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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】アンモニア分解装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20231121BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01J8/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021004386
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022109061
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雅一
(72)【発明者】
【氏名】立花 晋也
(72)【発明者】
【氏名】古市 裕之
(72)【発明者】
【氏名】米川 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】小田 絵里佳
(72)【発明者】
【氏名】石井 弘実
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-96616(JP,A)
【文献】特開2019-189467(JP,A)
【文献】特開2015-59075(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045780(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/04
B01J 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料であるアンモニアを水素と窒素とに分解する分解反応の触媒が充填された反応器と、
前記原料が前記触媒に流入する前に、アンモニア濃度が前記原料よりも低い希釈ガスと前記原料とが混合するように、前記希釈ガスを供給するための希釈ガス供給ラインと
を備え
前記反応器は、前記触媒を収容する触媒収容部を備え、
前記反応器の内部は、第1室と、前記原料が流通する方向において前記第1室よりも下流側の第2室と、前記第1室及び前記第2室の間の第3室とに仕切られており、
前記触媒収容部は、前記第1室及び前記第2室のそれぞれに連通するとともに前記第3室内を延びるように設けられ、
前記第3室は、加熱媒体が流通するように構成されているアンモニア分解装置。
【請求項2】
前記希釈ガスは、前記反応器から流出した流出ガスの一部である、請求項1に記載のアンモニア分解装置。
【請求項3】
前記原料を前記反応器に供給する原料供給ラインを備え、
前記希釈ガス供給ラインの下流端は前記原料供給ラインに接続されている、請求項1または2に記載のアンモニア分解装置。
【請求項4】
前記希釈ガス供給ラインの下流端は前記反応器に接続されている、請求項1または2に記載のアンモニア分解装置。
【請求項5】
前記原料を前記反応器に供給する原料供給ラインを備え、
前記反応器の内面は、前記原料供給ラインと前記反応器との接続部分を取り囲むように、少なくとも部分的に耐火材で覆われている、請求項に記載のアンモニア分解装置。
【請求項6】
前記原料を前記反応器に供給する原料供給ラインと、
前記反応器と連通するガス混合器
を備え、
前記ガス混合器は、前記原料供給ラインと前記希釈ガス供給ラインとのそれぞれが接続されて、前記原料供給ラインを介して前記ガス混合器に流入した前記原料と前記希釈ガス供給ラインを介して前記ガス混合器に流入した前記希釈ガスとを混合する、請求項1または2に記載のアンモニア分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニア分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アンモニアを通過させながら触媒層を外部から加熱することで、アンモニアを水素と窒素とに分解するアンモニア分解装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-167265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンモニア100%の原料を使用する場合のようにアンモニア濃度が高い環境下において、アンモニアを分解する温度である500~600℃では、アンモニアと鉄系材料とが反応して鉄系材料が窒化し、機械的強度が低下する。