(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】軌道の枕木の下方を突き固めるための軌道造成機及びその方法
(51)【国際特許分類】
E01B 27/16 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
E01B27/16
(21)【出願番号】P 2021522376
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(86)【国際出願番号】 EP2019075451
(87)【国際公開番号】W WO2020083584
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート ベック
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04312275(US,A)
【文献】特開昭51-149605(JP,A)
【文献】特開2014-062415(JP,A)
【文献】特開2017-079514(JP,A)
【文献】特開2014-006566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(5)の、バラスト道床(6)内の枕木(7)の下方を突き固めるためのタンピングユニット(1)を備えた軌道造成機であって、
ユニットフレーム(2)上に高さ調整可能に支持されたツール支持体(8)を含み、前記ツール支持体(8)上に、タンピングツール(15)が、相互にスクイーズ運動可能に配置されており、
前記ツール支持体(8)が、開ループ制御装置(16)により駆動制御される高さ調整駆動部(10)に結合されて
おり、
前記ツール支持体(8)の下降運動(9)を閉ループ制御するために、コントローラ(18)と、前記高さ調整駆動部(10)のための調整装置(19)と、前記下降運動(9)を検出するための測定装置(20)とを備えた閉ループ制御回路が設けられている
、軌道造成機において、
前記コントローラ(18)の上流にパイロット制御部(26)又はプレフィルタ(26)が接続されており、それにより基準量(w)を適合化することが可能であり、そのために計算ユニット(27)に反復学習制御アルゴリズム(28)がインストールされている
ことを特徴とする軌道造成機。
【請求項2】
前記測定装置(20)は、前記ツール支持体(8)の高さ位置を検出するための位置センサを含む、
請求項1に記載の軌道造成機。
【請求項3】
前記高さ調整駆動部(10)は、油圧弁を有する油圧シリンダを調整装置(19)として含む、
請求項
1又は2に記載の軌道造成機。
【請求項4】
前記油圧弁は、パイロット制御される制御弁として形成されている、
請求項
3に記載の軌道造成機。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の軌道造成機を動作させるための方法であって、
タンピングユニット(1)が、軌道(5)のタンピング位置の上方に位置決めされ、
ツール支持体(8)が、バラスト道床(6)内に差し込まれるタンピングツール(15)と共に高さ調整駆動部(10)を介して下降し、当該下降運動(9)は、閉ループ制御される運動量(x,s)を用いて実行される、
方法において、
コントローラ(18)の上流に接続されたパイロット制御部(26)により、又は、コントローラ(18)の上流に接続されたプレフィルタ(26)により、基準量(w)が以下のように変更される、即ち、
タンピングサイクル(k)において発生する制御差(e
k
)が計算ユニット(27)に供給され、前記計算ユニット(27)において、前記制御差(e
k
)に基づき、反復学習制御アルゴリズム(28)を用いて、前記パイロット制御部(26)又は前記プレフィルタ(26)の少なくとも1つのパラメータ(p)が適合化される、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記ツール支持体(8)の前記下降運動(9)は、位置センサにより検出される、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
下降時間(t)に依存する基準量(w)が、前記閉ループ制御回路に対して設定される、
請求項
5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記下降時間(t)に関する下降距離(s)が、基準量(w)として、前記閉ループ制御回路に対して設定される、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
目標値特性が、目標値設定回路(21)により設定される、
請求項
5乃至
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
