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特許7389171トランジスタ及びトランジスタの作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】トランジスタ及びトランジスタの作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231121BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
G02F1/1368
H01L29/78 616V
H01L29/78 617M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022069923
(22)【出願日】2022-04-21
(62)【分割の表示】P 2022042578の分割
【原出願日】2010-11-04
(65)【公開番号】P2022109267
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2009255315
(32)【優先日】2009-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】小山 潤
(72)【発明者】
【氏名】三宅 博之
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281988(JP,A)
【文献】特開2007-123861(JP,A)
【文献】国際公開第2009/093625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、29/786
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル領域を含む酸化物半導体層と、を有し、
前記酸化物半導体層は、Inと、Snと、Znと、を有し、
常温でのオフ電流が1×10-13A以下であるトランジスタ。
【請求項2】
チャネル領域を含む酸化物半導体層と、を有し、
前記酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Snと、Znと、を有し、
常温でのオフ電流が1×10 -13 A以下であるトランジスタ。
【請求項3】
ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上のチャネル領域を含む酸化物半導体層と、を有し、
前記酸化物半導体層は、Inと、Snと、Znと、を有し、
常温でのオフ電流が1×10-13A以下であるトランジスタ。
【請求項4】
ゲート電極と、
前記ゲート電極上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上のチャネル領域を含む酸化物半導体層と、を有し、
前記酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Snと、Znと、を有し、
常温でのオフ電流が1×10 -13 A以下であるトランジスタ。
【請求項5】
チャネル領域を含む酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上のゲート電極と、を有し、
前記酸化物半導体層は、Inと、Snと、Znと、を有し、
常温でのオフ電流が1×10-13A以下であるトランジスタ。
【請求項6】
チャネル領域を含む酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上のゲート電極と、を有し、
前記酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Snと、Znと、を有し、
常温でのオフ電流が1×10 -13 A以下であるトランジスタ。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一において、
前記ゲート絶縁膜は、ハフニウムの酸化物を有するトランジスタ。
【請求項8】
請求項乃至請求項のいずれか一において、
前記酸化物半導体層に接する領域を有するソース電極と、
前記酸化物半導体層に接する領域を有するドレイン電極と、を有し、
前記ゲート電極、前記ソース電極及び前記ドレイン電極のそれぞれは、チタンを有するトランジスタ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項のいずれか一において、
常温でのチャネル幅1μmあたりのオフ電流が1×10-17A以下であるトランジスタ。
【請求項10】
In、Sn及びZnを含む酸化物半導体層にチャネル領域を有し、
常温でのオフ電流が1×10-13A以下であるトランジスタの作製方法であって、
前記酸化物半導体層を形成した後、第1の加熱処理を行う工程と、
前記第1の加熱処理後に、前記酸化物半導体層と接する領域を有する酸化物絶縁層を形成する工程と、
前記酸化物絶縁層を形成した後に、第2の加熱処理を行う工程と、を有するトランジスタの作製方法。
【請求項11】
In、Ga、Sn及びZnを含む酸化物半導体層にチャネル領域を有し、
常温でのオフ電流が1×10 -13 A以下であるトランジスタの作製方法であって、
前記酸化物半導体層を形成した後、第1の加熱処理を行う工程と、
前記第1の加熱処理後に、前記酸化物半導体層と接する領域を有する酸化物絶縁層を形成する工程と、
前記酸化物絶縁層を形成した後に、第2の加熱処理を行う工程と、を有するトランジスタの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及びその作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、液晶表示装置や発光装置などの電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全
て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体膜を用いてトランジスタを構成する技
術が注目されている。トランジスタはICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応
用され、特に画像表示装置のスイッチング素子として開発が急がれている。
【0004】
半導体特性を示す材料の一つとして、金属酸化物が挙げられる。半導体特性を示す金属酸
化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛などが
あり、このような半導体特性を示す金属酸化物をチャネル形成領域とするトランジスタが
既に知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
また、酸化物半導体を適用したトランジスタは、電界効果移動度が高い。そのため、当該
トランジスタを用いて、表示装置などの駆動回路を構成することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絶縁表面上に複数の異なる回路を形成する場合、例えば、画素部と駆動回路を同一基板上
に形成する場合には、画素部に用いるトランジスタは、優れたスイッチング特性、例えば
オンオフ比が大きいことが要求され、駆動回路に用いるトランジスタには動作速度が速い
ことが要求される。特に、表示部が高精細であればあるほど、表示画像の書き込み時間が
短くなるため、駆動回路に用いるトランジスタは速い動作速度とすることが好ましい。ま
た、高精細化と相反する開口率を向上させることで表示品質を高めることができる。
【0008】
本発明の一態様は、電気特性が良好で信頼性の高いトランジスタをスイッチング素子とし
て用い、同一基板上に画素部と、高速動作が可能な駆動回路部とを有する表示品質及び信
頼性の高い半導体装置を作製することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、同一基板上に、トランジスタを含む駆動回路部と、トランジスタを含
む画素部と、を形成した半導体装置及びその作製方法に係り、一方の面(表層部)に結晶
領域を有する酸化物半導体層を用いた2種類のトランジスタを形成し、ゲート電極層の配
置によりチャネルが形成される領域を選択する半導体装置である。より具体的には、例え
ば以下の構成とすることができる。
【0010】
本発明の一態様の半導体装置は、同一基板上に第1のトランジスタを有する画素部と、第
2のトランジスタを有する駆動回路部と、を有し、第1のトランジスタは、基板上に第1
のゲート電極層と、第1のゲート電極層上にゲート絶縁層として機能する第1の絶縁層と
、第1の絶縁層上に表層部にナノ結晶からなる結晶領域を有する第1の酸化物半導体層と
、第1の酸化物半導体層の一部と重なる第1のソース電極層及び第1のドレイン電極層と
、第1の酸化物半導体層の一部と接する第2の絶縁層と、を有し、第2のトランジスタは
、基板上に第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に、表層部にナノ結晶からなる結晶領域を有
する第2の酸化物半導体層と、第2の酸化物半導体層の一部と重なる第2のソース電極層
及び第2のドレイン電極層と、第2の酸化物半導体層の一部と接し、ゲート絶縁層として
機能する第2の絶縁層と、第2の絶縁層上に、第2のゲート電極層と、を有する。
【0011】
また、上記の半導体装置において、結晶領域は、第1の酸化物半導体層または第2の酸化
物半導体層それぞれの表面に対し、垂直方向にc軸配向をしたナノ結晶が形成されている
【0012】
また、上記の半導体装置において、第2の酸化物半導体層と第2のソース電極層との間、
及び第2の酸化物半導体層と第2のドレイン電極層との間に、それぞれ酸化物導電層を有
していても良い。
【0013】
また、上記の半導体装置において、第2のトランジスタを、駆動回路部のシフトレジスタ
に用いるのが好ましい。
【0014】
なお、酸化物半導体層としては、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系
や、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-
Al-Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Z
n-O系や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn
-O系、Zn-Mg-O系、Sn-Mg-O系、In-Mg-O系や、In-O系、Sn
-O系、Zn-O系などの酸化物半導体層を用いることができる。また、上記酸化物半導
体層にSiOを含んでもよい。
【0015】
また、酸化物半導体層は、InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いる
ことができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の
金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及び
Coなどがある。InMO(ZnO)(m>0)で表記される構造の酸化物半導体の
うち、MとしてGaを含む構造の酸化物半導体を、上記したIn-Ga-Zn-O系酸化
物半導体とよび、その薄膜をIn-Ga-Zn-O系膜ともよぶこととする。
【0016】
また、酸化物半導体層には、RTA(ラピッドサーマルアニール)法等で高温短時間の脱
水または脱水素化処理をしたものを用いる。この加熱工程により、酸化物半導体層の表層
部はナノ結晶からなる微結晶群で構成された結晶領域を有するようになり、その他の部分
は非晶質、非晶質領域中に微結晶が点在した非晶質と微結晶の混合物、または全体が微結
晶群となる。
【0017】
また、本発明の一態様であるトランジスタを用いて、駆動回路部及び画素部とを同一基板
上に形成し、EL素子、液晶素子または電気泳動素子などを用いて半導体装置を作製する
ことができる。
【0018】
なお、本明細書において、ゲート電極層とは、ゲート電極の他にゲート配線の一部または
全部を含む。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極
や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいい、例えば表示装置における走
査線もゲート配線に含まれる。
【0019】
また、ソース電極層とは、ソース電極の他にソース配線の一部または全部を含む。ソース
配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気
的に接続させるための配線のことをいい、例えば表示装置における信号線がソース電極に
電気的に接続される場合にはソース配線に信号線も含まれる。
【0020】
また、ドレイン電極層とは、ドレイン電極の他にドレイン配線の一部または全部を含む。
ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配
線とを電気的に接続させるための配線のことをいい、例えば表示装置における信号線がド
レイン電極に電気的に接続される場合にはドレイン配線に信号線も含まれる。
【0021】
また、本明細書、特許請求の範囲または図面などにおいて、トランジスタのソースとドレ
インは、トランジスタの構造や動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソ
ースまたはドレインであるかを限定することが困難である。そこで、本明細書、特許請求
の範囲または図面などにおいては、ソース及びドレインのいずれかから任意に選択した一
方をソース及びドレインの一方と表記し、他方の端子をソース及びドレインの他方と表記
する。
【0022】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光
源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexib
le printed circuit)もしくはTAB(Tape Automate
d Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Packag
e)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けら
れたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glas
s)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むもの
とする。
【0023】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を
示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称
を示すものではない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様を実施することにより、同一基板上に高速動作が可能な駆動回路部と、画
素部とを有した半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一態様を示す断面工程図。
図2】本発明の一態様を示す断面工程図。
図3】シフトレジスタの構成を示す回路図。
図4】シフトレジスタの動作を説明する回路図およびタイミングチャート。
図5】パルス出力回路の動作を示す図。
図6】パルス出力回路の動作を示す図。
図7】パルス出力回路の動作を示す図。
図8】半導体装置のブロック図を説明する図。
図9】信号線駆動回路の構成を示す図。
図10】本発明の一態様を説明する断面図及び平面図。
図11】本発明の一態様を説明する断面図及び平面図。
図12】本発明の一態様を説明する断面図。
図13】本発明の一態様を説明する断面図。
図14】半導体装置の画素等価回路を説明する図。
図15】本発明の一態様を説明する断面図。
図16】本発明の一態様を説明する断面図及び平面図。
図17】電子ペーパーの使用形態の例を説明する図。
図18】電子書籍の一例を示す外観図。
図19】テレビジョン装置およびデジタルフォトフレームの例を示す外観図。
図20】遊技機の例を示す外観図。
図21】携帯電話機の一例を示す外観図。
図22】酸化物半導体を用いた逆スタガ型のトランジスタの縦断面図。
図23図22に示すA-A’間におけるエネルギーバンド図(模式図)。(A)ソースとドレインの間の電圧を等電位(V=0)とした場合、(B)ソースに対しドレインに正の電位(V>0)を加えた場合。
図24】真空準位と金属の仕事関数(φM)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す図。
図25】ゲート電圧が0Vの場合の図22のB-B’の間におけるエネルギーバンド図(模式図)。
図26図22のB-B’の間におけるエネルギーバンド図(模式図)。(A)ゲート(GE1)に正の電位(V>0)が印加された場合、(B)ゲート(GE1)に負の電位(V<0)が印加された場合。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈さ
れるものではない。なお、本明細書中の図面において、同一部分または同様な機能を有す
る部分には同一の符号を付し、その説明は省略する場合がある。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態である半導体装置及び半導体装置の作製方法を、図1
を用いて説明する。図1(E)には、同一基板上に作製された異なる構造の2つのトラン
ジスタ440、450の断面構造の一例を示す。図1(E)に示すトランジスタ440は
逆スタガ型と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり、トランジスタ450はトップゲー
ト構造のトランジスタである。
【0028】
画素に配置されるトランジスタ440は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極
層451、ゲート絶縁層として機能する第1の絶縁層402、チャネル形成領域を含む酸
化物半導体層404b、ソース電極層455c、及びドレイン電極層455dを含む。ま
た、トランジスタ440を覆い、酸化物半導体層404bの一部と接する第2の絶縁層4
28が設けられる。
【0029】
なお、画素に配置されるトランジスタ440は、シングルゲート構造のトランジスタを用
いて説明したが、必要に応じて、マルチゲート構造のトランジスタ、又はチャネル形成領
域の上下に絶縁膜を介してゲート電極層を配置するデュアルゲート構造も形成することが
できる。
【0030】
酸化物半導体層404bの上方には、ソース電極層455c、及びドレイン電極層455
dの一部がそれぞれ重なって形成されている。また、酸化物半導体層404bは、第1の
絶縁層402を介してゲート電極層451と重なっている。画素に配置されるトランジス
タ440のチャネル形成領域は、酸化物半導体層404bのうち、ソース電極層455c
と接する領域と、ドレイン電極層455dと接する領域に挟まれ、第1の絶縁層402と
接し、且つゲート電極層451と重なる領域である。
【0031】
また、トランジスタ440は、ゲート電極層451、ソース電極層455c、及びドレイ
ン電極層455dに透光性を有する導電膜を用いることで、高開口率を有する半導体装置
を実現することができる。透光性を有する材料は、可視光に対して透光性を有する導電材
料、例えばIn-Sn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-Al-Zn-O系、Sn
-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn-O系、In-Zn-
O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-O系、In-O系、Sn-O系、Zn-O系の酸
化物導電材料を適用することができ、スパッタ法を用いる場合は、SiOを2重量%以
上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行い、透光性を有する導電膜にSiOx
(X>0)を含ませ、非晶質の状態とするのが良い。
【0032】
駆動回路部に配置されるトランジスタ450は絶縁表面を有する基板400上に、第1の
絶縁層402、チャネル形成領域を有する酸化物半導体層404a、ソース電極層455
a、ドレイン電極層455b、ゲート絶縁層として機能する第2の絶縁層428、及びゲ
ート電極層421を含む。
【0033】
トランジスタ450のゲート電極層421、ソース電極層455a及びドレイン電極層4
55b(これと同じ層で形成される配線を含む)は、Al、Cu、Cr、Ta、Ti、M