そうすると、例えば触媒を充填している管が鉄系材料の場合には、管の機械的強度が低下して、管の破断につながるおそれがあった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、アンモニアの分解が行われる反応器の材料の窒化を抑制できるアンモニア分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るアンモニア分解装置は、原料であるアンモニアを水素と窒素とに分解する分解反応の触媒が充填された反応器と、前記原料が前記触媒に流入する前に、アンモニア濃度が前記原料よりも低い希釈ガスと前記原料とが混合するように、前記希釈ガスを供給するための希釈ガス供給ラインとを備え、前記反応器は、前記触媒を収容する触媒収容部を備え、前記反応器の内部は、第1室と、前記原料が流通する方向において前記第1室よりも下流側の第2室と、前記第1室及び前記第2室の間の第3室とに仕切られており、前記触媒収容部は、前記第1室及び前記第2室のそれぞれに連通するとともに前記第3室内を延びるように設けられ、前記第3室は、加熱媒体が流通するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のアンモニア分解装置によれば、反応器内のアンモニア濃度が希釈ガスによって低下するので、アンモニアの分解が行われる反応器を構成する材料の窒化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の構成図である。
図2】本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の反応器の断面図である。
図3】本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の反応器の別の変形例の構成図である。
図4】本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の反応器のさらに別の変形例の部分断面図である。
図5】本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の反応器のさらに別の変形例の部分断面図である。
図6】本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の反応器のさらに別の変形例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態によるアンモニア分解装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
<本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の構成>
図1に示されるように、本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置1は、原料であるアンモニアを、下記反応式(1)で示される反応によって水素と窒素とに分解する装置である。アンモニア分解装置1は、反応式(1)で示されるアンモニアの分解反応の触媒3が充填された反応器2を備えている。
2NH→N+3H ・・・(1)
【0011】
反応器2には、原料を反応器に供給する原料供給ライン4が接続されている。原料供給ライン4には、液体アンモニアを貯蔵する図示しない貯蔵設備から供給された液体アンモニアを蒸発させて気体のアンモニアに蒸発させる蒸発器5が設けられている。また、反応器2には、反応器2から流出した流出ガスが流通する流出ガスライン6の一端が接続されている。流出ガスは、反応式(1)によれば、窒素と水素と未反応のアンモニアとを含んでいる。
【0012】
流出ガスライン6の他端は、アンモニア回収装置7に接続されている。アンモニア回収装置7の構成は特に限定するものではなく、例えば水スクラバーや圧力変動吸着(PSA)装置等であってもよい。流出ガスライン6には、アンモニア回収装置7よりも上流側に、流出ガスを冷却するための冷却器8が設けられている。冷却器8は例えば、蒸発器5に流入する前の液体アンモニアと流出ガスとを熱交換する熱交換器であってもよい。この構成によれば、流出ガスが冷却されるとともに液体アンモニアが昇温されるので、蒸発器5で液体アンモニアを昇温するためのエネルギーを低減することが可能になる。
【0013】
