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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】列車制御システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20220101AFI20231121BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B61L27/00
B60L15/40 B
B60L15/40 C
B60L15/40 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020188798
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077795
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川又 千博
(72)【発明者】
【氏名】大内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 大志
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-186651(JP,A)
【文献】特開2007-302077(JP,A)
【文献】特開2006-6030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00
B60L 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の経路上を移動する列車を制御する車上制御装置と、
前記列車の在線位置を管理し、前記列車の走行可能経路と前記走行可能経路の最先の位置を示す走行許可位置とを算出する地上制御装置と、を備える列車制御システムにおいて、
前記車上制御装置は、
前記地上制御装置と通信を行う車上通信部と、
前記在線位置を取得する位置取得部と、
前記在線位置を前記地上制御装置に送信し、前記走行許可位置を前記地上制御装置から受信し、前記走行許可位置に応じて前記列車の走行を制御する車上制御部と、を有し、
前記地上制御装置は、
前記車上制御装置と通信を行う地上通信部と、
前記車上制御装置から前記在線位置を受信し、前記走行可能経路と前記走行許可位置とを算出し、前記走行許可位置を前記車上制御装置に送信する地上制御部と、を有し、
前記車上制御装置は、
前記列車内に要救護者が発生した場合、前記列車を要救護列車と認識して、前記地上制御装置に前記要救護者の発生を通知し、
前記地上制御装置は、
前記車上制御装置から前記要救護者の発生の通知を受けて、前記列車を前記要救護列車と認識し、
前記要救護列車の前記車上制御装置には、前記要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅までの前記走行可能経路である優先経路と、前記優先経路に対応する前記走行許可位置である優先走行許可位置と、を算出して送信し、
前記要救護列車以外の前記列車の前記車上制御装置には、前記優先経路を支障しない前記走行可能経路と、それに対応する前記走行許可位置と、を算出して送信する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記要救護列車以外の前記列車の前記車上制御装置に、駅または前記列車に乗降する旅客を支障しない前記走行可能経路と、それに対応する前記走行許可位置と、を送信する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記要救護列車の前記車上制御装置に、運転時分を短縮する運転パターンを送信する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記要救護列車以外の前記列車の前記車上制御装置に、運転間隔を平準化する運転パターンを送信する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項5】
所定の経路上を移動する列車を制御する車上制御装置と、
前記列車の在線位置を管理し、前記列車の走行可能経路と前記走行可能経路の最先の位置を示す走行許可位置とを算出する地上制御装置と、を備える列車制御システムにおいて、
前記車上制御装置は、
前記地上制御装置と通信を行う車上通信部と、
前記在線位置を取得する位置取得部と、
前記在線位置を前記地上制御装置に送信し、前記走行許可位置を前記地上制御装置から受信し、前記走行許可位置に応じて前記列車の走行を制御する車上制御部と、を有し、
前記地上制御装置は、
前記車上制御装置と通信を行う地上通信部と、
前記車上制御装置から前記在線位置を受信し、前記走行可能経路と前記走行許可位置とを算出し、前記走行許可位置を前記車上制御装置に送信する地上制御部と、を有し、
前記車上制御装置は、
前記列車内に要救護者が発生した場合、前記列車を要救護列車と認識して、前記地上制御装置に前記要救護者の発生を通知し、
前記地上制御装置は、
前記列車内に要救護者が発生した場合、前記車上制御装置から前記要救護者の発生の通知を受けて、前記列車を前記要救護列車と認識し、
前記要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅まで走行する救護方法と、任意の駅まで前記列車が走行し、その後救急車で前記要救護者を前記医療機関まで搬送する救護方法と、を比較して、早く搬送が完了する救護方法を選択し、
選択した前記救護方法にもとづいて、前記要救護列車の前記車上制御装置に対して、前記走行可能経路と前記走行可能経路に対応する前記走行許可位置とを、再算出し送信する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅に救急車を手配する依頼を、消防指令装置に送信する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記消防指令装置から前記救急車が手配できるかどうかの情報を受信し、
前記要救護者を受け入れることのできる医療機関の最寄駅まで走行せず、救急車での搬送を目的とした任意の駅を選択する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項8】
請求項6に記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記消防指令装置を介して、前記医療機関が前記要救護者の受け入れできるかどうかの情報を急患対応装置から受信し、前記要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅を選択する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、運行管理装置及び、運行管理端末に救急車の手配状況、到着予定時刻を表示する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記要救護列車の前記車上制御装置に対して、前記要救護者の救護に必要な情報を送信し、
前記要救護列車の前記車上制御装置は、前記要救護者の救護方法に関する情報、および前記要救護列車の目的地までの走行情報を旅客に提供する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、前記車上制御装置からの前記要救護者の発生通知が解除された場合、
前記要救護列車および前記要救護列車以外の前記列車の前記車上制御装置に対して、前記要救護者の発生後の設定を解除するように指示する
ことを特徴とする列車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車の運行を効率的に行う方法として、列車に対して次駅に到着する目標の時刻などの運転目標を与えることで、この列車が与えられた目標に従って走行する列車群管理システムの導入が検討されている。このシステムは、ATO(Automatic Train Operation)システムと言われる。
【0003】
ATOシステムは、特定の列車がダイヤ上の時刻通りの走行よりも遅れていると判断した場合に、その列車が運転目標を達するための速度制御を行うシステムである。その際に、運行管理システムから、いつ(時刻)どこに(位置)どのくらいの速さ(速度)で到達するかの目標(時刻、位置、速度)を与えられたとき、目標を与えられた列車は、設定されている目標ランカーブを再作成することで、運転目標を達しようとする。
【0004】
本願発明の背景技術として、下記の特許文献1および2が知られている。特許文献1では、鉄道車両の固定的な軌道回路がなくとも鉄道車両の位置が検出可能であり、鉄道車両が何らかの事故によって停止した場合に、警察や消防、その他の事後処理時に必要な連絡先を、運行管理装置に表示できる装置を用いることで、従来に比べて、地上設備への依存度が小さい鉄道運行ができる技術が開示されている。また、特許文献2では、故障への対処、その他急病人の救援指令をはじめとした各種旅客サ-ビスにおいて、運行管理システムと、指令伝達先であるダイヤ変更管理装置2、マンマシン入力表示装置3、列車在線位置収集装置4、伝達先選定装置5、のそれぞれの通信回線との接続連携により、ダイヤの変更に伴う指令伝達先を迅速に選定できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-186651号公報
