(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/12 20060101AFI20231121BHJP
A61G 3/08 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
F16D41/12 C
A61G3/08
(21)【出願番号】P 2021005939
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 研一朗
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-088233(JP,A)
【文献】特開2020-060289(JP,A)
【文献】特開2002-221241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-23/14,41/00-47/06
A61G 1/00-5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、
前記駆動部の駆動力により第一の軸周りに回転するカム部材と、
前記カム部材の回転によって動作する係合部材を有し、前記カム部材が前記第一の軸周りに回転したときに前記カム部材と連動して回転可能な第一従動部材と、
前記係合部材が係合する被係合部を有し、前記係合部材が前記被係合部に係合したときに前記第一従動部材と連動して回転可能な第二従動部材と
を備えた駆動装置であって、
前記係合部材は、前記第一の軸に略平行な方向に延びる第二の軸周りに、前記第一従動部材に対して回転可能であり、
前記駆動装置は、
前記カム部材が前記第一の軸周りの一方の方向となる第一方向に回転したときに、前記係合部材は、前記被係合部と係合する係合位置に向かって前記第二の軸周りに回転し、前記カム部材が前記第一の軸周りの他方の方向となる第二方向に回転したときに、前記係合部材は、前記被係合部と係合しない非係合位置に向かって前記第二の軸周りに回転するように構成され、
前記駆動装置がさらに、
前記第一従動部材を前記第一の軸と平行な方向に押圧することにより、前記第一従動部材の回転を抑制する制動力を加える制動部材を備えている、
駆動装置。
【請求項2】
前記第二従動部材は、前記カム部材および第一従動部材と連動して回転可能であるとともに相対回転可能であり、
前記カム部材、前記第一従動部材および前記第二従動部材が前記第一の軸周りに回転するように同軸上に配置され、
前記第一従動部材の一方の端面が、前記第二従動部材の対向面に対向して配置され、
前記制動部材は、前記第一従動部材を、前記第二従動部材の前記対向面に向かって押圧し、
前記駆動装置は、
前記第一従動部材の前記一方の端面を前記第二従動部材の前記対向面に対して前記第一の軸の軸方向で離間した状態で保持するように、前記第一従動部材を押さえる押さえ部材を有している、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第一従動部材および前記第二従動部材が、前記カム部材の周囲を回転するように構成され、
前記カム部材は、前記第一従動部材の一方の端面に対して、前記第二従動部材側に突出するカム軸部を有し、
前記押さえ部材が、前記第一従動部材の一方の端面に当接するように、前記カム軸部の外周に設けられている、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記押さえ部材は、前記カム軸部の外周に沿って設けられ、前記第一従動部材の一方の端面に当接する板状の環状部材と、前記環状部材に対して前記第一の軸方向で前記第二従動部材側に設けられ、前記カム軸部の外周に嵌め付けられたリング状部材とを備えている、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記制動部材は、ウェーブワッシャーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動装置が、長尺部材が巻き取りおよび繰り出される巻取部を備え、
前記第二従動部材の前記第一方向および前記第二方向への回転によって、前記長尺部材が巻き取りおよび繰り出される、請求項1~5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車椅子の車両への固定装置など、所定の対象物を所定の位置に保持する機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば車椅子を車両内において所定の位置に保持する場合、駆動部によって従動部材を回転させることでワイヤを駆動して、車椅子を車両内に牽引した後、車両の運転中などにおいて車椅子が移動しないように従動部材の回転を規制することでワイヤを所定の位置に保持して、車椅子を安定して保持する必要がある。一方、車椅子など所定の対象物を所定の位置に保持するための固定装置は、駆動部によって回転する従動部材の回転を規制するための安価でシンプルな構造を有していることが望ましい。
【0003】
シンプルな構造で対象物を所定の位置に保持するものとして、特許文献2には、クラッチ機構を用いた装置が開示されている。この特許文献2の装置は、モータと、モータによって回転するカム軸と、カム軸の径方向外側に設けられ、カム軸に対して相対回転可能なカムケースと、カムケースの上に設けられ、そのスリーブがカムケースの径方向外側に位置するプーリ本体とを有している。カムケースは、カム軸を挟んで対称に設けられた一対のレバー状のカム本体を有している。カム本体はカムケースに対してピンによって揺動自在に取り付けられており、カム軸が所定量一方向に回転すると、カム本体のクラッチ凸部が径方向外側に突出して、プーリ本体のスリーブに設けられたクラッチ凹部と係合するように構成されている。このクラッチ結合により、カム軸の回転がプーリ本体に伝達され、プーリ本体に巻き付けられた開閉紐が操作され、モータの停止によって、駆動部の駆動に対して従動する従動部材であるプーリ本体の回転は停止して、プーリ本体による操作対象は所定の位置で停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-121415号公報