o、Wなどの金属材料、または該金属材料を成分とする合金材料で形成する。また、Al
、Cuなどの金属層の一方または双方にCr、Ta、Ti、Mo、Wなどの高融点金属層
を積層させた構成としても良い。また、Si、Ti、Ta、W、Mo、Cr、Nd、Sc
、YなどAl膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素が添加されているA
l材料を用いることで耐熱性を向上させることが可能となる。
【0034】
ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)は導電性の金属酸
化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸
化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In
SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)ま
たは前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることが
できる。
【0035】
酸化物半導体層404aの上方には、ソース電極層455a、及びドレイン電極層455
bの一部が重なって形成されている。また、酸化物半導体層404aは、ゲート電極層4
21と第2の絶縁層428を介して重なっている。駆動回路部に配置されるトランジスタ
450のチャネル形成領域は、酸化物半導体層404aのうち、ソース電極層455aと
接する領域と、ドレイン電極層455bと接する領域に挟まれ、第2の絶縁層428と接
し、且つゲート電極層421と重なる領域である。
【0036】
酸化物半導体層としては、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系や、三
元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-Al-
Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn-O
系や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-O系
、Zn-Mg-O系、Sn-Mg-O系、In-Mg-O系や、In-O系、Sn-O系
、Zn-O系などの酸化物半導体層を用いることができる。また、上記酸化物半導体層に
SiOを含んでもよい。
【0037】
また、酸化物半導体層は、InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いる
ことができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の
金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及び
Coなどがある。InMO(ZnO)(m>0)で表記される構造の酸化物半導体の
うち、MとしてGaを含む構造の酸化物半導体を、上記したIn-Ga-Zn-O系酸化
物半導体とよび、その薄膜をIn-Ga-Zn-O系膜ともよぶこととする。
【0038】
また、酸化物半導体層には、RTA(Rapid Thermal Anneal:ラピ
ッドサーマルアニール)法等で高温短時間の脱水または脱水素化処理をしたものを用いる
。この加熱工程により、酸化物半導体層の表層部は粒子サイズが1nm以上20nm以下
の所謂ナノクリスタル(ナノ結晶とも表記する)で構成された結晶領域を有するようにな
り、その他の部分は非晶質、または、非晶質領域中に微結晶が点在した非晶質と微結晶の
混合物となる。なお、ナノ結晶の大きさは一例に過ぎず、発明が上記数値範囲に限定して
解釈されるものではない。
【0039】
この様な構成をした酸化物半導体層を用いることにより、表層部はナノ結晶で構成された
緻密な結晶領域が存在するため、表層部からの水分の再侵入や酸素の脱離によるn型化が
影響する電気特性の劣化を防止することができる。また、酸化物半導体層の表層部は、ボ
トムゲート型のトランジスタ440においてはチャネルと逆側であり、n型化の防止は寄
生チャネルの抑制にも効果がある。また、結晶領域を有することで導電率が向上した表層
部とソース電極層またはドレイン電極層との接触抵抗を下げることができる。
【0040】
酸化物半導体層の表層部の結晶領域は、酸化物半導体層の表面に対して略垂直な方向にc
軸(c-axis)が配向した結晶粒を有する。例えば、In-Ga-Zn-O系の酸化
物半導体材料を用いる場合には、結晶領域は、InGaZnO結晶粒のc軸が酸化
物半導体層の表面に対して略垂直な方向に配向したものとなる。例えば、酸化物半導体層
にIn-Ga-Zn-O系の酸化物半導体材料を用いる場合、InGaZnO結晶
粒のc軸が基板平面(または、酸化物半導体層表面)に対して垂直な方向となるようにナ
ノ結晶を配列させることにより、トランジスタにおける電流の方向がInGaZnO
結晶粒のb軸方向(またはa軸方向)となる。
【0041】
なお、結晶領域は、結晶粒以外のものを含んでいても良い。また、結晶粒の結晶構造も上
記に限定されず、他の結晶構造の結晶粒を含んでいても良い。例えば、In-Ga-Zn
-O系の酸化物半導体材料を用いる場合には、InGaZnOの結晶粒に加え、I
nGaZnOの結晶粒などを含んでいても良い。
【0042】
以下、図1(A)乃至図1(E)を用い、同一基板上にトランジスタ440及びトランジ
スタ450を作製する工程を説明する。
【0043】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ
工程によりゲート電極層451を形成する。このとき段切れ防止のために、少なくともゲ
ート電極層451の端部にテーパー形状が形成されるようにエッチングするのが好ましい
【0044】
なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジ
ェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。もちろ
ん、第1のフォトリソグラフィ工程だけでなく、他のフォトリソグラフィ工程にも適用で
きる。
【0045】
基板400としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、若しくは
アルミノシリケートガラスなど、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガ
ラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラス
チック基板等を用いることができる。また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁
膜を設けた基板を適用しても良い。
【0046】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶
縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。
【0047】
ゲート電極層451は、画素部の開口率を向上させるために、透光性を有する酸化物導電
層を用いて作製することが好ましい。酸化物導電層としては、例えば、酸化インジウム、
酸化インジウム酸化スズ合金、酸化インジウム酸化亜鉛合金、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミ
ニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、または酸化亜鉛ガリウム等を用いることができる。
【0048】
なお、ゲート電極層451を形成する導電膜としては、Al、Cr、Ta、Ti、Mo、
Wから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わ
せた合金膜または積層膜等を用いてもよい。
【0049】
また、下地膜となる絶縁層を基板400とゲート電極層451の間に設けてもよい。下地
膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素膜、酸化珪素
膜、窒化酸化珪素膜、または酸化窒化珪素膜から選ばれた一つ、または複数の膜による積
層構造により形成することができる。
【0050】
次いで、ゲート電極層451上に第1の絶縁層402を形成する。第1の絶縁層402は
CVD法やスパッタ法などで形成する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコ
ン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどの単層膜または積層膜を用いる
ことができる。また、膜厚を50nm以上250nm以下とする。なお、第1の絶縁層4
02は、トランジスタ440のゲート絶縁層として機能し、トランジスタ450の下地絶
縁層として機能する。
【0051】
第1の絶縁層402の形成は、高密度プラズマ装置により行うこともできる。ここでは、
高密度プラズマ装置は、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成できる装置を指
している。例えば、3kW~6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させて、
第1の絶縁層402の成膜を行う。
【0052】
チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)と希ガ
スを導入し、10Pa~30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁
表面を有する基板上に絶縁層を形成する。その後、モノシランガスの供給を停止し、大気
に曝すことなく亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁層表面にプラズマ処理を
行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁層表面に行わ
れるプラズマ処理は、絶縁層の成膜より後に行う。上記プロセス順序を経た絶縁層は、膜
厚が薄く、例えば100nm未満であっても信頼性を確保することができる絶縁層である
【0053】
第1の絶縁層402の形成の際、チャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜
酸化窒素(NO)との流量比は、1:10から1:200の範囲とする。また、チャン
バーに導入する希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用い
ることができるが、中でも安価であるアルゴンを用いることが好ましい。
【0054】
また、高密度プラズマ装置により得られた絶縁層は、一定した厚さの膜形成ができるため
段差被覆性に優れている。また、高密度プラズマ装置により得られる絶縁層は、薄い膜の
厚みを精密に制御することができる。
【0055】
上記プロセス順序を経た絶縁層は、従来の平行平板型のPCVD装置で得られる絶縁層と
は大きく異なっており、同じエッチャントを用いてエッチング速度を比較した場合におい
て、平行平板型のPCVD装置で得られる絶縁層の10%以上または20%以上遅く、高
密度プラズマ装置で得られる絶縁層は緻密な膜と言える。
【0056】
また、第1の絶縁層402として、有機シランガスを用いたCVD法により酸化シリコン
層を形成することも可能である。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学
式Si(OC)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、
テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキ
サン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(Si
H(OC)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)等
のシリコン含有化合物を用いることができる。
【0057】
また、第1の絶縁層402として、アルミニウム、イットリウム、又はハフニウムの酸化
物、窒化物、酸化窒化物、又は窒化酸化物の一種又はそれらの化合物を少なくとも2種以
上含む化合物を用いることもできる。
【0058】
なお、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成として、窒素原子よりも酸素原子の
数が多い物質のことを指し、窒化酸化物とは、その組成として、酸素原子より窒素原子の
数が多い物質のことを指す。例えば、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素原
子よりも酸素原子の数が多く、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford
Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(H
FS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場
合に、濃度範囲として酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上1
5原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10
原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン膜とは、その組成とし
て、酸素原子より窒素原子の数が多く、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、濃度
範囲として酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、
シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上30原子%以下の範囲
で含まれるものをいう。但し、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子
の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範
囲内に含まれるものとする。
【0059】
次いで、第1の絶縁層402上に、膜厚5nm以上200nm以下、好ましくは10nm
以上20nm以下の酸化物半導体膜403を形成する(図1(A))。
【0060】
なお、酸化物半導体膜403を成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生さ
せる逆スパッタを行い、第1の絶縁層402の表面に付着しているゴミを除去することが
好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板
側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法
である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アル
ゴン雰囲気に酸素、NOなどを加えた雰囲気で行ってもよい。また、アルゴン雰囲気に
Cl、CFなどを加えた雰囲気で行ってもよい。逆スパッタ処理後、大気に曝すこと
なく酸化物半導体膜を成膜することによって、第1の絶縁層402と酸化物半導体膜40
3の界面にゴミや水分が付着するのを防ぐことができる。
【0061】
酸化物半導体膜は、In-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-Al-Z
n-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn-O系
、In-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-O系、In-O系、Sn-O系、
またはZn-O系などの酸化物半導体膜を用いることができる。また、酸化物半導体膜は
、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアル
ゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。また、スパッ
タ法を用いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜
を行い、酸化物半導体膜に結晶化を阻害するSiOx(X>0)を含ませても良い。
【0062】
ここでは、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲット(組成比としてI
:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]、またはIn:Ga
:ZnO=1:1:2[mol数比])を用いて、基板とターゲットの間との距離を
100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100
%)雰囲気下で成膜する。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する
粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ま
しい。本実施の形態では、酸化物半導体膜として、In-Ga-Zn-O系酸化物半導体
成膜用ターゲットを用いてスパッタ法により膜厚15nmのIn-Ga-Zn-O系膜を
成膜する。
【0063】
なお、酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化
物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0064】
また、酸化物半導体膜を第1の絶縁層402上に連続成膜するのが好ましい。ここで用い
るマルチチャンバー型のスパッタリング装置は、珪素もしくは酸化珪素(人工石英)ター
ゲットと、酸化物半導体膜用のターゲットを備えており、少なくとも、酸化物半導体膜用
のターゲットを設けた成膜室は、排気手段としてクライオポンプを有している。なお、ク
ライオポンプに代えて、ターボ分子ポンプを用い、当該ターボ分子ポンプの吸気口上に水
分などを吸着させるべくコールドトラップを設ける構成としても良い。
【0065】
クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、HOなど水素原子を
含む化合物や、炭素原子や、炭素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成
膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0066】
また、酸化物半導体膜は基板を加熱しながら成膜してもよい。このとき基板温度を100
℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱しながら成
膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができ
る。
【0067】
スパッタ法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタ法、直流電源を用いる
DCスパッタ法、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタ法がある。RF
スパッタ法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタ法は主に金属導電膜を
成膜する場合に用いられる。
【0068】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタ装置もある。多元スパッタ
装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種
類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0069】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタ法を用いるスパッタ装置
や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタ
法を用いるスパッタ装置がある。
【0070】
また、スパッタ法を用いる成膜方法として、成膜中にターゲット物質とスパッタガス成分
