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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】炭素繊維トウのフィラメント数の増加
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/18 20060101AFI20231121BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
D02J1/18 D
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020566835
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019031862
(87)【国際公開番号】W WO2019231633
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】15/994,849
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503308494
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダスト、アダム
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ダサラシー、ハリニ
(72)【発明者】
【氏名】フォルスグレン、レベッカ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0135227(US,A1)
【文献】特開2001-151418(JP,A)
【文献】特開昭51-147569(JP,A)
【文献】特開平11-200136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
C08J5/04-5/10
5/24
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わされたトウを形成することによって炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法であって、
第1のトウであって、第1のトウの縦方向に延伸する複数の第1の炭素フィラメントを含む第1のトウを提供するステップであって、前記第1のトウは、第1のトウフィラメント数及び第1のトウ幅を有する、ステップと、
第2のトウであって、第2のトウの縦方向に延伸する複数の第2の炭素フィラメントを含む第2のトウを提供するステップであって、前記第2のトウは、第2のトウフィラメント数及び第2のトウ幅を有する、ステップと、
前記第1のトウを前記第1のトウの縦方向にトウ拡散/混合ゾーンに送るステップであって、前記トウ拡散/混合ゾーンは、入口、出口、左側部、右側部、上部、及び底部を有し、前記第1のトウは、ある供給速度で前記入口を通過する、ステップと、
前記第2のトウを前記第2のトウの縦方向に前記トウ拡散/混合ゾーンに送るステップであって、前記第2のトウは、前記供給速度で前記入口を通過し、前記第2のトウは、前記第1のトウの上に位置合わせされ、前記第2のトウは、前記第1のトウに接触しない、ステップと、
前記拡散/混合ゾーンの前記底部に位置する格子を提供するステップであって、前記格子は、前記拡散/混合ゾーンの前記左側部と前記右側部との間で互いに平行に延伸する複数のバーを備える、ステップと、
前記拡散/混合ゾーンの前記上部から前記底部の方向に流れる第1のガス流を提供するステップと、
前記複数の第1の炭素フィラメントを離間させるように拡散して、拡散された第1のトウであって、拡散された第1のトウ幅を有する拡散された第1のトウを提供するために、前記第1のトウを前記第1のガス流と接触させるステップであって、前記拡散された第1のトウ幅:前記第1のトウ幅の比率は5:1~25:1である、ステップと、
前記複数の第2の炭素フィラメントを離間させるように拡散して、拡散された第2のトウであって、拡散された第2のトウ幅を有する拡散された第2のトウを提供するために、前記第2のトウを前記第1のガス流と接触させるステップであって、前記拡散された第2のトウ幅:前記第2のトウ幅の比率は15:1~40:1であり、前記拡散された第2のトウ幅は、前記拡散された第1のトウより広い、ステップと、
接触した拡散されたトウを形成するために、前記拡散された第1のトウを前記拡散された第2のトウと接触させるステップと、
前記拡散/混合ゾーンの前記上部から前記底部の方向に流れる第2のガス流を提供するステップであって、前記第2のガス流は、前記格子を通って流れる、ステップと、
前記第1のフィラメントの前記第2のフィラメントとの混合を提供して、絡み合ったトウであって、絡み合ったトウ幅を有する絡み合ったトウを形成するために、前記第2のガス流が存在する前記格子上を前記接触した拡散されたトウに通過させるステップと、
前記絡み合ったトウを、組み合わされたトウであって、組み合わされたトウ幅及び組み合わされたフィラメント数を有する組み合わされたトウに形成するステップであって、前記絡み合ったトウ幅:前記組み合わされたトウ幅の比率は5:1~40:1であり、前記組み合わされたフィラメント数は、前記第1のトウのフィラメント数又は前記第2のトウのフィラメント数より多い、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のトウ及び/又は前記第2のトウは、拡散/混合増強剤を含む、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項3】
