ角パイプを固定して形成している。具体的には、本体部31の下端から上方へ向けて前記角パイプの外形に対応する矩形の切り欠きを設け、この切り欠きの内側へ前記角パイプを嵌め込んだ後、両部材を溶接により固定して各緩衝部材支持部36を形成している。
【0021】
図9は
図2の衝突緩衝装置1の支持部材3aを示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図であり、
図10は
図9の支持部材3aの背面図であり、
図11は
図9の支持部材3aの平面図である。
図9~11に示す支持部材3aは、係合部材支持部33および緩衝部材支持部36の形状と、係合部32に当接部32aを設けている点とが、前記支持部材3bと異なる主な事項である。
即ち、支持部材3aは、前記支持部材3bと同様に、全体を平板状に形成した本体部31を備え、本体部31の下部に台材2の係止溝22aへ係合可能な係合部32を形成し、係合部32よりも上方の形状を幅方向の大きさが一定の略矩形板状に設けている。
【0022】
前記支持部材3aの係合部材支持部33は、貫通孔状ではなく、本体部31から長手方向の後方側へ突出する矩形筒状に形成している。前記係合部材支持部33は、筒の内側形状を後述する矩形筒状の係合部材4の外形よりも若干大きく形成しており、その内側へ係合部材4の端部を挿入可能に設けている。
【0023】
前記支持部材3aの緩衝部材支持部36は、本体部31の長手方向両側ではなく、長手方向の後方側へのみ突出させて設けている。具体的には、本体部31に矩形の切り欠きを形成せずに、本体部31の後面へ角パイプを当接させた後、両部材を溶接により固定して緩衝部材支持部36を形成している。
【0024】
前記支持部材3aの係合部32は、下方に至るほど外側へ向かう略台形形状に設けた幅方向の両縁に、長手方向へ突出する当接部32aをそれぞれ設けている。
前記各当接部32aは、係合部32を曲げ加工して形成した平板形状に設けており、内側に雌ねじを有する雌ねじ孔32bをそれぞれ1個づつ形成している。
前記各当接部32aは、本体部31からそれぞれ長手方向の逆側へ突出させており、支持部材3aの係合部32を台材2の係止溝22aへ係合させたときに、各当接部32aの外側の板面がそれぞれ台材2の各係止部22の内側面へ相対するように配置している。
【0025】
図12は、
図6の台材2bへ
図7の支持部材3bを係合させた状態を示す正面図である。
図12に示すように、台材2bへ支持部材3bを係合させた状態において、係合部32が係止溝22
aの内側へ収納されると共に、係合部32の幅方向の両縁が係止部22の板面に相対するように配置される。この前記支持部材3bが縦方向上方へ向かう外力を受けたとき、係合部32の縁が係止部22へ当接して、台材2bからの脱抜が規制される。
尚、
図5に示す台材2aへの支持部材3bの係合は、前記台材2bへの係合と同様である。
各支持部材3bは、係合部32を係合させた係止部22により、幅方向や縦方向の移動が規制され、長手方向への移動は可能な状態となされる。
前記各支持部材3bは、
図1、2に示すように、緩衝部材6の長手方向の大きさに対応する間隔をあけて配置している。
【0026】
図9に示す支持部材3aは、支持部材3bと同様に、下部に設けた係合部32を
図5に示す台材2aの係止溝22aの内側へ収納させて係合させるように設けている。係合部32を台材2aへ係合させた状態において、各当接部32aの板面が各係止部22の内側面へ相対するように配置されると共に、各雌ねじ孔32bが各係止部22に形成した各貫通孔22bに対応する位置に配置されるように設けている。支持部材3aは、各貫通孔22bへ挿通させたボルトの雄ねじを前記雌ねじ孔32bへ螺結させることで、台材2aから脱抜不納となされる。
【0027】
図13は
図2の衝突緩衝装置1の緩衝部材6を示す斜視図であり、
図14は
図13の緩衝部材6を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図である。