【文献】特開平5-231449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カム本体は、戻しばねによって径方向内側に戻るように付勢されており、径方向外側に広がりにくく(ピンの軸周りに揺動しにくく)なっている。そのため、例えばカム軸の回転速度が遅い場合、カム軸がカム本体に当接したときに、カム本体が外側に広がるように軸周りに回転せずに、カム本体が外側に広がらない状態でカム軸とカムケースとが共回りしてしまう。その場合、カム本体(係合部材)とプーリ本体(第二従動部材)とが係合しないので、カム軸(カム部材)およびカムケース(第一従動部材)が回転しても、プーリ本体(第二従動部材)にカム軸の回転力が伝達されず、操作対象が操作されない。
【0006】
そこで、本発明は、カム部材の回転速度によらずに、カム部材と当接する係合部材を係合位置まで移動させることを容易にする、駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駆動装置は、駆動部と、前記駆動部の駆動力により第一の軸周りに回転するカム部材と、前記カム部材の回転によって動作する係合部材を有し、前記カム部材が前記第一の軸周りに回転したときに前記カム部材と連動して回転可能な第一従動部材と、前記係合部材が係合する被係合部を有し、前記係合部材が前記被係合部に係合したときに前記第一従動部材と連動して回転可能な第二従動部材とを備えた駆動装置であって、前記係合部材は、前記第一の軸に略平行な方向に延びる第二の軸周りに、前記第一従動部材に対して回転可能であり、前記駆動装置は、前記カム部材が前記第一の軸周りの一方の方向となる第一方向に回転したときに、前記係合部材は、前記被係合部と係合する係合位置に向かって前記第二の軸周りに回転し、前記カム部材が前記第一の軸周りの他方の方向となる第二方向に回転したときに、前記係合部材は、前記被係合部と係合しない非係合位置に向かって前記第二の軸周りに回転するように構成され、前記駆動装置がさらに、前記第一従動部材を前記第一の軸と平行な方向に押圧することにより、前記第一従動部材の回転を抑制する制動力を加える制動部材を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の駆動装置によれば、カム部材の回転速度によらずに、カム部材と当接する係合部材を係合位置まで移動させることを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の駆動装置の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示される駆動装置を備えた車椅子固定装置の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の駆動装置を備えた車椅子固定装置によって車椅子が固定された状態を示す概略図である。
【
図6】
図1の駆動装置のカム部材を示す斜視図である。
【
図7】
図1の駆動装置が動作する前の状態を示す概略図である。
【
図8】
図1の駆動装置の係合部材が第二従動部材に係合した係合状態を示す概略図である。
【
図9】
図1の駆動装置の係合部材と第二従動部材との係合が解除された係合解除状態を示す概略図である。
【
図10】
図1に示される駆動装置において、制動部材、第一従動部材、カム部材、第二従動部材、押さえ部材を第一の軸方向に分離した分解斜視図である。
【
図11】
図4のXI-XI線で切断した斜視断面図である。
【
図12】
図4のXI-XI線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の駆動装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の駆動装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態の駆動装置1は、駆動部2と、駆動部2の駆動力により第一の軸X周りに回転するカム部材3と、カム部材3の回転によって動作する係合部材41を有し、カム部材3が第一の軸X周りに回転したときにカム部材3と連動して回転可能な第一従動部材4と、係合部材41が係合する被係合部51を有し、係合部材41が被係合部51に係合したときに第一従動部材4と連動して回転可能な第二従動部材5とを備えている。本実施形態では、カム部材3、第一従動部材4および第二従動部材5は、ハウジングHに収容されている(
図5参照)。なお、本明細書において、カム部材3の一の回転方向を第一方向D1と呼び、第一方向D1の反対方向となる回転方向を第二方向D2と呼ぶ(
図7~
図9参照)。また、カム部材3が第一方向D1に回転するときの、第一従動部材4および第二従動部材5が回転する方向を同様に第一方向D1と呼び、第一従動部材4および第二従動部材5の、第一方向D1とは逆方向の回転方向を第二方向D2と呼ぶ。
【0012】
駆動装置1は、駆動部2を駆動することによって、所定の操作対象OP(例えば
図2および
図3等参照)を操作する。より具体的には、駆動装置1は、駆動部2を駆動することによって、カム部材3、第一従動部材4および第二従動部材5を介して操作対象OPを操作する。なお、駆動装置1が適用される用途は、駆動部2の駆動によって、操作対象OPを操作することができれば、特に限定されない。駆動装置1によって操作される操作対象OPは、第二従動部材5に直接または間接的に接続され、第二従動部材5の回転によって所定の動作を行う。操作対象OPは、ベルトやワイヤ等の長尺部材(以下、長尺部材OPとも呼ぶ)とすることができるが、駆動装置1の動作によって操作可能なものであれば、特に限定されない。
【0013】
本実施形態では、駆動装置1は、
図2に示されるように、長尺部材OPが巻き取りおよび繰り出される巻取部6を備え、第二従動部材5の第一方向D1および第二方向D2への回転(
図7~
図9参照)によって、長尺部材OPが巻き取りおよび繰り出されるように構成されている。本実施形態では、駆動装置1は、長尺部材OPの一端を固定対象(本実施形態では、
図3に示される車椅子WC)に係合して、長尺部材OPを巻き取ることにより固定対象を固定するように構成されている。より具体的には、駆動装置1は、
図3に示されるように、固定対象である車椅子WCを車両に固定するために、車椅子WCのフレームに取り付けられる長尺部材OPと、駆動装置1とを備えた車椅子固定装置Dに適用されている。本実施形態では、車椅子固定装置Dは、車両の車室内に複数設けられた駆動装置1を駆動することによって、長尺部材OPが巻き取られ、複数の方向から車椅子WCを牽引することで、車椅子WCを車両内で安定して保持する。本実施形態では、長尺部材OPは、
図2および
