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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】多重反射飛行時間型質量分析計
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/40 20060101AFI20231121BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20231121BHJP
【FI】
H01J49/40 600
H01J49/40 500
H01J49/40 300
G01N27/62 E
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063352
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2019560264の分割
【原出願日】2018-05-04
(65)【公開番号】P2022091970
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】1707208.3
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504142097
【氏名又は名称】マイクロマス ユーケー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592071853
【氏名又は名称】レコ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】LECO CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ブライアン・ホイエス
(72)【発明者】
【氏名】アナトリー・ヴェレンチコフ
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0098533(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102939638(CN,A)
【文献】国際公開第2016/174462(WO,A1)
【文献】特表2003-502803(JP,A)
【文献】特表2013-528892(JP,A)
【文献】特表2015-521349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/40
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重反射飛行時間型質量分析器であって、
グリッドレスイオン加速器と、
第1の次元(x次元)においてイオンを反射するために配置され、第2の次元(z次元)において延伸された2つのイオンミラーと、
イオン検出器と、を含み、
前記イオン加速器は、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速するように配置および構成され
前記イオンは、前記イオン加速器から前記イオン検出器まで移動するときに前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されず、
前記質量分析器は、≧5%のデューティーサイクルと、≧20,000の分解能とを有し、前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離が400mmと900mmの間であり、前記質量分析器は、前記イオンが前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記イオン検出器までの150mmと400mmの間の距離を移動するように構成され、
前記イオン加速器と、前記イオンミラーと、前記イオン検出器とは、前記イオンが前記イオン加速器から前記イオン検出器まで移動しながら前記イオンミラーによって4回以上且つ10回以下反射されるように配置および構成された、
多重反射飛行時間型質量分析器。
【請求項2】
各ミラーは、イオンの一次飛行時間集束が、前記第1の次元に対して直角な面(y-z面)における前記イオンの位置とは実質的に独立しているように配置および構成された少なくとも4つの電極を有する、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項3】
前記質量分析器は前記イオンを前記イオン加速器に供給するためのイオン源に結合され、前記イオン源は、前記イオン加速器が前記第2の次元(z次元)を移動する前記イオン源からのイオンを受け取るように配置された、請求項1または2に記載の質量分析器。
【請求項4】
前記質量分析器は≧10%のデューティーサイクルを有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項5】
前記質量分析器は、前記イオンが前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記イオン検出器までの第1の距離を移動するように構成され、前記イオン加速器は、前記第2の次元(z次元)において初期長を有するイオンのパケットをパルス送出するように構成され、前記第1の距離と初期長とは、前記質量分析器が≧5%のデューティーサイクルを有するようになされた、請求項1ないし4のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項6】
前記質量分析器は≧30,000の分解能を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項7】
前記第2の次元(z次元)における前記イオン加速器から前記イオン検出器までの距離は、400mm、≦380mm、≦360mm、≦340mm、≦320mm、≦300mm、≦280mm、≦260mm、≦240mm、≦220mm、または≦200mmのうちの1つである、
請求項1ないし6のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項8】
前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離は、≦750mm、≦700mm、≦650mm、≦600mm、550mm、≦500mm、≦450mm、または≦400mmである、
請求項1ないし7のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項9】
イオンが、前記第2の次元(z次元)において、≦140eV、≦120eV、≦100eV、≦90eV、≦80eV、≦70eV、≦60eV、≦50eV、≦40eV、≦30eV、≦20eV、または≦10eVのエネルギーで移動する、
請求項1ないし8のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項10】
前記イオン加速器は、前記イオンを加速するためにyV/mmの電界を発生するように構成され、
yは、≧700、≧650、≧600、≧580、≧560、≧540、≧520、≧500、≧480、≧460、≧440、≧420、≧400、≧380、≧360、≧340、≧320、≧300、≧280、≧260、≧240、≧220、または≧200である、
請求項1ないし9のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項11】
前記イオンが前記イオンミラー間で反射されるときに実質的に電界のない領域を通って移動するように、前記イオンミラー間に実質的に電界のない前記領域が配置された、請求項1ないし10のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項12】
前記イオンは、実質的に電界のない前記領域にあるときに運動エネルギーEを有し、
Eは、≧1keV、≧2keV、≧3keV、≧4keV、≧5keV、≧6keV、≧7keV、≧8keV、≧9keV、10keV、≧11keV、≧12keV、≧13keV、≧14keV、または≧15keVである、
請求項11に記載の質量分析器。
【請求項13】
前記質量分析器は、イオンを前記イオン加速器内に誘導するためのイオンガイドと前記イオンガイドを加熱するためのヒータとに結合された、請求項1ないし12のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項14】
前記質量分析器は、前記イオン加速器に向かって通過する前記イオンをコリメートするためのスリットコリメータに結合され、前記コリメータは、前記第1の次元(x次元)においてイオンをコリメートするように構成された、請求項1ないし13のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項15】
前記質量分析器は、前記第1の次元(x次元)および/または、前記第1および第2の次元の両方に対して直角な次元(y次元)において前記イオン加速器に向かって通過する前記イオンのビームを拡大するように配置および構成されたイオン光学系に結合されている、請求項1ないし14のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項16】
前記質量分析器は、前記イオンが前記イオン加速器に入射する前に前記イオンを空間的に、または質量対電荷比またはイオン移動度に応じて、第2の次元(z次元)において分離するためのイオン分離器に結合されている、請求項1ないし15のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項17】
多重反射飛行時間型質量分析器であって、
イオン加速器と、
第1の次元(x次元)においてイオンを反射するために配置され、第2の次元(z次元)において延伸された2つのイオンミラーと、
グリッドレスイオン検出器と、を含み、
前記イオン加速器は、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記第1の次元において前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速するように配置および構成され、
前記イオンは、前記イオンミラーのうちの1つのイオンミラーから前記イオンミラーのうちの他のイオンミラーまでn回通過するように反射され、前記イオンは前記n回のうちの≧60%の間、周期的レンズにより前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されず、
