(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】薬物送達システムとしてのビーズ不織布膜
(51)【国際特許分類】
A61L 27/54 20060101AFI20231121BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20231121BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20231121BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20231121BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20231121BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20231121BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231121BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20231121BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61L27/54
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/24
A61K45/00
A61L27/40
A61K9/70
(21)【出願番号】P 2021505852
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070887
(87)【国際公開番号】W WO2020025793
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042688
【氏名又は名称】セビオテックス,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルネロ ガルシア,ジョセ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】カノ カサス,フランセスク
(72)【発明者】
【氏名】マルチ クラウセス,ラック ミケルガイ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン ルラヴィナ,ジョアン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105386155(CN,A)
【文献】特表2017-527539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0158362(US,A1)
【文献】FALDE, E.J., et al.,Layered superhydrophobic meshes for controlled drug release,J. Control Release,2015年,Vol.214,pp.23-29,Author manuscript, available in PMC, 2016, pp.1-24
【文献】JAWOREK, A., et al.,Electrospinning and Electrospraying Techniques for Nanocomposite Non-Woven Fabric Production,Fibres & Textiles in Eastern Europe,2009年,Vol.17, No.4,pp.77-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含むビーズ不織布膜であって、
-前記ナノファイバは、前記ナノファイバの長さに沿って分布し且つ前記ナノファイバの平均直径の1.5~20倍の平均直径を有するビーズを含み、
-前記活性剤は、33mg/mL以下の水溶性を有し、
-前記活性剤の全量は、前記膜内に物理的に閉じ込められているが、前記膜のポリマーナノファイバの外部に配置されている、
ビーズ不織布膜。
【請求項2】
前記ビーズは、2~25μmの平均直径を有する、請求項1に記載のビーズ不織布膜。
【請求項3】
前記ビーズの量は、500~5000ビーズ/mm
2である、請求項1または2に記載のビーズ不織布膜。
【請求項4】
界面活性剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項5】
本発明の前記不織布膜に含まれる活性剤は、0.1~20μmの平均粒子サイズを有する粒子の形態で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項6】
治療薬の量は、前記不織布膜の総重量に対して0.01~20重量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項7】
前記活性剤が可溶化される適切な量の媒体と前記膜を接触させたときに、37℃の水中で72時間において、20%以下の線形収縮度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項8】
前記膜を前記活性剤が可溶化される適切な量の媒体と接触させた後、前記膜は、前記ポリマーナノファイバの分解時間の50%以下の期間に、前記活性剤の総重量の80%以上の量を放出することができる、請求項7に記載のビーズ不織布膜。
【請求項9】
前記膜のポリマーナノファイバは、50~2000nmの平均直径を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項10】
前記ポリマーナノファイバは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリD,L-乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリビニルアルコール(PVA)、コラーゲン、セルロース、ヒアルロン酸、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、エラスタン、シルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数のポリマーで作製される、請求項1から9のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項11】
前記ポリマーナノファイバは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリD,L-乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、シルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数のポリマーで作製される、請求項10に記載のビーズ不織布膜。
【請求項12】
ポリマーナノファイバを含む第1の層と、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含む第2の層と、ポリマーナノファイバを含む第3の層と、を少なくとも含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項13】
前記活性剤は、化学療法剤;栄養補助食品;抗生物質または抗真菌剤;タンパク質;細胞、免疫療法剤、抗感染剤、内分泌剤および心臓血管剤からなる群から選択される治療剤である、請求項1から12のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜の製造方法であって、
a)適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの溶液を調製するステップと、
b)適切な溶媒系中の前記活性剤の溶液または懸濁液を調製するステップと、
c)ステップa)からの前記溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバを生成し、同時に、ステップb)の前記溶液または懸濁液を前記ポリマーナノファイバ上に堆積させるステップと;
d)任意選択で、ステップc)から得られた前記不織布膜を乾燥させるステップと、
を含む製造方法。
【請求項15】
バイタル血管を有する切除不能な領域を含む腫瘍の処置;腫瘍の残留物が残っている外科的境界の処置;腫瘍浸潤もしくは陽性骨スキャンを伴う骨組織の処置;または組織再生;のための請求項1から13のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜を製造するための活性剤の使用であって、前記活性剤は化学療法剤である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月3日に提出された欧州特許出願第18382589.2号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、薬物送達システム(DDS)の分野に関する。より詳細には、本発明は、処置される身体の領域への、制限された水溶性の活性剤の制御された持続放出のためのビーズ不織布膜に関する。また、ビーズ不織布膜の製造方法、ならびに医療および獣医用途での使用にも関連する。
【背景技術】
【0003】
ほとんどの悪性固形腫瘍の処置は、局所管理(手術および放射線療法:RT)および全身化学療法の組み合わせに依存している。切除手術およびRT後の局所腫瘍再発は依然として課題である。高リスク神経芽細胞腫の局所管理にもかかわらず、新規診断患者の10%、および局所持続性再切除疾患の患者の50%で局所腫瘍再発が発生する。軟部肉腫、膠芽腫、膵臓、原発性限局性横紋筋肉腫等の他の悪性腫瘍における最初の完全寛解後の局所再発の発生率は高い。適切な局所管理の重要性は、最初の完全寛解後に局所障害を発症した患者で観察されたより悪い結果によって強調される。切除手術後の局所管理を改善するためのRTの強化は、特に幼児における許容できない毒性、および二次性悪性腫瘍のリスクの増加によって制限される。これに関連して、特に小児における腫瘍切除後のRTに関連する欠点を克服するために、新しい技術プラットフォームが緊急に求められている。
【0004】
ラクトン(活性)型のSN-38(10-ヒドロキシ-カンプトテシン)は難溶性の分子であり、いくつかの小児固形腫瘍に対して強力な前臨床活性を示している。SN-38の市販の可溶性プロドラッグであるイリノテカンは、ヌードマウスでSN-38への広範な変換(>70%)を生じるが、おそらくは患者に対する全身投与後の活性誘導体へのわずかな部分的変換(10%未満)に起因して、低い臨床効果を示している。さらに、SN-38は、血漿中で急速に加水分解されて、不活性なカルボン酸塩形態となる。生理学的pHでの不安定性に加えて、SN-38の送達は、体内での毒性という課題にも直面している。
【0005】
