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特許7389056水性混合物に含まれる含酸素化合物を原料とした、炭化水素および芳香族化合物を製造するための触媒的方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】水性混合物に含まれる含酸素化合物を原料とした、炭化水素および芳香族化合物を製造するための触媒的方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20231121BHJP
   B01J 23/20 20060101ALI20231121BHJP
   B01J 23/14 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C10G3/00 B
B01J23/20 Z
B01J23/14 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020565950
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 ES2019070340
(87)【国際公開番号】W WO2019224412
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P201830508
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】593005895
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオル・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
(73)【特許権者】
【識別番号】516365529
【氏名又は名称】ウニヴェルシダッド ポリテクニカ デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ドミネ,マルセロ エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス-アローヨ ナランホ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ニエト,ホセ マヌエル
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/162900(WO,A1)
【文献】特表2019-512530(JP,A)
【文献】特表2012-501338(JP,A)
【文献】特表2010-535703(JP,A)
【文献】特表2017-525662(JP,A)
【文献】特表2016-523789(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105339304(CN,A)
【文献】国際公開第2018/042804(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0079566(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008864(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0255171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 3/00
B01J 23/20
B01J 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする、炭化水素と芳香族化合物との混合物の製造方法:
(a)バイオマスの一次処理に由来する含酸素有機化合物を含有する水性混合物と、触媒とを接触させる工程であって、上記触媒は、SnとNbとの混合金属酸化物、SnとTiとの混合金属酸化物、およびSnとTiとNbとの混合金属酸化物の少なくとも一つを含有し、上記混合金属酸化物は、焼成状態で、少なくとも65重量%以上のSnOのルチル結晶相によって構成されているものであり、上記触媒は、水に希釈され又は溶解された前駆体化合物から共沈されることにより調製されたものであって、上記前駆体化合物は、SnとNb、SnとTi、及びSnとTiとNbとの組み合わせを含む、工程、
(b)上記混合物と上記触媒とを、触媒反応器中、水素の非存在下、1~120バールの圧力下、50~450℃の温度で反応させる工程、
(c)工程(b)で得られた産物を、水相と有機相との液/液分離の手法によって回収する工程。
【請求項2】
上記触媒は、以下の化学式にて示されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法:
SnNbTi
-Mは、遷移金属、希土類元素、またはランタニドの群から選択される化学元素であり、-aは、0.05~10.0に含まれ、
-bおよびcは、0~10.0に含まれ、かつ、c+bは、ゼロ以外であり(c+b≠0)、
-dは、0~4.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Nb、Ti、および、元素Mの酸化状態に依存する値である。
【請求項3】
dがゼロであって、かつ、上記触媒が以下の化学式にて示されるものであることを特徴とする、請求項2に記載の方法:
SnNbTi
-aは、0.05~10.0に含まれ、
-bおよびcは、0.05~10.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Nb、および、Tiの酸化状態に依存する値である。
【請求項4】
cがゼロであって、かつ、上記触媒が以下の化学式にて示されるものであることを特徴とする、請求項2に記載の方法:
SnNb
-Mは、遷移金属、希土類元素、またはランタニドの群から選択される化学元素であり、-aおよびbは、0.05~10に含まれ、
-dは、0~4.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Nb、および、Mの酸化状態に依存する値である。
【請求項5】
bがゼロであって、かつ、上記触媒が以下の化学式にて示されるものであることを特徴とする、請求項2に記載の方法:
SnTi
-Mは、遷移金属、希土類元素、またはランタニドの群から選択される化学元素であり、-aおよびcは、0.05~10に含まれ、
-dは、0~4.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Ti、および、Mの酸化状態に依存する値である。
【請求項6】
上記元素Mが、遷移金属、希土類元素、またはランタニドの群から選択され、かつ、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ta、Ti、Re、La、および、それらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項2、4および5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記バイオマスに由来する水性混合物が、1~12個の炭素原子を有する含酸素有機化合物を含有し、さらに、上記有機化合物が、1~9個の酸素原子を含有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記バイオマスに由来する水性混合物中に存在する、上記含酸素有機化合物の合計濃度が、0.5~99.5重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記バイオマスに由来する水性混合物中に存在する、上記含酸素有機化合物の合計濃度が、1.0~70.0重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
上記水性混合物と上記触媒との間の接触が、バッチ反応器、連続撹拌タンク反応器、連続固定床反応器、および連続流動床反応器から選択される反応器内で行われることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記反応器がバッチ反応器であって、かつ、上記反応が液相中で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記工程が1~80バールの作動圧力で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記工程が100℃~350℃の反応温度で行われることを特徴とする、請求項1または1に記載の方法。
【請求項14】
上記バイオマスに由来する含酸素有機化合物を含む上記水性混合物と、上記触媒との接触時間が、2分~200時間の範囲で行われることを特徴とする、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記バイオマスに由来する含酸素有機化合物を含む上記水性混合物と、上記触媒との重量比が、1~200であることを特徴とする、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
上記反応器が、固定床反応器または流動床反応器であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
応温度が100~350℃であり、触時間が0.001~200秒であり、動圧力が1~100バールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記含酸素有機化合物を含む水性画分と、上記触媒との接触が、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、空気雰囲気下、窒素富化空気雰囲気下、アルゴン富化空気雰囲気下、または、それらの組み合わせの雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上記接触が、窒素雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、バイオマス(主に、リグノセルロース型のバイオマス、および、その誘導体)を輸送手段のための液体燃料へ変換するための固体触媒の合成および利用に関する分野に属する。
【0002】
〔従来技術〕
バイオマスは、COと共に、木炭の主要かつ再生可能な原料の1つである。バイオマス(主に、植物、または、リグノセルロース型のバイオマス)およびその誘導体の回収は、燃料および化学製品の製造のための化石燃料の使用に対して、持続可能な代替手段に相当する。これにより、再生不可能な資源の枯渇およびこれらに伴う環境問題という明白な問題点を減らすことができる[G.W. Huber, S. Iborra, A. Corma. Chemical Reviews, 106 (2006) 4044]。この点に関して、バイオリファイナリー(bio-refinery)およびバイオエコノミー(bio-economy)という新たな概念において、所望の他の化学製品と共に、バイオ燃料を同時に製造することは不可欠である。また、第二世代バイオマス(食物とは競合しない)の処理のための新たな革新的な戦略において、バイオ精製プロセスで得られる廃棄物および廃水の再生もまた、必要とされている[F. Cherubini et al., Biofuels, Bioproducts and Biorefining, 3 (2009) 534]。
【0003】
これに関して、リグノセルロース型のバイオマスの一次処理(例えば、発酵プロセスだけでなく、熱分解、液化、熱的または触媒的な加水分解を含むプロセスを経る処理)の後、水性画分が得られ得る。当該水性画分は、含酸素有機化合物(oxygenated organic compounds)(すなわち、酸、アルデヒド、アルコール、多価アルコール、糖、フラン、フェノール等)の混合物を含み、当該有機化合物は、現在のところ開発されていない[A.Corma, S. Iborra, A. Velty, Chemical Reviews, (2007) 2411]。このように、熱的または触媒的な熱分解プロセスによって、熱分解油またはバイオ液体が主に得られ得る。当該バイオ液体は、200よりも多い成分の複合混合物であり、種々の割合の水と、異なる分子サイズの、主として含酸素有機化合物(すなわち、アルコール、ケトン、酸、多価アルコール、フラン、フェノール等)とを含み、高い酸素含有量および高い反応性が特徴である。また、バイオ液体は、短鎖カルボン酸(C1~C4)が存在するが故に、酸性度が高く、当該短鎖カルボン酸は、これらの貯蔵および直接的な使用を困難にしている。温度に対する不安定性に加えて、これらの特性の故に、貯蔵および使用に先立って、品質を高める工程を必要とする。これらの混合物は、複雑であるため、全体として処理することが難しい。最もよく利用される戦略の1つは、バイオ液体中の種々の成分を分離して、その後のこれらの処理を容易にする工程からなる[文献US2014/0288338,US2013/0079566,WO2015/08110]。
【0004】
水または有機溶媒をバイオ液体に加えることによる、液/液分離プロセスを行った後、一方では、後に燃料として使用するための所望の種々の有機化合物を含む有機相を得ることができ、他方では、短鎖カルボン酸C1~C4(主に酢酸)と、他の化合物(例えば、アルデヒド、ケトンまたはアルコール、および、少量のフラン化合物および/またはより重い化合物)とを含む、水性画分および廃水を得ることができる。これらは、現在では活用されず、バイオリファイナリーにおいて廃棄物を構成する[M. Asadieraghi et al., Renewable and Sustainable Energy Reviews, 36 (2014) 286, E. E. Iojoiu et al., Applied Catalysis A: Gen. 323 (2007) 147]。
【0005】
これらの含酸素有機化合物(当該有機化合物の多くは、短鎖(<C5)である)は、それ自体では価値がほとんどないが、効果的に変換されて、長鎖の炭化水素と芳香族化合物との混合物を生み出し得る。当該炭化水素および芳香族化合物は、自動車用の液体燃料における、前駆物質、成分および/または添加物として非常に有用である。これらの化合物(炭化水素および芳香族化合物)は、アルコールとの縮合反応、ケトン化反応およびアルキル化反応(これらの反応は連続して起こる)を含む反応を介した炭素-炭素結合の形成によって製造される[C.A. Gaertner et al. Journal of Catalysis, 266 (2009) 71]。さらに、系に存在する有機分子が多様であることを考えると、これらの水性複合混合物の処理の間に、他の反応(例えば、脱炭酸反応、脱水反応、またはエステル化反応)が起こり得る。