とを化学反応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタ法や、成膜中に
基板にも電圧をかけるバイアススパッタ法もある。
【0071】
次に、第2のフォトリソグラフィ工程を行い、レジストマスクを形成し、In-Ga-Z
n-O系膜をエッチングする。エッチングには、例えば、クエン酸やシュウ酸などの有機
酸をエッチャントとして用いることができる。酸化物半導体層404a、404bの端部
をテーパー状にエッチングすることで、段差形状による配線の段切れを防ぐことができる
。なお、ここでのエッチングは、ウェットエッチングに限定されずドライエッチングを用
いてもよい。
【0072】
次いで、酸化物半導体層404a、404bの脱水化または脱水素化を行う。この脱水化
または脱水素化を行う第1の加熱処理は、不活性ガス雰囲気下で抵抗加熱やランプ照射な
どの手段を用い、500℃以上750℃以下(若しくはガラス基板の歪点以下の温度)で
1分間以上10分間以下程度、好ましくは650℃、3分間以上6分間以下程度のRTA
処理で行うことができる。RTA法を用いれば、短時間に脱水化または脱水素化が行える
ため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。なお、加熱処理は、こ
のタイミングに限らず、フォトリソグラフィ工程や成膜工程の前後などで複数回行っても
良い。
【0073】
なお、本明細書では、窒素、または希ガス等の不活性気体雰囲気下での加熱処理を脱水化
または脱水素化のための加熱処理と呼ぶ。本明細書では、この加熱処理によってHとし
て脱離させていることのみを脱水素化と呼んでいるわけではなく、H、OHなどを脱離す
ることを含めて脱水化または脱水素化と便宜上呼ぶこととする。
【0074】
酸化物半導体層に対して脱水化または脱水素化を行う加熱温度Tから、脱水化または脱水
素化を行った同じ炉で大気に触れさせることなく、水または水素を再び混入させないよう
に降温を行うことが重要である。脱水化または脱水素化と同時に酸素欠乏状態となり、酸
化物半導体層をn型化(n、nなど)即ち、低抵抗化させた後、酸素を補填すること
で高抵抗化させてi型とした酸化物半導体層を用いてトランジスタを作製すると、トラン
ジスタのしきい値電圧値をプラスとすることができ、所謂ノーマリーオフ特性のスイッチ
ング素子を実現できる。トランジスタのゲート電圧が0Vにできるだけ近い正のしきい値
電圧でチャネルが形成されることが表示装置には望ましい。なお、トランジスタのしきい
値電圧値がマイナスであると、ゲート電圧が0Vでもソース電極とドレイン電極の間に電
流が流れる、所謂ノーマリーオン特性となりやすい。アクティブマトリクス型の表示装置
においては、回路を構成するトランジスタの電気特性が重要であり、この電気特性が表示
装置の性能を左右する。特に、トランジスタの電気特性のうち、しきい値電圧(Vth)
が重要である。電界効果移動度が高くともしきい値電圧値が高い、或いはしきい値電圧値
がマイナスであると、回路として制御することが困難である。しきい値電圧値が高く、し
きい値電圧の絶対値が大きいトランジスタの場合には、駆動電圧が低い状態ではトランジ
スタとしてのスイッチング機能を果たすことができず、負荷となる恐れがある。nチャネ
ル型のトランジスタの場合、ゲート電圧に正の電圧を印加してはじめてチャネルが形成さ
れて、ドレイン電流が流れ出すトランジスタが望ましい。駆動電圧を高くしないとチャネ
ルが形成されないトランジスタや、負の電圧状態でもチャネルが形成されてドレイン電流
が流れるトランジスタは、回路に用いるトランジスタとしては不向きである。
【0075】
また、加熱温度Tからの降温時におけるガス雰囲気は、加熱温度Tまで昇温したガス雰囲
気と異なるガス雰囲気に切り替えてもよい。例えば、脱水化または脱水素化を行った同じ
炉で大気に触れさせることなく、炉の中を高純度の酸素ガスまたはNOガス、超乾燥エ
ア(露点が-40℃以下、好ましくは-60℃以下)で満たして冷却を行う。
【0076】
なお、第1の加熱処理においては、雰囲気中に、水、水素などが含まれないことが好まし
い。または、加熱処理装置に導入する不活性ガスの純度を、6N(99.9999%)以
上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好
ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0077】
上記、不活性気体雰囲気下での加熱処理を行った場合、酸化物半導体層は加熱処理により
酸素欠乏型となって低抵抗化、即ちn型化(n化など)する。その後、酸化物半導体層
に接する酸化物絶縁層の形成を行うことにより酸化物半導体層の酸素欠損部を補償するこ
とで高抵抗化、即ちi型化させているとも言える。これにより、電気特性が良好で信頼性
のよいトランジスタを作製することができる。
【0078】
上記条件で脱水化または脱水素化を十分に行った酸化物半導体層は、昇温脱離ガス分析法
(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)で45
0℃まで昇温しても水分の脱離を示すスペクトルに2つのピーク、少なくとも250~3
00℃付近に現れる1つのピークは検出されない。
【0079】
なお、酸化物半導体層404a、404bは、成膜された段階では多くの未結合手を有す
る非晶質であるが、上記脱水化または脱水素化処理の第1の加熱工程を行うことで、近距
離にある未結合手同士が結合し合い、秩序化された非晶質構造とすることができる。また
、秩序化が発展すると、非晶質領域中に微結晶が点在した非晶質と微結晶の混合物、また
は全体が非晶質で形成され、酸化物半導体層404a、404bの表層部にナノ結晶で構
成された結晶領域405a、405bが形成される(図1(B))。また、酸化物半導体
層404a、404bのその他の領域は、非晶質、非晶質領域中に微結晶が点在した非晶
質と微結晶の混合物となる。なお、結晶領域405a、405bは酸化物半導体層404
a、404bの一部であり、以降、酸化物半導体層404a、404bの表記には、結晶
領域405a、405bは含まれるものとする。また、微結晶の粒子サイズは1nm以上
20nm以下の所謂ナノ結晶であり、一般的に微結晶(マイクロクリスタル)と呼ばれる
微結晶粒子よりも小さいサイズである。
【0080】
なお、結晶領域405a、405bにおいては、膜表面に対し垂直方向にc軸配向をした
ナノ結晶が形成されることが好ましく、この場合、c軸方向に長軸を有し、短軸方向は1
nm乃至20nmとなるのが好ましい。
【0081】
なお、工程の順序によっては酸化物半導体層の側面部には結晶領域は形成されず、側部を
除く表層部に結晶領域が形成される。ただし、側面部の面積比率は小さく、この場合にお
いても電気特性の劣化の防止等の効果は維持される。
【0082】
第1の加熱処理後の酸化物半導体層404a、404bは、酸素欠乏型となって成膜直後
よりもキャリア濃度が高まり、好ましくは1×1018/cm以上のキャリア濃度を有
し、低抵抗化した酸化物半導体層404a、404bとなる。
【0083】
また、ゲート電極層421も第1の加熱処理の条件、または材料によっては、結晶化し、
微結晶膜または多結晶膜となる場合もある。例えば、ゲート電極層421として、酸化イ
ンジウム酸化錫を用いる場合は450℃1時間の第1の熱処理で結晶化するが、酸化珪素
を含む酸化インジウム酸化錫を用いる場合は結晶化が起こりにくい。
【0084】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物
半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を
取り出し、島状の酸化物半導体層に加工するためのフォトリソグラフィ工程を行う。
【0085】
次いで、図示しないが、ゲート電極層と、追って説明するソース電極層又はドレイン電極
層を接続するための開口部(コンタクトホールともいう)を第1の絶縁層402に形成す
る。第1の絶縁層402上にフォトリソグラフィ法またはインクジェット法等によりマス
クを形成し、該マスクを用いて第1の絶縁層402を選択的にエッチングしてコンタクト
ホールを形成する。なお、コンタクトホールの形成は、第1の絶縁層402形成後、酸化
物半導体膜403形成前に行ってもよい。
【0086】
次に、酸化物半導体層404a、404b上に、スパッタリング法、真空蒸着法などを用
いてW、Ta、Mo、Ti、Crなどの導電膜、または上述した元素を組み合わせた合金
等を導電膜として、100nm以上500nm以下、好ましくは200nm以上300n
m以下の厚さで形成する。導電膜は、上述した元素を含む単層に限定されず、二層以上の
積層を用いることができる。なお、該導電膜は、少なくとも、後に行う第2の加熱処理に
耐えうる程度の耐熱性を有していることが好ましい。
【0087】
また、該導電膜としてインジウム、スズまたは亜鉛のいずれかを含む透明導電性酸化物を
用いてもよい。例えば、酸化インジウム(In)や酸化インジウム酸化スズ合金(
In―SnO、ITOと略記する)を用いるのが好ましい。また、透明導電性酸
化物に酸化シリコンのような絶縁性酸化物を加えた物を用いてもよい。透明導電性酸化物
を導電膜として用いることにより、表示装置の開口率を向上させることができる。
【0088】
酸化物半導体層404a、404bに接する導電膜は酸素親和性の高い金属を含む材料が
好ましい。酸素親和性の高い金属としては、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、マグネ
シウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、トリウム(Th)のいず
れか一または複数から選択された材料であることが好ましい。本実施の形態ではチタン膜
を用いる。
【0089】
酸化物半導体層と酸素親和性の高い導電膜を接して形成すると、界面付近のキャリア密度
が増加し、低抵抗な領域が形成され、酸化物半導体と、導電膜のコンタクト抵抗を低減で
きる。これは、酸素親和性の高い導電膜が酸化物半導体層から酸素を引き抜くことにより
、酸化物半導体層と導電膜の界面に、酸化物半導体層中の金属が過剰な層(複合層とも呼
ぶ。)または酸化された導電膜のいずれか、もしくはその両方が形成されることによる。
例えば、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体層とチタン膜が接する構成においては、
酸化物半導体層とチタン膜に接する界面付近に、インジウムが過剰な層と酸化チタン層が
生成される場合がある。また、酸化物半導体層とチタン膜に接する界面付近に、インジウ
ムが過剰な層または酸化チタン層のいずれかが生成する場合がある。In-Ga-Zn-
O系の酸化物半導体層から酸素が欠損し、インジウムが過剰な層は電気伝導度が高く、酸
化物半導体層と導電膜との接触抵抗の低減を図ることができる。
【0090】
なお、酸化物半導体層と接する導電膜として導電性を有する酸化チタン膜を用いても良い
。その場合、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体層と酸化チタン膜が接する構成にお
いては、酸化物半導体層と酸化チタン膜に接する界面付近に、インジウムが過剰な層が生
成される場合がある。
【0091】
また、導電膜の成膜方法としては、アーク放電イオンプレーティング法や、スプレー法を
用いてもよい。また、銀、金、銅などの導電性ナノペーストを用いてスクリーン印刷法、
インクジェット法などを用いて吐出し焼成して形成しても良い。
【0092】
次いで、該導電膜上にフォトリソグラフィ法またはインクジェット法等によりマスクを形
成し、該マスクを用いて導電膜をエッチングして、ソース電極層455a、455c、ド
レイン電極層455b、455dを形成する(図1(C))。本実施の形態では、導電膜
としてスパッタリング法で厚さ200nmのTiを形成し、レジストマスクを用いて、ウ
ェットエッチング法またはドライエッチング法にて導電膜を選択的にエッチングして、ソ
ース電極層455a、455c、ドレイン電極層455b、455dを形成する。
【0093】
次いで、ソース電極層455a、455c、ドレイン電極層455b、455d及び露出
した酸化物半導体層404a、404bを覆う第2の絶縁層428を形成する(図1(D
))。第2の絶縁層428は酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜
、酸化タンタル膜などの酸化物絶縁膜を用いることができる。なお、第2の絶縁層428
は、トランジスタ450のゲート絶縁層として機能する。
【0094】
なお、トランジスタ450のゲート絶縁層として機能する第2の絶縁層428は、積層膜
を用いて形成しても良い。第2の絶縁層を積層膜を用いて形成する場合には、1層目(酸
化物半導体層と接する層)に酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜
、酸化タンタル膜などの酸化物絶縁膜を形成し、2層目以降は、酸化物に限られず、窒化
酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどの第1の絶縁層40
2と同様の材料を用いた膜を形成することができる。
【0095】
第2の絶縁層428は、スパッタリング法など、酸化物絶縁膜に水、水素等の不純物を混
入させない方法を適宜用いて形成することができる。本実施の形態では、第2の絶縁層と
して酸化珪素膜をスパッタリング法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上3
00℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。ここで、成膜時に水、水素
等の不純物を混入させない方法として、成膜前に減圧下で150℃以上350℃以下の温
度で2分間以上10分間以下のプリベークを行い、大気に触れることなく第2の絶縁層を
形成することが望ましい。酸化珪素膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的
にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素
雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは
珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び希
ガス雰囲気下でスパッタリング法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した
酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁膜は、水分や、水素イオンや、OHなどの
不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜が好ましい。
【0096】
本実施の形態では、純度が6Nであり、柱状多結晶Bドープの珪素ターゲット(抵抗値0
.01Ωcm)を用い、基板とターゲットの間との距離(T-S間距離)を89mm、圧
力0.4Pa、直流(DC)電源6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパル
スDCスパッタ法により成膜する。膜厚は300nmとする。
【0097】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または窒素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは2
00℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲
気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。または、第1の加熱処理と同様に高温
短時間のRTA処理を行っても良い。第2の加熱処理を行うと、酸化物絶縁層と酸化物半
導体層が接した状態で加熱される。なお、第2の加熱処理を行うと、第1の加熱処理で低
抵抗化された酸化物半導体層404a、404bに酸素が供給され、酸素欠損部を補償す
るため、高抵抗化(i型化)することができる。
【0098】
本形態では、酸化珪素膜成膜後に第2の加熱処理を行ったが、加熱処理のタイミングは酸
化珪素膜成膜以降であれば問題なく、酸化珪素膜成膜直後に限定されるものではない。
【0099】
次に、フォトリソグラフィ工程を行い、レジストマスクを形成し、第2の絶縁層428の
エッチングによりドレイン電極層455dに達するコンタクトホールを形成する。次いで
、第2の絶縁層428上に導電膜を形成した後、当該導電膜にフォトリソグラフィ工程を
施して、ゲート電極層421、及び、後の工程で画素電極層と接続される接続電極層44
2を形成する(図1(E))。導電膜としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、
Wから選ばれた元素を含む膜を単層で、若しくは積層させて用いることができる。ただし
、ドレイン電極層455dと画素電極層が直接接続される場合は接続電極層442を省い
ても良い。
【0100】
また、図示しないが、この工程で、酸化物半導体層404bのチャネル形成領域と重なる
位置に導電層を形成しても良い。酸化物半導体層404bのチャネル形成領域と重なる位
置に導電層を設けることによって、トランジスタの信頼性を高めることができる。具体的
には、トランジスタ440の信頼性を調べるためのバイアス-熱ストレス試験(以下、B
T試験という)において、BT試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変化量を
低減することができる。また、導電層は、電位がゲート電極層451と同じでもよいし、
異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層
の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0101】
なお、トランジスタ440、450を覆うように保護絶縁層を形成しても良い。保護絶縁
層としては、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、または窒化アルミニウムなどを用いる。
【0102】
また、トランジスタ440、450上に平坦化絶縁層を設けても良い。平坦化絶縁層とし
ては、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性
を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(lo
w-k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス
)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させても
よい。また、カラーフィルタ層を平坦化絶縁層として用いることもできる。
【0103】
また、ゲート電極層451と同じ材料、同じ工程で作製できる容量配線と、ゲート電極層
421と同じ材料、同じ工程で作製できる容量電極を用いて、絶縁層402または第2の
絶縁層428を含む誘電体を挟んだ保持容量も同一基板上に形成してもよい。トランジス
タ440と保持容量を個々の画素に対応してマトリクス状に配置して画素部を構成し、画
素部の周辺にトランジスタ450を有する駆動回路部を配置することによりアクティブマ
トリクス型の表示装置を作製するための一方の基板とすることができる。
【0104】
また、トランジスタ440、450を用いて表示装置を作製する場合、駆動用トランジス
タのソース電極層と電気的に接続する電源供給線を設け、その電源供給線は、ゲート配線
と交差し、且つ、金属導電膜からなる接続電極層442と同じ材料、同じ工程で形成する
【0105】
また、発光装置を作製する場合、発光素子の一方の電極は駆動用トランジスタのソース電
極層またはドレイン電極層と電気的に接続させ、発光素子のもう一方の電極と電気的に接
続する共通電位線を設ける。なお、その共通電位線は、金属導電膜からなる接続電極層4
42と同じ材料、同じ工程で形成する。或いは、共通電位線は、ゲート電極層451と同
じ材料、同じ工程で形成する。
【0106】
上述のような方法でトランジスタを作製した場合、酸化物半導体層404a、404bの
水素濃度は低減し、また、トランジスタのオフ電流は1×10-13A以下となる。この
ような、水素濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体層404a、404b
を適用することで、優れた特性のトランジスタを得ることができる。
【0107】