前記質量分析器は、≧5%のデューティーサイクルと、≧20,000の分解能とを有し、前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離が400mmと900mmの間であり、前記質量分析器は、前記イオンが前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記イオン検出器までの150mmと400mmの間の距離を移動するように構成され、前記イオン加速器と、前記イオンミラーと、前記イオン検出器とは、前記イオンが前記グリッドレスイオン加速器から前記イオン検出器まで移動しながら前記イオンミラーによって4回以上且つ10回以下反射されるように配置および構成された、
多重反射飛行時間型質量分析器。
【請求項18】
飛行時間型質量分析方法であって、
請求項1ないし16のいずれか一項に記載の質量分析器を設けることと、
イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記イオンが前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速させるように、前記イオン加速器を制御することと、を含み、前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離が400mmと900mmの間であり、前記イオンは前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記イオン検出器までの150mmと400mmの間の距離を移動し、前記イオンは前記イオン加速器から前記イオン検出器まで移動するときに前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されず、
前記イオンは、前記イオン検出器によって検出され、≧5%のデューティーサイクルおよび≧20,000の分解能で飛行時間型質量分析される飛行時間型質量分析方法。
【請求項19】
飛行時間型質量分析方法であって、
請求項17に記載の質量分析器を設けることと、
イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速させるように、前記イオン加速器を制御することと、を含み、
前記イオンは、前記イオンミラーのうちの1つのイオンミラーから前記イオンミラーのうちの他のイオンミラーまでn回数通過するように反射され、前記イオンは前記n回のうちの≧60%の間、周期的レンズによって前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されない飛行時間型質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月5日に出願された英国特許出願第1707208.3号の優先権および利益を主張する。参照により本出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般には、質量分析計に関し、特に、多重反射飛行時間型質量分析計(MR-TOF-MS)およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
飛行時間型質量分析計は、広い質量範囲の高速分析によって特徴づけられる、広く使用されている分析化学機器である。多重反射飛行時間型質量分析計(MR-TOF-MS)は、イオンの飛行経路を拡張するようにイオンを複数回反射することによって分解能を大幅に向上させることが認識されてきた。このようなイオン飛行経路の拡張は、イオンミラー間でイオンを反射することによって実現されている。
【0004】
ソ連特許第1725289号(特許文献1)は、無電界領域の両側に配置されたイオンミラーを有するMR-TOF-MS器を開示している。無電界領域にはイオン源が配置され、イオンミラーのうちの1つにイオンを放出する。イオンは、イオン検出器に達するまで計器に沿って移動しながらイオンミラー間で往復して反射される。次に、イオンがイオン源からイオン検出器までに移動するのに要する時間を検出することによって、イオンの質量対電荷比を測定することができる。
【0005】
WO2005/001878号(特許文献2)は、イオンがイオンミラーによって反射される次元に対して直角の方向にイオンビームが大きく発散するのを防ぎ、それによって分析計のデューティーサイクルを増すように、イオンミラー間の無電界領域内に1組の周期的レンズを有する類似の計器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ソ連特許第1725289号
【文献】WO2005/001878号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によると、本発明は、多重反射飛行時間型質量分析計であって、
イオン加速器と、
第1の次元(x次元)においてイオンを反射するために配置され、第2の次元(z次元)において延伸された2つのイオンミラーと、
イオン検出器と、を含み、
前記イオン加速器は、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速するように配置および構成され、
前記イオンは、前記イオン加速器から前記検出器まで移動するときに前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されず、
前記質量分析器は、≧5%のデューティーサイクルと、≧20,000の分解能とを有し、前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離が≦1000mmであり、前記質量分析器は、前記イオンが前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記検出器までの≦700mmの距離を移動するように構成された、多重反射飛行時間型質量分析器を提供する。
【0008】
イオンミラー間の第2の次元(z次元)ではイオンの集束が行われず、例えば第2の次元(z次元)ではイオンを集束する周期的レンズがない。したがって、イオンの各パケットはイオン加速器から検出器に移動しながら第2の次元(z次元)において拡大する。MR-TOF-MS器は、従来からきわめて高い分解能を得ることを目指しており、したがってイオンミラー間で多くの回数の反射を必要とする。したがって、従来は、イオンパケットの幅が、イオンパケットが多数のミラー反射を終えて検出器に到達する時点までに検出器の幅よりも大きくなる程度まで発散するのを防ぐために、イオンミラー間において第2の次元(z次元)の集束を設ける必要があるとみなされてきた。これは、受容可能なイオン透過、したがって計器の感度を維持するために必要であるとみなされていた。また、イオンパケットが第2の次元(z次元)において発散し過ぎると、一部のイオンが第1の回数のみ反射されて検出器に達し、他のイオンがそれより多い回数反射されて検出器に達する可能性がある。したがって、イオンが検出器に達する途中に無電界領域を通る大幅に異なる飛行経路長を有する可能性があり、これは飛行時間型質量分析計においては望ましくない。
【0009】
しかし、本発明の発明者らは、計器内のイオン飛行経路を比較的短く維持し、デューティーサイクル(すなわち以下で定義するD/L)を比較的高くすれば、適度に高い感度と分解能とを維持しながら第2の次元(z次元)の集束をなくすことができることを認めた。より具体的には、イオン加速器からパルス状に送り出される各イオンパケットは、検出器に向かって移動するときに第2の次元(z次元)においてイオンの熱運動速度により拡大する。これは、一方では、所望の回数のイオンミラー反射が行われるまでイオンが検出器に衝突しないように、イオン検出器は第2の次元(z次元)において比較的短くなければならないが、他方では、イオン検出器は拡大したイオンパケットを受け取るのに十分な長さでなければならないため、多重反射飛行時間型質量分析計では特に問題となる。これは、第2の次元(z次元)でイオンパケットが該次元における元の長さに対して相対的に大きく拡大するほどますます問題となる。発明者らは、イオンパケットの初期サイズ(すなわちD)を比較的大きく維持し、イオン加速器と検出器との間の距離(すなわちL)を比較的短く維持すれば(すなわち、比較的高いデューティーサイクルD/Lを設けることによって)、イオン加速器と検出器との間でのイオンパケットの比例拡大が比較的小さいままとなることを認めた。
【0010】
本発明の第1の態様は、飛行時間型質量分析方法であって、上記の記載の質量分析器を設けることと、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記イオンが前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで前記イオンを加速させるように、前記イオン加速器を制御することとを含み、前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離が≦1000mmであり、前記イオンは前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記検出器までの≦700mmの距離を移動し、前記イオンは前記イオン加速器から前記検出器まで移動するときに前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されず、前記イオンは、前記検出器によって検出され、≧5%のデューティーサイクルおよび≧20,000の分解能で飛行時間型質量分析される飛行時間型質量分析方法も提供する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、多重反射飛行時間型質量分析器であって、
イオン加速器と、
第1の次元(x次元)においてイオンを反射するために配置され、第2の次元(z次元)において延伸された2つのイオンミラーと、
イオン検出器と、を含み、
前記イオン加速器は、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記イオンが前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速するように配置および構成され、
前記イオンは、前記イオンミラーのうちの1つのイオンミラーから前記イオンミラーのうちの他のイオンミラーまでn回通過するように反射され、前記イオンは前記n回のうちの≧60%の間、前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されない多重反射飛行時間質量分析器を提供する。
【0012】
本発明の第2の態様は、飛行時間型質量分析方法であって、上記の質量分析器を設けることと、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記イオンが前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで前記イオンを加速させるように、前記イオン加速器を制御することとを含み、前記イオンは、前記イオンミラーのうちの1つのイオンミラーから前記イオンミラーのうちの他のイオンミラーまでn回通過するように反射され、前記イオンは前記n回のうちの≧60%の間、前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されない飛行時間型質量分析方法も提供する。
