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特許7389137深部組織層における医療機器の超音波画像診断用のエコー源性コーティング
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  • 特許-深部組織層における医療機器の超音波画像診断用のエコー源性コーティング 図1
  • 特許-深部組織層における医療機器の超音波画像診断用のエコー源性コーティング 図2
  • 特許-深部組織層における医療機器の超音波画像診断用のエコー源性コーティング 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】深部組織層における医療機器の超音波画像診断用のエコー源性コーティング
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021557884
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 NL2020050206
(87)【国際公開番号】W WO2020204706
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】2022839
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515117774
【氏名又は名称】エンキャプソン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リー・アイレス
(72)【発明者】
【氏名】イユアン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス・フィリップ・ブリーク
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-503315(JP,A)
【文献】特表2005-511144(JP,A)
【文献】特開2011-115601(JP,A)
【文献】国際公開第2012/148265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリマーマトリックス、及び
(ii)サイズが少なくとも10μm~最大250μmの粒径を有する固体の超音波反射性微粒子の一定量
を含むエコー源性コーティング組成物でコーティングされた、体内に5cm超の深度で挿入される医療機器であって、
医療機器上の前記微粒子のD50で表される粒径と表面密度との間の関係が、以下:
【表1】
のとおりである、医療機器。
【請求項2】
前記のD50で表される粒径と表面密度との間の関係が、以下:
【表2】
のとおりである、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記のD50で表される粒径と表面密度との間の関係が、以下:
【表3】
のとおりである、請求項1に記載の医療機器。
【請求項4】
ポリマー材料が、ポリ(エーテルスルホン)、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエポキシド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリエステル、フッ素化ポリオレフィン、ポリスチレン及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
微粒子が球形である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項6】
微粒子がガラス製である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項7】
10cm超の走査深度で使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項8】
5cm超の走査深度で使用するための請求項1~6のいずれか一項に記載の医療機器及びコンベックスプローブを含むエコー源性アセンブリ。
【請求項9】
深部組織層における超音波イメージングのために使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深部組織層における視界を改善するために医療機器に適用されうるエコー源性コーティングに関する。また、エコー源性コーティングを含む深部組織用医療機器にも関する。その上、超音波変換器を用いて5cm超の深度でそのような医療機器の位置を決めるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用超音波変換器(プローブとしても知られ、どちらの表現も区別なく用いられる)は、超音波の適用に基づく診断用イメージング技術の一部として使用されてきた。例えば、超音波検査において、例えば、病因を見つけるために、変換器を使用して体内構造の画像を作成する。また、変換器は、妊婦の検査にも頻繁に使用される。超音波は、人間に聞こえる周波数より高い周波数の音波(20,000Hz超)を指す。ソノグラムとしても知られる超音波画像は、超音波変換器を使用して超音波のパルスを組織内に送ることによって作製される。超音波パルスは、異なる反射特性を有する組織に響いてこだまし、画像として記録され表示される。この原理は、挿入したデバイスの位置付け又は視覚化のためにも用いてよい。