なお、酸化物半導体との比較対象たり得る半導体材料としては、炭化珪素(例えば、4H
-SiC)がある。酸化物半導体と4H-SiCはいくつかの共通点を有している。キャ
リア密度はその一例である。常温でのフェルミ・ディラック分布を用いると、酸化物半導
体の少数キャリアは10-7/cm程度と見積もられるが、これは、4H-SiCにお
ける6.7×10-11/cmと同様、極めて低い値である。シリコンの真性キャリア
密度(1.4×1010/cm程度)と比較すれば、その程度が並はずれていることが
良く理解できる。
【0108】
また、酸化物半導体のエネルギーバンドギャップは3.0~3.5eVであり、4H-S
iCのエネルギーバンドギャップは3.26eVであるから、ワイドギャップ半導体とい
う点においても、酸化物半導体と炭化珪素とは共通している。
【0109】
一方で、酸化物半導体と炭化珪素との間には極めて大きな相違点が存在する。それは、プ
ロセス温度である。例えば、炭化珪素におけるドーパントの活性化には一般に1500℃
~2000℃の熱処理を必要とするから、他の半導体材料を用いた半導体素子の上に炭化
珪素による半導体素子を形成することは困難である。このような高い温度では、半導体基
板や半導体素子などが破壊されてしまうためである。他方、酸化物半導体は、300~5
00℃(ガラス転移温度以下、最大でも700℃程度)の熱処理で作製することが可能で
あり、他の半導体材料を用いて集積回路を形成した上で、酸化物半導体による半導体素子
を形成することが可能となる。
【0110】
また、炭化珪素の場合と異なり、ガラス基板など、耐熱性の低い基板を用いることが可能
という利点を有する。さらに、高温での熱処理が不要という点で、炭化珪素と比較してエ
ネルギーコストを十分に低くすることができるという利点を有する。
【0111】
また、酸化物半導体は一般にn型とされているが、開示する発明の一態様では、不純物、
特に水や水素を除去することによりi型化を実現する。この点、シリコンなどのように不
純物を添加してのi型化ではなく、従来にない技術思想を含むものといえる。
【0112】
<酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構>
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構につき、図22乃至図26を用い
て説明する。なお、以下の説明は一考察に過ぎず、これに基づいて発明の有効性が否定さ
れるものではないことを付記する。
【0113】
図22は、酸化物半導体を用いた逆スタガ型のトランジスタの縦断面図を示す。ゲート電
極(GE1)上にゲート絶縁膜(GI)を介して酸化物半導体層(OS)が設けられ、そ
の上にソース電極(S)及びドレイン電極(D)が設けられている。さらに、その上に絶
縁層を介してバックゲート(GE2)が設けられている。
【0114】
図23は、図22に示すA-A’間におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。図2
3(A)はソースとドレインの間の電圧を等電位(V=0)とした場合を示し、図23
(B)はソースに対しドレインに正の電位(V>0)を加えた場合を示す。
【0115】
図25図26は、図22のB-B’間におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。
図25は、ゲート電圧が0Vの場合の状態を示す。図26(A)はゲート(GE1)に正
の電位(V>0)が印加された状態であり、ソースとドレイン間にキャリア(電子)が
流れるオン状態を示している。また、図26(B)は、ゲート(GE1)に負の電位(V
<0)が印加された状態であり、オフ状態(少数キャリアは流れない)である場合を示
す。
【0116】
酸化物半導体の厚さが50nm程度であり、酸化物半導体が高純度化されたことによりド
ナー濃度が1×1018/cm以下であれば、オフ状態では空乏層は酸化物半導体の全
体に渡って広がる。すなわち完全空乏型の状態とみなすことができる。
【0117】
図24は、真空準位と金属の仕事関数(φM)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係
を示す。
【0118】
従来の酸化物半導体は一般にn型であり、その場合のフェルミ準位(Ef)は、バンドギ
ャップ中央に位置する真性フェルミ準位(Ei)から離れて、伝導帯寄りに位置している
。なお、酸化物半導体において水素はドナーとなりn型化する一つの要因であることが知
られている。
【0119】
これに対して本発明に係る酸化物半導体は、n型不純物である水素を酸化物半導体から除
去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することによ
り真性(i型)とし、又は真性型とせんとしたものである。すなわち、不純物を添加して
i型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去したことにより、高純度化されたi
型(真性半導体)又はそれに近づけることを特徴としている。そうすることにより、フェ
ルミ準位(Ef)は真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。
【0120】
酸化物半導体のバンドギャップ(Eg)が3.15eVである場合、電子親和力(χ)は
4.3eVと言われている。ソース電極及びドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕
事関数は、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属-酸化物半導
体界面において、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0121】
すなわち、金属の仕事関数(φM)と酸化物半導体の電子親和力(χ)が等しい場合、両
者が接触すると図23(A)で示すようなエネルギーバンド図(模式図)が示される。
【0122】
図23(B)において黒丸(●)は電子を示し、ドレインに正の電圧(V>0)を印加
した上で、ゲートに電圧を印加しない場合(V=0)を破線で示し、ゲートに正の電圧
(V>0)を印加した場合を実線で示す。ゲートに正の電圧(V>0)を印加した場
合、ドレインに正の電位が印加されると、電子はバリア(h)をこえて酸化物半導体に注
入され、ドレインに向かって流れる。この場合、バリア(h)の高さは、ゲート電圧とド
レイン電圧に依存して変化するが、ゲートに正の電圧(V>0)を印加し正のドレイン
電圧が印加された場合には、電圧印加のない図23(A)のバリアの高さすなわちバンド
ギャップ(Eg)の1/2よりもバリアの高さ(h)は小さい値となる。ゲートに電圧を
印加しない場合は、高いポテンシャル障壁のために、電極から酸化物半導体側へキャリア
(電子)が注入されず、電流を流さないオフ状態を示す。一方、ゲートに正の電圧を印加
すると、ポテンシャル障壁が低下し、電流を流すオン状態を示す。
【0123】
このとき酸化物半導体に注入された電子は、図26(A)で示すように酸化物半導体中を
流れる。また、図26(B)において、ゲート電極(GE1)に負の電位が印加されると
、少数キャリアであるホールは実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近い値と
なる。
【0124】
このように酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化すること
により真性(i型)とし、又は実質的に真性型とすることで、ゲート絶縁膜との界面特性
が顕在化し、バルクの特性と分離して考える必要がある。そのためゲート絶縁膜は、酸化
物半導体と良好な界面を形成できるものが必要となる。例えば、VHF帯~マイクロ波帯
の電源周波数で生成される高密度プラズマを用いたCVD法で作製される絶縁膜、又はス
パッタリング法で作製される絶縁膜を用いることが好ましい。
【0125】
酸化物半導体を高純度化しつつ、酸化物半導体とゲート絶縁膜との界面を良好なものとす
ることにより、トランジスタの特性としてチャネル幅Wが1×10μmでチャネル長が
3μmの素子であっても、常温でのオフ電流が10-13A以下であり、サブスレッショ
ルドスイング値(S値)が0.1V/dec.(ゲート絶縁膜厚100nm)が十分に期
待される。
【0126】
このように、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化するこ
とにより、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0127】
本実施の形態において、トランジスタ450のチャネル形成領域は、酸化物半導体層40
4aのうち、ソース電極層455aと接する領域と、ドレイン電極層455bと接する領
域に挟まれ、第2の絶縁層428と接し、且つゲート電極層421と重なる領域である。
また、トランジスタ450において、酸化物半導体層のうち第1の絶縁層402と接する
領域は、非晶質または非晶質と微結晶の混合物であり、第2の絶縁層428と接する表層
部は、結晶領域を有する。したがって、チャネル形成領域は、酸化物半導体層404aの
結晶領域でもあり、酸化物半導体層404aの表面に対して略垂直な方向にc軸(c-a
xis)が配向した結晶粒を有する。例えば、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体材
料を用いる場合には、結晶粒のc軸が基板平面(または、酸化物半導体層表面)に対して
垂直な方向となるようにナノ結晶を配列させることにより、トランジスタ450における
電流の方向が結晶粒のb軸方向(またはa軸方向)となる。そのため、トランジスタ45
0は高い動特性(オン特性や周波数特性(f特性と呼ばれる))を実現し、例えば、高速
動作が要求される駆動回路部に用いるトランジスタとして好適である。
【0128】
また、トランジスタ440のチャネル形成領域は、酸化物半導体層404bのうち、ソー
ス電極層455cと接する領域と、ドレイン電極層455dと接する領域に挟まれ、第1
の絶縁層402と接し、且つゲート電極層451と重なる領域である。不純物を除去する
ことによりi型化又は実質的にi型化された酸化物半導体層(高純度化された酸化物半導
体層)はキャリア濃度が抑制される。また、該酸化物半導体層のチャネル形成領域とは反
対の面に、ナノ結晶で構成された緻密な結晶領域が存在するため、表層部からの水分の再
侵入や酸素の脱離によるn型化を防止できる。従って、該酸化物半導体層を有するトラン
ジスタ440は、極めて低いオフ電流と、優れた信頼性を実現し、例えば、漏れ電流の低
減が要求される画素部に用いるトランジスタに好適である。
【0129】
以上のように、駆動回路部と画素部において、一方の面(表層部)に結晶領域を有する酸
化物半導体層を活性層として用いた2種類のトランジスタを形成し、ゲート電極層の配置
によりチャネルが形成される領域を選択することにより、トランジスタの電気的特性を選
択できる。また、同一基板上に高速動作が可能な駆動回路部と、画素部とを有した半導体
装置を作製できる。
【0130】
なお、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0131】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態
を、図2を用いて説明する。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一部分また
は同様な機能を有する部分、及び工程は、実施の形態1と同様に行うことができ、繰り返
しの説明は省略する。
【0132】
まず、実施の形態1の図1(A)及び(B)に示した工程にしたがって、絶縁表面を有す
る基板400上に、ゲート電極層451、第1の絶縁層402及び島状の酸化物半導体層
404a、404bを形成する(図2(A))。なお、図2(A)に示す酸化物半導体層
404a、404bの表層部は第1の加熱処理によって結晶化し、ナノクリスタルで構成
された結晶領域405a、405bを有している。また、酸化物半導体層404a、40
4bのその他の領域は、非晶質、または、非晶質領域中に微結晶が点在した非晶質と微結
晶の混合物となる。なお、結晶領域405a、405bは酸化物半導体層404a、40
4bの一部であり、以降、酸化物半導体層404a、404bの表記には、結晶領域40
5a、405bは含まれるものとする。
【0133】
第1の加熱処理後の酸化物半導体層404a、404bは、酸素欠乏型となって成膜直後
よりもキャリア濃度が高まり、好ましくは1×1018/cm以上のキャリア濃度を有
し、低抵抗化した酸化物半導体層404a、404bとなる。
【0134】
また、ゲート電極層451も第1の加熱処理の条件、または材料によっては、結晶化し、
微結晶膜または多結晶膜となる場合もある。例えば、ゲート電極層451として、酸化イ
ンジウム酸化錫を用いる場合は450℃1時間の第1の熱処理で結晶化するが、酸化珪素
を含む酸化インジウム酸化錫を用いる場合は結晶化が起こりにくい。
【0135】
次いで、図示しないが、ゲート電極層と、追って説明するソース電極層又はドレイン電極
層を接続するための開口部(コンタクトホールともいう)を第1の絶縁層402に形成す
る。第1の絶縁層402上にフォトリソグラフィ法またはインクジェット法等によりマス
クを形成し、該マスクを用いて第1の絶縁層402を選択的にエッチングしてコンタクト
ホールを形成する。なお、コンタクトホールの形成は、第1の絶縁層402形成後、酸化
物半導体膜403形成前に行ってもよい。
【0136】
次いで、第1の絶縁層402及び酸化物半導体層404a、404b上に、酸化物導電層
480と金属導電膜482の積層を形成する。スパッタ法を用いれば、酸化物導電層48
0と金属導電膜482の積層を大気に触れることなく連続的に成膜を行うことができる(
図2(B)参照)。
【0137】
酸化物導電層480としては、前述したゲート電極層451に適用する材料のうち、可視
光に対して透光性を有する導電材料を用いることが望ましい。本実施の形態では酸化珪素
を含むインジウム錫酸化物を用いる。
【0138】
また、金属導電膜482としては、Ti、Mo、W、Al、Cr、Cu、Ta、から選ば
れた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金等
を用いる。また、上述した元素を含む単層に限定されず、二層以上の積層を用いることが
できる。導電膜の成膜方法は、スパッタ法や真空蒸着法(電子ビーム蒸着法など)や、ア
ーク放電イオンプレーティング法や、スプレー法を用いる。本実施の形態ではスパッタ法
で形成するチタンを用いる。
【0139】
次いで、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、金属導電膜482を選
択的にエッチングして駆動回路部に配置されるトランジスタ470のソース電極層484
a、ドレイン電極層484bを形成した後、レジストマスクを除去する。画素部に配置さ
れるトランジスタ460上には金属導電膜482は残されずにエッチングされる。
【0140】
次いで、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、酸化物導電層480を
選択的にエッチングして駆動回路部に配置されるトランジスタ470のソース電極層48
4aと重なる酸化物導電層486a、ドレイン電極層484bと重なる酸化物導電層48
6b、画素部に配置されるトランジスタ460のソース電極層486c、及びドレイン電
極層486dを形成した後、レジストマスクを除去する(図2(C)参照。)
【0141】
ここで、酸化物導電層480のエッチングには、リン酸、酢酸及び硝酸を含む混酸を用い
る。例えば、リン酸72.3%、酢酸9.8%、硝酸2.0%、水15.9%で構成され
た混酸を用いることができる。酸化物導電層480と酸化物半導体層404a、404b
は組成が類似しているため、エッチングの選択比が小さいものが多い。しかしながら、本
形態で用いている酸化物導電層(酸化珪素を含むインジウム錫酸化物)は、非晶質であり
、酸化物半導体層(In-Ga-Zn-O系膜)の表層にはナノ結晶の結晶群が形成され
ているため、比較的大きなエッチングの選択比が取れる。上記混酸を用いた場合のエッチ
ングレートは、酸化物導電層が18.6nm/sec.であったのに対し、ナノ結晶から
なる結晶群が形成されている酸化物半導体層が4.0nm/sec.であった。従って、
上記混酸を用いて時間制御でエッチングすることで、下部の酸化物半導体層の表層にある
ナノ結晶の結晶群をほとんどエッチングされない状態で残すことができる。
【0142】
また、酸化物半導体層とソース電極層及びドレイン電極層との間に酸化物導電層を設ける
ことによって接触抵抗を下げ、より高速動作が可能なトランジスタを実現できる。本形態
では、駆動回路部に設置されるトランジスタ470のソース電極層484aと酸化物半導
体層404aとの間に設けられる酸化物導電層486aはソース領域として機能し、ドレ
イン電極層484bと酸化物半導体層404aとの間に設けられる酸化物導電層486b
はドレイン領域として機能するため、周辺回路(駆動回路)の周波数特性を向上させるた
めに有効である。
【0143】
一方、画素部に設置されるトランジスタ460のソース電極層486c及びドレイン電極
層486dは透光性を有する酸化物導電層で形成されるため、開口率を向上させることが
できる。
【0144】
次いで、ソース電極層484a、486c、ドレイン電極層484b、486d及び露出
した酸化物半導体層404a、404bを覆う第2の絶縁層428を形成する。第2の絶
縁層428は酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル
膜などの酸化物絶縁層を用いることができる。なお、第2の絶縁層428は、トランジス
タ470のゲート絶縁層として機能する。
【0145】
なお、トランジスタ470のゲート絶縁層として機能する第2の絶縁層428は、積層膜
を用いて形成しても良い。第2の絶縁層428を積層膜を用いて形成する場合には、1層
目(酸化物半導体層と接する層)に酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニ
ウム膜、酸化タンタル膜などの酸化物絶縁膜を形成し、2層目以降は、酸化物に限られず
、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどの第1の絶縁
層402と同様の材料を用いた膜を形成することができる。
【0146】
第2の絶縁層428は、スパッタリング法など、酸化物絶縁膜に水、水素等の不純物を混
入させない方法を適宜用いて形成することができる。本実施の形態では、第2の絶縁層と
して酸化珪素膜をスパッタリング法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上3
00℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。ここで、成膜時に水、水素
等の不純物を混入させない方法として、成膜前に減圧下で150℃以上350℃以下の温
度で2分間以上10分間以下のプリベークを行い、大気に触れることなく第2の絶縁層を
形成することが望ましい。酸化珪素膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的
にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素
雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは
珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び希
ガス雰囲気下でスパッタリング法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した
酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁膜は、水分や、水素イオンや、OHなどの
不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜が好ましい。
【0147】
本実施の形態では、純度が6Nであり、柱状多結晶Bドープの珪素ターゲット(抵抗値0
.01Ωcm)を用い、基板とターゲットの間との距離(T-S間距離)を89mm、圧
力0.4Pa、直流(DC)電源6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパル
スDCスパッタ法により成膜する。膜厚は300nmとする。