【0013】
第3の態様では、本発明は、多重反射飛行時間型質量分析器であって、
イオン加速器と、
第1の次元(x次元)においてイオンを反射するために配置され、第2の次元(z次元)において延伸された2つのイオンミラーと、
イオン検出器と、を含み、
前記イオン加速器は、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンが前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように、前記イオンを、角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速するように配置および構成された、多重反射飛行時間型質量分析器を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様は、飛行時間型質量分析方法であって、上記の質量分析器を設けることと、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記イオンが前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで前記イオンを加速させるように、前記イオン加速器を制御することとを含む飛行時間型質量分析方法も提供する。
【0015】
本明細書における分析器は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」イオン源と、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源と、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源と、(iv)マトリクス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源と、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源と、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源と、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源と、(viii)電子衝撃(「EI」)イオン源と、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源と、(x)フィールドイオン化(「FI」)イオン源と、(xi)フィールド脱離(「FD」)イオン源と、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源と、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源と、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源と、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源と、(xvi)ニッケル63放射性イオン源と、(xvii)大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化イオン源と、(xviii)サーモスプレーイオン源と、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源と、(xx)グロー放電(「GD」)イオン源と、(xxi)インパクタイオン源と、(xxii)リアルタイム直接分析(「DART」)イオン源と、(xxiii)レーザスプレーイオン化(「LSI」)イオン源と、(xxiv)ソニックスプレーイオン化(「SSI」)イオン源と、(xxv)マトリクス支援インレットイオン化(「MAII」)イオン源と、(xxvi)溶媒支援インレットイオン化(「SAII」)イオン源と、(xxvii)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源と、(xxviii)レーザアブレーションエレクトロスプレーイオン化(「LAESI」)イオン源と、(xxix)表面支援レーザ脱離イオン化(「SALDI」)とからなるグループから選択されたイオン源を含むことができる。
【0016】
分析計は、1つまたは複数の連続またはパルスイオン源を含み得る。
【0017】
分析計は、1つまたは複数のイオンガイドを含み得る。
【0018】
分析計は、1つまたは複数のイオン移動度分離装置および/または1つまたは複数のフィールド非対称イオン移動度分析計装置を含み得る。
【0019】
分析計は、1つまたは複数のイオントラップまたは1つまたは複数のイオントラップ領域を含み得る。
【0020】
分析計は、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーション装置と、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーション装置と、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーション装置と、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーション装置と、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーション装置と、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーション装置と、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーション装置と、(viii)赤外線放射誘起解離装置と、(ix)紫外線放射誘起解離装置と、(x)ノズルスキマーインターフェースフラグメンテーション装置と、(xi)インソースフラグメンテーション装置と、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーション装置と、(xiii)熱または温度源フラグメンテーション装置と、(xiv)電界誘起フラグメンテーション装置と、(xv)磁界誘起フラグメンテーション装置と、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーション装置と、(xvii)イオン間反応フラグメンテーション装置と、(xviii)イオン-分子反応フラグメンテーション装置と、(xix)イオン-原子反応フラグメンテーション装置と、(xx)イオン準安定イオン反応フラグメンテーション装置と、(xxi)イオン準安定分子反応フラグメンテーション装置と、(xxii)イオン準安定原子反応フラグメンテーション装置と、(xxiii)付加イオンまたはプロダクトイオン生成のための反応イオンのイオン間反応装置と、(xxiv)付加イオンまたはプロダクトイオン生成のための反応イオンのイオン-分子反応装置と、(xxv)付加イオンまたはプロダクトイオン生成のための反応イオンのイオン-原子反応装置と、(xxvi)付加イオンまたはプロダクトイオン生成のための反応イオンの準安定イオン反応装置と、(xxvii)付加イオンまたはプロダクトイオン生成のための反応イオンのイオン準安定分子反応装置と、(xxviii)付加イオンまたはプロダクトイオン生成のための反応イオンのイオン準安定原子反応装置と、(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーション装置とからなるグループから選択された1つまたは複数の衝突セル、フラグメンテーションセルまたは反応セルを含むことができる。
【0021】
イオン-分子反応装置は、脂質中のオレフィン(二重)結合の位置特定のためにオゾン分解を行うように構成することができる。
【0022】
分析計は、(i)四重極質量分析器と、(ii)2Dまたは線形四重極質量分析器と、(iii)ポールまたは3D四重極質量分析器と、(iv)ペニングトラップ質量分析器と、(v)イオントラップ質量分析器と、(vi)磁場セクタ型質量分析器と、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器と、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器と、(ix)クアドロ対数ポテンシャル分布を有する静電界を生じさせるようになされた静電質量分析器と、(x)フーリエ変換静電質量分析器と、(xi)フーリエ変換質量分析器とからなるグループから選択された質量分析器を含むことができる。
【0023】
分析計は、1つまたは複数のエネルギー分析器または静電エネルギー分析器を含み得る。
【0024】
分析計は、(i)四重極質量フィルタと、(ii)2Dまたは線形四重極イオントラップと、(iii)ポールまたは3D四重極質量フィルタと、(iv)ペニングイオントラップと、(v)イオントラップと、(vi)磁場セクタ型質量フィルタと、(vii)飛行時間質量フィルタと、(viii)ウィーンフィルタとからなるグループから選択された1つまたは複数の質量フィルタを含むことができる。
【0025】
分析計は、イオンをパルス状に送出するための装置またはイオンゲート、および/または、実質的に連続したイオンビームをパルス状イオンビームに変換するための装置を含むことができる。
【0026】
分析計は、Cトラップと、クアドロ対数ポテンシャル分布を有する静電界を形成する樽形の外側電極および同軸スピンドル形内側電極を含む質量分析器とを含んでもよく、第1の動作モードではイオンがCトラップに送られ、次に質量分析器に導入され、第2の動作モードではイオンがCトラップに送られ、次に、衝突セルまたは電子移動解離装置に送られ、少なくとも一部のイオンが断片イオンに断片化され、次に断片イオンがCトラップに送られてから質量分析器に導入される。
【0027】
分析計は、各電極が使用時にイオンが送り込まれる開口を有する複数の電極を含み、電極の間隔がイオン経路の長さに沿って大きくなり、イオンガイドの上流部の電極の開口が第1の直径を有し、イオンガイドの下流部の電極の開口が第1の直径より小さい第2の直径を有し、使用時にAC電圧またはRF電圧の逆位相が連続した電極に印加される、積層リングイオンガイドを含むことができる。
【0028】
分析計は、電極にAC電圧またはRF電圧を供給するように配置され、適応化された装置を含むことができる。AC電圧またはRF電圧は、任意により、(i)ピーク間約<50Vと、(ii)ピーク間約50Vないし100Vと、(iii)ピーク間約100Vないし150Vと、(iv)ピーク間約150Vないし200Vと、(v)ピーク間約200Vないし250Vと、(vi)ピーク間約250Vないし300Vと、(vii)ピーク間約300Vないし350Vと、(viii)ピーク間約350Vないし400Vと、(ix)ピーク間約400ないし450Vと、(x)ピーク間約450Vないし500Vと、(xi)ピーク間>約500Vからなるグループから選択された振幅を有する。
