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特許7389015高強度ポリフッ化ビニリデン系サイジング強化繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】高強度ポリフッ化ビニリデン系サイジング強化繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/256 20060101AFI20231121BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20231121BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20231121BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20231121BHJP
   D06M 101/36 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
D06M15/256
C08L27/16
D06M15/263
D06M101:40
D06M101:36
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020501126
(86)(22)【出願日】2018-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2018042237
(87)【国際公開番号】W WO2019014662
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/532,554
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/655,481
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・スコット・オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・アミン-サナイェイ
(72)【発明者】
【氏名】サエイド・ゼラファティ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ティー・ゴールドバッハ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531396(JP,A)
【文献】特表2020-526654(JP,A)
【文献】特表2021-501809(JP,A)
【文献】Michael Q.Tran et al., Carbon fibre reinforced poly(vinylidene fluoride): Impact of matrix modification on fibre/polymer adhesion,Composites Science and Technology,2008年, Vol.68,No.7-8,1766-1776
【文献】Liu Peipei et al., Increased interfacial adhesion between carbon fiber and poly(vinylidene fluoride) by an aqueous sizing agent, Surface and Interface Analysis,2016年,Vol.48, No.13,,1410-1417
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/256
C08L 27/16
D06M 15/263
D06M 101/40
D06M 101/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイジングされた強化繊維であって、
(a)炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維よりなる群からの材料を含む強化繊維と、
(b)以下よりなる群から選択される少なくとも1種のサイジング剤:
i.ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ブロックと、低分子量官能性ポリマーを含む非フルオロポリマーブロックとを含む官能化ブロックポリマーであって、前記低分子量官能性ポリマーが1000以下の重合度を有するポリマーであり、前記官能化ブロックポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に結合するもの、及び
ii.フルオロポリマー及び前記フルオロポリマーと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方であって、前記フルオロポリマーと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーが少なくとも1個のアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、フマル酸モノマー、クロトン酸モノマー又はイタコン酸モノマーと、少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーであり、前記フルオロポリマーが官能基を有していないか、又は共重合されたフッ化ビニリデンモノマー及び官能性コモノマーを含むコポリマーであるか、又はPVDFブロックと低分子量官能性ポリマーブロックとを有する官能化ブロックポリマーであり、前記官能性非フッ素化ポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に結合するもの、及び
iii.フッ素化コモノマーと共重合してよいVDFモノマーと、アクリル酸及びメタクリル酸から選択される少なくとも1個の官能性コモノマーとを含む官能性PVDFコポリマーであって、該ポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着するもの
とを含む、サイジングされた強化繊維。
【請求項2】
前記サイジング剤が前記PVDFブロックと前記低分子量官能性ポリマーとを有する官能化ブロックPVDFを含む、請求項1に記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項3】
前記PVDFが共重合官能性親水性モノマーを含む、請求項1又は2に記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項4】
サイジングされた強化繊維であって、
(a)炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維よりなる群から選択される強化繊維と、
(b)少なくとも1個の官能基を含む第1サイジング用ポリマーと、
(c)以下よりなる群から選択される少なくとも1種のサイジング剤:
i.ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ブロックと、低分子量官能性ポリマーを含む非フルオロポリマーブロックとを含む官能化ブロックポリマーであって、前記低分子量官能性ポリマーが1000以下の重合度を有するポリマーであり、前記官能化ブロックポリマーの少なくとも1個の官能基が第1サイジング用ポリマーに結合するもの、
ii.フルオロポリマー及び前記フルオロポリマーと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方であって、前記フルオロポリマーと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーが少なくとも1個のアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、フマル酸モノマー、クロトン酸モノマー又はイタコン酸モノマーと、少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーであり、前記フルオロポリマーが官能基を有していないか、又は共重合されたフッ化ビニリデンモノマー及び官能性コモノマーを含むコポリマーであるか、又はPVDFブロックと低分子量官能性ポリマーブロックとを有する官能化ブロックPVDFであり、前記官能性非フッ素化ポリマーの少なくとも1個の官能基が第1サイジング用ポリマーに結合するもの、
iii.フルオロポリマーブロックと官能性非フルオロポリマーブロックとを有する官能性ブロックコポリマー、及び
iv.VDFモノマーと、任意のフッ素化コモノマーと、アクリル酸及びメタクリル酸から選択される少なくとも1個の官能性コモノマーとを含む官能性PVDFコポリマーであって、該ポリマーの少なくとも1個の官能基が第1サイジング用ポリマーに付着するもの
とを含む、サイジングされた強化繊維。
【請求項5】
前記サイジング剤が、フルオロポリマーブロックと官能性非フルオロポリマーブロックとを有するブロックコポリマーを含む、請求項4に記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項6】
前記低分子量官能性ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリホスホン酸、ポリスルホン酸及びポリマレイン酸;並びに前記酸の部分的に又は完全に中和及び/又はエステル化された形態;並びにそれらの組み合わせ、好ましくはポリアクリル酸及びそれらの部分的に又は完全に中和及び/又はエステル化された形態よりなる群から選択される、請求項1又は2に記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項7】
前記サイジング剤がPVDFポリマー及び前記フルオロポリマーと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記官能性非フッ素化ポリマーが少なくとも1個のアクリル酸又はメタクリル酸モノマーと少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである、請求項1、2又は4に記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項8】
前記少なくとも1種のサイジング剤がフルオロポリマー及び前記フルオロポリマーと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記フルオロポリマーと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーがアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、及びイタコン酸よりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、請求項1、2又は4に記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項9】
前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1~8のいずれかに記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項10】
前記強化繊維が炭素繊維であり、前記第1サイジング用ポリマーがアミド又はエポキシ官能基を有する、請求項4に記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項11】
前記強化繊維がアラミド繊維である、請求項1~8のいずれかに記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項12】
前記強化繊維がガラス繊維である、請求項1~8のいずれかに記載のサイジングされた強化繊維。
【請求項13】
請求項1に記載のサイジングされた炭素繊維の製造方法であって、次の工程:
(1)炭素繊維を活性化して酸素又はアミン含有官能基を形成し;及び
(2)前記炭素繊維を前記少なくとも1種のサイジング剤でサイジングすること
を含み、
前記サイジング剤の少なくとも1個の官能基が前記炭素繊維の酸素又はアミン含有官能基と反応して前記炭素繊維と結合を形成する前記方法。
【請求項14】
請求項4に記載のサイジングされた強化繊維の製造方法であって、少なくとも1個の官能基を含む第1ポリマーでサイジングされた強化繊維を、前記少なくとも1種のサイジング剤でサイジングすることを含み、前記サイジング剤の前記少なくとも1個の官能基が前記第1ポリマーの前記少なくとも1個の官能基と結合を形成する方法。
【請求項15】
前記第1ポリマーがアミド又はエポキシ官能基を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記低分子量官能性ポリマーがポリアクリル酸及びその部分的に又は完全に中和された及び/又はエステル化された形態よりなる群から選択される、請求項6に記載のサイジングされた強化繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維などのサイジングされた強化繊維に関する。サイジングされた強化繊維は、官能化フルオロポリマーの少なくとも一つ、又はフルオロポリマー及び相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方でサイジングされた強化繊維を含む。官能化フルオロポリマー又は相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの官能化により、強化繊維に対する接着性が高まり、機械的性能及び耐薬品性が向上する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの強化繊維は強度が高いため、熱可塑性ポリマーの強化に使用される場合が多い。ポリフッ化ビニリデンやポリビニリデンコポリマーなどのフルオロポリマーは表面張力が低いため、高強度の強化化合物又は熱可塑性複合材料を製造するのが困難である。これらのフルオロポリマーを繊維で効率的に強化するには、繊維とサイジング剤との界面に良好な接着性が必要である。さらに、サイジング剤には、マトリックスから強化材に応力を適切に伝達するために、マトリックス樹脂に化学的に結合することや、マトリックス樹脂と相溶性があることが必要である。さらに、複合材料又は化合物の耐薬品性は、ポリマーマトリックスを強化繊維に付着させる強化繊維のサイジング剤の耐薬品性によって制限される。
【0003】
驚くべきことに、本発明者は、以下で説明する酸又は無水物で官能化されたPVDFなどのフルオロポリマーによって強化繊維をサイジングすることによって、さらに高い強度とさらに耐薬品性の強化化合物及び熱可塑性複合材料を製造できることを見出したが、ただし、これを他の官能基に拡張することもできる。また、以下で説明する官能化PVDFで強化繊維をサイジングすると、さらに高い強度が得られ、さらに耐薬品性のある熱可塑性複合材料が得られ、ほとんどのサイジング剤がフルオロポリマーの耐薬品性を持たず、過酷な環境で分解可能であることも見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本明細書の実施形態は、サイジングされた強化繊維、サイジングされた強化繊維を含む複合材料、ならびにサイジングされた強化繊維及び複合材料の製造方法に関する。
【0005】
本発明の一連の実施形態を以下に説明する。
実施形態1.
