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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】医療用コネクタ及び輸液セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20231121BHJP
   A61M 39/28 20060101ALI20231121BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61M5/168 506
A61M39/28
A61M39/10 130
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020567417
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048780
(87)【国際公開番号】W WO2020153037
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019008767
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】柿木 俊彦
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-277161(JP,A)
【文献】特開2002-291906(JP,A)
【文献】特開2001-129084(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 39/28
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流路を区画するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体に対して移動可能に取り付けられているカバー部材と、を備え、
前記コネクタ本体は、
外部から前記内部流路に液体が流入する第1流入口を区画する第1上流ポート部と、
外部から前記内部流路に液体が流入する第2流入口を区画する第2上流ポート部と、
前記第1流入口及び前記第2流入口から前記内部流路に流入した液体が流出する流出口を区画する下流ポート部と、を備え、
前記カバー部材は、前記コネクタ本体に対して、前記第2流入口を覆う第1位置と、前記第2流入口を露出させる第2位置と、の間を移動可能であり、
前記カバー部材は、前記カバー部材が前記第2位置にある状態で、前記第1上流ポート部を挟み込むことで前記第1流入口を閉塞することによって、又は、前記第1上流ポート部に取り付けられる流路部材を挟み込むことで前記流路部材の流路を閉塞することによって、前記第1流入口から前記流出口に至る送液を阻害する送液阻害機構を備える、医療用コネクタ。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記コネクタ本体に対して回動可能に取り付けられており、
前記カバー部材は、前記コネクタ本体に対して回動することにより、前記第1位置と前記第2位置との間を移動可能である、請求項1に記載の医療用コネクタ。
【請求項3】
前記カバー部材を前記第1位置に向かって付勢する付勢部材を備える、請求項1又は2に記載の医療用コネクタ。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記第2位置にある状態で、前記流路部材又は前記第1上流ポート部を挟み込むスリット開口を区画する溝部を備え、
前記送液阻害機構は、前記カバー部材の前記溝部により構成されている、請求項1から3のいずれか1つに記載の医療用コネクタ。
【請求項5】
内部流路を区画するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体に対して移動可能に取り付けられているカバー部材と、を備え、
前記コネクタ本体は、
外部から前記内部流路に液体が流入する第1流入口を区画する第1上流ポート部と、
外部から前記内部流路に液体が流入する第2流入口を区画する第2上流ポート部と、
前記第1流入口及び前記第2流入口から前記内部流路に流入した液体が流出する流出口を区画する下流ポート部と、を備え、
前記カバー部材は、前記コネクタ本体に対して、前記第2流入口を覆う第1位置と、前記第2流入口を露出させる第2位置と、の間を移動可能であり、
前記カバー部材が前記第2位置にある状態で、前記第1上流ポート部、又は、前記第1上流ポート部に取り付けられる流路部材、と係合することによって、前記第1流入口から前記流出口に至る送液を阻害可能な送液阻害機構を備え、
前記送液阻害機構は、
前記第1上流ポート部に対して取り付けられる前記流路部材を挟み込むことで、前記流路部材の流路を閉塞し、前記第1流入口から前記流出口に至る送液を阻害し、又は、
前記第1上流ポート部を挟み込むことで、前記第1流入口を閉塞し、前記第1流入口から前記流出口に至る送液を阻害し、
前記コネクタ本体は、前記第1上流ポート部、又は、前記第1上流ポート部に対して取り付けられる前記流路部材、を受ける受け部、を備え、
前記カバー部材は、前記第2位置にある状態で、前記コネクタ本体の前記第1上流ポート部、又は、前記流路部材、を前記受け部に向かって押圧し、前記受け部との間で挟み込む押圧部を備え、