【0029】
AC電圧またはRF電圧は、(i)<約100kHzと、(ii)約100kHzないし200kHzと、(iii)約200kHzないし300kHzと、(iv)約300kHzないし400kHzと、(v)約400kHzないし500kHzと、(vi)約0.5MHzないし1.0MHzと、(vii)約1.0MHzないし1.5MHzと、(viii)約1.5MHzないし2.0MHzと、(ix)約2.0MHzないし2.5MHzと、(x)約2.5MHzないし3.0MHzと、(xi)約3.0MHzないし3.5MHzと、(xii)約3.5MHzないし4.0MHzと、(xiii)約4.0MHzないし4.5MHzと、(xiv)約4.5MHzないし5.0MHzと、(xv)約5.0MHzないし5.5MHzと、(xvi)約5.5MHzないし6.0MHzと、(xvii)約6.0MHzないし6.5MHzと、(xviii)約6.5MHzないし7.0MHzと、(xix)約7.0MHzないし7.5MHzと、(xx)約7.5MHzないし8.0MHzと、(xxi)約8.0MHzないし8.5MHzと、(xxii)約8.5MHzないし9.0MHzと、(xxiii)約9.0MHzないし9.5MHzと、(xxiv)約9.5MHzないし10.0MHzと、(xxv)>約10.0MHzとからなるグループから選択された周波数を有し得る。
【0030】
分析計は、イオン源の上流にクロマトグラフィ分離装置またはその他の分離装置を含むことができる。クロマトグラフィ分離装置は、液体クロマトグラフィ装置またはガスクロマトグラフィ装置を含み得る。あるいは、分離装置は、(i)キャピラリ電気泳動(「CE」)分離装置、(ii)キャピラリ電気クロマトグラフィ(「CEC」)分離装置、(iii)実質的に剛性のセラミックベースの多層微小流体基板(「セラミックタイル」)分離装置、または(iv)超臨界流体クロマトグラフィ分離装置を含み得る。
【0031】
イオンガイドは、(i)<約0.0001mbarと、(ii)約0.0001mbarないし0.001mbarと、(iii)約0.001mbarないし0.01mbarと、(iv)約0.01mbarないし約0.1mbarと、(v)約0.1mbarないし1mbarと、(vi)約1mbarないし10mbarと、(vii)約10mbarないし100mbarと、(viii)約100mbarないし1000mbarと、(ix)>約1000mbarとからなるグループから選択された圧力に維持することができる。
【0032】
検体イオンは、電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーション装置で電子移動解離にかけることができる。検体イオンは、イオンガイド内またはフラグメンテーション装置内でETD試薬と相互作用させることができる。
【0033】
分析計は、質量分析(「MS」)動作モード、または、タンデム質量分析(「MS/MS)動作モード、または、断片イオンまたはプロダクトイオンを生成するように親イオンまたは前駆イオンが、二者択一的に、断片化または反応させられたり、断片化または反応させられないかまたはよりわずかに断片化または反応させられたりする動作モード、または、多重反応モニタリング(「MRM」)動作モード、データ依存分析(「DDA」)動作モード、または、データ非依存分析(「DIA」)動作モード、または、定量化分析動作モード、または、イオン移動度分光分析動作モードを含む、様々な動作モードで動作させることができる。
【0034】
次に、添付図面を参照しながら様々な実施形態について例示のみを目的として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】従来技術によるMR-TOF-MS器を示す図である。
図2】従来技術による別のMR-TOF-MS器を示す図である。
図3】本発明の一実施形態の概略を示す図である。
図4】本発明の別の実施形態の概略を示す図である。
図5A-1】9.2keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについて、異なる大きさのMR-TOF-MS器のモデル化された分解能およびデューティーサイクルを示す図である。
図5A-2】9.2keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについて、異なる大きさのMR-TOF-MS器のモデル化された分解能およびデューティーサイクルを示す図である。
図5A-3】9.2keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについて、異なる大きさのMR-TOF-MS器のモデル化された分解能およびデューティーサイクルを示す図である。
図5B-1】9.2keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについて、異なる大きさのMR-TOF-MS器のモデル化された分解能およびデューティーサイクルを示す図である。
図5B-2】9.2keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについて、異なる大きさのMR-TOF-MS器のモデル化された分解能およびデューティーサイクルを示す図である。
図5B-3】9.2keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについて、異なる大きさのMR-TOF-MS器のモデル化された分解能およびデューティーサイクルを示す図である。
図6A-1】データが6keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図6A-2】データが6keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図6A-3】データが6keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図6B-1】データが6keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図6B-2】データが6keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図6B-3】データが6keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図7-1】データが3keV、4keVおよび5keVのミラー間の無電界領域におけるネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図7-2】データが3keV、4keVおよび5keVのミラー間の無電界領域におけるネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図7-3】データが3keV、4keVおよび5keVのミラー間の無電界領域におけるネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図8-1】ミラーにおいて5回反射され、4keVと10keVの間のミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてデータがモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図8-2】ミラーにおいて5回反射され、4keVと10keVの間のミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてデータがモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図9-1】ミラーにおいて6回反射されるイオンについてデータがモデル化されている以外は、図8-1~図8-2に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図9-2】ミラーにおいて6回反射されるイオンについてデータがモデル化されている以外は、図8-1~図8-2に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図10-1】データが約10%のデューティーサイクルを達成するためにモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータの値を示す図である。
図10-2】データが約10%のデューティーサイクルを達成するためにモデル化されている以外は、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータの値を示す図である。
図11-1】中程度の大きさを有する計器の、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
図11-2】中程度の大きさを有する計器の、図5A-1~図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に、ソ連特許第1725289号(特許文献1)のMR-TOF-MS器を示す。この計器は、x次元において無電界領域12によって分離された2つのイオンミラー10を含む。各イオンミラー10は、z次元において延伸された3対の電極3ないし8を含む。無電界領域12において計器の(z次元における)一端にイオン源1が配置され、計器の(z次元における)他端にイオン検出器2が配置されている。
【0037】
使用時、イオン源1がイオンミラー10のうちの第1のイオンミラーにx軸に対して傾斜角度をなしてイオンを加速させる。したがって、イオンはx次元の速度と、z次元の移動速度も有する。イオンは、第1のイオンミラー10に入射し、イオンミラー10のうちの第2のイオンミラーに向かって反射される。次に、イオンは第2のイオンミラーに入射し、第1のイオンミラーに対して反射される。次に、第1のイオンミラーがイオンを第2のイオンミラーに対して反射する。イオンがイオン検出器2に衝突するまでこれが続き、イオンはz次元において装置に沿って移動しながら2つのイオンミラー間で連続的に反射される。したがって、イオンは、イオン源1とイオン検出器2の間のx-z面内でほぼ正弦曲線の平均軌道をたどる。
【0038】
図2に、WO2005/001878号(特許文献2)で開示されているMR-TOF-MS器を示す。この計器は、イオン源24からのイオンがイオン検出器26に向かってz次元において移動しながら2つのイオンミラー21間で複数回反射される点で、ソ連特許第1725289号のものと類似している。しかし、WO2005/0018787号(特許文献2)の計器はイオンミラー21間の無電界領域27内に、1組の周期的レンズ23も含む。これらのレンズ23は、イオンパケットがイオンミラー21間で反射されながらレンズ23を通過するように配置される。イオンパケットをz次元において空間的に集束させるように、レンズ23の電極に電圧が印加される。これにより、イオンパケットがz次元で過度に発散し、互いに重なり合うのを防ぐとともに、検出器26に到達する時点までにz次元において検出器26よりも長くなるのを防ぐ。