目標値発生器として構成された前記目標値設定回路(21)に、前記閉ループ制御回路のフィードバック量(r)が供給され、
設定された前記下降運動(9)は、前記フィードバック量(r)に依存して適合化される、
請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記閉ループ制御回路において処理された量のうちの少なくとも1つの量が、評価装置(30)に供給され、
前記評価装置(30)により、前記少なくとも1つの量から、前記バラスト道床(6)に対する特性量が導出される、
請求項
5乃至
10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の、バラスト道床内の枕木の下方を突き固めるためのタンピングユニットを備えた軌道造成機であって、ユニットフレーム上に高さ調整可能に支持されたツール支持体を含み、ツール支持体上に、タンピングツールが相互にスクイーズ運動可能に配置されており、ツール支持体が、開ループ制御装置により駆動制御される高さ調整駆動部に結合されている、軌道造成機に関する。また、本発明は、軌道造成機を動作させるための、対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
タンピングユニットを備えた軌道造成機は、所望の軌道状態を形成又は安定させるために用いられる。この場合、軌道造成機は、軌道に沿って走行し、枕木とレールとから構成される軌道格子を、上昇/調整ユニットを用いて目標高さまで上昇させる。タンピングユニットを用いて枕木の下方を突き固めることにより、新たな軌道状態が固定される。このためにタンピングツール(タンピングピック)を振動させ、枕木の両側でバラスト道床内へ下降させ、相互にスクイーズ運動させて、枕木下方のバラストを締め固める。次に、タンピングツールを再びバラスト道床から上昇させ、相互に離隔するように移動させる。タンピングユニットは、次の枕木の上方に位置決めされ、新たなタンピングサイクルが開始される。
【0003】
タンピングツールの下降及び上昇に関しては、種々の解決策が知られている。例えば、欧州特許出願公開第1233108号明細書には、油圧シリンダ及び梃子装置がユニットフレームに結合されたタンピングユニットの昇降機構が記載されている。欧州特許出願公開第0698687号明細書からは、複数のツール支持体を有するタンピングユニットが知られている。ここでは、下降及び上昇を個別に行うため、個別の高さ調整駆動部が各ツール支持体に対応付けられている。
【0004】
通常、下降運動の設定に関して、操作者は、バラスト道床の性質を考慮して3つまでの速度レベルから選択を行うことができる。新規の軌道状態においては、通常、損耗及び環境の影響により硬化したバラスト道床の場合に比較して、より低速で下降が実行される。目的は、可能な限り一定の下降時間で迅速に所定の侵入深さに到達することにある。適当な設定は、手動設定により、また操作者の経験に基づいて、行われる。
【0005】
墺国特許出願公開第519195号明細書には、タンピングツールの下降運動に垂直振動を重畳させて、硬化したバラスト道床へのタンピングツールの差し込みを容易にするタンピングユニットが開示されている。しかしながら、この場合、タンピングユニットが固定されている機械フレームにも垂直方向の振動が伝達されるため、軌道造成機には、付加的な負荷がかかることを甘受しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第1233108号明細書
【文献】特許出願公開第0698687号明細書
【文献】墺国特許出願公開第519195号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明の基礎とする課題は、タンピングユニットのタンピングツールをバラスト道床内に最適な方法により下降させることができるように、冒頭に述べたタイプの軌道造成機を発展させることにある。また、適当に最適化された、軌道造成機を動作させるための、対応する方法についても述べる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、これらの課題は、請求項1及び6の特徴により解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項から得られる。
【0009】
本発明によれば、ツール支持体の下降運動を閉ループ制御するために、コントローラと、高さ調整駆動部のための調整装置と、下降運動を検出するための測定装置とを備えた、閉ループ制御回路が設けられている。これにより、下降運動に関して最適なシーケンスを提供することが可能となる。これは、タンピングピックがバラスト道床に衝突する際の加速度及び差し込み速度、並びに、侵入深さに到達する際の制動特性に関連する。上記閉ループ制御により、下降運動の各段階を相互に調整することができるため、全体として、最短の下降時間、及び、軌道造成機とバラスト道床との保護が同時に達成される。