【0148】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または窒素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは2
00℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲
気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。または、第1の加熱処理と同様に高温
短時間のRTA処理を行っても良い。第2の加熱処理を行うと、酸化物絶縁層と酸化物半
導体層が接した状態で加熱される。なお、第2の加熱処理を行うと、第1の加熱処理で低
抵抗化された酸化物半導体層404a、404bに酸素が供給され、酸素欠損部を補償す
るため、高抵抗化(i型化)することができる。
【0149】
本形態では、酸化珪素膜成膜後に第2の加熱処理を行ったが、加熱処理のタイミングは酸
化珪素膜成膜以降であれば問題なく、酸化珪素膜成膜直後に限定されるものではない。
【0150】
次に、フォトリソグラフィ工程を行い、レジストマスクを形成し、第2の絶縁層428の
エッチングによりドレイン電極層486dに達するコンタクトホールを形成する。次いで
、第2の絶縁層428上に導電膜を形成した後、当該導電膜にフォトリソグラフィ工程を
施して、ゲート電極層421、及び、後の工程で画素電極層と接続される接続電極層44
2を形成する(図2(D))。導電膜としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、
Wから選ばれた元素を含む膜を単層で、若しくは積層させて用いることができる。ただし
、ドレイン電極層486dと画素電極層が直接接続される場合は接続電極層442を省い
ても良い。
【0151】
また、図示しないが、この工程で、酸化物半導体層404bのチャネル形成領域と重なる
位置に導電層を形成しても良い。酸化物半導体層404bのチャネル形成領域と重なる位
置に導電層を設けることによって、トランジスタ460の信頼性を高めることができる。
具体的には、トランジスタの信頼性を調べるためのBT試験において、BT試験前後にお
けるトランジスタのしきい値電圧の変化量を低減することができる。また、導電層は、電
位がゲート電極層451と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層と
して機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティン
グ状態であってもよい。
【0152】
本実施の形態において、トランジスタ470のチャネル形成領域は、酸化物半導体層40
4aのうち、酸化物導電層486aと接する領域と、酸化物導電層486bと接する領域
に挟まれ、第2の絶縁層428と接し、且つゲート電極層421と重なる領域である。ま
た、トランジスタ470において、酸化物半導体層のうち第1の絶縁層402と接する領
域は、非晶質または非晶質と微結晶の混合物であり、第2の絶縁層428と接する表層部
は、結晶領域を有する。したがって、チャネル形成領域は、酸化物半導体層404aの結
晶領域でもあり、酸化物半導体層404aの表面に対して略垂直な方向にc軸(c-ax
is)が配向した結晶粒を有する。例えば、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体材料
を用いる場合には、結晶粒のc軸が基板平面(または、酸化物半導体層表面)に対して垂
直な方向となるようにナノ結晶を配列させることにより、トランジスタ470における電
流の方向が結晶粒のb軸方向(またはa軸方向)となる。そのため、トランジスタ470
は高い動特性(オン特性や周波数特性(f特性と呼ばれる))を実現し、例えば、高速動
作が要求される駆動回路部に用いるトランジスタに好適である。
【0153】
また、トランジスタ470のソース電極層484aと酸化物半導体層404aとの間に設
けられる酸化物導電層486aはソース領域として機能し、ドレイン電極層484bと酸
化物半導体層404aとの間に設けられる酸化物導電層486bはドレイン領域として機
能するため、周辺回路(駆動回路)の周波数特性を向上させるために有効である。
【0154】
また、トランジスタ460のチャネル形成領域は、酸化物半導体層404bのうち、ソー
ス電極層486cと接する領域と、ドレイン電極層486dと接する領域に挟まれ、第1
の絶縁層402と接し、且つゲート電極層451と重なる領域である。不純物を除去する
ことによりi型化又は実質的にi型化された酸化物半導体層(高純度化された酸化物半導
体層)はキャリア濃度が抑制される。また、該酸化物半導体層のチャネル形成領域とは反
対の面に、ナノ結晶で構成された緻密な結晶領域が存在するため、表層部からの水分の再
侵入や酸素の脱離によるn型化を防止できる。従って、該酸化物半導体層を有するトラン
ジスタ460は、極めて低いオフ電流と、優れた信頼性を実現し、例えば、漏れ電流の低
減が要求される画素部に用いるトランジスタに好適である。
【0155】
また、トランジスタ460において、ゲート電極層451、ソース電極層486c及びド
レイン電極層486dは透光性を有する導電層で形成されるため、開口率を向上させるこ
とができる。
【0156】
以上のように、駆動回路部と画素部において、一方の面(表層部)に結晶領域を有する酸
化物半導体層を活性層として用いた2種類のトランジスタを形成し、ゲート電極層の配置
によりチャネルが形成される領域を選択することにより、トランジスタの電気特性を選択
できる。また、同一基板上に高速動作が可能な駆動回路部と、画素部を有した半導体装置
を作製できる。
【0157】
なお、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0158】
(実施の形態3)
本実施の形態では、トランジスタと同一基板上に設けられる端子部の構成の一例を図10
に示す。なお、図10において、図1と同じ箇所には同じ符号を用いて説明する。
【0159】
図10(A1)、図10(A2)は、ゲート配線端子部の断面図及び上面図をそれぞれ図
示している。図10(A1)は図10(A2)中のC1-C2線に沿った断面図に相当す
る。図10(A1)において、第2の絶縁層428上に形成される導電層415は、入力
端子として機能する接続用の端子電極である。また、図10(A1)において、端子部で
は、トランジスタ440のゲート配線と同じ材料で形成される第1の端子411と、ソー
ス配線と同じ材料で形成される接続電極412とが第1の絶縁層402を介して重なり直
接接して導通させている。また、接続電極412と導電層415が第2の絶縁層428に
設けられたコンタクトホールを介して直接接して導通させている。
【0160】
また、図10(B1)、及び図10(B2)は、ソース配線端子部の断面図及び上面図を
それぞれ図示している。また、図10(B1)は図10(B2)中のC3-C4線に沿っ
た断面図に相当する。図10(B1)において、第2の絶縁層428上に形成される導電
層418は、入力端子として機能する接続用の端子電極である。また、図10(B1)に
おいて、端子部では、トランジスタ440のゲート配線と同じ材料で形成される電極層4
16が、ソース配線と電気的に接続される第2の端子414の下方に第1の絶縁層402
を介して重なる。電極層416は第2の端子414とは電気的に接続しておらず、電極層
416を第2の端子414と異なる電位、例えばフローティング、GND、0Vなどに設
定すれば、ノイズ対策のための容量または静電気対策のための容量を形成することができ
る。また、第2の端子414は、第2の絶縁層428を介して導電層418と電気的に接
続している。
【0161】
ゲート配線、ソース配線、共通電位線、及び電源供給線は画素密度に応じて複数本設けら
れるものである。また、端子部においては、ゲート配線と同電位の第1の端子、ソース配
線と同電位の第2の端子、電源供給線と同電位の第3の端子、共通電位線と同電位の第4
の端子などが複数並べられて配置される。それぞれの端子の数は、それぞれ任意な数で設
ければ良いものとし、実施者が適宣決定すれば良い。なお、端子部の接続は図10の構成
に限られるものではない。
【0162】
本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0163】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置として、同一基板上に二種類のトランジ
スタを用いてパルス出力回路を作製し、さらに当該パルス出力回路を複数接続してシフト
レジスタを構成する例について図3及び図4を用いて説明する。
【0164】
なお、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子
を有する素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有しており、ドレ
イン領域とチャネル領域とソース領域とを介して電流を流すことが出来る。ここで、ソー
スとドレインとは、トランジスタの構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソー
スまたはドレインであるかを限定することが困難である。そこで、ソース及びドレインと
して機能する領域を、ソースもしくはドレインと呼ばない場合がある。その場合、一例と
しては、それぞれを第1端子、第2端子と表記する場合がある。
【0165】
図3(A)にシフトレジスタの構成を示す。シフトレジスタは、第1のパルス出力回路1
0_1乃至第Nのパルス出力回路10_N(Nは3以上の自然数)を有する。
【0166】
また、第1のパルス出力回路10_1乃至第Nのパルス出力回路10_Nは、第1の配線
11、第2の配線12、第3の配線13、及び第4の配線14と接続され、第1の配線1
1から第1のクロック信号CK1が、第2の配線12から第2のクロック信号CK2が、
第3の配線13から第3のクロック信号CK3が、第4の配線14から第4のクロック信
号CK4が供給される。
【0167】
なお、クロック信号(CK)は、一定の間隔でHレベル(H信号、高電源電位レベル、と
もいう)とLレベル(L信号、低電源電位レベル、ともいう)を繰り返す信号である。こ
こで、第1のクロック信号(CK1)~第4のクロック信号(CK4)は、順に1/4周
期分遅延している。本実施の形態では、第1のクロック信号(CK1)~第4のクロック
信号(CK4)を利用して、パルス出力回路の駆動の制御等を行う。なお、クロック信号
は、入力される駆動回路に応じて、GCK、SCKということもあるが、ここではCKと
して説明を行う。
【0168】
第1のパルス出力回路10_1~第Nのパルス出力回路10_Nの各々は、第1の入力端
子21、第2の入力端子22、第3の入力端子23、第4の入力端子24、第5の入力端
子25、第1の出力端子26、及び第2の出力端子27を有している(図3(B)参照)
。また、図示していないが、電源線51、電源線52、及び電源線53と接続されている
【0169】
パルス出力回路の第1の入力端子21、第2の入力端子22及び第3の入力端子23は、
第1の配線11~第4の配線14のいずれかと電気的に接続されている。例えば、図3
A)において、第1のパルス出力回路10_1は、第1の入力端子21が第1の配線11
と電気的に接続され、第2の入力端子22が第2の配線12と電気的に接続され、第3の
入力端子23が第3の配線13と電気的に接続されている。また、第2のパルス出力回路
10_2は、第1の入力端子21が第2の配線12と電気的に接続され、第2の入力端子
22が第3の配線13と電気的に接続され、第3の入力端子23が第4の配線14と電気
的に接続されている。
【0170】
また第1のパルス出力回路10_1では、第5の配線15からのスタートパルスSP1(
第1のスタートパルス)が入力される。また2段目以降の第nのパルス出力回路10_n
(nは、2以上N以下の自然数)では、一段前段のパルス出力回路からの信号(前段信号
OUT(n-1)という)(nは2以上の自然数)が入力される。
【0171】
また第1のパルス出力回路10_1では、2段後段の第3のパルス出力回路10_3から
の信号が入力される。同様に、2段目以降の第nのパルス出力回路10_nでは、2段後
段の第(n+2)のパルス出力回路10_(n+2)からの信号(後段信号OUT(n+
2)という)が入力される。従って、各段のパルス出力回路からは、後段及び/または二
つ前段のパルス出力回路に入力するための第1の出力信号OUT((1)(SR)~OU
T(N)(SR))、別の配線等に電気的に接続される第2の出力信号(OUT(1)~
OUT(N))が出力される。
【0172】
すなわち、第1のパルス出力回路10_1において、第1の入力端子21に第1のクロッ
ク信号CK1が入力され、第2の入力端子22に第2のクロック信号CK2が入力され、
第3の入力端子23に第3のクロック信号CK3が入力され、第4の入力端子24にスタ
ートパルスが入力され、第5の入力端子25に後段信号OUT(3)が入力され、第1の
出力端子26より第1の出力信号OUT(1)(SR)が出力され、第2の出力端子27
より第2の出力信号OUT(1)が出力されていることとなる。
【0173】
なお、図3(A)に示すように、シフトレジスタの最終段の2つの段(10_N-1、及
び10_N)には、後段信号OUT(n+2)が入力されないが、一例としては、別途第
6の配線16より第2のスタートパルスSP2を、第7の配線17より第3のスタートパ
ルスSP3をそれぞれ入力する構成とすればよい。または、別途シフトレジスタの内部で
生成された信号であってもよい。例えば、画素部へのパルス出力に寄与しない第(N+1
)のパルス出力回路10_(N+1)、第(N+2)のパルス出力回路10_(N+2)
を設け(ダミー段ともいう)、当該ダミー段より第2のスタートパルス(SP2)及び第
3のスタートパルス(SP3)に相当する信号を生成する構成としてもよい。
【0174】
次に、本発明の一態様のパルス出力回路の構成について、図3(C)を用いて説明する。
【0175】
第1のパルス出力回路10_1~第Nのパルス出力回路10_Nは、電源線51乃至電源
線53と接続されている。電源線51は第1の高電源電位VDDを、電源線52は第2の
高電源電位VCCを、電源線53は低電源電位VSSを供給する。ここで電源線51乃至
電源線53の電源電位の大小関係は、例えば、第1の高電源電位VDDは、第2の高電源
電位VCCと等しいか第2の高電源電位VCCより高電位であり、第2の高電源電位VC
Cは、低電源電位VSSより高電位であるとする。また、電源線52の電位VCCを、電
源線51の電位VDDより低くすることにより、動作に影響を与えることなく、トランジ
スタのゲート電極に印加される電位を低く抑えることができ、トランジスタの閾値のシフ
トを低減し、劣化を抑制できる。
【0176】
なお、第1のクロック信号(CK1)~第4のクロック信号(CK4)は、一定の間隔で
HレベルとLレベルを繰り返す信号であるが、HレベルのときVDD、LレベルのときV
SSであるとする。
【0177】
第1のパルス出力回路10_1乃至第Nのパルス出力回路10_Nの各々は、第1のトラ
ンジスタ31~第11のトランジスタ41を有している(図3(C)参照)。本実施の形
態では、二種類のトランジスタを同一基板上に作製して、パルス出力回路を構成する。な
お、本実施の形態で例示するシフトレジスタが有する第1のパルス出力回路10_1~第
Nのパルス出力回路10_Nは同じ構成を有しているため、ここでは、第1のパルス出力
回路10_1についてその構成と動作を説明する。
【0178】
第1のパルス出力回路10_1は、第1のトランジスタ31~第11のトランジスタ41
を有している。第1のトランジスタ31~第11のトランジスタ41はnチャネル型のト
ランジスタであって、高純度化された酸化物半導体層を有する。特に、チャネル形成領域
に高純度化され、キャリア濃度が抑制された酸化物半導体層を用い、正の閾値電圧を有し
、オフ電流が極めて小さく抑制されたボトムゲート型のトランジスタを、第2のトランジ
スタ32、及び第5のトランジスタ35に適用する。
【0179】
なお、本実施の形態のパルス出力回路、及び当該パルス出力回路を複数接続して構成した
シフトレジスタにおいて、外部からの信号がゲート電極に直接入力されるトランジスタに
もボトムゲート型のトランジスタは好適である。例えば、第1のパルス出力回路10_1
の場合、外部からスタートパルスが入力される第4の入力端子24と接続している第1の
トランジスタ31、及び第5のトランジスタ35をその例に挙げることができる。ボトム
ゲート型のトランジスタはゲートとソース間もしくは、ゲートとドレイン間の耐圧が高く
、例えば静電気などの異常な入力により、トランジスタの閾値が変動する等の故障の発生
を抑制できる。
【0180】
また、第3のトランジスタ33、第6のトランジスタ36、第10のトランジスタ40、
及び第11のトランジスタ41として、高純度化された酸化物半導体層の表層部に形成さ
れた結晶領域をチャネル形成領域に用いた電界効果移動度が高く、f特性に優れるトップ
ゲート型のトランジスタを適用する。
【0181】
なお、トップゲート型のトランジスタ及びボトムゲート型のトランジスタは、実施の形態
1または実施の形態2で説明したトップゲート型のトランジスタ450、470及びボト
ムゲート型のトランジスタ440、460の作製方法に従って作製できるため、本実施の
形態では説明を省略する。
【0182】
また、第1のトランジスタ31、第4のトランジスタ34、第7のトランジスタ37乃至
第9のトランジスタ39は、例えばトップゲート型のトランジスタ、もしくはボトムゲー
ト型のトランジスタのどちらを用いてもよいが、本実施の形態ではボトムゲート型を適用
するものとする。
【0183】
図3(C)において第1のトランジスタ31は、第1端子が電源線51に電気的に接続さ
れ、第2端子が第9のトランジスタ39の第1端子に電気的に接続され、ゲート電極が第
4の入力端子24に電気的に接続されている。第2のトランジスタ32は、第1端子が電
源線53に電気的に接続され、第2端子が第9のトランジスタ39の第1端子に電気的に
接続され、ゲート電極が第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続されている
。第3のトランジスタ33は、第1端子が第1の入力端子21に電気的に接続され、第2
端子が第1の出力端子26に電気的に接続されている。第4のトランジスタ34は、第1
端子が電源線53に電気的に接続され、第2端子が第1の出力端子26に電気的に接続さ
れている。第5のトランジスタ35は、第1端子が電源線53に電気的に接続され、第2
端子が第2のトランジスタ32のゲート電極及び第4のトランジスタ34のゲート電極に
電気的に接続され、ゲート電極が第4の入力端子24に電気的に接続されている。第6の
トランジスタ36は、第1端子が電源線52に電気的に接続され、第2端子が第2のトラ
ンジスタ32のゲート電極及び第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続され
、ゲート電極が第5の入力端子25に電気的に接続されている。第7のトランジスタ37
は、第1端子が電源線52に電気的に接続され、第2端子が第8のトランジスタ38の第
2端子に電気的に接続され、ゲート電極が第3の入力端子23に電気的に接続されている
。第8のトランジスタ38は、第1端子が第2のトランジスタ32のゲート電極及び第4
のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続され、ゲート電極が第2の入力端子22
に電気的に接続されている。第9のトランジスタ39は、第1端子が第1のトランジスタ
31の第2端子及び第2のトランジスタ32の第2端子に電気的に接続され、第2端子が
第3のトランジスタ33のゲート電極及び第10のトランジスタ40のゲート電極に電気
的に接続され、ゲート電極が電源線52に電気的に接続されている。第10のトランジス
タ40は、第1端子が第1の入力端子21に電気的に接続され、第2端子が第2の出力端
子27に電気的に接続され、ゲート電極が第9のトランジスタ39の第2端子に電気的に
接続されている。第11のトランジスタ41は、第1端子が電源線53に電気的に接続さ
れ、第2端子が第2の出力端子27に電気的に接続され、ゲート電極が第2のトランジス
タ32のゲート電極及び第4のトランジスタ34のゲート電極に電気的に接続されている
【0184】
なお、図3(C)において、第3のトランジスタ33のゲート電極、第10のトランジス
タ40のゲート電極、及び第9のトランジスタ39の第2端子の接続箇所をノードAとす
る。また、第2のトランジスタ32のゲート電極、第4のトランジスタ34のゲート電極
、第5のトランジスタ35の第2端子、第6のトランジスタ36の第2端子、第8のトラ