前記送液阻害機構は、前記コネクタ本体の前記受け部と、前記カバー部材の前記押圧部と、により構成されている、医療用コネクタ。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載の医療用コネクタを含む輸液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療用コネクタ及び輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液等の液体を生体に投与する際に、医療用チューブを含む輸液セットから形成される輸液ラインが利用されている。輸液ラインは、1つの薬液を投与するための単一の流路のみを区画する構成に限られない。輸液ラインは、例えば、混注口を区画する医療用コネクタを含み、この医療用コネクタから流路上流側を複数に分岐させるように構成してもよい。このような輸液ラインとすれば、複数の薬液を投与することができる。特許文献1には、医療用コネクタとしての三方活栓が設けられている輸液ラインが開示されている。特許文献1の輸液ラインでは、三方活栓により、第1薬液バッグの薬液を患者に投与するための流路と、第2薬液バッグの薬液を患者に投与するための流路と、を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-30489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の輸液ラインでは、医療用コネクタとしての三方活栓の上流側に、第1薬液バッグに接続されている第1流路と、第2薬液バッグに接続されている第2流路と、が接続されている状態のまま、医師・看護師などの医療従事者の三方活栓の操作によって、流路の切り替えが行われる。そのため、流路の切り替え忘れなど、切り替え作業において人為的なミスが発生するおそれがある。
【0005】
本開示は、輸液ラインに組み込まれた場合に、輸液ラインの流路の切り替えにおいて人為的なミスの発生を抑制可能な医療用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様としての医療用コネクタは、内部流路を区画するコネクタ本体と、前記コネクタ本体に対して移動可能に取り付けられているカバー部材と、を備え、前記コネクタ本体は、外部から前記内部流路に液体が流入する第1流入口を区画する第1上流ポート部と、外部から前記内部流路に液体が流入する第2流入口を区画する第2上流ポート部と、前記第1流入口及び前記第2流入口から前記内部流路に流入した液体が流出する流出口を区画する下流ポート部と、を備え、前記カバー部材は、前記コネクタ本体に対して、前記第2流入口を覆う第1位置と、前記第2流入口を露出させる第2位置と、の間を移動可能であり、前記カバー部材が前記第2位置にある状態で、前記第1上流ポート部、又は、前記第1上流ポート部に取り付けられる流路部材、と係合することによって、前記第1流入口から前記流出口に至る送液を阻害可能な送液阻害機構を備える。
【0007】
本開示の1つの実施形態として、前記カバー部材は、前記コネクタ本体に対して回動可能に取り付けられており、前記カバー部材は、前記コネクタ本体に対して回動することにより、前記第1位置と前記第2位置との間を移動可能である。
【0008】
本開示の1つの実施形態として、前記カバー部材を前記第1位置に向かって付勢する付勢部材を備える。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記送液阻害機構は、前記第1上流ポート部に対して取り付けられる前記流路部材を挟み込むことで、前記流路部材の流路を閉塞し、前記第1流入口から前記流出口に至る送液を阻害する、又は、前記第1上流ポート部を挟み込むことで、前記第1流入口を閉塞し、前記第1流入口から前記流出口に至る送液を阻害する。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記カバー部材は、前記第2位置にある状態で、前記流路部材又は前記第1上流ポート部を挟み込むスリット開口を区画する溝部を備え、前記送液阻害機構は、前記カバー部材の前記溝部により構成されている。
【0011】
本開示の1つの実施形態として、前記コネクタ本体は、前記第1上流ポート部、又は、前記第1上流ポート部に対して取り付けられる前記流路部材、を受ける受け部、を備え、前記カバー部材は、前記第2位置にある状態で、前記コネクタ本体の前記第1上流ポート部、又は、前記流路部材、を前記受け部に向かって押圧し、前記受け部との間で挟み込む押圧部を備え、前記送液阻害機構は、前記コネクタ本体の前記受け部と、前記カバー部材の前記押圧部と、により構成されている。
【0012】
本開示の第2の態様としての輸液セットは、上記医療用コネクタを含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、輸液ラインに組み込まれた場合に、輸液ラインの流路の切り替えにおいて人為的なミスの発生を抑制可能な医療用コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態としての医療用コネクタを含む一実施形態としての輸液セットにより形成される輸液ラインを示す図である。
図2】カバー部材が第1位置にある形態での図1に示す医療用コネクタの斜視図である。
図3】カバー部材が第2位置にある状態での図1に示す医療用コネクタの斜視図である。
図4図1に示す医療用コネクタの分解斜視図である。
図5図4と異なる視点から見た、図1に示す医療用コネクタの分解斜視図である。
図6図6(a)、図6(b)は、図2に示す医療用コネクタが輸液ラインに組み込まれた際の一状態を異なる視点から見た斜視図である。