【0010】
有利には、測定装置は、ツール支持体の高さ位置を検出するための位置センサを含む。閉ループ制御回路の適当な制御量は、容易に設定することができ、安定した閉ループ制御につながる。代替的に又は付加的に、ツール支持体又はタンピングツールの速度又は加速度を検出するものとしてもよい。
【0011】
さらに閉ループ制御回路の基準量を適合化するために、コントローラの上流にパイロット制御部又はプレフィルタが接続されていると有利である。この場合、パイロット制御部又はプレフィルタは、調整装置の最適化された駆動制御のために、調整パラメータを備えた数学的モデルを用いて、偏差を最小限に抑制した下降運動の所定のシーケンスに従う。
【0012】
本発明の有利な実施形態において、高さ調整駆動部は、油圧弁を有する油圧シリンダを調整装置として含む。油圧シリンダと油圧弁とにより、サイクルタイムが短く、大きい力が付与された下降運動及び上昇運動の最適な閉ループ制御が可能となる。
【0013】
油圧弁は、この場合、パイロット制御される制御弁として形成されていると好都合である。この場合、パイロット制御弁の極めて動的でかつ高精度な駆動により、十分に大きい流量で主要段の最適な閉ループ制御が可能となる。代替として、サーボ弁や比例弁を用いるものとしてもよい。
【0014】
上述の軌道造成機を用いて、軌道の、バラスト道床内の枕木の下方を突き固めるための本発明に係る方法において、タンピングユニットは、軌道のタンピング位置の上方に位置決めされ、ツール支持体は、バラスト道床内に差し込まれるタンピングツールと共に高さ調整駆動部を介して下降し、ここで、下降運動は、閉ループ制御される運動量を用いて実行される。
【0015】
下降運動を閉ループ制御する際に制御偏差を最小化するためには、コントローラの上流に接続されたパイロット制御部により、又は、コントローラの上流に接続されたプレフィルタにより、基準量が変更されると有利である。
【0016】
この方法の有利な発展形態によれば、タンピングサイクルにおいて発生する制御差が計算ユニットに供給され、この計算ユニットにおいて、制御差に基づき反復学習制御アルゴリズムを用いて、パイロット制御部又はプレフィルタの少なくとも1つのパラメータが適合化される。これにより、バラスト道床の状態変化に対して反応が自動的に惹起され、後続のタンピングサイクルに対する制御介入が最小限に抑制される。
【0017】
好都合なことに、ツール支持体の下降運動は、位置センサにより検出される。この位置センサは、タンピングユニットに配置されており、又は、軌道造成機上において下降運動の非接触検出が可能な他の位置に配置されている。
【0018】
安定した閉ループ制御を行うためには、下降時間に依存する基準量が閉ループ制御回路に対して設定されると有利である。その場合、下降運動の所定のシーケンスとして、時間に対する関数が生成可能である。
【0019】
この場合、下降時間に関する下降距離が基準量として閉ループ制御回路に対して設定されると有意である。適当な時間‐距離曲線において、所望の制動特性と設定された侵入深さとを直接的に設定することができる。
【0020】
有利な発展形態によれば、目標値特性が、目標値設定回路により設定される。これにより、基準量を自動的に設定することができる。例えば、目標値設定回路には、異なる目標値特性が記憶されており、1つの軌道パラメータ又は複数のパラメータを想定した選択がインテリジェント開ループ制御により行われる。この場合、パラメータ又は目標値特性の設定を操作者が行うことも有意である。
【0021】
さらに、目標値発生器として形成された目標値設定回路に、閉ループ制御回路のフィードバック量が供給され、設定された下降運動がフィードバック量に依存して適合化されることが有利である。フィードバック量は、この場合、測定された制御量であり、これにより、バラスト道床の性質を推測することができる。例えば、バラスト道床が強く締め固められている場合には、閉ループ制御がなされても、もはや所定の侵入深さに到達することができなくなることがある。この場合、目標値発生器は、より高い侵入速度での下降運動を閉ループ制御回路に対して設定する。このようにして、調整装置の使用可能な調整範囲を常に最大限に利用することができる。
【0022】
また、改良された方法によれば、閉ループ制御回路において処理された量のうちの少なくとも1つの量が評価装置に供給され、かつ、評価装置により、少なくとも1つの量からバラスト道床に対する特性量が導出される。特に、調整量、フィードバック量又は制御差から、バラスト道床の状態特性量を生じさせるバラスト道床の侵入挙動を推測することができる。
【0023】
本発明を以下に例示すると共に、添付図面を参照しながら説明する。各図は、概略的な図示である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図5】プレフィルタ又はパイロット制御部を備えた閉ループ制御回路を示す図である。