【0006】
この目的を達成するために、最小限の工程数で効率よく所望の反応を行うことができる、新規の触媒、および触媒プロセスを開発する必要がある。これに関して、Ce-Zr酸化物が混合された固形触媒の研究が、非常に関連している[A. Gangadharan et al., Applied Catalysis A: Gen. 385 (2010) 80-91]。当該固形触媒は、主にアルドール縮合およびケトン化プロセスによって、カルボン酸および水の存在下にて、低分子量のアルデヒド(例えば、プロパノール)の高温(>300℃)の気相への変換が可能である。これらの材料の活性は、これらの多機能な特徴点に起因する。当該特徴点は、協調的に機能することができる、分離され、よく分散されている活性部位(例えば、酸ベース部位および酸化還元部位)である。しかし、反応条件下(水が存在し、かつ、高温である)での触媒の安定性は、この種類の用途のために開発される新規な材料の改良にとって重要である。
【0007】
近年、Nb酸化物を基盤とする材料が、水熱合成(A. Femandez-Arroyo et al., Catalysis Science & Technology 7 (2017) 5495-5499)、および、疑似結晶構造(単一の結晶軸に沿って並んでいる構造)を有するNb-W混合酸化物(WO2017162900)を用いる手段によって合成されるとともに、酸性度の特性が向上された。これらの材料は、水中における含酸素化合物の連続的な縮合反応における、活発な触媒となることが見出された。これらの材料は、所望の生成物の収率がCe-Zr混合酸化物触媒が示す収率に近く、また、反応条件下にて一定の耐性および安定性を示した。しかし、これらの種類の適用を効率的に発展させるためには、水性媒体中、高温および高圧条件下で働く触媒の触媒活性および安定性の両方を改善しなければならない。
【0008】
〔発明の開示〕
本発明は、炭化水素と芳香族化合物との混合物を製造する触媒的方法に関し、当該触媒的方法は、少なくとも以下の工程を含み得る:
(a)バイオマスの一次処理に由来する含酸素有機化合物を含有する水性混合物と、触媒とを接触させる工程であって、当該触媒が、自身の組成として少なくとも以下の成分を含有し得、当該成分は、焼成状態で、主にSnOのルチル結晶相によって構成されている(65質量%以上)ものである、工程、
-SnおよびNb;または、Sn-Nbと、他の遷移金属、希土類元素またはランタニドとの組み合わせ、
-SnおよびTi;または、Sn-Tiと、他の遷移金属、希土類元素またはランタニドとの組み合わせ、
-Sn、NbおよびTi;または、Sn-Nb-Tiと、他の遷移金属、希土類元素またはランタニドとの組み合わせ、
(b)上記混合物と上記触媒とを、触媒反応器中、水素の非存在下、1~80バールの圧力下、100~350℃の温度で反応させる工程;
(c)工程(b)で得られた生成物を、水相と有機相との液/液分離の手段によって回収する工程。
【0009】
特定の実施形態によると、炭化水素と芳香族化合物(好ましくはC5~C16)との混合物中のバイオマスに由来する水性画分中に存在する含酸素有機化合物の触媒的縮合反応のための本発明の方法は、以下の化学式を有する触媒を使用してもよい:
SnNbTi
-Mは、遷移金属、希土類元素、またはランタニドの群から選択される化学元素であり、
-aは、0.05~10.0に含まれ、
-bおよびcは、0~10.0に含まれ、かつ、c+bは、ゼロ以外であり(c+b≠0)、
-dは、0~4.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Nb、Ti、および元素Mの酸化状態に依存する値である。
【0010】
当該実施形態によると、上記触媒は、少なくともSnと、Nbおよび/またはTiとを含み、その焼成状態で、少なくともNbおよび/またはTiを含むSnOのルチル結晶相によって主に構成されている混合金属酸化物として存在する。
【0011】
上記触媒は、所望の原子比率を有する、種々の元素の化合物の溶液、同様の純元素(pure element)を含む溶液、または、これらの混合物を出発原料とする、従来の方法によって調整され得る。上記溶液は、好ましくは水溶液である。
【0012】
本発明の他の特定の実施形態によると、上記触媒は、少なくとも以下の工程を含む方法によって得られる:
a)種々の元素の化合物、純元素の化合物、または、これらの混合物を混合する、第1工程、
b)第1工程で得られる固体を乾燥させる、第2工程、および、
c)第2工程で得られる乾燥固体を焼成させる、第3工程。
【0013】
上記混合する工程は、種々の元素の化合物を出発材料として、溶液中の純元素自体を出発原料として、共沈法または水熱法を用いて行われ得る。
【0014】
上記元素Sn、Nb、Ti、および上記金属Mは、純金属元素(pure metal element)、塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物として、上記混合する工程に添加され得る。以下は、好ましくは塩として用いられるが、これらの例に限定されない:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。
【0015】
Snは、好ましくは、酸化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、塩化スズ、フッ化スズ、スズイソプロポキシド、シュウ酸スズ、または、硫酸スズとして、上記混合する工程に添加され得る。
【0016】
Nbは、好ましくは、五酸化ニオブ、シュウ酸ニオブ、塩化ニオブ、または、Nb金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0017】
Tiは、好ましくは、二酸化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ硫酸チタン、硝酸チタン、四塩化チタン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、または、Ti金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0018】
上記混合する工程は、反応器内での静的な滞留期間に続いて行われ得る。または、上記混合する工程は、撹拌を伴って行われ得る。上記静的な滞留、および、上記撹拌の両方は、通常の反応器またはオートクレーブの中で行われ得る。
【0019】
上記混合する工程は、溶液中で行われ得る、または、水熱処理によって行われ得る。
【0020】
上記乾燥させる工程は、オーブン内での従来の方法、撹拌による気化、ロータリーエバポレーターによる気化、または、真空乾燥を用いて行われ得る。
【0021】
上記乾燥固体を焼成させる工程は、空気、または、空気と他のガスとの混合物のみならず、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、または、それらの混合物)によって形成された雰囲気下において、行われ得る。
【0022】
上記焼成させる工程は、不活性ガスの流れ(1~400h-1の空間速度を有する)を通過させることによって、または、静的に行われ得る。上記温度は、250~850℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。焼成時間は決まっていないが、好ましくは0.5~20時間の範囲である。加熱速度は決まっていないが、好ましくは0.1~10℃/分の範囲である。上記触媒は、最初に、200~350℃(より好ましくは240~290℃)の温度までの酸化雰囲気下で焼成され得、その後、不活性雰囲気下で焼成され得る。
【0023】
当該実施形態によると、上述したように、上記触媒は、元素の共沈によって、種々の元素を含む前駆体化合物から、または、溶液中の純元素自身から得られる。元素Sn、Nb、Ti、および、元素Mを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。溶液中での元素の共沈は、塩基性化合物を加えることによる、pHの変化の制御によって行われる。塩基性化合物は、特に限定されないが、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウムまたはアンモニア水、および、アルカリ金属の次亜塩素酸塩から選択される。一度pHが制御されると、上記溶液は、熟成させるために放置され、その後、得られた固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0024】
別の実施形態において、上記触媒は、水熱合成法を用いて得られるものであり(合成に2つ以上の元素(特に、Sn、Nb、Ti、および元素M)を含む)、当該水熱合成法では、合成温度および合成時間が決められ得る。それゆえ、上記合成温度は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは150~180℃である。上記合成時間は、好ましくは6~500時間であり、さらに好ましくは24~200時間である。
【0025】
別の実施形態において、上記触媒は、主にルチル結晶相を有するSnO材料に、元素Nb、Ti、および元素Mを含む前駆体化合物を含浸させることによって得られる。元素Nb、Ti、および元素Mを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは、塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、それらの混合物、好ましくは水。上記SnO材料中への上記元素の含浸は、湿式含浸法、初期体積への含浸、または、細孔体積への含浸によって行われ得るが、これらの例に限定されない。一度、含浸された固体が得られると、当該固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0026】
上記触媒は、一度焼成されて得られると、そのままで、本発明の方法に使われ得る。
【0027】
別の実施形態において、上記触媒は、固体(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、これらの混合物、または、シリコンカーバイド)上に、担持および/または希釈され得る。このような場合では、上記担持体上への上記触媒の種々の元素の固定は、従来の含浸法(例えば、細孔体積)、過剰溶解、または、単純に上記活性元素を含む溶液を担持体上へ沈着させること、によって行われ得る。
【0028】
本発明の他の特定の実施形態によると、触媒として、組成SnNbTiにてdがゼロである、以下の化学式で示される触媒を用いてもよい:
SnNbTi
-aは、0.05~10.0に含まれ、
-bおよびcは、0.0001~10.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Nb、および、Tiの酸化状態に依存する値である。
【0029】
本実施形態によると、上記触媒は、少なくともSn、Nb、および、Tiを含み、その焼成状態では、少なくともNbおよび/またはTiを含むSnOのルチル結晶相によって主に構成されている金属混合酸化物として存在するという、条件を満たすものでなければならない。
【0030】
上記の触媒は、所望の原子比率を有する、種々の元素の化合物の溶液、同様の純元素の溶液、または、これらの混合物を出発原料とする、従来の方法によって調整され得る。上記溶液は、好ましくは、水溶液である。
【0031】
本発明の他の特定の実施形態によると、上記触媒は、少なくとも以下の工程を含む方法によって得られる:
a)種々の元素の化合物、純元素の化合物、または、これらの混合物を混合する、第1工程、
b)第1工程で得られる固体を乾燥させる、第2工程、および、
c)第2工程で得られる乾燥固体を焼成させる、第3工程。
【0032】
混合する工程は、種々の元素の化合物を出発材料として、溶液中の純元素自体を出発原料として、共沈法または水熱法を用いて行われ得る。
【0033】
上記元素Sn、Nb、およびTiは、純金属元素、塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物として、上記混合する工程に添加され得る。以下は、好ましくは、塩として用いられるが、これらの例に限定されない:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。
【0034】
Snは、好ましくは、酸化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、塩化スズ、フッ化スズ、スズイソプロポキシド、シュウ酸スズ、または、硫酸スズとして、上記混合する工程に添加され得る。
【0035】
Nbは、好ましくは、五酸化ニオブ、シュウ酸ニオブ、塩化ニオブ、または、Nb金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0036】
Tiは、好ましくは、二酸化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ硫酸チタン、硝酸チタン、四塩化チタン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、または、Ti金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0037】
上記混合する工程は、反応器内での静的な滞留期間に続いて行われ得る。または、上記混合する工程は、撹拌を伴って行われ得る。上記静的な滞留、および、上記撹拌の両方は、通常の反応器またはオートクレーブの中で行われ得る。
【0038】
上記混合する工程は、溶液中で行われ得る、または、水熱処理によって行われ得る。
【0039】
上記乾燥させる工程は、オーブン内での従来の方法、撹拌による気化、ロータリーエバポレーターによる気化、または、真空乾燥を用いて行われ得る。
【0040】
上記乾燥固体を焼成させる工程は、空気、または、空気と他のガスとの混合物のみならず、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、または、それらの混合物)によって形成された雰囲気下において、行われ得る。