図7図7(a)、図7(b)は、図2に示す医療用コネクタが輸液ラインに組み込まれた際の一状態を異なる視点から見た斜視図である。
図8図8(a)、図8(b)は、図2に示す医療用コネクタが輸液ラインに組み込まれた際の一状態を異なる視点から見た斜視図である。
図9】送液阻害機構の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る医療用コネクタ及び輸液セットの実施形態について図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0016】
図1は、本開示に係る輸液セットの一実施形態としての輸液セット100を示す図である。
【0017】
図1に示すように、輸液セット100は、第1輸液ラインXを構成する第1輸液ラインセット10と、第2輸液ラインYを構成する第2輸液ラインセット20と、第3輸液ラインZを構成する第3輸液ラインセット30と、を備えている。図1では、第1輸液ラインX、第2輸液ラインY及び第3輸液ラインZが、本開示に係る医療用コネクタの一実施形態としての医療用コネクタ1により接続されている状態を示している。図1に示す「A」は、輸液セット100により形成される輸液ラインの送液方向を示している。
【0018】
本実施形態の第1輸液ラインXを構成する第1輸液ラインセット10は、第1輸液容器P1に接続可能なびん針11と、このびん針11と医療用コネクタ1とを接続する医療用チューブ12と、この医療用チューブ12の外周面に取り付けられ、医療用チューブ12を閉塞可能なワンタッチクランプ13と、を備えている。より具体的に、本実施形態の医療用チューブ12は、流路上流側となる一端側で第1輸液容器P1に接続され、流路下流側となる他端側で医療用コネクタ1の第1上流ポート部2aに接続される。第1輸液容器P1内の薬液等の液体は、びん針11及び医療用チューブ12により構成される第1輸液ラインXを通じて、医療用コネクタ1内の内部流路へと流入する。
【0019】
本実施形態の第1輸液ラインXは、びん針11及び医療用チューブ12により構成されているが、医療用コネクタ1に通じる薬液等の液体の流路を区画する構成であれば、上述の構成に限られない。第1輸液ラインXを構成する第1輸液ラインセット10は、例えば、点滴筒、流量調整用クランプなど、上述の構成部材とは別種の医療器具を更に備えてもよい。また、第1輸液ラインセット10は、ワンタッチクランプ13を備えない構成であってもよい。
【0020】
本実施形態の第2輸液ラインYを構成する第2輸液ラインセット20は、第2輸液容器P2に接続可能なびん針21と、このびん針21と医療用コネクタ1とを接続する医療用チューブ22と、この医療用チューブ22の外周面に取り付けられ、医療用チューブ22を閉塞可能なワンタッチクランプ23と、を備えている。より具体的に、本実施形態の医療用チューブ22は、流路上流側となる一端側で第2輸液容器P2に接続され、流路下流側となる他端側で医療用コネクタ1の第2上流ポート部2bに接続される。第2輸液容器P2内の薬液等の液体は、びん針21及び医療用チューブ22により構成される第2輸液ラインYを通じて、医療用コネクタ1内の内部流路へと流入する。
【0021】
本実施形態の第2輸液ラインYは、びん針21及び医療用チューブ22により構成されているが、医療用コネクタ1に通じる薬液等の液体の流路を区画する構成であれば、上述の構成に限られない。第2輸液ラインYを構成する第2輸液ラインセット20は、例えば、点滴筒、流量調整用クランプなど、上述の構成部材とは別種の医療器具を更に備えてもよい。また、第2輸液ラインセット20は、ワンタッチクランプ23を備えない構成であってもよい。
【0022】
本実施形態の第3輸液ラインZを構成する第3輸液ラインセット30は、医療用コネクタ1に接続可能な上流側医療用チューブ31と、この上流側医療用チューブ31の流路下流側の端部に接続される点滴筒32と、この点滴筒32の流路下流側に接続される下流側医療用チューブ33と、この下流側医療用チューブ33の流路下流側の端部に接続されるオスコネクタ34と、下流側医療用チューブ33内の液体の流量を複数の状態へと変更可能な流量調整用クランプ35と、を備えている。
【0023】
より具体的に、上流側医療用チューブ31は、その流路上流側となる一端側で医療用コネクタ1の下流ポート部2cに接続され、流路下流側となる他端側で点滴筒32に接続される。点滴筒32は、第1輸液容器P1又は第2輸液容器P2から供給される液体の流量を視認可能に構成されている。下流側医療用チューブ33は、その流路上流側となる一端側で点滴筒32に接続され、流路下流側となる他端側でオスコネクタ34に接続される。オスコネクタ34は、例えば、患者の体内に留置される留置針や、延長チューブを含む別の輸液ライン等、に接続可能に構成されている。オスコネクタ34は、例えば、ISO80369-7に準拠したロック式オスコネクタにより構成可能である。上流側医療用チューブ31、点滴筒32、下流側医療用チューブ33及びオスコネクタ34の相互間は、例えば、融着等による接合される。
【0024】
本実施形態の第3輸液ラインZは、上流側医療用チューブ31、点滴筒32、下流側医療用チューブ33及びオスコネクタ34により構成されているが、医療用コネクタ1から患者に通じる薬液等の液体の流路を区画する構成であれば、上述の構成に限られない。第3輸液ラインZを構成する第3輸液ラインセット30は、例えば、除菌フィルタ、ワンタッチクランプなど、上述の構成部材とは別種の医療器具を更に備えてもよい。
【0025】