【
図6】適合化可能なプレフィルタ又は適合化可能なパイロット制御部を備えた閉ループ制御回路を示す図である。
【
図7】変更された基準量特性を生成するための目標値発生器を備えた閉ループ制御回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態の説明
図1に示すタンピングユニット1は、軌道5のレール4上を走行可能な軌道造成機の機械フレーム3に固定されたユニットフレーム2を含む。タンピングユニット1は、軌道5のレール4が固定された枕木7が敷設されたバラスト道床6をタンピングするのに用いられる。ユニットフレーム2において、ツール支持体8は、高さ調整可能に案内されており、下降運動9又は上昇運動は、対応する高さ調整駆動部10により実行される。
【0026】
ツール支持体8上には、2つのスクイーズ駆動部12が連結された回動駆動部11が配置されている。各スクイーズ駆動部12は、回動アーム13に連結されている。両回動アーム13は、それぞれ水平回動軸14を中心として相互に運動可能にツール支持体8に支持されており、タンピングツール15(タンピングピック)を有する。駆動部10,11,12は、開ループ制御装置16により駆動制御される。
【0027】
タンピング工程において、タンピングツール15(ピックプレート)の自由端は、バラスト道床6内に枕木の下縁部下方まで差し込まれ、当該枕木7下のバラストを締め固める。
図1は、このようなタンピング工程時のタンピングユニット1を示す。続いて、タンピングツール15はリセットされ、バラスト道床6から引き上げられる。タンピングユニット1は、次の枕木7まで移動され、新たなタンピングサイクルが下降運動9から開始される。
【0028】
最適化された下降運動9により、タンピングツール15の所望の侵入深さ17には可能な限り迅速に到達するが、発生する力が軌道造成機に対して障害的な負荷を惹起することはない。また、侵入深さ17は、枕木7及びバラスト道床6の下に位置する路盤のいずれをも損傷しないように正確に到達し、それを超えないようにする必要がある。
【0029】
本発明によれば、この最適化された下降運動9は、コントローラ18と、高さ調整駆動部10のための調整装置19と、下降運動9を検出するための測定装置20(
図2)とを有する、軌道造成機に設けられた閉ループ制御回路により達成される。下降運動9のシーケンスを設定するために、例えば目標値設定回路21は、
図3に示す制御量xの目標値特性を供給する。この場合、目標値設定回路21には、複数の目標値特性が記憶されているものとするとよい。少なくとも1つの軌道パラメータを想定したインテリジェント制御により、又は、操作者により、選択が実行される。目標値設定回路21の出力は、閉ループ制御回路の基準量wとして用いられる。制御量xは、例えばツール支持体8の下降距離sである。また、ツール支持体8の速度及び/又は加速度を制御量xとして用いることもできる。
【0030】
コントローラ18は、閉ループ制御素子22を含み、コントローラ出力値yを供給し、この出力値が、調整量uを生成するために補正部23に供給される。調整装置19としては、例えば、高さ調整駆動部10の油圧シリンダのための、パイロット制御される制御弁が用いられる。この場合、補正部23は、このパイロット制御される制御弁の設定駆動部となり、制御弁の変位量を調整量uとして開ループ制御する。ここでは、閉ループ制御区間24は、調整素子25として、制御弁の弁本体と下降運動9に影響を与える他の全ての構成要素とを含む。これには、高さ調整駆動部10の油圧シリンダと、タンピングユニット1の全ての下降構成要素と、軌道5の加工領域の構成要素とが含まれる。特に、ここでは、下降部材の質量とバラスト道床6の差し込み抵抗とが関与する。
【0031】
閉ループ制御素子22が出力するコントローラ出力量yは、フィードバック量rを除いた基準量wから発生する制御差eに基づく。この場合、フィードバック量rは、測定装置20により検出された制御量xである。具体的には、コントローラ18は、目標値(基準量wの数値)と実際値(測定された制御量xの数値)との差分から数値としての調整値(コントローラ出力量yの数値)を決定し、この調整値が補正部23に対して設定される。
【0032】
閉ループ制御区間24には障害量zが作用している。これは、特に、バラスト道床6の性質の変化により差し込み抵抗が変化するということである。差し込み抵抗が変化することによって生じた制御量xの障害から、制御差eが発生する。続いてコントローラ18及び補正部23から提供される調整量uにより、高さ調整駆動部10の駆動制御が変更され、これにより、当該障害が相殺される。
【0033】