【文献】特開平8-142867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、事故状況に応じて運行管理装置に必要な連絡先を表示することはできるが、救護や搬送に適した駅への指示については人為の行動に依存するため、早期段階で急病者を搬送することができない課題がある。また、特許文献2に記載の方法では、特許文献1と同様に緊急時は人為の行動に依存するため、突発的な停車駅の変更に対応できない課題がある。
【0007】
以上の課題を鑑みて、本発明は、走行中の列車で急病者等の要救護者が発生した場合、人為の行動に依存せずに、早期に救護や搬送に適した駅まで列車を移動させ、要救護者を早期に救済できる列車制御システムを実現することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
列車制御システムは、所定の経路上を移動する列車を制御する車上制御装置と、前記列車の在線位置を管理し、前記列車の走行可能経路と前記走行可能経路の最先の位置を示す走行許可位置とを算出する地上制御装置と、を備える列車制御システムにおいて、前記車上制御装置は、前記地上制御装置と通信を行う車上通信部と、前記在線位置を取得する位置取得部と、前記在線位置を前記地上制御装置に送信し、前記走行許可位置を前記地上制御装置から受信し、前記走行許可位置に応じて前記列車の走行を制御する車上制御部と、を有し、前記地上制御装置は、前記車上制御装置と通信を行う地上通信部と、前記車上制御装置から前記在線位置を受信し、前記走行可能経路と前記走行許可位置とを算出し、前記走行許可位置を前記車上制御装置に送信する地上制御部と、を有し、前記車上制御装置は、前記列車内に要救護者が発生した場合、前記列車を要救護列車と認識して、前記地上装置に前記要救護者の発生を通知し、前記地上制御装置は、前記車上制御装置から前記要救護者の発生の通知を受けて、前記列車を前記要救護列車と認識し、前記要救護列車の前記車上制御装置には、前記要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅までの前記走行可能経路である優先経路と、前記優先経路に対応する前記走行許可位置である優先走行許可位置と、を算出して送信し、前記要救護列車以外の前記列車の前記車上制御装置には、前記優先経路を支障しない前記走行可能経路と、それに対応する前記走行許可位置と、を算出して送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行中の列車で急病者等の要救護者が発生した場合、人為の行動に依存せずに、早期に救護や搬送に適した駅まで列車を移動させ、要救護者を早期に救済できる列車制御システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る、列車制御システムを示した図である。
図2】所定停車駅を通過する際の走行可能経路及び走行許可位置との関係図である。
図3】所定通過駅を停車する際の走行可能経路及び走行許可位置との関係図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る、各列車と地上制御装置との送受信を示した図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る、車上制御装置の処理フローチャートの一例である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る、要救護者発生時の地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る、要救護列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る、要救護列車を先行する列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る、要救護列車を後続する列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る、要救護列車を対向する列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る、列車制御システムを示した図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る、要救護者発生時の地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本開示の実施例について説明する。なお、この実施例により本開示が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0012】
また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、列車制御システムを示した図である。
【0014】
列車制御システムは、地上制御装置100と、線路上を走行する列車109に搭載されている車上制御装置110と、から構成されている。
【0015】
地上制御装置100は、地上制御部101、地上通信部102、走行線区データベース103、を備える。地上制御部101は、列車109の走行可能な経路の範囲で、走行可能な位置を示す走行許可位置107を算出し、列車109が停車する到着駅108を指定し、ある駅を出発して別の駅に到着する間を走行する際に、最適な運転パターン指令106を算出する。地上通信部102は、地上制御部101で算出した情報(運転パターン指令106、走行許可位置107、到着駅108)を車上制御部112に送信する。走行線区データベース103は、列車109の在線位置を管理している。
【0016】
車上制御装置110は、車上通信部111と、車上制御部112と、位置取得部113と、を備える。車上通信部111は、地上制御装置100と通信し、地上制御部101で算出した情報を受信し、位置取得部113で取得した列車109の在線位置104や要救護者発生情報105を送信する。車上制御部112は、車上通信部111で受信した情報に基づいて列車109を制御する。詳しくは後述する。
【0017】
列車109は、車上制御装置110以外に、情報表示器114、情報管理装置115、非常ボタン116、放送装置117、を備えている。情報表示器114は、車内の客室に広告や運行情報などを表示している。情報管理装置115は、車両に搭載されている様々な機器と接続し、車上制御装置110からの指令の送受信や、車両に搭載されている機器の故障を表示および記録している。非常ボタン116は、鉄道係員に異常を知らせるボタンである。放送装置117は、放送による旅客案内を行うため装置である。
【0018】
ここで、列車の運行において、走行しているある特定の列車109内で急病人等の要救護者が発生した状況について説明する。走行中の列車内で要救護者が発生した場合、乗客が車両の非常ボタンを取り扱って係員に連絡する方法がある。しかし、非常ボタンが取り扱われた場合は、内容に関わらず列車は停車するため、要救護者が発生した場合には救護に遅れが生じる。
【0019】
また、要救護者が発生した状況において、要救護者を乗せた列車(以下、要救護列車)を最寄駅に停車させた場合でも、山間部などにおいては、近隣に病院や救急車を手配できる消防署などがない駅、また、都市部においても、渋滞により救急車の到着が遅れる駅では、要救護者を病院へ搬送するまでに時間を要する。
【0020】
一方で、要救護列車の到着駅を救護状況に合わせて更新すると、その先行を走行する列車によって、要救護列車に対する進路支障やダイヤの乱れが発生する。さらに、前述した到着駅の更新により、本来停車するはずの駅で旅客が乗降できなくなるため、旅客対応の遅れによるトラブルも発生しやすくなる。この課題を解決する本発明について、以下に概要を説明する。
【0021】
ある特定の列車109内に要救護者が発生すると、同車両に乗車している旅客が取扱う非常ボタン116によって、情報管理装置115を介して、要救護者が車内に発生した情報が車上制御部112に伝達される。車上制御装置110は、この情報を以って、地上制御装置100に要救護者発生情報105を送信する。
【0022】
地上制御部101は、車上制御装置110からの要救護者発生情報105を受信すると、要救護者発生情報105を送信した列車109である要救護列車、その先行を走行する列車、およびその後続を走行する列車、要救護列車に対向して走行する列車、についての情報を認識する。具体的には、それらの列車の在線位置や到着駅、走行許可位置、運転パターンを認識する。(詳細は後述)
【0023】
これにより、要救護列車の先行を走行する列車が、要救護列車の進路を支障しないように運転整理を行うことで、要救護列車が、要救護者を救護、搬送するのに適した駅まで、早期に走行させることができる。
【0024】