以上のように、輸液セット100によれば、医療用コネクタ1を介して第1輸液ラインXの流路及び第3輸液ラインZの流路が連通することで、第1輸液ラインXの流路上流側の端部に接続される第1輸液容器P1内の液体を、第3輸液ラインZの流路下流側の端部に接続される留置針等を通じて、患者の体内に投与することができる。また、輸液セット100によれば、医療用コネクタ1を介して第2輸液ラインYの流路及び第3輸液ラインZの流路が連通することで、第2輸液ラインYの流路上流側の端部に接続される第2輸液容器P2内の液体を、第3輸液ラインZの流路下流側の端部に接続される留置針等を通じて、患者の体内に投与することができる。
【0026】
以下、医療用コネクタ1の詳細について、図2図5を参照して説明する。図2図3は、医療用コネクタ1の斜視図である。詳細は後述するが、図2図3それぞれは、医療用コネクタ1の異なる形態を示している。図4は、医療用コネクタ1の分解斜視図である。図5は、図4と異なる視点から見た、医療用コネクタ1の分解斜視図である。
【0027】
医療用コネクタ1によれば、輸液ラインにおいて、流路の切り替えにおける人為的なミスの発生を抑制することができる。具体的に、輸液セット100により構成される図1に示す輸液ラインでは、第2輸液ラインYが医療用コネクタ1に接続されている状態において、第1輸液ラインXから第3輸液ラインZへの第1輸液容器P1の液体の送液が停止され、第2輸液ラインYから第3輸液ラインZへの第2輸液容器P2の液体の送液のみが許容される。一方、第2輸液ラインYが医療用コネクタ1から取り外されることで、第1輸液ラインXから第3輸液ラインZへの第1輸液容器P1の液体の送液が可能となる。換言すれば、医療用コネクタ1は、第1輸液ラインX及び第2輸液ラインYの両方が医療用コネクタ1に接続されている状態で、流路の切り替えがされないように構成されている。これにより、流路の切り替えにおける人為的なミスの発生を抑制することができる。
【0028】
図2図5に示すように、医療用コネクタ1は、コネクタ本体2と、カバー部材3と、付勢部材4と、弾性弁体5と、を備える。図2図3に示すように、カバー部材3は、コネクタ本体2に対して移動可能に取り付けられている。また、医療用コネクタ1は送液阻害機構を備える。詳細は後述するが、本実施形態の医療用コネクタ1の送液阻害機構は、カバー部材3に設けられた溝部51(図4図5参照)により構成されている。以下、医療用コネクタ1の各部材について説明する。
【0029】
[コネクタ本体2]
コネクタ本体2は、内部流路を区画している。また、コネクタ本体2は、第1上流ポート部2aと、第2上流ポート部2bと、下流ポート部2cと、備える。第1上流ポート部2aは、外部から内部流路に液体が流入する第1流入口2a1を区画している。第2上流ポート部2bは、外部から内部流路に液体が流入する第2流入口2b1を区画している。下流ポート部2cは、第1流入口2a1及び第2流入口2b1から内部流路に流入した液体が流出する流出口2c1を区画している。
【0030】
第1上流ポート部2aは、第1流入口2a1を内部に区画する筒状部により構成されている。第1上流ポート部2aには、上述したように、第1輸液ラインX(図1参照)の流路下流側の端部が接続される。本実施形態では、第1上流ポート部2a内に、第1輸液ラインXの医療用チューブ12(図1参照)の流路下流側の端部が挿入かつ接合される。第1上流ポート部2a及び医療用チューブ12は、超音波融着等によって接合可能であるが、両者の流路が液密に接続されていればよく、その接続構成は特に限定されない。
【0031】
下流ポート部2cは、流出口2c1を内部に区画する筒状部により構成されている。下流ポート部2cには、上述したように、第3輸液ラインZ(図1参照)の流路上流側の端部が接続される。本実施形態では、下流ポート部2c内に、第3輸液ラインZの上流側医療用チューブ31(図1参照)の流路上流側の端部が挿入かつ接合される。下流ポート部2c及び上流側医療用チューブ31は、超音波融着等によって接合可能であるが、両者の流路が液密に接続されていればよく、その接続構成は特に限定されない。
【0032】
第2上流ポート部2bには、上述したように、第2輸液ラインY(図1参照)の流路下流側の端部が接続される。本実施形態の第2上流ポート部2bは、第2輸液ラインYのオスコネクタ34が挿入可能な第2流入口2b1を区画する筒状部により構成されている。第2流入口2b1は、スリット41を有する弾性弁体5により閉塞される。そのため、オスコネクタ34は、弾性弁体5のスリット41を通じて第2流入口2b1内に挿通可能である。このような弾性弁体5を第2上流ポート部2bに配置することで、医療用コネクタ1内の内部流路と第2輸液ラインYの流路とを液密に接続し易くなる。更に、医療用コネクタ1の第2上流ポート部2bから第2輸液ラインYのオスコネクタ34を取り外しても、弾性弁体5のスリット41が閉じることで、第2流入口2b1から外部に薬液等の液体が漏出することを抑制できる。また、本実施形態の第2上流ポート部2bを構成する筒状部の外周面には、ISO80369-7に準拠したロック式オスコネクタを接続可能な雄ねじ部2b2が形成されている。換言すれば、本実施形態の第2上流ポート部2bは、ISO80369-7に準拠したロック式のメスコネクタ部により構成されている。
【0033】
また、本実施形態のコネクタ本体2は、後述するカバー部材3の回動軸部3aを受ける軸受部2dを備える。本実施形態の軸受部2dは、コネクタ本体2の外壁に形成されている凹部により構成されている。より具体的に、本実施形態の軸受部2dとしての凹部は、コネクタ本体2の外壁に突設された筒状部により構成され、筒状部内に回動軸部3aが収容される。本実施形態の軸受部2dは、コネクタ本体2の外壁の対向する位置に2つ設けられている。