図3に示されるように、巻取部6に巻き取られるベルトOP1と、ベルトOP1の先端に設けられたフックOP2とを有している。しかし、長尺部材OPのベルトOP1に代えて、ワイヤなど他の長尺の部材が用いられていてもよい。また、長尺部材OPの先端に設けられたフックOP2に代えて、ワイヤの先端がループ状に形成されたものなど、他の係止部や固定部が設けられていてもよい。
【0014】
巻取部6は、第二従動部材5が所定の方向に回転したときに、長尺部材OPが巻き取られるように、第二従動部材5に直接または間接的に接続されている。本実施形態では、第二従動部材5が第一方向D1に回転したときに、巻取部6は長尺部材OPを巻き取り、巻取部6から長尺部材OPが繰り出されたときに、第二従動部材5が第二方向D2に回転する。また、本実施形態では、巻取部6は、歯車等の伝動部材7(
図1参照)を介して間接的に第二従動部材5に接続されている。巻取部6は、本実施形態では、長尺部材OPを巻き取る方向に回転するように、図示しないバネ部材によって付勢されている。
【0015】
駆動部2は、カム部材3を回転させる駆動力を発生させる。駆動部2は、直接または間接的にカム部材3に接続されている。駆動部2の構造はカム部材3を回転させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、駆動部2は、
図1に示されるように、正逆回転可能なモータ21と、減速機構等を介してモータ21に接続され、カム部材3に接続される出力軸22とを備えている。
【0016】
カム部材3は、駆動部2の駆動力によって第一の軸X(
図1、
図5等参照)周りに回転する。本実施形態では、カム部材3は、駆動部2の回転方向に応じて、第一の軸X周りに第一方向D1および第二方向D2に回転するように、駆動部2に直接または間接的に接続されている。カム部材3は、第一の軸X周りに回転することによって、後述するように、第一従動部材4の係合部材41を、第二従動部材5と係合する係合状態(
図8参照)および第二従動部材5との係合が解除される係合解除状態の間で動作させる(
図9参照)。また、カム部材3は、後述するように、係合部材41が係合状態にあるときに第一方向D1に回転することによって、第一従動部材4を第一方向D1に回転させる。
【0017】
カム部材3は、
図5および
図6に示されるように、係合部材41の後述する第一押圧部411aを押圧することにより係合部材41を係合状態とさせる第一カム部31aと、係合部材41の後述する第二押圧部411bを押圧することにより係合解除状態とさせる第二カム部31bとを有している。カム部材3の形状および構造は、係合部材41を係合状態および係合解除状態の間で動作させることができれば特に限定されない。本実施形態では、カム部材3は、
図1および
図6に示されるように、駆動部2の出力軸22と接続される接続部32と、第一カム部31aおよび第二カム部31bを有するカム部31とを有している。また、カム部材3は、カム軸部33をさらに有している。カム軸部33は、第一従動部材4の一方の端面4aに対して、第二従動部材5側に突出している(
図11および
図12参照)。本実施形態では、カム軸部33は、第二従動部材5の端面に軸支される。本実施形態では、接続部32、カム部31およびカム軸部33は、第一の軸X方向に沿って連続して設けられている。
【0018】
本実施形態では、
図1および
図6に示されるように、接続部32は筒状に形成され、筒状の接続部32の内面に、出力軸22の外周に設けられたスプラインとスプライン嵌合する嵌合部32a(
図1参照)を有している。接続部32は、後述する第一従動部材4の第一基部42aに形成された貫通孔に挿通され、第一基部42aを第一の軸X周りに回転できるように支持している。
【0019】
カム部31は、第一カム部31aおよび第二カム部31bを有する部位である。本実施形態では、
図6に示されるように、カム部31は筒状体31cを有し、筒状体31cの外周に、当該筒状体31cの径方向外側に突出する複数(本実施形態では3つ)の山状のカムCを有している。カムCは、係合部材41に対応して設けられ、カム部材3の第一の軸X方向の所定の位置に周回り方向に複数設けられている。なお、カム部31の形状や構造は、後述する第一カム部31aおよび第二カム部31bを有していれば、特に限定されない。本実施形態では、1つの山状のカムCに、第一カム部31aおよび第二カム部31bを有しているが、第一カム部31aおよび第二カム部31bは同一のカムCに設けられている必要はない。また、本実施形態では、カム部材3は、3つのカムC(3つの第一カム部31aおよび3つの第二カム部31b)を有しているが、カム部材3に設けられるカムCの数は特に限定されない。なお、筒状体31cは、後述する第一従動部材4の第二基部42bに形成された貫通孔に挿通され、第二基部42bを第一の軸X周りに回転できるように支持している。カム部材3と係合部材41とは、カム部材3が第一の軸X周り方向の一方に回転することにより、特定のカムCの第一カム部31aが1の係合部材41の第一押圧部411aを押圧し、カム部材3が第一の軸X周り方向の他方に回転することにより、その特定のカムCの第二カム部31bが1の係合部材41に隣接して設けられた他の係合部材41の第二押圧部411bを押圧するように構成されている。
【0020】
カム軸部33は、後述する第二従動部材5の端壁5bに設けられた対向面F(
図11参照)に形成された孔に挿通されて、カム部材3を第一の軸X周りに安定して回転するように支持している。カム軸部33には、本実施形態では、後述する押さえ部材9が取り付けられる。本実施形態では、カム軸部33は、
図6に示されるように、カム軸部33の外周に沿って溝部33aを有し、溝部33aに、押さえ部材9のリング状部材92が係合するように構成されている。
【0021】
第一カム部31aは、後述するように、カム部材3が所定の方向(本実施形態では、第一方向D1)に回転したときに、第一従動部材4の係合部材41の第一押圧部411aを押圧する。これにより、係合部材41を第二従動部材5に係合する方向に移動させ、係合部材41を係合状態とする。第一カム部31aは、本実施形態では、カム部材3のカムCのうち、カム部材3の回転方向で一方側(第一方向D1側)の面に設けられている。本実施形態では、第一カム部31aは、係合部材41が係合状態および係合解除状態の両方の状態において、第一押圧部411aを第一方向D1に押圧できるように設けられている。
【0022】
本実施形態では、第一カム部31aは、カムCのうち、回転方向で一方側に形成され、周方向に湾曲した湾曲面である。しかし、第一カム部31aの形状は、第一押圧部411aを押圧することにより、係合部材41を係合状態とすることができれば特に限定されず、平面状であってもよい。また、本実施形態では、第一カム部31aは、1つのカム部材3において、カム部材3の周方向に離間して複数(3つ)設けられているが、第一カム部31aの数は特に限定されない。