サイジングされた強化繊維であって、
(a)炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維よりなる群からの材料を含む強化繊維と、
(b)以下よりなる群から選択される少なくとも1種のサイジング剤:
i.官能化フッ化ビニリデンポリマー(PVDF)であって、低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤を含むポリビニリデンポリマー若しくはコポリマーを含むもの(官能化PVDFの少なくとも1個の官能基は強化繊維に付着する)、又は
ii.フルオロポリマー及びフルオロポリマー相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方であって、該相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着するもの、又は
iii.VDFモノマー、任意のフッ素化コモノマー、及びアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの官能性コモノマーを含む官能性PVDFコポリマーであって、該ポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着するもの
とを含む、サイジングされた強化繊維。
【0006】
実施形態2.
前記サイジング剤が官能化PVDFを含み、前記官能化PVDFがポリフッ化ビニリデンポリマー又はコポリマーと低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤とを含む、実施形態1のサイジングされた強化繊維。
【0007】
実施形態3.
前記低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤が次式:
-(CH2-CH2y-X-R
(式中、yは2~1000の整数であり、Xは、共有結合、イオン結合、アルキル、アルケン、アルキン、置換アルキル、置換アルケン、アリール、エステル、エーテル、ケトン、アミン、アミド及び有機シランよりなる群から選択される連結基であり、Rは官能基である。)
のものである、実施形態1又は2のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0008】
実施形態4.
前記サイジング剤が前記フルオロポリマー及び前記相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記相溶性の官能性非フッ素化ポリマーがメタクリル酸又はアクリル酸などの少なくとも1個の酸含有モノマーと少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである、実施形態1~3のいずれかのサイジングされた補強繊維。さらに、前記アクリルの酸基を無水物基に転化させて様々な種類の官能性を付与することができる。
【0009】
実施形態5.
サイジングされた強化繊維であって、
(a)炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維よりなる群から選択される強化繊維と、
(b)少なくとも1個の官能基を含む第1サイジング用ポリマーと、
(c)以下よりなる群から選択される少なくとも1種の追加サイジング剤:
i.官能化フッ化ビニリデンポリマー(PVDF)であって、該官能化PVDFが低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤を含むポリビニリデンポリマー又はコポリマーであり、該官能化PVDFの少なくとも1個の官能基が第1サイジング用ポリマーに付着又は結合するもの、又は
ii.フルオロポリマー及びフルオロポリマーに相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方であって、該相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの少なくとも1個の官能基が第1サイジング用ポリマーに付着又は結合するもの、
iii.VDFモノマー、任意のフッ素化コモノマー、及びアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの水素含有官能性コモノマーを含む官能性PVDFコポリマーであって、該ポリマーの少なくとも1個の官能基が第1サイジング用ポリマーに付着又は結合するもの
とを含む、サイジングされた強化繊維。
【0010】
実施形態6.
前記強化繊維が炭素繊維であり、前記第1ポリマーが炭素繊維と相溶性である、実施形態5のサイジングされた強化繊維。
【0011】
実施形態7.
前記サイジング剤が官能化PVDFを含み、前記官能化PVDFがポリフッ化ビニリデン及び低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤を含む、実施形態5又は6のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0012】
実施形態8.
前記低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤が、次式:
-(CH2-CH2y-X-R
(式中、yは2から1000の整数であり、Xは、共有結合、イオン結合、アルキル、アルケン、アルキン、置換アルキル、置換アルケン、アリール、エステル、エーテル、ケトン、アミン、アミド、及び有機シランよりなる群から選択される連結基であり、Rは官能基である。)
のものである、実施形態7のサイジングされた強化繊維。
【0013】
実施形態9.
前記サイジング剤がフルオロポリマー及び相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、該相溶性の官能性非フッ素化ポリマーがメタクリル酸又はアクリル酸などの少なくとも1個の酸含有モノマーと少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである、実施形態5~8のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0014】
実施形態10.
サイジングされた炭素繊維の製造方法であって、次の工程:
(1)高温酸化処理又は酸化酸処理その他の化学処理により炭素繊維を活性化して酸素含有官能基を形成して炭素繊維を官能化させ;及び
(2)前記炭素繊維を少なくとも1個の官能基を含む官能化PVDFでサイジングすること(実施形態1~9を参照)
を含み、
前記官能化PVDFの少なくとも1個の官能基が前記官能化PVDFを前記炭素繊維に付着又は結合させることを特徴とする前記方法。
【0015】
実施形態11.
サイジングされた強化繊維の製造方法であって、少なくとも1個の官能基を含む第1ポリマーでサイジングされた強化繊維をサイジングした後に、少なくとも1個の官能基を含む官能化PVDFを添加することを含み、前記官能化PVDFの前記少なくとも1個の官能基が前記第1ポリマーの前記少なくとも1個の官能基と結合を形成する方法。また、前記繊維を両方のポリマーでサイジングすることも可能である。
【0016】
実施形態12.
前記第1ポリマーが前記強化繊維と相溶性である、実施形態11に記載の方法。
【0017】
実施形態13.
前記官能化PVDFでサイジングする前に、前記強化繊維を前記第1ポリマーでサイジングすることをさらに含む、実施形態11及び12のいずれかの方法。
【0018】
実施形態14.
前記強化繊維が炭素繊維である、実施形態1~5又は7~9のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0019】
実施形態15.
前記強化繊維がアラミド繊維である、実施形態1~5又は7~9のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0020】
実施形態16.
前記強化繊維がガラス繊維である、実施形態1~5又は7~9のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0021】
実施形態17.
少なくとも1個の官能基を含む官能化PVDFでガラス繊維をサイジングすることを含む、サイジングされたガラス繊維の製造方法であって、前記ガラス繊維が少なくとも1種のシランカップリング剤に結合した少なくとも1種のシランを含み、前記少なくとも1個の官能基が前記少なくとも1種のシランカップリング剤と反応する方法。
【0022】
実施形態18.
前記少なくとも1種のサイジング剤が、フルオロポリマー及びフルオロポリマーに相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記相溶性の官能性非フッ素化ポリマーが、α,β-不飽和カルボン酸、ヒドロキシル基を含むアクリルモノマー、エポキシ基を含むモノマー、シラノールを含むモノマー、アルデヒドを含むモノマー、アルケニルシアニド、及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、実施形態1~17のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0023】
実施形態19.
前記少なくとも1種のサイジング剤がフルオロポリマー及びフルオロポリマーに相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記相溶性の官能性非フッ素化ポリマーがアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、γ-トリメトキシシランメタクリレート、γ-トリエトキシシランメタクリレート、アクロレイン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、実施形態1~18のいずれかのサイジングされた強化繊維。
【0024】
実施形態20.
前記フルオロポリマーに相溶性の官能性非フッ素化ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びメタクリル酸メチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、実施形態1~19のサイジングされた強化繊維。
【0025】
実施形態21.
前記少なくとも1種の追加サイジング剤がフルオロポリマー及びフルオロポリマーに相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記相溶性の官能性非フッ素化ポリマーが、α,β-不飽和カルボン酸、ヒドロキシル基を含むアクリルモノマー、エポキシ基を含むモノマー、シラノールを含むモノマー、アルデヒドを含むモノマー、シアン化アルケニル、及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、実施形態5のサイジングされた強化繊維。
【0026】
実施形態22.
前記少なくとも1種のサイジング剤が、前記フルオロポリマー及び前記相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記相溶性の官能性非フッ素化ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、γ-トリメトキシシランメタクリレート、γ-トリエトキシシランメタクリレート、アクロレイン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、実施形態5のサイジングされた強化繊維。
【0027】
実施形態23.
サイジングされた強化繊維であって、
(a)炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維よりなる群から選択される強化繊維と、
(b)以下よりなる群から選択される少なくとも1種のサイジング剤:
i.官能化フルオロポリマーであって、該官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着するもの、
ii.フルオロポリマー及び相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方であって、該相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着するもの、
iii.VDFモノマー、任意のフッ素化コモノマー、及びアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの官能性コモノマーを含む官能性PVDFコポリマーであって、該ポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着するもの
とを含む、サイジングされた強化繊維。
【0028】
実施形態24.
前記少なくとも1種のサイジング剤が前記官能化フルオロポリマーを含み、前記官能化フルオロポリマーが官能化フッ化ビニリデンポリマー、官能化エチレンテトラフルオロエチレンポリマー、及び官能化エチレンクロロトリフルオロエチレンポリマーよりなる群から選択される、実施形態23のサイジングされた強化繊維。
【0029】
実施形態25.
前記少なくとも1種のサイジング剤が前記官能性フルオロポリマー及び前記フルオロポリマーに相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの両方を含み、前記官能性フルオロポリマーが官能化フッ化ビニリデンポリマー、官能化エチレンテトラフルオロエチレンポリマー、及び官能化エチレンクロロトリフルオロエチレンポリマーよりなる群から選択される、実施形態23及び24のサイジング強化繊維。
【0030】
実施形態26.
前記フルオロポリマーが官能基を含まない、実施形態23~25のサイジングされた強化繊維。
【0031】
実施形態27.