【0041】
上記焼成させる工程は、不活性ガスの流れ(1~400h-1の空間速度を有する)を通過させることによって、または、静的に行われ得る。上記温度は、250~850℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。焼成時間は決まっていないが、好ましくは0.5~20時間の範囲である。加熱速度は決まっていないが、好ましくは0.1~10℃/分の範囲である。上記触媒は、最初に、200~350℃(より好ましくは240~290℃)の温度までの酸化雰囲気下で焼成され得、その後、不活性雰囲気下で焼成され得る。
【0042】
当該実施形態によると、上述したように、上記触媒は、元素の共沈によって、種々の元素を含む前駆体化合物から、または、溶液中の純元素自身から得られる。元素Sn、Nb、および、Tiを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記の形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは、塩として用いられ得る:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。溶液中での元素の共沈は、塩基性化合物を加えることによる、pHの変化の制御によって行われる。塩基性化合物は、特に限定されないが、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウムまたはアンモニア水、および、アルカリ金属の次亜塩素酸塩から選択される。一度pHが制御されると、上記溶液は、熟成させるために放置され、その後、得られた固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0043】
別の実施形態において、上記触媒は、水熱合成法を用いて得られるものであり(合成に2つ以上の元素(特に、Sn、Nb、およびTi)を含む)、当該水熱合成法では、合成温度および合成時間が決められ得る。それゆえ、上記合成温度は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは150~180℃である。上記合成時間は、好ましくは6~500時間であり、さらに好ましくは24~200時間である。
【0044】
別の実施形態において、上記触媒は、主にルチル結晶相を有するSnO材料に、元素NbおよびTiを含む前駆体化合物を含浸させることによって得られる。元素NbおよびTiを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは、塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として使用され得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記SnO材料中への上記元素の含浸は、湿式含浸法、初期体積への含浸、または、細孔体積への含浸によって行われ得るが、これらの例に限定されない。一度、上記含浸された固体が得られると、当該固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0045】
上記触媒は、一度焼成されて得られると、そのままで、本発明の方法に使われ得る。
【0046】
別の実施形態において、上述の触媒は、固体(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、これらの混合物、または、シリコンカーバイド)上に、担持および/または希釈され得る。このような場合では、上記担持体上への上記触媒の種々の元素の固定は、従来の含浸法(例えば、細孔体積)、過剰溶解、または、単純に上記活性元素を含む溶液を担持体上へ沈着させること、によって行われ得る。
【0047】
本発明の他の特定の実施形態によると、触媒として、組成SnNbTiにてcがゼロである、以下の化学式で示される触媒を用いてもよい:
SnNb
-Mは、遷移金属、希土類元素、またはランタニドの群から選択される化学元素であり、
-aおよびbは、0.05~10.0に含まれ、
-dは、0~4.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Nb、および、Mの酸化状態に依存する値である。
【0048】
上記の実施形態と同様に、上記式は、上記触媒が、少なくともSnおよびNbを含み、その焼成状態では、Nbがルチル相の構造中に含まれるSnOのルチル結晶相によって主に構成されている混合金属酸化物として存在するという、条件を満たすものでなければならない。
【0049】
上記触媒は、所望の原子比率を有する、種々の元素の化合物の溶液、同様の純元素の溶液、または、これらの混合物を出発原料とする、従来の方法によって調製され得る。上記溶液は、好ましくは、水溶液である。
【0050】
本実施形態の触媒は、少なくとも以下の工程を含む方法によって得られ得る:
a)種々の元素の化合物、純元素の化合物、または、これらの混合物を混合する、第1工程、
b)第1工程で得られる固体を乾燥させる、第2工程、および、
c)第2工程で得られる乾燥固体を焼成させる、第3工程。
【0051】
上記混合する工程は、種々の元素の化合物を出発材料として、溶液中の純元素自体を出発原料として、共沈法または水熱法を用いて行われ得る。
【0052】
上記元素Sn、Nb、および金属Mは、純金属元素、塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物として、上記混合する工程に添加され得る。以下は、好ましくは、塩として用いられるが、これらの例に限定されない:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。
【0053】
Snは、好ましくは、酸化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、塩化スズ、フッ化スズ、スズイソプロポキシド、シュウ酸スズ、または、硫酸スズとして、上記混合する工程に添加され得る。
【0054】
Nbは、好ましくは、五酸化ニオブ、シュウ酸ニオブ、塩化ニオブ、または、Nb金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0055】
上記混合する工程は、反応器内での静的な滞留期間に続いて行われ得る。または、上記混合する工程は、撹拌を伴って行われ得る。上記静的な滞留、および、上記撹拌の両方は、通常の反応器またはオートクレーブの中で行われ得る。
【0056】
上記混合する工程は、溶液中で行われ得る、または、水熱処理によって行われ得る。
【0057】
上記乾燥させる工程は、オーブン内での従来の方法、撹拌による気化、ロータリーエバポレーターによる気化、または、真空乾燥を用いて行われ得る。
【0058】
上記乾燥固体を焼成させる工程は、空気、または、空気と他のガスとの混合物のみならず、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、または、それらの混合物)によって形成された雰囲気下において、行われ得る。
【0059】
上記焼成させる工程は、不活性ガスの流れ(1~400h-1の空間速度を有する)を通過させることによって、または、静的に行われ得る。上記温度は、250~850℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。焼成時間は決まっていないが、好ましくは0.5~20時間の範囲である。加熱速度は決まっていないが、好ましくは0.1~10℃/分の範囲である。上記触媒は、最初に、200~350℃(より好ましくは240~290℃)の温度までの酸化雰囲気下で焼成され得、その後、不活性雰囲気下で焼成され得る。
【0060】
当該実施形態によると、上述したように、上記触媒は、元素の共沈によって、種々の元素を含む前駆体化合物から、または、溶液中の純元素自身から得られる。元素Sn、Nb、および、上記元素Mを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記溶液中での元素の共沈は、塩基性化合物を加えることによる、pHの変化の制御によって行われる。塩基性化合物は、特に限定されないが、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウムまたはアンモニア水、および、アルカリ金属の次亜塩素酸塩から選択される。一度pHが制御されると、上記溶液は、熟成させるために放置され、その後、得られた固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0061】
別の実施形態において、上記触媒は、水熱合成法を用いて得られるものであり(合成に2つ以上の元素(特に、Sn、Nb、および、元素M)を含む)、当該水熱合成法では、合成温度および合成時間が決められ得る。それゆえ、上記合成温度は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは150~180℃である。上記合成時間は、好ましくは6~500時間であり、さらに好ましくは24~200時間である。
【0062】
別の実施形態において、上記触媒は、主にルチル結晶相を有するSnO材料に、Nbおよび元素Mを含む前駆体化合物を含浸させることによって得られる。Nbおよび元素Mを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは、塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記SnO材料中への上記元素の含浸は、湿式含浸法、初期体積への含浸、または、細孔体積への含浸によって行われ得るが、これらの例に限定されない。一度、上記含浸された固体が得られると、当該固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0063】
上記触媒は、一度焼成されて得られると、そのままで、本発明の方法に使われ得る。
【0064】
別の実施形態において、本発明の触媒は、固体(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、これらの混合物、または、シリコンカーバイド)上に、担持および/または希釈され得る。このような場合では、上記担持体上への上記触媒の種々の元素の固定は、従来の含浸法(例えば、細孔体積)、過剰溶解、または、単純に上記活性元素を含む溶液を担持体上へ沈着させること、によって行われ得る。
【0065】
本発明の他の特定の実施形態によると、触媒として、組成SnNbTiにてcおよびdがゼロである、以下の化学式で示される触媒を用いてもよい:
SnNb
-aおよびbは、0.05~10.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、および、Nbの酸化状態に依存する値である。
【0066】
上記の実施形態と同様に、上記触媒は、少なくともSnおよびNbを含み、その焼成状態では、Nbがルチル相の構造中に含まれるSnOのルチル結晶相によって主に構成されている混合金属酸化物として存在するという、条件を満たすものである。
【0067】
上記触媒は、所望の原子比率を有する、種々の元素の化合物の溶液、同様の純元素の溶液、または、これらの混合物を出発原料とする、従来の方法によって調製され得る。上記溶液は、好ましくは、水溶液である。
【0068】
上記触媒は、少なくとも以下の工程を含む方法によって得られ得る:
a)種々の元素の化合物、純元素の化合物、または、これらの混合物を混合する、第1工程、
b)第1工程で得られる固体を乾燥させる、第2工程、および、
c)第2工程で得られる乾燥固体を焼成させる、第3工程。
【0069】
上記混合する工程は、種々の元素の化合物を出発材料として、溶液中の純元素自体を出発原料として、共沈法または水熱法を用いて行われ得る。
【0070】
上記元素SnおよびNbは、純金属元素、塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物として、上記混合する工程に添加され得る。以下は、好ましくは、塩として用いられるが、これらの例に限定されない:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。
【0071】
Snは、好ましくは、酸化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、塩化スズ、フッ化スズ、スズイソプロポキシド、シュウ酸スズ、または、硫酸スズとして、上記混合する工程に添加され得る。
【0072】
Nbは、好ましくは、五酸化ニオブ、シュウ酸ニオブ、塩化ニオブ、または、Nb金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0073】
上記混合する工程は、反応器内での静的な滞留期間に続いて行われ得る。または、上記混合する工程は、撹拌を伴って行われ得る。上記静的な滞留、および、上記撹拌の両方は、通常の反応器またはオートクレーブの中で行われ得る。
【0074】
上記混合する工程は、溶液中で行われ得る、または、水熱処理によって行われ得る。
【0075】
上記乾燥させる工程は、オーブン内での従来の方法、撹拌による気化、ロータリーエバポレーターによる気化、または、真空乾燥を用いて行われ得る。
【0076】
上記乾燥固体を焼成させる工程は、空気、または、空気と他のガスとの混合物のみならず、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、または、それらの混合物)によって形成された雰囲気下において、行われ得る。
【0077】
上記焼成させる工程は、不活性ガスの流れ(1~400h-1の空間速度を有する)を通過させることによって、または、静的に行われ得る。上記温度は、250~850℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。焼成時間は決まっていないが、好ましくは0.5~20時間の範囲である。加熱速度は決まっていないが、好ましくは0.1~10℃/分の範囲である。上記触媒は、最初に、200~350℃(より好ましくは240~290℃)の温度までの酸化雰囲気下で焼成され得、その後、不活性雰囲気下で焼成され得る。
【0078】