ンジスタ38の第1端子、及び第11のトランジスタ41のゲート電極の接続箇所をノー
ドBとする。なお、ノードBの電位を保持するため、一方の電極をノードBに電気的に接
続した容量素子を別途設けてもよい。具体的には、容量素子の一方の電極をノードBに電
気的に接続し、他方を電源線53に電気的に接続して設ければよい。
【0185】
次に、図4(A)に示したパルス出力回路の動作について図4(B)、図5図7を参照
して説明する。具体的には、図4(B)のタイミングチャートにおいて示す、第1の期間
61、第2の期間62、第3の期間63、第4の期間64、第5の期間65に分割してパ
ルス出力回路の動作を説明する。なお、図5および図6において、トランジスタを実線で
示す場合には、当該トランジスタがオン状態(導通状態)であることを表し、破線で示す
場合には、当該トランジスタがオフ状態(非導通状態)であることを表すものとする。
【0186】
ここでは、第1のパルス出力回路10_1の出力に関して説明する。第1のパルス出力回
路10_1は、第1の入力端子21が第1のクロック信号(CK1)を供給する第1の配
線11と電気的に接続され、第2の入力端子22が第2のクロック信号(CK2)を供給
する第2の配線12と電気的に接続され、第3の入力端子23が第3のクロック信号(C
K3)を供給する第3の配線13と電気的に接続されている。
【0187】
なお、以下の説明において、第1のトランジスタ31~第11のトランジスタ41は、N
チャネル型のトランジスタとし、ゲートとソース間電圧(Vgs)がしきい値電圧(Vt
h)を上回ったとき導通状態になるものとする。
【0188】
また、ここでは説明の簡略化のためVSS=0とするが、これに限られない。なお、VD
DとのVCCの差分、及びVCCとVSSとの差分(VDD>VCCである場合)は、ト
ランジスタのしきい値電圧より大きくなるものとし、すなわちトランジスタをオン状態(
導通状態)にするものとする。なお電源線52の電位を、電源線51の電位より低くする
ことにより、第2のトランジスタ32、第4のトランジスタ34、第9のトランジスタ3
9、及び第11のトランジスタ41のゲート電極に印加される電位を低く抑え、当該パル
ス出力回路の第2のトランジスタ32、第4のトランジスタ34、第9のトランジスタ3
9及び第11のトランジスタ41のしきい値のシフトを低減し、劣化を抑制することがで
きる。
【0189】
第1の期間61において、第1のスタートパルス(SP1)がHレベルとなり、第1のス
タートパルス(SP1)が入力される第1のパルス出力回路10_1の第4の入力端子2
4と電気的に接続された第1のトランジスタ31と第5のトランジスタ35が導通状態に
なる。また、第3のクロック信号(CK3)もHレベルであるため第7のトランジスタ3
7もオンする。また、第9のトランジスタ39のゲートには第2の高電源電位VCCが印
加されており、第9のトランジスタ39もオンする(図5(A)参照)。
【0190】
このとき、第1のトランジスタ31及び第9のトランジスタ39がオンであるためノード
Aの電位は上昇する。また、第5のトランジスタ35がオンであるためノードBの電位は
下降する。
【0191】
また、第1のトランジスタ31の第2端子の電位は、第1のトランジスタ31の第2端子
がソースとなって、第1の電源線51の電位から第1のトランジスタ31のしきい値電圧
を引いた値となるため、VDD-Vth31(Vth31は第1のトランジスタ31のし
きい値電圧)となる。そして、第9のトランジスタ39のしきい値電圧Vth39とVt
h31において、(VDD-Vth31)が(VCC-Vth39)以上の場合は、ノー
ドAの電位がVCC-Vth39となって第9のトランジスタ39がオフし、ノードAは
電位(VCC-Vth39)を維持したまま浮遊状態となる。また、(VDD-Vth3
1)が(VCC-Vth39)未満の場合は、第9のトランジスタ39はオフすることな
く、ノードAは電位(VDD-Vth31)まで上昇する。
【0192】
なお、本実施の形態では第1のトランジスタ31乃至第11のトランジスタ41は全て同
じしきい値電圧Vth0を有するため、ノードAの電位が(VCC-Vth0)となって
第9のトランジスタ39がオフし、ノードAは電位(VCC-Vth0)を維持したまま
浮遊状態となる。
【0193】
ここで、第3のトランジスタ33において、ゲート電極の電位が(VCC-Vth0)と
なっている。第3のトランジスタ33のゲートとソース間の電圧がそのしきい値を上回っ
ている。すなわち、VCC-Vth0>Vth33(Vth33は第3のトランジスタ3
3のしきい値電圧であって、本実施の形態ではVth0)であるため、第3のトランジス
タ33がオンする。
【0194】
第2の期間62において、第1のパルス出力回路10_1の第1の入力端子21は第1の
クロック信号(CK1)がLレベルからHレベルに切り替わる。すでに、第3のトランジ
スタ33がオンしているため、ソースとドレインの間に電流が生じ、出力端子26に現れ
る出力信号(OUT(1)(SR))の電位、すなわち第3のトランジスタ33の第2の
電極(この場合、ソース電極)の電位が上昇を始める。第3のトランジスタ33のゲート
とソース間には寄生容量による容量結合が存在し、出力端子26の電位の上昇に伴い、浮
遊状態となっている第3のトランジスタ33のゲート電極の電位が上昇する(ブートスト
ラップ動作)。最終的には、第3のトランジスタ33のゲート電極の電位は、(VDD+
Vth33)より高くなり、出力端子26の電位はVDDに等しくなる(図4(B)、図
5(B)参照)。
【0195】
また、このとき、第1のパルス出力回路10_1の第4の入力端子24は第1のスタート
パルス(SP1)によりHレベルであるため、第5のトランジスタ35がオンしてノード
BはLレベルに維持されている。従って、出力端子26の電位がLレベルからHレベルに
立ち上がるとき、出力端子26とノードBの容量結合による不具合を抑制することができ
る。
【0196】
次いで、第3の期間63の前半において、第1のスタートパルス(SP1)がLレベルと
なり第1のトランジスタ31と第5のトランジスタ35がオフする。また、第2の期間6
2に続いて第1のクロック信号(CK1)はHレベルを保持し、またノードAの電位も変
化しないため、第3のトランジスタ33の第1の電極にはHレベルの信号が供給される(
図5(C)参照)。なお、第3の期間63の前半では、ノードBに接続する各トランジス
タがオフし、ノードBが浮遊状態となるが、出力端子26の電位も変化しないため、ノー
ドBと出力端子26の容量結合による不具合の影響はほとんど無視できる程度となる。
【0197】
なお、図4(A)に示すように、ゲートに第2の高電源電位VCCが印加される第9のト
ランジスタ39を設けておくことにより、ブートストラップ動作の前後において、以下の
ような利点がある。
【0198】
ゲート電極に第2の高電源電位VCCが印加される第9のトランジスタ39がない場合、
ブートストラップ動作によりノードAの電位が上昇すると、第1のトランジスタ31の第
2端子であるソースの電位が上昇していき、第1の高電源電位VDDより大きくなる。そ
して、第1のトランジスタ31のソースが第1端子側、即ち電源線51側に切り替わる。
そのため、第1のトランジスタ31においては、ゲートとソースの間、ゲートとドレイン
の間ともに、大きなバイアス電圧が印加されるために大きなストレスがかかり、トランジ
スタの劣化の要因となりうる。
【0199】
そこで、ゲート電極に第2の高電源電位VCCが印加される第9のトランジスタ39を設
けておくことにより、ブートストラップ動作によりノードAの電位は上昇するものの、第
1のトランジスタ31の第2端子の電位の上昇を生じないようにすることができる。つま
り、第9のトランジスタ39を設けることにより、第1のトランジスタ31のゲートとソ
ースの間に印加される負のバイアス電圧の値を小さくすることができる。よって、本実施
の形態の回路構成とすることにより、第1のトランジスタ31のゲートとソースの間に印
加される負のバイアス電圧も小さくできるため、ストレスによる第1のトランジスタ31
の劣化を抑制することができる。
【0200】
なお、第9のトランジスタ39を設ける箇所については、第1のトランジスタ31の第2
端子と第3のトランジスタ33のゲートとの間に第1端子と第2端子を介して接続される
ように設ける構成であればよい。なお、本実施形態でのパルス出力回路を複数具備するシ
フトレジスタの場合、走査線駆動回路より高い動特性が要求される信号線駆動回路では、
第9のトランジスタ39を省略してもよく、トランジスタ数を削減する利点がある。
【0201】
第3の期間63の後半において、第3のクロック信号(CK3)がHレベルに切り替わり
、第7のトランジスタ37がオンとなる。また、第3の期間63の前半に続いて、第2の
クロック信号(CK2)はHレベルを保持し、第8のトランジスタ38はオンであるため
、ノードBの電位はVCCに上昇する。
【0202】
ノードBの電位が上昇したため、第2のトランジスタ32及び第4のトランジスタ34及
び第11のトランジスタ41がオンとなり、出力端子27(OUT(1))の電位がLレ
ベルとなる。
【0203】
また、第3の期間63の後半において、第2のトランジスタ32がオンとなり、第9のト
ランジスタ39の第1端子にLレベルの信号が供給されるので、第9のトランジスタ39
がオン状態となり、ノードAの電位が降下する。
【0204】
また、第4のトランジスタ34がオン状態になったことで、出力端子26の電位が下降す
る。(図5(D)参照)。
【0205】
第4の期間64の前半において、第2のクロック信号(CK2)がHレベルからLレベル
に切り替わるため、第8のトランジスタ38がオフ状態となる。しかし、第5の入力端子
25(OUT(3))がHレベルを保持することにより、第6のトランジスタ36がオン
状態であるため、ノードBはVCCを保持することとなる。(図6(A)参照)。
【0206】
その後、第4の期間64の後半に、第1のパルス出力回路10_1の第5の入力端子25
(OUT(3))がLレベルとなり、第6のトランジスタ36がオフする(図6(B)参
照)。このとき、ノードBは、VCCレベルを保持した状態から浮遊状態となる。これに
より、第2のトランジスタ32、第4のトランジスタ34、及び第11のトランジスタ4
1がオンし続ける状態となる。ただし、図4(B)に示すように、ノードBの電位は、V
CCレベルからトランジスタのオフ電流等に起因して下降することとなる。
【0207】
その後、回路は周期的な動作を繰り返す。この期間を第5の期間とする(図6(C)およ
図6(D)参照)。第5の期間65のある期間(第2のクロック信号(CK2)及び第
3のクロック信号(CK3)が共にHレベルであるとき)において、第7のトランジスタ
37と第8のトランジスタ38がオンし、ノードBに定期的にVCCレベルの信号が供給
される(図6(D)参照)。
【0208】
このように、第5の期間65に定期的にノードBにVCCレベルの信号を供給する構成と
することにより、パルス出力回路の誤動作を抑制することができる。また、第7のトラン
ジスタ37と、第8のトランジスタ38のオン又はオフを定期的に行うことによって、ト
ランジスタのしきい値のシフトを低減することが可能となる。
【0209】
また、第5の期間65において、ノードBに電源線52からVCCレベルの信号が供給さ
れていない間に、ノードBの電位が下がる場合、予めノードBに容量素子を設け、ノード
Bの電位の下降を緩和する構成としてもよい。
【0210】
なお、第2の入力端子22と第8のトランジスタ38のゲート電極の結線と、第3の入力
端子23と第7のトランジスタ37のゲート電極の結線を入れ替えて、第8のトランジス
タ38のゲート電極に供給していたクロック信号を、第7のトランジスタ37のゲート電
極に供給し、第7のトランジスタ37のゲート電極に供給していたクロック信号を、第8
のトランジスタ38のゲート電極に供給しても、同様の作用を奏する。
【0211】
図4(A)に示すパルス出力回路において、第2の入力端子22及び第3の入力端子23
の電位を制御して、第7のトランジスタ37及び第8のトランジスタ38が共にオンの状
態から、第7のトランジスタ37がオフであって第8のトランジスタ38がオンの状態を
経て、第7のトランジスタ37及び第8のトランジスタ38が共にオフの状態にすると、
第7のトランジスタ37のゲート電極の電位の低下、及び第8のトランジスタ38のゲー
ト電極の電位の低下により、ノードBの電位の低下が2回生じることとなる。
【0212】
一方、図4(A)に示すパルス出力回路において、図4(B)の期間のように、第7のト
ランジスタ37及び第8のトランジスタ38が共にオンの状態から、第7のトランジスタ
37がオンであって第8のトランジスタ38がオフの状態を経て、第7のトランジスタ3
7及び第8のトランジスタ38が共にオフの状態にすると、第8のトランジスタ38のゲ
ート電極の電位の低下により、ノードBの電位の低下が一回だけ生じ、電位が低下する回
数を一回に低減できる。
【0213】
すなわち、第7のトランジスタ37のゲート電極に第3の入力端子23からクロック信号
を供給し、第8のトランジスタ38のゲート電極に第2の入力端子22からクロック信号
を供給すると、ノードBの電位の変動を小さくでき、その結果ノイズが低減できるため好
適である。
【0214】
このように、第1の出力端子26及び第2の出力端子27の電位をLレベルに保持する期
間に、ノードBに定期的にVCCレベルの信号が供給される構成とすることにより、パル
ス出力回路の誤動作を抑制できる。
【0215】
本実施の形態で説明したパルス出力回路のノードBは、第4の期間64の後半にVCCレ
ベルを保持した状態から浮遊状態となる。浮遊状態のノードBの電位は、第5のトランジ
スタ35のオフ電流等に起因してVCCレベルから下降する恐れがある。しかし、本実施
の形態のパルス出力回路の第5のトランジスタ35には、チャネル形成領域に高純度化さ
れた酸化物半導体層を用いた、オフ電流が極めて低く抑制されたボトムゲート型のトラン
ジスタを用いているため、浮遊状態のノードBの電位はよく維持され、VCCレベルから
の低下が少ない。その結果、半導体装置の誤動作が抑制され、信頼性が向上する。
【0216】
また、トランジスタのオフ電流を抑制するために、ゲート電極をダブルゲート構造、トリ
プルゲート構造といったマルチゲート構造とする必要がないため、トランジスタを小型化
できる。さらに、ノードBの電位を維持するための容量素子が不要、もしくは小型化でき
る。このように小型化された素子を用いて構成されたパルス出力回路、または、小型化さ
れたパルス出力回路を用いて構成されたシフトレジスタを用いることにより、半導体装置
全体の小型化が可能になる。
【0217】
また、チャネル形成領域に高純度化された酸化物半導体層を用いたボトムゲート型のトラ
ンジスタは、オフ電流が極めて小さく抑制されているだけでなく、正の閾値電圧を有して
いる。本実施の形態のパルス出力回路では第2のトランジスタ32に高純度化された酸化
物半導体層を用いたボトムゲート型のトランジスタを用いているため、ブートストラップ
動作によりノードAの電位を高める際に、損失が少なく速やかに上昇できる。その結果、
半導体装置の誤動作が抑制され、信頼性が向上する。
【0218】
また、本実施の形態のパルス出力回路において、第3のトランジスタ33、第6のトラン
ジスタ36、第10のトランジスタ40、及び第11のトランジスタ41には、高純度化
された酸化物半導体層の結晶領域をチャネル形成領域に用いたトップゲート型のトランジ
スタを用いる。高純度化された酸化物半導体層の結晶領域をチャネル形成領域に用いたト
ップゲート型のトランジスタはf特性に優れ、高い電界効果移動度を有しているため、第
3のトランジスタ33、第6のトランジスタ36、第10のトランジスタ40、及び第1
1のトランジスタ41のスイッチング動作を高速化できる。また、当該トランジスタを小
型化できる。
【0219】
このように高速化された素子を用いて構成されたパルス出力回路、または、高速化された
パルス出力回路を用いて構成されたシフトレジスタを用いることにより、半導体装置全体
の高速化が可能になる。
【0220】
また、本実施の形態で示したシフトレジスタは、図7(A)に示すように、第mのパルス
出力回路から出力されるパルスと第(m+1)のパルス出力回路から出力されるパルスが
半分(1/4周期分)重なった駆動方法を用いている。これは、従来のシフトレジスタに
おける第mのパルス出力回路から出力されるパルスと第(m+1)のパルス出力回路から
出力されるパルスが重ならない駆動方法(図7(B)参照)と比較して、配線に充電する
時間を約2倍とすることができる。このように、第mのパルス出力回路から出力されるパ
ルスと第(m+1)のパルス出力回路から出力されるパルスが半分(1/4周期分)重な
った駆動方法を用いることによって、大きな負荷をかけることができ、高い周波数で動作
するパルス出力回路を提供することができる。また、パルス出力回路の動作条件を大きく
することができる。
【0221】
なお、本実施の形態で示したシフトレジスタ及びパルス出力回路は、本明細書中の他の実
施の形態で示すシフトレジスタ及びパルス出力回路の構成と組み合わせて実施することが
可能である。また、本実施の形態の発明は半導体装置にも適用できる。本明細書中におい
て半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置を意味する。
【0222】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4で説明した同一基板上に二種類のトランジスタを用いて
作製したシフトレジスタに、高純度化された酸化物半導体層をチャネル形成領域に有する
トランジスタを用いたスイッチング回路を組み合わせて、アクティブマトリクス型表示装
置の駆動回路を構成する例について説明する。はじめにアクティブマトリクス型表示装置
の概要についてブロック図を用いて説明し、次いで該表示装置が有するシフトレジスタを
利用した信号線駆動回路と走査線駆動回路について説明する。
【0223】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図8(A)に示す。表示装置の基
板5300上には、画素部5301、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆動
回路5303、信号線駆動回路5304を有する。画素部5301には、複数の信号線が
信号線駆動回路5304から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路5
302、及び第2の走査線駆動回路5303から延伸して配置されている。なお走査線と
信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に配置されている
。また、表示装置の基板5300はFPC(Flexible Printed Cir
cuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路5305(コントローラ、制御IC
ともいう)に接続されている。
【0224】
画素部5301に配置するトランジスタは、実施の形態1または実施の形態2で説明した
本発明の一態様のトランジスタを適用できる。画素部5301に用いるトランジスタはボ
トムゲート型が特に好ましく、例えば、実施の形態1または2で示したトランジスタ44
0、またはトランジスタ460を好ましく用いることができる。ボトムゲート型のトラン
ジスタはオフ電流が少ないため、表示画像のコントラストを高くできるだけでなく、表示
装置の消費電力を低減できる。
【0225】
なお、実施の形態1または実施の形態2で説明したトランジスタはnチャネル型トランジ
スタであるため、駆動回路のうち、nチャネル型トランジスタで構成できる駆動回路の一
部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。
【0226】
図8(A)では、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆動回路5303、信号
線駆動回路5304は、画素部5301と同じ基板5300上に形成される。そのため、
表示装置の外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることがで
きる。また、基板5300外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、
配線間の接続数が増える。同じ基板5300上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接
続数を減らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0227】