前記フルオロポリマーが官能化されている、実施形態23~26のサイジングされた強化繊維。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本明細書で引用する全ての参考文献は、参照によりその全体を明示的に援用する。特に明記しない限り、全ての分子量はガス透過クロマトグラフィー(GPC)で決定される重量平均分子量であり、全てのパーセンテージは重量パーセントである。
【0033】
本明細書で使用するときに、用語「コポリマー」とは、2種のコモノマー、3種のコモノマー、及び3種を超える異なるモノマーを有するポリマーを含めて、2種以上の異なるモノマー単位から構成されるポリマーをいう。コポリマーは、ランダム、交互、又はブロックであってもよく、不均一であっても均一であってもよく、線状、分岐、櫛形又は星形ポリマーであってもよく、バッチ、半バッチ又は連続プロセスによって合成されてもよい。
【0034】
本明細書で使用するときに、用語「マトリックス」とは、熱可塑性複合材料を製造するために、サイジングされた強化繊維に添加されるポリマーをいう。マトリックスフルオロポリマーが官能性フルオロポリマーサイジング剤と相溶性がある場合には、マトリックスは分子スケールで共結晶化することができ、そしてサイジング剤とブレンドする。これにより、強化繊維への最適な応力伝達が可能になり、より高い強度と耐薬品性が得られる。複数のポリマーを使用したサイジングでは、1種以上のポリマーサイジング剤のうちの少なくとも1種のポリマーが強化繊維に直接付着又は結合する。1種以上のポリマーサイジング剤のうち他のポリマーは、強化繊維に直接結合された少なくとも1種のポリマーと絡み合うことができる。ただし、全ての場合において、官能性フルオロポリマーは1種以上のポリマーのうちの一方であり、これはマトリックスフルオロポリマーと相溶性があり、強度を向上させる。
【0035】
本明細書で説明するのは、フルオロポリマーでサイジングされた強化繊維を含むサイジングされた強化繊維である。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレン、又はエチレンクロロトリフルオロエチレンである。いくつかの実施形態では、強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミド繊維である。
【0036】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは官能化フルオロポリマーである。官能化フルオロポリマーは、官能化フッ化ビニリデンポリマー、官能化エチレンテトラフルオロエチレンポリマー、又は官能化エチレンクロロトリフルオロエチレンポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着する。いくつかの実施形態では、既存のサイジング剤が強化繊維に結合し、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維の既存のサイジングに結合する。いくつかの実施形態では、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に結合し、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維の既存のサイジング剤に結合する。
【0037】
いくつかの実施形態では、強化繊維は、フルオロポリマー及び官能性アクリルコポリマーなどのフルオロポリマーと相溶性のある官能性非フッ素化ポリマーでサイジングされる。フルオロポリマーは、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーと絡み合う。フルオロポリマーは、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーと織り合わされているものとして説明することができる。いくつかの実施形態では、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着する。
【0038】
いくつかの実施形態において、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、α,β-不飽和カルボン酸、ヒドロキシル基を含むアクリルモノマー、エポキシ基を含むモノマー、シラノールを含むモノマー、アルデヒドを含むモノマー、シアン化アルケニル、無水物、及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む。いくつかの実施形態において、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、少なくとも1個のメタクリル酸又はアクリル酸モノマーと少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである。いくつかの実施形態では、相溶性の官能性非フッ素化コポリマーは、酸基が部分的に無水物官能基に転化される酸コポリマーである。いくつかの実施形態において、相溶性の官能性非フッ素化コポリマーはメタクリル酸グリシジルを含む。
【0039】
強化繊維がフルオロポリマー及び相溶性の官能性非フッ素化ポリマーでサイジングされるいくつかの実施形態では、フルオロポリマーは官能基を含まない。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンポリマー、又はエチレンクロロトリフルオロエチレンポリマーである。
【0040】
強化繊維がフルオロポリマー及び相溶性の官能性非フッ素化ポリマーでサイジングされるいくつかの実施形態では、フルオロポリマーは官能化されている。官能化フルオロポリマーは、官能化フッ化ビニリデンポリマー、官能化エチレンテトラフルオロエチレンポリマー、又は官能化エチレンクロロトリフルオロエチレンポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着する。いくつかの実施形態では、既存のサイジング剤が強化繊維に結合し、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維の既存のサイジング剤に結合する。いくつかの実施形態では、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に結合し、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維の既存のサイジング剤に結合する。
【0041】
いくつかの実施形態では、官能性フルオロポリマーは、酸、無水物、エポキシドなどの官能性モノマーとの共重合によって生成される。場合によっては、官能性フルオロポリマーは、官能性連鎖移動剤又は官能性開始剤を使用して生成される。
【0042】
1種以上のフルオロモノマーと併用される親水性コモノマーとしては、特定の部類の複数のモノマーと、以下の異なる部類の2種以上のモノマーとの混合物をブレンドしてターポリマーを形成した、次の1種以上が挙げられるが、これらに限定されない:
(A)コモノマーとして次式(M1)を有するビニルアルキル酸:
【化1】
(M1)
式中、R1、R2、及びR3は水素又はハロゲン(F、Cl、Br、I)である。
式中、R4は、C1~C16直鎖、分岐、アリール、又はシクロアルキル基、C1~C16フッ素化直鎖、分岐、アリール又はシクロアルキル基、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー又はテトラフルオロエチレンオキシドのオリゴマーである。
【0043】
式中、R5はカルボン酸(C(O)OH)、アルカリ金属カルボン酸塩(COO-+)、カルボン酸アンモニウム塩(COO-NH4 +)、カルボン酸アルキルアンモニウム塩(COO-N(Alk)4 +)、アルコール(OH)、アミド(C(O)NH2)、ジアルキルアミド(C(O)NAlk2)、スルホン酸(S(O)(O)OH)、アルカリ金属スルホン酸塩(S(O)(O)O-+)、スルホン酸アンモニウム塩(S(O)(O)O-NH4 +)、スルホン酸アルキルアンモニウム塩(S(O)(O)O-N(Alk)4 +)。
【0044】
(B)次式M2を有するビニルアルキル酸:
【化2】
(M2)
式中、R1、R2、及びR3は水素又はハロゲン(F、Cl、Br、I)である。
式中、R4及びR5は、別個に、水素、C1~C16直鎖アルキル、分岐アルキル、アリール、又はシクロアルキル基、C1~C16フッ素化直鎖アルキル、分岐アルキル、アリール、又はシクロアルキル基、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー又はテトラフルオロエチレンオキシドのオリゴマー、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+)、アンモニウムイオン(NH4 +)、又はアルキルアンモニウム(NAlk4 +)である。
【0045】
(C)コモノマーとして次式(M3)を有する官能性アクリルアミド:
【化3】
(M3)
式中、R1、R2、及びR3は水素又はハロゲン(F、Cl、Br、I)である。
式中、R4及びR5は、別個に、水素、C1~C16直鎖、分岐、アリール、又はシクロアルキル基、C1~C16フッ素化直鎖、分岐、アリール又はシクロアルキル基、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー又はテトラフルオロエチレンオキシドのオリゴマーである。
式中、R5及びR6は、別個に、カルボン酸(C(O)OH)、アルカリ金属カルボン酸塩(COO-+)、アンモニウムカルボン酸塩(COO-NH4 +)、アルキルアンモニウムカルボン酸塩(COO-N(Alk)4 +)、アルコール(OH)、アミド(C(O)NH2)、ジアルキルアミド(C(O)NAlk2)、スルホン酸(S(O)(O)OH)、アルカリ金属スルホン酸塩(S(O)(O)O-+)、アンモニウムスルホン酸塩(S(O)(O)O-NH4 +)、アルキルアンモニウムスルホン酸塩(S(O)(O)O-N(Alk)4 +)、ケトン(C(O))、又はアセチルアセトネート(C(O)-CH2-C(O))、又はホスホネート(P(O)(OH)2)、ホスホン酸のアルカリ金属又はアンモニウムである。
【0046】
(D)コモノマーM4を含有するカーボネート:
【化4】
(M4)
式中、R1、R2、及びR3は水素又はハロゲン(F、Cl、Br、I)である。
式中、R4は結合、C1~C16直鎖アルキル、分岐アルキル、アリール、又はシクロアルキル基、C1~C16フッ素化直鎖アルキル、分岐アルキル、アリール又はシクロアルキル基である。