【0034】
更に、本実施形態のコネクタ本体2は、後述するカバー部材3と当接し、カバー部材3の回動軸部3a周りの回動範囲を制限する壁部2eを備える。より具体的に、本実施形態の壁部2eは、カバー部材3が後述する第2位置(図3参照)から第1位置(図2参照)に移動する際にカバー部材3と当接し、カバー部材3が第1位置を超えて移動しないように移動を規制する。本実施形態の壁部2eは、コネクタ本体2の外壁に突設されている板状部により構成されているが、壁部2eの形状は本実施形態の形状に限られない。
【0035】
また、本実施形態のコネクタ本体2は、後述する付勢部材4と係合し、付勢部材4によるカバー部材3への付勢力の反力を付与する係合部2fを備える。本実施形態の係合部2fは、コネクタ本体2の外壁に突設されている板状部により構成されているが、係合部2fの形状は本実施形態の形状に限られない。
【0036】
本実施形態のコネクタ本体2は、上述の第2上流ポート部2bを構成するキャップ部材と、上述の第2上流ポート部2b以外を構成するホルダ部材と、を超音波融着等によって一体化することで形成されているが、コネクタ本体2を構成する部材点数は特に限られず、単一の部材から形成されていても、2つ以上の任意の数の部材から形成されていてもよい。
【0037】
コネクタ本体2の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリスチレン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリ-(4-メチルペンテン-1);アイオノマー;アクリル樹脂;ポリメチルメタクリレート;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂);ブタジエン-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル;ポリエーテル;ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド;ポリアセタール(POM);ポリフェニレンオキシド;変性ポリフェニレンオキシド;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアリレート;芳香族ポリエステル(液晶ポリマー);ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂;などの各種樹脂材料が挙げられる。また、これらのうちの1種以上を含むブレンド体やポリマーアロイなどでもよい。その他に、各種ガラス材、セラミックス材料、金属材料であってもよい。
【0038】
[カバー部材3]
カバー部材3は、コネクタ本体2に対して移動可能に取り付けられている。また、カバー部材3は、コネクタ本体2に対して、第2流入口2b1を覆う第1位置と、第2流入口2b1を露出させる第2位置と、の間を移動可能である。図2では、カバー部材3が第1位置にある状態を示し、図3では、カバー部材3が第2位置にある状態を示している。
【0039】
図2図3に示すように、本実施形態のカバー部材3は、コネクタ本体2に対して回動可能に取り付けられている。つまり、本実施形態のカバー部材3は、コネクタ本体2に対して回動することにより、第1位置(図2参照)と第2位置(図3参照)との間を移動可能である。カバー部材3のコネクタ本体2に対する移動機構を、このような回動機構とすることにより、カバー部材3の第1位置と第2位置との間の移動を、簡易な構成で実現することができる。
【0040】
具体的には、図2図5に示すように、本実施形態のカバー部材3は、コネクタ本体2の2つの軸受部2dに回動可能に取り付けられる一対の回動軸部3aを備える。カバー部材3は、一対の回動軸部3aが、コネクタ本体2の軸受部2dに取り付けられた状態のまま回動することで、上述の第1位置(図2参照)と第2位置(図3参照)との間を移動する。より具体的に、本実施形態のカバー部材3は、一対の回動軸部3aそれぞれと連続して対向する一対の支持部3bと、この一対の支持部3bのうち回動軸部3aが設けられる一端側と反対側の他端側で、一対の支持部3b間に架け渡されるように一対の支持部3bと連続するカバー本体部3cと、備える。つまり、回動軸部3aが軸受部2d内で回動することで、一対の支持部3bは回動する。これにより、カバー本体部3cは、第2流入口2b1を覆う第1位置(図2参照)と、第2流入口2b1を覆わず露出させる第2位置(図3参照)と、の間を移動することができる。
【0041】
本実施形態の一対の支持部3bは、対向する一対の板状部により構成されている。一対の回動軸部3aは、一対の支持部3bそれぞれを構成する板状部から、互いの中心軸線が一致する位置で、厚み方向に向かって突設されている。本実施形態の支持部3bは、略扇形状の板状部により構成されているが、支持部3bの形状はこの形状に限定されず、適宜設計可能である。また、本実施形態のカバー本体部3cの形状についても、本実施形態の形状に限定されず、適宜設計可能である。
【0042】
また、医療用コネクタ1は、カバー部材3が第2位置(図3参照)にある状態で、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害可能な送液阻害機構を備えている。本実施形態の送液阻害機構は、上述したように、カバー部材3に設けられた溝部51により構成されている。この送液阻害機構の詳細は後述する(図3等参照)。
【0043】