アンモニア回収装置7で回収された液体アンモニアを蒸発器5よりも上流側で原料供給ライン4に戻すために、回収アンモニアライン9が設けられている。アンモニア回収装置7で流出ガスからアンモニアを除去して生成した精製分解ガスを、例えばガスタービンのような分解ガス消費設備に供給するための精製分解ガスライン10の一端がアンモニア回収装置7に接続されている。冷却器8とアンモニア回収装置7との間で流出ガスライン6に一端が接続されるとともに他端が反応器2に接続される流出ガスリサイクルライン11が設けられている。流出ガスリサイクルライン11には、圧縮機12が設けられている。
【0014】
図2に示されるように、反応器2の内部は、仕切部材21,22によって、第1室23と、反応器2内を原料が流通する方向において第1室23よりも下流側の第2室24と、第1室23及び第2室24の間の第3室25とに仕切られている。原料供給ライン4及び流出ガスリサイクルライン11は第1室23に連通し、流出ガスライン6は第2室24に連通している。第3室25内には、複数の管状の収容管26aを含む触媒収容部26が、それぞれの収容管26aの一端26b側が仕切部材21に固定されるとともに他端26c側が仕切部材22に固定されるようにして設けられている。尚、収容管26aの本数は任意であり、1本でも2本以上でもよい。収容管26aのそれぞれは、一端26b側が第1室23に連通するとともに他端26c側が第2室24に連通している。収容管26aのそれぞれには触媒3が収容されている。反応器2には、第3室25内に例えばスチームのような加熱媒体を供給するための加熱媒体供給口27と、第3室25から加熱媒体が流出するための加熱媒体流出口28とが設けられている。
【0015】
<本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の動作>
次に、図1及び図2を参照しながら本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置1の動作を説明する。原料供給ライン4を流通する液体アンモニアが蒸発器5において蒸発されてアンモニアガスとなって、反応器2の第1室23に流入する。後述するように、水素と窒素とアンモニアとを含む流出ガスの一部も、流出ガスリサイクルライン11を介して第1室23に流入する。第1室23においてアンモニアガスと流出ガスとが混合されて混合ガスとなり、混合ガスは各収容管26a内に流入する。
【0016】
第3室25には、加熱媒体供給口27を介して加熱媒体が供給され、加熱媒体流出口28を介して加熱媒体が第3室25から流出する。各触媒収容部26内には触媒3が収容されているので、第3室25に供給された加熱媒体によって触媒3及び混合ガスが加熱される。各収容管26a内に流入した混合ガス中のアンモニアの少なくとも一部は、触媒3による触媒作用によって反応式(1)で示されるアンモニアの分解反応が生じることで、水素及び窒素に分解される。各収容管26aから第2室24へ流出した粗分解ガスは、水素と窒素と未反応のアンモニアとを含んでいる。
【0017】
各収容管26aから第2室24へ流出した粗分解ガスは、流出ガスとして第2室24から流出し、流出ガスライン6を流通する。ここで、流出ガスの温度が300~700℃、好ましくは400~600℃となるように、加熱媒体の温度や供給量を調整することが好ましい。この温度範囲よりも流出ガスの温度が低いと、触媒3の活性が十分ではない可能性があり、一方でこの温度範囲よりも流出ガスの温度が高いと、加熱エネルギーを過剰に使用していてアンモニア分解装置1の運転コストが高くなっている可能性があるからである。
【0018】
流出ガスライン6を流通する流出ガスは、冷却器8で冷却された後、一部が流出ガスリサイクルライン11に流入し、残りはアンモニア回収装置7に流入する。アンモニア回収装置7では、流出ガスからアンモニアが回収され、水素と窒素と回収されなかった微量のアンモニアとアンモニア回収装置7が水スクラバーの場合には少量の水とを含む精製分解ガスは、精製分解ガスライン10を介して分解ガス消費設備に供給され、回収されたアンモニアは、回収アンモニアライン9を介して蒸発器5よりも上流側で原料供給ライン4に供給される。
【0019】