ここで、R5は、C1~C16シクロアルキル基、C1~C16フッ素化シクロアルキル基であり、環状構造の一部としてカーボネート基を含む。
【0047】
(E)コモノマーとして次式(M5)を有するビニルエーテル:
【化5】
(M5)
式中、R1、R2、及びR3は水素又はハロゲン(F、Cl、Br、I)である。
式中、R4はC1~C16直鎖、分岐、アリール、又はシクロアルキル基、C1~C16フッ素化直鎖、分岐、アリール又はシクロアルキル基、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー又はテトラフルオロエチレンオキシドのオリゴマーである。
式中、R5はカルボン酸(C(O)OH)、アルカリ金属カルボン酸塩(COO-+)、カルボン酸アンモニウム塩(COO-NH4 +)、カルボン酸アルキルアンモニウム塩(COO-N(Alk)4 +)、アルコール(OH)、アミド(C(O)NH2)、ジアルキルアミド(C(O)NAlk2)、スルホン酸(S(O)(O)OH)、アルカリ金属スルホン酸塩(S(O)(O)O-+)、アンモニウムスルホン酸塩(S(O)(O)O-NH4 +)、アルキルアンモニウムスルホン酸塩(S(O)(O)O-N(Alk)4 +)、ケトン(C(O))、アセチルアセトネート(C(O)-CH2-C(O))である。
【0048】
(F)コモノマーとして次式(M6)を有するアリルオキシ化合物:
【化6】
(M6)
式中、R1、R2、及びR3は水素又はハロゲン(F、Cl、Br、I)である。
式中、R4はC1~C16直鎖、分岐、アリール、又はシクロアルキル基、C1~C16フッ素化直鎖、分岐、アリール又はシクロアルキル基、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー又はテトラフルオロエチレンオキシドのオリゴマーである。
式中、R5はカルボン酸(C(O)OH)、アルカリ金属カルボン酸塩(COO-+)、カルボン酸アンモニウム塩(COO-NH4 +)、カルボン酸アルキルアンモニウム塩(COO-N(Alk)4 +)、アルコール(OH)、アミド(C(O)NH2)、ジアルキルアミド(C(O)NAlk2)、スルホン酸(S(O)(O)OH)、アルカリ金属スルホン酸塩(S(O)(O)O-+)、アンモニウムスルホン酸塩(S(O)(O)O-NH4 +)、アルキルアンモニウムスルホン酸塩(S(O)(O)O-N(Alk)4 +)、ケトン(C(O))、又はアセチルアセトネート(C(O)-CH2-C(O))、又はホスホネート(P(O)(OH)2)、ホスホン酸のアルカリ金属又はアンモニウムである。
【0049】
(G)多親水性基コモノマー
本発明では、2個以上の親水性基を有するモノマーも考えられる。これらのものとしては、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、フマル酸、及びそれらの無水物、アルカリ金属塩、アンモニウム、ならびにそれらのモノ、ジ、トリ、及びテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
親水性コモノマーは、例えば、総モノマーに基づいて約0.01~約15重量%の量で使用できる。好ましくは、総モノマーに基づいて約0.01~約5重量%の量で使用される。様々な実施形態において、親水性モノマーの総量は、総モノマーに基づいて少なくとも0.01、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも1.0又は少なくとも2.0重量%である。他の実施形態では、親水性モノマーの総量は、総モノマーに基づいて13.0、10.0、9.0、7.0、6.0、5.0重量%を超えない。親水性コモノマーは、取り扱いが便利な水溶液などの溶液の状態で使用できる。
【0051】
いくつかの実施形態では、強化繊維は、官能性化学サイジング剤でサイジングされ、少なくとも1個の官能基を含む第1ポリマーを任意に含む。その後、強化繊維は、官能化PVDFでサイジングされる。官能化PVDFの少なくとも1個の官能化基は、そのサイジング時に化学サイジング剤及び/又は第1ポリマーの少なくとも1個の官能基と結合を形成する。
【0052】
いくつかの実施形態では、強化繊維は炭素繊維であり、かつ、活性化されて、官能基、例えば酸素又はアミン含有官能基を形成する。いくつかの実施形態では、酸素含有官能基はC=O基である。炭素繊維は、官能化PVDFでサイジングされる。官能化PVDFフォーム上の官能化基は、炭素繊維上の官能基に付着又は結合する。
【0053】
いくつかの実施形態では、強化繊維はガラス繊維であり、フルオロポリマーは官能化PVDFであり、官能化PVDFの少なくとも1個の官能基がガラス繊維に結合している。いくつかの実施形態では、サイジングされた強化繊維はシランカップリング剤を含む。シランカップリング剤は、ガラス繊維にシラン結合できる基と官能基とを含む。いくつかの実施形態では、シランカップリング剤の官能基はエポキシ基又はアミド基である。シランカップリング剤の官能基は、官能化PVDFに結合できる。いくつかの実施形態では、シランカップリング剤の官能基は第1官能性サイジング用ポリマーに結合し、官能化PVDFは第1官能性サイジング用ポリマーに結合する。
【0054】
官能性連鎖移動剤
官能化フルオロポリマーは、長いフルオロポリマー又はフルオロコポリマー鎖、及び1種以上の短い官能性末端ブロックを有するブロックコポリマーとすることができる。官能性末端ブロックは、官能性連鎖移動剤から形成される。
【0055】
いくつかの実施形態の官能性連鎖移動剤は、低分子量官能性ポリマーである。低分子量とは、1,000以下、好ましくは800未満の重合度を有するポリマーを意味する。好ましい実施形態では、GPCにより測定されるポリマー連鎖移動剤の重量平均分子量が20,000g/モル未満、より好ましくは15,000g/モル、より好ましくは10,000g/モル未満である。一実施形態では、重量平均分子量は5,000g/モル未満である。低分子量官能性連鎖移動剤は、2個以上のモノマー単位、好ましくは少なくとも3個以上のモノマー単位を有するポリマー又はオリゴマーである。いくつかの実施形態では、低分子量官能性連鎖移動剤は、10個以上のモノマー単位を有するポリマー又はオリゴマーである。
【0056】
いくつかの実施形態で使用される官能性ポリマー連鎖移動剤とは、低分子量ポリマー連鎖移動剤が1個以上の異なる官能基を含むことを意味する。連鎖移動剤は、式(CH2-CH-(X)-R)yを有し、ここで、yは2~1000の整数であり、Xは連結基であり、連結基としては、共有結合又はイオン結合、アルキル、アルケン、アルキン、置換アルキル、置換アルケン、アリール、エステル、エーテル、ケトン、アミン、アミド、アミド、有機シランが挙げられるがこれらに限定されず、Rは官能基である。
【0057】
官能基(R)は官能性を与え、単独のモノマー又はコモノマーとして、官能性モノマーの重合によって与えることができる。官能基は、重合前及び/又は重合反応中に官能性連鎖移動剤を重合媒体に導入することによって付加できる。有用な官能基としては、カルボキシル、ヒドロキシル、シロキサン、エーテル、エステル、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸、アミド及びエポキシ基、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態は、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリホスホン酸、ポリスルホン酸、及びポリマレイン酸(これらに限定されない)を含めた官能性連鎖移動剤を含む。酸基の場合には、官能基は部分的又は完全に中和及び/又はエステル化されていてもよい。ポリアクリル酸連鎖移動剤が好ましい実施形態である。
【0058】
低分子量官能性連鎖移動剤は、モノマーの総量に基づいて0.1~25重量%で重合反応中に存在する。好ましくは、そのレベルは0.25~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%である。一実施形態では、連鎖移動剤のレベルは、2重量%超~10重量%、さらには2.2~8重量%である。官能化連鎖移動剤のレベルが低すぎる場合には、優位な性能上の利点を提供するためにPVDFに付与される十分な官能性がなく、望ましい分子量を得るのに十分ではない。
【0059】
低分子量のポリマー官能性連鎖移動剤は成長中のポリマー鎖の活性中心と反応し、CHのHの抽出と、ポリマー鎖に対する残留低分子量官能基の結合とを生じさせる。このポリマー連鎖移動剤は、PVDF骨格の配列分布を乱さないという点で、コモノマーとは異なる。残留低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤の存在は、NMRにより官能化PVDFで検出できる。
【0060】
いくつかの実施形態の低分子量官能性連鎖移動剤の他に、PVDFの重合に典型的に使用される他の連鎖移動剤も、所望の分子量を与えるレベルで添加してもよい。
【0061】
一般に、低分子量連鎖移動剤の一部又は全てを初期装入物に添加して、極性溶媒に不溶でゲルとして存在する極めて分子量の高いポリマーの形成を防止する。次いで、連鎖移動剤の残部を連続的に、又は重合の残部を通して少量ずつ添加することができる。
【0062】
官能性連鎖移動剤は、フルオロポリマーブロックと官能性非フルオロポリマー末端ブロックとを有するブロックコポリマーを生成する。別の実施形態では、親水性官能基は、フルオロポリマー骨格の一部としての低レベルの官能性モノマーとして、また親水性非フルオロポリマー末端ブロックとしても存在する。驚くべきことに、このブロックコポリマーは、フルオロポリマーブロックの親水性モノマーレベルが非常に低くても相乗効果を示す。フルオロポリマーブロック中の親水性コモノマーは、例えば、総モノマーに基づいて約0.0001~約10重量%の量で使用できる。フルオロポリマーブロックの総モノマーに基づいて500ppm未満、250ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、さらには10ppmまでの親水性モノマーレベルにより、接着性と他の特性との相乗効果が向上する。
【0063】
