(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データ
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20231121BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20231121BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20231121BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231121BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20231121BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20231121BHJP
B29L 31/58 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
C08J9/00 Z
B29C64/106
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y80/00
B29C67/20 Z
B29L31:58
(21)【出願番号】P 2020523159
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2019022421
(87)【国際公開番号】W WO2019235546
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018108122
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018226836
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】板橋 大一
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069570(JP,A)
【文献】特開2009-029064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0305093(US,A1)
【文献】特開2007-261002(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130685(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0071979(US,A1)
【文献】国際公開第2017/015489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
B29C 67/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
A47C 27/00-27/22
A47C 31/00-31/12
B29L 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
から構成されており、
前記骨部は、その少なくとも一部分において、断面積を一定に保ちつつ延在する骨一定部を有しており、
前記骨部のいずれか一方側の端の断面積A1に対する、前記骨一定部の断面積A0の比A0/A1は、
0.15≦A0/A1<1.0、又は、1.0<A0/A1≦2.0
を満たし、
前記多孔質構造体の各セル孔の直径が5mm以上30mm未満である、多孔質構造体。
【請求項2】
前記骨一定部の断面形状は、円形又は多角形である、請求項1に記載の多孔質構造体。
【請求項3】
前記骨一定部は、直線状に延在している、請求項1又は2に記載の多孔質構造体。
【請求項4】
前記骨格部は、前記セル孔である第1セル孔を内部に区画する第1セル区画部を有しており、
前記第1セル区画部は、それぞれ環状に構成された複数の第1環状部を有しており、
前記複数の第1環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する第1仮想面どうしが交差しないように互いに連結されており、
前記第1セル孔は、前記複数の第1環状部と、前記複数の第1環状部がそれぞれ区画する複数の前記第1仮想面とによって、区画されており、
前記第1環状部は、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項5】
前記骨格部は、前記セル孔である第2セル孔を内部に区画する第2セル区画部を有しており、
前記第2セル区画部は、それぞれ環状に構成された複数の第2環状部を有しており、
前記複数の第2環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する第2仮想面どうしが交差するように互いに連結されており、
前記第2セル孔は、少なくとも前記複数の第2環状部のそれぞれの内周側縁部によって、区画されており、
前記第2環状部は、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項6】
前記多孔質構造体は、シートパッドに用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項7】
前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項8】
3Dプリンタを用いて、請求項1~6のいずれか一項に記載の多孔質構造体を製造する、多孔質構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データに関する。
本願は、2018年6月5日に日本に出願された特願2018-108122号に基づく優先権と、2018年12月3日に日本に出願された特願2018-226836号に基づく優先権と、を主張するものであり、それらの内容の全文をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クッション性のある多孔質構造体(例えば、ウレタンフォーム)は、例えば金型成形等において、化学反応により発泡させる工程を経て、製造されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように化学反応により発泡させる工程を経て多孔質構造体を製造する場合は、製造に時間や手間が掛かるという問題や、所期したとおりの構成が得られないおそれがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の発明者は、3Dプリンタを用いて多孔質構造体を製造できるようにすれば、製造が簡単になり、かつ、所期したとおりの構成が得られることに、新たに着目し、本発明をするに至った。
【0006】
本発明は、3Dプリンタによってクッション性のある多孔質構造体を容易に製造することが可能な、多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多孔質構造体は、
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
から構成されており、
前記骨部は、その少なくとも一部分において、断面積を一定に保ちつつ延在する骨一定部を有しており、
前記骨部のいずれか一方側の端の断面積A1に対する、前記骨一定部の断面積A0の比A0/A1は、
0.15≦A0/A1≦2.0
を満たす。
【0008】
本発明の多孔質構造体の製造方法は、
3Dプリンタを用いて、上述の多孔質構造体を製造するものである。
【0009】
本発明の3D造形用データは、
3Dプリンタの造形部が造形を行う際に前記3Dプリンタの制御部に読み込まれる3D造形用データであって、
前記制御部が、前記造形部に、上述の多孔質構造体を、造形させるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3Dプリンタによってクッション性のある多孔質構造体を容易に製造することが可能な、多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多孔質構造体の一部を、
図2~
図4のC矢印の方向から観たときの様子を示す、平面図である。
【
図2】
図1の多孔質構造体を、
図1、
図3、
図4のA矢印の方向から観たときの様子を示す、側面図である。
【
図3】
図1の多孔質構造体を、
図1、
図2、
図4のD矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。
【
図4】
図1の多孔質構造体を、
図2、
図3のB矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。
【
図5】
図1の多孔質構造体の単位部を、
図1、
図2、
図4のD矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。
【
図6】
図5の多孔質構造体の単位部の一部を拡大して観たときの様子を示す、斜視図である。
【
図7】
図5の多孔質構造体の単位部を、
図5のE矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。
【
図8】
図7と同じ図面であり、一部の符号や破線・鎖線のみが
図7と異なる図面である。
【
図9】
図5の多孔質構造体の単位部を、
図5のF矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。
【
図10】
図9と同じ図面であり、一部の符号や破線・鎖線のみが
図9と異なる図面である。
【
図11】
図11(a)は、外力が加わっていない状態における
図1の多孔質構造体の骨部を示す斜視図であり、
図11(b)は、外力が加わっている状態における
図11(a)の骨部を示す斜視図である。
【
図12】
図8に対応する図面であり、本発明の第1変形例に係る多孔質構造体を説明するための図面である。
【
図13】
図8に対応する図面であり、本発明の第2変形例に係る多孔質構造体を説明するための図面である。
【
図14】
図8に対応する図面であり、本発明の第3変形例に係る多孔質構造体を説明するための図面である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る多孔質構造体を備えた、車両用シートパッドを示す斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る、多孔質構造体の製造方法を説明するための図面である。
【
図17】本発明の一変形例に係る、多孔質構造体の製造方法を説明するための図面 である。
【
図18】
図18(a)は、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体からなる車両用シートパッドのクッションパッド部の一例を、
図15のG-G線に沿う断面により示す、断面図であり、
図18(b)は、図本発明の一実施形態に係る多孔質構造体からなる車両用シートパッドのバックパッド部の一例を、
図15のH-H線に沿う断面により示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多孔質構造体、及び、本発明の多孔質構造体の製造方法又は3D造形用データを用いて製造される多孔質構造体は、クッション材に用いられるのが好適であり、着座用のクッション材(シートパッド等)に用いられるのがより好適であり、車両用シートパッドに用いられるのがさらに好適である。
【0013】
以下、本発明に係る多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3D造形用データの実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
また、
図1~
図10、
図12~
図14では、多孔質構造体の向きを理解しやすくするために、それぞれの例の多孔質構造体に固定されたXYZ直交座標系の向きを表示している。
【0014】
まず、
図1~
図11を参照しながら、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体について説明する。
図1~
図4では、本実施形態に係る多孔質構造体1のうち、直方体に切断された一部分を、それぞれ別々の角度から観ている。
図1は、多孔質構造体1の当該部分における、ある1つの面を平面視しており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、
図2~
図4のC矢印の方向(-X方向)から観ている。