【0003】
材料のエコー反射性を強化するためのコーティングは、医療機器に特に有用であり、開業医は、デバイスを体内に挿入するとき、超音波イメージングによってデバイスを位置付ける又は視覚化することを望む。これらのコーティングは、実質上、任意の構成のデバイスのいずれにも適用可能である。
【0004】
WO2014070012及びWO2015166081から、固体微粒子を含むエコー源性コーティングが知られている。ノイズ比に対して十分なコントラストを得るために、特定の直径範囲を有する小さい微粒子が、選択された直径範囲に関連した特定の表面密度で選択された。本発明は、「反射性」又は「エコー反射性」(変換器に戻る超音波信号の量)と「超音波視認性」(超音波誘導手順を実施する間に超音波スクリーンで観察される写真)との間に矛盾があるという洞察に関する。より高い又は最適な反射性は、最適な超音波視認性と同じではない。本発明者らは、医療機器の輪郭及び形状の良好な視覚的描画は、単に反射性を強化又は最適化することによって実現されるものではないことを発見した。過剰の信号又は明るすぎる写真は、特にデバイスを組織内で使用するとき、過度な散乱及び不透明性、ボヤケ及び歪んだ画像をもたらすため、反生産性になる。
【0005】
医療機器のコーティングは、コーティングされた医療機器の表面上の前記微粒子の密度45~450粒子/mm2で、10~45μmの直径を有する微粒子を含んでもよいと述べられている。前記文献中には、より大きなサイズ、すなわち45~53μmの粒子が、試験した密度の全域にわたるマーカーバンドの幅の過大評価につながることが判明し、臨床用途には望ましくなくなることが述べられていた。直径38~45μmの微粒子での例も提供され、これは最大で約350粒子/mm2の表面密度に使用された。
【0006】
驚くべきことに、WO2014070012及びWO2015166081のコーティングは、結果的には、より深い組織構造、すなわち体内への深度が5cm以上の構造における使用にはあまり適さなくなった。深度が増すに従い、画像解像度は低くなる。しかしながら、深部組織の視認性は必要とされる(例えば、これらに限定されないが、肝生検、腎生検及び腫瘍焼灼療法)。また、5cm超、10cm超又は更には15cm超の走査深度が必要とされる肥満の患者にも深部組織の視認性が必要とされる。したがって、深部組織の超音波検出に使用できるエコー源性コーティングが要求されている。その上、前記エコー源性コーティングは、医療機器を体内に挿入するとき、問題になる及び/又は不快をもたらす医療機器にコーティングを接着させずに、容易に適用可能でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2014070012
【文献】WO2015166081
【文献】米国特許第5,289,831号
【文献】米国特許第5,921,933号
【文献】米国特許第6,506,156号
【文献】WO2007/089761
【非特許文献】
【0008】
【文献】Ultrasound in Medicine and Biology、第32巻、8号、1247~1255頁、2006年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、新規のコーティング組成物及び表面の近くで使用される医療機器にはあまり適さない又は更には不適切と考えられていたコーティング組成物を有する医療機器を深部組織に使用するとき、視認性の改善を実現できることが発見された。したがって、5cm超、10cm超又は更には15cm超の走査深度で深部組織構造中を臨床超音波診断する間に医療機器と組み合わせて使用するとき、改善された超音波視認性を有する、請求項1に記載のエコー源性コーティングを提供する。また、本発明が提供するコーティングを有する医療機器も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】球状微粒子、ミクロスフェアでコーティングされたポリウレタン管の超音波画像と共に、対象の選択領域(コーティングされたPU管)の平均ピクセル強度の測定値を示す図である。
図2】球状微粒子、ミクロスフェアでコーティングされたポリウレタン管の超音波画像と共に、背景の平均ピクセル強度の測定値を示す図である。
図3】種々のコーティングでコーティングされたポリウレタン管の超音波画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「医療機器」は、本明細書において、動物又はヒトの体内に使用できるあらゆる種類のデバイスとして定義される。医療機器は、好ましくは、体内に挿入又は移植することができる。好ましくは、そのような医療機器は、外科手術、治療及び/又は診断に使用される機器である。外科手術用機器は、当該技術分野において周知である。医療機器の非限定例としては、(バルーン)カテーテル、針、ステント、カニューレ、気管切開刀、内視鏡、拡張器、チューブ、挿入器、マーカー、スタイレット、スネア、血管形成術用デバイス、トロカール、ガイドワイヤー及び鉗子が挙げられる。したがって、本発明による医療機器は、好ましくは、カテーテル、針、ステント、カニューレ、気管切開刀、内視鏡、拡張器、チューブ、挿入器、マーカー、スタイレット、スネア、血管形成術用デバイス、基準装置、トロカール及び鉗子からなる群から選択される。
【0012】