なお、タイミング制御回路5305は、第1の走査線駆動回路5302に対し、一例とし
て、第1の走査線駆動回路用スタート信号(GSP1)、走査線駆動回路用クロック信号
(GCK1)を供給する。また、タイミング制御回路5305は、第2の走査線駆動回路
5303に対し、一例として、第2の走査線駆動回路用スタート信号(GSP2)(スタ
ートパルスともいう)、走査線駆動回路用クロック信号(GCK2)を供給する。信号線
駆動回路5304に、信号線駆動回路用スタート信号(SSP)、信号線駆動回路用クロ
ック信号(SCK)、ビデオ信号用データ(DATA)(単にビデオ信号ともいう)、ラ
ッチ信号(LAT)を供給するものとする。なお各クロック信号は、周期のずれた複数の
クロック信号でもよいし、クロック信号を反転させた信号(CKB)とともに供給される
ものであってもよい。なお、第1の走査線駆動回路5302と第2の走査線駆動回路53
03との一方を省略することが可能である。
【0228】
図8(B)では、駆動周波数が比較的低い回路(例えば、第1の走査線駆動回路5302
、第2の走査線駆動回路5303)を画素部5301と同じ基板5300に形成し、駆動
周波数が比較的高い信号線駆動回路5304を画素部5301とは別の基板に形成する構
成について示している。例えば、単結晶半導体を用いたトランジスタを用いて駆動周波数
が比較的高い信号線駆動回路5304を別の基板に形成することもできる。したがって、
表示装置の大型化、工程数の削減、コストの低減、又は歩留まりの向上などを図ることが
できる。
【0229】
本実施の形態においては、駆動周波数が比較的高い信号線駆動回路5304を画素部53
01と同じ基板5300に形成するものとする。なお、基板5300上に駆動回路を設け
た場合、配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図る
ことができる。
【0230】
次に、nチャネル型トランジスタで構成する信号線駆動回路の構成、動作の一例について
図9(A)、図9(B)を用いて説明する。
【0231】
信号線駆動回路は、シフトレジスタ5601、及びスイッチング回路5602を有する。
スイッチング回路5602は、スイッチング回路5602_1~5602_N(Nは自然
数)という複数の回路を有する。スイッチング回路5602_1~5602_Nは、各々
、トランジスタ5603_1~5603_k(kは自然数)という複数のトランジスタを
有する。なお、本実施の形態では、トランジスタ5603_1~5603_kにnチャネ
ル型トランジスタを適用する構成について説明する。
【0232】
信号線駆動回路の接続関係について、スイッチング回路5602_1を例にして図9(A
)を用いて説明する。トランジスタ5603_1~5603_kの第1端子は、各々、配
線5604_1~5604_kと接続される。トランジスタ5603_1~5603_k
の第2端子は、各々、信号線S1~Skと接続される。トランジスタ5603_1~56
03_kのゲートは、配線5605_1と接続される。
【0233】
シフトレジスタ5601は、配線5605_1~5605_Nに順番にHレベルの信号を
出力し、スイッチング回路5602_1~5602_Nを順番に選択する機能を有する。
なお、シフトレジスタ5601は、実施の形態4で説明した方法で作成できるため、ここ
では詳細な説明を省略する。
【0234】
スイッチング回路5602_1は、配線5604_1~5604_kと信号線S1~Sk
との導通状態(第1端子と第2端子との間の導通)を制御する機能、即ち配線5604_
1~5604_kの電位を信号線S1~Skに供給するか否かを制御する機能を有する。
このように、スイッチング回路5602_1は、セレクタとしての機能を有する。またト
ランジスタ5603_1~5603_kは、各々、配線5604_1~5604_kと信
号線S1~Skとの導通状態を制御する機能、即ち配線5604_1~5604_kの電
位を信号線S1~Skに供給する機能を有する。このように、トランジスタ5603_1
~5603_kは、各々、スイッチとしての機能を有する。
【0235】
本実施の形態では、スイッチング回路5602に用いるトランジスタとして、例えば実施
の形態1のトランジスタ450のように、高純度化された酸化物半導体層の結晶領域をチ
ャネル形成領域に用いたトップゲート型のトランジスタを用いる。トップゲート型のトラ
ンジスタは、f特性に優れスイッチング動作が速い。そのため、画素数が多い高精細の次
世代表示装置が要求する高速書き込みに対応できる。なお、高純度化された酸化物半導体
層をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、実施の形態1または2で説明した方法で
作製できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0236】
なお、配線5604_1~5604_kには、各々、ビデオ信号用データ(DATA)が
入力される。ビデオ信号用データ(DATA)は、画像情報又は画像信号に応じたアナロ
グ信号である場合が多い。
【0237】
次に、図9(A)の信号線駆動回路の動作について、図9(B)のタイミングチャートを
参照して説明する。図9(B)には、信号Sout_1~Sout_N、及び信号Vda
ta_1~Vdata_kの一例を示す。信号Sout_1~Sout_Nは、各々、シ
フトレジスタ5601の出力信号の一例であり、信号Vdata_1~Vdata_kは
、各々、配線5604_1~5604_kに入力される信号の一例である。なお、信号線
駆動回路の1動作期間は、表示装置における1ゲート選択期間に対応する。1ゲート選択
期間は、一例として、期間T1~期間TNに分割される。期間T1~TNは、各々、選択
された行に属する画素にビデオ信号用データ(DATA)を書き込むための期間である。
【0238】
なお、本実施の形態の図面等において示す各構成の、信号波形のなまり等は、明瞭化のた
めに誇張して表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されないも
のであることを付記する。
【0239】
期間T1~期間TNにおいて、シフトレジスタ5601は、Hレベルの信号を配線560
5_1~5605_Nに順番に出力する。例えば、期間T1において、シフトレジスタ5
601は、ハイレベルの信号を配線5605_1に出力する。すると、トランジスタ56
03_1~5603_kはオンになるので、配線5604_1~5604_kと、信号線
S1~Skとが導通状態になる。このとき、配線5604_1~5604_kには、Da
ta(S1)~Data(Sk)が入力される。Data(S1)~Data(Sk)は
、各々、トランジスタ5603_1~5603_kを介して、選択される行に属する画素
のうち、1列目~k列目の画素に書き込まれる。こうして、期間T1~TNにおいて、選
択された行に属する画素に、k列ずつ順番にビデオ信号用データ(DATA)が書き込ま
れる。
【0240】
以上のように、ビデオ信号用データ(DATA)が複数の列ずつ画素に書き込まれること
によって、ビデオ信号用データ(DATA)の数、又は配線の数を減らすことができる。
よって、外部回路との接続数を減らすことができる。また、ビデオ信号が複数の列ずつ画
素に書き込まれることによって、書き込み時間を長くすることができ、ビデオ信号の書き
込み不足を防止することができる。
【0241】
なお、本実施の形態の駆動回路のシフトレジスタ5601には、実施の形態4で説明した
シフトレジスタを適用しているため、誤動作が抑制され、高い信頼性を有している。また
、小型化されたシフトレジスタを用いることにより、駆動回路の全体の小型化が可能にな
る。
【0242】
また、本実施の形態の駆動回路のスイッチング回路5602には、高純度化された酸化物
半導体層の結晶領域をチャネル形成領域に用いたトップゲート型のトランジスタを適用し
ているためスイッチング動作が速い。そのため、本実施の形態で例示する駆動回路は画素
への高速書き込みが可能であり、画素数が多い高精細な次世代の表示装置に好適である。
【0243】
なお、実施の形態4で説明したシフトレジスタは走査線駆動回路へも適用できる。走査線
駆動回路は、シフトレジスタを有している。また場合によってはレベルシフタやバッファ
等を有していても良い。走査線駆動回路において、シフトレジスタにクロック信号(CL
K)及びスタートパルス信号(SP)が入力されることによって、選択信号が生成される
。生成された選択信号はバッファにおいて緩衝増幅され、対応する走査線に供給される。
走査線には、1ライン分の画素のトランジスタのゲート電極が接続されている。そして、
1ライン分の画素のトランジスタを一斉にONにしなくてはならないので、バッファは大
きな電流を流すことが可能なものが用いられる。
【0244】
また、本実施の形態で説明したアクティブマトリクス型表示装置と外部装置は端子部を介
して接続される。そこで、外部からの異常な入力(例えば静電気など)により、トランジ
スタの閾値が変動する等の故障の発生を防止するために、保護回路を駆動回路内に設ける
。ゲートとソース間、及びゲートとドレイン間の耐圧が高いため、保護回路に用いるトラ
ンジスタとしては実施の形態1または2で示したボトムゲート型のトランジスタが好適で
ある。
【0245】
(実施の形態6)
実施の形態1または2に示すトランジスタを作製し、該トランジスタを画素部、さらには
駆動回路に用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することがで
きる。また、実施の形態1または2に示すトランジスタを駆動回路の一部または全体を、
画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0246】
表示装置は表示素子を含む。表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光
素子(発光表示素子ともいう)を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によ
って輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electr
o Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気
的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0247】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラ
を含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。さらに、該表示装置を作製する
過程における、表示素子が完成する前の一形態に相当する素子基板に関し、該素子基板は
、電流を表示素子に供給するための手段を複数の各画素に備える。素子基板は、具体的に
は、表示素子の画素電極のみが形成された状態であっても良いし、画素電極となる導電膜
を成膜した後であって、エッチングして画素電極を形成する前の状態であっても良いし、
あらゆる形態があてはまる。
【0248】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光
源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPC(Flexible pr
inted circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bon
ding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り
付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュ
ール、または表示素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回
路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0249】
本実施の形態では、半導体装置の一形態に相当する液晶表示パネルの外観及び断面につい
て、図11を用いて説明する。図11(A1)(A2)は、第1の基板4001上に形成
された実施の形態1または2で示したIn-Ga-Zn-O系膜を酸化物半導体層として
含む信頼性の高いトランジスタ4010、4011、及び液晶素子4013を、第2の基
板4006との間にシール材4005によって封止した、パネルの上面図であり、図11
(B)は、図11(A1)(A2)のM-Nにおける断面図に相当する。
【0250】
第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲む
ようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回
路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査
線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006
とによって、液晶層4008と共に封止されている。また第1の基板4001上のシール
材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶
半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。
【0251】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG方法、
ワイヤボンディング法、或いはTAB法などを用いることができる。図11(A1)は、
COG法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図11(A2)は、TAB
法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0252】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、
トランジスタを複数有しており、図11(B)では、画素部4002に含まれるトランジ
スタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示して
いる。トランジスタ4010上には絶縁層4020、4021が設けられ、トランジスタ
4011上には絶縁層4021が設けられている。絶縁層4020はトランジスタ401
1のゲート絶縁層として機能する。
【0253】
絶縁層4020上において画素部のトランジスタ4010の酸化物半導体層のチャネル形
成領域と重なる位置に導電層4042が設けられている。導電層4042を酸化物半導体
層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後におけるトラン
ジスタ4010のしきい値電圧の変化量を低減することができる。また、導電層4042
は、電位がトランジスタ4010のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く
、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層4042の電位がG
ND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。なお、導電層4042は、トラ
ンジスタ4011のゲート電極層と同じ材料、同じ工程で作製することができる。
【0254】
トランジスタ4010、4011は、In-Ga-Zn-O系膜を酸化物半導体層として
含む信頼性の高い実施の形態1または2に示すトランジスタを適用することができる。本
実施の形態において、トランジスタ4010、4011はnチャネル型トランジスタであ
る。
【0255】
また、液晶素子4013が有する画素電極層4030は、トランジスタ4010と電気的
に接続されている。そして液晶素子4013の対向電極層4031は第2の基板4006
上に形成されている。画素電極層4030と対向電極層4031と液晶層4008とが重
なっている部分が、液晶素子4013に相当する。なお、画素電極層4030、対向電極
層4031はそれぞれ配向膜として機能する絶縁層4032、4033が設けられ、絶縁
層4032、4033を介して液晶層4008を挟持している。なお、図示はしていない
が、カラーフィルタは第1の基板4001または第2の基板4006のどちら側に設けて
も良い。
【0256】
なお、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス、金属(代表的にはス
テンレス)、セラミックス、プラスチックを用いることができる。プラスチックとしては
、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)板、PV
F(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルム、またはアクリル樹脂フ
ィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステ
ルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0257】
またスペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサ
であり、画素電極層4030と対向電極層4031との間の距離(セルギャップ)を制御
するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。また、対向電極層
4031は、トランジスタ4010と同一基板上に設けられる共通電位線と電気的に接続
される。共通接続部を用いて、一対の基板間に配置される導電性粒子を介して対向電極層
4031と共通電位線とを電気的に接続することができる。なお、導電性粒子はシール材
4005に含有させる。
【0258】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つで
あり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直
前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善
するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層4008に
用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が10μse
c.以上100μsec.以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、
視野角依存性が小さい。
【0259】
なお本実施の形態は透過型液晶表示装置の例であるが、本発明は反射型液晶表示装置でも
半透過型液晶表示装置でも適用できる。
【0260】
また、本実施の形態の液晶表示装置では、基板の外側(視認側)に偏光板を設け、内側に
着色層、表示素子に用いる電極層という順に設ける例を示すが、偏光板は基板の内側に設
けてもよい。また、偏光板と着色層の積層構造も本実施の形態に限定されず、偏光板及び
着色層の材料や作製工程条件によって適宜設定すればよい。また、ブラックマトリクスと
して機能する遮光膜を設けてもよい。
【0261】
また、本実施の形態では、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するため、及びトランジス
タの信頼性を向上させるため、実施の形態1または2で得られたトランジスタを保護膜や
平坦化絶縁膜として機能する絶縁層(絶縁層4020、絶縁層4021)で覆う構成とな
っている。なお、保護膜は、大気中に浮遊する有機物や金属物、水蒸気などの汚染不純物
の侵入を防ぐためのものであり、緻密な膜が好ましい。保護膜は、スパッタ法を用いて、
酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アル
ミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム
膜の単層、又は積層で形成すればよい。本実施の形態では保護膜をスパッタ法で形成する
例を示すが、特に限定されず種々の方法で形成すればよい。
【0262】
ここでは、保護膜として積層構造の絶縁層4020を形成する。ここでは、絶縁層402
0の一層目として、スパッタ法を用いて酸化シリコン膜を形成する。保護膜として酸化シ
リコン膜を用いると、ソース電極層及びドレイン電極層として用いるアルミニウム膜のヒ
ロック防止に効果がある。
【0263】
また、保護膜の二層目として絶縁層を形成する。ここでは、絶縁層4020の二層目とし