前記第1のトウ及び前記第2のトウは、同じ引張弾性率及び同じフィラメント数を有する、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項4】
前記第1のトウの引張弾性率は、前記第2のトウの引張弾性率と同じであり、前記第1のトウのフィラメント数は、前記第2のトウのフィラメント数とは異なる、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項5】
前記第1のトウの引張弾性率は、前記第2のトウの引張弾性率とは異なり、前記第1のトウのフィラメント数は、前記第2のトウのフィラメント数と同じである、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項6】
前記第1のトウの引張弾性率は、前記第2のトウの引張弾性率とは異なり、前記第1のトウのフィラメント数は、前記第2のトウのフィラメント数とは異なる、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項7】
前記複数の第2の炭素フィラメントは、前記複数の第1の炭素フィラメントの線重量より大きい線重量を有する、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項8】
前記第2の拡散されたトウは、4~6センチメートルの幅を有する、請求項1に記載の組み合わされたトウを形成するために炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項9】
前記第1の拡散されたトウは、50~150グラムの縦方向の張力下にあり、前記第2の拡散されたトウは、50~150グラムの縦方向の張力下にある、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項10】
前記第1のガス流の速度は、前記第2のガス流の速度と同じである、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項11】
サイジングされた組み合わされたトウを形成するために、前記絡み合ったトウ又は前記組み合わされたトウにサイジング剤を塗布する追加のステップを含む、請求項1に記載の組み合わされたトウを形成するために炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項12】
サイジングされた組み合わされたトウを形成するために、前記絡み合ったトウ又は前記組み合わされたトウにサイジング剤を塗布する追加のステップを含む、請求項2に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項13】
前記組み合わされたトウを未硬化の樹脂マトリックスと組み合わせる追加のステップを含む、請求項1に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【請求項14】
前記未硬化の樹脂マトリックスを硬化させる追加のステップを含む、請求項13に記載の炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炭素フィラメントからなる炭素繊維トウに関する。より具体的には、本発明は、任意の所与の炭素繊維トウのフィラメント数を、そのトウに1つ以上の他の炭素繊維トウを直接物理的に組み込むことによって増加させるための方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、繊維強化構造及び樹脂マトリックスを2つの主成分として含む。複合材料は通常、かなり高い強度対重量比を有する。その結果、複合材料は、複合構造の高強度及び相対的軽量が特に重要である航空宇宙産業で使用される。
【0003】
炭素繊維は、複合材料の一般的な繊維強化材である。炭素繊維は通常、一般に「トウ」と呼ばれる多芯糸として提供される。炭素繊維トウは通常、1,000~50,000本のフィラメントを含む。市販の炭素繊維トウは、例えば、約3000フィラメント(3K)、6000フィラメント(6K)、12000(12K)フィラメント、又は24000(24K)フィラメントを含む。単一の炭素フィラメントの線重量は通常、1メートル当たり0.02~0.5ミリグラムの範囲にある。
【0004】
炭素繊維トウの線重量は、フィラメントの数、それらの線重量、及び任意のコーティング又は他のトウ処理の重量に依存する。HexTow(登録商標)AS4は、ヘクセル(Hexcel Corporation)(カリフォルニア州ダブリン)から入手可能な炭素繊維トウのタイプである。HexTow(登録商標)AS4炭素繊維トウの3Kバージョンは、1メートル当たり約0.21グラムの線重量を有し、6Kバージョン及び12Kバージョンは、それぞれ1メートル当たり約0.43グラム及び1メートル当たり約0.86グラムの線重量を有する。HexTow(登録商標)IM7は、ヘクセル(Hexcel Corporation)(カリフォルニア州ダブリン)からまた入手可能な炭素繊維トウの別のタイプである。HexTow(登録商標)IM7炭素繊維トウは、HexTow(登録商標)AS4炭素繊維トウより高い引張強度及び引張弾性率を有する。6KのHexTow(登録商標)IM7炭素繊維トウの線重量は、1メートル当たり約0.22グラムであり、12Kバージョンは、1メートル当たり約0.45グラムの線重量を有する。
【0005】