SN-38の溶解度を高め、ラクトン環を安定させ、その毒性を軽減するために多くの試みがなされてきた。例えば、ナノ粒子カプセル化、シクロデキストリン複合体形成等の物理的方法;プロドラッグ、ポリマー、アルブミンおよび免疫複合体等の化学的方法;ならびに酵素活性化プロドラッグ療法が開発されている。しかしながら、これらの戦略は限られた成功しかもたらしていない。
【0006】
抗癌薬の局所送達のための高分子薬物送達システム(DDS)は、切除可能な固形腫瘍を治療するための最も有望なアプローチの1つとして浮上した。DDSは、拡散律速システム、化学制御システム、溶媒活性化システム、調整放出システムおよび生体侵食性放出システム等の薬物の放出を制御するメカニズムに従って分類され得る。生体侵食性制御放出システムは、薬物が枯渇したデバイスを外科的に除去する必要がないという点で、他の放出システムに勝る利点を有する。その上、局所送達の利点は、毒性の高い薬剤への全身曝露の低減、および水溶性が低いために全身投与に適さない強力な抗癌剤の高い局所濃度の達成を含む。しかしながら、癌における局所DDSの薬物動態を理解することを目的とした包括的な前臨床研究の欠如は、以前として実験室から臨床への(bench-to-bedside)堅牢な移行に対する大きな障害である。
【0007】
エレクトロスピニングされたポリマーナノファイバマトリックスは、最も用途が広く、再現性があり、スケーラブルなナノDDSの1つとなっている。それらは、腫瘍切除によって残されたスペースを満たすようにサイズと形状を調整することを可能にし、DDSから腫瘍組織への活性カーゴの効率的放出を促進する大きな表面積および多孔性を提供する。さらに、それらのモノリシックな性質は、作用身体部位での操作、埋め込み、および保持を容易にし、ナノ粒子およびマイクロ粒子の特徴的な移動を防止する。
【0008】
特許文献1は、生体適合性エレクトロスピニングナノファイバと、ナノファイバ間に絡み合った33mg/mL未満の水溶性を有する少なくとも1種の活性剤とを含む不織布膜を開示している。この文献に開示されている不織布膜は、活性剤が可溶化されると、活性剤を放出することができる。
【0009】
エレクトロスピニングによって調製された不織布膜は、生理学的条件下で収縮し得る。不織布マットの収縮を減らすためにいくつかの戦略が提案されてきた。例えば、いくつかの戦略は、エレクトロスピニングプロセスでポリマーの組み合わせを使用することにある。しかしながら、膜へのさらなるポリマーの導入は、薬物送達システムの生分解に有害である可能性があり、一般に、それは、調製プロセスをより面倒で困難にする。この点で、異なるポリマーの混合物を使用すると、バッチ間で再現性のある組成の膜を得ることが困難になり、適切な溶媒の数が減り、エレクトロスピニングプロセスの堅牢性および再現性が損なわれる。膜の収縮を低減するための別の戦略は、その製造後に膜を処理することを含むが、これにはそれを水に沈めることが必要であり、これはその活性内容物の放出を引き起こし、したがってそれを薬物送達膜の製造に実用不可能にする。
【0010】
特許文献2は、活性剤がコア成分にあり、より具体的には生分解性ポリマーにカプセル化されているコア/シェルナノ材料を開示している。これらのナノ材料は、同軸エレクトロスピニングによって得られる。同軸エレクトロスピニングは、例えば、非特許文献1により報告されている。特許文献3は、活性剤がビーズの内部に配置されているビーズナノファイバを開示している。ビーズは、薬剤の担持率を改善するために使用される。ナノファイバは、ポリマーおよび活性剤の混合物のエレクトロスピニングによって調製される。特許文献4は、エレクトロスピニングによって調製されたフィラメントビーズ構造を有する二重の薬物担持繊維膜を開示しており、薬物はミクロンサイズのビーズにカプセル化されている。特許文献5は、繊維内に抗腫瘍薬を含むビーズナノファイバ膜を開示している。ナノファイバは、ポリマーおよび活性剤の混合物のエレクトロスピニングによって調製される。これらすべての従来技術膜の欠点は、特に送達媒体との最初の接触後数日以内に、再現性があり、効率的で完全な持続放出を可能にしないことである。その上、これらの文献は、膜の収縮挙動に関しては述べていない。
【0011】
したがって、最先端の問題を克服する生物医学的用途における活性剤の制御された持続放出のための薬物送達システムを開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】PCT出願WO2013144206
【文献】US2018000744
【文献】CN105386155
【文献】CN107675364
【文献】CN106727447
【非特許文献】
【0013】
【文献】Seeram Ramakrishna著、International Journal of Nanomedicine 2013、2997ページ
【発明の概要】
【0014】
本発明者らは、制御された持続的な態様で、処置される領域に限られた溶解度の活性剤を局所的に放出することができるビーズ不織布膜の形態の新しい安定した薬物送達システムを開発した。
【0015】
本発明者らは、驚くべきことに、不織布膜中のビーズの存在が、アナログ(類似した;analog)ビーズ不含不織布膜の収縮を著しく低減することを発見した。ビーズ形態を有する本発明の不織布膜は、寸法安定性を示す、すなわち生理学的条件下で体内に配置されると著しい収縮を示さない。特に、本明細書における例に見られるように、本発明の膜の線形収縮は、PCT出願WO2013144206に開示されたアナログビーズ不含膜と比較して50%超低減された。
【0016】
一般的に言えば、多くの医学的および生物学的用途において、そのような送達システムの収縮を低減することが望ましい。低い収縮度を有することを示す膜は、形状および柔軟性のいかなる顕著な変化も示さないため、インプラントに、より適している。
【0017】
さらに、膜の収縮が少ないほど、単位面積当たりの質量は小さくなる。結果として、膜の剛性が低下し、それがインプラントされた領域での病変の生成を回避する可能性があり、膜は、例えば、送達剤が治療剤である場合、臓器または手術部位に対する改善されたドレープ性を有する。さらに、本発明のビーズ不織布膜は、滑らかな感触を有し、取り扱いがより容易である。
【0018】
さらに、収縮が小さい場合、可溶化形態の薬物が放出され得るナノファイバ間のスペースはあまり減少せず、その結果、薬物放出が妨げられず、放出プロファイルに悪影響が及ばない。
【0019】
有利なことに、収縮が減少するため、処置される特定の表面を覆うために乾燥状態で切断される本発明の不織布膜は、湿潤状態にあるときに、処置されるほとんどすべての表面を覆い、一方、高収縮膜(乾燥状態で切断)は、湿潤状態ではサイズが著しく減少するため、処置すべき主要な領域が覆われずに残る。これは、例えば本発明のビーズ膜で特定の身体領域を覆いたい外科医は、処置される領域よりごくわずかに大きい膜片を切断するだけでよいが、一方、ビーズ不含膜が使用される場合、予測不可能な収縮度を考慮して、同じ領域を覆うためにはるかに大きな膜片が必要であり、それでも、処置される領域に膜を適用するまでは、膜がその領域を覆うのに十分であったかどうかが分からない。
【0020】
薬物送達システムとして使用される不織布膜内のビーズの存在は、通常、当業者が考えないような選択肢である。むしろ、調製プロセス(例えばエレクトロスピニング)のオペレーション範囲が一般に減少するため、ビーズ形成はほとんどの場合防止される。それにもかかわらず、本発明者らは、上述の利点を有する所望のビーズを生成するための適切な方法を見出した。
【0021】
したがって、本発明の第1の態様は、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含むビーズ不織布膜であって、
-ナノファイバは、ナノファイバの長さに沿って分布し且つナノファイバの平均直径の1.5~20倍の平均直径を有するビーズを含み、
-活性剤は、33mg/mL以下の水溶性を有し、
-活性剤の全量は、膜内に物理的に閉じ込められているが、膜のポリマーナノファイバの外部に配置されている、ビーズ不織布膜に関する。
【0022】
ビーズ形態を有する上記に規定された不織布膜は、エレクトロスピニングプロセスによって製造され得る。したがって、本発明の第2の態様は、上記に規定されたビーズ不織布膜の製造方法であって、
a)適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの溶液を調製するステップと、
b)特にステップa)からのポリマー(複数可)が不溶性である適切な溶媒系中の活性剤の溶液または懸濁液を調製するステップと、
c)ステップa)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバを生成し、同時に、ステップb)の溶液または懸濁液をポリマーナノファイバ上に堆積させるステップと、
d)任意選択で、ステップc)から得られた不織布膜を乾燥させるステップと、
を含む製造方法に関する。
【0023】
本発明のビーズ不織布膜は、疾患の処置のための薬物送達システム(DDS)として使用され得る。したがって、本発明の第3の態様は、医薬品として使用するための上記に規定されたビーズ不織布膜に関する。本発明のビーズ不織布膜に含まれる活性剤が化学療法剤である場合、腫瘍の治療に使用することができる。したがって、本発明の別の態様は、腫瘍の治療に使用するための化学療法剤を含む、上記に規定されたビーズ不織布膜に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】水平軸(
図1Aを参照;A:APIスプレー/分注、B:回転コレクタ、C:膜の形成、D:繊維のエレクトロスピニング)、または垂直軸(
図1Bを参照;A:APIスプレー/分注、B:回転コレクタの垂直軸、C:膜の形成、D:繊維のエレクトロスピニング)に沿った回転円筒コレクタ上で;繊維および活性剤注入デバイスを動かすことにより静止コレクタ上で(
図1C;A:APIスプレー/分注(移動)、B:静止コレクタ、C:膜の形成、D:繊維のエレクトロスピニング(移動));ならびに回転コレクタの内面で(
図1D;A:APIスプレー/分注、B:回転コレクタ、C:膜の形成、D:繊維のエレクトロスピニング)、ナノファイバが生成されている間に膜に活性剤を堆積させるための様々な手法を示す図である。
【
図2】1000倍の倍率での実施例1のビーズ不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【
図3】1000倍の倍率での実施例2のビーズ不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【
図4】1000倍の倍率での実施例3のビーズ不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【
図5】1000倍の倍率での比較例4のビーズ不含不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【
図6】本発明による実施例1のビーズ不織布膜(丸)および比較例4のビーズ不含不織布膜(十字)の収縮挙動(時間単位の経時的な線形収縮)を示す図である。
【