フルオロポリマーブロックの合成中の親水性モノマーは、ポリマー骨格にランダムに分布しているか、ホモポリマーを形成しているか、又は未反応かのいずれかである。一実施形態では、親水性モノマーは(メタ)アクリルモノマーであり、非フルオロポリマーブロックは(メタ)アクリルモノマーのポリマーである。この場合、フルオロポリマーブロックにランダムに分布する(メタ)アクリルモノマー単位の総量は、ブロックコポリマー全体の(メタ)アクリルモノマー単位全体の40モル%未満、好ましくは30モル%未満、好ましくは25モル%未満、さらには20モル%未満、さらには15モル%未満、さらには10モル%未満である。ブロックコポリマーのフルオロポリマーブロックにランダムに分布した(メタ)アクリルモノマー単位のモル%は、フルオロポリマーブロック内の(メタ)アクリルモノマーのモル%が低く、非フルオロポリマーブロックに取り入れられる(メタ)アクリルモノマー単位のレベルが高いため、低い。フルオロポリマーブロック中の(メタ)アクリルモノマーは、非フルオロポリマーブロック中の(メタ)アクリルモノマーと同一のものでも異なるものであってもよい。好ましい一実施形態では、フルオロポリマーブロックと非フルオロポリマーブロックの両方にアクリル酸モノマー単位が存在する。
【0064】
ブロックコポリマーの官能性フルオロポリマーブロックは高分子量を有し、ここで、式-CF2H及び/又はOSO3H及び/又はOHを有する末端基がフッ化ビニリデン(VDF)反復単位1Kg当たり30ミリモル未満、好ましくはVDF1Kg当たり25ミリモル未満、より好ましくはVDF1Kg当たり20ミリモル未満の量で存在する。
【0065】
好ましい実施形態では、連鎖移動剤を界面活性剤と併用して、成長しつつあるポリマー鎖を安定化させる。界面活性剤は、フルオロポリマーを安定化することが知られている任意の界面活性剤とすることができ、1種以上のフッ素化界面活性剤、1種以上の非フッ素化界面活性剤、又はフッ素化界面活性剤と非フッ素化界面活性剤との混合物とすることができる。好ましい実施形態では、本出願人が以前の特許出願で示したように、重合はフッ素化界面活性剤なしで実施される。有用な非フッ素化界面活性剤は、50~250nmの範囲の粒径を有する安定なエマルジョンを生成できる。
【0066】
一実施形態では、官能性フルオロポリマーは、フルオロポリマーブロックと官能性非フルオロポリマー末端ブロックとを有するブロックコポリマーである。別の実施形態では、親水性官能基が、フルオロポリマー骨格の一部としての低レベルの官能性モノマーとして存在し、また親水性非フルオロポリマー末端ブロックとしても存在する。驚くべきことに、このブロックコポリマーは、フルオロポリマーブロックの親水性モノマーレベルが非常に低い場合であっても相乗効果を示す。フルオロポリマーブロック中の親水性コモノマーは、例えば、総モノマーに基づいて約0.0001~約10重量%の量で使用できる。フルオロポリマーブロックの総モノマーに基づいて500ppm未満、250ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、さらには10ppmまでの親水性モノマーレベルにより、接着性と他の特性との相乗効果が向上する。
【0067】
フルオロポリマーブロックの合成中の親水性モノマーは、ポリマー骨格にランダムに分布しているか、ホモポリマーを形成しているか、又は未反応かのいずれかである。一実施形態では、親水性モノマーは(メタ)アクリルモノマーであり、非フルオロポリマーブロックは(メタ)アクリルモノマーのポリマーである。この場合、フルオロポリマーブロックにランダムに分布する(メタ)アクリルモノマー単位の総量は、ブロックコポリマー全体の(メタ)アクリルモノマー単位全体の40モル%未満、好ましくは30モル%未満、好ましくは25モル%未満、さらには20モル%未満、さらには15モル%未満、さらには10モル%未満である。ブロックコポリマーのフルオロポリマーブロックにランダムに分布した(メタ)アクリルモノマー単位のモル%は、フルオロポリマーブロック内の(メタ)アクリルモノマーのモルパーセントが低く、非フルオロポリマーブロックに取り入れられる(メタ)アクリルモノマー単位のレベルが高いため、低い。フルオロポリマーブロック中の(メタ)アクリルモノマーは、非フルオロポリマーブロック中の(メタ)アクリルモノマーと同一のものであっても異なるものであってもよい。好ましい一実施形態では、フルオロポリマーブロックと非フルオロポリマーブロックの両方にアクリル酸モノマー単位が存在する。
【0068】
ブロックコポリマーの官能性フルオロポリマーブロックは高分子量を有し、ここで、式-CF2H及び/又はOSO3H及び/又はOHを有する末端基がフッ化ビニリデン(VDF)反復単位1Kg当たり30ミリモル未満、好ましくはVDF1Kg当たり25ミリモル未満、より好ましくはVDF1Kg当たり20ミリモル未満の量で存在する。
【0069】
フッ化ビニリデンポリマー
本明細書で使用するときに、用語「フッ化ビニリデンポリマー」又は「PVDF系ポリマー」には、その意味の範囲内で標準的に高い分子量のホモポリマー及びコポリマー(2種類以上のモノマー単位を意味する)の両方が含まれる。このようなコポリマーとしては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、及びフッ化ビニリデンと容易に共重合するであろう他のモノマー(これらに限定されない)などの少なくとも1種のコモノマーと共重合してよいフッ化ビニリデンを少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも65モル%含有するものが挙げられる。
【0070】
特に好ましいコポリマーは、英国特許第827,308号に開示されているように、少なくとも約70~99モル%までのフッ化ビニリデン、及びそれに対応して1~30%のテトラフルオロエチレンから構成されるもの;約70~99%のフッ化ビニリデン及び1~30%のヘキサフルオロプロペン(例えば、米国特許第6,586,547号を参照)から構成されるもの;約70~99モル%のフッ化ビニリデン及び1~30モル%のトリフルオロエチレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び/又は3,3,3-トリフルオロプロペンから構成されるものである。米国特許第2,968,649号に記載されているようなフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペン及びテトラフルオロエチレンとのターポリマーも好ましい。
【0071】
重合プロセス
いくつかの実施形態の官能化PVDFを製造する好ましい方法に関して、まず、脱イオン水と、少なくとも1種の界面活性剤(典型的には、モノマーの量に基づいて0.01~2.0重量%未満のレベル)、好ましくは非フッ素化界面活性剤と、低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤の一部とを反応器に導入し、続いて脱酸素化を行う。反応器が所望の温度に達した後に、フッ化ビニリデン(VDF)モノマーと任意のコモノマーとを反応器に添加して、所定の圧力に到達させる。次に、フリーラジカル開始剤を適切な流量で反応器に導入して適切な重合速度を維持する。反応が開始したら、又は反応の開始と同時に、残りの低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤とフッ化ビニリデン(VDF)モノマーとを所望の比率で反応器に連続的に供給する。所望のポリマー固形分レベルに達した後、モノマーの供給を停止することができるが、ただし、反応器内の残留モノマーを消費するために開始剤の投入を維持することが好ましい。その後、開始剤の投入を停止し、反応器の圧力を下げ、反応器を冷却することができる。未反応モノマーを排出し、官能化PVDFを排出口その他の収集手段で収集できる。次に、オーブン乾燥、噴霧乾燥、せん断又は酸凝固などの標準的な分離技術を使用して官能化PVDFを分離し、その後乾燥などを行い、又は、官能化PVDFを後の用途のためにエマルジョンの状態で保持する。
【0072】
ポリフッ化ビニリデン及び官能性アクリルコポリマー
いくつかの実施形態では、サイジングされた強化繊維は、強化繊維とポリビニリデンポリマーブレンドとを含み、このポリビニリデンポリマーブレンドは、ポリフッ化ビニリデンと、少なくとも1個のメタクリル酸又はアクリル酸モノマー及び少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーの官能性アクリルコポリマーなどの、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーとを含有する。相溶性の非フッ素化ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンと相溶性がある。ポリフッ化ビニリデンと相溶性の官能性非フッ素化ポリマーを溶融ブレンドしてポリビニリデンポリマーブレンドを形成し、その後サイジング剤として添加する。
【0073】
いくつかの実施形態において、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、α,β-不飽和カルボン酸、ヒドロキシル基を含むアクリルモノマー、エポキシ基を含むモノマー、シラノールを含むモノマー、アルデヒドを含むモノマー、シアン化アルケニル、及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、α,β-不飽和カルボン酸を含むモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、及びイタコン酸よりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである。
【0075】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル基を含むアクリルモノマーは、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、及びジエチレングリコールエチルエーテルアクリレートよりなる群から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態において、エポキシ基を含むモノマーは、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルよりなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、シラノールを含むモノマーは、γ-トリメトキシシランメタクリレート及びγ-トリエトキシシランメタクリレートよりなる群から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、アルデヒドを含むモノマーはアクロレインである。
【0079】
いくつかの実施形態において、シアン化アルケニルモノマーは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルよりなる群から選択される。