カバー部材3の材料としては、例えば、上述したコネクタ本体2で用いることが可能な材料と同様の材料を用いることができる。
【0044】
[付勢部材4]
付勢部材4は、カバー部材3を第1位置(図2参照)に向かって付勢する。このような付勢部材4を用いることで、カバー部材3が第1位置(図2参照)でもなく、第2位置(図3参照)でもない別の位置に移動することを抑制することができる。ここで言う「別の位置」とは、例えば、後述する送液阻害機構を構成するカバー部材3の溝部51が第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害しない状態で、かつ、第2流入口2b1を覆わない状態となる、カバー部材3の位置を意味する。そのため、付勢部材4を設けることで、輸液ラインの流路の切り替えにおける人為的なミスの発生を、より確実に抑制することができる。
【0045】
具体的に、本実施形態の付勢部材4は、カバー部材3の回動軸部3aの外周面上に配置されるねじりコイルばねにより構成されている。本実施形態の付勢部材4としてのねじりコイルばねは、螺旋状に延在するばね本体部4aと、このばね本体部4aの一端側に延設される第1ばね係合部4bと、ばね本体部4aの他端側に延設されている第2ばね係合部4cと、を備える。ばね本体部4a内に回動軸部3aが挿通される。つまり、ばね本体部4aは、回動軸部3aの外周面上に配置される。この状態で、第1ばね係合部4bは、カバー部材3に当接することで係合し、かつ、第2ばね係合部4cは、コネクタ本体2に当接することで係合する。本実施形態の付勢部材4としてのねじりコイルばねは、カバー部材3が第2流入口2b1を覆う第1位置(図2参照)になるように、カバー部材3を付勢する。つまり、本実施形態のカバー部材3は、付勢部材4としてのねじりコイルばねの復元力に抗して回動させることで、第1位置(図2参照)から第2位置(図3参照)に移動することができる。逆に、本実施形態のカバー部材3は、付勢部材4による付勢力(本実施形態では復元力)に抗する外力が作用しない限り、付勢部材4の付勢力によって、第2位置(図3参照)から第1位置(図2参照)に移動する。
【0046】
上述したように、本実施形態の付勢部材4は、カバー部材3の回動軸部3aの外周面上に配置されるねじりコイルばねにより構成されているが、付勢部材4の構成は特に限定されない。但し、付勢部材4として、本実施形態のねじりコイルばねを利用することで、カバー部材3を付勢する付勢機構を小型化し易い。したがって、カバー部材3の第1位置(図2参照)と第2位置(図3参照)との間の移動機構を回動する構成にすると共に、カバー部材3を付勢する付勢機構をねじりコイルばねにより実現することで、上記移動機構及び上記付勢機構を、簡易かつ小型の構成にし易くなる。
【0047】
また、本実施形態の付勢部材4としてのねじりコイルばねは、一対の回動軸部3aの一方の回動軸部3aのみに取り付けられているが、一対の回動軸部3aの両方にそれぞれ取り付けられていてもよい。
【0048】
[弾性弁体5]
弾性弁体5は、第2輸液ラインY(図1参照)のオスコネクタ34(図1参照)が第2流入口2b1に挿入される際に弾性変形して開閉することができるようにスリット41を有する。また、弾性弁体5は、上述したように、第2流入口2b1を閉塞するように配置される。
【0049】
弾性弁体5は、金型成形され、弾性変形可能に形成される。この弾性弁体5の材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン-プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合したものであってもよい。
【0050】
次に、医療用コネクタ1の送液阻害機構の詳細について説明する。
【0051】
上述したように、送液阻害機構は、カバー部材3が第2位置(図3参照)にある状態で、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害可能である。本実施形態の送液阻害機構は、第1上流ポート部2aに取り付けられる流路部材(図1の例では第1輸液ラインXの医療用チューブ12)と係合することによって、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害することができる。このような送液阻害機構を設けることで、上述したように、輸液ラインにおいて、流路の切り替えにおける人為的なミスの発生を抑制することができる。
【0052】
具体的に、本実施形態の送液阻害機構は、第1上流ポート部2aに対して取り付けられる流路部材(図1の例では第1輸液ラインXの医療用チューブ12)を挟み込むことで、流路部材の流路を閉塞し、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害する。このようにすることで、簡易な構成で送液阻害機構を実現し易くなる。
【0053】
より具体的に、本実施形態のカバー部材3は、第2位置(図3参照)にある状態で、第1上流ポート部2aに対して取り付けられる流路部材(図1の例では第1輸液ラインXの医療用チューブ12)を挟み込むスリット開口52を区画する溝部51を備えている。そして、本実施形態の送液阻害機構は、カバー部材3の上述の溝部51により構成されている。つまり、カバー部材3が第1位置(図2参照)から第2位置(図3参照)に移動すると、カバー部材3の溝部51のスリット開口52に、第1上流ポート部2aに対して取り付けられる流路部材(図1の例では第1輸液ラインXの医療用チューブ12)が入り込むことで、この流路部材は、溝部51により挟み込まれる。これにより、第1上流ポート部2aに対して取り付けられる流路部材の流路を閉塞し、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害することができる。このような溝部51により送液阻害機構を構成することで、より簡易な構成で送液阻害機構を実現し易くなる。