炭素繊維トウのフィラメントは、従来の糸と同様に捩じられない。代わりに、炭素繊維トウのフィラメントは、互いに実質的に平行である。この結果、炭素繊維トウは、平坦なテープ状の断面形状を有する傾向がある。炭素フィラメントは、トウにある程度の凝集性を提供するために互いに絡み合い、そのために、それは、崩壊することなくある程度まで取り扱われ、且つ処理されることができる。炭素繊維トウの凝集性は一般に、トウの「展延性」を決定することによって測定される。トウ評価試験機は、展延性を含む多くの炭素繊維トウの特性を決定する際に使用するために市販されている。例えば、トウ評価試験機は、テクステクノ・ハーバート・シュタイン(Textechno H. Stein GmbH&Co.KG)(ドイツ、メンヒェングラートバッハ)から商品名ロービングテスト(ROVINGTEST)で入手可能である。繊維産業では、2台の評価試験機又は機器が一般的である。
【0006】
展延性は、典型的なトウ評価試験機において、トウを所定の張力下に置き、一連の拡散機バー上をそれに通過させることによって決定される。トウ幅は拡散機バーの前(W1)及び拡散機バーの直後(W2)で測定される。トウの展延性はW2/W1と同じである。1.2~2.2のオーダーの展延性値(W2/W1)は、フィラメント数、フィラメントの線重量、フィラメントのタイプ、フィラメントの絡み合いの程度、及びサイジング又は他のコーティングの適用のような成形後処理に依存して、炭素繊維トウにとって一般的である。
【0007】
炭素フィラメントは相対的に壊れやすい。従って、炭素フィラメントは、炭素繊維トウの製造及びその後の取り扱い中に損傷を受けやすい。トウの毛羽又は毛羽立ちは、炭素繊維トウの表面に存在する場合があるフィラメントの破損及び綿毛を指す。炭素繊維トウの表面に存在する毛羽の量を測定するための試験機器が市販されている。毛羽の量は、毛羽数又は毛羽値として表される。炭素繊維トウの毛羽数を測定するための例示的な試験装置は、レンジンズ・インスツルメンツ(Lenzing Instruments GmbH&Co.KG)(ガンペン、オーストリア)から入手可能なフライ・ビュー(FRAY VIEW)糸欠陥視覚化装置である。フライ・ビュー(FRAY VIEW)装置は、光学センサ及び高解像度デジタルカメラを使用して毛羽数を測定する。
【0008】
炭素繊維トウの毛羽数は、トウの処理方法及び取り扱い方法、フィラメント数、フィラメントの線重量、フィラメントのタイプ、並びにサイジング及びその他のコーティングの適用のような成形後処理を含む多くの要因に依存して変動する。一般に、炭素繊維トウは、可能な限り少ない毛羽数を有することが望ましい。しかし、ある程度のフィラメントの破損が望ましい場合がある。例えば、炭素繊維トウのフィラメントの破損は、炭素繊維複合ラミネートのZ方向の電気コンダクタンスを高めるために使用されてきた。これらの場合では、炭素繊維トウが所望のレベルのフィラメントの破損を有することを保証するために、毛羽数が測定及び監視される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、第1の炭素繊維トウのフィラメント数は、組み合わされたトウを形成するために、第2の炭素繊維トウを第1の炭素繊維トウと物理的に組み合わせることによって増加する。2つの炭素繊維トウが、第1及び第2のトウの展延性に近い展延性を示す凝集性の組み合わされたトウを提供するために物理的に組み合わされることができることが発見された。このような組み合わされたトウは、第1又は第2のトウに存在する損傷したフィラメントの量を過度に増加させることなく形成されることができることが更に発見された。
【0010】
本発明は、組み合わされたトウを形成するために、炭素繊維等のフィラメント数を増加させるための方法に基づき、その方法では、第1の炭素フィラメントからなり、第1のトウ幅を有する第1のトウが、拡散された第1のトウを形成するために第1のガス流に曝される拡散/混合ゾーンに送られる。第2の炭素フィラメントからなり、第2のトウ幅を有する第2のトウがまた、拡散された第2のトウを形成するために第1のガス流に曝される拡散/混合ゾーンに送られる。
【0011】
本発明の特徴として、拡散された第1のトウ及び拡散された第2のトウは、第1及び第2のトウが互いに接触し、且つ格子と接触するように、格子上を通過する接触した拡散されたトウを形成するために共に接触する。第1のガス流の一部であってもよい第2のガス流は、第1及び第2の炭素フィラメントの混合を提供して、絡み合ったトウ幅を有する絡み合ったトウを形成するために格子を通過する。そして、絡み合ったトウは、組み合わされたトウに形成される。
【0012】
本発明の別の特徴として、第1及び第2のトウは、拡散/混合ゾーンで拡散する前に、トウに塗布される拡散/混合増強剤を含む。拡散/混合増強剤の使用は、フィラメントの過度の破損又は毛羽を生成することなく、適切な組み合わされたトウを形成するために要求されるレベルのフィラメントの拡散、混合、及び絡み合いが得られることを可能にすることが発見された。
【0013】
本発明は、第1及び第2のトウが同数の同じタイプの炭素フィラメントを有する、組み合わされたトウを形成するために使用されてもよい。追加の特徴として、引張弾性率、引張強度、及び線重量のような様々な特性を伴う組み合わされたトウは、炭素フィラメントの異なるフィラメント数及び/又はタイプを有する第1及び第2のトウを使用することによって作製されてもよい。
【0014】