図2は、多孔質構造体1の当該部分における、
図1での右側の面を平面視しており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、
図1、
図3、
図4のA矢印の方向(-Y方向)から観ている。
図3は、多孔質構造体1の当該部分における、
図1と同じ面を斜め上から観ており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、
図1、
図2、
図4のD矢印の方向から観ている。
図4は、多孔質構造体1の当該部分における、
図1及び
図3とは逆側の面を斜め上から観ており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、
図2、
図3のB矢印の方向から観ている。
なお、以下では、説明の便宜のため、
図12~
図14にそれぞれ示す第1~第3変形例や、図示しない変形例についても、併せて説明する。
【0015】
本明細書で説明する各例の多孔質構造体1は、3Dプリンタによって造形されたものである。3Dプリンタを用いて多孔質構造体を製造することにより、従来のように化学反応により発泡させる工程を経る場合に比べ、製造が簡単になり、かつ、所期したとおりの構成が得られる。また、多孔質構造体のセル構造の設計自由度を大幅に広げることができるので、より幅広い要求特性に対応することも可能になる。また、今後の3Dプリンタの技術進歩により、将来的に、3Dプリンタによる製造を、より短時間かつ低コストで、実現できるようになることが期待できる。
多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。より具体的に、多孔質構造体1は、多孔質構造体1の骨格をなす骨格部2と、骨格部2によって区画された多数のセル孔Cと、を備えている。骨格部2は、多孔質構造体1の全体にわたって存在しており、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。本例において、多孔質構造体1のうち、骨格部2以外の部分は、空隙である。
ここで、「可撓性のある樹脂」とは、外力が加わると変形することができる樹脂を指しており、例えば、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適であり、軟質ポリウレタンがさらに好適である。ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムが挙げられる。多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されているので、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であり、クッション性を有することができる。
なお、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂から構成されている場合のほうが、ゴムから構成されている場合よりも、好適である。
【0016】
各図の例の多孔質構造体1は、それぞれ立方体をなす複数の単位部Uどうしが、X、Y、Zの各方向に一体に連なった構成を有している。
図1~
図10の例では、多孔質構造体1のうち、
図1~
図4に示す部分は、Z方向に3個、Y方向に3個、X方向に2個が配列された、計18個の単位部Uからなる。各図の例では、多孔質構造体1を構成する各単位部Uの構成、寸法、向きが、それぞれ同じである。便宜のため、
図1~
図4では、1つの単位部Uのみを、他の単位部Uよりも濃いグレー色で着色しているとともに、
図1及び
図2ではさらに、濃いグレー色で着色した単位部Uの外縁を、点線で示している。
図1~
図10の例のように、多孔質構造体1の各単位部Uの外縁(外輪郭)が立方体をなす場合、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることが可能になる。
なお、単位部Uの外縁(外輪郭)は、立方体以外の直方体、あるいは、その他の形状をなしていてもよい。また、多孔質構造体1を構成する各単位部Uの構成及び/又は寸法は、完全に同一でなくてもよく、個々に少しずつ異なっていてもよい。多孔質構造体1の各単位部Uの外縁(外輪郭)が立方体以外の直方体をなす場合、多孔質構造体1の機能として、意図的な異方性を得ることが可能になる。例えば、多孔質構造体1を車両用のシートパッドに適用する場合、各単位部Uの外縁(外輪郭)を立方体以外の直方体とすることで、例えばZ方向(人が座る方向)には柔らかくして乗り心地を向上させること可能になる。
【0017】
図5~
図10は、
図1~
図4の多孔質構造体1における1つ単位部Uを単独で示している。
図5は、単位部Uを、
図3とほぼ同じ方向から観ており、すなわち、単位部Uを、
図1、
図2、
図4のD矢印の方向から観ている。
図6は、
図5の一部を拡大して観ている。
図7及び
図8は、同じ図面であり、単位部Uにおける、
図5と同じ側の部分を下側から観ており、すなわち、単位部Uを、
図3、
図5のE矢印の方向から観ている。
図7及び
図8は、図面の見易さのために、それぞれ異なる破線、鎖線を付けている点のみで異なる。
図9及び
図10は、同じ図面であり、単位部Uにおける、
図5とは逆側の部分を上側から観ており、すなわち、単位部Uを、
図4、
図5のF矢印の方向から観ている。
図9及び
図10は、図面の見易さのために、それぞれ異なる破線、鎖線を付けている点のみで異なる。参考のため、
図1~
図4におけるA矢印、B矢印、C矢印を、
図5、
図7~
図10にも示している。
【0018】
図1~
図10、
図12~
図14に示すように、多孔質構造体1の骨格部2は、複数の骨部2Bと、複数の結合部2Jと、から構成されており、骨格部2の全体が一体に構成されている。各図の例において、各骨部2Bは、それぞれ柱状に構成されており、また、本例では、それぞれ直線状に延在している。各結合部2Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する複数(図の例では、2つ~6つ)の骨部2Bの延在方向の端部2Beどうしが互いに隣接する箇所で、これらの端部2Beどうしを結合している。
図6、
図7、
図9等には、多孔質構造体1の一部分に、骨格部2の骨格線Oを示している。骨格部2の骨格線Oは、各骨部2Bの骨格線Oと、各結合部2Jの骨格線Oと、からなる。骨部2Bの骨格線Oは、骨部2Bの中心軸線であり、後述の骨一定部2B1の中心軸線と骨変化部2B2の中心軸線とからなる。結合部2Jの骨格線Oは、当該結合部2Jに結合された各骨部2Bの中心軸線をそれぞれ当該結合部2J内へ滑らかに延長させて互いに連結させてなる、延長線部分である。骨部2Bの中心軸線は、骨部2Bの延在方向の各点における、骨部2Bの延在方向に垂直な断面において骨部2Bのなす形状の重心点どうしを、結んでなる線である。
骨部2Bの延在方向は、骨部2Bの骨格線O(骨格線Oのうち、骨部2Bに対応する部分。以下同じ。)の延在方向である。
多孔質構造体1は、その全体にわたって骨格部2を備えているので、通気性を確保しつつ、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であるので、クッション材としての特性が良好になる。また、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち、一部又は全部の骨部2Bが、湾曲しながら延在してもよい。この場合、一部又は全部の骨部2Bが湾曲していることで、荷重の入力時において、骨部2Bひいては多孔質構造体1の急激な形状変化を防ぎ、局所的な座屈を抑制することができる。
また、
図1~
図10、
図12~
図14の各図面においては、骨格部2の各面が平坦であり、互いに隣接する一対の面どうしが突き合うエッジ部分(辺部分)がそれぞれ角張っている。ただし、本明細書で説明する各例において、骨格部2の各面のうち一部又は全部は、非平坦(例えば湾曲状)であってもよい。また、本明細書で説明する各例において、骨格部2の各エッジ部分は、滑らかに湾曲していてもよい。
【0019】
各図の例では、骨格部2を構成する各骨部2Bが、それぞれほぼ同じ形状及び寸法(長さ、断面積、幅等)を有している。ただし、各図の例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bの形状及び/又は寸法(長さ、断面積、幅等)は、それぞれ同じでなくてもよく、例えば、一部の骨部2Bの形状及び/又は寸法(長さ、断面積、幅等)が他の骨部2Bとは異なっていてもよい。この場合、骨格部2のうちの特定の部分の骨部2Bの形状及び/又は寸法(長さ、断面積、幅等)を他の部分とは異ならせることで、意図的に異なる機械特性を得ることができる。例えば、後述する
図15の例のように、多孔質構造体1を車両用のシートパッドに適用する場合、メインパッド部311の座面側(表面側)の部分11は乗り心地向上のため柔らかくし、サイドパッド部312を構成する部分12はホールド感を得るため硬くする、といったことができる。
図11は、
図1~
図10、
図13、
図14の各例の骨部2Bを、単独で示している。
図11(a)は骨部2Bに外力が加わっていない自然状態を示しており、
図11(b)は骨部2Bに外力が加わった状態を示している。
図11には、骨部2Bの中心軸線(骨格線O)を示している。
図11(a)に示すように、
図1~
図10、
図13、
図14の各例において、各骨部2Bは、それぞれ、断面積を一定に保ちつつ延在する、骨一定部2B1と、骨一定部2B1の延在方向の両側において、断面積を徐々に変化させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在する、一対の骨変化部2B2と、から構成されている。骨変化部2B2は、断面積を徐々に変化させつつ延在する。当該各例において、各骨変化部2B2は、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在している。なお、これらの例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていても、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨一定部2B1の一方側の端部のみに骨変化部2B2を有し、骨一定部2B1の他方側の端部が直接結合部2Jに結合されていてもよく、その場合も、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
ここで、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の断面積は、それぞれ、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。また、本明細書において、「徐々に変化(増大又は減少)」とは、途中で一定となることなく常に滑らかに変化(増大又は減少)することを指す。
図1~
図10、
図13、
図14の各例では、多孔質構造体1を構成する各骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2とからなり、骨変化部2B2が、骨一定部2B1から結合部2Jに向かうにつれて断面積が徐々に増大するので、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界の近傍部分で、骨一定部2B1に向かって細くなるようにくびれた形状をなしている。そのため、外力が加わる際に、骨部2Bが、そのくびれた部分や骨一定部2B1の中間部分で座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等の挙動及び特性が得られる。また、これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。例えば、多孔質構造体1を着座用のクッション材(シートパッド等)として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、より柔らかい感触を与えるようになる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
【0020】
図1~
図10、
図12~
図14の各例では、骨部2Bが、その少なくとも一部分において骨一定部2B1を有している。これらの例において、骨部2Bは、骨部2Bのいずれか一方側(好ましくは両側)の端2B21の断面積A1(
図11(a))に対する、骨一定部2B1の断面積A0(
図11(a))の比A0/A1は、
0.15≦A0/A1≦2.0