図7】インキュベーション(保温)前(21A)および48時間のインキュベーション後(21C)の実施例1のビーズ不織布膜、ならびに48時間のインキュベーション後(21B)の比較例4のビーズ不含不織布膜を示す図である。
【
図8】500倍の倍率(
図8A)および3000倍の倍率(
図8B、B:ビーズ、F:繊維、およびA:SN-38結晶)での、実施例1に類似しているが界面活性剤をさらに含むビーズ不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
図8Aでは、ビーズが明確に観察される。
図8Bでは、活性剤の結晶がナノファイバの外部に配置されている、すなわち活性剤のすべての表面が媒体に露出していることが示されている。
【
図9】実施例1のビーズ膜の経時(日数)的な活性剤のインビトロ放出(累積%)を示す図である。
【
図10】約10%の収縮を示すビーズ膜(表1の膜3に類似した膜)、および約30%の収縮を示すビーズ不含膜(表1の膜2に類似した膜)の経時(時間)的な活性剤のインビトロ放出(総担持量の%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本出願において本明細書で使用されるすべての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願において使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に記載される通りであり、明細書および特許請求の範囲全体に均等に適用されることを意図している。
【0026】
本明細書で使用される「約(about)」または「約(around)」という用語は、指定された値の±10%の値の範囲を指す。例えば、「約(about)10」または「約(around)10」という表現は、10の±10%、すなわち9~11を含む。
【0027】
本発明は、ポリマーナノファイバおよび活性剤を含むビーズ不織布膜に関する。本発明の文脈において、「不織布膜」という用語は、固体表面(コレクタ)上に任意に堆積されたポリマーナノファイバの多孔質シート(フィルム)に関連し、任意選択で、以下の方法:生体適合性の接着剤による接着、溶融または過剰の溶剤等の物理的方法、ならびにニードルパンチングおよび水または空気圧インジェクタによるインターレース等の機械的方法の1つまたは複数によって絡み合っている。膜繊維は相互接続されていてもよく、またはされていなくてもよく、それらは、切断繊維または連続繊維であってもよく、1つの材料のみまたは異なる繊維の組み合わせ若しくは異なる材料の類似の繊維の組み合わせとして異なる材料を含み得る。これらの異なる構成は、製造プロセス中に異なる層の同じ膜に配置することができる。
【0028】
本明細書で使用される「ビーズ不織布膜」という用語は、膜のナノファイバがナノファイバの長さに沿って分布したビーズを示し、それによってビーズ-オン-ストリング(beads-on-a-string、BOA)または「ビーズ-アンド-ストリング(bead-and-string)」形態を有するナノファイバを形成することを意味する。これらの用語はすべて同義的に使用され得る。典型的には、「ビーズ」は、平均繊維直径の2倍以上の厚さを有する節部分を指す。ビーズ形態は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の顕微鏡写真を使用して観察され得る。ビーズは通常、長さが短く(自身の直径の0.5~20倍)、断面は円形である。ナノファイバに沿ったそれらの間隔は非常に広い範囲となり得る(これは、ビーズ間の距離が非常に多様となり得ることを意味する)。膜内のビーズを定量する手法は、大規模なサンプリングが使用された場合に、膜の外面のSEMによって観察され得る1mm2当たりの表面カウントを提供することである。このカウントは、例えば1~10000ビーズ/mm2の範囲内であってもよい。
【0029】
本明細書で使用される「ビーズ不含不織布膜」という用語は、膜のナノファイバがビーズを示さないこと、すなわちビーズのない膜を意味する。
【0030】
本発明の目的において、収縮(shrinkage)、収縮(shrinking)、収縮度、または同義語は、常に線形収縮を指す。「線形収縮」という用語は、湿潤状態にあるとき、すなわち可溶化媒体と接触しているとき(例えば、生理学的条件下で体内に配置されているとき)に、ポリマーナノファイバを含む不織布膜の一次元が減少することを意味する。線形収縮は、元の寸法に対するパーセンテージとして表現され、乾燥状態で膜試料(例えば、30×30mm)を切断し、縦断面および横断面で2対の点(例えば、それぞれ20mm離れている)をマークし(
図6を参照)、試料を溶媒(例えば一定温度(37.0℃)の水)に浸漬し、それによって湿潤状態の膜を得、一定時間(例えば24時間、48時間および72時間)でキャリパ等の物理測定ツールを使用して各試料の点間の距離(高さおよび幅)を測定することにより測定され得る。パーセンテージでの線形収縮は、湿潤状態(すなわち、膜を可溶化剤と接触させた後)の膜のマークされた点間の距離を乾燥状態の膜のマークされた点間のアナログ距離で割り、結果をパーセンテージとして表現することにより計算される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「乾燥状態」という用語は、その調製後に、活性剤を可溶化することができる可溶化剤と接触されていない不織布膜を指す。対照的に、「湿潤状態」という用語は、不織布膜が、活性剤を可溶化することができる可溶化剤と接触した状態を指す。
【0032】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、活性剤を可溶化することができる可溶化剤は、水を含む。可溶化剤は、血漿、血清、細胞外液、リンパ液、脳鎮痛液(encephaloraquidic fluid)等の任意の生物学的液体であってもよい。
【0033】
別の特定の実施形態において、上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜のビーズは、2~25μm、より具体的には5~25μmの平均直径を有する。通常、ビーズの平均直径は、ImageJソフトウェアを使用した走査型電子顕微鏡(SEM)画像を使用して直接測定され得る。通常、膜のさまざまな部分のいくつかの測定が実行される。
【0034】
一般に、本発明のビーズ膜には、ある特定の数のビーズが望ましい。一方、ビーズの数が少なすぎると、膜はアナログビーズ不含膜と比較して適切な収縮の低減を示さない。一方、ビーズの数が多すぎると、ナノファイバが膜に抵抗を与えるため、膜の抵抗が影響を受ける。したがって、1つの特定の実施形態において、上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜のビーズの量は、500~5000、より具体的には1000~2000ビーズ/mm2である。
【0035】
ビーズは、既知の寸法のSEM画像内のビーズの数をカウントし、1mm2で外挿することによって測定される。これは、膜全体を代表する値を得るために、いくつかのSEM画像で繰り返される。
【0036】
「活性剤の全量は膜内に物理的に閉じ込められているが、膜のポリマーナノファイバの外部に配置されている」という表現は、活性剤が可溶化される適切な量の媒体に膜が接触したときにのみ活性剤が放出されるように、活性剤が膜内に物理的に保持されていることを意味する(すなわち、活性剤粒子のサイズに起因して、活性剤粒子はナノファイバ間のスペースよりも大きいため、または膜の外側に出るためにナノファイバの障壁を物理的に通過する必要があるため、ナノファイバは粒子を閉じ込めるフィルタとして機能する)。したがって、本発明のビーズ膜では、活性剤は、ポリマーナノファイバの内部に配置されていない、またはポリマーナノファイバの一部を形成していない。むしろ、活性剤のほぼすべての表面が媒体に露出している。膜のこの構成は、ナノファイバがすでに形成された後に活性剤がナノファイバ上に堆積される、その調製に使用されるプロセスから生じる。本明細書で使用される「実質的に存在しない」という用語は、全表面に対して約90%、95%または100%以上の表面を指す。
【0037】
結果として、活性剤の全量は膜内に物理的に閉じ込められているが、ポリマーナノファイバの外部に配置されているビーズ不織布膜は、活性剤が必然的に部分的または全体的にナノファイバ内に配置される、ポリマーおよび活性剤の両方の混合物のエレクトロスピニングによって得られる膜で起こることとは異なり、ポリマーナノファイバの分解によってではなく、好適な媒体(例えば生理学的媒体)の存在下で可溶化のみによって活性剤を放出する。例で示されるように、本発明のビーズ膜は、再現性のある効率的かつ持続的な放出を可能にする。
【0038】
特に、本発明の膜は、送達媒体との最初の接触後の最初の数分から数日以内に非常に有意な量の活性剤を放出することができ、その後、放出は、膜内に存在する活性剤の総量が放出されるまで、より遅い速度でより長期間一定のままである。これは、例えば腫瘍学など、手術後の最初の数時間で重要な放出が必要になるある特定の用途で望ましい。
【0039】
したがって、本発明のビーズ膜は、治療用量で最初の数分から数日または数週間の間、および膜のポリマーナノファイバが分解されるかなり前に、高い治療用量を完全に放出することができる。
【0040】
その上、本発明のビーズ膜がより低い収縮を示すという事実はまた、活性剤の放出に影響を与える。したがって、
図10に見られるように、約10%の収縮を示すビーズ膜は、約30%の収縮を示す非ビーズ膜と比較して、活性剤のより速く完全な持続的かつ制御された放出を可能にする。
【0041】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明の不織布膜に含まれる活性剤、特にSN-38は、0.1~200μm、より具体的には1~100μm、さらにより具体的には1~25μmの平均粒子サイズを有する粒子の形態で存在する。粒子の少なくとも90体積%(Dv(90))は、23.6μm以下の粒子サイズを有する。
【0042】
粒子サイズは、例えば、HydroSM分散ユニットを備えたMalvern Mastersizer Apparatus3000を使用してレーザー回折によって決定され得る。エタノールを分散媒体として使用することができる。
【0043】
本発明のビーズ不織布膜には、大量の活性剤が担持され得る。一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、活性剤、特にSN-38は、不織布膜の総重量に対して0.01~20重量%、より具体的には0.1~5重量%、より具体的には0.5~2重量%の量で膜中に含まれる。
【0044】
膜中の活性剤の担持量は、ビーズ膜の表面積当たりの活性剤の重量として表すこともできる。例えば、4mg/cm2の膜の場合、不織布膜の総重量に対して0.625重量%の担持量は、25μg/cm2の担持量に対応する。
【0045】
上述のように、本発明者らは、驚くべきことに、不織布膜中のビーズの存在が、アナログビーズ不含不織布膜の収縮を著しく低減することを発見した。したがって、1つの特定の実施形態において、上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜の37℃における水中での線形収縮は、アナログビーズ不含膜に対して少なくとも50%低減される。