本発明は、炭素繊維トウのフィラメント数を増加させる方法に向けられるだけでなく、一方向炭素繊維テープ及び炭素繊維織物製品を含む、本発明に従って作製される組み合われたトウにも向けられる。本発明はまた、プリプレグのような組み合わされたトウを使用して作製される未硬化の複合材料に向けられる。本発明は更に、未硬化の複合材料から作製される複合部品に向けられる。
【0015】
本発明の上記で説明された特徴及び多くの他の特徴、並びに付随する利点は、添付の図面と併せて解釈される場合には、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるための例示的な方法の部分的に概略的な側面図である。
図2図1に示される例示的な方法の部分的に概略的な上面図である。
図3】絡み合ったトウの形成中にガス流が格子を通過することに起因する炭素フィラメントの下向きの変位を示す例示的な格子の一部の側面図である。
図4A】方法中の開始トウの断面図を示す。
図4B】方法中の一段階での一トウ構成の断面図を示す。
図4C】方法中の一段階での一トウ構成の断面図を示す。
図4D】方法中の一段階での一トウ構成の断面図を示す。
図4E】方法中の一段階での一トウ構成の断面図を示す。
図5】絡み合ったトウを組み合わされたトウに形成する際に使用される、好ましい例示的な統合リールの詳細な部分断面図である。
図6】第2のトウの炭素繊維フィラメントとは異なる炭素繊維フィラメントを有する第1のトウを含む、例示的な混合の組み合わされたトウの一部の代表的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による炭素繊維トウのフィラメント数を増加させる方法を実行するための好ましい例示的なシステムが、図1及び図2の10に示される。第1のトウ12は、フィードローラー16を介して拡散/混合ゾーン14(想像線で輪郭が描写される)に供給される。拡散/混合ゾーン14は、チャンバーのような閉鎖空間であってもよく、又はトウの拡散及び混合が行われる開放空間であってもよい。2,000~5,000炭素フィラメントからなる任意のタイプの炭素繊維トウが第1のトウ12として使用されてもよい。好ましい炭素繊維トウは、市販されており、3K(約3,000フィラメント)、6K(約6,000フィラメント)、又は12K(12,000炭素フィラメント)のフィラメント数を有する。
【0018】
第1のトウ12は、様々な引張強度及び引張弾性率を有してもよい。例えば、第1のトウ12として使用される炭素繊維トウは、好ましくは、750~900ksiの引張強度、35~45Msiの引張弾性率、1.5~2.5%の破壊時歪、1.6~2.0g/cmの密度、及び0.3~1.0g/m(2,700デニール~9,000デニール)の線重量を有する。或いは、第1のトウ12は、600~700ksiの引張強度、30~55Msiの引張弾性率、1.5~2.5%の破壊時歪、1.6~2.0g/cmの密度、及び0.3~1.0g/m(2,700デニール~9,000デニール)の線重量を有するより低い弾性率のトウであってもよい。
【0019】
第1のトウ12としての使用のための好ましい炭素繊維トウは、HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウであり、これは、810ksiの引張強度、40Msiの引張弾性率、1.9%の破壊時歪、1.78g/cmの密度、及び0.446g/m(4,014デニール)の線重量を有する。HexTow(登録商標)IM7炭素繊維トウ及び同様の特性を有する炭素繊維トウは、一般的に中間の弾性率の炭素繊維トウと見做される。HexTow(登録商標)IM7炭素繊維トウと同様の特性を有する中間の弾性率の炭素繊維トウの何れもが、第1のトウ12としての使用のために好ましい。
【0020】
また、好ましい低弾性率の炭素繊維トウは、HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウ及び同様の特性を有する任意の他の炭素繊維トウである。HexTow(登録商標)AS4炭素繊維トウは、640ksiの引張強度、33.5Msiの引張弾性率、1.8%の破壊時歪、1.79g/cmの密度、及び0.858g/m(7722デニール)の線重量を有する。HexTow(登録商標)AS4炭素繊維トウと同様の特性を有する低弾性率の炭素繊維トウの何れもがまた、第1のトウ12としての使用のために好ましい。
【0021】
図4は、図1及び図2に示されるように、システム10内の位置(A)~(E)でのトウの簡略化された断面図を示す。位置(A)での第1のトウ12の簡略化された断面図が図4に示される。任意の拡散又は混合の前である、位置(A)での第1のトウ12は、1~4mmの間、好ましくは1.5~2.5mmの間にある幅T1を有する。フィードローラー16は、所望のT1を維持し、第1のトウ12の第2のトウ20との位置合わせを提供するように設けられた溝18を含む。
【0022】
第2のトウ20は、第1のトウ12と同じ炭素繊維トウであってもよく、又は第2のトウ20のために使用される炭素繊維トウが上記で概説された第1のトウ12のための適切な特性に該当する特性を有する限り、異なるフィラメント数及び異なる特性を有するフィラメントを有する異なるトウであってもよい。第1及び第2の繊維トウは、第1のトウのフィラメント数、引張強度、引張弾性率、及び線重量が第2のトウのフィラメント数、引張強度、引張弾性率、及び線重量の10パーセント以内(好ましくは5パーセント以内)である場合には、この説明の目的では同じと見做される。第1及び第2の繊維トウは、第1のトウのフィラメント数、引張強度、引張弾性率、又は線重量が個々に第2のトウのフィラメント数、引張強度、引張弾性率、又は線重量からそれぞれ10パーセントより大きく(好ましくは5パーセントより大きく)異なる場合には、この説明の目的では異なると見做される。