を満たしている。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、クッション材の特性として、また特に着座用のクッション材の特性として、柔らかすぎず、硬すぎず、ほどよい硬さにすることができる。例えば、多孔質構造体1を着座用のクッション材(シートパッド等)として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、ほどよい硬さの感触を与えるようになる。比A0/A1が小さいほど、多孔質構造体1の表面のタッチ感が、より柔らかくなる。比A0/A1が0.15未満である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が柔らかくなりすぎて、クッション材の特性として好ましくなくなるおそれがあり、また、3Dプリンタによる製造がしにくくなるため、製造性の面で好ましくない。よって、比A0/A1は0.15以上であると好適である。比A0/A1が2.0超である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が硬くなりすぎて、クッション材の特性として好ましくなくなるおそれがある。よって、比A0/A1は2.0以下であると好適である。
なお、比A0/A1は、0.5以上であると、より好適である。
より具体的に、
図1~
図10、
図13、
図14の各例では、骨部2Bが骨一定部2B1とその両側に連続する一対の骨変化部2B2とを有しており、各骨変化部2B2が、それぞれ、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在しており、比A0/A1が1.0未満である。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、クッション材の特性として、また特に着座用のクッション材の特性として、比較的柔らかくすることができる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0021】
なお、
図1~
図10、
図13、
図14の各例に代えて、骨変化部2B2は、断面積を徐々に減少させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在していてもよい。この場合、骨一定部2B1は、骨変化部2B2よりも、断面積が大きく(太く)なる。これにより、外力が加わる際に、骨一定部2B1が変形しにくくなり、代わりに、比較的座屈しやすい箇所が骨変化部2B2(特に、結合部2J側の部分)となり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しにくくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより硬くなり、また、高硬度の機械特性が得られる。例えば、多孔質構造体1を着座用のクッション材として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、より硬い感触を与えるようになる。このような挙動は、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでは得ることができない。このような構成により、硬めの感触を好むユーザに対応できる。このような硬い感触は、例えば、素早い加減速や斜線変更を行うようなスポーツ車のシートパッドにおける、着座者に好まれるものである。
そして、骨変化部2B2が、断面積を徐々に減少させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在している場合、比A0/A1は、1.0超となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0022】
あるいは、
図12に一部点線で示す第1変形例のように、骨部2Bは、骨変化部2B2を有さずに、骨一定部2B1のみからなるものでもよい。この場合、骨部2Bの断面積は、その全長にわたって一定になる。そして、外力が加わる際における多孔質構造体1の表面のタッチ感は、中程度の硬さになる。このような構成により、中程度の硬さの感触を好むユーザに対応できる。また、高級車やスポーツ車など、あらゆる車種のシートパッドに好適に適用できる。
この場合、比A0/A1は、1.0となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0023】
図1~
図10、
図13、
図14の各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有しており、骨一定部2B1が、骨変化部2B2及び結合部2Jよりも、断面積が小さい。より具体的には、骨一定部2B1の断面積は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の断面積よりも、小さい。すなわち、骨一定部2B1は、骨格部2の中で最も断面積が小さい(細い)部分である。これにより、上述したことと同様に、外力が加わる際に、骨一定部2B1が変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
なお、結合部2Jの断面積は、結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。
なお、これらの例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bにおいて、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1の断面積は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の断面積よりも大きくてもよい。
【0024】
同様に、
図1~
図10、
図13、
図14の各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有しており、骨一定部2B1が、骨変化部2B2及び結合部2Jよりも、幅が小さい。より具体的には、骨一定部2B1の幅は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の幅よりも、小さい。すなわち、骨一定部2B1は、骨格部2の中で最も幅が小さい(細い)部分である。これによっても、外力が加わる際に骨一定部2B1が変形しやすくなり、それにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。なお、これらの例においては、上述のように、比A0/A1は1.0未満である。
なお、骨一定部2B1、骨変化部2B2、結合部2Jの幅は、それぞれ、骨一定部2B1、骨変化部2B2、結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。結合部2Jの骨格線Oは、骨格線Oのうち、結合部2Jに対応する部分である。
図11(a)には、参考のため、骨一定部2B1の幅W0と、骨変化部2B2の幅W1とを、示している。
なお、これらの例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bにおいて、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1の幅は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の幅よりも大きくてもよい。この場合、比A0/A1は1.0超となる。
【0025】
本明細書で説明する各例において、各図の例のように、骨部2Bが、その少なくとも一部分において骨一定部2B1を有している場合、多孔質構造体1の構造の簡単化、ひいては、3Dプリンタによる製造のし易さの観点や、クッション材(特にシートパッド、さらに特には車両用シートパッド)としての特性を向上させる観点からは、骨一定部2B1の幅W0(
図11、)は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適であり、0.20mm以上であるとさらに好適である。幅W0が0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
一方、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)形状の精度を向上させる観点や、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点や、クッション材(特にシートパッド、さらに特には車両用シートパッド)としての特性を良好にする観点からは、骨一定部2B1の幅W0(
図11)は、2.0mm以下であると好適である。
なお、
図12の例のように、骨部2Bが骨一定部2B1のみからなる場合、骨一定部2B1の幅W0とは、骨部2Bの幅W0と同じである。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0026】
図1~
図10、
図13、
図14の各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有しており、骨変化部2B2が、その側面に、1又は複数(本例では、3つ)の傾斜面2B23を有しており、この傾斜面2B23は、骨変化部2B2の延在方向に対して傾斜(90°未満で傾斜)しているとともに、骨一定部2B1から結合部2Jに向かうにつれて、幅W2が徐々に増大している。
これによっても、外力が加わる際に、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界近傍におけるくびれた部分で、座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
ここで、骨変化部2B2の延在方向は、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)の延在方向である。また、骨変化部2B2の傾斜面2B23の幅W2は、骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、傾斜面2B23の幅を指す。
なお、これらの図の例では、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23の全てがこの構成を満たしているが、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23のうち一部の傾斜面2B23のみがこの構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。また、これらの図の例では、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23が互いに合同であるが、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23が互いに合同でなくてもよく、互いに形状及び/又は寸法が異なっていてもよい。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bにおいて、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨変化部2B2の各傾斜面2B23は、骨一定部2B1から結合部2Jに向かうにつれて、幅W2が徐々に減少していてもよい。この場合、比A0/A1は1.0超となる。
【0027】
本明細書で説明する各例においては、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部(好適には、全部)の骨部2Bにおいて、骨部2B(骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1及び/又は骨変化部2B2)の断面形状は、多角形(好適には正多角形)又は円形であると、好適である。例えば、
図1~
図10、
図13、
図14の各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bにおいては、骨部2B(より具体的には、骨一定部2B1及び骨変化部2B2)の断面形状が、多角形(より具体的には、正三角形)である。
これにより、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。また、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでの機械特性を再現しやすい。また、このように骨部2Bを柱状に構成することにより、仮に骨部2Bを薄い膜状の部分に置き換えた場合に比べて、多孔質構造体1の耐久性を向上できる。