【0023】
第二カム部31bは、後述するように、カム部材3が所定の方向(本実施形態では、第二方向D2)に回転したときに、第一従動部材4の係合部材41の第二押圧部411bを押圧する。これにより、係合部材41を第二従動部材5との係合が解除される方向に移動させ、係合部材41を係合解除状態とする。第二カム部31bは、本実施形態では、カム部材3のカムCのうち、カム部材3の回転方向で他方側(第二方向D2側)の面に設けられている。
【0024】
本実施形態では、第二カム部31bは、カムCのうち、回転方向で他方側に形成され、周方向に湾曲した湾曲面である。しかし、第二カム部31bの形状は、第二押圧部411bを押圧することにより、係合部材41を係合解除状態とすることができれば特に限定されず、平面状であってもよい。また、本実施形態では、第二カム部31bは、1つのカム部材3において、カム部材3の周方向に離間して複数(3つ)設けられているが、第二カム部31bの数は特に限定されない。また、本実施形態では、第一カム部31aおよび第二カム部31bは、同じ1つのカムCに連続した面として設けられているが、第一カム部31aおよび第二カム部31bのそれぞれは、互いに独立した別々の突出部として設けられていてもよい。
【0025】
第一従動部材4は、カム部材3の周囲を回転するように構成されている。第一従動部材4は、カム部材3に対して第一の軸X周りに相対回転可能であるとともに、係合部材41を介してカム部材3の回転動作に従動して回転する。具体的には、カム部材3が第一方向D1に回転したとき、第一従動部材4の第一押圧部411aにカム部材3の第一カム部31aが当接するまでは、カム部材3が第一従動部材4に対して第一方向D1に回転する。第一従動部材4の第一押圧部411aにカム部材3の第一カム部31aが当接し、係合部材41を係合状態まで移動させた後、カム部材3が第一方向D1にさらに回転すると、第一従動部材4はカム部材3に従動して第一方向D1に回転する。また、カム部材3が第二方向D2に回転したとき、第一従動部材4は、第一従動部材4の第二押圧部411bにカム部材3の第二カム部31bが当接するまでは、カム部材3が第一従動部材4に対して第二方向D2に回転する。第一従動部材4の第二押圧部411bにカム部材3の第二カム部31bが当接し、係合部材41を係合解除状態まで移動させた後、カム部材3が第二方向D2に回転すると、第一従動部材4はカム部材3に従動して第二方向D2に回転する。
【0026】
また、第一従動部材4は、係合部材41を介して第二従動部材5に係合して、第一従動部材4が第一方向D1に回転した際に、第二従動部材5を第一従動部材4の回転動作に従動させて第一方向D1に回転させる。
【0027】
第一従動部材4の形状および構造は、カム部材3に対して相対回転可能であるとともに、係合部材41を介してカム部材3の回転動作に従動し、係合部材41を介して第二従動部材5を回転させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、第一従動部材4は、
図1に示されるように、係合部材41と、係合部材41が設けられる基部42とを有している。
【0028】
基部42は、係合部材41が設けられる部材である。基部42は、カム部材3および第二従動部材5に対して相対回転可能となるように、ハウジングH内で第一の軸X周りに回転可能に支持されている。また、上述したように、第一従動部材4がカム部材3に従動して回転する場合、基部42および係合部材41がカム部材3に従動して第一の軸X周りに回転する。基部42の形状および構造は特に限定されないが、本実施形態では、
図1に示されるように、基部42は、一対の環状の板状体によって構成された第一基部42aおよび第二基部42bを備えている。第一基部42aおよび第二基部42bは、第一の軸X方向で係合部材41を挟み込むように設けられている。第一基部42aおよび第二基部42bは、係合部材41の後述する軸部413を軸支する軸支部BRと、係合部材41を回転可能な状態で挟み込めるように、スペーサとして設けられ、互いに向かって突出した突出部Pを有している。突出部Pは、第一基部42aおよび第二基部42bの周縁領域において、周方向に互いに離間して設けられている。互いに離間した突出部Pの間の空間には、係合部材41が軸支部BRによって回転可能に設けられている。第一基部42aおよび第二基部42bは、係合部材41を第一の軸X方向に挟み込んだ状態で、突出部Pの部分で互いに対して固定される。また、本実施形態では、カム部材3が第一基部42aおよび第二基部42bの貫通孔に挿通され、第一基部42aおよび第二基部42bのそれぞれは、カム部材3の筒状の接続部32およびカム部31の筒状体31cの外周面によって第一の軸X周りに回転可能に支持されている。
【0029】
係合部材41は、カム部材3に押圧されることによって、第二従動部材5と係合する係合状態(
図8参照)と第二従動部材5との係合が解除される係合解除状態(
図9参照)との間で動作する。係合部材41は、
図5に示されるように、被係合部51に係合する爪部412と、カム部材3が第一方向D1または第二方向D2に回転したときに、カム部材3に押圧される押圧部411とを有している。押圧部411は、カム部材3が第一方向D1に回転したときに、カム部材3に押圧されることによって、係合部材41が第二従動部材5と係合する係合状態(
図8参照)となる第一押圧部411aと、カム部材3が第二方向D2に回転したときに、カム部材3に押圧されることによって、係合部材41が第二従動部材5との係合が解除される係合解除状態(
図9参照)となる第二押圧部411bとを有している。爪部412は、第一方向D1側で、後述する第二従動部材5の被係合部51と対向する第一係合部412aと、第二方向D2側で被係合部51と対向する第二係合部412bとを有している。第一係合部412aは、係合状態において、後述する被係合部51の短辺部51aと係合する。また、第二係合部412bは、後述する被係合部51の長辺部51bと対向する。本実施形態では、第二係合部412bは、長辺部51bと当接するように構成されている。なお、第二係合部412bは、係合状態において、長辺部51bの全体と当接せずに、長辺部51bとの間にクリアランスを有していてもよい。
【0030】
係合部材41の動作の形態は、カム部材3に押圧されることによって、係合状態と係合解除状態との間で動作することができれば、特に限定されない。本実施形態では、係合部材41は、第一の軸Xに略平行な方向に延びる第二の軸X2(