また、要救護列車の後続を走行する列車は、要救護列車の先行を走行する列車との運転間隔に応じて、運転時分を調整する運転にすることでダイヤ乱れの収束を行うことができる。他に、要救護列車とそれを先行する列車が通過した所定停車駅に停車することで、列車109に乗車できなかった旅客を救済することができる。
【0025】
更に、要救護列車に対向する列車を、要救護列車の停車駅で一旦停車させた後、要救護列車が通過した所定の停車駅へ停車させることで、要救護列車から降車できなかった旅客を救済することができる。
【0026】
図2は、所定停車駅を通過する際の走行可能経路及び走行許可位置との関係図である。なお、縦方向を速度、横方向を距離とする。
【0027】
まず、通常運転時の各駅停車列車における走行可能経路119および走行許可位置107について説明する。通常運転時に各駅停車をする場合の走行可能経路119は、特定の駅から次に停車する駅108aの位置である走行許可位置107aまでの経路である。線路118上の列車109が各駅108aに停車するたびに、走行許可位置107aが走行許可位置107bに更新され、これと同時に走行可能経路119の情報が走行可能経路120に更新される。走行許可位置107bの更新に合わせて、到着駅108aも到着駅108bに更新される。
【0028】
ここで、列車109内に要救護人が発生した場合は、地上制御部101が各列車109の情報を認識した後、要救護人の早急な救護や搬送を最優先とした列車の運行を行うために、各列車109が走行許可位置107aに到着したかどうかにかかわらず、運転状況に応じた各列車の走行許可位置107aを走行許可位置107bに更新する。
【0029】
具体的には、地上制御装置100が走行線区データベース103を用いて、走行可能経路119で走行できる最長位置である走行許可位置107aを、走行可能経路120で走行できる最長位置である走行許可位置107bに、更新する。これに伴い、到着駅も108aから108bに更新される。
【0030】
地上制御装置100は、更新後の走行許可位置107b、到着駅108b、更新後の運転パターン指令106を、各列車109の車上制御装置110に送信する。この更新情報により、各列車109の走行軌跡は走行軌跡124ではなく、更新後の走行軌跡125になる。
【0031】
なお、図1で前述した車上制御部112では、運転パターン指令106と、到着駅108と走行許可位置107とに基づいて、列車109の運転を制御するが、図2に示す通り、要救護人発生時でも、列車109を制限速度121未満に抑え、かつ走行許可位置107で列車109の速度0km/h(停止)になるように運転を制御している。このため、要救護人の早急な救護や搬送を最優先とした運行においても、列車109の過加速により起こる可能性のある2次災害を防ぐことができる。
【0032】
図3は、所定通過駅を停車する際の走行可能経路及び走行許可位置との関係図である。
【0033】
図3は、本来通過予定であった駅に、走行許可位置107aおよび到着駅108aの更新により、到着駅108b(走行許可位置107b)に停車する列車109の様子が表されている。なお、各列車109の通常運転時から要救護人が発生した場合に更新される、走行許可位置107bおよび到着駅108bについてのフローは、図2で説明したものと同様である。また、以降に説明する各列車109の制御においては、到着駅108と走行許可位置107を一緒に更新する記載としているが、要救護列車が先行列車との運転間隔が空いている状態などによって、要救護者を搬送するための走行に支障がない場合は、到着駅108のみを更新し、走行許可位置107は更新しない設定でもよい。
【0034】
図4は、各列車と地上制御装置との送受信を示した図である。なお列車の進行方向は右方向である。
【0035】
駅Aから駅Bの間で要救護人が発生した列車109aは、地上制御装置100と通信し、在線位置104と要救護者発生情報105を送信している。地上制御装置100はこの情報を受信した上で、列車109aに先行している列車109bの在線位置104を認識し、列車109bに対して、運転パターン指令106、走行許可位置107、到着駅108、の更新情報を送信する。これにより、列車109aは、先行している列車109bが支障することなく、要救護者の早急な救護や搬送を最優先とした運行ができる。
【0036】
図5は、車上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【0037】
ステップS200で、車上制御装置110は、この装置が搭載されている列車の到着駅、その列車の走行許可位置および運転パターンを認識する。ステップS200実行後、ステップS201を実行する。
【0038】
ステップS201で、車上制御装置110は、地上制御装置からの通信を基にして、到着駅と走行許可位置が変更されたか否かを判断する。到着駅と走行許可位置が変更された場合はステップS202を実行し、到着駅と走行許可位置が変更されていない場合はステップS203を実行する。ステップS203は、ステップS204、S205の説明の後で後述する。
【0039】
ステップS202で、車上制御装置110は、地上制御装置からの通信を基にして、運転パターンが変更されたか否かを判断する。運転パターンが変更された場合は、ステップS204を実行し、運転パターンが変更されていない場合は、ステップS205を実行する。
【0040】
ステップS204で、車上制御装置110は、地上制御装置からの通信を基にして、更新前の到着駅と走行許可位置から更新後の到着駅と走行許可位置に切替え、運転パターンも変更する。ステップS204実行後、処理を終了する。
【0041】
ステップS205では、車上制御装置110は、地上制御装置からの通信を基にして、更新前から更新後の到着駅と走行許可位置に切替えるが、運転パターンは変更しない。ステップS205実行後、車上制御装置は処理を終了する。
【0042】
ステップS203で、車上制御装置110は、地上制御装置からの通信を基にして、運転パターンが変更されたか否かを判断する。運転パターンが変更された場合は、ステップS206を実行し、運転パターンが変更されていない場合は、ステップS207を実行する。
【0043】
ステップS206で、車上制御装置110は、地上制御装置からの通信を基にして、更新前の到着駅と走行許可位置は切替えず、運転パターンのみを変更する。ステップS206を実行後、処理を終了する。
【0044】
ステップS207で、車上制御装置110は、地上制御装置からの通信を基にして、更新前の到着駅と走行許可位置は切替えず、運転パターンも変更しない。ステップS207実行後、処理を終了する。
【0045】
以上の処理を用いて、車上制御装置110は、到着駅と走行許可位置、運転パターンを切替えることにより、車上制御装置が搭載されている列車の走行区間や運転時分を、自在に変更することができる。すなわち、当該車上制御装置110が搭載されている列車が要救護列車である場合には、要救護者の搬送先となる医療機関の最寄駅など、停車後の救護活動に最適な駅を到着駅として、当該列車を優先的に走行させるための走行可能経路である優先経路と、その優先経路に対応する走行許可位置である優先走行許可位置とに従って、当該列車の走行を制御することができる。一方、当該車上制御装置110が搭載されている列車が要救護列車でない場合には、要救護列車の優先経路を支障しないような走行可能経路および走行許可位置に従って、当該列車の走行を制御することができる。
【0046】
図6は、要救護者発生時の、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【0047】
ステップS300で、地上制御装置100は、列車から受信した在線位置を認識し、到着駅、走行許可位置、運転パターン、を車上制御装置に送信する。ステップS300実行後、ステップS301を実行する。
【0048】
ステップS301で、地上制御装置100は、要救護者発生情報を受信したか否かを判断する。いずれかの列車に搭載されている車上制御装置110より送信された要救護者発生情報を受信した場合は、当該列車を要救護列車と認識してステップS302を実行し、要救護者発生情報を受信していない場合はステップS303を実行する。ステップS303は、ステップS302からS309の説明のあとで後述する。
【0049】
ステップS302で、地上制御装置100からの情報が、要救護列車に送信する情報か否かを判断する。要救護列車に送信する情報である場合はステップS304を実行し、そうでない場合は、ステップS305を実施する。
【0050】
ステップS304で、地上制御装置100は、要救護列車の車上制御装置に情報を送信する。詳細は図7で説明する。ステップS304実行後、処理を終了する。
【0051】
ステップS305で、地上制御装置100からの情報が、要救護列車よりも先行を走行する列車に送信する情報であるか否かを判断する。先行を走行する列車に送信する情報である場合はステップS306を実行し、そうでない場合は、ステップS307を実施する。
【0052】
ステップS306で、地上制御装置は、要救護列車よりも先行を走行する列車の車上制御装置に情報を送信する。詳細は図8で説明する。ステップS306実行後、処理を終了する。
【0053】