なお、骨部2Bの断面形状、骨一定部2B1の断面形状、骨変化部2B2の断面形状は、それぞれ、骨部2B、骨一定部2B1、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)に垂直な断面における形状である。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、本明細書で説明する各例においては、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部の骨部2Bにおいて、骨部2B(骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1及び/又は骨変化部2B2)は、それぞれの断面形状が、正三角形以外の多角形(正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、円形(真円形、楕円形等)でもよく、その場合でも、同様の効果が得られる。また、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が、互いに同じでもよいし、互いに異なるものでもよい。
【0028】
本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、骨一定部2B1を有さずに、断面積を徐々に変化させつつ延在する骨変化部2B2のみを有していてもよい。この場合、骨変化部2B2は、骨部2Bの全体にわたって骨部2Bの延在方向の一方側から他方側に向かうにつれて断面積が徐々に増加又は減少するものであってもよいし、あるいは、骨部2Bの延在方向の一方側から他方側に向かうにつれて断面積が徐々に増加する部分と骨部2Bの延在方向の一方側から他方側に向かうにつれて断面積が徐々に減少する部分とをそれぞれ1つ以上ずつ含むものであってもよい。
【0029】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合(VB×100/VS [%])が、3~10%であると、好適である。この構成により、多孔質構造体1に外力が付加されたときに多孔質構造体1に生じる反力、ひいては、多孔質構造体1の硬さを、クッション材として、特には着座用のクッション材(シートパッド等)として、さらに特には車両用のシートパッドとして、良好なものにすることができる。
ここで、「多孔質構造体1の体積VS」とは、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)によって囲まれた内部空間の全体(骨格部2の占める体積と、後述の膜3が設けられる場合は膜3の占める体積と、空隙の占める体積との合計)の体積を指している。
多孔質構造体1を構成する材料を同じとして考えたとき、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が高いほど、多孔質構造体1は硬くなる。また、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積の割合VBが低いほど、多孔質構造体1は柔らかくなる。
多孔質構造体1に外力が付加されたときに多孔質構造体1に生じる反力、ひいては、多孔質構造体1の硬さを、クッション材として、特には着座用のクッション材として、良好なものにする観点からは、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が、4~8%であると、より好適である。
なお、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を調整する方法としては、任意の方法を用いてよいが、例えば、多孔質構造体1の各単位部Uの寸法を変えずに、骨格部2を構成する一部又は全部の骨部2Bの太さ(断面積)、及び/又は、骨格部2を構成する一部又は全部の結合部Jの大きさ(断面積)を、調整する方法が挙げられる。
その一例として、
図13に示す第2変形例では、点線で示すように、骨格部2を構成する各骨部2Bの太さ(断面積)、及び、骨格部2を構成する各結合部Jの大きさ(断面積)を、実線で示す多孔質構造体1(
図8の例)よりも増大させることにより、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を増大させている。
多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の25%硬度は、60~500Nが好適であり、100~450Nがより好適である。ここで、多孔質構造体1の25%硬度(N)は、インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にて、多孔質構造体を25%圧縮するのに要する荷重(N)を測定して得られる測定値であるものとする。
【0030】
図1~
図14に示す各例において、骨格部2は、第1セル孔C1を内部に区画する第1セル区画部21を複数(第1セル孔C1の数だけ)有している。
各図の例において、各第1セル区画部21は、それぞれ、複数(具体的には、14つ)の第1環状部211を有している。各第1環状部211は、それぞれ、環状に構成されている。第1セル区画部21の複数の第1環状部211は、それぞれ、それぞれの環状の内周側縁部2111によって、平坦な第1仮想面V1を区画している。第1仮想面V1は、その外縁が第1環状部211の内周側縁部2111によって区画された、仮想閉平面である。第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211は、それぞれの内周側縁部2111によって区画する第1仮想面V1どうしが交差しないように互いに連結されている。
第1セル孔C1は、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211と、これら複数の第1環状部211がそれぞれ区画する複数の第1仮想面V1とによって、区画されている。概略的に言えば、第1環状部211は、第1セル孔C1のなす立体形状の辺を区画する部分であり、第1仮想面V1は、第1セル孔C1のなす立体形状の構成面を区画する部分である。
このような構成により、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特には着座用のクッション材(シートパッド等)として、より良好になる。すなわち、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
【0031】
各図の例のように、第1セル区画部21の各第1環状部211は、それぞれ、複数の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数の結合部2Jと、から構成されていると、好適である。このような構成により、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
【0032】
各図の例のように、互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分は、これら一対の第1環状部211に共有される、1つの骨部2Bと、当該骨部2Bの両側の一対の結合部2Jと、から構成されていると、好適である。このような構成により、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
【0033】
各図の例において、第1環状部211は、当該第1環状部211に隣接する一対の第1セル区画部21(すなわち、当該第1環状部211を間に挟んだ一対の第1セル区画部21)によって共有されている。言い換えれば、第1環状部211は、当該第1環状部211に隣接する一対の第1セル区画部21のそれぞれの一部を構成している。
これにより、仮に、第1環状部211が、当該第1環状部211に隣接する一対の第1セル区画部21(すなわち、当該第1環状部211を間に挟んだ一対の第1セル区画部21)によって共有されておらず、すなわち、当該一対の第1セル区画部21が互いから独立して構成されており、それぞれの第1環状部211が互いに隣接又は互いから離間して形成されている場合や、それぞれの第1環状部211の間にリブ等が介在している場合に比べて、第1セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)(ひいては、第1セル孔C1どうしの間の骨格部2の肉部分)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材(特にはシートパッド、さらに特には車両用シートパッド)としての特性を向上できる。よって、3Dプリンタによって、クッション性のある多孔質構造体1を容易に製造することができる。
なお、骨格部2を構成する各第1環状部211がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第1環状部211のうち一部の第1環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例において、互いに隣接する一対の第1セル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211において、一致していると、好適である。
【0034】
各図の例において、第1仮想面V1は、第1仮想面V1の一方側の面(第1仮想面V1の表面)によって、ある1つの第1セル孔C1の一部を区画しているとともに、当該第1仮想面V1の他方側の面(第1仮想面V1の裏面)によって、別の第1セル孔C1の一部を区画している。言い換えれば、第1仮想面V1は、その表裏両側の面によって別々の第1セル孔C1の一部を区画している。さらに言い換えれば、第1仮想面V1は、当該第1仮想面V1に隣接する一対の第1セル孔C1(すなわち、当該第1仮想面V1を間に挟んだ一対の第1セル孔C1)によって共有されている。
これにより、仮に、第1仮想面V1が、当該第1仮想面V1に隣接する一対の第1セル孔C1(すなわち、当該第1仮想面V1を間に挟んだ一対の第1セル孔C1)によって共有されておらず、すなわち、当該一対の第1セル孔C1の第1仮想面V1が互いから離間した位置にある場合に比べて、第1セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
なお、骨格部2を構成する各第1仮想面V1がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第1仮想面V1のうち一部の第1仮想面V1のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0035】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211の骨格線Oは、当該一対の第1セル区画部21のうち前記共有される第1環状部211に隣接する部分の骨格線Oのそれぞれと、連続している(
図1、
図7等参照)と、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211において、一致していると、好適である。
また、同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)が、当該一対の第1セル区画部21のうち前記共有される第1環状部211に隣接する部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)のそれぞれと、同じであると、好適である。
なお、骨格部2において互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211の全てがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2において互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211のうち一部の第1環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0036】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分の骨格線Oは、当該一対の第1環状部211のうち前記連結部分に隣接する部分の骨格線Oのそれぞれと、連続していると、好適である(
図1、
図7参照)。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに連結された一対の第1環状部211の骨格線Oどうしは、当該一対の第1環状部211どうしの連結部分において、一致していると、好適である。