深部組織は、少なくとも5cm、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは少なくとも15cmの走査深度における構造であると考えられる。例えば、肥満患者では、10~15cmの深度でデバイスを体内に挿入するとき、超音波イメージングによってデバイスを位置付ける又は視覚化する必要がありうる。ほとんどの線形変換器は3~10cm又は更にそれを下回る深度で動作することから、深部組織のソノグラムは、5~30cmの深度範囲で動作するコンベックス変換器で作製することが多い。
【0013】
本明細書では、超音波検出のためのコーティングは、ヒト又は動物の体が耐えられ、超音波の散乱によって視覚化できる微粒子を含む任意のコーティングを含む。典型的には、そのようなコーティングは、無毒性、低アレルギー性、安定である生体適合性材料を含む。
【0014】
超音波(ultrasound wave)(「超音波信号」又は「超音波(ultrasound)」とも呼ばれる)は、正常なヒトの聴覚の可聴範囲を超える周波数を有する音圧波として定義される。典型的には、超音波は、20kHz超の周波数を有する。医療機器のイメージングの場合、2MHz~50MHzの周波数を有する超音波が使用されることが好ましい。
【0015】
本明細書では、用語「超音波画像」は、超音波を使用した物体のあらゆる種類の視覚化を意味する。典型的には、反射超音波は電気パルスに変換され、この電気パルスが処理され、デジタル画像に変形される。そのような画像は、超音波画像という用語に包含される。
【0016】
実用的に使用するには250μm超の粒子は大きすぎるため(接着性が問題となり、コーティングが患者にとって「粗い」ように思われうる)、「微粒子」は、本明細書では、250μm未満のサイズの粒子として定義される。その上、微粒子は10μm超のサイズを有する。この値を下回ると、微粒子の視認性が、実用的に使用するには不十分になる。微粒子は、規則的な形状(例えば、球形、楕円形若しくは立方体)又は不規則的な形状等、どのような形状をしていてもよい。好ましくは、形状が本質的に球形のミクロスフェアである。用語「本質的に球形の」は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の粒子において表面における中心と任意の点との距離の差が互いに50%以下、より好ましくは30%以下である限り、微粒子は完全に球形である必要はないという事実を反映している。ガスが充填された微粒子を使用してもよいが、好ましくは、微粒子は固体である。
【0017】
エコー源性微粒子は、本明細書では、超音波を反射できる微粒子として定義される。
【0018】
単層とも呼ばれる単分子層は、本明細書では、デバイスの表面上の粒子の一粒子厚層として定義され、デバイスの表面に対して垂直の軸上に平均して一粒子のみしか存在しないことを意味する。デバイスのコーティング面の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%が、粒子の単層でコーティングされている限り、層厚のいくつかのバリエーションは許容される。
【0019】
中央値は、母集団の半分がこの値より上に属し、半分がこの値より下に属する、値として定義される。D50は、微粒子の50%がこの直径より大きな粒径であり、50%がこの直径より小さい、という半分の体積配分に基づいて、粒径分布を分割するサイズ(μm)である。
【0020】
所与の範囲間の直径を有する微粒子は、本明細書では、直径が列挙した範囲内(この範囲の上値を含む)にある直径の微粒子として定義される。例えば、53~63μmの直径を有する微粒子は、53μm超の直径、63μmの直径、又はこの範囲内のいずれかにおける値の直径を有しうる。非球形粒子の直径は、粒子全体を封入できる最小球の直径として定義される。
【0021】
コントラスト測定は、医療機器の超音波視認性を評価する定量的方法である。この方法は、医療機器の平均ピクセル強度を、周囲の背景画像の平均ピクセル強度に対して比較する。コーティング領域のコントラスト値を使用して、種々のコーティングの超音波視認性を定量的に評価する。ピクセル強度は、米国国立衛生研究所及びLaboratory for Optical and Computational Instrumentation(ウィスコンシン大学LOCI)で開発されたJavaベースの画像処理プログラムImageJ又は同様の画像処理プログラムを使用して測定される。画質又は「コントラスト」が25未満の場合、デバイスは、臨床用途にとって十分には視認可能でない。
【0022】
記録された画像から、コントラストは、以下の式:
コントラスト=PROI-Pbkg
(式中、
PROI=対象の領域の平均ピクセル強度
Pbkg=周囲の背景の平均ピクセル強度)
に従って、コーティングされた物体の平均ピクセル強度と周囲の背景で得られた平均ピクル強度とを比較することによって決定される。
【0023】
コントラストが10~50の得られた超音波画像の例を図3に示す。図3で確認できるように、良好な超音波視認性を実現するには、最小コントラスト25が必要である。30又は更には40のコントラストを有することが好ましい。
【0024】