【0039】
本発明の実施形態は、イオンミラー間の無電界領域内に1組のレンズ23がないMR-TOF-MS器に関する。
【0040】
第1の態様によると、本発明は、多重反射飛行時間型質量分析器であって、
イオン加速器と、
第1の次元(x次元)においてイオンを反射するために配置され、第2の次元(z次元)において延伸された2つのイオンミラーと、
イオン検出器と、を含み、
前記イオン加速器は、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記イオンが前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記イオンを前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速するように配置および構成され、
前記イオンは、前記イオン加速器から前記検出器まで移動するときに前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されず、
前記質量分析器は、≧5%のデューティーサイクルと、≧20,000の分解能とを有し、前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離が≦1000mmであり、前記質量分析器は、前記イオンが前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記検出器までの≦700mmの距離を移動するように構成された、多重反射飛行時間型質量分析器を提供する。
【0041】
「デューティーサイクル」という用語は当業者にはよく理解されているが、疑義を避けるために明記すると、デューティーサイクルとは連続イオン源からのイオンが質量分析器に受け入れられる割合である。本発明の実施形態によるもののような直交加速イオン加速器の場合、デューティーサイクルは以下の式によって与えられる。
【数1】

上式で、Dはイオンパケットがイオン加速器によって直角方向に加速されるときのイオンパケットの第2の次元(z次元)における長さ(すなわち、イオン加速器の直交加速領域の第2の次元における長さ)であり、Lは、第2の次元における、イオン加速器の直交加速領域の中心からイオン検出器の検出領域の中心までの距離であり、(m/z)は分析するイオンの質量対電荷比であり、(m/z)maxは分析したい対象の最大質量対電荷比である。
【0042】
したがって、質量分析器のデューティーサイクルは質量に依存することが明らかである。これは、質量対電荷比の高いイオンほど、イオン加速器の抽出領域を通過し、満たすのに時間がかかるためである。ただし、質量分析器について説明する場合、当業者は、質量分析器のデューティーサイクルを対象最大質量対電荷比のデューティーサイクル、すなわち、上記の式で(m/z)=(m/z)maxであるときのデューティーサイクルであるとみなす。したがって、本明細書でデューティーサイクルと言う場合、(パーセンテージとしての)D/Lの比を指し、これは純粋に質量分析器の形状パラメータDおよびLによって規定される値である。これは、「サンプリング効率」とも呼ばれることがある。
【0043】
また、疑義を避けるために明記すると、本明細書で使用する分解能という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、すなわち、FWHMにおけるm/(Δm)であり、ここでmは質量対電荷比である。
【0044】
本発明の第1の態様に関して以下の特徴が開示される。
【0045】
各ミラーは、イオンの一次飛行時間集束が、第1の次元(y-z面)に対して直角な面におけるイオンの位置とは実質的に独立しているように配置および構成された少なくとも4つの電極を有し得る。
【0046】
したがって、イオンの一次飛行時間集束は、第2の次元(z次元)と、第1および第2の次元(xおよびz次元)に対して直角な第3の次元(y次元)の両方におけるイオンの位置とは実質的に独立し得る。
【0047】
質量分析器は、イオンを反射して前記飛行時間集束を実現するために、各イオンミラーの4つの異なる電極に少なくとも4通りの異なる電圧を印加するための電圧源を含み得る。
【0048】
イオンは加速器から検出器まで移動するときに第2の次元(z次元)では空間集束しない。したがって、第2の次元(z次元)においてイオンを空間的に集束させるためのイオンレンズがイオンミラー間に設けられない。同様に、イオンミラーは、第2の次元(z次元)においてイオンを空間的に集束させるようには構成されない。
【0049】
イオン検出器は、第2の次元(z次元)においてイオン加速器から離隔されることができる。あるいは、イオンは、イオン加速器から第2の次元(z次元)において第1の方向に移動することができ、次に、第2の次元(z次元)において第2の、反対の方向に検出器まで移動するように、反射電極によって反射されることができる。1つまたは複数のさらなるz次元の反射を生じさせるように1つまたは複数の追加の反射電極を設けてもよく、その場合、それらのz次元の反射後にイオンを検出するように検出器が適切に位置決めされる。
【0050】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の質量分析器を含む分析計を提供する。
【0051】
分析計は、前記イオンをイオン加速器に供給するためのイオン源を含むことができ、イオン源は、前記イオン加速器がイオン源から第2の次元(z次元)を移動するイオンを受け取るように配置される。
【0052】
この配置構成は、比較的高いデューティーサイクルを備えた質量分析器を提供する。上述のように、デューティーサイクルは、イオン加速器の中心から検出器の中心までの距離に対する、イオンパケットがイオン加速器によって加速されるときの第2の次元(z次元)におけるイオンパケットの長さの比である。本発明の実施形態は、比較的小型の質量分析器に関し、したがって、比較的高いデューティーサイクルを実現するためには、イオン加速器は(第2の、z次元において)比較的長いイオンパケットをパルス出力することが望ましい。第2の次元(z次元)における比較的長いイオンパケットは、第2の次元(z次元)を移動するイオンをイオン加速器に供給することによって促される。これは、イオンパケットが第2の次元(z次元)において重なり合う程度まで発散する前に多数のミラー反射を行うことができるように、イオンパケットが第2の次元(z次元)においてきわめて小さく維持されることが望ましい従来の多重反射TOF分析計とは異なる。これを実現するために、このような従来の計器は、イオンを本明細書に記載の第1および第2の次元に対して直角の第3の次元に対応する方向でイオン加速器に供給する。その結果、このような従来の分析計はデューティーサイクルが比較的低い。
【0053】
イオン源は、イオンを実質的に連続して生成するための連続イオン源であってよく、またはパルスイオン源であってもよい。
【0054】
質量分析器は、≧10%のデューティーサイクルを有することができる。
【0055】
上述のように、質量分析器は≧5%のデューティーサイクルを有する。質量分析器は、≧6%、≧7%、≧8%、≧9%、10%、11%、≧12%、≧13%、≧14%、≧15%、≧16%、≧17%、≧18%、≧19%、≧20%、≧25%、≧30%のデューティーサイクルを有し得ることが企図される。これに加えて、またはこれに代えて、質量分析計は、≦30%、≦25%、≦20%、≦19%、≦18%、≦17%、16%、≦15%、≦14%、≦13%、≦12%、≦11%、≦10%、≦9%、≦8%、≦7%、または≦6%のデューティーサイクルを有し得ることが企図される。
【0056】
上記列挙したデューティーサイクルの上端点のうちのいずれか1つを、上記で列挙したデューティーサイクルの下端点のうちのいずれか1つと組み合わせることができる(ここで、上端点は下端点よりも高い。これらの端点のうちのいずれか1つまたは組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せと関連して記載されている範囲のうちの1つの範囲(または範囲の組合せ)と組み合わせることもできる。例えば、デューティーサイクルに関連して記載されている端点または範囲のうちのいずれか1つまたは組合せを、分解能、および/または、イオン加速器から検出器までの第2の次元(z次元)における距離、および/または、2つのイオンミラーの反射点間の第1の次元(x次元)における距離、および/または、反射回数、および/または、第2の次元におけるイオンエネルギー、および/または、電界強度、および/または運動エネルギーに関して記載されている範囲のうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せと組み合わせることができる。
【0057】
質量分析器は、イオンが第2の次元(z次元)においてイオン加速器から検出器までの第1の距離を移動するように構成することができ、イオン加速器は第2の次元(z次元)における初期長を有するイオンのパケットをパルス状に送出するように配置および構成され、第1の距離と初期長とは、分析器が≧5%のデューティーサイクルを有するような距離および初期長である。
【0058】
ただし、第1の距離と初期長とは、デューティーサイクルが本明細書で開示されているデューティーサイクルの他の範囲のいずれかとなるようになされてもよい。
【0059】
質量分析器は、≧30,000の分解能を有し得る。
【0060】
ただし、質量分析器は、≧22000、≧24000、≧26000、≧28000、≧30000、≧35000、≧40000、≧45000、≧50000、≧60000、≧70000、≧80000、≧90000、または≧100000の分解能を有し得ることが企図される。これに加えて、またはこれに代えて、質量分析器は、≦100000、≦90000、≦80000、≦70000、≦60000、≦50000、≦45000、≦40000、35000、≦30000、≦28000、≦26000、≦24000、または≦22000の分解能を有し得ることが企図される。
【0061】
上記で列挙した分解能の上端点のいずれか1つを上記で列挙した分解能の下端点のいずれか1つと組み合わせることができる(上端点は、下端点より高い。上記の端点のうちのいずれか1つの端点または組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せに関して記載されている範囲(または範囲の組合せ)のいずれか1つと組み合わせることもできる。例えば、分解能に関して記載されている端点または範囲のいずれか1つまたはいずれかの組合せを、デューティーサイクル、および/または、第2の次元(z次元)におけるイオン加速器から検出器までの距離、および/または、第1の次元(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離、および/または、反射回数、および/または、第2の次元におけるイオンエネルギー、および/または、電界強度、および/または運動エネルギーに関して記載されている範囲のいずれか1つまたはいずれかの組合せと組み合わせることができる。