また、同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)が、当該一対の第1環状部211のうち前記連結部分に隣接する部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)のそれぞれと、同じであると、好適である。
なお、骨格部2において互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分の全てがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2において互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分のうち一部の連結部分のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0037】
図1~
図10、
図12~
図13の各例において、各第1仮想面V1は、膜によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、第1仮想面V1を通じて、セル孔Cどうしが連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、多孔質構造体1の通気性を向上できるとともに、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形がし易くなる。
【0038】
各図の例において、第1セル区画部21を構成する複数(図の例では、14つ)の第1環状部211は、それぞれ、1つ又は複数(図例では、6つ)の第1小環状部211Sと、1つ又は複数(図の例では、8つ)の第1大環状部211Lと、を含んでいる。各第1小環状部211Sは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、平坦な第1小仮想面V1Sを区画している。各第1大環状部211Lは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、平坦かつ第1小仮想面V1Sよりも面積の大きな第1大仮想面V1Lを区画している。第1小仮想面V1S、第1大仮想面V1Lは、それぞれ、仮想閉平面である。
図1、
図7、
図9等には、骨格部2のうち、第1セル区画部21を構成する部分の骨格線Oの一部を示している。これらの図面から判るように、各図の例において、第1大環状部211Lは、その骨格線Oが正6角形をなしており、それに伴い、第1大仮想面V1Lも、略正6角形をなしている。また、各図の例において、第1小環状部211Sは、その骨格線Oが正4角形(正方形)をなしており、それに伴い、第1小仮想面V1Sも、略正4角形をなしている。このように、各図の例において、第1小仮想面V1Sと第1大仮想面V1Lとは、面積だけでなく、形状も異なる。
各第1大環状部211Lは、それぞれ、複数(各図の例では、6つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの延在方向の端部2Beどうしを結合する複数(各図の例では、6つ)の結合部2Jと、から構成されている。各第1小環状部211Sは、それぞれ、複数(各図の例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(各図の例では、4つ)の結合部2Jと、から構成されている。
そして、各図の例において、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oは、それぞれ、ケルビン14面体(切頂8面体)をなしている。ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。これに伴い、各第1セル区画部21によって区画される第1セル孔C1も、略ケルビン14面体をなしている。
図1~
図14の各例では、各骨部2Bが、骨一定部2B1だけでなく、その両側に骨変化部2B2を有していることから、第1セル孔C1の形状は、数学的な(完全な)ケルビン14面体をなしているわけではない。骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっている。すなわち、複数の第1セル区画部21の骨格線Oどうしの間には、隙間がない。
【0039】
このように、各図の例において、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oは、それぞれ多面体(各図の例では、ケルビン14面体)をなしており、それに伴い、第1セル孔C1が略多面体(各図の例では、略ケルビン14面体)をなしているため、多孔質構造体1を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になり、より多くのセル孔Cを多孔質構造体1の内部に形成することができる。また、これにより、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特には着座用のクッション材として、より良好になる。なお、セル孔C間の隙間(間隔)とは、セル孔Cを区画する骨格部2の肉部分(骨部2Bや結合部2J)に相当する。
また、各図の例において、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっているので、多孔質構造体1を構成する第1セル孔C1間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。よって、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
【0040】
第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第1セル孔C1のなす略多面体)としては、各図の例に限らず、任意のものが可能である。
例えば、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第1セル孔C1のなす略多面体)は、空間充填できる(隙間無く配置できる)ようなものであると好適である。これにより、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oを、空間充填するように互いに連ならせることができるので、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。この場合、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oがなす多面体(ひいては、第1セル孔C1のなす略多面体)は、各図の例のように1種類の多面体のみを含んでいてもよいし、あるいは、複数種類の多面体を含んでいてもよい。ここで、多面体に関し、「種類」とは、形状(構成面の数や形状)を指しており、具体的には、形状(構成面の数や形状)が異なる2つの多面体については2種類の多面体として扱うが、形状は同じであり寸法のみが異なる2つの多面体については同じ種類の多面体として扱うことを意味する。骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体が、空間充填できるとともに1種類の多面体のみを含む場合の当該多面体の例としては、ケルビン14面体の他に、正3角柱、正6角柱、立方体、直方体、菱形12面体等が挙げられる。なお、各図の例のように、第1セル区画部21の骨格線Oの形状をケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、他の形状に比べて、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、最も再現し易い。また、第1セル区画部21の骨格線Oの形状をケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体が、空間充填できるとともに複数種類の多面体を含む場合の当該多面体の例としては、正4面体と正8面体との組み合わせ、正4面体と切頂4面体との組み合わせ、正8面体と切頂6面体との組み合わせ等が挙げられる。なお、これらは、2種類の多面体の組み合わせの例であるが、3種類以上の多面体の組み合わせも可能である。
また、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第1セル孔C1のなす略多面体)は、例えば、任意の正多面体(全ての面が合同な正多角形で、全ての頂点において接する面の数が等しい凸多面体)、半正多面体(全ての面が正多角形で、全ての頂点形状が合同(頂点に集まる正多角形の種類と順序が同じ)な凸多面体のうち、正多面体以外)、角柱、角錐等が可能である。
また、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21のうちの一部又は全部の第1セル区画部21の骨格線Oは、多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)をなしていてもよい。ひいては、骨格部2を構成する複数の第1セル孔C1のうちの一部又は全部の第1セル孔C1は、略多面体以外の略立体形状(例えば、略球、略楕円体、略円柱等)をなしていてもよい。
【0041】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211が、大きさの異なる第1小環状部211Sと第1大環状部211Lとを含むと好適である。これにより、多孔質構造体1を構成する第1セル孔C1間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になり、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。また、各図の例のように、第1小環状部211Sと第1大環状部211Lとの形状が異なる場合、多孔質構造体1を構成する第1セル孔C1間の隙間(間隔)をさらに小さくすることが可能になり、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
ただし、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211は、それぞれ、大きさ及び/又は形状(種類)が互いに同じでもよい。第1セル区画部21を構成する各第1環状部211の大きさ及び形状が同じである場合も、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。
【0042】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、多孔質構造体1を構成する各第1環状部211のうち、一部又は全部(各図の例では全部)の第1環状部211の骨格線Oが、多角形状(各図の例では、正6角形及び正4角形)をなしていると、好適である。同様に、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうち、一部又は全部(各図の例では全部)の第1仮想面V1が、略多角形状をなしていると、好適である。これにより、多孔質構造体1を構成する第1セル孔C1どうしの間隔をより小さくすることが可能になる。また、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特には着座用のクッション材として、より良好になる。また、第1環状部211の形状(ひいては第1仮想面V1の形状)がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できる。なお、多孔質構造体1を構成する各第1環状部211(ひいては第1仮想面V1)がこの構成を満たしていると好適であるが、多孔質構造体1を構成する各第1環状部211(ひいては第1仮想面V1)のうち、少なくとも1つの第1環状部211(ひいては第1仮想面V1)が、この構成を満たしている場合も、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
なお、多孔質構造体1を構成する各第1環状部211(ひいては第1仮想面V1)のうち、少なくとも1つの第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)が、本例のような正6角形、正4角形以外の任意の多角形状、あるいは、多角形状以外の平面形状(例えば、円(真円、楕円等))をなしてもよい。第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)の形状が円(真円、楕円等)である場合は、第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)の形状がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できるとともに、より均質な機械特性が得られる。例えば、第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)の形状が、荷重が掛かる方向に対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、荷重が掛かる方向に略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、当該第1仮想面V1を区画する第1環状部211が、ひいては、多孔質構造体1が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