緩衝部材6は、内側が中空の略矩形箱状に形成している。
緩衝部材6の上面には、下方へ窪む断面矩形の上溝部64を長手方向の全長に亘って形成している。
また、緩衝部材6の下面には、上方へ窪む断面矩形の下溝部62を長手方向の全長に亘って形成している。
ブロック体6の幅方向両側の各側面には、内側へ窪む溝61を長手方向の全長に亘って形成しており、各溝61を形成することで、ブロック体6の剛性を向上させている。
【0028】
図15は
図12の支持部材3bへ
図13の緩衝部材6を取り付けた状態を示す正面図である。
前記緩衝部材6は、間隔をあけて立設させた支持部材3の間に配置されており、前記支持部材3bへの取り付けにおいては、下溝部62の内側に挿入させた緩衝部材支持部36の上に載置されて支持されている。
また、
図9に示す支持部材3aへの緩衝部材6の取り付けは、支持部材3bと同様であり、長手方向後方側へ突出させた緩衝部材支持部36を下溝部62の内側に挿入させて支持させている。
緩衝部材支持部材3bへ緩衝部材6を取り付けた状態において、各支持部材3bに形成した係合部材支持部33は緩衝部材6の上溝部64の内側に対応する位置に配置される。
【0029】
図16は、
図2の衝突緩衝装置1の係合部材4を示す正面図である。
係合部材4は、断面矩形の筒状体であり、具体的には、金属製の角パイプで形成している。
【0030】
図17は
図15の支持部材3bへ
図16の係合部材4を取り付けた状態を示す正面図である。
係合部材4は、長手方向側から差し入れるようにして、各支持部材3bの係合部材支持部33の内側へ挿入して取り付けている。
支持部材3bへ取り付けられた係合部材4は、緩衝部材6の上溝部64の内側に収納されて、緩衝部材6の幅方向や縦方向への移動を規制する。換言すると、各緩衝部材6は係合部材4へ係合した状態となされて、その移動が規制される。
【0031】
図17に示すように、前記支持部材3bの係合部材支持部33へ前記係合部材4を取り付け、この係合部材4を緩衝部材6の上溝部64の内側へ配置させた後、台材2aへ前記支持部材3aを取り付けることで、係合部材4の長手方向前方への移動が規制される。前記係合部材4は長手方向前方側の端部を支持部材3aの係合部材支持部33の内側へ挿入させて取り付けられることで、幅方向や縦方向への移動も規制される。
【0032】
支持部材3aを台材2aへ取り付けた後、この台材2aの柱取付部23へ前記弾性柱Pを取り付けて設置させることで、
図1、2に示す衝突緩衝装置1が形成される。弾性柱Pは下端から下方へ突出する雄ねじ部を備えており、この雄ねじ部を柱取付部23に設けた貫通孔21bへ挿通させると共に、その下方に配置して設置面Gに埋設固定させたアンカーナットへ螺結させることで、柱取付部23の上に設置される。
【0033】
図1に示すように、柵体Fは間隔をあけて立設させた支柱Sと、各支柱Sに支持されるビームf1、f2を備える柵である。前記ビームf2は筒状の長尺体であり、これを支持する3個の各支柱Sをそれぞれ貫通するように配置されている。また、前記ビームf2は、長手方向前側の端において内側の中空部分が前方へ開口している。
【0034】
図18は、
図1の柵体Fと衝突緩衝装置1とが並設された部分を拡大して示す図である。
前記ビームf2は、
図18に示すように、衝突緩衝装置1の係合部材4に対応する位置に配置させており、具体的には、係合部材4の後端をビームf2の前側の開口から内側の中空部分へ挿入させている。
前記ビームf2には、上下方向に貫通するボルトB2を係合部材4の後端近傍の位置に取り付けており、係合部材4の長手方向後方への移動を規制している。
【0035】
図1の衝突緩衝装置1は、長手方向前側から走行してきた車両が柵体Fの前端へ衝突する前に、衝突緩衝装置1へ衝突してその衝撃を緩和する。具体的には、衝突緩衝装置1の前端に車両が接触したときに、長手方向へ並設させた各緩衝部材6がそれぞれ潰れるように変形して、柵体Fが受ける衝撃を軽減させる。