当該実施形態によると、上述したように、上記触媒は、元素の共沈によって、種々の元素を含む前駆体化合物から、または、溶液中の純元素自身から得られる。元素Sn、および、Nbを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記溶液中での元素の共沈は、塩基性化合物を加えることによる、pHの変化の制御によって行われる。塩基性化合物は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウムまたはアンモニア水、および、アルカリ金属の次亜塩素酸塩から選択されるが、これらの例に限定されない。一度pHが制御されると、上記溶液は、熟成させるために放置され、その後、得られた固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0079】
別の実施形態において、上記触媒は、水熱合成法を用いて得られるものであり(合成に2つ以上の元素(特に、SnおよびNb)を含む)、当該水熱合成法では、合成温度および合成時間が決められ得る。それゆえ、上記合成温度は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは150~180℃である。上記合成時間は、好ましくは6~500時間であり、さらに好ましくは24~200時間である。
【0080】
別の実施形態において、上記触媒は、主にルチル結晶相を有するSnO材料に、Nbを含む前駆体を含浸させることによって得られる。Nbを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは、塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記SnO材料中へのNbの含浸は、湿式含浸法、初期体積への含浸、または、細孔体積への含浸によって行われ得るが、これらの例に限定されない。一度含浸された固体が得られると、当該固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0081】
上記触媒は、一度焼成されて得られると、そのままで、本発明の方法に使われ得る。
【0082】
別の実施形態において、本発明の触媒は、固体(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、これらの混合物、または、シリコンカーバイド)上に、担持および/または希釈され得る。このような場合では、上記担持体上への上記触媒の種々の元素の固定は、従来の含浸法(例えば、細孔体積)、過剰溶解、または、単純に上記活性元素を含む溶液を担持体上へ沈着させること、によって行われ得る。
【0083】
本発明の他の特定の実施形態によると、触媒として、組成SnNbTiにてbがゼロである、以下の化学式で示される触媒を用いてもよい:
SnTi
-Mは、遷移金属、希土類元素、またはランタニドの群から選択される化学元素であり、
-aおよびcは、0.05~10に含まれ、
-dは、0~4.0に含まれ、および、
-eは、元素Sn、Ti、および、Mの酸化状態に依存する値である。
【0084】
上記の実施形態と同様に、上記触媒は、少なくともSnおよびTiを含み、その焼成状態では、Tiが上記ルチル相の構造中に含まれるSnOのルチル結晶相によって主に構成されている混合金属酸化物として存在するという、条件を満たすものでなければならない。
【0085】
上記触媒は、所望の原子比率を有する、種々の元素の化合物の溶液、同様の純元素の溶液、または、これらの混合物を出発原料とする、従来の方法によって調製され得る。上記溶液は、好ましくは、水溶液である。
【0086】
本実施形態の触媒は、少なくとも以下の工程を含む方法によって得られ得る:
a)種々の元素の化合物、純元素の化合物、または、これらの混合物を混合する、第1工程、
b)第1工程で得られる固体を乾燥させる、第2工程、および、
c)第2工程で得られる乾燥固体を焼成させる、第3工程。
【0087】
上記混合する工程は、種々の元素の化合物を出発材料として、溶液中の純元素自体を出発原料として、共沈法または水熱法を用いて行われ得る。
【0088】
上記元素Sn、Ti、および金属Mは、純金属元素、塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物として、上記混合する工程に添加され得る。以下は、好ましくは、塩として用いられるが、これらの例に限定されない:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。
【0089】
Snは、好ましくは、酸化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、塩化スズ、フッ化スズ、スズイソプロポキシド、シュウ酸スズ、または、硫酸スズとして、上記混合する工程に添加され得る。
【0090】
Tiは、好ましくは、二酸化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ硫酸チタン、硝酸チタン、四塩化チタン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、または、Ti金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0091】
上記混合する工程は、反応器内での静的な滞留期間に続いて行われ得る。または、上記混合する工程は、撹拌を伴って行われ得る。上記静的な滞留、および、上記撹拌の両方は、通常の反応器またはオートクレーブの中で行われ得る。
【0092】
上記混合する工程は、溶液中で行われ得る、または、水熱処理によって行われ得る。
【0093】
上記乾燥させる工程は、オーブン内での従来の方法、撹拌による気化、ロータリーエバポレーターによる気化、または、真空乾燥を用いて行われ得る。
【0094】
上記乾燥固体を焼成させる工程は、空気、または、空気と他のガスとの混合物のみならず、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、または、それらの混合物)によって形成された雰囲気下において、行われ得る。
【0095】
上記焼成させる工程は、不活性ガスの流れ(1~400h-1の空間速度を有する)を通過させることによって、または、静的に行われ得る。上記温度は、250~850℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。焼成時間は決まっていないが、好ましくは0.5~20時間の範囲である。加熱速度は決まっていないが、好ましくは0.1~10℃/分の範囲である。上記触媒は、最初に、200~350℃(より好ましくは240~290℃)の温度までの酸化雰囲気下で焼成され得、その後、不活性雰囲気下で焼成され得る。
【0096】
当該実施形態によると、上述したように、上記触媒は、元素の共沈によって、種々の元素を含む前駆体化合物から、または、溶液中の純元素自身から得られる。元素Sn、Ti、および、元素Mを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記溶液中での元素の共沈は、塩基性化合物を加えることによる、pHの変化の制御によって行われる。塩基性化合物は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウムまたはアンモニア水、および、アルカリ金属の次亜塩素酸塩から選択されるが、これらの例に限定されない。一度pHが制御されると、上記溶液は、熟成させるために放置され、その後、得られた固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0097】
別の実施形態において、上記触媒は、水熱合成法を用いて得られるものであり(合成に2つ以上の元素(特に、Sn、Ti、および、元素M)を含む)、当該水熱合成法では、合成温度および合成時間が決められ得る。それゆえ、上記合成温度は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは150~180℃である。上記合成時間は、好ましくは6~500時間であり、さらに好ましくは24~200時間である。
【0098】
別の実施形態において、上記触媒は、主にルチル結晶相を有するSnO材料に、Tiおよび金属Mを含む前駆体を含浸させることによって得られる。Tiおよび元素Mを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは、塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記SnO材料中への上記元素の含浸は、湿式含浸法、初期体積への含浸、または、細孔体積への含浸によって行われ得るが、これらの例に限定されない。一度含浸された固体が得られると、当該固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0099】
上記触媒は、一度焼成されて得られると、そのままで、本発明の方法に使われ得る。
【0100】
別の実施形態において、本発明の触媒は、固体(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、これらの混合物、または、シリコンカーバイド)上に、担持および/または希釈され得る。このような場合では、上記担持体上への上記触媒の種々の元素の固定は、従来の含浸法(例えば、細孔体積)、過剰溶解、または、単純に上記活性元素を含む溶液を担持体上へ沈着させること、によって行われ得る。
【0101】
本発明の他の特定の実施形態によると、触媒として、組成SnNbTiにてbおよびdがゼロである、以下の化学式で示される触媒を用いてもよい:
SnTi
-aおよびcは、0.05~10に含まれ、および、
-eは、元素Sn、およびTiの酸化状態に依存する値である。
【0102】
上記触媒は、少なくともSnおよびTiを含み、その焼成状態では、Tiがルチル相の構造中に含まれるSnOのルチル結晶相によって主に構成されている混合金属酸化物として存在するという条件を満たす。
【0103】
上記触媒は、所望の原子比率を有する、種々の元素の化合物の溶液、同様の純元素の溶液、または、これらの混合物を出発原料とする、従来の方法によって調製され得る。上記溶液は、好ましくは、水溶液である。
【0104】
本実施形態によれば、上記触媒は、少なくとも以下を含む工程によって得られ得る:
a)種々の元素の化合物、純元素の化合物、または、これらの混合物を混合する、第1工程、
b)第1工程で得られる固体を乾燥させる、第2工程、および、
c)第2工程で得られる乾燥固体を焼成させる、第3工程。
【0105】
上記混合する工程は、種々の元素の化合物を出発材料として、溶液中の純元素自体を出発原料として、共沈法または水熱法を用いて行われ得る。
【0106】
上記元素Sn、およびTiは、純金属元素、塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物として、上記混合する工程に添加され得る。以下は、好ましくは、塩として用いられるが、これらの例に限定されない:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。
【0107】
Snは、好ましくは、酸化スズ、酢酸スズ、硝酸スズ、塩化スズ、フッ化スズ、スズイソプロポキシド、シュウ酸スズ、または、硫酸スズとして、上記混合する工程に添加され得る。
【0108】
Tiは、好ましくは、二酸化チタン、オキシ塩化チタン、オキシ硫酸チタン、硝酸チタン、四塩化チタン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、または、Ti金属として、上記混合する工程に添加され得る。
【0109】
上記混合する工程は、反応器内での静的な滞留期間に続いて行われ得る。または、上記混合する工程は、撹拌を伴って行われ得る。上記静的な滞留、および、上記撹拌の両方は、通常の反応器またはオートクレーブの中で行われ得る。
【0110】
上記混合する工程は、溶液中で行われ得る、または、水熱処理によって行われ得る。
【0111】
上記乾燥させる工程は、オーブン内での従来の方法、撹拌による気化、ロータリーエバポレーターによる気化、または、真空乾燥を用いて行われ得る。
【0112】
上記乾燥固体を焼成させる工程は、空気、または、空気と他のガスとの混合物のみならず、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、または、それらの混合物)によって形成された雰囲気下において、行われ得る。
【0113】
上記焼成させる工程は、不活性ガスの流れ(1~400h-1の空間速度を有する)を通過させることによって、または、静的に行われ得る。上記温度は、250~850℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。焼成時間は決まっていないが、好ましくは0.5~20時間の範囲である。加熱速度は決まっていないが、好ましくは0.1~10℃/分の範囲である。上記触媒は、最初に、200~350℃(より好ましくは240~290℃)の温度までの酸化雰囲気下で焼成され得、その後、不活性雰囲気下で焼成され得る。
【0114】
当該実施形態によると、上述したように、上記触媒は、元素の共沈によって、種々の元素の前駆体化合物から、または、溶液中の純元素自身から得られる。元素Sn、およびTiを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記溶液中での元素の共沈は、塩基性化合物を加えることによる、pHの変化の制御によって行われる。塩基性化合物は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウムまたはアンモニア水、および、アルカリ金属の次亜塩素酸塩から選択されるが、これらの例に限定されない。一度pHが制御されると、上記溶液は、熟成させるために放置され、その後、得られた固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0115】
別の実施形態において、上記触媒は、水熱合成法を用いて得られるものであり(合成に少なくとも2元素(特に、SnおよびTi)を含む)、当該水熱合成法では、合成温度および合成時間が決められ得る。それゆえ、上記合成温度は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは150~180℃である。上記合成時間は、好ましくは6~500時間であり、さらに好ましくは24~200時間である。
【0116】