【0043】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、1つの第1セル区画部21の第1大環状部211Lの少なくとも1つ(各図の例では3つ)の骨部2Bは、それぞれ、当該第1セル区画部21に隣接する他の1つの第1セル区画部21の第1小環状部211Sによって共有されていると、好適である。これにより、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
【0044】
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、第1セル孔C1は、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211と、これら複数の第1環状部211がそれぞれ区画する複数の第1仮想面V1とによって、区画されており、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211は、それぞれの内周側縁部2111によって区画する第1仮想面V1どうしが交差しないように互いに連結されていると、好適である。これにより、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
【0045】
図1~
図10、
図12~
図14に示す各例において、骨格部2は、第2セル孔C2を内部に区画する第2セル区画部22を複数(第2セル孔C2の数だけ)有している。
図1、
図2、
図5~
図10(特に
図6)に示すように、各第2セル区画部22は、それぞれ、複数(これらの図の例では、2つ)の第2環状部222を有している。各第2環状部222は、それぞれ、環状に構成されている。第2セル区画部22の複数の第2環状部222は、それぞれ、それぞれの環状の内周側縁部2221によって、平坦な第2仮想面V2を区画している。第2仮想面V2は、その外縁が第2環状部222の内周側縁部2221によって区画された、仮想閉平面である。第2セル区画部22を構成する各第2環状部222は、それぞれの内周側縁部2221によって区画する第2仮想面V2どうしが交差(本例では、直交)するように互いに連結されている。
第2セル孔C2は、第2セル区画部22を構成する各第2環状部のそれぞれの内周側縁部2221と、これらの内周側縁部2221どうしを連結する仮想面とによって、区画されている。
このような構成により、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特には着座用のクッション材(シートパッド等)として、より良好になる。すなわち、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
【0046】
図6には、単位部Uのうち、第2セル区画部22を構成する部分の骨格線Oを示している。
図6から判るように、
図1~
図10、
図12~
図14の各例において、第2セル区画部22を構成する各第2環状部222は、それぞれ、その骨格線Oが正4角形をなしており、それに伴い、第2仮想面V2も、略正4角形をなしている。
そして、
図1~
図10、
図12~
図14の各例において、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oは、それぞれ、正8面体をなしている。正8面体は、8つの正3角形の構成面から構成される、多面体である。ただし、これらの例において、第2セル区画部22の骨格線Oは、当該骨格線Oのなす多面体(正8面体)の各辺のうち一部の辺のみを構成している。これに伴い、各第2セル区画部22によって区画される第2セル孔C2も、略正8面体をなしている。
図1~
図10、
図12~
図14の各例では、各骨部2Bが、骨一定部2B1だけでなく、その両側に骨変化部2B2を有していることから、第1セル孔C1の形状は、数学的な(完全な)正8体をなしているわけではない。
図1~
図10、
図12~
図14の各例においては、
図4や
図10に示すように、第2セル孔C2は、その一部分が、当該第2セル孔C2に隣接する(すなわち、当該第2セル孔C2を間に挟んだ)一対の第1セル孔C1の内部に入っており、すなわち、これら一対の第1セル孔C1と第2セル孔C2とが、一部分で重複している。これにより、仮に第1セル孔C1と第2セル孔C2とが、互いに重複していない場合に比べて、多孔質構造体1を構成するセル孔Cの総数を増やすことができ、ひいては、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。ただし、第1セル孔C1と第2セル孔C2とは、互いに重複しないように配置されていてもよい。
【0047】
図1~
図10、
図12~
図14の各例のように、多孔質構造体1が第2セル区画部22を有する場合、各第2環状部222は、それぞれ、複数(これらの図の例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(これらの図の例では、4つ)の結合部2Jと、から構成されている(
図6参照)と、好適である。このような構成により、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
【0048】
図1~
図10、
図12~
図14の各例のように、多孔質構造体1が第2セル区画部22を有する場合、第2セル区画部22を構成する各第2環状部222どうしの連結部分は、各第2環状部222に共有される、2つの結合部2Jで構成されていると、好適である。このような構成により、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
また、これらの図の例において、第2セル区画部22を構成する各第2仮想面V2の形状及び面積は、互いに同じである。
【0049】
図1~
図10、
図12~
図14の各例のように、多孔質構造体1が第2セル区画部22を有する場合、第2セル孔C2の直径は第1セル孔C1の直径よりも小さいと、好適である。これにより、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、再現し易くなる。
ただし、第2セル孔C2の直径は第1セル孔C1の直径以上であってもよい。
【0050】
図1~
図10、
図12~
図14の各例のように、多孔質構造体1が第2セル区画部22を有する場合、第2セル区画部22の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第2セル孔C2のなす略多面体)としては、各図の例に限らず、任意のものが可能である。
例えば、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oのなす多面体は、それぞれ、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体とは異なる種類のものであると、好適である。例えば、各図の例のように、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oがそれぞれケルビン14面体をなす場合、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oは、それぞれ、ケルビン14面体以外の多面体(
図1~
図10、
図12~
図14の各例では、正8面体)をなしていると、好適である。
骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第2セル孔C2のなす略多面体)は、例えば、任意の正多面体(全ての面が合同な正多角形で、全ての頂点において接する面の数が等しい凸多面体)、半正多面体(全ての面が正多角形で、全ての頂点形状が合同(頂点に集まる正多角形の種類と順序が同じ)な凸多面体のうち、正多面体以外)、角柱、角錐等が可能である。
また、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22のうちの一部又は全部の第2セル区画部22の骨格線Oは、多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)をなしていてもよい。ひいては、骨格部2を構成する複数の第2セル孔C2のうちの一部又は全部の第2セル孔C2は、略多面体以外の略立体形状(例えば、略球、略楕円体、略円柱等)をなしていてもよい。
【0051】
なお、
図1~
図10、
図12~
図14の各例のように、多孔質構造体1が第2セル区画部22を有する場合、第2セル区画部22を構成する各第2環状部222の骨格線Oの形状(ひいては、各第2仮想面V2の形状)は、本例に限らず、正4角形以外の任意の多角形状、あるいは、多角形状以外の平面形状(例えば、円(真円、楕円等))をなしてよい。第2環状部222の骨格線O(ひいては、第2仮想面V2)の形状が略多角形状あるいは円(真円、楕円等)である場合は、第2環状部222の骨格線O(ひいては、第2仮想面V2)の形状がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できる。例えば、第2環状部222の骨格線O(ひいては、第2仮想面V2)の形状が、荷重が掛かる方向に対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、荷重が掛かる方向に略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、当該第2仮想面V2を区画する第2環状部222が、ひいては、多孔質構造体1が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
【0052】
図1~
図10、
図12~
図14の各例において、第2セル区画部22を構成する2つの第2環状部222のうちの1つは、第1環状部211(より具体的には、第1小環状部211S)をも構成している。ただし、これらの例において、第1セル区画部21を構成する複数の第1小環状部211Sのうち一部の第1小環状部211Sのみが、第2環状部222をも構成している。
図1~
図10、
図12~
図14の各例において、各第2仮想面V2は、膜によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、第2仮想面V2を通じて、セル孔Cどうし(特に、第1セル孔C1及び第2セル孔C2どうし)が連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、多孔質構造体1の通気性を向上できるとともに、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形がし易くなる。
【0053】
図1~
図10、
図12~
図14の各例のように、多孔質構造体1が第2セル区画部22を有する場合、第2セル区画部22を構成する各第2環状部222は、それぞれの内周側縁部2221によって区画する第2仮想面V2どうしが交差(本例では、直交)するように互いに連結されており、第2セル孔C2は、第2セル区画部22を構成する各第2環状部のそれぞれの内周側縁部2221と、これらの内周側縁部2221どうしを滑らかに連結する仮想面とによって、区画されていると、好適である。これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
【0054】
なお、
図1~
図10、
図12~
図14の各例において、1つの第1セル孔C1は、X、Y、Zの各方向にそれぞれ2個ずつ配列された、計8個の単位部U(
図5、
図7~
図10)から、構成されている。また、1個の単位部Uは、複数の第1セル孔C1のそれぞれの一部分を構成している。一方、第2セル孔C2は、1つの単位部Uにつき2個ずつ配置されている。
ただし、これらの例に限らず、多孔質構造体1の各セル孔Cは、それぞれ、任意の数の単位部Uから構成されてもよいし、また、各単位部Uは、それぞれ、任意の数のセル孔Cを構成してもよい。
【0055】