ステップS307で、地上制御装置100からの情報が、要救護列車に後続する列車に送信する情報であるか否かを判断する。後続する列車に送信する情報である場合はステップS308を実行し、そうでない場合は、ステップS309を実施する。
【0054】
ステップS308で、地上制御装置100は、要救護列車に後続する列車の車上制御装置に情報を送信する。詳細は図9で説明する。ステップS308実行後、処理を終了する。
【0055】
ステップS309で、地上制御装置100は、要救護列車に対向して走行する列車の車上制御装置に情報を送信する。詳細は図10で説明する。ステップS309実行後、処理を終了する。
【0056】
ステップS303で、要救護者発生情報がないため、地上制御装置100は、要救護者発生情報に基づいた到着駅と走行許可位置の更新、運転パターンの変更を行わない。ステップS303実行後、処理を終了する。
【0057】
以上の処理フローを用いて、地上制御装置100から各列車の車上制御装置へ情報を送信することで、要救護列車を中心とした各列車への指令を行うことができる。すなわち、要救護列車に搭載されている車上制御装置110には、停車後の救護活動に最適な到着駅まで要救護列車を優先的に走行させるための優先経路および優先走行許可位置を算出し、これらの情報を送信することができる。一方、要救護列車以外の列車に搭載されている車上制御装置110には、要救護列車の優先経路を支障しない、またはダイヤ乱れの収束、旅客の救済を目的とした走行可能経路および走行許可位置を算出し、これらの情報を送信することができる。
【0058】
図7は、要救護者列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【0059】
まず、要救護列車の運行に関して説明する。地上制御装置100は、車上制御装置からの要救護者発生情報を受信すると、要救護列車の在線位置を認識し、地上制御装置100に予め登録されているデータを使用して、搬送先となる病院に近い駅、または救急車の到着が早い駅を選定する。そして、現在、要救護列車の停車予定とする到着駅が、要救護者の救護および搬送に最適であると選定された駅に該当した場合、最速の運転時分で走行する運転パターンが適用されることで、要救護者の救護、搬送までに要する時間を短縮することができる。
【0060】
また、現在、要救護列車の停車予定とする到着駅が、要救護者の救護および搬送に最適であると選定した駅に該当しない場合は、地上制御装置100が車上制御装置に選定した駅まで走行が可能な走行許可位置と到着駅の情報を送信することで、救護および搬送に最適な駅まで、列車による要救護者の搬送を行うことができる。
【0061】
また、列車の在線位置が到着駅に近いなど、運転時分の短縮が見込めない場合は、最速の運転パターンに変更せず、走行してもよい。
【0062】
また、要救護列車は、列車内に設置される情報表示器や放送装置を使用して、旅客へ要救護者が乗車する車両を特定したうえでドクターコールを行い、到着駅に停車するまでに救護が開始できる案内をしてもよい。
【0063】
要救護列車が到着駅に停車し、救護および搬送などを行っている間は、地上制御装置100から要救護列車の車上制御装置に救護を目的とした抑止指令を送信する。この場合、車上制御装置に抑止指令を送信せず、地上制御装置100が抑止解除を認識するまで車上制御装置に出発許可を指令しない方法としてもよい。以上説明した地上制御装置100の処理を、フローチャートに置き換えて説明する。
【0064】
ステップS400で、地上制御装置100は、要救護列車の在線位置を認識する。ステップS400実行後、ステップS401を実行する。
【0065】
ステップS401で、地上制御装置100は、要救護列車の到着駅、走行許可位置の更新が必要であるか否かを判断する。到着駅、走行許可位置の更新が不要である場合はステップS402を実行し、到着駅、走行許可位置の更新が必要である場合はステップS403を実行する。
【0066】
ステップS402で、地上制御装置100は、要救護列車が最速の運転パターンを適用しているか否かを判断する。最速の運転パターンを適用している場合はステップS404を実行し、最速の運転パターンを適用していない場合はステップS405を実行する。
【0067】
ステップS404で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンも変更しない。ステップS404実行後、ステップS408を実行する。
【0068】
ステップS405で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンのみ変更した情報を車上制御装置に送信する。ステップS405実行後、ステップS408を実行する。
【0069】
ステップS403で、地上制御装置100は、要救護列車が最速の運転パターンを適用しているか否かを判断する。目的地まで最速の運転パターンを適用している場合はステップS406を実行し、最速の運転パターンを適用していない場合はステップS407を実行する。
【0070】
ステップS406で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新した情報を車上制御装置に送信し、運転パターンは変更しない。ステップS406実行後、ステップS408を実行する。
【0071】
ステップS407で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新し、運転パターンも変更した情報を車上制御装置に送信する。ステップS407実行後、ステップS408を実行する。
【0072】
ステップS408で、地上制御装置100は、要救護列車において、要救護者の救護、搬送が完了するまで抑止指示を行う。要救護列車において要救護者の救護、搬送が完了したら、地上制御装置100は、要救護列車の抑止指示を解除する。ステップS408実行後、処理を終了する。
【0073】
以上の処理を用いて、地上制御装置100から要救護列車の車上制御装置に対して、到着駅と走行許可位置の更新、及び運転パターンの変更の有無を指令することにより、要救護者の救護および搬送に要する時間を短縮することができる。なお、このとき到着駅や走行許可位置、運転パターンの情報とともに、要救護者の救護に必要な情報を要救護列車の車上制御装置110に対して送信してもよい。このようにすれば、要救護列車の車上制御装置110では、情報表示器114や放送装置117を用いて、要救護者の救護方法に関する情報や、要救護列車の目的地までの走行情報を旅客に提供することができる。
【0074】
図8は、要救護列車を先行する列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【0075】
まず、要救護列車よりも先行を走行する列車の運行に関して説明する。地上制御装置100は、要救護列車よりも先行する列車の在線位置、到着駅、走行許可位置、運転パターンを認識し、要救護列車が到着駅に停車するまでの進路を支障していないか確認する。
【0076】
先行を走行する列車が要救護列車の進路を支障していない場合は、現在の運転を継続することが最良であるため、地上制御装置100は、車上制御装置に対して走行許可位置や到着駅の更新は行わない。但し、要救護列車は、救護作業などの時間分を停車することで先行列車との運転間隔を開けるため、先行する列車の運転パターンを変更し、運転時間を増大させることで、運転間隔を調整してもよい。
【0077】
一方で、先行する列車が、要救護列車の進路を支障する場合は、地上制御装置100が先行列車が停車する到着駅の番線変更や、走行許可位置や到着駅の更新による所定停車駅の通過、運転パターンを変更する。これにより、要救護列車の運転時分の短縮を行い、要救護列車の進路支障を回避することができる。
【0078】
なお、ダイヤの乱れや運転本数の少ない線区など、既に要救護列車と先行する列車の運転間隔が開いている場合は、救護作業によって起こる更なる運転間隔が増大を抑制するため、先行する列車の出発を遅らせてもよい。また、先行する列車の終点となる到着駅を変更し、運転区間の変更によるダイヤ乱れの収束を図ってもよい。また、要救護列車よりも先行する列車への指令は、要救護列車の直前を走行する列車のみならず、複数の先行する列車に対して送信してもよい。
【0079】
要救護列車を支障しない目的で行われる先行する列車への抑止手配は、地上制御装置100から車上制御装置に抑止指令を送信するだけでなく、車上制御装置に抑止指令を送信せず、地上制御装置100が抑止解除を認識するまで車上制御装置に出発許可を指令しない方法としてもよい。以上説明した地上制御装置100の処理を、フローチャートに置き換えて説明する。
【0080】
ステップS500で、地上制御装置100は、要救護列車よりも先行を走行する列車の在線位置と、到着駅、走行許可位置、運転パターンを認識する。ステップS500実行後、ステップS501を実行する。
【0081】
ステップS501で、地上制御装置100は、要救護列車よりも先行を走行する列車が、到着駅、走行許可位置を更新せずに走行した際、要救護列車の走行を支障することなく退避可能であるか否かを判断する。到着駅、走行許可位置の更新をせずに退避が可能である場合はステップS502を実行し、到着駅、走行許可位置の更新が必要である場合はステップS503を実行する。ステップS503は、ステップS504、S505の説明の後で後述する。