別の実施形態において、上記触媒は、主にルチル結晶相を有するSnO材料に、Tiを含む前駆体を含浸させることによって得られる。Tiを含む前駆体化合物として、以下が用いられ得る:塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、または、上記形態の2つ以上の混合物。以下は、好ましくは、塩として用いられる:硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、または、ハロゲン化物。以下は、溶媒として用いられ得る:水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジオキサン、または、これらの混合物、好ましくは水。上記SnO材料中への上記元素の含浸は、湿式含浸法、初期体積への含浸、または、細孔体積への含浸によって行われ得るが、これらの例に限定されない。一度含浸された固体が得られると、当該固体は、洗浄され、乾燥され、および、焼成工程に供されて、反応に使用する前に、材料を活性化させる。
【0117】
本実施形態の触媒は、一度焼成されて得られると、そのままで、本発明の方法に使われ得る。
【0118】
別の実施形態において、本発明の触媒は、固体(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、これらの混合物、または、シリコンカーバイド)上に、担持および/または希釈され得る。このような場合では、上記担持体上への上記触媒の種々の元素の固定は、従来の含浸法(例えば、細孔体積)、過剰溶解、または、単純に上記活性元素を含む溶液を担持体上へ沈着させること、によって行われ得る。
【0119】
本発明の方法は、先行技術に対して以下の利点を有する:
-SnおよびNi、SnおよびTi、Sn-Nbと他の元素との組み合わせ、または、Sn-Tiと他の元素との組み合わせを含む触媒であって、少なくともSnおよびNb、または、SnおよびTiが混合酸化物の形態で存在する触媒は、C5~C8の炭化水素の収量がCe-Zrに基づく触媒で報告された収量よりも多く、全収量(約20%)は、Ce-Zr材料にて観察される全収量に匹敵する;
-上記触媒は、他の報告されている触媒材料よりも、反応条件下で安定性および耐久性が高い;
-上記触媒は、他の触媒材料に関する文献に報告されているデータと比較すると、上記方法の実行に必要な温度が低い。
【0120】
本発明によると、上記金属Mは、希土類元素、および、ランタニド(好ましくは、La)のみならず、遷移金属群(好ましくは、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ta、Ti、Re、および、これらの組み合わせ)から選択され得る。
【0121】
特定の実施形態によると、上記金属Mは、V、Mn、Cu、Zn、La、および、これらの組み合わせから選択される。
【0122】
本発明の方法によると、本方法の最後には、5~16個の炭素原子を有する炭化水素と芳香族化合物との混合物を得ることができる。
【0123】
特定の実施形態によると、得られる生成物は、5~16個の炭素原子を有し、さらに0~4個の酸素原子を有すことが可能であり、より好ましくは0~2個の酸素原子を有することが可能である、直鎖状脂肪族炭化水素、分枝状脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素から選択され得る。
【0124】
他の特定の実施形態によると、得られる生成物は、5~16個の炭素原子を有する芳香族化合物から選択され得る。当該芳香族化合物は、また、0~4個の酸素原子を含み得る。
【0125】
本発明の方法では、第1工程に導入されるバイオマスに由来する水性混合物は、含酸素有機化合物を含有し得、当該含酸素有機化合物は、1~12個、好ましくは1~9個の炭素原子を含み、更に、1~9個の酸素原子、好ましくは1~6個の酸素原子を含み得る。
【0126】
本発明によると、上記バイオマスに由来する水性混合物中に存在する上記含酸素有機化合物の総濃度は、好ましくは、0.5~99.5重量%の範囲であり、より好ましくは、1.0~70.0重量%である。
【0127】
本発明の上記工程によると、上記水性混合物と上記触媒との接触は、好ましくは、バッチ反応器、連続撹拌タンク反応器、連続固定床反応器、および連続式流動床反応器から選択される反応器内にて行われる。
【0128】
特定の実施形態によると、上記反応器はバッチ反応器であり、上記反応は、液相中で行われ、好ましくは1~80バールの範囲から選択される圧力で行われ、より好ましくは1~50バールの範囲の圧力で行われる。さらに、上記反応は、100~350℃の温度で行われ得、好ましくは140~280℃の温度で行われ得る。上記バイオマスに由来する含酸素有機化合物を含有する上記水性混合物と、上記触媒との接触時間は、2分~200時間の範囲であり得、好ましくは1時間~100時間の範囲であり得る。当該特定の実施形態によると、上記バイオマスに由来する含酸素化合物を含有する上記水性混合物と、上記触媒との重量比は、好ましくは1~200であり得、より好ましくは2.5~100であり得る。
【0129】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法に使用される上記反応器は、固定床反応器または流動床反応器であり得る。このような場合では、上記反応温度は、好ましくは100~350℃の範囲内に含まれ、より好ましくは150~350℃の範囲内に含まれる;上記接触時間(W/F)は、0.001~200秒間である;上記作動圧力は、1~100バールであり、より好ましくは、1~60バールである。
【0130】
上述の方法によると、上記含酸素有機化合物を含む上記水性画分と、上記触媒との接触は、窒素、アルゴン、空気、窒素富化空気、アルゴン富化空気、または、これらの組み合わせによって形成される雰囲気下で行われ得る。
【0131】
特定の実施形態によると、上記工程は、好ましくは、窒素によって形成される雰囲気下で行われる。
【0132】
他の特定の実施形態によると、本工程は、好ましくは、空気、または、窒素富化空気によって形成される雰囲気下で行われる。
【0133】
上述のように、本発明は、バイオマスに由来する水性画分中に存在する含酸素有機化合物の触媒変換によって、炭化水素と芳香族化合物との混合物(好ましくは、5~16個の炭素原子(C5-C16)を含むことが液体燃料において有益である)を得るための、上述の方法で得られる触媒の使用を示す。
【0134】
本発明方法によって処理される、種々の含酸素有機化合物を含むバイオマスに由来する水性画分は、(i)バイオマスの熱的および/または触媒的な熱分解によって製造されるバイオ液体の液-液分離によって得られる水性画分、(ii)バイオマスの化学的および/または酵素的な加水分解によって得られる水性画分、(iii)亜臨界(sub-critical conditions)または超臨界(super-critical conditions)の条件下におけるバイオマスの液化によって得られる水性画分、および、(iv)エタノール、ブタノール、琥珀酸、または乳酸(但し、これらに限定されない)を選択的に製造するための、バイオマスの発酵によって得られる水性画分、から選択され得る。
【0135】
本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、1~12個の炭素原子を含み、好ましくは1~9個の炭素原子を含む、異なる含酸素有機化合物を含み得る。
【0136】
さらに、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、1~9個の酸素原子を含み、好ましくは1~6個の酸素原子を含む、異なる含酸素有機化合物を含み得る。
【0137】
本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、水の量に対して0.5~99.5重量%、好ましくは水の量に対して1.0~70.0重量%の濃度の、異なる含酸素有機化合物を含み得る。
【0138】
特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物としては、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸およびカルボン二価酸(carboxylic diacids)、エステル、エーテル、ジオール、トリオール、および、一般の多価アルコール、糖、フラン誘導体、および、フェノール誘導体が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0139】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、アルコールである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、イソペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、および、フルフリルアルコールが含まれるが、これらの例に限定されない。
【0140】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、アルデヒドである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、2-ブテナール、ペンタナール、2-ペンテナール、3-ペンテナール、ヘキサナール、2-ヘキセナール、3-ヘキセナール、2-メチル-2-ペンテナール、2-メチル-3-ペンテナール、3-メチル-2-ペンテナール、フルフラール、および、5-ヒドロキシ-メチル-フルフラールが含まれるが、これらの例に限定されない。
【0141】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、ケトンである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、ペンテン-2-オン、3-ペンタノン、ペンテン-3-オン、2-ヘキサノン、ヘキセン-2-オン、3-ヘキサノン、ヘキセン-3-オン、イソホロン、バニリン、アセト-バニリン、シリンゴン、および、アセトシリンゴンが含まれるが、これらの例に限定されない。
【0142】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、酸または二価酸である異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、乳酸、ピルビン酸、レブリン酸、タルトロン酸、酒石酸、グリコール酸、琥珀酸、グルコン酸、および、グリカル酸が含まれるが、これらの例に限定されない。
【0143】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、エステルである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、および、酪酸ブチルが含まれるが、これらの例に限定されない。
【0144】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、エーテルである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチル-sec-ブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチル-sec-ブチルエーテル、プロピルブチルエーテル、および、プロピル-sec-ブチルエーテルが含まれるが、これらの例に限定されない。
【0145】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、ジオールである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオールを含むが、これらの例に限定されない。本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、トリオールである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、グリセロール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,4-ヘキサントリオール、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、2,3,5-ヘキサントリオール、2,3,6-ヘキサントリオール、1,3,6-ヘキサントリオール、1,4,6-ヘキサントリオールを含むが、これらの例に限定されない。本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、多価アルコールである異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、単糖(グルコース、フルクトース、アラビノース)が含まれるが、これらの例に限定されない。
【0146】
他の特定の実施形態によると、本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、フラン誘導体である異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、フラン、2-メチル-フラン、5-メチル-フラン、2,5-ジメチル-フラン、2-エチル-フラン、5-エチル-フラン、2,5-ジエチル-フラン、ベンゾフラン、メチル-ベンゾフラン、エチル-ベンゾフランが含まれるが、これらの例に限定されない。
【0147】
本発明の方法によって処理される、バイオマスに由来する水性画分は、フェノール誘導体である異なる含酸素有機化合物を含み得る。当該異なる含酸素有機化合物には、フェノール、ベンジルアルコール、アセトール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、グアヤコール、バニリンアルコール、シリンゴール、および、アセト-シリンゴールが含まれるが、これらの例に限定されない。
【0148】
バイオマスに由来する水性画分中に存在する含酸素化合物の変換の生成物として得られる、5~16個の炭素原子(C5~C16)を有する有機化合物の混合物は、5~16個の炭素原子を有する、直鎖状脂肪族炭化水素、分枝状脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素を含み得る。これらの直鎖状脂肪族炭化水素、分枝状脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素はまた、0~4個の酸素原子、好ましくは0~2個の酸素原子を含み得る。