ただし、多孔質構造体1は、第2セル区画部22を有さずに、第1セル区画部21のみを有していてもよい。
【0056】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1は、直径が5mm以上のセル孔Cを少なくとも1つ(好適には複数)有すると、好適である。これにより、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなる。多孔質構造体1の各セル孔Cの直径が5mm未満であると、多孔質構造体1の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがある。
なお、従来のクッション性を有する多孔質構造体は、上述のように、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、直径が5mm以上のセル孔Cを形成することはできなかった。しかし、本発明の発明者は、多孔質構造体が直径5mm以上のセル孔Cを有する場合でも、クッション材としての特性として従来と同等のものが得られることを、新たに見い出した。そして、多孔質構造体が直径5mm以上のセル孔Cを有するようにすることにより、3Dプリンタによる製造がし易くなるのである。
また、多孔質構造体1が直径5mm以上のセル孔Cを有することにより、多孔質構造体1の通気性や変形し易さを向上しやすくなる。
セル孔Cの直径が大きくなるほど、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなり、また、通気性や変形し易さを向上しやすくなる。このような観点から、多孔質構造体1は、少なくとも1つ(好適には複数)のセル孔Cの直径が、より好適には8mm以上、さらに好適には10mm以上であるとよい。
一方、多孔質構造体1のセル孔Cが大きすぎると、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)形状をきれいに(滑らかに)形成するのが難しくなり、例えば多孔質構造体1をシートパッドに適用する場合等に、形状精度が低下し外観が悪化するおそれがある。また、クッション材としての特性も、十分に良好でなくなるおそれがある。よって、外観やクッション材としての特性を向上させる観点から、多孔質構造体1の各セル孔Cの直径は、好適には30mm未満、より好適には25mm以下、さらに好適には20mm以下であるとよい。
なお、多孔質構造体1は、上記の数値範囲を満たすセル孔Cを多く有するほど、上記の各効果が得られやすくなる。この観点からは、多孔質構造体1を構成する複数のセル孔Cのうち、少なくとも各第1セル孔C1の直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、好適である。また、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cの直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、より好適である。
なお、セル孔Cの直径は、各図の例のようにセル孔Cが厳密な球形状とは異なる形状をなす場合、セル孔Cの外接球の直径を指す。
【0057】
また、多孔質構造体1のセル孔Cが小さすぎると、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造(造形)がしにくくなる。3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造を容易にする観点から、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cのうち、最小の直径を有するセル孔C(
図1~
図10、
図12~
図14の各例では、第2セル孔C2)の直径が、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。最小の直径を有するセル孔C(
図1~
図10、
図12~
図14の各例では、第2セル孔C2)の直径が、0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
【0058】
図14に示す第3変形例のように、多孔質構造体1は、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。膜3は、骨格部2と同じ材料からなり、骨格部2と一体に構成される。膜3によって、第1仮想面V1を間に挟んだ2つの第1セル孔C1どうしが非連通状態になり、ひいては、多孔質構造体1の全体としての通気性が低下する。多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうち、膜3で覆われたものの数を調整することにより、多孔質構造体1の全体としての通気性を調整でき、要求に応じて様々な通気性レベルを実現可能である。例えば、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の通気性を調整することにより、車内のエアコンの効きを高めたり、耐ムレ性を高めたり、乗り心地を高めることができる。多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、車内のエアコンの効き及び耐ムレ性を高めるとともに、乗り心地を高める観点からは、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1の全てが膜3で覆われているのは好ましくなく、言い換えれば、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうち少なくとも1つ(好適には複数)が膜3で覆われておらず開放されていることが好ましい。
多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、車内のエアコンの効き及び耐ムレ性を高めたり、乗り心地を高める観点からは、多孔質構造体1の通気性は、100~700cc/cm
2/secが好適であり、150~650cc/cm
2/secがより好適であり、200~600cc/cm
2/secがさらに好適である。ここで、多孔質構造体1の通気性(cc/cm
2/sec)は、JIS K 6400-7に準拠して測定されるものとする。また、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の共振倍率は、3倍以上8倍未満が好適であり、3倍以上5倍以下がより好適である。
なお、従来の多孔質構造体は、上述のように、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、各セルどうしを連通する連通孔における膜を、所期したとおりの位置及び個数で形成することは難しかった。
図14の例のように、多孔質構造体1を3Dプリンタで製造する場合は、3Dプリンタに読み込まれる3D造形用データに、予め膜3の情報も含めることで、確実に、所期したとおりの位置及び個数で膜3を形成することが可能である。
同様の観点から、多孔質構造体1を構成する各第1小仮想面V1Sのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。かつ/又は、多孔質構造体1を構成する各第1大仮想面V1Lのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。また、膜3は、第2セル区画部22を構成する複数の第2環状部222どうしを連結して第2セル孔C2の一部を覆うように設けられていてもよい。
【0059】
上述したように、本発明の多孔質構造体は、クッション材に用いられるのが好適であり、着座用のクッション材(シートパッド等)に用いられるのがより好適であり、車両用シートパッドに用いられるのがさらに好適である。
一例として、
図15に、
図1の例の多孔質構造体1を備えた車両用シートパッド300を示す。
図15の例における車両用シートパッド300は、着座者が着座するためのクッションパッド310と、着座者の背中を支持するためのバックパッド320と、を備えている。クッションパッド310とバックパッド320とは、それぞれ、上述した任意の例の多孔質構造体1から構成されることができる。
図15では、車両用シートパッド300に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、表記している。
クッションパッド310は、着座者の臀部及び大腿部が載るように構成されたメインパッド部311と、メインパッド部311の左右両側に位置する一対のサイドパッド部322と、を有している。
図15の例では、クッションパッド310とバックパッド320とが、それぞれ、別々の(別部材としての)多孔質構造体1から構成されている。クッションパッド310は、その全体が一体に構成されている。また、バックパッド320は、その全体が一体に構成されている。
クッションパッド310及びバックパッド320を構成する多孔質構造体1は、それぞれ、3Dプリンタによって造形されたものである。
ただし、クッションパッド310とバックパッド320とは、互いに一体に構成されてもよい。
また、
図15の例において、バックパッド320は、着座者の頭部を支持するためのヘッドレストとは別体に構成されているが、バックパッド320は、ヘッドレストと一体に構成されてもよい。
また、多孔質構造体1は、車両用シートパッド300(クッションパッド310又はバックパッド320)のうちの一部のみを構成していてもよい。その場合、車両用シートパッド300(クッションパッド310又はバックパッド320)のうち残りの部分は、金型成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造されるとよい。
【0060】
つぎに、
図16を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体の製造方法を説明する。
図16では、
図15に示すクッションパッド310又はバックパッド320を構成する本発明の一実施形態に係る多孔質構造体1を、3Dプリンタにより製造する様子を一例として示している。ただし、以下に説明する多孔質構造体の製造方法は、任意の用途に用いられる多孔質構造体1を製造するために好適に使用できる。
まず、事前に、コンピュータを用いて、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(例えば、3次元CADデータ)を作成する。
つぎに、コンピュータを用いて、上記3次元形状データを、3D造形用データ500に変換する。3D造形用データ500は、3Dプリンタ400の造形部420が造形を行う際に3Dプリンタ400の制御部410に読み込まれるものであり、制御部410が、造形部420に、多孔質構造体1を、造形させるように構成されている。3D造形用データ500は、例えば、多孔質構造体1の各層の2次元形状を表すスライスデータを含む。
つぎに、3Dプリンタ400によって多孔質構造体1の造形を行う。3Dプリンタ400は、例えば、光造形方式、粉末焼結積層方式、熱溶融積層方式(FDM方式)、インクジェット方式等、任意の造形方式を用いて造形を行ってよい。
図16では、熱溶融積層方式(FDM方式)によって造形を行う様子を示している。
3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように熱溶融積層方式(FDM方式)を用いる場合、最終的に造形物(すなわち、多孔質構造体1)を構成するメイン材MMを吐出するように構成されたメイン材ノズル421と、造形中にメイン材MMを支持するサポート材SMを吐出するように構成されたサポート材ノズル422と、を有している。メイン材MMとしては、可撓性のある樹脂又はゴムを用いるのがよいが、特に、可撓性のある樹脂を用いるのが好適である。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420にメイン材MM、サポート材SMを吐出させるよう制御しながら、各層を順次造形していく。このとき、多孔質構造体1のうち、空隙以外の部分(すなわち、骨格部2や膜3)を、メイン材MMによって造形し、多孔質構造体1の空隙部分を、サポート材SMによって形成する。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物からサポート材SMを除去する。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1(ひいては、クッションパッド310又はバックパッド320)が得られる。
【0061】
ここで、図示は省略するが、熱溶融積層方式(FDM方式)ではなく、光造形方式によって造形を行う場合について、説明する。