【0046】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、活性剤が可溶化される適切な量の水性媒体と膜が接触した場合、37℃および72時間で20%以下の水中線形収縮を有する。上述のように、線形収縮度は、元の寸法に対するパーセンテージとして表現され、物理的な測定ツールを用いて収縮前および収縮後の膜の線形寸法(高さおよび幅)を割ることによって計算され得る。
【0047】
本発明のビーズ不織布膜は、活性剤が可溶化される適切な量の媒体と接触したときに、制御された持続的な態様でその活性剤を放出することができる。本発明のビーズ膜が処置される身体の領域に配置されると、生理学的媒体は、持続的かつ制御された態様で活性剤を可溶化する適切な媒体として機能する。
【0048】
「制御された持続的な」放出という用語は、所定の時間での、および所定の放出期間中の所望の速度での漸進的な放出を指す。典型的には、それは、血液(例えば血漿)濃度が約12時間以上の期間にわたって毒性濃度未満に維持されるような速度で薬物の放出が生じることを意味する。
【0049】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、活性剤が可溶化される適切な量の媒体と接触した後、ポリマーナノファイバの分解時間の50%以下の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の80%以上の量を放出することができる。このようにして、ポリマーナノファイバの分解とは無関係に活性剤が放出されることが保証される。より具体的には、本発明のビーズ不織布膜は、2.5ヶ月以内、より具体的には2ヶ月以内、さらにより具体的には1.5ヶ月または1ヶ月、4週間、3週間、2週間または1週間以内に、活性剤の総重量の80%以上の量を放出することができる。
【0050】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、5週間以内の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の80%以上、より具体的には90%、さらにより具体的には100%の量を放出することができる。
【0051】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、膜のポリマーナノファイバは、活性剤が可溶化される適切な量の媒体と膜を接触させた後に、2、3、4、4.5、または5ヶ月で完全に分解される。
【0052】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、5週間以内の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の80%以上、より具体的には90%、さらにより具体的には100%の量を放出することができ;膜のポリマーナノファイバは、活性剤が可溶化される適切な量の媒体と膜を接触させた後に、2、3、4、4.5、または5ヶ月で完全に分解される。
【0053】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、1.5週間以内、より具体的には7日間以内の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の80%以上、より具体的には90%、さらにより具体的には100%の量を放出することができる。
【0054】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、6日間以内、より具体的には5日間以内の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の70%以上の量を放出することができる。
【0055】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、5日間以内、より具体的には4日間以内の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の60%以上の量を放出することができる。
【0056】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、4日間以内、より具体的には3日間以内の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の50%以上の量を放出することができる。
【0057】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、2日間以内、より具体的には1日間以内の期間で、活性剤、特にSN-38の総重量の20%以上の量を放出することができる。
【0058】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、2日間以内で、活性剤、特にSN-38の総重量の20%以上の量;4日間以内の期間で50%以上の量;5日間以内の期間で60%以上の量;6日間以内の期間で70%以上の量;1.5週間以内の期間で80%以上の量を放出することができる。
【0059】
一般に、特定の時間での活性剤の放出は、a)活性剤が可溶化される媒体に所与の不織布膜を浸漬し、所望の時間での活性剤の濃度を(例えば高速液体クロマトグラフィー、HPLCによって)測定することにより測定され得る。代替として、b)活性剤が可溶化される媒体に所与の不織布膜を浸漬し、所望の時間待機し、媒体から膜を取り出し、膜のナノファイバを溶解し得る既知の体積の溶媒(例えばHFIP)に膜を浸漬して、この溶液中に残っている活性剤の濃度を(例えばHPLCにより)測定することで活性剤の残留含量を測定することにより測定され得る。
【0060】
別の実施形態において、上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ膜のポリマーナノファイバは円筒形であり、50~2000nm、より具体的には200~1400nm、500~1100nmの平均直径を有し、さらにより具体的には、それらは約800nmの平均直径を有する。本発明の目的において、「平均直径」という用語は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた画像での異なる測定値の算術平均、例えば50個の測定値の算術平均によって得られる直径に関連する。
【0061】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ膜は、0.02~3mm、より具体的には0.02~2、0.02~1、0.02~0.5、0.05~0.5、または0.05~0.2mmの厚さを有する。
【0062】
本発明のビーズ不織布膜は、エレクトロスピニングまたはナノファイバを生成することができる他の技術によって調製され得る。一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、膜のポリマーナノファイバは、エレクトロスピニングナノファイバ、すなわちエレクトロスピニングプロセスによって得られたナノファイバである。
【0063】
本発明のビーズ不織布膜のポリマーナノファイバは、1つまたは複数のポリマー、より具体的には1、2、3または4つのポリマーからなる。
【0064】
したがって、一実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜は、単一のポリマーで作製されたポリマーナノファイバを含む。
【0065】
代替として、別の実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜は、2つ以上のポリマーの組み合わせで作製されたポリマーナノファイバを含む。
【0066】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ポリマーナノファイバのポリマーは、生体適合性である。本発明の目的において、「生体適合性ポリマー」という用語は、それが使用される量において、生体組織に悪影響または害を引き起こさないポリマーを指す。したがって、生体適合性ポリマーは、無毒で化学的に不活性であり、免疫反応、または瘢痕組織の形成等の他の生物学的反応、または他の炎症反応を引き起こさない。
【0067】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ポリマーナノファイバのポリマーは、生体分解性である。本発明の文脈で使用される「生分解性ポリマー」という用語は、生理学的条件下で分解されるポリマーを指し、例えば、生分解性ポリマーは、細胞機構によって分解され得る。より具体的には、生分解性ポリマーは、インプラントされた場合、少なくとも30日間、より具体的には少なくとも15日間安定であり、インプラントされた場合、5ヶ月以内、より具体的には4ヶ月以内、より具体的には3ヶ月以内に完全に分解される。
【0068】
ナノファイバを形成するために使用され得る適切なポリマーの非限定的な例には、ポリエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリエーテル等が含まれる。一実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ポリマーナノファイバは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリD,L-乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリビニルアルコール(PVA)、コラーゲン、セルロース、ヒアルロン酸、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、エラスタン、シルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数のポリマーで作製される。より具体的には、ポリマーナノファイバは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリD,L-乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、シルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数のポリマーで作製される。
【0069】
典型的には、PLAの分子量(MW)は、17~100kg/molであり、PLGAのMWは、50~200kg/molである。これらのポリマーは、1年未満の分解時間を有する。