【0149】
バイオマスに由来する水性画分に存在する含酸素有機化合物の変換の生成物として得られる、5~16個の炭素原子(C5-C16)を有する有機化合物の混合物は、5~16個の炭素原子を有する芳香族化合物を含み得る。当該芳香族化合物はまた、0~4個の酸素原子、好ましくは0~2個の酸素原子を含み得る。上記芳香族化合物は、環中に、1つ、2つ、またはそれ以上の置換基を有し得る。上記置換基には、直鎖状アルキル、分枝状アルキル、環状アルキル、直鎖状アルコキシド、分枝状アルコキシド、環状アルコキシド、アセチル、テトラヒドロフラン、フラン、および芳香族が含まれ得るが、これらの例に限定されない。
【0150】
特に限定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明に関する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で示されている方法および材料と類似または同等の方法および材料は、本発明の実施において使用されてもよい。本明細書および請求項を通して、用語「含む(comprises)」やその変形は、他の技術的特徴、添加物、成分または工程を除外することを意図しない。本発明の追加の目的、利点、および特徴は、明細書を検討した後の当業者にとって技術的に明らかであり、本発明の実施を通して理解され得る。以下の実施形態および図面は、例として提供されるものであって、本発明を限定するものではない。
【0151】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、市販の酸化物(Sn[SnO]、Nb[Nb]、Ti[TiO-アナターゼ]、および[TiO-ルチル])に基づく触媒のX線回折像を示す。
【0152】
図2は、それぞれ、実施例1、2、および3に記載の共沈によって調製された酸化物(Sn(a)[SnO]、Nb(b)[Nb]、およびTi(c)[TiO])に基づく触媒のX線回折像を示す。
【0153】
図3は、実施例4~7に記載のスズおよびニオブの酸化物([Sn-Nb-O])に基づく触媒のX線回折像を示す。
【0154】
図4は、実施例8~11に記載のスズおよびチタンの酸化物([Sn-Ti-O])に基づく触媒のX線回折像を示す。
【0155】
図5は、実施例12~15に記載のスズ、チタンおよびニオブの酸化物([Sn-Nb-Ti-O])に基づく触媒のX線回折像を示す。
【0156】
図6は、Ce-Zr-Oに基づく触媒のX線回折像を示す(実施例16)。
【0157】
図7は、それぞれ、実施例17および18に記載のスズ酸化物([Nb/SnOおよびTi/SnO])上に含浸によって担持されたNbおよびTiに基づく触媒のX線回折像を示す。
【0158】
図8は、反応物質および主要反応生成物の化学構造を示す図面と、上記工程の間に行われる反応の図面と、を示す。
【0159】
図9は、触媒Sn-Nb-O(実施例5)、Sn-Ti-O(実施例10)、およびCe-Zr-O(実施例16)の再利用に伴う触媒活性の安定性および持続性の比較を示す。
【0160】
〔実施例〕
次に、発明者らは、本発明のプロセスにおける触媒の調製および触媒の利用を実証する種々の実験を用いて、本発明を説明する。
【0161】
[実施例1.酸化スズ[SnO]に基づく、共沈法による触媒の調製]
14.72gの塩化スズ(IV)五水和物を200.0mlの水に加え、塩化スズ(IV)五水和物が完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られるゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図2aに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0162】
[実施例2.酸化ニオブ[Nb]に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水の中に、12.73gのシュウ酸ニオブを添加し、シュウ酸ニオブが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られるゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図2bに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0163】
[実施例3.酸化チタン[TiO]に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液を8.48ml添加し、溶液が完全に均一になるまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られるゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図2cに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0164】
[実施例4.モル比Sn/Nb=0.77[Sn-Nb-O(0.77)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、9.82gの塩化スズ(IV)五水和物と4.24gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図3aに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0165】
[実施例5.モル比Sn/Nb=0.58[Sn-Nb-O(0.58)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、7.01gの塩化スズ(IV)五水和物と6.06gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図3bに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0166】
[実施例6.モル比Sn/Nb=0.43[Sn-Nb-O(0.43)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、4.91gの塩化スズ(IV)五水和物と8.48gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図3cに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0167】
[実施例7.モル比Sn/Nb=0.29[Sn-Nb-O(0.29)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、3.51gの塩化スズ(IV)五水和物と12.12gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図3dに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0168】
[実施例8.モル比Sn/Ti=0.74[Sn-Ti-O(0.74)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、14.02gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液2.02mlとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図4aに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0169】
[実施例9.モル比Sn/Ti=0.64[Sn-Ti-O(0.64)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、9.82gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液2.84mlとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図4bに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0170】
[実施例10.モル比Sn/Ti=0.33[Sn-Ti-O(0.33)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、4.91gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液5.68mlとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図4cに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0171】
[実施例11.モル比Sn/Ti=0.18[Sn-Ti-O(0.18)]である、スズおよびニオブの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、3.51gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液8.08mlとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図4dに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0172】
[実施例12.モル比Sn/(Ti+Nb)=0.60[Sn-Nb-Ti-O(0.60)]である、スズ、ニオブおよびチタンの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、9.35gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液1.33mlと、5.05gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図5aに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0173】
[実施例13.モル比Sn/(Ti+Nb)=0.35[Sn-Nb-Ti-O(0.35)]である、スズ、ニオブおよびチタンの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、5.84gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液3.37mlと、5.05gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図5bに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0174】
[実施例14.モル比Sn/(Ti+Nb)=0.29[Sn-Nb-Ti-O(0.29)]である、スズ、ニオブおよびチタンの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、4.67gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液2.70mlと、8.08gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図5cに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0175】
[実施例15.モル比Sn/(Ti+Nb)=0.16[Sn-Nb-Ti-O(0.16)]である、スズ、ニオブおよびチタンの酸化物に基づく、共沈法による触媒の調製]
200.0mlの水に、2.34gの塩化スズ(IV)五水和物と、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液5.40mlと、5.05gのシュウ酸ニオブとを添加し、塩化スズ(IV)五水和物とオキシ塩化チタンとシュウ酸ニオブとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=9に到達するまで滴下して加える。結果として得られたゲルを容器に移し、室温で24時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。上記触媒は、図5dに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0176】
[実施例16.CeおよびZrの混合酸化物[Ce-Zr-O]に基づく、共沈法による触媒の調製]
Ce-Zr混合酸化物触媒を説明するために、本触媒を合成した。Ce-Zr混合酸化物触媒は、これらのタイプの縮合反応についての文献[A. Gangadharan et al., Appl. Catal. A: Gral., 385 (2010) 80]において、一般的に使用されているものである。異なるCe-Zr比率を有するいくつかの触媒を合成した。有機化合物の収率と変換との観点から最善の結果を示した触媒を選択し、本発明の触媒と比較した。
【0177】
Serrano-Ruizらによって発行された手法[J. Catal., 241 (2006) 45-55]を適用する、Ce-Zr混合酸化物の共沈による合成法によって、上記触媒を調製した。触媒Ce0.5Zr0.5を合成するために、両方の金属を等モルの割合で含む塩の水溶液を準備する。11.76gのCe(NO・6HOと6.70gのZrO(NO・HOとを、150mlの水に添加し、Ce(NO・6HOとZrO(NO・HOとが完全に溶解するまで撹拌し続ける。次に、28%NHOH溶液を、pH=10に到達するまで滴下して加える。次に、上記溶液をフラスコに移し、撹拌しながら、室温で65時間、熟成させるために放置する。洗浄および濾過工程の後、上記固体を、100℃で夜通し乾燥させる。最後に、得られた上記固体を空気の流れの中、450℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。ICPによって測定されたCeおよびZrの量は、化学式Ce0.5Zr0.5と一致し、本試料から得られたX線回折像は、CeおよびZrを含む混合酸化物の存在を示す(図6)。
【0178】