この場合、3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、液体樹脂(図示せず)、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように光造形方式を用いる場合、紫外線レーザ光を照射するように構成されたレーザ照射器(図示せず)を有する。収容体440には、液体樹脂が充填されている。液体樹脂は、レーザ照射器から照射される紫外線レーザ光が当たると、硬化し、可撓性のある樹脂となる。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420に紫外線レーザ光を照射するよう制御しながら、各層を順次造形していく。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物を収容体440から取り出す。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1(ひいては、クッションパッド310又はバックパッド320)が得られる。
【0062】
なお、多孔質構造体1を樹脂で構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を、オーブンの中で加熱してもよい。その場合、多孔質構造体1を構成する各層どうしの結合を強化し、それにより多孔質構造体1の異方性を低減できるので、多孔質構造体1のクッション材としての特性をさらに向上できる。
また、多孔質構造体1をゴムで構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を加硫してもよい。
【0063】
なお、
図17に示す変形例のように、3Dプリンタ400による造形中に、配合が異なる複数種類の材料をメイン材MMとして用いてもよい。その場合、3Dプリンタ400は、複数のメイン材ノズル421を備えるとよい。これによって、例えば、造形物としての多孔質構造体1を、部位によって異なる配合の材料で構成することが可能になり、ひいては、部位によって特性(硬さ、通気性等)を異ならせることが可能になる。
従来の金型等を用いる製造方法では、多孔質構造体を一体に構成しつつ、部位によって異なる配合の材料で構成することが難しかった。そのため、部位によって異なる配合の材料で構成する際には、異なる配合の材料で構成された複数の別部材の多孔質構造体をそれぞれ別々に製造し、それにより得られた各多孔質構造どうしを、接着剤等により貼り合わせる必要があった。そのため、製造にあたって、時間や手間が掛かっていた。
しかし、3Dプリンタ400を用いれば、簡単に、また、短時間で、構造体を一体に構成しつつ、部位によって異なる配合の材料で構成することが可能になる。
【0064】
図18(a)は、
図15のクッションパッド310の左右方向に平行なG-G線に沿った断面の一例を示している。
図18(a)の例では、クッションパッド310を構成する多孔質構造体1が、メインパッド部311の表面側部分を構成する第1部分11と、サイドパッド部312を構成する第2部分12と、メインパッド部311の裏面側部分を構成する第3部分13と、を有しており、これらが一体に構成されている。
このとき、第2部分12は、第1部分11よりも硬いと、好適である。これにより、着座者が、左右両側のサイドパッド部312によって、しっかりとホールドされている感覚を得ることができる。
また、第1部分11は、第3部分13よりも硬いと、好適である。これにより、着座者が着座する際に、着座者が、着座し始めは柔らかく、後のほうで硬くなるような、着座感を感じることができる。
なお、第2部分12と第3部分13は、硬さが同じでもよい。
また、メインパッド部311の全体が、同じ硬さに構成されてもよい。
多孔質構造体1の第1部分11、第2部分12、第3部分13の硬さを上述のように調整する方法としては、例えば、
図17の例の製造方法を用いることにより、多孔質構造体1における第1部分11、第2部分12、第3部分13のそれぞれを構成する材料を異ならせる方法や、それに加えて/代えて、多孔質構造体1における第1部分11、第2部分12、第3部分13のそれぞれの、構成(骨格部2の構成(各セル孔の直径や形状、各骨部2Bの比A0/A1、各骨一定部2B1の幅W0等)、膜3の有無や数、各部分の体積のうち骨格部2の占める体積の割合等)を異ならせる方法を、用いるとよい。
【0065】
図18(b)は、
図15のバックパッド320の左右方向に平行なH-H線に沿った断面の一例を示している。
図18(b)の例では、バックパッド320を構成する多孔質構造体1が、メインパッド部321を構成する第1部分11と、サイドパッド部322を構成する第2部分12と、を有しており、これらが一体に構成されている。
このとき、第2部分12は、第1部分11よりも硬いと、好適である。これにより、着座者が、左右両側のサイドパッド部322によって、しっかりとホールドされている感覚を得ることができる。
多孔質構造体1の第1部分11、第2部分12の硬さを上述のように調整する方法としては、
図18(a)の例と同様に、例えば、多孔質構造体1における第1部分11、第2部分12のそれぞれを構成する材料を異ならせる方法や、それに加えて/代えて、多孔質構造体1における第1部分11、第2部分12のそれぞれの、構成(骨格部2の構成(各セル孔の直径や形状、各骨部2Bの比A0/A1、各骨一定部2B1の幅W0等)、膜3の有無や数、各部分の体積のうち骨格部2の占める体積の割合等)を異ならせる方法を、用いるとよい。
【実施例】
【0066】
本発明の多孔質構造体の比較例、実施例の評価について、以下に説明する。
【0067】
[実施例1~2]
本発明の多孔質構造体の実施例1~2は、それぞれPC上で作成される3D-CADモデルである。実施例1~2の多孔質構造体のモデルは、いずれも、
図1~
図10に示す例の形状を有しており、それぞれを構成する材料の物性(剛性等)は同じであった。実施例1~2の多孔質構造体のモデルの体積は、一般的なシートパッドのテストブロック(より具体的には車両用シートパッド)と同等に、約500cm
3である。実施例1~2の多孔質構造体のモデルは、それぞれの単位部Uの寸法が互いに異なり、それに伴い、それぞれの第1セル区画部21及び第2セル区画部22の大きさや骨格部2の太さが互いに異なるものである。実施例1~2のモデルは、いずれも、多孔質構造体を構成する各骨部2Bが、0.15≦A0/A1<1.0を満たしている。
表1は、実施例1~2のモデルにおける、各第1セル孔C1の直径と各骨一定部2B1の幅W0とを、示している。
実施例1~2の各例について、製造性と、シートパッドに適用した場合の形状精度とを、評価する。
(製造性の評価)
製造性の評価では、各例の多孔質構造体のモデルを処理するPC(パーソナル・コンピュータ)への負荷が現実的であるかにつき評価する。近年において一般的なCAD用PCで処理できる場合は「○」と評価し、近年において比較的高いスペックを持つPCであれば処理できる場合には「△」と評価し、近年において比較的高いスペックを持つPCであっても処理できない(処理速度が極端に遅くなる、フリーズする等)場合には「×」と評価する(表1)。製造性の評価が高いほど、近年のコンピュータ処理能力を考慮した場合に、多孔質構造体の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ)、及び、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成しやすく、また、その3D造形用データに従って3Dプリンタが造形しやすいことを意味する。
(シートパッドに適用した場合の形状精度の評価)
シートパッドに適用した場合の形状精度の評価では、各例の多孔質構造体のモデルの外縁(外輪郭)形状を、シートパッド(より具体的には車両用シートパッド)の形状にした場合に、求められる形状精度が得られるかについて評価する。一般的なシートパッドにおいて求められる形状(最小の曲率半径が約10mm程度)を形成できる場合は「○」と評価し、一般的なシートパッドにおいて求められる形状を形成することが難しい場合は「×」と評価する(表1)。シートパッドに適用した場合の形状精度の評価が高いほど、多孔質構造体をシートパッドに適用した場合の外観を向上できることを意味する。
【0068】
【0069】
表1からわかるように、直径が5mm以上のセル孔を有する実施例1~2は、十分に良好な製造性が得られるとともに、シートパッドに適用した場合の形状精度ひいては外観も良好になる。
【0070】
[実施例3]
本発明の多孔質構造体の実施例3は、PC上で作成される3D-CADモデルである。実施例3の多孔質構造体のモデルは、
図12に一部点線で示す例の形状を有している。
表2は、実施例3のモデルにおける、各骨部2Bの比A0/A1を、示している。
実施例3について、表面のタッチ感を、評価する。
(表面のタッチ感の評価)
表面のタッチ感の評価では、実施例3の多孔質構造体のモデルについて、荷重-たわみ線図を解析により作成し、作成した荷重-たわみ線図の初期(荷重掛け始め)の傾きを、表面のタッチ感として評価する(表2)。表面のタッチ感が柔らかいものほど、着座する際の、着座し始めのタイミングで、着座者に、より柔らかい感触を与える。
【0071】
【0072】
表2からわかるように、表面のタッチ感が中程度である実施例3は、高級車及びスポーツ車の両方のシートパッドへの適用性がよい。
【0073】
[実施例4~5]
本発明の多孔質構造体の実施例4~5は、
図1~
図10に示す例の形状を有しており、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合(VB×100/VS [%])のみが、互いに異なるものである。実施例4~5の多孔質構造体は、それぞれの体積や各単位部Uの寸法、それぞれを構成する材料の物性(剛性等)が、同じである。実施例4~5は、いずれも、多孔質構造体を構成する各骨部2Bが、0.15≦A0/A1<1.0を満たしている。
表3は、実施例4~5における、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合(VB×100/VS [%])を、示している。
実施例4~5の各例について、25%硬度を、評価する。
(25%硬度の評価)
各例の多孔質構造体について、インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にて、100mmのテストブロックの多孔質構造体を25%圧縮するのに要する荷重(N)を測定し、その測定値を、25%硬度とする(表3)。
【0074】
【0075】
表3からわかるように、実施例4~5においては、VB×100/VSの値が高くなるほど、25%硬度が高くなり、ひいては、多孔質構造体が硬くなる。実施例4~5における25%硬度は、クッション材として、特には着座用のクッション材(シートパッド等)として、さらに特には車両用のシートパッドとして、良好なものであり、特に、そのうち実施例4の25%硬度は、より良好なものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の多孔質構造体、及び、本発明の多孔質構造体の製造方法又は3D造形用データを用いて製造される多孔質構造体は、クッション材に用いられるのが好適であり、着座用のクッション材(シートパッド等)に用いられるのがより好適であり、車両用シートパッドに用いられるのがさらに好適である。
【符号の説明】
【0077】
1:多孔質構造体、 2:骨格部、 2B:骨部、 2Be:骨部の端部、 2B1:骨一定部、 2B2:骨変化部、 2B21:骨変化部の結合部側の端、 2B22:骨変化部の骨一定部側の端、 2B23:骨変化部の傾斜面、 2J:結合部、 3:膜、 11:多孔質構造体の第1部分、 12:多孔質構造体の第2部分、 13:多孔質構造体の第3部分、 21:第1セル区画部、 22:第2セル区画部、 211:第1環状部、 211L:第1大環状部、 211S:第1小環状部、 2111:第1環状部の内周側縁部、 222:第2環状部、 2221:第2環状部の内周側縁部、 300:車両用シートパッド、 310:クッションパッド、 311:メインパッド部、 312:サイドパッド部、 320:バックパッド、 321:メインパッド部、 322:サイドパッド部、 400:3Dプリンタ、 410:制御部、 420:造形部、 421:メイン材ノズル、 422:サポート材ノズル、 430:支持台、 440:収容体、 MM:メイン材、 SM:サポート材、 500:3D造形用データ、 C:セル孔、 C1:第1セル孔、 C2:第2セル孔、 O:骨格線、 U:多孔質構造体の単位部、 V1:第1仮想面、 V1L:第1大仮想面、 V1S:第1小仮想面、 V2:第2仮想面