【0062】
第2の次元(z次元)におけるイオン加速器から検出器までの距離は、≦650mm、≦600mm、≦550mm、≦500mm、≦480mm、≦460mm、≦440mm、≦420mm、≦400mm、≦380mm、≦360mm、≦340mm、≦320mm、≦300mm、≦280mm、≦260mm、≦240mm、≦220mm、または≦200mmのうちの1つとすることができ、および/または、第2の次元(z次元)におけるイオン加速器から検出器までの第1の距離は、≧100mm、≧120mm、≧140mm、≧160mm、≧180mm、≧200mm、≧220mm、240mm、≧260mm、≧280mm、≧300mm、≧320mm、≧340mm、≧360mm、≧380mm、または、≧400mmのうちの1つとすることができる。
【0063】
上記で列挙した第2の次元(z次元)における第1の距離の上端点のいずれか1つを、上記で列挙した第2の次元(z次元)における第1の距離の下端点のうちのいずれか1つと組み合わせることができる(上端点は下端点より高い。これらの端点のうちのいずれか1つの端点または組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せと関連して記載されている範囲のうちのいずれか1つの範囲(または範囲の組合せ)と組み合わせることもできる。例えば、イオン加速器から検出器までの距離に関して記載されている端点または範囲のうちのいずれか1つまたは組合せを、デューティーサイクル、および/または、分解能、および/または、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離、および/または、反射回数、および/または、第2の次元におけるイオンエネルギー、および/または、電界強度、および/または、運動エネルギーに関して記載されている範囲のいずれか1つまたはいずれかの組合せと組み合わせることができる。
【0064】
第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離は、≦950mm、≦900mm、≦850mm、≦800mm、≦750mm、≦700mm、≦650mm、≦600mm、550mm、≦500mm、≦450mm、または≦400mmとすることができ、および/または、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離は、≧350mm、≧360mm、≧380mm、≧400mm、≧450mm、≧500mm、≧550mm、≧600mm、≧650mm、≧700mm、≧750mm、≧800mm、≧850mm、または≧900mmとすることができる。
【0065】
上記で列挙した2つのイオンミラーの反射点間の距離の上端点のいずれか1つを、上記で列挙した2つのイオンミラーの反射点間の距離の下端点のうちのいずれか1つと組み合わせることができる(上端点は下端点より高い。これらの端点のいずれか1つまたは組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せに関して記載されている範囲のいずれか1つの範囲(または範囲の組合せ)と組み合わせることもできる。例えば、反射点間の距離に関して記載されている端点または範囲のうちのいずれか1つまたは組合せを、デューティーサイクル、および/または、分解能、および/または、第2の次元(z次元)におけるイオン加速器から検出器までの距離、および/または、反射回数、および/または、第2の次元におけるイオンエネルギー、および/または、電界強度、および/または運動エネルギーに関して記載されている範囲のいずれか1つの範囲またはいずれかの組合せと組み合わせることができる。
【0066】
イオン加速器、イオンミラーおよび検出器は、イオンがイオン加速器から検出器まで移動しながらイオンミラーによって少なくともx回反射されるように配置および構成されてよく、ここでxは、≧2、≧3、≧4、≧5、≧6、≧7、≧8、≧9、≧10、≧11、≧12、≧13、≧14、または≧15であり、および/または、xは、≦15、≦14、≦13、≦12、≦11、≦10、≦9、≦8、≦7、≦6、≦5、≦4、≦3または≦2であり、および/または、xは3ないし10であり、xは4ないし9、であり、xは5ないし10であり、xは3ないし6であり、xは4ないし5であり、またはxは5ないし6である。
【0067】
上記で列挙した反射回数の上端点のいずれか1つを、上記で列挙した反射回数の下端点のいずれか1つと組み合わせることができる(上端点は下端点より高い。これらの端点のうちのいずれか1つまたは組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せに関して記載されている範囲のいずれか1つ(または範囲の組合せ)と組み合わせることもできる。例えば、反射回数に関して記載されている端点または範囲のうちのいずれか1つまたは組合せを、デューティーサイクル、および/または、分解能、および/または、第2の次元(z次元)における加速器から検出器までの距離、および/または、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離、および/または、第2の次元におけるイオンエネルギー、および/または電界強度、および/または運動エネルギーのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せと組み合わせることができる。
【0068】
イオンは、第2の次元(z次元)において加速計器から検出器まで100mmと450mmの間の距離を移動することができ、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離は、350mmと950mmの間とすることができ、イオンは加速器から検出器まで移動しながらイオンミラーによって2回と15回の間、反射されることができる。
【0069】
あるいは、イオンは、第2の次元(z次元)においてイオン加速器から検出器まで150mmと400mmの間の距離を移動することができ、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離は、400mmと900mmの間とすることができ、イオンはイオン加速器から検出器まで移動しながらイオンミラーによって3回と10回の間、反射されることができる。あるいは、イオンは、第2の次元(z次元)において150mmと350mmの間の距離を移動することができる。これに代えて、またはこれに加えて、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離は、400mmと600mmの間とすることができる。
【0070】
イオンは、第2の次元(z次元)においてイオン加速器から検出器まで100mmと400mmの間の距離を移動することができ、第1の方向(x次元)におけるイオンミラーの反射点間の距離は300mmと700mmの間とすることができ、イオンは、イオン加速器から検出器まで移動しながらイオンミラーによって3回と6回の間の回数、反射されることができることが企図される。あるいは、イオンは、第2の次元(z次元)において加速器から検出器まで150mmと350mmの間の距離を移動することができる。これに代えて、またはこれに加えて、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離は、400mmと60mmの間である。これに加えて、またはこれらのパラメータの一方または両方の代わりに、イオンは、イオン加速器から検出器まで移動しながら、4回と5回の間、または5回と6回の間の回数だけイオンミラーによって反射されてもよい。
【0071】
分析計は、イオンを第2の次元(z次元)において、≦140eV、≦120eV、≦100eV、≦90eV、≦80eV、≦70eV、≦60eV、≦50eV、≦40eV、≦30eV、≦20eV、または≦10eVのエネルギーで移動させるように構成することができ、および/または、分析計は、イオンを第2の次元(z次元)において、≧120eV、≧100eV、≧90eV、≧80eV、≧70eV、≧60eV、≧50eV、≧40eV、≧30eV、≧20eV、または≧10eVのエネルギーで移動させるように構成することができる。分析計は、イオンを第2の次元(z次元)において、15eVないし70eV、10eVないし65eV、10eVないし60eV、20eVないし100eV、25eVないし100eV、20eVないし90eV、40eVないし60eV、30eVないし50eV、20eVないし30eV、20eVないし45eV、25eVないし40eV、15eVないし40eV、10eVないし45eV、または10eVないし25eVのエネルギーで移動させるように構成することができる。
【0072】
上記で列挙したエネルギーの上端点うちのいずれか1つを、上記で列挙したエネルギーの下端点のうちのいずれか1つと組み合わせることができる(上端点は下端点より高い。これらの端点のいずれか1つの端点または組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せに関して記載されている範囲のうちのいずれか1つの範囲(または範囲の組合せ)と組み合わせることもできる。例えば、第2の次元におけるエネルギーに関して記載されている端点または範囲のいずれか1つまたは組合せを、デューティーサイクル、および/または、分解能、および/または、第2の次元(z次元)におけるイオン加速器から検出器までの距離、および/または、第1の方向(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離、および/または、反射回数、および/または、電界強度、および/または、運動エネルギーに関して記載されている範囲のうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せと組み合わせることができる。
【0073】
本明細書に記載の質量分析器の分解能、デューティーサイクル、およびサイズ(すなわち、第1の方向における2つのイオンミラーの反射点間の距離と、第2の次元におけるイオン加速器と検出器との間の移動距離)の範囲は、飛行時間エネルギーおよびミラー電圧の実用値の範囲である。
【0074】
イオン加速器は、イオンを加速するためにyV/mmの電界を発生するように構成することができ、yは、≧700、≧650、≧600、≧580、≧560、≧540、≧520、≧500、≧480、≧460、≧440、≧420、≧400、≧380、≧360、≧340、≧320、≧300、≧280、≧260、≧240、≧220、または≧200であり、および/または、yは、≦700、≦650、≦600、≦580、≦560、≦540、≦520、≦500、≦480、≦460、≦440、≦420、≦400、≦380、≦360、≦340、≦320、≦300、≦280、≦260、≦240、≦220、または≦200である。