車両の接触によって各緩衝部材6が変形するとき、これらの上溝部64の内側に収納されて各緩衝部材6へ係合する前記係合部材4は長手方向後方へ向かう力を受ける。後方へ移動する係合部材4は、前記ビームf2へ取り付けたボルトB2を破壊し、更に長手方向後方へ移動してビームf2の内側へ収納される。換言すると、係合部材4はその全体が車両接触時に後方へ移動する移動部を構成し、ビームf2の内側の中空部分は移動する前記移動部を収納する収納部として機能する。
図1の衝突緩衝装置1は、係合部材4の移動部を収納するための収納部を並設する柵体Fに形成しており、柵体Fに衝突緩衝装置1の一部を設けた構成としている。
そして、車両衝突時に係合部材4の移動部が収納部へ収納されることで、この移動部が幅方向外側に位置する道路などへ移動することを抑制でき、他の車両や構造物や人などへの移動部の接触を防止できる。
【0036】
また、
図1の衝突緩衝装置1は、係合部材4の移動部を支持する支持部材3bの下端を前記台材2a、2bへ係合させて立設させている。このように設けることで、衝突緩衝装置1の前端へ車両が接触したときに、支持部材3bと台材2a、2bとの係合が外れ、前記収納部への移動部の移動が各支持部材3bに阻害されにくくなされている。
【0037】
図19は本発明に係る衝突緩衝装置1の実施の他の一形態を示す側面図であり、
図20は
図19の衝突緩衝装置1を拡大して示す図である。
図19、20に示す衝突緩衝装置1は、各緩衝部材6に係合する係合部材4の構成と、この係合部材4の長手方向後方への移動を防止する固定部材7を備える点が、
図1、2に示す前記衝突緩衝装置1と異なる主な事項である。
即ち、
図19、20に示す衝突緩衝装置1は、
図1、2に示す前記衝突緩衝装置1と同様に、設置面Gに設置させた台材2a、2bの係止溝22aへ係合部32を係合させて支持部材3bを立設させ、各支持部材3bの係合部材支持部33へ挿通させた係合部材4を緩衝部材支持部36上に載置して各支持部材3bの間に配置した各緩衝部材6の上溝部64へ収納させると共に、この係合部材4の前端を台材2aに立設させた支持部材3aの係合部材支持部33へ取り付けている。
尚、
図19、20に示す衝突緩衝装置1の前記台材2bは、長手方向の大きさをより大きく形成していること以外は
図3、4に示す前記台材2bと同じ形状であり、
図19、20に示す衝突緩衝装置1の前記台材2a、前記支持部材3a、3b、緩衝部材6は、
図1、2に示す衝突緩衝装置1の各部材と同一形状である。
また、
図19に示す柵体Fは、間隔をあけて立設させた支柱S間にワイヤーからなるビーム状部材を掛け渡して設けた、所謂ワイヤー柵である。
【0038】
図21は、
図20の係合部材4を示す側面図である。
図21に示す係合部材4は、4個の管状体41を組み合わせて形成している。
前記各管状体41は断面矩形の筒状体であり、金属製の角パイプでそれぞれ形成している。
前記各管状体41は、太さの異なる管状体41a、41b、41c、41dをそれぞれ1個づつ備えており、長手方向の最も前方側に配置させた管状体4aの断面形状の大きさが最も小さく、その後方に配置した管状体4b、4c、4dの断面形状の大きさを後方に至るほどより大きく形成している。
前記各管状体41は、前方に配置した管状体41の後端を、後方に配置した管状体41の内側へ挿入させ、各管状体41の筒壁を貫通するボルトB3でそれぞれ固定し、連結している。
【0039】
図19、20に示す衝突緩衝装置1は、長手方向後部に固定部材7を配置して設けている。
固定部材7は、設置面Gに埋設固定したアンカーナット(図示せず)によって設置面Gへ強固に固定しており、最も後方に配置した緩衝部材6を支持している。また、各支持部材3a、3bに支持される前記係合部材4の管状体41dの後端部分を取り付けて固定している。
【0040】
図19、20に示す衝突緩衝装置1は、
図1に示す前記衝突緩衝装置1と同様に、長手方向前側から走行してきた車両が柵体Fの前端へ衝突する前に、衝突緩衝装置1へ衝突してその衝撃を緩和するものであり、各緩衝部材6がそれぞれ潰れるように変形して、柵体Fが受ける衝撃を軽減させる。