図5参照)周りに、第一従動部材4に対して回転可能である。より具体的には、第一従動部材4は、係合部材41を回転可能に軸支する軸部413を有し、係合部材41は、軸部413の第二の軸X2周りに、基部42に対して回転する。軸部413は、本実施形態では、上述したように基部42の周縁領域において軸支部BRに回転可能に軸支されている。
【0031】
係合部材41の形状および構造は、カム部材3に押圧されることによって、係合状態と係合解除状態との間で動作することができれば、特に限定されない。本実施形態では、係合部材41の押圧部411は、軸部413からカム部材3の第一の軸Xへ向かって延びている。より具体的には、押圧部411は、
図7および
図8に示されるように、係合状態および係合解除状態において(特に係合解除状態において)、カム部材3の第一カム部31aおよび第二カム部31bの回転軌跡内に入るように、軸部413からカム部材3の第一の軸Xへ向かって突出している。爪部412は、軸部413に対し、第二従動部材5の径方向で第一押圧部411aと第二押圧部411bとの反対側に設けられている。本実施形態では、第二従動部材5の径方向で、爪部412が軸部413に対して径方向外側に位置するときには、押圧部411は軸部413に対して径方向内側に位置している。本実施形態では、係合部材41が係合解除状態にあるときに、爪部412は、軸部413から基部42の外周縁に沿って基部42の周方向に延びており、押圧部411は、軸部413から第一の軸Xに向かって延びている。これにより、係合部材41は第二の軸X2方向に見たときに、略L字状に形成されている。係合部材41の数は特に限定されないが、本実施形態では、係合部材41は、第一従動部材4の回転方向に所定の間隔で離間して複数設けられている。これにより、係合部材41に加わる力が分散され、第二従動部材5を安定して回転させる。
【0032】
また、本実施形態では、駆動装置1は、
図1および
図5に示されるように、係合部材41を係合解除状態となる方向に付勢するバネ部材SPを備えている。バネ部材SPは、係合部材41を係合解除状態となる方向に付勢することができれば特に限定されないが、本実施形態ではトーションバネである。バネ部材SPの一端は第一従動部材4の基部42に取り付けられ、バネ部材SPの他端は係合部材41に取り付けられている。バネ部材SPが、係合部材41を係合解除状態となる方向に付勢することによって、係合部材41が誤って係合状態となることが抑制され、駆動装置1の誤動作を抑制することができる。
【0033】
第一押圧部411aは、係合部材41が係合状態となるように、カム部材3の第一カム部31aに押圧される部位である。本実施形態では、第一押圧部411aは、カム部材3が第一の軸X周りに第一方向D1に回転することによって、第一カム部31aと回転方向で当接し、第一カム部31aによって押圧される。第一カム部31aによって第一押圧部411aが押圧されることによって、係合部材41が第二の軸X2周りに回転して、係合部材41の爪部412が第二従動部材5の被係合部51に係合する。
【0034】
第一押圧部411aは、係合部材41が係合解除状態にあるときに、第一カム部31aの回転軌跡上に位置するように、係合部材41の軸部413からカム部材3に向かって突出している。第一押圧部411aは、押圧部411のうち、第一従動部材4の回転方向で一方側(第二方向D2側)に設けられている。第一押圧部411aは、本実施形態では湾曲面として形成されているが、第一押圧部411aの形状は特に限定されない。例えば、第一押圧部411aは平面状に形成されていてもよいし、他の形状であってもよい。
【0035】
第二押圧部411bは、係合部材41が係合解除状態となるように、カム部材3の第二カム部31bに押圧される部位である。本実施形態では、第二押圧部411bは、カム部材3が第一の軸X周りに第二方向D2に回転することによって、第二カム部31bと回転方向で当接し、第二カム部31bによって押圧される。第二カム部31bによって第二押圧部411bが押圧されることによって、係合部材41が第二の軸X2周りに回転して、係合部材41の爪部412が第二従動部材5の被係合部51から外れ、係合部材41が係合解除状態となる。
【0036】
第二押圧部411bは、係合部材41が係合状態にあるときに、第二カム部31bの回転軌跡上に位置するように、係合部材41の軸部413からカム部材3に向かって突出している。第二押圧部411bは、押圧部411のうち、第一従動部材4の回転方向で他方側(第一方向D1側)に設けられている。第二押圧部411bは、本実施形態では湾曲面として形成されているが、第二押圧部411bの形状は特に限定されない。例えば、第二押圧部411bは平面状に形成されていてもよいし、他の形状であってもよい。
【0037】
爪部412は、第二従動部材5の被係合部51に係合する。爪部412は、上述したように、第一従動部材4の回転方向において第一方向D1側で被係合部51と対向する第一係合部412aと、第二方向D2側で被係合部51と対向する第二係合部412bとを有している。爪部412の形状および構造は、係合部材41が係合状態にあるときに、被係合部51と第一方向D1で当接することができれば、特に限定されない。本実施形態では、爪部412は、
図5に示されるように、第一係合部412aと第二係合部412bとの間に設けられた先端部412cを有している。より具体的には、爪部412は、先端部412cにおいて第一係合部412aおよび第二係合部412bが交わる略三角形状の部分を有している。なお、本実施形態では、爪部412と押圧部411とは一体に形成されているが、押圧部411がカム部材3によって押圧されたときに、爪部412が動作することができれば、爪部412と押圧部411とは別体として形成されていてもよい。
【0038】
第一係合部412aは、第二従動部材5の被係合部51に第一方向D1側で当接する(
図8参照)。本実施形態では、カム部材3および第一従動部材4が第一方向D1に回転したときに、第一係合部412aは被係合部51の短辺部51aと係合して、第二従動部材5を第一方向D1に回転させることができる。また、本実施形態では、後述するように、第二従動部材5側から第二方向D2への回転力が係合部材41に加わった際に、第一係合部412aが短辺部51aと係合して、第二方向D2への第二従動部材5の回転を規制する。
【0039】
第二係合部412bは、第二従動部材5の被係合部51に対向する(