【0075】
上記で列挙した電界の上端点のうちのいずれか1つを、上記で列挙した電界の下端点のいずれか1つと組み合わせることができる(上端点は下端点よりも高い。これらの端点のいずれか1つまたは組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せに関して記載されている範囲のうちのいずれか1つの範囲(または範囲の組合せ)と組み合わせることもできる。例えば、電界強度に関して記載されている端点または範囲のうちの1つまたは組合せを、デューティーサイクル、および/または分解能、および/または第2の次元(z次元)におけるイオン加速器から検出器までの距離、および/または第1の領域(x領域)における2つのイオンミラーの反射点間の距離、および/または反射回数、および/または第2の次元におけるイオンエネルギー、および/または運動エネルギーに関して記載されている範囲のうちのいずれか1つの範囲またはいずれかの組合せと組合せることができる。
【0076】
イオンがイオンミラー間で反射されるときに、イオンが実質的に電界のない領域を通過するように、イオンミラー間に電界のない前記領域を配置することができる。
【0077】
イオンは、イオンミラー間および/または実質的に電界のない前記領域にあるときに運動エネルギーEを有することができ、Eは、≧1keV、≧2keV、≧3keV、≧4keV、≧5keV、≧6keV、≧7keV、≧8keV、≧9keV、10keV、≧11keV、≧12keV、≧13keV、≧14keV、≧15keVであり、および/または、Eは、≦15keV、≦14keV、≦13keV、≦12keV、≦11keV、≦10keV、≦9keV、≦8keV、≦7keV、≦6keV、≦5keV、および/または、5keVと10keVの間である。
【0078】
これらの列挙した運動エネルギーの上端点は、上記で列挙した運動エネルギーの下端点のいずれか1つと組み合わせることができる(上端点は下端点より高い。これらの端点のいずれか1つまたは組合せを、本明細書に記載の他のパラメータのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せに関して記載されている範囲のうちのいずれか1つの範囲(または範囲の組合せ)と組み合わせることもできる。例えば、運動エネルギーに関して記載されている端点または範囲のいずれか1つまたは組合せを、デューティーサイクル、および/または分解能、および/または第2の次元(z次元)におけるイオン加速器から検出器までの距離、および/または第1の次元(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離、および/または、反射回数、および/または第2の次元におけるイオンエネルギー、および/または電界強度に関連して記載されている範囲のいずれか1つまたはいずれかの組合せと組み合わせることができる。
【0079】
分析計は、イオンをイオン加速器に誘導するためのイオンガイドと、前記イオンガイドを加熱するためのヒータ39とを含むことができる。
【0080】
分析計は、イオン加速器の電極を加熱するためのヒータを含むことができる。
【0081】
分析計は、イオンガイドおよび/または加速器を、≧100℃、≧110℃、≧120℃、≧130℃、≧140℃、または≧150℃の温度に加熱するように配置および構成されたヒータを含み得る。本明細書に記載のような様々な構成要素を加熱することで、界面帯電を低減しやすくすることができる。
【0082】
本明細書で開示されているイオン加速器は、グリッドレスイオン加速器であってもよい。イオン加速器が加熱される場合、グリッドレスイオン加速器は、グリッドレスでない場合に加熱によって生じることになるグリッドのたるみが生じない。
【0083】
分析計は、イオン加速器に向かって通過するイオンをコリメートするコリメータを含むことができ、コリメータは、第1の次元(x次元)および/または、第1の次元と第2の次元の両方に対して直角な次元(y次元)においてイオンをコリメートするように構成される。
【0084】
分析計は、第1の次元(x次元)、および/または第1および第2の次元の両方に対して直角な次元(y次元)においてイオン加速器に向かって通過するイオンビームを拡大するように配置および構成されたイオン光学系33を含み得る。
【0085】
分析計は、イオンがイオン加速器に入射する前に、イオンを空間的に、または質量対電荷比もしくはイオン移動度に応じて、第2の次元(z次元)において分離するためのイオン分離器を含み得る。
【0086】
第2の態様では、本発明は、多重反射飛行時間型質量分析器であって、
イオン加速器と、
第1の次元(x次元)においてイオンを反射するために配置され、第2の次元(z次元)において延伸された2つのイオンミラーと、
イオン検出器と、を含み、
前記イオン加速器は、イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンを前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで加速するように配置および構成され、
前記イオンは、前記イオンミラーのうちの1つのイオンミラーから前記イオンミラーのうちの他のイオンミラーまでn回通過するように反射され、前記イオンは前記n回のうちの≧60%の間、前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されない多重反射飛行時間型質量分析器を提供する。
【0087】
前記第2の態様による質量分析器は、前記第1の態様に関して本明細書で開示されている特徴のいずれでも有し得るが、この質量分析器は、第1の態様に関して説明したようにイオンがイオン加速器から検出器まで移動するときに(例えばイオン加速器から検出器までの全飛行中に)第2の次元(z次元)においてイオンが空間的に集束されることに限定される場合とされない場合がある点が異なる。ミラー反射のうちの一部のミラー反射間の第2の次元(z次元)において、ある程度の空間集束があってもよいことが企図される。したがって、本発明の第2の態様によると、前記n回のうちの≧60%の間、イオンは第2の次元(z次元)において空間的に集束されない。任意により、イオンは、前記n回のうちの、≧65%、≧70%、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、または≧95%の間、第2の次元(z次元)において空間的に集束されない。
【0088】
前記第2の態様による質量分析器は、前記第1の態様に関して開示した特徴のいずれでも有し得るが、質量分析器が、第1の態様に関して説明したように≧5%のデューティーサイクルに限定されてもされなくてもよい点が異なる。
【0089】
前記第2の態様による質量分析器は、前記第1の態様に関して開示した特徴のいずれでも有し得るが、この質量分析器は、第1の態様に関して説明したように分解能が≧20,000に限定されてもされなくてもよい点が異なる。
【0090】
前記第2の態様による質量分析器は、前記第1の態様に関して開示した特徴のいずれでも有し得るが、この質量分析器は、第1の態様に関して説明したように第1の次元(x次元)における2つのイオンミラーの反射点間の距離が≦1000mmであることに限定されてもされなくてもよい点が異なる。
【0091】
前記第2の態様による質量分析器は、前記第1の態様に関して開示した特徴のいずれでも有し得るが、この質量分析器は、第1の態様に関して説明したように第2の次元(z次元)においてイオンが加速器から検出器まで移動する距離が≦700mmに限定されてもされなくてもよい点が異なる。
【0092】
本発明の第1の態様は、飛行時間型質量分析方法であって、
本発明の前記第1の態様に関して記載されている質量分析器を設けることと、
イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで前記イオンを加速させるように、前記イオン加速器を制御することと、を含み、前記第1の次元(x次元)における前記2つのイオンミラーの反射点間の距離が≦1000mmであり、前記イオンは前記第2の次元(z次元)において前記イオン加速器から前記検出器まで≦700mmの距離を移動し、前記イオンは前記イオン加速器から前記検出器まで移動するときに前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されず、 前記イオンは、前記検出器によって検出され、≧5%のデューティーサイクルおよび≧20,000の分解能で飛行時間型質量分析される飛行時間型質量分析方法も提供する。
【0093】
本発明の第2の態様は、飛行時間型質量分析方法であって、
本発明の前記第2の態様に関して記載されている質量分析器を設けることと、
イオンが前記第2の次元(z次元)を移動しながら前記第1の次元(x次元)において前記イオンミラー間で繰り返し反射されるように前記第1の次元に対して角度をなして前記イオンミラーのうちの第1のイオンミラー内まで前記イオンを加速させるように、前記イオン加速器を制御することと、を含み、
前記イオンは、前記イオンミラーのうちの1つのイオンミラーから前記イオンミラーのうちの他のイオンミラーまでn回通過するように反射され、前記イオンは前記n回のうちの≧60%の間、前記第2の次元(z次元)において空間的に集束されない飛行時間型質量分析方法も提供する。
【0094】
次に、本発明を理解しやすくするために、本発明の特定の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0095】
図3に、本発明の一実施形態の概略図を示す。この分析計は、入口軸に沿ってイオンビーム32を受け取るためのイオン入口30と、受け取ったイオンをパルス状に直角方向に加速するためのイオン加速器34と、イオンを反射するための1対のイオンミラー36と、イオンを検出するためのイオン検出器38とを含む。各イオンミラー36は、イオンを反射させるために電極に異なる電圧を印加することができるように、(x次元に沿って配置された)複数の電極を含む。電極は、Z次元において延伸され、それによって、以下で詳述するように各ミラーによってイオンを複数回反射させることができる。各イオンミラーは、X-Y面に2次元静電界を形成することができる。イオンミラー36間に配置された移動空間40は、イオンが反射されてイオンミラー間の空間を移動するときに、イオンが実質的に無電界である領域を通るように、実質的に無電界とすることができる。
【0096】