【0082】
ステップS502で、地上制御装置100は、要救護列車よりも先行を走行する列車が、運転パターンを変更せずに走行した際、要救護列車の走行を支障することなく退避可能であるか否かを判断する。運転パターンを変更せずに退避が可能である場合はステップS504を実行し、運転パターンの変更が必要である場合はステップS505を実行する。
【0083】
ステップS504で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンも変更しない。ステップS504実行後、ステップS508を実行する。
【0084】
ステップS505で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンのみ変更して車上制御装置に情報を送信する。ステップS506実行後、ステップS508を実行する。
【0085】
ステップS503で、地上制御装置100は、要救護列車よりも先行を走行する列車が、運転パターンを変更せずに走行した際、要救護列車の走行を支障することなく退避可能であるか否かを判断する。運転パターンを変更せずに退避が可能である場合は、ステップS506を実行し、運転パターンの変更が必要である場合は、ステップS507を実行する。
【0086】
ステップS506で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新して、車上制御装置に情報を送信し、運転パターンは変更しない。ステップS506実行後、ステップS508を実行する。
【0087】
ステップS507で、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新し、運転パターンも変更して、車上制御装置に情報を送信する。ステップS507実行後、ステップS508を実行する。
【0088】
ステップS508で、地上制御装置100は、先行する列車が、要救護列車の進路を支障する場合、要救護列車の走行を支障しない状態となるまで、退避可能な駅で先行する列車の抑止を行う。地上制御装置100は、要救護列車が先行する列車よりも先行を走行する状態になった場合、先行する列車に対する抑止を解除する。ステップS508実行後、処理を終了する。
【0089】
以上の処理を用いて、地上制御装置100から要救護列車よりも先行を走行する列車に対して、到着駅と走行許可位置の更新、及び運転パターンの変更の有無を指令することにより、要救護列車の走行を支障することなく、要救護者の救護や搬送までに要する時間の短縮を図ることができる。
【0090】
図9は、要救護列車を後続する列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【0091】
まず、要救護列車に後続する列車の運行に関して説明する。地上制御装置100は、要救護列車に後続する列車の在線位置、到着駅、走行許可位置、運転パターンを認識し、要救護列車が、要救護者の救護および搬送のために走行許可位置と到着駅を更新する。
【0092】
要救護列車が、本来停車するべき到着駅を通過した場合、かつ、要救護列車に後続する列車が、要救護列車の本来停車する到着駅を通過する計画であった場合、地上制御装置100は、要救護列車に後続する列車の到着駅と走行許可位置を変更し、要救護列車の停車するべき到着駅に停車する。このようにすることで、要救護列車が通過した駅から、要救護列車に乗車予定だった旅客を後続の列車に乗せることで救済することができる。
【0093】
なお、要救護列車が、要救護者の救護および搬送のために、走行許可位置と到着駅を更新し、本来停車するべき到着駅を通過した場合、要救護列車に後続する列車が停車を予定している到着駅である場合は、到着駅と走行許可位置を変更せずに、要救護列車が通過した駅から乗車予定だった旅客を救済することができる。
【0094】
また、本来停車するべき到着駅を通過する場合など、駅の停車時間などが短縮されて各列車の運転間隔の開きが大きくなったときは、運転パターンの変更を行い、運転間隔を平準化することで運転間隔が開きすぎることを低減させられる。
【0095】
また、地上制御装置100は、要救護列車と、要救護列車に後続する列車の運転間隔に開きを生じる場合でも、要救護列車が到着駅に停車後、要救護者の救護および搬送までに要する時間を、登録されたデータや過去の実績記録から推定し、要救護列車が救護、搬送を完了して駅を出発する時点で運転間隔が最適化するように運転パターンを変更してもよい。
【0096】
また、要救護列車に後続する列車が停車している場合は、地上制御装置100は、出発許可指令を送信する時間を調整して、運転間隔の最適化を図ってもよい。
【0097】
また、地上制御装置100は、要救護列車に後続する列車への指令は、要救護列車の直後を後続する列車のみならず、複数の後続する列車に対して送信してもよい。複数列車に適切な指令を送信することで、旅客の救済ができる可能性を高め、ダイヤの乱れの収束に要する時間を低減することができる。以上説明した地上制御装置100の処理を、フローチャートに置き換えて説明する。
【0098】
ステップS600で、地上制御装置100は、要救護列車に後続する列車の在線位置と、到着駅、走行許可位置、運転パターンを認識する。ステップS600実行後、ステップS601を実行する。
【0099】
ステップS601で、地上制御装置100は、要救護列車が、本来停車するはずの到着駅を通過したか否かを判断する。要救護列車が本来停車するべき駅を通過した場合は、ステップS602を実行し、要救護列車が本来停車するべき駅に停車した場合は、ステップS603を実行する。
【0100】
ステップS602で、地上制御装置100は、要救護列車が本来停車するべき駅を通過した際、要救護列車に後続する列車のいずれかが、要救護列車が本来停車するべき駅に停車したか否かを判断する。要救護列車に後続する列車のいずれかが、要救護列車が本来停車するべき駅に停車した場合は、ステップS604を実行し、要救護列車に後続する列車のいずれも、要救護列車が本来停車するべき駅に停車していない場合は、ステップS605を実行する。
【0101】
ステップS603で、地上制御装置100は、要救護列車に後続する列車が、その前後を走行する列車との運転間隔がダイヤの設定通りであるか否かを判断する。運転間隔が、ダイヤの設定よりも大きい場合は、運転間隔を調整する必要ありと判断してステップS608を実行し、運転間隔がダイヤの設定通りであれば、運転間隔を調整する必要なしと判断してステップS609を実行する。
【0102】
ステップS604で、通過駅における旅客の救済は完了しているため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンも変更しない。ステップS604実行後、ステップS610を実行する。
【0103】
ステップS605で、要救護列車に後続する列車が、要救護列車の本来停車するべき駅へ停車することで発生する、その後の遅延を考慮し、地上制御装置100は、運転時分を変更する必要があるか判断する。運転時分の変更が必要な場合は、ステップS606を実行し、運転時分の変更が不要な場合は、ステップS607を実行する。
【0104】
ステップS606で、要救護列車の本来停車するべき駅へ停車することで遅れも発生するため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新し、運転パターンも変更して車上制御装置に情報を送信する。このとき、前後を走行する列車との運転間隔が平準化されるように、運転パターンを変更することが好ましい。ステップS606実行後、ステップS610を実行する。
【0105】
ステップS607で、要救護列車の本来停車するべき駅へ停車するが、遅れは発生しないため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新して車上制御装置に情報を送信し、運転パターンは変更しない。ステップS607実行後、ステップS610を実行する。
【0106】
ステップS608で、要救護列車の本来停車するべき駅へ停車する必要はないが、前後を走行する列車との運転間隔を短くする必要があるため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転間隔を平準化するように運転パターンのみ変更して車上制御装置に情報を送信する。ステップS608実行後、ステップS610を実行する。
【0107】
ステップS609で、要救護列車の本来停車するべき駅へ停車する必要はなく、前後を走行する列車との運転間隔も調整が不要であるため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンも変更しない。ステップS609実行後、ステップS610を実行する。
【0108】
ステップS610で、地上制御装置100は、要救護列車の停車時間や、前後を走行する列車との運転間隔を調整するため、出発までの時間を調整する。ステップS610実行後、処理を終了する。
【0109】