【0080】
いくつかの実施形態において、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、γ-トリメトキシシランメタクリレート、γ-トリエトキシシランメタクリレート、アクロレイン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びメタクリル酸アセトアセトキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、少なくとも1個のメタクリル酸モノマーと少なくとも1個のメチルメタクリレートモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである。いくつかの実施形態では、相溶性の官能性非フッ素化コポリマーは、酸基が部分的に無水物官能性に転化される酸コポリマーである。
【0082】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは官能基を含まない。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンポリマー、又はエチレンクロロトリフルオロエチレンポリマーである。
【0083】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは官能化されている。官能化フルオロポリマーは、官能化フッ化ビニリデンポリマー、官能化エチレンテトラフルオロエチレンポリマー、又は官能化エチレンクロロトリフルオロエチレンポリマーとすることができる。いくつかの実施形態では、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に結合している。いくつかの実施形態では、既存のサイジング剤が強化繊維に結合し、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維の既存のサイジング剤に結合する。いくつかの実施形態では、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維に付着し、官能化フルオロポリマーの少なくとも1個の官能基が強化繊維の既存のサイジング剤に付着する。
【0084】
いくつかの実施形態では、ポリビニリデンポリマーブレンドは、約1重量%~約20重量%の官能性アクリルコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリビニリデンポリマーブレンドは、5重量%未満の官能性アクリルコポリマーを含む。理論によって限定されるものではないが、過剰の官能性アクリルコポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマー又はポリフッ化ビニリデンを含むコポリマーと官能性アクリルコポリマーとを含むサイジングされた強化繊維の耐薬品性を低下させる。
【0085】
官能性アクリルコポリマーは、約1.5重量%~約15重量%のメタクリル酸モノマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、官能性アクリルコポリマーは、約5重量%~約15重量%のメタクリル酸モノマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、官能性アクリルコポリマーは、約6重量%~約11重量%のメタクリル酸モノマーを含むことができる。
【0086】
上記のように、いくつかの実施形態では、ポリビニリデンポリマーブレンドはPVDFと官能性アクリルコポリマーとを含む。メタクリル酸モノマーの総含有量は、ポリビニリデンポリマーブレンド全体の一部として、又は官能性アクリルコポリマーの一部として説明することができる。特に明記しない限り、メタクリル酸モノマーはポリビニリデンポリマーブレンドの一部として説明される。
【0087】
ポリビニリデンポリマーブレンドは、約50重量ppm~約30,000重量ppmのメタクリル酸モノマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリビニリデンポリマーブレンドは、約500重量ppm~約10,000重量ppmのメタクリル酸モノマーを含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、ポリビニリデンポリマーブレンドは、メタクリル酸モノマーを重量基準で少なくとも約100ppm、約200ppm、約300ppm、約400ppm、約500ppm、約600ppm、約700ppm、約800ppm、約900ppm、約1000、約2000ppm、約3000ppm、約4000ppm、又は約5000ppmで含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、ポリビニリデンポリマーブレンドは、メタクリル酸モノマーを重量基準で多くとも約10,000ppm、約5000ppm、約2800ppm、約2600ppm、約2500ppm、約2400ppm、約2300ppm、約2200ppm、約2100ppm、約2000ppm、約1900ppm、約1800ppm、約1700ppm、約1600ppm、約1500ppm、約1400ppm、約1300ppm、約1200ppm、約1100ppm、又は約1000ppmで含むことができる。
【0090】
官能化PVDF
官能化PVDFは、少なくとも1個の官能基を含むPVDFである。官能化PVDFは、上記ポリビニリデンポリマー又はコポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、官能化PVDFは、ポリフッ化ビニリデン及び低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤を含むポリビニリデンポリマー又はコポリマーである。いくつかの実施形態では、他の官能化PVDFも考えられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、他の官能化PVDFとしては、特定の官能基がグラフトされたPVDFが挙げられる。有用な官能基としては、カルボキシル、ヒドロキシル、シロキサン、エーテル、エステル、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸、アミド、及びエポキシ基、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、無水マレイン酸グラフトは存在しない。
【0092】
いくつかの実施形態では、他の官能化PVDFは、純粋なPVDFと、PVDF骨格にグラフトされた官能基を有するPVDFとをブレンドすることによって製造できる。
【0093】
いくつかの実施形態では、上記官能化物は、酸、エポキシド、無水物などの官能性コモノマーと共重合されたPVDFである。
【0094】
官能化PVDFでサイジングされた炭素繊維
いくつかの実施形態では、強化繊維は炭素である。いくつかの実施形態において、サイジングされた炭素繊維は、官能化PVDFを約0.15重量%~約8重量%含むことができる。いくつかの実施形態では、サイジングされた炭素繊維は、官能化PVDFを約0.15重量%~約3重量%含むことができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、サイジングされた炭素繊維は、官能化PVDFを重量基準で少なくとも約0.15%、約0.25%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.2%、又は約1.3%含むことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、サイジングされた炭素繊維は、官能化PVDFを重量基準で多くとも約8%、約6%、約4%、約3%、約2.8%、約2.6%、約2.5%、約2.4%、約2.3%、約2.2%、約2.1%、約2%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、又は約1%含むことができる。
【0097】
サイジングされた活性炭繊維
いくつかの実施形態では、サイジングされた炭素繊維は、その表面に官能基を有する炭素繊維を活性化して、ポリマーマトリックス又は他のサイジング剤への付着を強化することによって製造される。
【0098】
活性化炭素繊維は、当該技術分野で知られている任意の方法によって官能化PVDFでサイジングすることができる。サイジング剤を、水分散液、溶媒溶液、微粉末塗布、又は当該技術分野で知られている他の技術から塗布することができる。理論によって限定されるものではないが、官能化PVDFは、活性炭繊維表面に付着又は結合を形成する。
【0099】
官能化された相溶性の非フッ素化ポリマーによる炭素繊維のサイジング
いくつかの実施形態では、炭素繊維は、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーでサイジングされている。上記のように、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーはフルオロポリマーと相溶性がある。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーはPVDFポリマー又はコポリマーである。いくつかの実施形態では、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、少なくとも1個のメタクリル酸モノマーと少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである。
【0100】
いくつかの実施形態において、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、メタクリル酸メチルとのメタクリル酸コポリマーである。これは、PVDF及びPVDFコポリマーと相溶性があるため、PVDFマトリックスに添加すると、分子スケールでの相溶性、すなわちアクリルの官能性により、繊維とPVDF又はPVDFコポリマーマトリックスとの間で良好な界面接着強度が促進され、複合材料の特性が向上する。
【0101】
市販の「サイジングされた炭素繊維」の例
非フッ素化サイジング剤でサイジングされたいくつかの炭素繊維が市販されている(表1及び表2を参照)。これらのサイジング剤はいずれも、PVDFとの相溶性又は適切性を示すものではない。これは、官能性フルオロポリマーのサイジング剤が現時点では利用できないことを示す。
【0102】