図8参照)。本実施形態では、後述するように、第二係合部412bは、係合部材41の係合状態において、第二従動部材5側から第一方向D1への回転力が係合部材41に加わった際に、第二係合部412bが被係合部51の長辺部51bと係合して、第一方向D1への第二従動部材5の回転を規制する。なお、第二係合部412bは、係合状態において、長辺部51bの一部のみと当接し、長辺部51bとの間にクリアランスを有していてもよい。
【0040】
第二従動部材5は、第一方向D1と第二方向D2とに回転可能に構成されている。第二従動部材5は、係合部材41が係合する被係合部51を有している。第二従動部材5は、カム部材3の周囲を回転するように構成されている。また、第二従動部材5は、カム部材3および第一従動部材4と連動して回転可能であるとともに相対回転可能に構成されている。
【0041】
本実施形態では、第二従動部材5は、
図5に示されるように、第一の軸X周りに回転可能な状態で、ハウジングHに収容されている。本実施形態では、カム部材3、第一従動部材4および第二従動部材5は、第一の軸X周りに回転するように同軸上に配置されている。第二従動部材5は、操作対象OPに直接または間接的に接続され、第二従動部材5が回転することによって、操作対象OPが操作される。
【0042】
本実施形態では、カム部材3および第一従動部材4が第一方向D1に回転したときに、第二従動部材5は、カム部材3および第一従動部材4と連動して第一方向D1に回転するように構成されている。また、カム部材3および第一従動部材4が第二方向D2に回転したときには、後述するように、第二従動部材5は、係合部材41との間の係合が解除され、第二従動部材5は、カム部材3および第一従動部材4に対して相対回転が可能となる。
【0043】
第二従動部材5の形状および構造は、第一方向D1および第二方向D2に回転可能であり、後述する被係合部51を有していれば、特に限定されない。本実施形態では、第二従動部材5は、
図5に示されるように、第一従動部材4に対して、カム部材3の径方向外側に配置されている。具体的には、第二従動部材5は、カム部材3および第一従動部材4を内側に収容可能な略筒状に形成されており(
図1参照)、略筒状の第二従動部材5の内周面の周方向に沿って複数の被係合部51が形成されている。より具体的には、第二従動部材5は、
図1に示されるように、略筒状の本体5aと、本体5aに対して第一の軸X方向に延びる延在部5cを有している。
【0044】
本体5aは、
図10~
図12に示されるように、第一の軸X方向の一方に端壁5bを有し、第一の軸X方向の他方側は開放している。端壁5bは、第一従動部材4と第一の軸X方向に対向する対向面F(
図11および
図12参照)を有している。第一従動部材4の一方の端面4aが、第二従動部材5の対向面Fに対向して配置されている。端壁5bと延在部5cとの間の境界部分には、カム部材3のカム軸部33が軸支される軸受部Bが設けられている。軸受部Bは、本実施形態では、端壁5bに形成された貫通孔である。本実施形態では、軸受部Bには、カム部材3の軸部33が、摺動性の高い材料によって形成された滑動部材SL2を介して軸支されている。滑動部材SL2は上述した滑動部材SLと同様の形状・構造とすることができる。歯車Gは、伝動部材7の外周の歯と噛合している。伝動部材7には軸部材Ax(
図1参照)が接続され、軸部材Axは、伝動部材7の回転に伴って回転する。軸部材Axは、巻取部6に接続されており、巻取部6の回転軸となる。本実施形態では、カム部材3および第一従動部材4に連動して第二従動部材5が第一方向D1に回転すると、歯車G、伝動部材7、巻取部6が回転して、長尺部材OPを巻取部6に巻き取るように構成されている。
【0045】
延在部5cは、
図10に示されるように、本体5aと同軸上に延び、本体5aよりも小径に形成されている。延在部5cの外周側には、歯車Gが設けられている。本実施形態では、延在部5cの自由端が、
図12に示されるように、第一支持部S1に回転可能に支持されることで、第二従動部材5が第一の軸X周りに回転可能となっている。なお、本実施形態では、第二従動部材5(延在部5c)は、第一支持部S1に対して、摺動性の高い材料によって形成された滑り軸受け(ブッシュ)などの滑動部材SLを介して回転可能に支持されている。滑動部材SLの形状は特に限定されないが、例えば、滑動部材SLは、
図10および
図11に示されるように、第一支持部S1に設けられた開口に挿通される筒部と、筒部の一端に設けられたフランジ部とを有している。なお、第一支持部S1は、第二従動部材5を回転可能に支持することができれば、駆動装置1のハウジングなど、任意の部位とすることができる。本実施形態では、第一支持部S1は、巻取部6を回転可能に支持する支持体の一部である(
図2参照)。
【0046】
被係合部51は、爪部412に係合する。被係合部51の形状および構造は、爪部412と係合することができれば、特に限定されない。本実施形態では、被係合部51は、第一従動部材4の外周に対向する内周面に、ラチェット歯状に形成されている。
図5、
図7および
図8に示されるように、ラチェット歯状の被係合部51は、係合部材41の爪部412が被係合部51に係合しているときに、爪部412に対して第一方向D1側に設けられた短辺部51aと、短辺部51aの径方向外側の端部から(底部51cを介して)第二方向D2に延びる長辺部51bとを有している。本実施形態では、被係合部51は、短辺部51aと長辺部51bとの間に、先端部412cが位置する底部51cを有している。より具体的には、本実施形態では、被係合部51は、第二従動部材5の内周面に連続してラチェット歯状に形成された、爪部412の形状に対応する係合凹部である。本実施形態では、被係合部51は、底部51cが短辺部51aと長辺部51bとの交点となるような略三角形状の係合凹部として構成されている。なお、短辺部51aおよび長辺部51bは、湾曲していてもよいし、平面状であってもよい。
【0047】
短辺部51aは、爪部412の第一係合部412aと係合する。本実施形態では、短辺部51aは、
図8に示されるように、カム部材3および第一従動部材4が第一方向D1に回転したときに、第一係合部412aと係合する。これにより、カム部材3および第一従動部材4の第一方向D1への回転に伴って、第二従動部材5が第一方向D1に回転することができる。また、本実施形態では、後述するように、爪部412が係合状態にあるときに、短辺部51aが第二従動部材5から第二方向D2への回転力が係合部材41に加わった際に、第一係合部412aと係合して、第二方向D2への第二従動部材5の回転を規制する。
【0048】