流出ガスリサイクルライン11に流入した流出ガスは、圧縮機12によって昇圧されて、反応器2の第1室23に流入する。上述したように、第1室23内においてアンモニアガスと流出ガスとが混合するが、アンモニアガスが100%のアンモニアの場合、流出ガスにはアンモニアの他に水素及び窒素が含まれているから、前者のアンモニア濃度よりも後者のアンモニア濃度の方が低いので、アンモニアガスと流出ガスとの混合ガス中のアンモニア濃度は、原料として供給されるアンモニアガスのアンモニア濃度よりも低くなる。すなわち、流出ガスリサイクルライン11を介して第1室23内に流入する流出ガスは、第1室23内に流入するアンモニアガスの濃度を100%から80%以下、好ましくは100%から50%以下に低減するためにアンモニアガスを希釈する希釈ガスとして機能する。
【0020】
一般に、アンモニア濃度が高くなるほど、及び、温度が高くなるほど、アンモニアによる窒化反応が起きやすくなるが、本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置1では、反応器2内のアンモニア濃度が、流出ガスリサイクルライン11を介して供給される流出ガスによって低下するので、反応器2を構成する材料の窒化を抑制することができる。
【0021】
<本開示の実施形態1に係るアンモニア分解装置の変形例>
実施形態1では、希釈ガスとして、アンモニア回収装置7に流入する前の流出ガスを使用しているが、この形態に限定するものではない。アンモニア回収装置7から流出した精製分解ガスを希釈ガスとして使用してもよい。精製分解ガスも流出ガスからアンモニアを回収したガスであるので、反応器2から流出した流出ガスであると言える。
【0022】
実施形態1において、第3室25に供給される加熱媒体がスチームの場合、ガスタービンの排ガスの熱で発生したスチームや、ガスタービン・スチームタービンコンバインドサイクルのスチーム系から抜き出したスチーム等を使用することができ、第3室25から流出したスチームは、供給元に戻して循環利用することもできる。
【0023】
実施形態1において、流出ガスリサイクルライン11は、第1室23に連通するように反応器2に接続されているが、この形態に限定するものではない。図3に示されるように、流出ガスリサイクルライン11は原料供給ライン4に接続されてもよい。このような構成によれば、反応器2に流入する前にアンモニアガスと流出ガスとが混合されて混合ガスとなり、混合ガス中のアンモニア濃度を低下することができるので、反応器2を構成する材料の窒化をさらに抑制することができる。
【0024】
実施形態1において、原料供給ライン4を介して流入したアンモニアガスと流出ガスリサイクルライン11を介して流入した流出ガスとを混合するガス混合器50を設けてもよい。ガス混合器50は、例えば図4に示されるように、反応器2の外壁の一部で構成された筐体部51と、筐体部51の内部の内部空間51aに設けられた固定翼52を備えた構成とすることができる。内部空間51aは第1室23と連通し、原料供給ライン4及び流出ガスリサイクルライン11のそれぞれの下流端は筐体部51に接続されている。この構成を有するガス混合器50では、固定翼52によって、原料供給ライン4及び流出ガスリサイクルライン11のそれぞれを介して内部空間51aに流入したアンモニアガス及び流出ガスの流れを螺旋状にすることで両ガスを混合して第1室23に供給することができるので、第1室23内のアンモニア濃度を確実に低下させることができる。尚、固定翼52は1つに限定されず、図4に示されるように、固定翼52は2つの固定翼52a及び52bを含んでいてもよい。固定翼52a及び52bのそれぞれによって与えられるガスの螺旋状の流れの向きを逆にすると、アンモニアガス及び流出ガスの混合をさらに促進することができる。さらに、固定翼52の個数は3つ以上であってもよい。
【0025】
また、ガス混合器50は、例えば図5に示されるように、反応器2の外壁の一部で構成された筐体部55を備えることができる。筐体部55の内部には、円筒形状の内周面55bによって内部空間55aが画定されている。原料供給ライン4の下流端は、筐体部55の端面55cに接続され、流出ガスリサイクルライン11の下流端は、内周面55bの接線方向を向くように筐体部55の側面55dに接続されている。この構成を有するガス混合器50では、流出ガスリサイクルライン11を介して内部空間55aに流入した流出ガスは、内周面55bに沿って流れるので、内部空間55a内において渦を形成する。一方、原料供給ライン4を介して内部空間55aに流入したアンモニアガスは、流出ガスの渦に直行する方向に沿って流れるので、内部空間55aにおいてアンモニアガス及び流出ガスが混合される。これにより、第1室23内のアンモニア濃度を確実に低下させることができる。尚、筐体部55に接続される原料供給ライン4及び流出ガスリサイクルライン11の接続位置を互いに逆にしてもよい。