[実施例17.スズおよびニオブの混合酸化物[Nb-SnO impreg.]に基づく、含浸法による触媒の調製]
触媒活性の観点で本発明の触媒と比較可能にするために、実施例4の触媒に用いられたSn-Nb比と類似したSn-Nb比を有する、混合酸化物触媒を合成した。
【0179】
上記触媒は、細孔体積含浸合成法によって合成された。上記Nb-SnO触媒を合成するために、約1.5gの市販のSnOを含浸させるために予め計算された体積の水に対して、1.86gのシュウ酸ニオブが含まれる、水溶液を用意する。均一なゲルが得られるまで、上記溶液を担体上に滴下して加える。100℃での乾燥工程の後、得られた固体を、空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。本触媒は、図7aに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0180】
[実施例18.SnおよびTiの混合酸化物[Ti-SnO impreg.]に基づく、含浸法を用いた触媒の調製]
触媒活性の観点で本発明の触媒と比較可能にするために、実施例8の触媒に用いられたSn-Ti比と類似したSn-Ti比を有する、混合酸化物触媒を合成した。
【0181】
上記触媒は、細孔体積含浸合成法によって合成された。上記Ti-SnO触媒を合成するために、約1.5gの市販のSnOを含浸させるために予め計算された体積の水に対して、塩酸を含むオキシ塩化チタンの水溶液0.7mlが含まれる、水溶液を用意する。均一なゲルが得られるまで、上記溶液を担体上に滴下して加える。100℃での乾燥工程の後、得られた固体を、空気の流れの中、600℃で2時間加熱することにより、触媒を得る。本触媒は、図7bに示されるような特徴的なX線回折像を示す。
【0182】
[実施例19.実施例1、2、4、5、6および7のSn-Nbの触媒シリーズの触媒活性比較]
12mlのステンレススチール製のオートクレーブ反応器を使用して、液相中での触媒活性の試験を行った。当該オートクレーブ反応器は、PEEK(ポリエーテルエチルケトン)によって覆われて強化された内部を有し、かつ、マグネチックスターラー、圧力計、ならびに、気体試料および液体試料のための入口弁/出口弁を備えるものである。上記反応器は、閉ループ式で温度調整される、スチール製の個別の支持体上に配置される。
【0183】
最初の仕込みは、バイオマス熱分解後の、相分離工程後に得られる、残留した水性フローをシミュレートした、含酸素化合物を含んでいる水性混合物モデルから成る。上記水性混合物モデルの組成を、以下に詳細に示す(表1):
【0184】
【表1】
【0185】
3000mgの水性混合物モデル、および、150mgの実施例1、2、4~7の触媒材料の1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。これらの試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えた、Agilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0186】
生成物の定量は、内部標準(2重量%のクロロベンゼンを含むメタノール溶液)を用いて計算された、レスポンス・ファクタに基づいて行われる。5個よりも多い炭素原子を有する得られた有機化合物は、化合物の範囲内または間隔内で、分類、および定量される。生成物のレスポンス・ファクタは、代表的な分子のレスポンス・ファクタに基づいて計算される。主要な一次縮合反応生成物(アセトン、酢酸エチル、3-ペンタノン、および2-メチル-2-ペンテナール等)に加えて、5個、6個、7個、8個、9個、10個または10個よりも多い炭素原子を含む分子群が、識別され、反応物質および初期生成物の連続的な縮合反応によって生産される。これらの反応生成物の定量を簡素化するために、これらの分子を、2つの主要な化合物の群(C5-C8生成物、およびC9-C10+生成物)に分類する。反応物質および主要な反応生成物の化学的構造は、上記工程の間に生じる最も重要な反応と共に、図8に示される。
【0187】
説明された触媒活性の実施例では、得られた結果を分析するために、以下のパラメーターを使用する:
上記水性混合物モデル中に存在する含酸素化合物のそれぞれの変換率(モルパーセント)は、下記の式を用いて計算した:
変換率(%)=(含酸素化合物の最初のモル数-含酸素化合物の最後のモル数/含酸素化合物の最初のモル数)×100。
【0188】
得られた生成物のそれぞれの最終収率(重量パーセント)を、下記の式から計算した:
生成物の収率(%)=反応器中の生成物のグラム数/反応器中の総グラム数。
【0189】
有機物の総収率(重量パーセント)は、以下の式から算出した:
有機物の総量(%)=(収率アセトン+収率3-ペンタノン+収率2-メチル-2-ペンテナール+収率C5-C8+収率C9-C10+)。
【0190】
さらに、使用される水性混合物モデルの組成を考慮して、得られ得る総有機生成物の最大量が、以下の仮定に沿って計算される:
-全反応物質が100%変換される。
-酢酸は、酢酸エチル(エステル化生成物)およびアセトン(ケトン化生成物)に変換され得る。
-最終生成物は、C9型の化合物である(最終的な混合物中に、中間体は存在せず、C9よりも長鎖の生成物は存在しない)。
【0191】
上記の仮定を踏まえた、最終的な混合物の組成は、以下の通りである:
水:51.3%、酢酸エチル:19.1%、および、C9生成物:29.6%。
【0192】
したがって、上記触媒の結果(総生成物の収率として表現される)は、可能な最大収率としては約30%であると計算される。
【0193】
本方法によって、実施例1、2、4、5、6および7のSnおよびNbに基づく触媒を用いた触媒活性試験で、以下の結果が得られた。
【0194】
【表2】
【0195】
表2の結果の比較から、ヒドロキシアセトンの変換率は、すべての場合で100%であり、一方、プロピオンアルデヒドの変換率は、Sn/Nbのモル比が0.6に近い触媒を用いると最大(約96%)に到達することが判る。アセトン(酢酸の縮合生成物)は、最終混合物中に、1.5%未満の量が含まれる。その理由は、酢酸の大半は、エステル化によってエタノールと反応し、酢酸エチルを生じるためである。さらに、アセトンは、極めて反応性の高い化合物であることから、より分子量の大きな縮合生成物を生じ得る。
【0196】
さらに、モル比Sn/Nbが約0.4~0.6である際、縮合の中間生成物(C5-C8)は徐々に減少し、その後の縮合ステップにて、より大きな分子量を有する生成物が生じることが観測される。同様に、プロピオンアルデヒドの変換の増加によって、2-メチル-2-ペンテナール(プロピオンアルデヒドの第一自己縮合による生成物)の量が増え、続いて、C9-C10+縮合生成物へと変換される。したがって、総有機物の収率は、触媒組成によって最大化される。
【0197】
上記の結果は、これら触媒の構造中のSnおよびNb酸化物の組み合わせは、縮合生成物のより高い収率を実現し、概して、ニオブを有さない同様のSnO触媒(実施例1)に比べて、C9-C10+の範囲の生成物の収率が高いことを示している。さらに、スズを有さない触媒Nb(実施例2)は、悪い触媒活性を示す(含酸素化合物の変換、および、総有機物の収率(52%未満)の両方に関して)。対照的に、触媒中に存在するSnの量が少ないとき(Snが低濃度の結果、実施例7の触媒を参照)、触媒の結果の向上を示唆する、ルチル構造を有する混合酸化物が形成される。上記すべてから、バイオマスに由来する水性混合物中に存在する含酸素化合物の変換率を最大にするためには、触媒の構造中のSn/Nb比(実施例4、5、6の間)に最適な範囲があることが理解できる。
【0198】
[実施例20.実施例1、3、8、9、10および11のSn-Tiの触媒シリーズの触媒活性比較]
3000mgの水性混合物モデル、および、150mgの実施例1、3、8~11の触媒材料の1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。これらの試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えた、Agilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0199】
本方法によって、実施例1、3、8、9、10および11のSnおよびTiに基づく触媒を用いた上記触媒活性試験で、以下の結果が得られた。
【0200】
【表3】
【0201】
表3の結果の比較から、ヒドロキシアセトンの変換率は、すべての場合で100%であり、一方、プロピオンアルデヒドの変換率は、Sn/Tiのモル比に関係なく、ルチルSn-Ti相を有する混合酸化物に基づくすべての触媒で、最大値(約88%)に到達する。アセトン(酢酸の縮合生成物)は、最終混合物中に、1.0%未満の量が含まれる。その理由は、酢酸の大半は、反応して酢酸エチルを生じるからである。さらに、アセトンは、極めて反応性の高い化合物であることから、より分子量の大きな縮合生成物を生じ得る。
【0202】
混合Sn-Ti相を有することによって、プロピオンアルデヒドの変換は、増加し、これによって、2-メチル-2-ペンテナール(プロピオンアルデヒドの第一自己縮合による生成物)の量、および、特に第2工程による縮合反応のC9-C10+の間の生成物の量が増加することが観測される。
【0203】
したがって、有機物の総量の収率は、同一の挙動を示す。このことは、総有機物の収率、および、特にC9-C10化合物の生成が、適したSn-Ti-O組成の材料を合成することにより、向上し得ることを意味する。
【0204】
上記の結果は、これら触媒の構造中のSnおよびTi酸化物の上記組み合わせは、縮合生成物のより高い収率を実現し、概して、チタンを有さない同様のSnO触媒(実施例1)に比べて、C9-C10+の範囲での生成物の収率が高いことを示している。さらに、スズを有さない触媒TiO(実施例3)は、許容される触媒活性を示す(総有機物の収率、約57%)が、上記結果は完全には比較可能ではない。その理由は、本酸化物が共沈によって合成される際、結果として生じる相はTiO-アナターゼであるからである。上記全てから、触媒構造中にルチル構造を有するSn/Tiに基づいた混合酸化物(実施例8~11)の合成は、バイオマスに由来する水性混合物中に存在する含酸素化合物の変換を改善することが理解される。
【0205】
[実施例21.実施例1、2、12、13、14および15のSn-Ti-Nbの触媒シリーズの触媒活性比較]
3000mgの水性混合物モデル、および、150mgの実施例1、2、12~15の触媒材料の1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。これらの試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えた、Agilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0206】
本方法によって、実施例1、2、12、13、14および15のSn-Ti-Nbに基づく触媒を用いた上記触媒活性試験で、以下の結果が得られた:
【0207】
【表4】
【0208】
表4の結果の比較から、ヒドロキシアセトンの変換率は、すべての場合で100%であり、プロピオンアルデヒドの変換率は、SnおよびTiおよびNbを有する混合酸化物によって触媒が形成される際に、著しく向上することが観測される。
【0209】
アセトン(酢酸の縮合生成物)は、最終混合物中に、1.5%未満の量が含まれている。その理由は、酢酸の大半は、エステル化によって反応して、酢酸エチルを生じるからである。さらに、アセトンは、極めて反応性の高い化合物であることから、より分子量の大きな縮合生成物を生じ得る。
【0210】
プロピオンアルデヒドの変換の増加は、2-メチル-2-ペンテナール(プロピオンアルデヒドの第一自己縮合による生成物)の量を増加させ、したがって、反応し続け得ることによって、C9-C10+の間の縮合生成物(続く縮合工程の産物)が増加する。C9-C10+の生成物、および有機物の総量の収率の両方は、同一の挙動を示す。
【0211】
上記の結果から、これら触媒の構造中のSn、TiおよびNb酸化物の上記組み合わせは、縮合生成物のより高い収率を実現し、概して、以下の単純な酸化物触媒に比べて、C9-C10+の範囲での生成物の収率が高いことが示された:SnO(実施例1)、Nb(実施例2)、またはTiO(実施例3)。上記全ては、触媒構造中のSn/(Ti+Nb)比(実施例12~15)のルチル相を有する混合酸化物相の形成によって、バイオマスに由来する水性混合物中に存在する含酸素化合物の変換での最大収率が達成可能であることを示している。
【0212】
[実施例22.Sn-Nbの触媒シリーズ(実施例4および5)と、含浸によって調製されたNb-SnO酸化物型(実施例17)および市販のNb(Sigma-Aldrich、CAS 1313-96-8)との触媒活性比較]
3000mgの水性混合物モデル、および、150mgの実施例4、5、17の触媒材料および市販のNbの1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。これらの試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えた、Agilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0213】
以下の結果が得られた:
【0214】
【表5】
【0215】
表5では、共沈および上述によって調製されたSn-Nb-Oを含む構造に基づく触媒(実施例4および5)の触媒結果を、含浸法、実施例17に記載の方法によって調製された、両方の金属を含む混合酸化物に基づく他の触媒と比較する。さらに、Sigma-Aldrichから入手した市販のNb触媒も用いる。当該触媒は、使用前に、同様に活性化させる。
【0216】
表5の結果から、ヒドロオキシアセトンの全ての変換は、すべての場合で観測される。一方、酢酸の変換は、研究したすべての場合に関して、極めて類似した値である(約15%)。
【0217】