以上の処理を用いて、地上制御装置100から要救護列車に後続する列車に対して、到着駅と走行許可位置、運転パターンの変更有無を指令することにより、要救護列車の本来停車する駅、列車を停車させ、乗車予定だった旅客を救済することができる。また、運転時分を調整してダイヤ乱れの収束や、等間隔の運転間隔による旅客の混雑を解消することができる。
【0110】
図10は、要救護列車を対向する列車に対する、地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【0111】
要救護列車に対向する列車の運行に関して説明する。地上制御装置100は、要救護列車に対向する列車の在線位置、到着駅、走行許可位置、運転パターンを認識し、要救護列車に対向する列車が、要救護列車の到着駅、及び通過した本来停車するべき到着駅に停車できる在線位置である場合、最初に要救護列車に対向する列車の走行許可位置と到着駅を更新し、要救護列車の到着駅に停車させる。この時、要救護列車に対向する列車は、要救護列車が本来停車するべき到着駅で降車予定だった旅客を乗車させる。
【0112】
その後、地上制御装置100は、要救護列車に対向する列車の到着駅、走行許可位置を更新し、要救護列車が通過した本来停車するべき到着駅に停車させることで、要救護列車に乗車し、本来停車するべき到着駅で降車予定だった旅客を目的の駅に輸送することができる。
【0113】
この他、要救護列車に対向する列車が、要救護列車の到着駅に停車している場合は、要救護列車が到着駅に停車し、旅客の救済が完了してから出発許可を指令してもよい。
【0114】
一方、要救護列車に対向する列車が、要救護列車の到着駅、及び本来停車するべき到着駅に停車できない在線位置である場合は、現在の運転を継続することが最良であるため、地上制御装置100は、走行許可位置や到着駅の更新は行わず、ダイヤ乱れの発生を防止してもよい。
【0115】
また、地上制御装置100は、要救護列車に対向する複数の列車に運転間隔の開きを生じる場合、ダイヤの乱れの収束を目的とした運転パターンの変更を行ってもよい。
【0116】
また、地上制御装置100は、要救護列車に対向する複数の列車に運転間隔の開きを生じる場合、旅客の救済を目的とした到着駅への停車時間を、登録したデータや過去の実績記録から推定し、運転間隔が最適化するように運転パターンを変更してもよい。
【0117】
また、地上制御装置100は、要救護列車に対向する複数の列車に運転間隔の開きを生じる場合、出発許可指令を送信する時間を調整して、運転間隔の最適化を図ってもよい。以上説明した地上制御装置100の処理を、フローチャートに置き換えて説明する。
【0118】
ステップS700で、地上制御装置100は、要救護列車に対向する列車の在線位置と、到着駅、走行許可位置、運転パターンを認識する。ステップS700実行後、ステップS701を実行する。
【0119】
ステップS701で、地上制御装置100は、要救護列車に対向する列車は、要救護列車とすれ違った(対向した)か否かを判断する。要救護列車とすれ違った場合は、ステップS702を実行し、要救護列車とすれ違っていない場合は、ステップS703を実行する。
【0120】
ステップS702で、要救護列車と対向する列車は、既に要救護列車とすれ違っているため、要救護列車が、本来停車するべき到着駅を通過した場合に、要救護列車に乗車し、通過した駅で降車予定の旅客を救済することはできない。そのため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンも変更しない。ステップS702実行後、処理を終了する。
【0121】
ステップS703で、地上制御装置100は、要救護列車が、本来停車するはずの到着駅を通過したか否かを判断する。要救護列車が本来停車するべき到着駅を通過した場合は、ステップS704を実行し、要救護列車が本来停車するべき到着駅に停車した場合は、ステップS705を実行する。
【0122】
ステップS704で、要救護列車と対向する列車は、要救護列車が本来停車するはずだった到着駅と、要救護列車の更新後の到着駅に停車が可能か否かを判断する。要救護列車が本来停車するはずだった到着駅と、要救護列車の更新後の到着駅に停車が可能な場合は、ステップS706を実行し、いずれか一方の到着駅でも停車が不可能な場合は、ステップS707を実行する。
【0123】
ステップS705で、要救護列車が、本来停車するはずの到着駅を通過しておらず、旅客の救済は不要であることから、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンも変更しない。ステップS705実行後、処理を終了する。
【0124】
ステップS706で、要救護列車に乗車し、本来停車するはずの到着駅で降車できなかったの旅客を救済するため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置の更新及び、運転パターンの変更を行い、要救護列車が停車する更新後の到着駅へ停車させる。これにより、当該対向列車に旅客を乗車させて通過した駅で降車させる対応が可能となる。ステップS706実行後、ステップS708を実行する。
【0125】
ステップS707で、要救護列車が、本来停車するはずの到着駅を通過しているが、要救護列車と対向する列車の到着駅を変更できず、旅客の救済を行えないため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置を更新せず、運転パターンも変更しない。ステップS707実行後、処理を終了する。
【0126】
ステップS708で、要救護列車に乗車し、通過した本来停車するはずの到着駅で降車予定の旅客を救済するため、地上制御装置100は、到着駅と走行許可位置の更新及び、運転パターンの変更を行い、当該対向列車は、要救護列車が本来停車するはずの到着駅へ停車させる。ステップS708実行後、処理を終了する。
【0127】
以上の処理を用いて、地上制御装置100から要救護列車に対向する列車へ、到着駅と走行許可位置の更新、及び運転パターンの変更の有無を指令することにより、要救護列車に乗車し、本来停車するはずの到着駅で降車予定だった旅客を救済することができる。また、地上制御装置100は、要救護者の救済のための目的地まで最速となる運転パターンの選択を行う等によって、要救護列車に対向する列車が、旅客救済を目的に到着駅を変更することで生じるダイヤの乱れの低減が図れる。また、計画上の運転時分より早い運転を継続することで、ダイヤの乱れの収束までに要する時間が縮小される。
【0128】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態に係る、列車制御システムを示した図である。本実施形態に係る列車制御システムは、地上制御装置100Aと、線路上を走行する列車109に搭載されている車上制御装置110Aと、から構成されている。地上制御装置100Aは、地上制御部101A、地上通信部102A、走行線区データベース103Aを備え、車上制御装置110Aは、車上通信部111A、車上制御部112A、位置取得部113Aを備える。これらの各構成要素は、第1の実施形態における地上制御装置100および車上制御装置110の各構成要素とそれぞれ対応している。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明していない点を中心に説明する。
【0129】
第2の実施形態では、第1の実施形態の構成に加え、地上制御装置100Aは、消防指令装置127と、運行管理装置135に接続している。消防指令装置127は、消防署や消防指令本部などに設置し、救急手配を行う装置であり、救急車手配の可否や、最適な救急車手配先の指定、指定箇所到着までに要する時間の算出などを行う消防指令装置制御部128と、地上通信部102Aを介して地上制御装置100Aと通信を行う消防指令装置通信部129、列車109からの要救護者発生情報の有無や要救護者の乗車した列車109の到着駅の予想停車時刻などを示す消防指令装置表示器130とを備える。また、急患対応装置131は、消防指令装置127と接続している。
【0130】
急患対応装置131は、主に急患の受け入れができる病院に設置し、急患の受け入れ可否などを判断する急患対応装置制御部132と、消防指令装置と通信を行う急患対応装置通信部133、急患の搬送状況や、症状などを表示する急患対応装置表示器134と、を備える。
【0131】
運行管理装置135は、列車に指示を発行したり、走行許可位置を設定したりする運行管理装置制御部136、インターネット等のネットワークを介して、地上制御装置100Aと通信を行うための運行管理装置通信部137、各種情報を表示するための運行管理装置表示器138とを備える。
【0132】
更に、運行管理装置135は、運行管理端末139と接続する。運行管理端末139は、運行管理装置135と通信を行う運行管理端末通信部140と、運行管理装置135の持つ各種情報を表示するため運行管理端末表示器141とを備える。
【0133】