【0026】
さらに、ガス混合器50は、筐体部51又は55が反応器2の外壁の一部で構成される形態に限定するものではない。ガス混合器50の筐体部51又は55と反応器2とが、アンモニアガスと希釈ガスとの混合ガスが流通する混合ガスラインによって接続される構成であってもよい。
【0027】
実施形態1では、流出ガスリサイクルライン11は、第1室23に連通するように反応器2に接続されているが、原料供給ライン4に接続されてもよい。前者の構成では、第1室23内に原料供給ライン4からアンモニアガスが流入することにより、アンモニアガスの一部が仕切部材21や収容管26aの一端26bに吹きかかるので、それにより仕切部材21や収容管26aが窒化するおそれがある。これに対し、後者の構成では、原料供給ライン4内で予めアンモニアが希釈された状態で第1室23内に流入するので、後者の構成に比べて窒化のおそれを低減することができる。
【0028】
実施形態1において、反応器2の内面2aを煉瓦、耐火煉瓦、耐火セメント等のような耐火材で覆ってもよい。ただし、実施形態1ではアンモニアによる窒化が生じる可能性があるのは触媒収容部26内であるため、反応器2の内面2aの全面を耐火材で覆ってしまうと、作用効果の観点から不要なコスト増となってしまう。ただし、図6に示されるように、原料供給ライン4及び流出ガスリサイクルライン11が第1室23に連通するように反応器2に接続されている場合、反応器2の第1室23の内部の温度によっては、反応器2の内面2aのうち、原料供給ライン4と反応器2との接続部分2bが窒化してしまうおそれがある。これに対し、接続部分2bを取り囲むように内面2aを部分的に耐火材44で覆うようにすれば、接続部分2bの温度の上昇が耐火材44によって抑制されるので、必要以上のコストを要せずに、接続部分2bが窒化してしまうおそれを低減することができる。
【0029】
実施形態1では、希釈ガスは、反応器2から流出した流出ガス(粗分解ガス又は精製分解ガス)であったが、流出ガスに限定するものではない。流出ガスとは異なる希釈ガスを別途用意し、希釈ガスの供給源と反応器2又は原料供給ライン4とを連通する希釈ガス供給ラインを設けてもよい。尚、希釈ガスとして流出ガスを使用する場合は、流出ガスリサイクルライン11が希釈ガス供給ラインを構成する。
【0030】
流出ガス以外の希釈ガスとしては、窒素ガス及び水素ガスを使用することができ、水素ガスとしては、水素パイプラインによる水素ガスを使用してもよい。その他には、(1)メタンやメタノールを水蒸気改質して得られた水素を含むガス、(2)石炭ガス化ガス、(3)高炉ガス、(4)コークス炉ガス、(5)上記(1)~(4)のガスに対して水性ガスシフト反応によって水素を増加させたガス、(6)上記(5)のガスから二酸化炭素を除去したガス、(7)上記(6)のガスから水分を除去したガス、(8)ナフサの接触改質により得られる水素を含むガス、(9)水の電気分解により得られる水素を含むガス、(10)メタンの熱分解反応によって得られる水素を含むガスのように、他の水素製造プロセスで生成した水素を含むガスを使用することができる。さらにその他には、アンモニアを熱分解する外部のプラントで得られた水素を含むガスや、アンモニアをオートサーマル法で分解する外部のプラントで得られた水素を含むガスのように、外部のアンモニア分解プロセスで得られた水素を含むガスを使用することができる。
【0031】
実施形態1におけるアンモニアの分解反応では、水素及び窒素のみが生成されるため、二酸化炭素を排出しない。また、実施形態1において第3室25に供給されるスチーム又は燃焼ガス等の加熱媒体を製造する際に燃料として化石燃料を使用しなければ、二酸化炭素を排出しない。このように、実施形態1で化石燃料を使用せず、希釈ガスとして流出ガスを使用する限りでは、アンモニア分解装置1の原料がアンモニアのみで完結し、二酸化炭素を排出しないので、アンモニア分解装置1はカーボンフリーのプロセスとして好ましい形態である。
【0032】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0033】
[1]一の態様に係るアンモニア分解装置は、
原料であるアンモニアを水素と窒素とに分解する分解反応の触媒(3)が充填された反応器(2)と、
前記原料が前記触媒(3)に流入する前に、アンモニア濃度が前記原料よりも低い希釈ガスと前記原料とが混合するように、前記希釈ガスを供給するための希釈ガス供給ライン(11)と