【0070】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ポリマーナノファイバは、PLAと組み合わされたPLGA、PEGと組み合わされたPLGA、およびPCLと組み合わされたPLGAからなる群から選択されるポリマーの組み合わせで作製される。より具体的には、ポリマーナノファイバは、10:90~90:10w/wの量のPLGAおよびPLA;60:40~98:2w/wの量のPLGAおよびPEG;10:90~90:10w/wの量のPLGAおよびPCLからなる群から選択されるポリマーの組み合わせで作製され、比率は、組み合わせを形成する2つのポリマーの総重量に対するポリマーの重量で示される。
【0071】
本明細書で使用される場合、PLGA XX/YYという用語は、XXがラクチド含量を表し、YYがグリコリド含量を表すPLGAを指し、ラクチド/グリコリドの比率はモルパーセントで表される。一実施形態では、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ラクチド含量XXは、5%~95%であり、グリコリド含量YYは、95%~5%であり、XXおよびYYの合計は100%である。
【0072】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ポリマーナノファイバは、ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、より具体的にはPLGA75/25、さらにより具体的には、50~200kg/モルの分子量(MW)を有するPLGAで作製される。
【0073】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または以下で説明する様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ポリマーナノファイバは、ポリ-D,L-乳酸(PLA)、より具体的には17~100kg/molの分子量(MW)を有するPLAで作製される。
【0074】
上述のように、本発明のビーズ不織布膜に含まれる活性剤は、33mg/mL以下の水溶性を有する。したがって、当技術分野の基準によれば、本発明において考慮される活性剤は、水に事実上不溶性(0.1mg/mL未満の水溶性)、ごくわずかに溶解性(0.1~1mg/mLの水溶性)、わずかに溶解性(1~10mg/mLの水溶性)、または難溶性(10~33mg/mLの水溶性)の活性剤を含む。
【0075】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、活性剤は、0.001~33mg/mLの水溶性を有する。
【0076】
活性剤の非限定的な例には、化学療法剤、例えばSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、カルムスチン、メルファラン、カンプトテシン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、エルロチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、バンデタニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、イマチニブ(4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-N-[4-メチル-3-[(4-ピリジン-3-イルピリミジン-2-イル)アミノ]フェニル]ベンズアミド)、メシル酸イマチニブ(4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-N-[4-メチル-3-[(4-ピリジン-3-イルピリミジン-2-イル)アミノ]フェニル]ベンズアミドメタンスルホン酸)、ヌトリン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ボルテゾミブ、バルプロン酸、ビスモデギブ、シナカルセット、トラベクテジン、トポテカン、MLN4924、オラパリブ、イニパリブ、三酸化ヒ素、クリゾチニブ、セレコキシブ、ペリフォシン、ラパマイシン、テムシロリムスおよびエベロリムス;栄養補助食品、例えばクルクミン、レスベラトロール、ゲニステインおよびケルセチン;抗生物質または抗真菌剤、例えばクロラムフェニコール、ペニシリンGプロカイン、フシジン酸、メベンダゾールおよびアルベンダゾール;成長因子を含むタンパク質、例えばインスリン、PDGF、TGF-B、EGF、VEGF、IGF-I、bFGFおよびHGF;細胞(分化細胞または幹細胞である自家または同種細胞)、免疫療法剤、抗感染剤、内分泌剤および心臓血管剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明の不織布膜は、2種以上の活性剤を含み、より具体的には、膜は第2の活性剤を含む。
【0078】
使用される活性剤に応じて、本発明のビーズ不織布膜は、治療目的のために使用され得る。本発明の文脈において、「治療」という用語は、それが、例えば、病状、生理学的状態、もしくはそれらの症状の治療、寛解もしくは減弱において、またはそれらの評価または診断のために治療的に有用であることを意味する。
【0079】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜に含まれる活性剤は、製薬分野および獣医学分野の両方で使用され得る治療剤である。より具体的には、活性剤は、化学療法剤である。
【0080】
本発明の目的において、「化学療法剤」という用語は、腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または腫瘍細胞死を誘導する薬剤または薬物を指す。
【0081】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜に含まれる活性剤は、SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、カルムスチン、メルファラン、カンプトテシン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、エルロチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、バンデタニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、イマチニブ4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-N-[4-メチル-3-[(4-ピリジン-3-イルピリミジン-2-イル)アミノ]フェニル]-ベンズアミド)、メシル酸イマチニブ(4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-N-[4-メチル-3-[(4-ピリジン-3-イルピリミジン-2-イル)アミノ]フェニル]ベンズアミドメタンスルホン酸)、ヌトリン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ボルテゾミブ、バルプロン酸、ビスモデギブ、シナカルセット、トラベクテジン、トポテカン、MLN4924、オラパリブ、イニパリブ、三酸化ヒ素、クリゾチニブ、セレコキシブ、ペリフォシン、ラパマイシン、テムシロリムス、およびエベロリムスからなる群から選択される治療剤である。より具体的には、活性剤は、SN-38である。
【0082】
本発明のビーズ膜は、ポリマーナノファイバの1つの層のみによって形成されてもよく、または代替として、複数の層によって形成されてもよく、ここで、層の少なくとも1つは、1種の活性剤を含む。
【0083】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、活性剤が存在していないポリマーナノファイバを含む1つの第1の層と、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含む第2の層と、活性剤が存在していないポリマーナノファイバを含む第3の層と、を含むか、またはそれらからなる。
【0084】
ビーズ不織布膜がポリマーナノファイバの異なる層を含む場合、各層のナノファイバは、等しいまたは異なるポリマーで作製され得、それらは等しいまたは異なるナノファイバ直径を有し得、また各層は等しいまたは異なる厚さを有し得る。その上、2つ以上の層に1種または複数種の活性剤が担持される場合、活性剤は同じまたは異なっていてもよい。さらに、ビーズ不織布膜がポリマーナノファイバの異なる層を含む場合、ポリマーナノファイバの2つの層の間にポリマーナノファイバを含まない薬物層を配置することも可能である。
【0085】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜は、ポリマーナノファイバを含む第1の層と、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含む第2の層と、ポリマーナノファイバを含む第3の層と、を含む、またはそれらからなる。より具体的には、ビーズ不織布膜は、ポリマーナノファイバからなる第1の層と、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤からなる第2の層と、ポリマーナノファイバからなる第3の層と、からなる。さらにより具体的には、3つの層のそれぞれのナノファイバは同じポリマーで作製され、同じナノファイバ直径を有する。
【0086】
任意選択で、上記に規定された本発明のビーズ不織布膜は、膜の1つの面に向かう一方向の放出を達成するために、片面がコーティングされてもよい。したがって、一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、片面がコーティングされている。典型的には、コーティングは、以下の方法のうちの1つによって実行され得る:生体適合性接着剤による接着、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等のポリマー溶媒との接触、機械的パンチ、または繊維の接着に有利なエレクトロスピニングパラメータ。
【0087】
上述のように、収縮の低減によって、本発明のビーズ不織布膜は、例えば送達剤が治療剤である場合、臓器または手術部位に対する改善されたドレープ性を有する。本発明の目的において、「ドレープ性」という用語は、不規則な曲面または他の形状の表面に成形(密着)する材料の能力を指す。この特性は、膜がインプラントされた領域における膜の過度の剛性によって生じる可能性のある病変を回避するのに役立ち得る。
【0088】
本発明のビーズ不織布膜は、
a)適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの溶液を調製するステップと、
b)特にステップa)からのポリマー(複数可)が不溶性である適切な溶媒系中の活性剤の溶液または懸濁液を調製するステップと、
c)ステップa)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバを生成し、同時に、ステップb)の溶液または懸濁液をポリマーナノファイバ上に堆積させるステップと;
d)任意選択で、ステップc)から得られた不織布膜を乾燥させるステップと、
を含む方法によって調製され得る。
【0089】