【0023】
異なる炭素繊維トウの例示的な組み合わせは、1)第1のトウの引張弾性率が第2のトウの引張弾性率と同じであり、第1のトウのフィラメント数が第2のトウのフィラメント数と異なる場合、2)第1のトウの引張弾性率が第2のトウの引張弾性率とは異なり、第1のトウのフィラメント数が第2のトウのフィラメント数と同じである場合、及び3)第1のトウの引張弾性率が第2のトウの引張弾性率と異なり、第1のトウのフィラメント数が第2のトウのフィラメント数と異なる場合である。
【0024】
第1及び第2のトウ(第1のトウ//第2のトウ)の好ましい例示的な組み合わせは、1)HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウ、2)HexTow(登録商標)6K IM7炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウ、3)HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウ、4)HexTow(登録商標)6K AS4炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウ、5)HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウ、6)HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウ、7)HexTow(登録商標)6K AS4炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウ、及び8)HexTow(登録商標)6K IM7炭素繊維トウ//HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウを含む。
【0025】
本明細書での説明は、例示的な目的のために、及び本発明の好ましい実施形態を記載するために、HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウ及びHexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウに向けられる。本発明はまた、HexTow(登録商標)AS2C、HexTow(登録商標)AS4C、HexTow(登録商標)AS7、HexTow(登録商標)IM8、HexTow(登録商標)IM9、HexTow(登録商標)IM5のような多くの他のタイプの市販の炭素繊維トウ、及び同様の特性を有する他の商用ソースから入手可能な炭素繊維トウのフィラメント数を増加させるために使用されてもよい。
【0026】
位置(A)での第2のトウ20の簡略化された断面図がまた図4に示される。任意の拡散又は混合の前の位置(A)にある第2のトウ20は、1~4mmの間、好ましくは1.5~2.5mmの間の幅T2を有する。フィードローラー22は、所望のT2を維持し、第1のトウ12上で第2のトウ20の位置合わせを提供するために設けられた溝24を含む。
【0027】
第1のトウ12及び第2のトウ20は、好ましくは、炭素繊維トウの標準のスプール(示されない)からそれらのそれぞれの位置合わせリール16及び22に提供される。必要に応じて、システム10は、炭素繊維トウを最初に貯蔵スプールに巻き付けることなく位置合わせリール16及び22に直接供給することができる既存の炭素繊維生産ラインに組み込まれてもよい。
【0028】
拡散/混合ゾーン14は、入口26及び出口28、左側部30、右側部32、上部34、並びに底部36を含む。第1のトウ12は、矢印38によって示されるように、第1のトウの縦方向に延伸する複数の第1の炭素フィラメントを含む。第1のトウ12は、好ましくは3K~24Kである、第1のトウフィラメント数を有する。第2のトウ20は、矢印40によって示されるように、第2のトウの縦方向に延伸する複数の第1の炭素フィラメントを含む。第2のトウ20は、好ましくはまた3K~24Kである、第2のトウフィラメント数を有する。
【0029】
第1及び第2のトウが入口26を通って拡散/混合ゾーン14に供給される速度は、最低2メートル/分~最高10メートル/分にすることができる。2メートル/分より遅いトウの供給速度は、フィラメントの破壊をもたらし、組み合わされたトウの凝集性が増加することなく損傷する。10メートル/分を超えるトウ供給速度は、所望の低い展延性を有する組み合わされたトウを提供するのに十分な混合及び絡み合いを可能にしない。6K~12Kの炭素繊維トウのための好ましいトウ供給速度は5~8メートル/分である。
【0030】
拡散/混合ゾーン14内の点(B)で、矢印42によって表されるように、第1のガス流が、トウの横方向の拡散を提供するために、第1のトウ12及び第2のトウ20を横方向に通過する。第1のガス流は、好ましくは空気の流れである。トウに悪影響を及ぼさない限り、他のガスが使用されてもよい。例えば、実質的に窒素からなるガス流が、不活性環境が望まれる状況で使用されてもよい。
【0031】
第1のガス流42の速度、及び点(B)で第1のトウ12及び第2のトウ22に加えられる縦方向の張力は、トウのガス誘導又は空気圧拡散を提供するように選択される。第1のガス流42の下向き速度は、10~25メートル/秒、好ましくは15~20メートル/秒であるべきである。第1のトウ12の縦方向の張力は、50~150グラムであるべきである。第2のトウ20の縦方向の張力がまた、50~150グラムであるべきである。6K及び12Kの炭素繊維トウのために、点(B)での好ましい張力は90~110グラムである。