図19、20に示す衝突緩衝装置1の前記係合部材4は、車両が衝突したときに、長手方向前方側に配置した管状体41が移動部として機能すると共に、その後方側に配置した管状体41が移動部を収納する収納部として機能するように設けている。具体的には、車両の接触によって各緩衝部材6が変形し、前記係合部材4が長手方向後方へ向かう力を受けたときに、各管状体41を固定する前記ボルトB3が破壊され、前方側に配置した各管状体41がその後方の管状体41の内側の中空部分へ移動し収納される。そして、係合部材4の移動部となされる前方側の各管状体41が、収納部となされる後方側の管状体41へ収納されることで、この移動部となされる管状体41が幅方向外側に位置する道路などへ移動することを抑制でき、他の車両や構造物や人などへの移動部の接触を防止できる。
また、最も後方に配置した前記管状体41dを前記固定部材7に固定することで、係合部材4が更に後方へ移動して柵体Fへ接触することを防止できる。
【0041】
図22は衝突緩衝装置1の支持部材3bの実施の他の一形態を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は側面図であり、
図23は
図22の支持部材3bの平面図である。
図22、23に示す支持部材3bは、緩衝部材支持部36の形状と、係合部32に当接部32aを設けている点とが、
図7、8に示す前記支持部材3bと異なる主な事項である。
即ち、
図22、23に示す支持部材3bは、
図7、8に示す前記支持部材3bと同様に、全体を平板状に形成した本体部31を備え、本体部31の上部に略矩形貫通孔状の係合部材支持部33を形成すると共に、本体部31の下部に台材2の係止溝22aへ係合可能な係合部32を形成している。
【0042】
図22、23に示す支持部材3bは、各緩衝部材支持部36を本体部31の幅方向の縁部分から長手方向へ延設させて形成している。各緩衝部材支持部36は、本体部31を曲げ加工して形成しており、矩形平板状に設けた各緩衝部材支持部36をそれぞれ長手方向の両側へ突出させている。支持部材3bは、
図7、8に示す前記支持部材3bと同様に、緩衝部材支持部36を緩衝部材6の下溝部62の内側へ挿入させ、この緩衝部材支持部36の上に載置した緩衝部材6を支持するように設けている。
【0043】
図22、23に示す支持部材3bの係合部32は、下方に至るほど外側へ向かう略台形形状に設けた幅方向の両縁に、長手方向へ突出する当接部32aをそれぞれ設けている。
前記各当接部32aは、係合部32を曲げ加工して形成した平板形状に設けており、本体部31からそれぞれ長手方向の逆側へ突出させている。支持部材3bは、係合部32を台材2の係止溝22aへ係合させたときに、各当接部32aの外側の板面がそれぞれ台材2の各係止部22の内側面へ相対するように配置しており、前記台材2へ取り付けて立設させたときにより安定するように設けている。
尚、
図22、23に示す支持部材3bは、
図7、8に示す前記支持部材3bと同様の方法で、前記台材2a、2bへ取り付けることができ、
図1、2に示す前記衝突緩衝装置1や、
図19、20に示す前記衝突緩衝装置1の支持部材3bとして利用することができる。
【0044】
尚、本発明に係る衝突緩衝装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記各衝突緩衝装置1は、各緩衝部材6を中空箱状に設けているが、これに限るものではなく、変形によって衝撃を緩和する他の形態に設けてもよい。例えば、各緩衝部材6を中実な弾性体で形成してもよく、合成樹脂などの発泡体で形成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 衝突緩衝装置
2 台材
21 基部
22 係止部
22a 係止溝
23 柱取付部
3 支持部材
33 係合部材支持部
36 緩衝部材支持部
4 係合部材
41 管状体
6 緩衝部材
61 溝
62 下溝部
64 上溝部
7 固定部材
B1 アンカーボルト
G 設置面
N アンカーナット
P 弾性柱
S 支柱