長辺部51bは、爪部412の第二係合部412bに対向する。本実施形態では、長辺部51bは、カム部材3によって係合部材41の第一押圧部411aが押圧されて係合部材41が係合状態へと移動したときに、長辺部51bの少なくとも一部が第二係合部412bと当接するように構成されている。また、後述するように、長辺部51bは、係合部材41の係合状態において、第二従動部材5が第一方向D1に回転しようとしたときに、第二係合部412bと係合して、第一方向D1への第二従動部材5の回転を規制してもよい。
【0049】
本実施形態では、駆動装置1は、カム部材3が第一の軸X周りの一方の方向となる第一方向D1に回転したときに、係合部材41は、被係合部51と係合する係合位置(
図8参照)に向かって第二の軸X2周りに回転し、カム部材3が第一の軸X1周りの他方の方向となる第二方向D2に回転したときに、係合部材41は、被係合部51と係合しない非係合位置(
図9参照)に向かって第二の軸X2周りに回転するように構成されている。したがって、本実施形態の駆動装置1は、駆動部2の駆動力によってカム部材3を両方向に回転させることで、カム部材3によって動作する係合部材41を被係合部51に対して係合状態と係合解除状態とすることができる。
【0050】
より具体的には、本実施形態では、
図7および
図8に示されるように、カム部材3が第一方向D1に回転したときに、非係合位置にある(係合解除状態のときの)係合部材41の第一押圧部411aが、カム部材3の第一カム部31aに押圧されて、係合部材41の爪部412が被係合部51に係合するように軸部413を中心に回転する。これにより、駆動部2によってカム部材3を第一方向D1に回転させることで、係合部材41の爪部412が被係合部51に係合し、カム部材3の第一方向D1への回転が、第一従動部材4、第二従動部材5に伝達されて、第二従動部材5を回転させることができる。さらに、
図9に示されるように、カム部材3が第二方向D2に回転したときに、係合位置にある(係合状態のときの)係合部材41の第二押圧部411bが、カム部材3の第二カム部31bに押圧されて、係合部材41の爪部412が被係合部51からの係合が解除されるように軸部413を中心に回転する。これにより、駆動部2によってカム部材3を第二方向D2に回転させることで、係合部材41の爪部412が軸部413を中心に係合解除状態に向かって回転して、被係合部51から外れる。したがって、爪部412と被係合部51とが係合していても、駆動部2の駆動力を利用して、容易に係合解除状態とすることができる。
【0051】
本実施形態では、
図7および
図8に示されるように、カム部材3が第一方向D1に回転したときに、係合部材41が被係合部51と係合して、第一従動部材4および第二従動部材5が第一方向D1に連動して回転し、第二従動部材5が第一方向D1に回転することによって、長尺部材OPが巻き取られて、長尺部材OPに張力がかかった状態で、固定対象(車椅子)WCが固定される(
図3参照)。このように長尺部材OPに張力がかかった状態を解除するためには、カム部材3が第二方向D2に回転したときに、係合部材41が第二従動部材5を第一方向D1にわずかに回転させながら、係合部材41を係合解除状態へと移動させる(
図9参照)。これにより、第二従動部材5が第一従動部材4に対して相対回転可能となり、固定対象WCの固定状態が解除される。より具体的には、第二従動部材5が第一従動部材4に対して相対回転となった状態(係合部材41が非係合位置にある状態)で、長尺部材OPを固定対象WC(車椅子のフレームなど)から外すと、バネ付勢された巻取部6が長尺部材OPを巻き取るように回転して、巻取部6の回転と連動して第二従動部材5が第一従動部材4に対して相対回転する。これにより、長尺部材OPが巻取部6に巻き取られる。
【0052】
本実施形態では、
図10~
図12に示されるように、駆動装置1はさらに、制動部材8を備えている。制動部材8は、第一従動部材4を第一の軸Xと平行な方向に押圧することにより、第一従動部材4の回転を抑制する制動力を第一従動部材4に加える。より具体的には、制動部材8は、本実施形態では、第一従動部材4を第一の軸Xと平行な方向に押圧することで、制動部材8と第一従動部材4との間の摩擦力によって制動力を加えている。なお、制動部材8は、第一従動部材4を第一の軸Xと平行な方向に押圧することができれば、第一従動部材4に対して第一の軸X方向でいずれの方向に設けられていてもよい。
【0053】
制動部材8が設けられていない場合で、例えばカム部材3の回転速度が遅い場合には、カム部材3が第一方向D1に回転して、カム部材3の第一カム部31aが係合部材41の第一押圧部411aに当接した状態でカム部材3がさらに第一方向D1に回転しても、係合部材41を
図7に示される非係合位置から
図8に示される係合位置へと移動させることができない場合がある。すなわち、カム部材3の第一方向D1への回転力が、係合部材41の非係合位置から係合位置への回転よりも、第一従動部材4全体の第一方向D1への回転に使用されてしまい、係合部材41が
図7に示される非係合位置のまま、第一従動部材4全体が第一方向D1に回転してしまう場合がある。そのような場合には、係合部材41が第二従動部材5と係合する係合位置に移動しないので、第二従動部材5に第一従動部材4の回転力が伝わらず、第二従動部材5は第一従動部材4の回転に連動して回転することができない。
【0054】
本実施形態では、制動部材8が第一従動部材4の回転を抑制する制動力を加えることにより、
図7に示される係合部材41が非係合位置にある状態から、
図8に示される係合位置に移動させる際に、第一従動部材4が制動された状態で、カム部材3から係合部材41に力が加わる。したがって、カム部材3を第一方向D1に回転させたときに、第一従動部材4がカム部材3から力を受けたときに、第一従動部材4が第一の軸Xを中心に回転せずに停止した状態で、係合部材41に力が伝達されやすい。よって、カム部材3の回転力によって、係合部材41が第二の軸X2周りに回転しやすく、係合位置へと移動しやすい。これにより、係合部材41が非係合位置にある状態でカム部材3と第一従動部材4とが共回りすることが抑制され、カム部材3の回転速度によらずに、カム部材3と当接する係合部材41を係合位置まで移動させることを容易にすることができる。したがって、第二従動部材5を第一従動部材4の回転により確実に連動させて回転させることができる。
【0055】
制動部材8の形状および構造は、第一従動部材4を第一の軸Xと平行な方向に押圧することにより、第一の軸Xを中心とした第一従動部材4の回転を抑制する制動力を第一従動部材4に加えることができれば、特に限定されない。本実施形態では、制動部材8は、ウェーブワッシャーである。具体的には、制動部材8は、