使用時、イオンが、連続イオンビームとして、または断続的もしくはパルス状に、イオン入口30に供給される。イオンは、望ましくはz次元に整列した軸に沿ってイオン入口に送られる。これにより、計器のデューティーサイクルが高く維持される。しかし、イオンはy次元に整列した入口軸に沿って導入されることも可能であることが企図される。イオンは、イオン入口からイオン加速器34まで通過し、イオン加速器34は、イオンのパケット31がx次元においてイオンミラー36のうちの第1のイオンミラー36に向かって移動し、入射するように、イオンをx次元において(例えば周期的に)パルス状に送り出す。イオンは、イオン加速器34内に入るときに有していた速度成分をz次元において維持するか、またはそのような速度成分をz次元において与えられる(例えば、イオンがy次元に沿ってイオン加速器に入った場合)。したがって、イオンは、x次元に対してわずかな傾斜角をなして計器の飛行時間領域40に導入され、x次元における主速度成分はイオンミラー36に向かい、z次元における若干の速度成分が検出器38に向かう。
【0097】
イオンは、イオンミラーのうちの第1のミラーに入り、イオンミラーのうちの第2にミラーに向かって反射される。イオンは、第2のミラーに向かって移動するときにミラー36間の無電界領域40を通過し、飛行時間型質量分析計において起こる既知の方式でイオンの質量対電荷比に従って分離する。次に、イオンは第2のミラーに入射し、第1のイオンミラーに対して反射され、第1のイオンミラーに向かって移動するときに再びミラー間の無電界領域を通過する。次に、第1のイオンミラーがイオンを第2のイオンミラーに対して反射する。イオンがイオン検出器に衝突するまでこれが続き、イオンは装置に沿って移動しながら2つのイオンミラーの間で連続して反射される。したがって、イオンは、イオン源とイオン検出器の間のx-z面内でほぼ正弦曲線の平均軌道をたどる。図3には4回のイオン反射が示されているが、本明細書の他の個所に記載されているように他の回数のイオン反射も企図される。
【0098】
イオン加速器からあるイオンがパルス状に送出されてからそのイオンが検出されるまでの時間を計測することができ、わかっている飛行経路長とともに使用してそのイオンの質量対電荷比を計算することができる。
【0099】
前述のように、本明細書でデューティーサイクルという場合、(パーセンテージとしての)D/Lの比を指し、ここでDはイオン加速器34によって直角方向に加速されるときのイオンパケット31のz次元における長さ(すなわち、イオン加速器31の直交加速領域のz次元における長さ)であり、Lはz次元におけるイオン加速器34の直交加速領域の中心からイオン検出器38の検出領域の中心までの距離である。
【0100】
イオンミラー間のz次元においてはイオンの集束が行われず、例えば、z次元においてはイオンを集束させる周期的レンズがない。したがって、イオンの各パケットはイオン加速器から検出器に移動しながらz次元において拡大する。MR-TOF-MS器は、従来からきわめて高い分解能を得ることを目指しており、したがってイオンミラー間で多くの回数の反射を必要とする。したがって、従来は、イオンパケットの幅が、イオンパケットが多数のミラー反射を終えて検出器に到達する時点までに検出器の幅よりも大きくなる程度まで発散するのを防ぐために、イオンミラー間においてz次元の集束を設ける必要があるとみなされてきた。これは、受容可能な計器の感度を維持するために必要であるとみなされていた。また、イオンパケットがz次元において発散し過ぎると、一部のイオンが第1の回数のみ反射されて検出器に達し、他のイオンがそれより多い回数反射されて検出器に達する可能性がある。したがって、イオンが検出器に達する途中に無電界領域を通る大幅に異なる飛行経路長を有する可能性があり、これは飛行時間型質量分析計においては望ましくない。しかし、本発明の発明者らは、計器内のイオン飛行経路を比較的短く維持し、デューティーサイクル(すなわちD/L)を比較的高くすれば、適度に高い感度と分解能とを維持しながらz次元の集束をなくすことができることを認めた。
【0101】
したがって、2つのイオンミラーの反射点間の距離Sは比較的短く維持され、イオンがz次元においてイオン加速器から検出器まで移動する距離Wが比較的短く維持される。
【0102】
イオン加速器から検出器まで移動するときにイオンパケットをz次元においてコリメートするためにコリメータを設けることができることが企図される。これにより、すべてのイオンがイオン加速器と検出器の間でイオンミラーにおいて確実に同じ回数の反復を行うようになる(すなわち、検出器におけるエイリアシングを防ぐ)。
【0103】
任意により、各イオンミラーは、4通りの異なる(接地されていない)電圧が印加される少なくとも4つの電極を有してもよい。各イオンミラーは、追加の電極を含んでもよく、追加の電極は接地されるかまたはミラーの他の電極と同じ電圧に維持されてもよい。各ミラーは、任意により、イオンの第1の次元の飛行時間集束がy-z面におけるイオンの位置とは実質的に独立し、すなわち、y次元とz次元の両方におけるイオンの位置とは(一次近似まで)独立しているように配置および構成された、少なくとも4つの電極を有する。図3に、イオンミラーのうちの1つのイオンミラーの電極に印加可能な例示の電圧を示す。図示されていないが、同じ電圧を他方のイオンミラーにも対称的に印加することができる。例えば、各イオンミラーの入口電極がドリフト電圧(例えば-5kV)に維持され、それによってイオンミラー間の無電界領域を維持する。イオンミラーのさらに内側の電極は、より低い(またはイオンの極性によっては、より高い)電圧(例えば-10kV)に維持されてもよい。イオンミラーのさらに内側の電極は、ドリフト電圧(例えば-5kV)に維持されてもよい。イオンミラーのさらに内側の電極は、より低い(またはより高い)電圧(例えば-10kV)に維持されてもよい。イオンミラーのさらに内側の1つまたは複数の他の電極は、イオンをミラーから外に反射するように、1つまたは複数のより高い電圧、任意により、漸進的に高い電圧(例えば11kVおよび+2kV)に維持されてもよい。
【0104】
イオン入口は、例えばy次元および/またはx次元においてスリットコリメータを使用してイオンをコリメートすることができるイオンガイド33から、イオンを受け取ることができる。イオンガイドは、例えば≧100℃、≧110℃、≧120℃、≧130℃、140℃、または≧150℃に加熱されてもよい。
【0105】
イオンビームは、イオン加速器34に入る前にy次元および/またはx次元において拡大させることができることが企図される。これに代えて、またはこれに加えて、イオンは、イオン加速器34に入る前に、z次元において分離されてもよい。
【0106】
イオン加速器34の電極は、例えば、≧100℃、≧110℃、≧120℃、≧130℃、140℃、または≧150℃に加熱されてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、グリッドレスイオン加速器を使用してもよい。イオン加速器が加熱される場合、グリッドレスイオン加速器は、グリッドレスでない場合に加熱によって生じることになるグリッドのたるみが生じない。
【0107】
本明細書に記載のような様々な構成要素を加熱することで、界面帯電を低減しやすくすることができる。
【0108】
イオン加速器34についてイオンビームを受け取るものとして説明したが、イオン加速器は代わりにパルスイオン源を含み得ることが企図される。
【0109】
図4に本発明の別の実施形態を示す。この実施形態は、検出器38が(z次元における)計器のイオン加速器34と同じ側に配置され、計器がz次元においてイオンを検出器38に向けて反射させるための反射電極42を含む点を除き、図3に示すものと実質的に同じである。使用時、図3と同様にしてイオンが計器を通過し、z次元において第1の方向に通過しながらイオンミラー36間で複数回反射される。何回かの反射後、イオンは、イオンミラー間に配置可能な反射電極42に達する。反射電極42は、イオンが第1の方向とは反対の第2の方向に移動するように、z次元においてイオンを反射する。イオンは、イオン検出器38に衝突するまで、第2の方向に移動しながらイオンミラー36間で反射され続ける。この実施形態は、図3の実施形態と比較して、与えられた物理空間においてより多くの反射が行われるようにすることができる。イオンはz次元においてさらに1回または複数回反射させることもでき、適切に配置された検出器がこれらの1つまたは複数の追加のz-反射後にイオンを受け取ることができることが企図される。
【0110】
図5A-1ないし図5B-3に、異なるサイズの、z次元集束のないMR-TOF-MS器のモデル化された分解能およびデューティーサイクルを示す。このデータは、9.2keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている。
【0111】
図6A-1ないし図6B-3に、データが6keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1ないし図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す。
【0112】
図7-1ないし図7-3に、データが3keV、4keVおよび5keVのミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてモデル化されている以外は、図5A-1ないし図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す。
【0113】
図8-1ないし図8-2に、イオンがミラーで5回反射され、4keVと10keVの間のミラー間の無電界領域におけるエネルギーを有するイオンについてデータがモデル化されている以外は、図5A-1ないし図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す。
【0114】
図9-1ないし図9-2に、ミラーで6回反射されるイオンについてデータがモデル化されている以外は、図8-1ないし図8-2に示すものに対応するパラメータのデータを示す。
【0115】
図10-1ないし図10-2に、約10%のデューティーサイクルを達成するためにデータがモデル化されている以外は、図5A-1ないし図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す。
【0116】
図11-1ないし図11-2に、中程度のサイズを有する計器の、図5A-1ないし図5B-3に示すものに対応するパラメータのデータを示す。
【0117】
本発明について好ましい実施形態を参照しながら説明したが、当業者は、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変更を加えることができることがわかるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A-1】
図5A-2】
図5A-3】
図5B-1】
図5B-2】
図5B-3】
図6A-1】
図6A-2】
図6A-3】
図6B-1】
図6B-2】
図6B-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】