例えば、バラスト道床6へのタンピングツール15の差し込みが速すぎる場合、高さ調整駆動部10からツール支持体8に作用する力は、低減させられる。差し込みが過度に緩慢である場合、この力は、増加させられる。このように、下降運動9は、目標からの偏差がある場合、常に所定の基準量wに再調整される。これにより、タンピングツール15は、最適な速度でバラスト道床6内に差し込み、正確に所望の差し込み深さ17に到達する。また、差し込み時間は、個々のタンピングサイクルにおいて一定に維持される。
【0034】
閉ループ制御への介入を最小限にするために、基準量wに対してパイロット制御部又はプレフィルタ26を設けることは有意である(
図5)。この措置の目的は、閉ループ制御区間24の状況を予測する変更された基準量w’である。例えば、
図4に示すように、制御量xとして設定された時間tに関する下降距離sに関し、変更された曲線特性が設定される。続いて、タンピングユニット1と加工済軌道5とからなるシステムが、ほとんど制御介入なしで、この変更された基準量設定に従う。
【0035】
この場合、実線で示された特性は、締固めが軽度に締め固められたバラストを有する柔軟なバラスト道床6を対象とする。その他の特性は、極めて強く締め固められたバラスト道床6のための、点線で示された特性までをも含む、さらに強く締め固められたバラスト道床6のための設定に対応する。ここで、所定の時間内に所望の差し込み深さ17に到達するためには、差し込みの開始段階でより高い速度が要求される。
【0036】
他の改良は、
図6に示すように、パイロット制御部又はプレフィルタ26のパラメータ適合化を含む。このために計算ユニット27が設けられており、この計算ユニットには、タンピングサイクルkにおいて発生する制御差e
kが供給されている。この制御差e
kは、フィードバック量r
kを減算した変更されていない基準量w
kから発生する。
【0037】
計算ユニット27には、いわゆる反復学習制御アルゴリズム28がインストールされている。これは、制御差ekと当該タンピングサイクルkの変更された基準量w’kとを用いて、予め次のタンピングサイクルk+1に関して、最適化され変更された基準量w’k+1を導出するために用いられる。この計算には、過去の複数のタンピングサイクルを、その際に発生する制御差eと共に用いることもできる。
【0038】
最適化され変更された基準量w’k+1を使用することができるように、次のステップにおいて、パイロット制御部又はプレフィルタ26の調整パラメータが変更される。このために、計算ユニット27には、適当な調整アルゴリズム29がインストールされている。変更されたパイロット制御部又は変更されたプレフィルタ26は、制御動作を軽減し、これにより、閉ループ制御が全体としてより安定したものになる。反復学習制御アルゴリズム28の初期条件は、操作者により設定され、又は、インテリジェント制御により推定がなされる。続いて、パラメータの反復適合化が、この設定から開始される。簡易な一変更例においては、常に同様の初期条件から開始される。
【0039】
他の改良形態に関し、
図7を参照して説明する。ここで、目標値設定回路21は、目標値発生器として形成されている。この目標値発生器は、定角軌道生成部と同様に、下降運動9のシーケンスを、例えば、時間tに関する下降距離sの特性として生成する。目標値発生器は、このようにして、コントローラ18即ちパイロット制御部又はプレフィルタ26に基準量wを供給する。また、目標値発生器には、基準量wからの偏差を検出するために、フィードバック量rが供給される。ここでも、初期条件は、操作者により、又は、想定される軌道パラメータに基づいてインテリジェント制御部により、設定される。
【0040】
偏差の増加は、生成された基準量wへの到達がもはや不可能であるために閉ループ制御がその限界に達していることを示す。偏差がもはや無視し得ない程度に達すると、目標値発生器は、下降運動9のための新たな設定を生成する。例えば、許容し得る偏差の限界値が設定され、この限界値に到達すると、目標値発生器が時間tに関する下降距離sの新たな特性を生成する。このようにして、バラスト道床6の性質の変化に対して、閉ループ制御の安定性及び精度に影響することなく、自動的に応動がなされる。
【0041】
また、目標値発生器を作業配備の開始時に用いて、下降運動9の開始シーケンスを設定するものとしてもよい。この場合、閉ループ制御のための設定を支配的な条件に適合化するために、複数の試験タンピングを実施すると好都合である。
【0042】
閉ループ制御の電子的構成要素、特に目標値設定回路21、コントローラ18、及び、場合により計算ユニット27は、別個の電子回路に設けられており、又は、開ループ制御装置16に組み込まれている。測定装置20は、例えば、高さ調整駆動部10に直接的に配置され、この場合は、変位測定部が組み込まれた油圧シリンダが有意である。
【0043】
また、拡張された実施形態においては、バラスト道床6の特性量を導出するために、閉ループ制御回路の少なくとも1つの量u,e,rが供給されている評価装置30が設けられている。このような特性量は、例えば、新たなバラストであるか、又は、強く締め固められた、汚れたバラストであるかを示す。