【0032】
点(B)で、第2のトウ20は、拡散された第1のトウ44及び拡散された第2のトウ46を形成するために両方のトウが空気圧で拡散されるので、第1のトウ12の真上に整列したままである。拡散された第1のトウ44は、拡散された第1のトウ幅(ST1)を有し、拡散された第2のトウは、拡散された第2のトウ幅(ST2)を有する。拡散操作中、トウは互いに接触しない。拡散工程の完了前のトウ間の接触は、その後のトウの混合に悪影響を与えることが見出された。
【0033】
トウ供給速度、第1のガス流速度、及びトウ張力は、凝集性の組み合わされたトウを形成するために必要な第1のトウ及び第2のトウにある程度の拡散を提供するように選択される。第1のトウ12は、ST1とT1との間の比率が5:1~25:1になるように拡散されるべきである。8:1~12:1のST1:T1の比率は、6K及び12Kの炭素繊維トウのために好ましい。第2のトウ20は、ST2とT2との間の比率が15:1~40:1になるように拡散されるべきである。20:1~30:1のST2:T2の比率が好ましい。
【0034】
第1及び第2のトウが同じ炭素繊維トウである場合には、第2のトウ20は、第2のトウが第1のガス流42中で第1のトウ12の真上に位置することに起因して、第1のトウ12より拡散される傾向がある。最初に幅の広いトウは、幅の狭いトウより第1のガス流中で拡散する傾向があることが見出された。より大きい直径のフィラメントを有するトウは、第1のガス流中でより拡散する傾向があることがまた見出された。
【0035】
第1のガス流中でのトウの向き、並びにトウ幅及びフィラメントサイズは、ST2/T2とST1/T1との間の比率が1.5:1~5:1になるように選択される。ST2/T2とST1/T1との間の比率が2:1~3:1であることが好ましい。第1のトウ及び第2のトウの両方が6K又は12Kの何れかの炭素繊維トウである場合には、ST2/T2とST1/T1との間の好ましい比率は2.5:1である。トウにかかる張力は、ガス誘導拡散に影響を与える。第1のトウ12に加えられる張力は、第2のトウ20に加えられる張力(±10%)に等しいことが好ましい。しかし、第1及び第2のトウに加えられる張力は、ST1/T1:ST2/T2の所望の比率を提供するために要求されるST1/T1及びST2/T2の所望のレベルを達成するために、共に又は独立して変動してもよい。
【0036】
拡散された第1のトウ44及び拡散された第2のトウ46は、接触した拡散されたトウ48を形成するために、点(C)で互いに接触し、且つ格子50と接触する。接触した拡散されたトウ48は幅(CST)を有する。接触した拡散されたトウ48が格子50を横切って移動するとき、それらは、格子50を通過する矢印52によって表される第2のガス流に曝される。第2のガス流52は、好ましくは、第2のガス流が第1のガス流の一部又は部分であるように第1のガス流42と同じ供給源を有する。よって、第1のガス流42のための上記で説明されたパラメータはまた、第2のガス流52に適用可能である。同じガス流速度で第1及び第2のトウを拡散及び混合する単一のガス流を提供するために、第1及び第2のガス流が同じであることが好ましい。しかし、第1及び第2のトウを拡散するために第1のガス流を使用し、そして、トウを混合するために異なる第2のガス流を使用することが望ましい場合がある。
【0037】
点(C)で、拡散された第1及び第2のトウは互いに接触し、且つ格子50と接触する。第2のガス流52は、格子50上のトウの動きと組み合わされて、幅(ET)を有する絡み合ったトウ56の形成を引き起こす。格子50を横切るときの絡み合ったトウ56の幅は、好ましくは、CSTとETとの間の比が0.9:1~1.1:1のままであるように、接触した拡散されたトウ48の幅に相対的に近くに保たれる。格子50上の絡み合ったトウ56に加えられる張力及び第2のガス流52の速度は、CST/ETを所望の範囲に保つように選択される。
【0038】
好ましい例示的な格子50の部分断面図が図3に示される。格子50は、ある距離(GS)離間されたロッド54の形状のバーを含む。格子内のバーの数、断面形状、寸法、及び間隔は、所望のレベルの混合を達成するために変えられてもよい。ガス流によって絡み合ったトウ56に加えられる下向きの力は、バー間の絡み合ったトウの下向きの変位「D」を引き起こす。絡み合ったトウ56の張力、第2のガス流52の速度、及びGSは、フィラメントの過度の破損を引き起こすことなく十分な混合を提供する「D」を達成するように選択される。張力が低すぎる場合には、トウが格子に引き込まれすぎて損傷する。張力が高すぎる場合には、所望のレベルの拡散及び混合は引き起こさない。
【0039】
格子50は、拡散/混合ゾーン14の左端30と右端32との間で互いに平行に延伸する10~20本の格子ロッド54を有するべきである。ロッド54は2~5mmの直径を有すべきであり、GSは3mm~9mmの範囲にあるべきである。毛羽数を増加させることなくフィラメントの十分な混合を達成するために、Dは0.5mm~5mmであるべきである。6K及び12Kの炭素繊維の第1のトウ及び第2のトウを混合するための好ましい格子は、各々が2~3mmの直径及び4~6mmのGSを有する12~16本のロッドを有する。この好ましい格子が6K及び/又は12Kの炭素繊維トウを混合するために使用される場合には、トウ張力及び第2のガス流52の速度は、Dが1mm~3mmになるように選択される。
【0040】