を備える。
【0034】
本開示のアンモニア分解装置によれば、反応器内のアンモニア濃度が希釈ガスによって低下するので、アンモニアの分解が行われる反応器を構成する材料の窒化を抑制できる。
【0035】
[2]別の態様に係るアンモニア分解装置は、[1]のアンモニア分解装置であって、
前記希釈ガスは、前記反応器(2)から流出した流出ガスの一部である。
【0036】
このような構成によれば、希釈ガスを別途用意する場合に比べて、アンモニア分解装置の運転コストを低下することができる。
【0037】
[3]さらに別の態様に係るアンモニア分解装置は、[1]または[2]のアンモニア分解装置であって、
前記反応器(2)は、前記触媒(3)を収容する触媒収容部(26)を備え、
前記反応器(2)の内部は、第1室(23)と、前記原料が流通する方向において前記第1室(23)よりも下流側の第2室(24)と、前記第1室(23)及び前記第2室(24)の間の第3室(25)とに仕切られており、
前記触媒収容部(26)は、前記第1室(23)及び前記第2室(24)のそれぞれに連通するとともに前記第3室内(25)を延びるように設けられ、
前記第3室(25)は、加熱媒体が流通するように構成されている。
【0038】
このような構成によれば、反応器内のアンモニア濃度が希釈ガスによって低下するので、アンモニアの分解が行われる反応器を構成する材料の窒化を抑制できる。
【0039】
[4]さらに別の態様に係るアンモニア分解装置は、[3]のアンモニア分解装置であって、
前記原料を前記反応器(2)に供給する原料供給ライン(4)を備え、
前記希釈ガス供給ライン(11)の下流端は前記原料供給ライン(4)に接続されている。
【0040】
このような構成によれば、反応器に流入する前にアンモニア濃度を低下することができるので、アンモニアの分解が行われる反応器を構成する材料の窒化をさらに抑制できる。
【0041】
[5]さらに別の態様に係るアンモニア分解装置は、[3]のアンモニア分解装置であって、
前記希釈ガス供給ライン(11)の下流端は前記反応器(2)に接続されている。
【0042】
前記希釈ガス供給ラインを流通する間に希釈ガスが昇温される場合には、原料供給ラインに希釈ガスが供給されると、その熱によってアンモニアと原料供給ラインの材料とが反応して、原料供給ラインの材料が窒化してしまうおそれがある。これに対し、上記[5]の構成によれば、アンモニアと希釈ガスとは別々に反応器に流入するので、原料供給ラインの材料が窒化してしまうおそれを低減することができる。
【0043】
[6]さらに別の態様に係るアンモニア分解装置は、[5]のアンモニア分解装置であって、
前記原料を前記反応器(2)に供給する原料供給ライン(4)を備え、
前記反応器(2)の内面(2a)は、前記原料供給ライン(4)と前記反応器(2)との接続部分(2b)を取り囲むように、少なくとも部分的に耐火材(44)で覆われている。
【0044】
上記[5]の構成によれば、原料供給ラインの材料が窒化してしまうおそれを低減することができるものの、反応器の内部の温度によっては、原料供給ラインと反応器との接続部分が窒化してしまうおそれがある。これに対し、上記[6]の構成によれば、上記接続部分の温度の上昇が耐火材によって抑制されるので、上記接続部分が窒化してしまうおそれを低減することができる。
【0045】
[7]さらに別の態様に係るアンモニア分解装置は、[1]~[3]のいずれかのアンモニア分解装置であって、
前記第1室と連通するガス混合器を備え、
前記ガス混合器は、前記原料供給ラインと前記希釈ガス供給ラインとのそれぞれが接続されて、前記原料供給ラインを介して前記ガス混合器に流入した前記原料と前記希釈ガス供給ラインを介して前記ガス混合器に流入した前記希釈ガスとを混合する。
【0046】
このような構成によれば、アンモニアと希釈ガスとが第1室に流入する前にアンモニアと希釈ガスとが混合されるので、反応器内のアンモニア濃度を確実に低下することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 アンモニア分解装置
2 反応器
2a (反応器の)内面
2b 接続部分
3 触媒
4 原料供給ライン
6 流出ガスライン
11 流出ガスリサイクルライン(希釈ガス供給ライン)
23 第1室
24 第2室
25 第3室
26 触媒収容部
26a 収容管(触媒収容部)
26c (収容管の)他端(連通部分)
44 耐火材
50 ガス混合器
図1
図2
図3
図4
図5
図6