【0054】
本実施形態の送液阻害機構は、第1上流ポート部2aに取り付けられる流路部材(図1の例では第1輸液ラインXの医療用チューブ12)と係合することによって、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害する構成であるが、送液阻害機構はこの構成に限られない。送液阻害機構は、カバー部材3が第2位置(図3参照)にある状態で、第1上流ポート部2aと係合することによって、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害してもよい。より具体的に、送液阻害機構は、例えば、第1上流ポート部2aを挟み込むことで、第1流入口2a1を閉塞し、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害してもよい。
【0055】
図9は、図2図5に示す送液阻害機構の変形例を示す図である。図9に示す医療用コネクタ201の送液阻害機構は、コネクタ本体202の受け部2gと、カバー部材203の押圧部3dと、により構成されている。
【0056】
コネクタ本体202の受け部2gは、第1上流ポート部2aを、筒状の第1上流ポート部2aの径方向外側から受けるように構成されている。カバー部材203の押圧部3dは、第2位置(図9の二点鎖線の位置を参照)にある状態で、コネクタ本体202の第1上流ポート部2aを受け部2gに向かって押圧し、受け部2gとの間で挟み込む。これにより、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1(図4図5参照)を閉塞することができる。これにより、第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1(図2図3参照)に至る送液を阻害することができる。
【0057】
コネクタ本体202の受け部2gは、例えば、コネクタ本体202の外壁から突設されている板状部により構成可能であるが、その位置、形状は、カバー部材203の押圧部3dの位置、形状に合わせて適宜設計可能であり、特に限定されない。また、カバー部材203の押圧部3dについても、例えば、カバー本体部3cの外縁部により構成可能であるが、その位置、形状は、コネクタ本体202の受け部2gの位置、形状に合わせて適宜設計可能であり、特に限定されない。
【0058】
図9に示す医療用コネクタ201の送液阻害機構では、コネクタ本体202の受け部2gと、カバー部材203の押圧部3dと、により、第1上流ポート部2aが挟み込まれる構成であるが、図2図5に示す医療用コネクタ1の送液阻害機構のように、第1上流ポート部2aに取り付けられる流路部材としての医療用チューブが挟み込まれる構成としてもよい。
【0059】
図9に示す医療用コネクタ201の送液阻害機構では、カバー部材203が第2位置(図9の二点鎖線の位置を参照)にある状態で、カバー部材203が、コネクタ本体202に対して係止されることが好ましい。このようにすることで、コネクタ本体202の受け部2gと、カバー部材203の押圧部3dと、による送液の阻害状態が維持され易い。コネクタ本体202に対してカバー部材203を係止する構成は特に限定されないが、例えば、コネクタ本体202及びカバー部材203の一方に設けられた係止爪を、他方に引っ掛けることで、コネクタ本体202に対してカバー部材203を係止してもよい。
【0060】
再び図2図5に示す医療用コネクタ1について説明する。図6図8は、図1に示す輸液ラインにおいて、医療用コネクタ1を用いて流路の切り替えを実行する工程の概要を示す図である。図6は、第1輸液ラインX及び第3輸液ラインZが、医療用コネクタ1を介して接続されている状態である。また、図6では、第2輸液ラインYは、医療用コネクタ1に接続されていない。図6(a)と図6(b)は視点が異なるが、いずれも同状態の医療用コネクタ1を示している。
【0061】
図6(b)に示すように、医療用コネクタ1の第1上流ポート部2aには、第1輸液ラインXの医療用チューブ12が接続されている。また、図6(a)に示すように、医療用コネクタ1の下流ポート部2cには、第3輸液ラインZの上流側医療用チューブ31が接続されている。更に、図6(a)、図6(b)に示すように、医療用コネクタ1の第2上流ポート部2bは、第1位置にあるカバー部材3により覆われている。つまり、医療用コネクタ1は、第2上流ポート部2bに、第2輸液ラインYを接続できない状態となっている。図6(a)、図6(b)に示す状態では、第1輸液ラインXの医療用チューブ12の流路と、第3輸液ラインZの上流側医療用チューブ31の流路とが、医療用コネクタ1の内部流路を介して、連通している。そのため、図6(a)、図6(b)に示す状態とすることで、第1輸液ラインXの流路上流側の端部に取り付けられる第1輸液容器P1(図1参照)内の液体を、第1輸液ラインX、医療用コネクタ1、及び、第3輸液ラインZを通じて、患者の体内に投与することができる。
【0062】
次に、図6に示す状態から、第2上流ポート部2bに第2輸液ラインYを接続して、流路を切り替える作業について説明する。図7は、医療用コネクタ1のカバー部材3を、図6に示す第1位置から第2位置へと移動させた状態を示している。図7(a)と図7(b)は視点が異なるが、いずれも同状態の医療用コネクタ1を示している。