三菱レイヨン社製炭素繊維:PYROFIL(商標)切断繊維は、三菱レイヨン株式会社から入手可能である。標準的な小型トウPYROFIL(商標)切断繊維は、ウレタン、ポリアミド、エポキシ、水、又は水分散性ポリアミドよりなる群から選択されるサイズ剤を含むことができる。これらのいずれも、PVDF又はフルオロポリマーと相溶性がない。
【0103】
【表1】
【0104】
日本ポリマー産業社製炭素繊維:切断炭素繊維は、日本ポリマー産業株式会社からも入手できる。炭素繊維は、ウレタン、エポキシ及びウレタン、エポキシ、オレフィン、アクリル、又はアクリル及びウレタンからなるサイジング剤でサイジングされている。サイジング剤は、様々な濃度で存在することができる。日本ポリマー産業株式会社製のサイジング剤は、1.5重量%、3重量%、又は5重量%のサイジング剤であることができる。これらのいずれも、PVDF又はフルオロポリマーとは相溶性がない。
【0105】
【表2】
*開発中
【0106】
別のサイジング剤でサイジングされた炭素繊維のサイジング
官能基を含む別のポリマーでサイジングされた炭素繊維を官能化PVDFでさらにサイジングすることができる。
例えば、アミドでサイジングされた炭素繊維は、無水物官能性PVDFなどの官能性PVDFでさらにサイジングできる。
あるいは、エポキシサイジング剤でサイジングされた炭素繊維は、酸官能化PVDF又はヒドロキシル官能化PVDFなどの官能性PVDFでさらにサイジングできる。
【0107】
炭素繊維のサイジング
炭素繊維をサイジングするためのプロセスは、当該技術分野において知られている任意の方法とすることができる。一例では、炭素繊維をリール上に伸ばす。炭素繊維を巻き取り、1セットのローラー上で走行させる。サイジング剤を上記のレベルで水性分散液、溶媒への溶液などの状態で塗布することができる。それぞれの場合において、繊維に「サイジング剤」を完全に被覆して、繊維上に多少の連続被膜を形成するようにする。表面の溶媒又は水を乾燥除去し、温度を1種以上のサイジング用ポリマーの融点を超える点にまで上昇させることができる。サイジング剤は、「1種」を超えるポリマー材料を含有することができる。
【0108】
用途
いくつかの実施形態のサイジングされた炭素繊維には、複数の最終用途がある。当業者であれば、以下の非限定的な例に基づいて、サイジングされた炭素繊維の多くの用途を想起することができる。用途としては、化学プラント、石油探査、自動車、及び輸送用の産業における耐薬品性用途及び高温用途が挙げられる。
【0109】
官能化PVDFでサイジングされたアラミド繊維
いくつかの実施形態では、強化繊維はアラミドである。いくつかの実施形態では、サイジングされたアラミド繊維は、官能化PVDFを約0.15重量%~約8重量%含むことができる。いくつかの実施形態では、サイジングされたアラミド繊維は、官能化PVDFを約0.15重量%~約3重量%含むことができる。
いくつかの実施形態では、サイジングされたアラミド繊維は、官能化PVDFを重量基準で少なくとも約0.15%、約0.25%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、又は約1重量%含むことができる。
いくつかの実施形態では、サイジングされたアラミド繊維は、官能化PVDFを重量基準で多くとも約8%、約6%、約4%、約3%、約2.8%、約2.6%、約2.5%、約2.4%、約2.3%、約2.2%、約2.1%、約2%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、又は約1%含むことができる。
【0110】
官能化相溶性非フッ素化ポリマーによるアラミド繊維のサイジング
いくつかの実施形態では、アラミド繊維は、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーでサイジングされる。上記のように、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーはフルオロポリマーと相溶性がある。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーはPVDFポリマー又はコポリマーである。いくつかの実施形態では、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、少なくとも1個のメタクリル酸モノマーと少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである。
いくつかの実施形態では、アラミド繊維は、上記官能性フルオロポリマーでサイジングされる。PVDFマトリックスに添加すると、相溶性により繊維とPVDF又はPVDFコポリマーマトリックスと間の良好な界面接着強度が促進され、複合材料の特性が向上する。
本明細書で説明するように、官能性フルオロポリマーでさらにサイジングされる。
【0111】
別のサイジング剤でのアラミド繊維のサイジング
官能基を含む別のポリマーでサイジングされたアラミド繊維は、官能化PVDFでさらにサイジングできる。
例えば、アミドでサイジングされたアラミド繊維を、無水マレイン酸又は無水物官能性PVDFなどの官能性PVDFでさらにサイジングすることができる。
【0112】
アラミド繊維のサイジング
アラミド繊維をサイジングするためのプロセスは、当該技術分野において知られている任意の方法とすることができる。一例では、アラミド繊維をリール上に伸ばす。アラミド繊維を巻き取り、1セットのローラー上で走行させる。サイジング剤を上記のレベルで水性分散液、溶媒への溶液などの状態で塗布することができる。それぞれの場合において、繊維に「サイジング剤」を完全に被覆して、繊維上に多少の連続被膜を形成するようにする。表面の溶媒又は水を乾燥除去し、温度を1種以上のサイジング用ポリマーの融点を超える点にまで上昇させることができる。サイジング剤は、「1種」を超えるポリマー材料を含有することができる。
【0113】
用途
いくつかの実施形態のサイジングされたアラミド繊維には、複数の最終用途がある。当業者であれば、以下の非限定的な例に基づいて、サイジングされたアラミド繊維の多くの用途を想起することができる。用途としては、化学プラント、石油探査、自動車、及び輸送用の産業における耐薬品性用途及び高温用途が挙げられる。
【0114】
官能化PVDFでサイジングされたガラス繊維
いくつかの実施形態では、強化繊維はガラス繊維である。いくつかの実施形態では、サイジングされたガラス繊維は、官能化PVDFを約0.15重量%~約8重量%含むことができる。いくつかの実施形態では、サイジングされたガラス繊維は、官能化PVDFを約0.15重量%~約2重量%含むことができる。
いくつかの実施形態では、サイジングされたガラス繊維は、官能化PVDFを重量基準で少なくとも約0.15%、約0.25%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、又は約1重量%含むことができる。
いくつかの実施形態では、サイジングされたガラス繊維は、官能化PVDFを重量基準で多くとも約8%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2.8%、約2.6%、約2.5%、約2.4%、約2.3%、約2.2%、約2.1%、約2%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、又は約1%含むことができる。
【0115】
シランカップリング剤を使用したガラス繊維のサイジング
いくつかの実施形態では、サイジングされたガラス繊維は、少なくとも1種のシランカップリング剤を含む。ガラス繊維は、官能化PVDFでサイジングされ、官能化PVDF上の少なくとも1個の官能基がガラス繊維に結合した少なくとも1種のシランカップリング剤と結合を形成する。
いくつかの実施形態において、シランカップリング剤は、シラン基が周知の化学作用によりガラス表面に結合し、アミノ基がこの実施形態に記載されるようなサイジング用ポリマー又はマトリックスポリマーと結合するために利用可能なアミノシランカップリング剤である。いくつかの実施形態において、シランはエポキシシランであり、この場合、シラン基はガラス表面と反応し、エポキシ基はこの実施形態に記載のサイジング用ポリマー又はマトリックスポリマーと反応することができる。
シラン処理されたガラス繊維は、当該技術分野で知られている任意の方法により、官能化PVDFでサイジングすることができる。理論によって限定されるものではないが、官能化PVDFの少なくとも1個の官能基がガラス繊維に結合したシランカップリング剤と反応するため、官能化PVDFはガラス繊維と結合を形成する。
【0116】
官能化相溶性非フッ素化ポリマーによるガラス繊維のサイジング
いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、フルオロポリマーとフルオロポリマー相溶性の官能性非フッ素化ポリマーとのブレンドでサイジングされる。上記のように、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーはフルオロポリマーと相溶性がある。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーはPVDFポリマー又はコポリマーである。いくつかの実施形態では、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、少なくとも1個のメタクリル酸モノマーと少なくとも1個のメタクリル酸メチルモノマーとを含む官能性アクリルコポリマーである。
いくつかの実施形態において、相溶性の官能性非フッ素化ポリマーは、メタクリル酸メチルとのメタクリル酸コポリマーである。このものはPVDF及びPVDFコポリマーと相溶性があるため、PVDFマトリックスに添加すると、繊維とPVDF又はPVDFコポリマーマトリックスとの間の良好な界面接着強度が促進され、複合材料の特性が向上する。
【0117】
別のサイジング剤でのガラス繊維のサイジング
官能基を含む別のポリマーでサイジングされたガラス繊維は、官能化PVDFでさらにサイジングできる。
例えば、アミドでサイジングされたガラス繊維を、無水マレイン酸又は無水物官能性PVDFなどの官能性PVDFでさらにサイジングすることができる。
【0118】
ガラス繊維のサイジング