デバイスを体内に挿入したとき、超音波イメージングによってデバイスを位置付ける又は視覚化するために、超音波プローブを使用する。線形超音波プローブに加えて、コンベックス(湾曲)型プローブ並びに位相(セクター)型プローブも知られている。コンベックスプローブは、臓器の診断、経膣及び経直腸用途並びに腹部用途に使用される。したがって、コンベックスプローブは、深部組織構造、例えば少なくとも5cmの深度の組織の検査に頻繁に使用される。圧電性結晶配列は曲線であり、ビームはコンベックスである。曲率半径は、5~80mmで変動しうる。コンベックスプローブは、典型的には2.5~7.5MHzの低い周波数を用いる。本発明のコーティング及び新規のコーティングを含む医療機器を、コンベックスプローブを使用して正確に位置付けることができる。したがって、本発明は、超音波プローブ、好ましくはコンベックスプローブを使用して、超音波イメージングにより、体内の深部組織構造に挿入されるデバイスを位置付ける又は視覚化するための方法も含む。線形超音波プローブも使用できることに留意されたい。また、コーティングが、体内の深部組織構造に特に好適であるが、より浅い組織構造にも使用できることにも留意されたい。
【0025】
本発明において使用される微粒子の粒径分布は、粒子の直径が少なくとも10μm~最大250μmである限り、比較的広いことがある。本発明者らは、微粒子の直径と表面密度(最小及び最大)との間には非直線関係があることを発見した。表面密度の下限未満では、得られる視認性は不十分であり、コーティングされた医療機器の正確な定位に悪影響を及ぼす。上限を超えると、医療機器の輪郭をぼやけさせ不明確にする過剰曝露等、さまざまな問題が生じ、同様に、コーティングされた医療機器の正確な定位に悪影響を与える。上限を超えると、医療機器へのコーティングの接着性及びコーティングされた医療機器の摩損性に関連する問題がある。
【0026】
上記の限度内で、深部組織構造の視認性の改善のためには、D50で表される粒径と表面密度との間の関係は、以下のとおりである(少なくとも25のコントラストの場合)と判断されている:
【0027】
【表1】
【0028】
より好ましくは、D50で表される粒径と表面密度との間の関係は、以下のとおりである(少なくとも30のコントラストの場合):
【0029】
【表2】
【0030】
更により好ましくは、D50で表される粒径と表面密度との間の関係は、以下のとおりである(少なくとも40のコントラストの場合):
【0031】
【表3】
【0032】
各条件は、全微粒子の50(体積)%が下限10μmとD50の実測値との間の直径を有し、一方で微粒子の残りの50%がD50の実測値と上限250μmとの間の直径を有する、微粒子に関係する。したがって、分布は比較的広くなりうる。全微粒子の少なくとも60(体積)%がD50±5μmの直径を有する標準的な直径分布、好ましくは狭い直径分布を有する微粒子は、非常に好適に使用できる。例えば、微粒子は、全微粒子の少なくとも70(体積)%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%がD50±5μmの直径を有する、非常に狭い直径分布で使用してもよい。或いは、微粒子の「ギャップグレード」又はマルチモーダル選択を用いてもよく、それによって種々の条件の「通常の」好適なグレードを混合し、それによってより複雑な直径分布を作り出す。これらのギャップグレード又はマルチモーダルグレードは、これらの複合グレードのD50に対して上記の表面密度で使用してよい。粒径53μm<D50≦63μmは、53μm超~最大63μm(63μmも含む)以下の粒径、例えば54μm~最大63μm(63μmも含む)以下の粒径(54μm≦D50≦63μm)を含意する。
【0033】
驚くべきことに、上記の部分的範囲内の微粒子の選択は、滑らかなコーティングももたらし、それによって粒子の二層の形成によって生じると考えられる摩耗及び接着の問題が回避される。その上、二層は、患者には「粗い」ように見えることがあり、医療機器へのコーティングの接着に影響しうる。二層を有するコーティングが弯曲している場合、コーティングは亀裂が入って剥離する、又は体内に挿入される場合、コーティングの接着性が損なわれ、コーティングは摩耗し、デバイスの表面は薄片になってはげることになる。これは明らかに回避される必要がある。
【0034】
本発明による医療機器は、超音波によって視認可能なさまざまな種類の微粒子でコーティングされていてもよい。そのような微粒子は、当該技術分野において公知である。典型的には、前記微粒子は、セラミック、ガラス、シリケート、金属及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含む。そのような材料は、一般的なコーティングマトリックス中で最適な超音波応答を提供する。
【0035】
好ましくは、前記微粒子は、ガラス、より好ましくは石英系ガラス、最も好ましくはソーダ石灰ガラスから作製される。そのような粒子は、高い音響インピーダンスを有し、したがって一般的なコーティングマトリックス中で良好な超音波視認性を有する。その上、それらは、他の材料の微粒子と比較して比較的容易に製造される。
【0036】
上述する微粒子は、医療機器及び微粒子の両方に接着するコーティングマトリックスに埋め込まれる必要がある。原則として、微粒子及び医療機器の両方に接着できる任意のコーティングマトリックスを使用することができる。コーティングマトリックスは、インビボの使用に適するべきである。そのようなコーティングは、好ましくは、無毒性、低アレルギー性で、安定である。好ましくは、コーティングマトリックスは、ポリマー材料を含む。