地上制御装置100Aは、走行中の列車に要救護者が発生した場合、要救護者発生情報を受信し、要救護者の救護および搬送に最適な駅まで要救護者を列車で搬送する。その際、運行管理装置135が、要救護列車の在線位置を基準に先行、後続、対向する列車に対して、運転計画を調整し、地上制御装置100Aへ調整後の運転計画を送信することで、運転計画の変更規模を最小化することや運転間隔の変更規模の縮小化ができる。
【0134】
運行管理端末139は、各列車の在線位置や列車番号、運転時分の遅れ、行先などの情報以外に、要救護者発生情報の送信や、退避、到着駅の変更理由を運行管理装置135から受信して表示器141で表示することで、運行管理端末139を所有する駅係員や添乗係員は、スムーズに旅客案内をすることができる。なお、運行管理端末139は、係員が所持せずに駅構内の案内表示として使用し、乗客へ運行情報を配信してもよい。
【0135】
また、消防指令装置127は、使用可能な救急車の配置箇所と、各駅まで救急車が手配できるかどうか、各駅から病院までの搬送時間などの情報を、地上制御装置100Aへ送信する。地上制御装置100Aは、消防指令装置127から送信されるこれらの情報を受信することで、救急車が使用可能かつ、救急車による病院までの搬送が短くなる到着駅を都度選択することができる。
【0136】
なお、駅から病院までの搬送時間は、予め登録されたデータを使用する方法や、登録されたデータに時間帯別の交通量を加味して設定してもよい。そのほか、駅から病院までの搬送時間に、GPS機能を使用したナビゲーションシステムを使用してもよい。
【0137】
急患対応装置131は、要救護者発生情報の送信に関わらず、急患の受け入れができる状態であるかを消防指令装置127へ送信する。これにより、消防指令装置127は、急患の受け入れができる病院のみを選択し、駅から急患の受け入れができる病院までの搬送時間を地上制御装置100Aへ送信することで、地上制御装置100Aは、都度、要救護者の救護および搬送に最適な駅を選択することができる。
【0138】
また、地上制御装置100Aでは、消防指令装置127を介して、病院が要救護者の受け入れできるかどうかの情報を急患対応装置131から受信し、要救護者を受け入れられる病院の最寄駅を選択することができる。なお、搬送前に病院の急患受入れ可否を認識できるため、搬送中に病院を変更することで生じる遅れの発生を防止することができる。
【0139】
また、急患対応装置131は、事前に要救護者の処置を準備できるように、運行管理装置135や地上制御装置100A、消防指令装置127から入力した列車や駅、救急車内で救護活動をした際の状況を表示してもよい。
【0140】
一方、急患対応装置131では、予め診療項目などのデータを登録し、救護情報によって受入れ可否を変更する設定としてもよい。これにより、搬送中に搬送先の病院は変更となるが、早期に搬送先の病院を変更することで、搬送先の病院を変更することで生じる時間を低減させることができる。
【0141】
他にも、急患対応装置131は、要救護者発生情報を受信した際や、急患の受け入れ状態を選択後に、急患の受け入れができる病院の選択内容を変更してもよい。
【0142】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る、要救護者発生時の地上制御装置の処理フローチャートの一例である。
【0143】
ステップS800で、地上制御装置100Aは、要救護列車の在線位置と、到着駅、走行許可位置を認識する。ステップS800実行後、ステップS801を実行する。
【0144】
ステップS801で、地上制御装置100Aは、消防指令装置127から事前に受信した情報に基づき、要救護者の受け入れが可能な病院を読み込む。ステップS801実行後、ステップS802を実行する。
【0145】
ステップS802で、地上制御装置100Aは、列車の進行方向に対して、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅があるか否かを判断する。要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅がある場合は、ステップS803を実行し、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅がない場合は、ステップS804を実行する。
【0146】
ステップS803で、地上制御装置100Aは、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅まで走行するには、駅を通過する必要があるか否かを判断する。駅を通過する必要がある場合は、ステップS805を実行し、駅を通過する必要がない場合は、ステップS806を実行する。
【0147】
ステップS804で、地上制御装置100Aは、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅がないため、車上制御装置に対して、救急車の到着が早い駅を更新後の到着駅に設定する。また、地上制御装置100Aは、消防指令装置に対して、要救護列車が停車する到着駅情報を送信し、救急車の手配を行う。ステップS804実行後、処理を終了する。
【0148】
ステップS805で、地上制御装置100Aは、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅まで列車を走行させた場合、救急車で搬送するよりも病院への搬送時間が短くなるか否かを判断する。これにより、要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅まで走行する救護方法と、任意の駅まで列車が走行してその後救急車で要救護者を医療機関まで搬送する救護方法と、を比較する。その結果、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅まで列車を走行させた方が救急車で搬送するよりも病院への搬送時間が短くなる場合は、ステップS807を実行し、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅まで列車を走行させると病院への搬送時間が長くなる場合は、ステップS808を実行する。
【0149】
ステップS806で、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅は、駅の通過が必要ないため、地上制御装置100Aは、車上制御装置へ要救護者情報を発生した列車の進行方向に対して、最寄駅を更新後の到着駅を送信する。また、地上制御装置100Aは、消防指令装置に対して、要救護列車が停車する到着駅情報を送信し、救急車の手配を行う。ステップS806実行後、処理を終了する。
【0150】
ステップS807で、地上制御装置100Aは、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅まで列車を走行させた方が、救急車で搬送するよりも病院への搬送時間が短くなるため、要救護列車に搭載されている車上制御装置110Aに対して、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅を更新後の到着駅に設定し、各列車の走行可能経路および走行許可位置を再計算する。そして、再計算後の走行可能経路および走行許可位置の情報を、要救護列車を含む各列車の車上制御装置110Aに送信する。また、地上制御装置100Aは、消防指令装置に対して、要救護列車が停車する到着駅情報を送信し、救急車の手配を依頼する。ステップS807実行後、処理を終了する。
【0151】
ステップS808で、地上制御装置100Aは、車上制御装置に対して、要救護者の受け入れ可能な病院に近い駅まで列車を走行させず、救急車の到着が早い駅を更新後の到着駅に設定し、各列車の走行可能経路および走行許可位置を再計算する。そして、再計算後の走行可能経路および走行許可位置の情報を、要救護列車を含む各列車の車上制御装置110Aに送信する。また、地上制御装置100Aは、消防指令装置に対して、要救護列車が停車する到着駅情報を送信し、救急車の手配を依頼する。ステップS807実行後、処理を終了する。
【0152】
以上説明したステップS807またはS808の処理を行うことにより、ステップS805で行った比較結果に基づいて、要救護者の搬送がより早く完了する救護方法を選択することができる。また、選択した救護方法に基づいて、要救護列車を含む各列車の車上制御装置110Aに対して、走行可能経路とその走行可能経路に対応する走行許可位置とを再算出し、送信することができる。
【0153】
以上の処理を用いて、地上制御装置100Aは、消防指令装置が送信する救急車手配の可否や、救急車の到着または、病院までの搬送時間、及び急患対応装置が送信する要救護者の受け入れ可否情報を使用し、車上制御装置に要救護者の救護、搬送に適切な更新後の到着駅を送信するとともに、消防指令装置に対して、車上制御装置に送信した更新後の到着駅へ救急車を手配する。これにより、列車で要救護者を搬送することが可能になるだけでなく、救急車で要救護者を搬送する前に受け入れ可能病院を決定することができるため、要救護者を最も早く病院まで搬送することができる。
【0154】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0155】