本発明の不織布膜のビーズ形態は、エレクトロスピニングプロセスで使用される条件に起因する。一般的に言えば、ビーズは、ポリマー溶液の粘度が低いが、エレクトロスプレーを生成するのに十分な低さではない場合(すなわち繊維の代わりに液滴)、エレクトロスピニングプロセスで形成される。ポリマー溶液の粘度は、溶液中のポリマーの濃度に合わせて調整することができ、濃度が高いほど粘度が高くなり、濃度が低いほど粘度が低くなる。
【0090】
理論に束縛されないが、粘度が低い場合、高い表面張力が粘度に打ち勝ち、それがビーズの形成につながると考えられている。ビーズの数および分布は、例えば印加電圧や紡糸針直径等の他のプロセスパラメータを調節することによって調整することもできる。したがって、当業者は、所望の数のビーズを得るためにパラメータを調節する方法を知っているであろう。例えば、所与のポリマーおよび所与の溶媒について、ポリマーの濃度を変化させ、最終膜のSEM(または収縮度)によってビーズの数を分析する簡単な実験を実行し、各ポリマーおよび溶媒に対して使用する最適な条件を決定できる。
【0091】
一実施形態において、上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ステップa)において、ポリマーの濃度は、ナノファイバに沿ったビーズがステップc)において形成されるような濃度である。
【0092】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と任意選択で組み合わせて、ステップa)において、ポリマーの濃度は、同じ活性剤およびポリマーを含むアナログビーズ不含ポリマー不織布膜を同じプロセス条件下で調製するために使用される濃度よりも0.5~2%低く、特に、同じ活性剤およびポリマーを含むアナログビーズ不含ポリマー不織布膜を同じプロセス条件下で調製するために使用される低濃度よりも低い。例えば、所与のビーズ不含ポリマー不織布膜に関して、9%w/wのポリマーの濃度(すなわち、9gのポリマー/100gの溶媒)が使用される場合、アナログビーズ膜の調製には、ポリマーの濃度は7%となり得る。
【0093】
ポリマーを溶解する(方法のステップa)ための適切な溶媒系のいくつかの例には、限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)またはそれらの混合物が含まれる。ポリマーを溶解するための溶媒系は、界面活性剤または塩(例えばNaCl)等の、エレクトロスピニングプロセスを改善するための添加剤を任意選択で含み得る。特に、塩は、0.2g/mL以下の濃度で存在する。
【0094】
ポリマー溶液に添加され得る界面活性剤の非限定的な例には、ブロックポリマー非イオン性界面活性剤(ポロキサマー、メロキサポール、およびポロキサミン)ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、レシチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80等の非イオン性界面活性剤が含まれる。界面活性剤は、溶液の総重量の0.01~10重量%、より具体的には2重量%の濃度で添加され得る。
【0095】
ポロキサマー、メロキサポール、およびポロキサミンの化学構造のスキームを以下に示す。
【0096】
【0097】
ポロキサマーは、プルロニック化合物としても知られ、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))(PEO)の2つの親水性鎖に挟まれたポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))(PPO)の中央疎水性鎖で構成される非イオン性トリブロックコポリマーである。ポロキサマーの非限定的な例には、Pluronic(登録商標)F68(Kolliphor(登録商標)P188、Lutrol(登録商標)F68、Synperonic(登録商標)F68またはPoloxamer188としても知られている)、Pluronic(登録商標)F127、Pluronic(登録商標)F108、Pluronic(登録商標)L101、Pluronic(登録商標)L121、Pluronic(登録商標)P85、Pluronic(登録商標)PI05またはPluronic(登録商標)P123等が含まれる。
【0098】
メロキサポールは、ポロキサマーとは異なる構造を有する。したがって、ポロキサマー構造は2つの第一級ヒドロキシル基で終端するが、メロキサポールシリーズは末端に第二級ヒドロキシル基を有する。ポロキサマーシリーズでは、疎水性物質が内側にあり、対応するメロキサポールは2つに分かれた疎水性物質を有する。
【0099】
ポロキサミン(テトロニック)は、中央のエチレンジアミン部分に結合した、4つのポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)(PEO-PPO)ブロックのアームにより形成されたX字型の両親媒性ブロックコポリマーである。ポロキサミンの非限定的な例には、Tetronic(登録商標)T1307、Tetronic(登録商標)T1107またはTetronic(登録商標)T904が含まれる。
【0100】
したがって、1つの特定の実施形態において、上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜は、界面活性剤をさらに含む。より具体的には、界面活性剤は、ポロキサマー、メロキサポール、ポロキサミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、レシチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0101】
ポリマー濃度は、一般に、ビーズを得るために所与の溶媒系に合わせて調節される。例えば、ポリマーナノファイバがHFIP中のPLGA75/25の溶液から調製される場合、適切な濃度は、6~8%w/wの範囲となり得る。ポリマーナノファイバがジオキサン/アセトン(40%/60%w/w)中のPLGA75/25の溶液から調製される場合、適切な濃度は、15~20%w/wの範囲となり得る。ポリマーナノファイバがジクロロメタン中のPLAの溶液から調製される場合、適切な濃度は、8~12%w/wの範囲となり得る。
【0102】
ステップb)において、活性剤は、ステップa)で使用されるポリマー(複数可)を可溶化することができない溶媒系に溶解または懸濁、特に懸濁される。したがって、ステップb)の溶媒系は、ステップa)の溶媒系とは異なる。また、ステップb)の溶媒は、所望の活性剤の分解を引き起こさないように、所望の活性剤と適合性でなければならない(例えば酢酸緩衝液)。
【0103】
任意選択で、上記のもの等の界面活性剤または塩が、活性剤の溶液または懸濁液に添加されてもよい。
【0104】
代替として、界面活性剤はまた、エレクトロスピニングプロセスを改善するためにステップa)のポリマー溶液に添加されてもよく、またはステップa)のポリマー溶液およびステップb)の活性剤溶液の両方に添加されてもよい。
【0105】
したがって、1つの特定の実施形態において、上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、本発明のビーズ不織布膜の製造方法は、
a)界面活性剤を任意選択で含む適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの溶液を調製するステップと;
b)界面活性剤を任意選択で含む適切な溶媒系中の活性剤の溶液または懸濁液を調製するステップであって、特にステップa)からのポリマー(複数可)が不溶性である、ステップと;
c)ステップa)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバを生成し、同時に、ステップb)の溶液または懸濁液をポリマーナノファイバ上に堆積させるステップと;
d)任意選択で、ステップc)から得られた不織布膜を乾燥させるステップと、
を含む。
【0106】
1つのより具体的な実施形態において、ステップa)の溶液は、界面活性剤をさらに含む。別のより具体的な実施形態において、ステップb)の溶液または懸濁液は、界面活性剤をさらに含む。別のより具体的な実施形態において、ステップa)の溶液およびステップb)の溶液または懸濁液の両方が、界面活性剤をさらに含み、ステップa)で使用される界面活性剤およびステップb)で使用される界面活性剤は、同じであってもまたは異なっていてもよい。本発明の方法のステップc)において、ステップa)からの溶液のエレクトロスピニングが実行されて、ビーズポリマーナノファイバが生成される。ポリマーナノファイバは、コレクタ(回転シリンダまたはエレクトロスピニングの堆積ゾーン間で振動する他のコレクタであってもよい)上に堆積される。当技術分野の専門家は、活性剤溶液等のポリマー溶液を調製するための適切な溶媒、および所望の用途に適切な特性を有するビーズ不織布膜を得るためのエレクトロスピニングプロセスの適切なパラメータの両方を、定期的に調節することができる。
【0107】
一実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、エレクトロスピニング中にジェットとコレクタとの間に印加される電圧差は、8~20kV、より具体的には10~14KVである。
【0108】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、エレクトロスピニングは、30~500分、より具体的には200~400分の期間にわたって実行される。
【0109】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、ポリマー溶液の流速は、1~6mL/h、より具体的には2~4mL/hである。
【0110】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、針の先端は、金属回転シリンダから90~120mmの距離に配置された。
【0111】
別の実施形態において、すべての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、エレクトロスピニング中にジェットとコレクタとの間に印加される電圧差は、8~20kV、より具体的には10~14KVであり;ポリマー溶液の流速は、1~6mL/h、より具体的には2~4mL/hであり;針の先端は、金属回転シリンダから90~120mmの距離に配置され;ポリマーナノファイバは、6~8%w/wの濃度のHFIP中のPLGA75/25の溶液から、または代替として15~20%w/wの濃度のジオキサン/アセトン(40%/60%w/w)中のPLGA75/25の溶液から、または代替として8~12%w/wの濃度のジクロロメタン中のPLAの溶液から調製される。より具体的には、この実施形態において、活性剤はSN-38であり、より具体的には、1~25μmの粒子サイズを有する。
【0112】
ポリマー溶液のエレクトロスピニングが行われている間、ステップb)の溶液または懸濁液は、活性剤がビーズ不織布膜に保持されるように、得られたポリマーナノファイバ上に堆積される。