ガラス繊維をサイジングするためのプロセスは、当該技術分野において知られている任意の方法とすることができる。一例では、ガラス繊維をリール上に伸ばす。ガラス繊維を巻き取り、1セットのローラー上で走行させる。サイジング剤を上記のレベルで水性分散液、溶媒への溶液などの状態で塗布することができる。それぞれの場合において、繊維に「サイジング剤」を完全に被覆して、繊維上に多少の連続被膜を形成するようにする。表面の溶媒又は水を乾燥除去し、温度を1種以上のサイジング用ポリマーの融点を超える点にまで上昇させることができる。サイジング剤は、「1種」を超えるポリマー材料を含有することができる。
ガラスのサイジングは、ポリマーサイジング剤の水性分散液又は溶液を使用してガラス繊維製造プロセス中に行うことができる。
【0119】
用途
いくつかの実施形態のサイジングされたガラス繊維には、複数の最終用途がある。当業者であれば、以下の非限定的な例に基づいて、サイジングされたガラス繊維の多くの用途を想起することができる。用途としては、化学プラント、石油探査、自動車、及び輸送用の産業における耐薬品性用途及び高温用途が挙げられる。
【0120】
複合材料
いくつかの実施形態は、本願において全体にわたって検討されているサイジングされた強化繊維のいずれかとマトリックス材料とを含む複合材料を含む。
【0121】
官能化PVDFの製造例
いくつかの実施形態では、官能性ポリビニリデンポリマーを次のプロセスにより製造する。まず、脱イオン水と、少なくとも1種の界面活性剤(典型的には、モノマーの量に基づいて0.01~2.0重量%未満のレベル)、好ましくは非フッ素化界面活性剤と、低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤の一部とを反応器に導入し、続いて脱酸素化を行う。反応器が所望の温度に達した後に、フッ化ビニリデン(VDF)モノマーと任意のコモノマーとを反応器に添加して、所定の圧力に到達させる。次に、フリーラジカル開始剤を適切な流量で反応器に導入して適切な重合速度を維持する。反応が開始したら、又は反応の開始と同時に、残りの低分子量官能性ポリマー連鎖移動剤とフッ化ビニリデン(VDF)モノマーとを所望の比率で反応器に連続的に供給する。所望のポリマー固形分レベルに達した後、モノマーの供給を停止することができるが、ただし、反応器内の残留モノマーを消費するために開始剤の投入を維持することが好ましい。その後、開始剤の投入を停止し、反応器の圧力を下げ、反応器を冷却することができる。未反応モノマーを排出し、ポリビニリデンポリマーを排出口その他の収集手段で収集できる。次に、オーブン乾燥、噴霧乾燥、せん断又は酸凝固などの標準的な分離技術を使用して官能化PVDFを分離し、その後乾燥などを行い、又は、官能化PVDFを後の用途のためにエマルジョンの状態で保持する。
【0122】
特性
理論によって限定されるものではないが、官能性連鎖移動剤の残基は、官能化PVDF鎖の末端に官能性を集中させ、他の官能化方法に見られるよりも官能性を妨げないものと考えられる。形成された構造は、1個以上のPVDFブロックと1個以上のポリマー連鎖移動剤残基のブロックを有するブロックコポリマーの外観を呈することができる。
いくつかの実施形態の官能化PVDFは、水及びフッ化ビニリデン樹脂の耐薬品性と共に、官能基の特性(接着性、架橋性)の両方を有すると考えられる。
【実施例
【0123】
実施例
以下の例は、例示的なものであり限定ではないと見なすべきである。
【0124】
例A:
80ガロンのステンレス鋼製反応器に、脱イオン水345lbs、Mnが約3,000g/molのブロックポリ(プロピレングリコール)・ポリ(エチレングリコール)非イオン性界面活性剤66グラム、及び連鎖移動剤としての、部分中和低分子量水溶性アクリル酸ポリマーの10%水溶液(水性GPCによる重量平均分子量2,000)5.5lbsを装入した。排気後、23rpmで撹拌を開始し、反応器を加熱した。反応器の温度が100℃の設定値に達した後、フッ化ビニリデン(VDF)の充填を開始した。次に、約35ポンドのVDFを反応器に投入することによって、反応器の圧力を650psiに上昇させた。反応器の圧力を安定化させた後、1.0重量%の過硫酸カリウムと1.0重量%の酢酸ナトリウムとからなる開始剤溶液4.5lbsを反応器に添加して重合を開始させた。開始剤溶液をさらに添加する速度を調整して、約60ポンド/時間の最終VDF重合速度を得て維持した。約165ポンドのVDFが11.0lbsの部分中和低分子量(2,000g/mol)水溶性アクリル酸ポリマー10%水溶液と共に反応塊に導入されるまで、VDF重合を続けた。開始剤の供給を維持しながら、VDFの供給を停止し、反応温度でバッチを反応させて圧力を下げて残留モノマーを消費させた。25分後、攪拌を停止し、反応器を冷却し、通気し、ラテックスを回収した。回収されたラテックス中の固形物を重量測定法により決定したところ約30重量%であり、NMP中の5%での溶液粘度を10秒-1のせん断速度で測定したところ250cpであった。樹脂の融解温度及び融解熱をASTM方法D-3418に準拠して測定したところ160℃であった。
【0125】
炭素繊維強化PVDF実験
炭素繊維のサイジング:
この特許出願のために官能性PVDFで作製されたサイジングされた炭素繊維の全ての例を完全に同一の方法で行った。Hexcel AS4 12,000トウの非サイジング炭素繊維を、対照例を除く全てのケースで使用した。「官能性PVDF」をDMAC(ジメチルアセトアミド)に溶解して、5%固形分の溶液を作製した。ラボスケール単位を設定して、この炭素繊維を連続的にサイジングし、その際、トウを被覆し、次に過剰分を絞り出し、溶媒を除去し、サイジングされた繊維をリールに巻き取った。
【0126】
湿潤トレイによって5%固形分溶液を保持し、AS4トウを、ローラーを使用してこの溶液に通し、表面下に保持した。次に、繊維トウを2個の非移動ソフトローラー間に通過させて、過剰の溶液を絞り出し、炭素繊維の周りのサイジング溶液の良好な湿潤を促進させた。次に、「湿式サイジングされた」トウを、大量の空気流と共に90秒の滞留時間で150℃に加熱したホットチャンバーに通して、全ての溶媒を除去し、「乾式」サイジング炭素繊維トウとした。サイジングの前後に1メートルの炭素繊維を秤量することによってサイジングの量を算出した。これらのサイジング炭素トウを、Fibre Glast社製のファイバーグラス用に設計された空気駆動チョッパーを使用して、長さ6mmに切断した。
【0127】
サイジングされた炭素繊維の例及び対照の炭素繊維を以下の表3に記載する。これらの試験に使用された市販の制御炭素繊維サイジング剤は、帝人株式会社製であった。等級はHT C702であり、これは高温の熱可塑性プラスチック用にサイジングされた炭素繊維である。この繊維を6mmの長さに切断したものが市販されている。
【0128】
以下の例1は、他の箇所で説明したように、2500ppmのアクリル酸を重合に取り入れて、230℃、100秒-1で14kポアズの溶融粘度を有する官能性PVDFホモポリマーを生成するホモポリマーである。
【0129】
以下の例2は、重合に2500ppmのアクリル酸を取り入れ、また他の箇所で説明した2500ppmの酸官能性連鎖移動剤も添加して14kポアズの溶融粘度を有する官能性PVDFホモポリマーを生成するホモポリマーである。
【0130】
実施例3
ここで使用したサイジング剤は、90%の6kポアズ粘度ホモポリマー及び10%のメタクリル酸メチルとメタクリル酸のコポリマーからなり、MAA含有量は10%であった。このMMA-MAAコポリマーはPVDFと相溶性がある。
【0131】
【表3】
【0132】
化合物を、65グラムの化合物を保持するブラベンダーミキシングボウルを使用して作製した。まず、マトリックス樹脂をミキシングボウル内において230℃、45rpmで(1分間)溶融した。特に明記しない限り、これらの実験のマトリックス樹脂について、100秒-1で約6kポアズの溶融粘度のPVDFホモポリマーを使用した。事前に秤量した量の炭素繊維(15重量%)をボウルに加え、さらに2分間混合を続けた。材料をミキシングボウルから手作業で取り出し、60グラムを圧縮型に入れた。この材料をカーバーホットプレスにおいて1000psiで1分間、5000psiで2分間、10,000psiで1分間、230℃で3インチ×5インチ×1/8インチの容積式型内において230℃で圧縮成形した。型を取り外し、冷却プレスにおいて10,000psiの圧力下で冷却した。次いで、プラックを、湿式ダイヤモンドグリットタイルソーを使用して切断して0.5インチ×5インチのフレックスバーにした。このバーを乾燥させ、50%RH、73°Fの制御温度ラボで一晩状態調整してから、ASTM D790に準拠して0.05インチ/分でInstron 4201曲げ強度構成で試験した。曲げ強度を表4に記録する。
【0133】
【表4】
【0134】
結果を表4に示す。驚くべきことに、全ての場合において、官能性PVDFサイジング剤を利用することで、強化PVDF炭素繊維複合材料の曲げ強度が改善する。
【0135】
二軸押出試験:
追加のサイジング炭素繊維を、表3の例1において上記したのと同じ手順で作製した。複合配合物を、15重量%の炭素繊維と共に二軸配合した。上記のHT C702炭素繊維を使用して対照配合物も製造した。
【0136】
例5及び別の「対照」例については、230℃で30mmZSK二軸押出機において配合し、重量減少側スタッファーを使用して切断炭素繊維を添加して、6kポイズの粘度のPVDFホモポリマー中の15重量%切断炭素繊維を製造した。押し出されたストランドをペレット化し、220℃を使用してASTM D790フレックスバーに射出成形した。フレックスバーを73°F、50%RHで24時間にわたって平衡化し、上記のように曲げ強度を試験した。
【0137】
結果を以下の表5に示す。これらは、官能性PVDFサイジングで見られる強度の向上を、市販のサイジング剤と比較して示している(例5)。
【0138】
【表5】
【0139】
試験方法
融点Tmを、DSCで測定した融解吸熱のピーク温度に割り当てる。結晶含有量を測定するDSCスキャンを、Intercooler II付属品を備えたPerkin Elmer 7 DSC装置を使用してASTM D 451-97に準拠して実施する。この装置にはドライボックスが装備されており、このドライボックスを介してN2パージを行う。9~10mgの試験片を使用し、アルミニウム鍋で圧着する。DSCの実施を、3工程のサイクルで実行する。このサイクルを-125℃で開始し、その後10℃/分で210℃まで10分保持する。次に、サンプルを10℃/分の速度で-125℃まで冷却し、10℃/分の速度で210℃まで加熱する。
【0140】
溶融粘度試験方法
溶融粘度を、Dyniscoキャピラリー溶融粘度計で232℃、見掛けせん断速度100秒-1で測定する。使用するダイはXYZ直径、XZYのL/Dを有する(ブライアン・ダグラスより)。
【0141】
曲げ強度試験を、ASTM D790を使用して実施する。