格子バー54は、円形断面を有するロッドとして示される。非円筒形の弧状の断面形状又は正方形/長方形の断面を有するもののような、他のタイプの格子ロッドが可能である。非円筒形の断面形状を有する格子バーが使用される場合には、過度のフィラメントの破損を引き起こすことなく適切な混合が得られることを確実にするために他のプロセスパラメータを制御することに留意しなければならない。
【0041】
絡み合ったトウ56は、出口28を通って混合/拡散ゾーン14から離れる。絡み合ったトウ56は、絡み合ったトウ56の幅を組み合わされたトウ58の幅(CT)に減少させるように設計された溝付き外周62を有する統合リール60上を絡み合ったトウ56に通過させることによって組み合わされたトウ58に形成される。溝付き外周62は、混合されたフィラメントに悪影響を与えることなく、ETからCTへの所望の減少を提供するように設計された凹状の形状を有する。
【0042】
例示的な統合リール60の詳細な部分断面図が図5に示される。統合リール60は、6K~24Kの絡み合ったトウ56を組み合わされたトウ58に形成する際の使用のために設計される。統合リール60は、10~25mmの幅(RGW)及び4~10mmの深さ(GD)を有する溝62を伴う30~60mmの半径(RR)を有する。
【0043】
絡み合ったトウ56に、それが統合リール60に送られるときに加えられる張力は、溝62と組み合わせて、トウ幅の所望の減少を提供するレベルに維持される。組み合わされたトウの幅(CT)は、6K~24Kの炭素フィラメントを含む組み合わされたトウのために、2~5mmであるべきである。点(D)と統合リール60との間の絡み合ったトウ56の張力は、300~500グラムの間であるべきである。
【0044】
ポイント(B)の前に第1及び/又は第2のトウに塗布される有機油ベースの界面活性剤が、トウの所望のレベルの拡散及び混合を、それらを損傷することなく提供するために、拡散/混合増強(SCE)剤として作用することが発見された。同程度の拡散及び混合を行った場合には、組み合わされたトウの毛羽数は、SCEが使用されなかった場合に大幅に高くなる傾向があった。
【0045】
SCE剤は、繊維産業で軟化剤として一般に使用される有機油ベースの界面活性剤の何れかにすることができる。例示的なSCE剤は、エトキシル化ヒマシ油トリグリセリドのようなアルコキシル化ヒマシ油トリグリセリドを含む。好ましい例示的なSCE剤は、ヘンケル(Henkel Corporation)(デュッセルドルフ、ドイツ)から商品名トライロックス(TRYLOX)で入手可能なポリオキシエチレンヒマシ油溶液である。例えば、12K IM7の第1のトウと12K IM7の第2のトウとの拡散及び混合は、トウが最初にトライロックス(TRYLOX)5918の溶液(1%溶液)を通過した後に135℃で乾燥することによって処理された場合に定性的に改善された。
【0046】
SCE剤は、点(C)の前の任意の時間に、第1のトウ及び/又は第2のトウに塗布されることができる。例えば、トウは、点(A)と(B)との間で、SCE剤の浴を通過し、列をなして乾燥されてもよい。或いは、SCE剤は、トウに、それらが位置合わせリール16及び22上を通過する前の任意の時間に塗布されてもよい。
【0047】
炭素繊維トウに従来塗布されているサイジング剤の何れもがまた、組み合わされたトウ58に塗布されてもよい。このような従来のサイジング剤は、ビニルエステルサイジング剤、エポキシベースのサイジング剤、フェノールサイジング剤、ポリウレタンサイジング剤、等を含む。サイジング剤が望まれる場合には、それは第1のトウと第2のトウとの拡散及び混合の後にのみ塗布されるべきである。ポイント(D)の前のシステムの任意のポイントでのトウへの上記のタイプの従来のサイジング剤の塗布は、トウの拡散及び混合に悪影響を与えることが見出された。サイジングは、もしあれば、絡み合ったトウ56が拡散/混合ゾーン14を出た後の点で適用されることが好ましい。
【0048】
サイジングの有無にかかわらず、組み合わされたトウ58は、保管及び更なる使用のために巻き取りスプール64に巻かれる。組み合わされたトウ58は、多種多様な複合材料を作製するために、任意の他の炭素繊維トウと同じ方法で使用されてもよい。例えば、組み合わされたトウ58は、一方向テープ又は織布に形成されてもよく、複合部品を形成するために硬化/成形されてもよい多種多様なプリプレグ及び成形合成物を形成するために、未硬化の熱可塑性又は熱硬化性樹脂マトリックスと組み合わされてもよい。
【0049】
同じタイプの炭素フィラメントを使用して炭素繊維トウのフィラメント数を増加させる好ましい実施例は、第1のトウ12がHexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維であり、第2のトウ20がHexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維である、システム10を使用して作製される、組み合わされたトウ58である。T1及びT2は両方とも2mmであり、入口26を通る線速度は3メートル/分であり、第1及び第2のトウの張力はそれぞれ100グラムであった。第1のトウ及び第2のトウの両方が、トライロックス(TRYLOX)5918の1%溶液を線速度で通過し、拡散/混合ゾーン14で拡散及び混合される前に135℃で乾燥された。第1の気流42及び第2の気流52の速度は、20メートル/秒で同じであった。ST1:T1の比率は10:1であり、ST2:T2の比率は25:1であった。格子50は、14本の格子バー54を含んだ。各格子バー54の直径は2.3mmであり、GSは4.7mmであった。絡み合ったトウ56の張力は400グラムであり、組み合わされたトウ58の幅(CT)は3mmであった。前述の方法のパラメータは概算値であり、所望の展延性及び毛羽数を有する組み合わされたトウ58の形成に悪影響を与えることなく、それぞれ±15%変動してもよいことに留意すべきである。