【0113】
活性剤溶液または懸濁液の堆積は、異なる方法によって、例えば溶液をスプレーすることによって(スプレーまたはエレクトロスプレーのいずれかによる);重力によりそれを注入することによって(活性剤粒子は、例えばふるいの振動によって、または懸濁液もしくは溶液の液滴を残すことによって投与することができる);またはμLディスペンサを使用することによって(任意の機械的方法の投与が使用され得る)実行され得る。
【0114】
活性剤の溶液または懸濁液が使用される場合、液滴は、コレクタをコーティングするナノファイバ上に堆積される。液滴の溶媒が蒸発すると、活性剤は固体形態になり、繊維へのコーティングまたは結晶もしくは非晶質構造を有し得る固体粒子のいずれかを形成する。
【0115】
スプレーシステムが使用される場合、活性剤を堆積するためのスプレーシステムは、活性剤自体によって決定される流量および粘度で動作し、例えば、エレクトロスプレーシステム、空気圧スプレー、超音波スプレー、または空気圧/超音波の複合スプレーであってもよい。特定の実施形態において、本発明に記載の様々な実施形態の1つまたは複数の特徴と任意選択で組み合わせて、使用されるスプレーシステムは、エレクトロスプレーである。
【0116】
さらに、異なる構成のシステムが使用されてもよい。
図1は、ナノファイバの生成中に活性剤を膜に同時に組み込む様々な方法を示している。このように、活性剤の堆積は、水平軸(
図1Aを参照)または垂直軸(
図1Bを参照)のいずれかに沿った回転円筒コレクタ上で実行され得る。また、繊維および活性剤注入デバイスを動かすことにより、静止コレクタ上に堆積させることもできる(
図1C)。代替として、活性剤は、回転コレクタの内面に堆積させることもできる(
図1D)。
【0117】
さらに、このプロセスは、異なる濃度の活性剤を含む膜の連続層が生成される異なるステップで実行することができる。
【0118】
特定の実施形態において、すべての説明を通して上記および以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と任意選択で組み合わせて、ビーズ不織布膜は、ポリマーナノファイバからなる第1の層と、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤からなる第2の層と、ポリマーナノファイバからなる第3の層と、からなる場合、方法は、
A)界面活性剤を任意選択で含む適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの第1の溶液を調製するステップと;
B)ステップa)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバの第1の層を生成するステップと;
C)適切な溶媒系中に界面活性剤を任意選択で含む1つまたは複数のポリマーの第2の溶液を調製するステップと;
D)界面活性剤を任意選択で含む適切な溶媒系、特に工程a)からの1つまたは複数のポリマーが不溶性である適切な溶媒系中の活性剤の溶液または懸濁液を調製するステップと;
E)ステップC)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバを生成し、同時に、ポリマーナノファイバおよび活性剤の第2の層が第1の層上に堆積されるように、ポリマーナノファイバ上にステップD)の溶液または懸濁液を堆積させるステップと;
F)界面活性剤を任意選択で含む適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの第3の溶液を調製するステップと;
G)ステップF)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、第2の層の上に堆積されるビーズポリマーナノファイバの第3の層を生成するステップと;
E)任意選択で、ステップG)から得られたビーズ不織布膜を乾燥させるステップと、
を含む。
【0119】
一般に、エレクトロスピニング/エレクトロスプレーのプロセスは、ビーズ不織布膜の総重量に対して0.01~20重量%の量で含まれる活性剤を含むビーズ不織布膜を得るために、流動ポリマー溶液および活性剤溶液の流速を用いて、必要な時間の間に行われる。
【0120】
溶媒が膜から蒸発した後、膜は直接使用され得る。特定の実施形態において、本発明の方法は、エレクトロスピニング/エレクトロスプレープロセスの後に得られた不織布膜を乾燥させるステップを含み、より具体的には、乾燥ステップは、エレクトロスピニングおよびエレクトロスプレーのプロセスで使用される溶媒を乾燥させることによって実行される。
【0121】
また、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含むビーズ不織布膜であって、ナノファイバが、ナノファイバの長さに沿って分布し且つナノファイバの平均直径の1.5~20倍の平均直径を有するビーズを含み、活性剤が、33mg/mL以下の水溶性を有し、ビーズ不織布膜が、
a)適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの溶液を調製するステップと;
b)特にステップa)からのポリマー(複数可)が不溶性である適切な溶媒系中の活性剤の溶液または懸濁液を調製するステップと;
c)ステップa)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバを生成し、同時に、ステップb)の溶液または懸濁液をポリマーナノファイバ上に堆積させるステップと;
d)任意選択で、ステップc)から得られた不織布膜を乾燥させるステップと、
を含む方法により得ることができるビーズ不織布膜も本発明の一部を形成する。
【0122】
上記で定義された方法「により得ることができる」ビーズ不織布膜は、本明細書では、その製造方法による膜を定義するために使用され、上述のステップa)、b)、c)およびd)を含む調製プロセスによって得ることができる膜に関する。本発明の目的において、「得ることができる」、「得られる」という表現および同等の表現は交換可能に使用され、いずれの場合も、「得ることができる」という表現は、「得られる」という表現を含む。
【0123】
ビーズ不織布膜およびその製造方法に関して上述された実施形態は、その製造方法により得ることができるビーズ不織布膜にも適用される。
【0124】
上述のように、本発明のビーズ不織布膜は、疾患の治療のための薬物送達システム(DDS)として使用され得る。したがって、医薬品として使用するための上記で規定されたビーズ不織布膜もまた、本発明の一部を形成する。
【0125】
本発明のビーズ不織布膜に含まれる活性剤が化学療法剤である場合、腫瘍の治療に使用することができる。したがって、本発明は、バイタル(生命の維持に必要な;vital)血管を有する切除不能な領域を含む腫瘍の処置;腫瘍の残留物が残っている外科的境界の処置;腫瘍浸潤もしくは陽性骨スキャンを伴う骨組織の処置;または組織再生;に使用するための活性剤を含む上記で規定されたビーズ不織布膜に関し、活性剤は化学療法剤である。
【0126】
本発明のこの態様はまた、バイタル血管を有する切除不能な領域を含む腫瘍の処置;腫瘍の残留物が残っている外科的境界の処置;腫瘍浸潤もしくは陽性骨スキャンを伴う骨組織の処置;または組織再生;のための、上記で規定されたようなビーズ不織布膜を製造するための活性剤の使用として定式化することができ、活性剤は化学療法剤である。
【0127】
本発明はまた、バイタル血管を有する切除不能な領域を含む腫瘍の処置;腫瘍の残留物が残っている外科的境界の処置;腫瘍浸潤もしくは陽性骨スキャンを伴う骨組織の処置のための方法に関し;または組織再生のための方法;関し、方法は、ヒトを含む哺乳動物への前述のビーズ不織布膜の投与を含み、活性剤は化学療法剤である。
【0128】
説明および特許請求の範囲の全体を通して、「含む」という単語およびその単語の変化形は、他の技術的特徴、添加剤、構成要素、またはステップを除外することを意図するものではない。さらに、「含む」という単語は、「からなる」の場合を包含する。本発明の追加の目的、利点、および特徴は、説明を検討することで当業者に明らかとなるか、または本発明の実践により学習され得る。以下の実施例および図面は、例示として提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態のすべての可能な組み合わせを網羅する。
【実施例】
【0129】
実施例1 SN-38を含むビーズPLGA不織布膜の調製(HFIP中のPLGA溶液からのエレクトロスピニング)
【0130】
1.1 薬物懸濁液の調製
SN-38(4mg)を、酢酸緩衝液、pH5、15mLに撹拌しながら懸濁させた。
【0131】
1.2 ビーズ不織布膜の準備
エレクトロスピニングされたPLGAナノファイバの3つの層(連続して堆積された第1の薬物不含層、第2の薬物担持層、および第3の薬物不含層)を含むビーズ不織布膜を調製した。
【0132】
まず、PLGA75/25(95kg/mol)を1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に7%w/wの濃度で溶解した。溶液をφ0.4mmの針を有する注射器に充填し、エレクトロスピニング機に取り付けられた定速ポンプで導入した。針の先端を金属回転シリンダから110mmの距離に配置した。コレクタの直径は120mmであった。
【0133】
第1の(薬物不含)PLGA層を形成するために、PLGA溶液を7分間エレクトロスピニングし、植物性紙基板(vegetal paper substrate)上に収集した。PLGA溶液の流速は4mL/hであり、電圧は12kVであった。
【0134】
次いで、第1の層について説明されたのと同じ条件下でさらに60分間PLGA溶液をエレクトロスピニングすると同時に、1.1で調製した薬物懸濁液をエレクトロスプレーすることにより、第2(薬物担持)PLGA層を第1層上に形成した。薬物溶液は、17kVの電圧、35mmのコレクタまでの距離、および9mL/hの流速でエレクトロスプレーした。
【0135】
最後に、第1の層について説明されたのと同じ条件下でさらに7分間PLGA溶液をエレクトロスピニングすることにより、第3の(薬物不含)PLGA層を第2の層上に形成した。
【0136】
得られたビーズ不織布膜を、室温および真空下で24時間乾燥させた。
図2は、1000倍の倍率で得られたビーズ不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。PLGAナノファイバは852nmの平均直径を有し、ビーズ濃度は1077ビーズ/mm
2であり、走査型電子顕微鏡で測定したビーズ直径は7μmであり、担持されたSN-38の理論量は0.1重量%であった。
【0137】
実施例2 SN-38を含むビーズPLGA不織布膜の調製(ジオキサン/アセトン中のPLGA溶液からのエレクトロスピニング)
PLGAを溶解するために使用された溶媒がジオキサン/アセトン(40%/60%w/w)の混合物であり、ポリマー濃度が16%w/wであったことを除いて、実施例1で説明されたのと同じ手順に従ってビーズ不織布膜を調製した。