図10~
図12に示されるように、第一従動部材4の他方の端面4bに当接するように設けられたウェーブワッシャー(以下、ウェーブワッシャー8とも呼ぶ)である。ウェーブワッシャー8は、弾性変形可能な材料によって構成された、中央に開口を有する環状の部材(
図10参照)であり、周方向に沿って第一の軸X方向の高さが波状に変化している。ウェーブワッシャー8は、
図11および
図12に示されるように、駆動装置1の第二支持部S2と第一従動部材4(第一基部42a)の他方の端面4bとの間に、第一の軸X方向に圧縮された状態で配置されている。ウェーブワッシャー8は、第一従動部材4を第一の軸Xと平行な方向、具体的には、第一従動部材4が第二支持部S2から離れる方向に押圧している。制動部材としてウェーブワッシャー8を用いた場合、ウェーブワッシャー8は、ウェーブワッシャー8の周方向で部分的かつ局所的に第一従動部材4と接触しており接触面積が小さい。したがって、第一従動部材4に回転方向の制動力を加えて係合部材41を係合位置まで移動させた後、第一従動部材4が第一の軸X周りに回転する際の摺動抵抗が大きくないので、第一従動部材4を円滑に回転させることができる。
【0056】
本実施形態では、制動部材8は、第一従動部材4を、第二従動部材5の対向面Fに向かって押圧し、駆動装置1は、
図10~
図12に示されるように、第一従動部材4の一方の端面4aを第二従動部材5の対向面Fに対して第一の軸Xの軸方向で離間した状態で保持するように、第一従動部材4を押さえる押さえ部材9を有している。このように、押さえ部材9が設けられていることにより、制動部材8によって第一従動部材4が第二従動部材5の対向面Fに向かって押圧されている場合であっても、
図12に示されるように、第一従動部材4の一方の端面4aが第二従動部材5の対向面Fに対して第一の軸X方向で離間して保持され、制動部材8の押圧力は、一方の端面4aおよび対向面Fとの間では作用しない。したがって、第二従動部材5が第一従動部材4に対して相対回転する際に、第一従動部材4の一方の端面4aと第二従動部材5の対向面Fとが押圧力が加わった状態で摺動しながら相対回転することが抑制される。したがって、第一従動部材4と第二従動部材5との間の相対回転の際に抵抗がかかりにくい。よって、例えば、長尺部材OPが巻き取られる際に第二従動部材5が第一従動部材4に対して相対回転する際に、第二従動部材5が第一従動部材4に対して円滑に回転することができ、摺動音なども低減させることができる。
【0057】
本実施形態では、
図12に示されるように、押さえ部材9は、第一従動部材4の一方の端面4aに当接するように、カム軸部33の外周に設けられている。カム部材3は、第二従動部材5に対して第一の軸X方向で所定の位置に保持された状態で回転可能に支持されている。そのカム部材3のカム軸部33の外周に押さえ部材9が設けられ、押さえ部材9は、第一従動部材4の一方の端面4aを第二従動部材5の対向面Fに対して離間させている。押さえ部材9は、第一従動部材4の一方の端面4aと当接することで、対向面Fに向かって押圧された第一従動部材4が第一の軸X方向に移動して対向面Fに接触することをより確実に規制することができる。
【0058】
押さえ部材9の形状および構造は、第一従動部材4の一方の端面4aを第二従動部材5の対向面Fに対して第一の軸X方向で離間した状態で保持するように、第一従動部材4を押さえることができれば、特に限定されない。本実施形態では、押さえ部材9は、
図11および
図12に示されるように、カム軸部33の外周に沿って設けられ、第一従動部材4の一方の端面4aに当接する板状の環状部材91と、環状部材91に対して第一の軸X方向で第二従動部材5側に設けられ、カム軸部33の外周に嵌め付けられたリング状部材92とを備えている。環状部材91は、第一従動部材4の一方の端面4aと当接して、第一従動部材4が第二従動部材5の対向面Fに向かってそれ以上移動することを規制する。リング状部材92は、制動部材8の押圧力によって、第一従動部材4の一方の端面4aから押圧される環状部材91の、第一の軸X方向での移動を規制して、環状部材91を保持するために、カム軸部33の外周に嵌め付けられる。
【0059】
環状部材91の形状および構造は、カム軸部33の外周に沿って設けられ、第一従動部材4の一方の端面4aに当接することができれば、特に限定されない。本実施形態では、第一従動部材4の一方の端面4aのうち、カム軸部33が挿通される開口の周縁部に当接するワッシャーである。この場合、ワッシャーとして設けられた環状部材91と第一従動部材4の一方の端面4aとの接触面積が小さく、カム部材3と第一従動部材4とが相対回転するときの摺動抵抗を小さくすることができる。また、リング状部材92の形状および構造は、環状部材91の第一の軸X方向での移動を規制して、環状部材91を保持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、リング状部材92はC字状に形成されたCリングとして構成されている。リング状部材92がカム軸部33の溝部33aに嵌合することによって、環状部材91を第一の軸X方向での移動をより確実に規制することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 駆動装置
2 駆動部
21 モータ
22 出力軸
3 カム部材
31 カム部
31a 第一カム部
31b 第二カム部
31c 筒状体
32 接続部
32a 嵌合部
33 カム軸部
33a 溝部
4 第一従動部材
4a 一方の端面
4b 他方の端面
41 係合部材
411 押圧部
411a 第一押圧部
411b 第二押圧部
412 爪部
412a 第一係合部
412b 第二係合部
412c 先端部
413 軸部
42 基部
42a 第一基部
42b 第二基部
5 第二従動部材
5a 本体
5b 端壁
5c 延在部
51 被係合部
51a 短辺部
51b 長辺部
51c 底部
6 巻取部
7 伝動部材
8 制動部材(ウェーブワッシャー)
9 押さえ部材
91 環状部材
92 リング状部材
Ax 軸部材
B 軸受部
BR 軸支部
C カム
D 車椅子固定装置
D1 第一方向
D2 第二方向
F 対向面
G 歯車
H ハウジング
OP 操作対象(長尺部材)
OP1 ベルト
OP2 フック
P 突出部
S1 第一支持部
S2 第二支持部
SL、SL2 滑動部材
SP バネ部材
WC 固定対象(車椅子)
X 第一の軸
X2 第二の軸