【0063】
図7(a)に示すように、カバー部材3が第1位置から第2位置へと移動することで、第2上流ポート部2bの第2流入口2b1は、カバー部材3により覆われた状態から、カバー部材3により覆われずに露出した状態へと、変化する。つまり、第2上流ポート部2bに対して第2輸液ラインYのオスコネクタ34を接続することができない状態から、第2上流ポート部2bに対して第2輸液ラインYのオスコネクタ34を接続することができる状態になる。また、図7(b)に示すように、カバー部材3が第1位置から第2位置へと移動することで、第1上流ポート部2aに取り付けられている流路部材としての、第1輸液ラインXの医療用チューブ12は、医療用コネクタ1の送液阻害機構を構成する、カバー部材3の溝部51により挟み込まれ、径方向に潰される。そのため、医療用チューブ12内の流路が閉塞され、医療用チューブ12から医療用コネクタ1への送液ができない状態になる。換言すれば、医療用コネクタ1の送液阻害機構により、医療用コネクタ1の第1上流ポート部2aの第1流入口2a1(図4図5参照)から下流ポート部2cの流出口2c1(図2図3参照)に至る送液が阻害された状態となる。
【0064】
図8は、図7に示す医療用コネクタ1の第2上流ポート部2bに、第2輸液ラインYのオスコネクタ34を接続した状態を示している。図8(a)と図8(b)は視点が異なるが、いずれも同状態の医療用コネクタ1を示している。図8に示すように、医療用コネクタ1を用いれば、第1輸液ラインXから第3輸液ラインZへの送液を停止した状態で、第2輸液ラインYを医療用コネクタ1の第2上流ポート部2b(図7参照)に接続し、第2輸液ラインYから第3輸液ラインZへの送液を実行することができる。これにより、第1輸液ラインX及び第3輸液ラインZにより形成される流路から、第2輸液ラインY及び第3輸液ラインZにより形成される流路への、流路の切り替えが完了する。
【0065】
逆に、第2輸液ラインYのオスコネクタ34を、医療用コネクタ1の第2上流ポート部2bから取り外し、第1輸液ラインXの医療用チューブ12を、医療用コネクタ1の送液阻害機構を構成するカバー部材3の溝部51から取り外すことで、第1輸液ラインXから第3輸液ラインZへの送液を再開できる。これにより、第2輸液ラインY及び第3輸液ラインZにより形成される流路から、第1輸液ラインX及び第3輸液ラインZにより形成される流路への、流路の切り替えが完了する。この際に、本実施形態のカバー部材3は、付勢部材4(図4等参照)の付勢力により、図6に示す第1位置に戻り、第2流入口2b1(図5参照)を覆う。
【0066】
以上のように、第2上流ポート部2bが第1位置にある場合(図6参照)、第2上流ポート部2bには、輸液ライン(本実施形態では第2輸液ラインY)を接続することができない。また、第2上流ポート部2bが第1位置にある場合(図6参照)、送液阻害機構は、医療用コネクタ1の第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害しない。
【0067】
これに対して、第2上流ポート部2bが第2位置にある場合(図7図8参照)、第2上流ポート部2bに、輸液ライン(本実施形態では第2輸液ラインY)を接続することができる。また、第2上流ポート部2bが第2位置にある場合(図7図8参照)、送液阻害機構は、医療用コネクタ1の第1上流ポート部2aの第1流入口2a1から下流ポート部2cの流出口2c1に至る送液を阻害することができる。
【0068】
したがって、医療用コネクタ1によれば、流路の切り替えに際して、第2上流ポート部2bへの第2輸液ラインYの接続動作、又は、第2上流ポート部2bからの第2輸液ラインYの取り外し動作、を要する。そのため、輸液ラインの接続及び取り外しの動作を伴わない流路の切り替え作業と比較して、流路の切り替え作業において人為的なミスの発生を抑制できる。すなわち、輸液ラインにおいて医療用コネクタ1を組み込むことで、輸液ラインの流路の切り替えにおける人為的なミスの発生を抑制できる。
【0069】
本開示に係る医療用コネクタ及び輸液セットは、上述した実施形態に記載の具体的な構成に限られず、請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は医療用コネクタ及び輸液セットに関する。
【符号の説明】
【0071】
1、201:医療用コネクタ
2、202:コネクタ本体
2a:第1上流ポート部
2a1:第1流入口
2b:第2上流ポート部
2b1:第2流入口
2b2:雄ねじ部
2c:下流ポート部
2c1:流出口
2d:軸受部
2e:壁部
2f:係合部
2g:受け部
3、203:カバー部材
3a:回動軸部
3b:支持部
3c:カバー本体部
3d:押圧部
4:付勢部材
4a:ばね本体部
4b:第1ばね係合部
4c:第2ばね係合部
5:弾性弁体
10:第1輸液ラインセット
11:びん針
12:医療用チューブ
13:ワンタッチクランプ
20:第2輸液ラインセット
21:びん針
22:医療用チューブ
23:ワンタッチクランプ
30:第3輸液ラインセット
31:上流側医療用チューブ
32:点滴筒
33:下流側医療用チューブ
34:オスコネクタ
35:流量調整用クランプ
41:スリット
51:溝部(送液阻害機構)
52:スリット開口
100:輸液セット
A:送液方向
P1:第1輸液容器
P2:第2輸液容器
X:第1輸液ライン
Y:第2輸液ライン
Z:第3輸液ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9