【0138】
図3は、1000倍の倍率で得られたビーズ不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。不織布膜において、走査型電子顕微鏡で測定されるようにPLGAナノファイバは800nmの平均直径を有し、担持されたSN-38の理論量は0.1重量%であった。
【0139】
実施例3 SN-38を含むビーズPLA不織布膜の調製(ジクロロメタン中のPLA溶液からのエレクトロスピニング)
PLGAの代わりにPLA(高分子量)が使用され、PLAの溶解に使用された溶媒がジクロロメタンであり、ポリマー濃度が10%w/wであったことを除いて、実施例1で説明されたのと同じ手順に従ってビーズ不織布膜を調製した。
【0140】
図4は、1000倍の倍率で得られたビーズ不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。不織布膜において、走査型電子顕微鏡で測定されるようにPLGAナノファイバは700nmの平均直径を有し、担持されたSN-38の理論量は0.1重量%であった。
【0141】
比較例4 SN-38を含むビーズ不含PLGA不織布膜の調製(HFIP中のPLGA溶液からのエレクトロスピニング)
比較例のビーズ不含不織布膜を、PCT出願WO2013144206に従って調製した。簡単に説明すると、HFIP中のPLGAの濃度が実施例1で使用された7%ではなく8.4%w/wであったことを除いて、実施例1で説明されたのと同じ手順に従ってビーズ不含不織布膜を調製した。濃度の増加により、非ビーズ膜が生成された。
【0142】
図5は、1000倍の倍率で得られたビーズ不含不織布膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。不織布膜において、走査型電子顕微鏡で測定されるようにPLGAナノファイバは695nmの平均直径を有し、担持されたSN-38の理論量は0.1重量%であった。
【0143】
実施例5 収縮挙動比較研究
本発明による実施例1のビーズ不織布膜および比較例4のビーズ不含不織布膜の収縮挙動を比較した。
【0144】
この目的において、各膜の30×30mmの試料を切り出した。縦断面および横断面でそれぞれ20mm離れた2対の点が膜にマークされた(
図6、試料21Aを参照)。試料を一定温度(37.0℃)の蒸留水浴に浸漬し、各試料の点間の距離を24時間、48時間、72時間の一定時間で測定した。
【0145】
図6は、試験した膜の経時的な線形収縮を示している。
図7は、インキュベーション前(21A)および48時間のインキュベーション後(21C)の実施例1のビーズ不織布膜、ならびに48時間のインキュベーション後(21B)の比較例4のビーズ不含不織布膜を示している。比較例4のビーズ不含不織布膜は、インキュベーション前(21A)の実施例1のビーズ不織布膜と同じサイズを有していた。両方の図からわかるように、ビーズ膜は大きく収縮しなかったが、ビーズ不含膜は大幅に収縮した。
【0146】
実施例6 インビトロ薬物放出比較研究
異なる収縮度を有するSN-38が担持された不織布膜1~3の活性剤のインビトロ薬物放出を比較した。溶出試験装置SOTAX、モデル:AT 7Smartを使用して、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline:PBS)バッファーpH7.4、37℃中で75rpmで撹拌しながら放出を評価した。媒体の体積は200mLであり、薬物の溶解度が低いため、1、2、3、4および7日目に交換した。
【0147】
膜1は、PLGA濃度が8%であったということだけを除いて、実施例1で説明されたプロセスに従って調製した。膜2は、PLGA濃度が9%であったということだけを除いて、比較例4で説明されたプロセスに従って調製した。膜3は、実施例1の膜に対応する。得られた結果を以下の表1に示す。
【0148】
【0149】
理解できるように、より低い収縮を示す膜は、はるかに高い程度で活性剤を放出した。
【0150】
実施例7 インビトロ放出アッセイ
溶出試験装置SOTAX、モデル:AT 7Smartを使用して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)バッファーpH7.4、37℃中で75rpmで撹拌しながら、実施例1で得られたビーズ膜のインビトロ放出を評価した。媒体の体積は200mLであり、薬物の溶解度が低いため、1、2、3、4および7日目に交換した。その上、約10%の収縮を示すビーズ膜(表1の膜3に類似した膜)および約30%の収縮を示す非ビーズ膜(表1の膜2に類似した膜)に対しても、上記条件での比較放出アッセイを行った。
【0151】
図9は、実施例1のビーズ膜の累積インビトロ放出(%)を示す。図から分かるように、7日目には、すべての場合で活性剤の含量のほぼ100%が放出された。100%の放出は、異なるバッファー試料中で放出された物質の合計が100%であったこと、および実験(溶解による)の最後で膜に見つかった残留物質が7日目でゼロであったことの両方で確認された。
【0152】
図10は、約10%の収縮を示すビーズ膜と約30%の収縮を示す非ビーズ膜の活性剤のインビトロ放出(総担持量の%)を示す。図から分かるように、ビーズ膜は、非ビーズ膜と比較して、活性剤のより速い持続的な制御された放出を可能にする。
【0153】
引用リスト
-WO2013144206
-US2018000744
-Seeram Ramakrishnaら:「Advances in drug delivery via electrospun and electrosprayed nanomaterials」、International Journal of Nanomedicine 2013、2997ページ
-CN105386155
-CN107675364
-CN106727447
【0154】
完全性の理由から、本発明の様々な態様は、以下の番号が付けられた項目に記載されている。
【0155】
項目1.ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含むビーズ不織布膜であって、ナノファイバは、ナノファイバの長さに沿って分布し且つナノファイバの平均直径の1.5~20倍の平均直径を有するビーズを含み、活性剤は、33mg/mL以下の水溶性を有する、ビーズ不織布膜。
【0156】
項目2.ビーズは、5~25μmの平均直径を有する、項目1に記載のビーズ不織布膜。
【0157】
項目3.ビーズの量は、500~5000ビーズ/mm2である、項目1または2に記載のビーズ不織布膜。
【0158】
項目4.活性剤の全量が、膜内に物理的に閉じ込められているが、膜のポリマーナノファイバの外部に配置されている、項目1から3のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0159】
項目5.本発明の不織布膜に含まれる活性剤は、0.1~20μmの平均粒子サイズを有する粒子の形態で存在する、項目1から4のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0160】
項目6.治療薬の量は、不織布膜の総重量に対して0.01~20重量%である、項目1から5のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0161】
項目7.活性剤が可溶化される適切な量の媒体と膜を接触させたときに、37℃の水中で72時間において、20%以下の線形収縮度を有する、項目1から6のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0162】
項目8.膜を活性剤が可溶化される適切な量の媒体と接触させた後、ポリマーナノファイバの分解時間の50%以下の期間に、膜は、活性剤の総重量の80%以上の量を放出することができる、項目7に記載のビーズ不織布膜。
【0163】
項目9.膜のポリマーナノファイバは、50~2000nmの平均直径を有する、項目1から8のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0164】
項目10.ポリマーナノファイバは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリD,L-乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリビニルアルコール(PVA)、コラーゲン、セルロース、ヒアルロン酸、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、エラスタン、シルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数のポリマーで作製される、項目1から9のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0165】
項目11.ポリマーナノファイバは、ポリグリコール酸(PGA)、ポリD,L-乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、シルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数のポリマーで作製される、項目10に記載のビーズ不織布膜。
【0166】
項目12.ポリマーナノファイバを含む第1の層と、ポリマーナノファイバおよび少なくとも1種の活性剤を含む第2の層と、ポリマーナノファイバを含む第3の層と、を少なくとも含む、項目1から11のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0167】
項目13.活性剤は、化学療法剤;栄養補助食品;抗生物質または抗真菌剤;タンパク質;細胞、免疫療法剤、抗感染剤、内分泌剤および心臓血管剤からなる群から選択される治療剤である、項目1から12のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜。
【0168】
項目14.項目1から13のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜の製造方法であって、
a)適切な溶媒系中の1つまたは複数のポリマーの溶液を調製するステップと、
b)ステップa)からのポリマー(複数可)が不溶性である適切な溶媒系中の活性剤の溶液または懸濁液を調製するステップと、
c)ステップa)からの溶液のエレクトロスピニングを実行して、ビーズポリマーナノファイバを生成し、同時に、ステップb)の溶液または懸濁液をポリマーナノファイバ上に堆積させるステップと;
d)任意選択で、ステップc)から得られた不織布膜を乾燥させるステップと、
を含む製造方法。
【0169】
項目15.バイタル血管を有する切除不能な領域を含む腫瘍の処置;腫瘍の残留物が残っている外科的境界の処置;腫瘍浸潤もしくは陽性骨スキャンを伴う骨組織の処置;または組織再生;に使用するための、項目1から13のいずれか一項に記載のビーズ不織布膜であって、活性剤は化学療法剤である、ビーズ不織布膜。