(1)本発明の列車制御システムは、所定の経路上を移動する列車を制御する車上制御装置と、列車の在線位置を管理し、列車の走行可能経路と走行可能経路の最先の位置を示す走行許可位置とを算出する地上制御装置と、を備える列車制御システムにおいて、車上制御装置は、地上制御装置と通信を行う車上通信部と、在線位置を取得する位置取得部と、在線位置を地上制御装置に送信し、走行許可位置を地上制御装置から受信し、走行許可位置に応じて列車の走行を制御する車上制御部と、を有し、地上制御装置は、車上制御装置と通信を行う地上通信部と、車上制御装置から在線位置を受信し、走行可能経路と走行許可位置とを算出し、走行許可位置を車上制御装置に送信する地上制御部と、を有し、車上制御装置は、列車内に要救護者が発生した場合、列車を要救護列車と認識して、地上装置に要救護者の発生を通知し、地上制御装置は、車上制御装置から要救護者の発生の通知を受けて、列車を要救護列車と認識し、要救護列車の車上制御装置には、要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅までの走行可能経路である優先経路と、優先経路に対応する走行許可位置である優先走行許可位置と、を算出して送信し、要救護列車以外の列車の車上制御装置には、優先経路を支障しない走行可能経路と、それに対応する走行許可位置と、を算出して送信する。このようにしたことで、走行中の列車において、急病者等の要救護者が発生した場合、人為の行動に依存せずに、早期に救護や搬送に適した駅まで列車を移動させ、要救護者を早期に救済できる列車制御システムを実現できる。
【0156】
(2)地上制御装置は、要救護列車以外の列車の車上制御装置に、駅または列車に乗降する旅客を支障しない走行可能経路と、それに対応する走行許可位置と、を送信する。このようにしたことで、旅客輸送に支障のない運行管理が行える。
【0157】
(3)地上制御装置は、要救護列車の車上制御装置に、運転時分を短縮する運転パターンを送信する。このようにしたことで、要救護列車が早く目的地に到達できる。
【0158】
(4)地上制御装置は、要救護列車以外の列車の車上制御装置に、運転間隔を平準化する運転パターンを送信する。このようにしたことで、旅客輸送に支障のない運行管理が行える。
【0159】
(5)本発明の列車制御システムは、所定の経路上を移動する列車を制御する車上制御装置と、列車の在線位置を管理し、列車の走行可能経路と走行可能経路の最先の位置を示す走行許可位置とを算出する地上制御装置と、を備える列車制御システムにおいて、車上制御装置は、地上制御装置と通信を行う車上通信部と、在線位置を取得する位置取得部と、在線位置を地上制御装置に送信し、走行許可位置を地上制御装置から受信し、走行許可位置に応じて列車の走行を制御する車上制御部と、を有し、地上制御装置は、車上制御装置と通信を行う地上通信部と、車上制御装置から在線位置を受信し、走行可能経路と走行許可位置とを算出し、走行許可位置を車上制御装置に送信する地上制御部と、を有し、車上制御装置は、列車内に要救護者が発生した場合、列車を要救護列車と認識して、地上装置に要救護者の発生を通知し、地上制御装置は、列車内に要救護者が発生した場合、車上制御装置から要救護者の発生の通知を受けて、列車を要救護列車と認識し、要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅まで走行する救護方法と、任意の駅まで列車が走行してその後救急車で医療機関まで搬送する救護方法と、を比較して、早く搬送が完了する救護方法を選択し、選択した救護方法にもとづいて、要救護列車の車上制御装置に対して、走行可能経路と走行可能経路に対応する走行許可位置とを、再算出し送信する。このようにしたことで、要救護者を医療機関へ迅速に運ぶことができる。
【0160】
(6)地上制御装置は、要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅に救急車を手配する依頼を、消防指令装置に送信する。このようにしたことで、要救護者を医療機関へ迅速に運ぶことができる。
【0161】
(7)地上制御装置は、消防指令装置から救急車が手配できるかどうかの情報と、医療機関へ搬送するまでの所要時間を受信し、救急車による搬送を選択した方が医療機関へ搬送するまでの所要時間が短いと判断した場合は、要救護者を受け入れることのできる医療機関の最寄駅まで走行せず、救急車での搬送を目的とした任意の駅を選択する。このようにしたことで、要救護者の救護に要する時間を短縮することができる。
【0162】
(8)地上制御装置は、消防指令装置を介して、医療機関が要救護者の受け入れできるかどうかの情報を急患対応装置から受信し、要救護者を受け入れられる医療機関の最寄駅を選択する。このようにしたことで、要救護者の救護に要する時間を短縮することができる。
【0163】
(9)地上制御装置は、運行管理装置及び、運行管理端末に救急車の手配状況、到着予定時刻を表示する。このようにしたことで、要救護者の状況を管理業務に携わる担当者へ迅速に共有することができ、トラブルを事前に回避することができる。
【0164】
(10)地上制御装置は、要救護列車の車上制御装置に対して、要救護者の救護に必要な情報を送信し、要救護列車の車上制御装置は、要救護者の救護方法に関する情報、および要救護列車の目的地までの走行情報を旅客に提供する。このようにしたことで、要救護者の状況を旅客に伝えることができるため、通常運行とは異なる状態によるクレームや混乱の発生等を抑制できる。
【0165】
(11)地上制御装置は、車上制御装置からの要救護者の発生通知が解除された場合、要救護列車および要救護列車以外の列車の車上制御装置に対して、要救護者の発生後の設定を解除するように指示する。このようにしたことで、要救護列車を中心とした運行によるダイヤ乱れを最小限にすることができる。
【0166】
(変形例)
以上、本発明を説明したが、以下のような変形例を適用してもよい。例えば、要救護者がいることを知らせる非常ボタンに代わって、監視カメラ映像やマイクの音声データなどを使用し、要救護者の有無を認識してもよい。また、旅客による119番通報をもとに、外部から地上制御装置100Aが、ある特定の列車で発生した要救護者を認識してもよい。
【0167】
また、要救護者の容体が安定し、要救護者発生情報を解除した場合は、要救護者発生情報に伴って、地上制御装置は、各列車に送信した到着駅、走行許可位置の更新、及び運転パターンの変更指令を、要救護者発生情報を送信する前の指令に復位させてもよい。
【0168】
また、地上制御装置や運行管理装置、消防指令装置は、要救護者の容態や症状、推定される病名などを入力し、急患対応装置に要救護者の詳細が表示できるようにしてもよい。
【0169】
また、急患対応装置は、地上制御装置や運行管理装置、消防指令装置、列車に対して、要救護者の救護方法を送信してもよい。
【0170】
地上制御装置は、列車に要救護者の救護方法を送信し、列車は、情報表示器や放送装置を使用して、旅客に要救護者の救護を支援する情報を発信してもよい。
【0171】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明に開示される技術的思考の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能であり、様々な変形例が含まれる。また、上述した実施の形態は、本発明を分かりやすく説明するために挙げた例であり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上述した実施の形態の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能であり、その態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0172】
100、100A 地上制御装置
101、101A 地上制御部
102、102A 地上通信部
103、103A 走行線区データベース
104 在線位置
105 要救護者発生情報
106 運転パターン指令
107、107a、107b 走行許可位置
108、108a、108b 到着駅
109、109a、109b 列車
110、110A 車上制御装置
111、111A 車上通信部
112、112A 車上制御部
113、113A 位置取得部
114 情報表示器
115 情報管理装置
116 非常ボタン
117 放送装置
118 線路
119 走行可能経路
120 走行許可位置更新後の走行可能経路
121 制限速度
124 走行軌跡
125 到着駅及び走行許可位置更新後の走行軌跡
127 消防指令装置
128 消防指令装置制御部
129 消防指令装置通信部
130 消防指令装置表示器
131 急患対応装置
132 急患対応装置制御部
133 急患対応装置通信部
134 急患対応装置表示器
135 運行管理装置
136 運行管理装置制御部
137 運行管理装置通信部
138 運行管理装置表示器
139 運行管理端末
140 運行管理端末通信部
141 運行管理端末表示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12