【0050】
上記で説明されたように作製された組み合わされたトウ58(24Kのフィラメント)の展延性は、ロービングテスト(ROVINGTEST)トウ評価装置と同様のトウ評価装置を使用して測定された。組み合わされたトウ58の展延性は1.7(±10%)であった。標準のHexTow(登録商標)24K IM7炭素繊維トウの展延性がまた、同じトウ評価装置で測定された。標準のHexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウの展延性は2.0(±10%)であった。
【0051】
上記の例は、本発明に従って作製された組み合わされたトウが十分に凝集性であり、同じフィラメント数を有する標準の市販のトウの展延性以下の展延性を有することを実証する。組み合わされたトウの展延性は、同じ試験装置を使用して測定された場合に、同じフィラメント数を有する標準の市販のトウの展延性以下であることが好ましい。しかし、本発明の方法及びシステムはまた、一般に、組み合わされたトウの展延性が、同じ試験機器で測定された場合に、同じフィラメント数を有する同様の市販のトウの展延性の25%以内である、組み合わされたトウを作製する際に有用である。
【0052】
組み合わされたトウ(24Kのフィラメント)及び標準のHexTow(登録商標)24K IM7炭素繊維トウの毛羽数は、フライ・ビュー(FRAY VIEW)糸欠陥視覚化装置と同様の試験機器を使用して決定された。組み合わされたトウの毛羽数は、標準のHexTow(登録商標)24K IM7炭素繊維トウの毛羽数を超えて25%未満であった。
【0053】
炭素繊維トウのフィラメント数が異なる炭素フィラメントを使用して増加する、混合の組み合わされたトウを作製するための好ましい実施例は、第1のトウ12がHexTow(登録商標)12K IM7であり、第2のトウ20がHexTow(登録商標)12K AS4である、システム10を使用して作製された組み合わされたトウ58である。T1は2mmであり、T2は2.5~3mmであった。システム及び方法のパラメータは、それ以外は上記の好ましい例に記載されたものと同じであった。ST1:T1の比率は10:1であり、ST2:T2の比率は30:1であった。CTは4mmであった。これらはまた概算値であり、上記のパラメータと同様に、±15%変動してもよい。
【0054】
混合の組み合わされたトウ及び市販のHexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウの展延性及び毛羽数は、12K IM7//12K IM7の組み合わされたトウ及び市販のHexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウのために上記で説明されたのと同じ方法で測定されることができる。混合の組み合わされたトウの展延性は2.0(±10%)であり、HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウの展延性は2.0(±10%)である。この例は、12K IM7//12K AS4の混合の組み合わされたトウが、HexTow(登録商標)12K IM7及びHexTow(登録商標)12K AS4の両方の展延性と比較して遜色のない展延性(凝集性)を有する本発明に従って作製されることできることを実証する。
【0055】
混合の組み合わされたトウ及びHexTow(登録商標)12K AS4の毛羽数がまた、前述の例のように測定されることができる。混合の組み合わされたトウの毛羽数は、市販のHexTow(登録商標)12K IM7又はHexTow(登録商標)12K AS4の何れかの毛羽数を超えて25%未満であると予想される。
【0056】
HexTow(登録商標)12K IM7炭素繊維トウのフィラメントは、HexTow(登録商標)12K AS4炭素繊維トウのフィラメントの直径より小さい直径を有する。混合の組み合わされたトウの断面は、異なるフィラメントの直径に基づいてフィラメントの混合の均一性を決定するために顕微鏡で観察された。混合の組み合わされた繊維は、IM7のフィラメント及びAS4のフィラメントの混合物の実質的に均一な断面を有することが見出された。フィラメントのこのような均一な混合は、異なる特性を有する炭素繊維トウが組み合わされる場合に、本発明による特定の利点である。混合の組み合わされたトウの代表的な断面図が、IM7のフィラメント(直径5.2ミクロン)が12として示され、AS4のフィラメント(直径7.1ミクロン)が20として示される、図6に示される。
【0057】
本発明は、第1のトウを第2のトウと組み合わせることに限定されず、3つ以上のトウを整列、拡散、及び混合することによってフィラメント数を増加させるためにまた使用されることができることに留意すべきである。3つ以上のトウを組み合わせる場合には、複数のトウの所望のレベルの混合及び組み合わされたトウの展延性を達成するために、第1のトウを第2のトウと組み合わせることに関する上記の様々な条件及びパラメータは変動してもよい。
【0058】
このように本発明の例示的な実施形態が説明されたが、当業者は、本開示は例示にすぎず、本発明の範囲内で様々な他の代替、適合、及び変更がなされてもよいことに留意すべきである。よって、本発明は、上記で説明された実施形態によって限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6