【0037】
ポリマー材料としては、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及びブロックコポリマーを含めたさまざまなポリマー及びポリマーの組み合わせを使用することができる。好ましくは、ポリマー材料は、ポリ(エーテルスルホン)、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエポキシド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリエステル、フッ素化ポリオレフィン、ポリスチレン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0038】
好ましくは、前記医療機器は、カテーテル、針、ステント、カニューレ、気管切開刀、内視鏡、拡張器、チューブ、挿入器、マーカー、スタイレット、スネア、血管形成術用デバイス、基準装置、トロカール及び鉗子からなる群から選択される。これらの医療機器は、プラスチック又は金属面を含んでよい。
【0039】
エコー源性コーティングを生成する方法は周知である。医療機器は、例えば、浸漬被覆、吹き付け塗装、パッド印刷、ローラー塗布、印刷、塗装又はインクジェット印刷により微粒子でコーティングされうる。参考文献としては、例えば、米国特許第5,289,831号、同第5,921,933号、及び同第6,506,156号、国際特許出願WO2007/089761並びにエコー源性粒子及びコーティングを調製するための方法を記載しているUltrasound in Medicine and Biology、第32巻、8号、1247~1255頁、2006年がある。そのようなコーティングは、好ましくは、生体適合性、無毒性、低アレルギー性で、安定である。
【0040】
本発明は、5cmより深い深度で体内に挿入される医療機器におけるエコー源性コーティング組成物の使用であって、新規のエコー源性コーティング組成物を含む、使用を更に提供する。また、新規のエコー源性コーティング組成物を含む、5cm超、好ましくは10cm超、より好ましくは15cm超の走査深度で使用するための医療機器も提供する。その上、本発明は、5cm超、好ましくは10cm超、より好ましくは15cm超の走査深度で医療機器を超音波検出するための方法であって、本発明のエコー源性コーティング組成物を有する医療機器を提供することによる、方法を提供する。特に魅力的なのは、線形又はコンベックスプローブ、好ましくはコンベックスプローブを使用する方法である。コンベックスプローブは、好ましくは、5~80mm、より好ましくは20~65mmの曲率半径を有する。適宜、周波数2.5~7.5MHzの超音波で動作するコンベックスプローブを使用する。また、本発明は、本発明のエコー源性コーティング組成物を含む5cm超、好ましくは10cm超、より好ましくは15cm超の走査深度で使用するための医療機器及びコンベックスプローブを含むエコー源性アセンブリも提供する。エコー源性アセンブリ中、医療機器のコーティングは、コンベックスプローブによる定位に特異的に適合される。
【0041】
本発明は、図面を参照することによって、よりよく理解することができる。
【0042】
図1及び図2は、ピクセル強度の測定の例を示す。図1中、ピクセル強度の測定は、対象の領域(Proi)で実施される。図2中、ピクセル強度の測定は、背景(Pbkg)で実施される。視認性は、先に挙げた式(コントラスト= Proi- Pbkg)に基づいて、コーティングされたPU管をエコー源性ゲル中に、8cm、45°で位置し、そこで線形プローブを有するEsaote Mylab One touchを使用してコーティングされた管の超音波画像を得た場合のコントラストによって決定される。走査周波数は10MHzであり、輝度利得は64%だった。
【0043】
図3は、10~60の測定コントラストでのコーティング領域の超音波画像を示す。より高いコントラストの画像は、より良好な視認性が得られることは明らかである。臨床医が、コーティングされたデバイスを正確に定位できるために必要とされる最小コントラストは25である。
【実施例
【0044】
コントラスト測定は、浸漬塗布器を使用して微粒子を含有するコーティング薄膜が適用されたポリウレタン管で実施した。PU管上の微粒子の表面密度は、顕微鏡下で1mm2当たりの微粒子の数をカウントすることによって決定した。コントラスト測定は、10MHzで動作する線形配列超音波プローブを使用して、試験媒体である超音波ファントム中で実施した。管を、超音波プローブに対して約45°の角度で挿入した。ポリウレタン管の遠位末端を、試験媒体中、8cmの深度で配置した。
【0045】
9つの粒径条件のそれぞれにおいて、表面上の粒子の数を増やして、一連のコーティングされたPU管を調製した。各コーティングされたPU管の超音波コントラストを、上記の方法に従って測定した。データをTable 1(表4)に示す。表中、少なくとも25、少なくとも30又は更には少なくとも40のコントラストの場合の1平方ミリメートル当たりの微粒子の表面密度が、挙げられる。その上、単層が依然として視認可能であり、それを超えると二層が形成される上限が挙げられる。接着性及び摩損性の問題が回避されるため、単層を有すると知られる上限に近い上限が好ましい。
【0046】
【表4】
図1
図2
図3