プロピオンアルデヒドの変換は、一つの種類の触媒とその他の種類の触媒との間での、最大の差である。一体化されたSn-Nb構造に基づく触媒は、90%よりも大きな変換率を有する一方で、市販のニオブ触媒およびNb-SnO触媒(実施例17)は、極めて低い変換率(67~70%)を有する。このことは、例えば2-メチル-2-ペンテナールおよびいくつかのC5-C8生成物といった一次縮合生成物の生成だけでなく、二次縮合反応によって合成される、より大きな分子量を有する生成物の生成の低下を引き起こす。上記の場合では、総有機物の収率は、49~56%にまで低下する。このことは、特定のSn-Nb構造(例えば、実施例4および実施例5のSn-Nb構造)に基づく触媒の使用によって、バイオマスに由来する水性混合物中に存在する含酸素化合物の縮合での最終反応混合物中に得られる生成物が15~25%増加することを意味する。上記生成物は、一般的に、ガソリンおよび精製フラクションへの添加剤として、潜在的に使用可能である。
【0218】
これらの結果は、本発明法の方法における触媒は、従来の手法によって調製された触媒、または、類似の市販材料を用いて得られた活性および生成物の収率に比べて、優れた活性および生成物の収率を示すことを示している。
【0219】
[実施例23.Sn-Tiの触媒シリーズ(実施例10および11)と、含浸によって調製したTi-SnO酸化物(実施例18)および市販のアナターゼTiO(Sigma-Aldrich、CAS 1317-70-0)試料および市販のルチルTiO(Sigma-Aldrich、CAS 1317-80-2)試料との触媒活性比較]
3000mgの水性混合物モデル、および、150mgの実施例10、11、18の触媒材料および市販のTiOの1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。これらの試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えたAgilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0220】
以下の結果が得られた:
【0221】
【表6】
【0222】
表6では、共沈および上述によって調製されたSn-Ti-Oを含む構造に基づく触媒(実施例10および11)の触媒結果を、含浸法、実施例18に記載の方法によって調製された、両方の金属を含む混合酸化物に基づく他の触媒と比較する。さらに、Sigma-Aldrichから入手した市販のTiO触媒も用いる。当該触媒は、使用前に、同様に活性化させる。
【0223】
表6の結果から、ヒドロオキシアセトンの全ての変換は、すべての場合で観測される。一方で、酢酸の変換は、研究したすべての場合に関して、極めて類似した値である(約10~15%)。
【0224】
プロピオンアルデヒドの変換は、一つの種類の触媒とその他の触媒との間での、最大の差である。一体化されたSn-Ti構造に基づく触媒は、87%よりも大きな変換率を有する一方で、市販の酸化チタン試料およびTi-SnO触媒(実施例18)は、極めて低い変換率(58~68%)を有する。このことは、例えば2-メチル-2-ペンテナールおよびいくつかのC5-C8生成物といった一次縮合生成物の生成だけでなく、二次縮合反応によって合成される、より大きな分子量を有する生成物の生成の低下を引き起こす。上記の場合では、総有機物の収率は、48~51%にまで低下する。このことは、特定のSn-Ti構造(例えば、実施例10および11のSn-Ti構造)に基づく触媒の使用によって、バイオマスに由来する水性混合物中に存在する含酸素化合物の縮合での最終反応混合物中で得られる上記生成物が約20%増加することを意味する。上記生成物は、一般的に、ガソリンおよび精製フラクションへの添加剤として、潜在的に使用可能である。
【0225】
これらの結果は、本発明の方法における触媒は、従来の手法によって調製された触媒、または、類似の市販材料を用いて得られた活性および生成物の収率に比べて、優れた活性および生成物の収率を示すことを示している。
【0226】
[実施例24.共沈法によって調製された、Sn-Nb-O、Sn-Ti-O、および、Sn-Ti-Nb-Oの触媒シリーズ(実施例4、5、10、11、12および13)の触媒活性比較]
3000mgの水性混合物モデル、および、150mgの実施例4、5、10、11、12および13の触媒材料の1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。これらの試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えたAgilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0227】
以下の結果が得られた:
【0228】
【表7】
【0229】
表7では、共沈によって調製され、当該共沈の後、上述のように600℃の空気によって形成された雰囲気下で熱処理された、Sn-Nb-O、Sn-Ti-OおよびSn-Nb-Ti-Oを含む構造に基づく触媒の触媒結果を比較した(実施例4、5、10、11、12および13)。
【0230】
表7の結果から、ヒドロキシアセトンの全ての変換は、すべての場合で100%である。一方、酢酸の変換は、上記(実施例4、10、11、12、13)に示された触媒と極めて類似している;実施例5の触媒中では幾分少ない。
【0231】
2-メチル-2-ペンテナール、C9-C10の生成物、および、一般的に総有機物のの収率は、適した組成の材料を合成することによって、例えば、実施例4、5、10、11、12および13などのSn-Nb-O、Sn-Ti-OおよびSn-Ti-Nb-Oの特定の構造に基づく触媒によって、増加し得る。
【0232】
[実施例25.共沈によって調製された、Sn-Nb-O、Sn-Ti-OおよびSn-Ti-Nb-Oの触媒シリーズ(実施例5、10および13)と、従来のCe-Zr触媒(実施例16)との触媒活性比較]
3000mgの水性混合物モデル、および、150mgの実施例5、10、13および16の触媒材料の1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。これらの試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。上記生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えたAgilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0233】
以下の結果が得られた:
【0234】
【表8】
【0235】
プロピオンアルデヒドおよびヒドロキシアセトンの変換は、実施例5、10、13および16の触媒と非常に類似しているが、上記Ce-Zr-O触媒は、酢酸の高い変換率を示す(表7の結果)。しかし、観察された、試薬の全変換率および総有機物の収率の両方は、試験された三つの例に関して極めて類似している(64~68%)。Sn、Nbおよび/またはTiの酸化物に基づく触媒(実施例5、10および13)およびCe-Zrの混合酸化物(実施例16)の間での唯一の観測可能な違いは、最初の三つの触媒はC5-C8の間の有機化合物の生成が大きく、実施例16で調製された混合酸化物は、より簡単に二次縮合反応を触媒し、C9-C10+の間の化合物の生成量を増加させるという点にある。
【0236】
一般的に、一体化されたSn、Nbおよび/またはTiの構造に基づく触媒は、このようなタイプの反応に関する文献に歴史的に用いられていた触媒(例えば、Ce0.5Zr0.5)によって示される結果と、類似する結果を示す。
【0237】
一度実施例5、10、13および16の触媒が用いられると、当該触媒は、反応後に回収され、メタノールで洗浄され、100℃で夜通し乾燥される。次に、上記触媒は、元素分析(EA)および熱重量分析(TG)によって特徴づけられる。
【0238】
EA分析によって、実施例16のCe-Zr触媒は、洗浄後、3.5重量%の木炭(触媒上に沈着した有機化合物)を有することが示される。実施例5のSn-Nbに基づく触媒が単に0.5重量%の木炭を有することは、反応プロセスの間の炭素物質の沈着は少なく、従って、コークスの沈着によって引き起こされる不活性化には敏感でないことを示す。
【0239】
本特性情報は、TG分析によって確認される。実施例16のCe-Zr触媒は、300℃に近い温度では質量の11.5%を失い、これは、吸着された有機生成物の脱着に対応する。対照的に、実施例5の触媒は、上記温度で、質量の1.5%しか消失しない。当該触媒は、100℃に近い温度では質量の1.8%を失い、これは、吸収した水に相当する。上記の吸着した水の量は、使用前の触媒のTG分析中でも観測され、そのため、反応媒体中の水の存在は、触媒の活性、および、触媒の安定性に対して有害ではない。
【0240】
[実施例26.Sn-Nb-O(実施例5)、Sn-Ti-O(実施例10)、およびCe-Zr-O(実施例16)の触媒の再利用の間での触媒活性比較]
一連の連続的な反応を、実施例5、10、および16で調製された触媒を用いて行い、数回の使用後の活性を比較した。上記目的のため、すべて同一の反応条件下で、初期反応(R0)、および、それに続く三つの再利用(R1、R2、およびR3)が実施された。使用された触媒は、各々の反応後に回収され、メタノールで洗浄され、100℃で夜通し乾燥される。次に、上記触媒は、元素分析(EA)および熱重量分析(TG)によって特徴づけられる。
【0241】
各々の場合(R0、R1、R2,およびR3)、3000mgの水性混合物モデル、および150mgの実施例5、10、および16(新鮮または既に使用済)の上記触媒材料1つを、上述したオートクレーブ反応器に入れた。上記反応器を密閉し、初めに13バールのNで加圧し、撹拌を続けながら200℃まで加熱した。7時間の反応までに、異なる時間間隔で、液体試料(約50~100μl)を採取した。上記試料を濾過し、2重量%のクロロベンゼンを含むメタノールの標準溶液で希釈し、FID検出器および60mのTRB-624キャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィーGC-Bruker430によって分析した。生成物の同定は、質量検出器Agilent5973N(GC-MS)と連結し、30mの長さのHP-5MSキャピラリーカラムを備えたAgilent6890Nガスクロマトグラフィー装置を用いて行った。
【0242】
上記の得られた結果を、表9、10および11、および図9に示す。
【0243】
【表9】
【0244】
【表10】
【0245】
【表11】
【0246】
一般的に、上記全ての触媒で、上記初期水性混合物中に存在する上記反応剤の変換に関して、同一の挙動が観測される。プロピオンアルデヒドの変換率は、行われる反応の数に伴って、低下する。対照的に、酢酸の変換率は、Ce-Zr-Oの場合では低下し、Sn-NbおよびSn-Tiに基づく材料の場合は、一定のまま、または、増加さえする。さらに、エタノールの変換率は、Ce-Zr-Oに基づく触媒(実施例16)では増加し、Snおよび/またはNbおよび/またはTiを含む残りの触媒(実施例5および10)では、わずかに減少する。従って、総有機物の収率は、触媒の再利用回数に伴い、わずかに低下する。当該収率の低下は、実施例16のCe-Zr-O触媒を用いた場合では、触媒活性のパーセンテージの低下が初期の触媒活性の16%であるという点でよりはっきりとしている一方で、実施例5で調製されたSn-Nb-O触媒は、触媒活性の1%のみの低下という優れた安定性を有する(表8参照)。上記事項が意味するのは、実施例5で調製されたSn-Nb-O触媒の活性は、少なくとも3回の連続的な再利用の後で、事実上一定であることである。さらに、実施例10のSn-Ti-Oに基づく触媒は、Ce-Zr-O材料(実施例16)およびSn-Nb-O触媒(実施例5)の間の、触媒活性の中間的な低下(10%)を示す。
【0247】
注意すべきであるのは、実施例16のCe-Zr-O触媒の場合では、初期に添加された150mgのうち、最後には80mgしか回収されていない一方で、実施例5のSn-Nb-O触媒の場合では、130mgが回収されていることである。回収された固体触媒の量が少ないのは、Ce-Zr-O触媒の安定性が低いこと、酢酸セリウムの形成が起こり得、それに伴い触媒構造から酸化セリウムの引き抜きが引き起こされること、が原因であり得る。このことは、再利用に伴って、酢酸の変換が激しく低下したことも、説明する(表11)。
【0248】
同時に、EAおよびTGによって行われた分析から、実施例5のSn-Nbに基づく触媒、および、実施例10のSn-Tiに基づく触媒が、実施例16で調製されたCe-Zrの混合酸化物と比較して高い安定性を示すことが判る。このように、Sn-Nb材料(実施例5)中では、三度目の再利用(R3)後のEAによって、0.5重量%の木炭が測定され;Sn-Tiの場合(実施例10)では2.8%である。一方、同じ回数の再利用後のCe-Zr触媒(実施例16)中で検出された木炭の量は、4.8重量%に達した。同様に、TG分析によって、Sn-Nb触媒(実施例5)は、300~350℃に近い温度では、吸着した有機化合物に相当する1.5%の質量の消失が観測される一方で、Ce-Zrの混合酸化物(実施例16)は、上記温度で質量の9.5%が消失し、450℃に近い温度では、さらに追加の3.3%が消失した。後者の消失は、触媒中に吸収される、より重い反応生成物に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0249】
図1】市販の酸化物(Sn[SnO]、Nb[Nb]、Ti[TiO-アナターゼ]、および[TiO-ルチル])に基づく触媒のX線回折像を示す。
図2】それぞれ、実施例1、2、および3に記載の共沈によって調製された酸化物(Sn(a)[SnO]、Nb(b)[Nb]、およびTi(c)[TiO])に基づく触媒のX線回折像を示す。
図3】実施例4~7に記載のスズおよびニオブの酸化物([Sn-Nb-O])に基づく触媒のX線回折像を示す。
図4】実施例8~11に記載のスズおよびチタンの酸化物([Sn-Ti-O])に基づく触媒のX線回折像を示す。
図5】実施例12~15に記載のスズ、チタンおよびニオブの酸化物([Sn-Nb-Ti-O])に基づく触媒のX線回折像を示す。
図6】Ce-Zr-Oに基づく触媒のX線回折像を示す(実施例16)。
図7】それぞれ、実施例17および18に記載のスズ酸化物([Nb/SnOおよびTi/SnO])上に含浸によって担持されたNbおよびTiに基づく触媒のX線回折像を示す。
図8】反応物質および主要反応生成物の化学構造を示す図面と、上記工程の間に行われる反応の図面と、を示す。
図9】触媒Sn-Nb-O(実施例5)、Sn-Ti-O(実施例10)、およびCe-Zr-O(実施例16)の再利用に伴う触媒活性の安定性および持続性の比較を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9