て、スパッタ法を用いて窒化シリコン膜を形成する。保護膜として窒化シリコン膜を用い
ると、ナトリウム等の可動イオンが半導体領域中に侵入して、トランジスタの電気特性を
変化させることを抑制することができる。
【0264】
また、保護膜を形成した後に、酸化物半導体層のアニール(300℃以上400℃以下)
を行ってもよい。
【0265】
また、平坦化絶縁膜として絶縁層4021を形成する。絶縁層4021としては、アクリ
ル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱
性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(l
ow-k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラ
ス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させる
ことで、絶縁層4021を形成してもよい。
【0266】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi-O-S
i結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキ
ル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有してい
ても良い。
【0267】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法
、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン
印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイ
フコーター等を用いることができる。絶縁層4021を材料液を用いて形成する場合、ベ
ークする工程で同時に、酸化物半導体層のアニール(300℃以上400℃以下)を行っ
てもよい。絶縁層4021の焼成工程と酸化物半導体層のアニールを兼ねることで効率よ
く半導体装置を作製することが可能となる。
【0268】
画素電極層4030、対向電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物
、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、
酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、
インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する
導電性材料を用いることができる。
【0269】
また、画素電極層4030、対向電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマー
ともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性組成物を用いて形
成した画素電極は、シート抵抗が10000Ω/□以下、波長550nmにおける透光率
が70%以上であることが好ましい。また、導電性組成物に含まれる導電性高分子の抵抗
率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0270】
導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例え
ば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンま
たはその誘導体、若しくはこれらの2種以上の共重合体などがあげられる。
【0271】
また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4
002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0272】
本実施の形態では、接続端子電極4015が、液晶素子4013が有する画素電極層40
30と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011
のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0273】
接続端子電極4015は、FPC4018が有する端子と、異方性導電膜4019を介し
て電気的に接続されている。
【0274】
また図11においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実
装している例を示しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。走査線駆動回路
を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部の
みを別途形成して実装しても良い。
【0275】
図12は、実施の形態1または2に示すトランジスタを適用して作製されるトランジスタ
基板2600を用いて半導体装置として液晶表示モジュールを構成する一例を示している
【0276】
図12は液晶表示モジュールの一例であり、トランジスタ基板2600と対向基板260
1がシール材2602により固着され、その間にトランジスタ等を含む画素部2603、
液晶層を含む表示素子2604、着色層2605等が設けられ表示領域を形成している。
着色層2605はカラー表示を行う場合に必要であり、RGB方式の場合は、赤、緑、青
の各色に対応した着色層が各画素に対応して設けられている。トランジスタ基板2600
と対向基板2601の外側には偏光板2606、偏光板2607、拡散板2613が配設
されている。光源は冷陰極管2610と反射板2611により構成され、回路基板261
2は、フレキシブル配線基板2609によりトランジスタ基板2600の配線回路部26
08と接続され、コントロール回路や電源回路などの外部回路が組みこまれている。また
偏光板と、液晶層との間に位相差板を有した状態で積層してもよい。
【0277】
液晶表示モジュールには、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(I
n-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe Field S
witching)モード、MVA(Multi-domain Vertical A
lignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alig
nment)モード、ASM(Axially Symmetric aligned
Micro-cell)モード、OCB(Optical Compensated B
irefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqui
d Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liq
uid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0278】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い液晶表示パネルを作製することができ
る。
【0279】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができることとする。
【0280】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1または2に示すトランジスタを適用した半導体装置とし
て電子ペーパーの例を示す。
【0281】
図13は、半導体装置の例としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。半導体
装置に用いられるトランジスタ581としては、実施の形態1または2で示すトランジス
タを適用することができる。
【0282】
図13の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイス
トボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層であ
る第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差
を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0283】
基板580と基板596との間に封止されるトランジスタ581はボトムゲート構造のト
ランジスタであり、ソース電極層又はドレイン電極層によって第1の電極層587と、絶
縁層583、585に形成する開口で接しており電気的に接続している。第1の電極層5
87と第2の電極層588との間には黒色領域590a及び白色領域590bを有し、周
りに液体で満たされているキャビティ594を含む球形粒子589が設けられており、球
形粒子589の周囲は樹脂等の充填材595で充填されている(図13参照。)。本実施
の形態においては、第1の電極層587が画素電極に相当し、第2の電極層588が共通
電極に相当する。第2の電極層588は、トランジスタ581と同一基板上に設けられる
共通電位線と電気的に接続される。実施の形態1または2に示すいずれか一の共通接続部
を用いて、一対の基板間に配置される導電性粒子を介して第2の電極層588と共通電位
線とを電気的に接続することができる。
【0284】
また、ツイストボールの代わりに、電気泳動素子を用いることも可能である。透明な液体
と、正に帯電した白い微粒子と負に帯電した黒い微粒子とを封入した直径10μm以上2
00μm以下程度のマイクロカプセルを用いる。第1の電極層と第2の電極層との間に設
けられるマイクロカプセルは、第1の電極層と第2の電極層によって、電場が与えられる
と、白い微粒子と、黒い微粒子が互いに逆の方向に移動し、白または黒を表示することが
できる。この原理を応用した表示素子が電気泳動表示素子であり、一般的に電子ペーパー
とよばれている。電気泳動表示素子は、液晶表示素子に比べて反射率が高いため、補助ラ
イトは不要であり、また消費電力が小さく、薄暗い場所でも表示部を認識することが可能
である。また、表示部に電源が供給されない場合であっても、一度表示した画像を保持す
ることが可能であるため、電波発信源から表示機能付き半導体装置(単に表示装置、又は
表示装置を具備する半導体装置ともいう)を遠ざけた場合であっても、表示された画像を
保存しておくことが可能となる。
【0285】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い電子ペーパーを作製することができる
【0286】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができることとする。
【0287】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態1または2に示すトランジスタを適用した半導体装置とし
て発光表示装置の例を示す。表示装置の有する表示素子としては、ここではエレクトロル
ミネッセンスを利用する発光素子を用いて示す。エレクトロルミネッセンスを利用する発
光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般
的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0288】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔
がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャ
リア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成
し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このよう
な発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0289】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分
類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有
するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-ア
クセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、
さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利
用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明す
る。
【0290】
図14は、本発明を適用した半導体装置の例としてデジタル時間階調駆動を適用可能な画
素構成の一例を示す図である。
【0291】
デジタル時間階調駆動を適用可能な画素の構成及び画素の動作について説明する。ここで
は、実施の形態1または2で示した、酸化物半導体層(In-Ga-Zn-O系膜)をチ
ャネル形成領域に用いるnチャネル型のトランジスタを、1つの画素に2つ用いる例を示
す。
【0292】
画素6400は、スイッチング用トランジスタ6401、駆動用トランジスタ6402、
発光素子6404及び容量素子6403を有している。スイッチング用トランジスタ64
01はゲートが走査線6406に接続され、第1電極(ソース電極及びドレイン電極の一
方)が信号線6405に接続され、第2電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)が駆
動用トランジスタ6402のゲートに接続されている。駆動用トランジスタ6402は、
ゲートが容量素子6403を介して電源線6407に接続され、第1電極が電源線640
7に接続され、第2電極が発光素子6404の第1電極(画素電極)に接続されている。
発光素子6404の第2電極は共通電極6408に相当する。共通電極6408は、同一
基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。その接続部分を共通接続部とすれ
ばよい。
【0293】
なお、発光素子6404の第2電極(共通電極6408)には低電源電位が設定されてい
る。なお、低電源電位とは、電源線6407に設定される高電源電位を基準にして低電源
電位<高電源電位を満たす電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設
定されていても良い。この高電源電位と低電源電位との電位差を発光素子6404に印加
して、発光素子6404に電流を流して発光素子6404を発光させるため、高電源電位
と低電源電位との電位差が発光素子6404の順方向しきい値電圧以上となるようにそれ
ぞれの電位を設定する。
【0294】
なお、容量素子6403は駆動用トランジスタ6402のゲート容量を代用して省略する
ことも可能である。駆動用トランジスタ6402のゲート容量については、チャネル領域
とゲート電極との間で容量が形成されていてもよい。
【0295】
ここで、電圧入力電圧駆動方式の場合には、駆動用トランジスタ6402のゲートには、
駆動用トランジスタ6402が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるような
ビデオ信号を入力する。つまり、駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させる。
駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させるため、電源線6407の電圧よりも
高い電圧を駆動用トランジスタ6402のゲートにかける。なお、信号線6405には、
(電源線電圧+駆動用トランジスタ6402のVth)以上の電圧をかける。
【0296】
また、デジタル時間階調駆動に代えて、アナログ階調駆動を行う場合も信号の入力を異な
らせることで、図14と同じ画素構成を用いることができる。
【0297】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ6402のゲートに発光素子6404
の順方向電圧+駆動用トランジスタ6402のVth以上の電圧をかける。発光素子64
04の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向し
きい値電圧を含む。なお、駆動用トランジスタ6402が飽和領域で動作するようなビデ
オ信号を入力することで、発光素子6404に電流を流すことができる。駆動用トランジ
スタ6402を飽和領域で動作させるため、電源線6407の電位は、駆動用トランジス
タ6402のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子
6404にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0298】
なお、図14に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図14に示す画素に新た
にスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ又は論理回路などを追加してもよい。
【0299】
次に、発光素子の構成について、図15を用いて説明する。ここでは、駆動用トランジス
タがn型の場合を例に挙げて、画素の断面構造について説明する。図15(A)(B)(
C)の半導体装置に用いられる駆動用トランジスタであるトランジスタ7001、701
1、7021は、実施の形態1または2で示すトランジスタと同様に作製でき、In-G
a-Zn-O系膜を酸化物半導体層として含む信頼性の高いトランジスタである。
【0300】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも陽極又は陰極の一方が透明であればよい。そ
して、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出
す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の
面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、本発明の画素構成はどの射出構造
の発光素子にも適用することができる。
【0301】
下面射出構造の発光素子について図15(A)を用いて説明する。
【0302】
駆動用トランジスタ7011がn型で、発光素子7012から発せられる光が第1の電極
7013側に射出する場合の、画素の断面図を示す。図15(A)では、駆動用トランジ
スタ7011のドレイン電極層と電気的に接続された透光性を有する導電膜7017上に
、発光素子7012の第1の電極7013が形成されており、第1の電極7013上にE
L層7014、第2の電極7015が順に積層されている。
【0303】
透光性を有する導電膜7017としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸
化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化
チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケ
イ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電膜を用いることができる。
【0304】
また、発光素子の第1の電極7013は様々な材料を用いることができる。例えば、第1
の電極7013を陰極として用いる場合には、仕事関数が小さい材料、具体的には、例え
ば、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およ
びこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属等
が好ましい。図15(A)では、第1の電極7013の膜厚は、光を透過する程度(好ま
しくは、5nm~30nm程度)とする。例えば20nmの膜厚を有するアルミニウム膜
を、第1の電極7013として用いる。
【0305】
なお、透光性を有する導電膜とアルミニウム膜を積層成膜した後、選択的にエッチングし
て透光性を有する導電膜7017と第1の電極7013を形成してもよく、この場合、同
じマスクを用いてエッチングすることができるため、好ましい。
【0306】
また、隔壁7019は、保護絶縁層7035及び絶縁層7032に形成され、且つ、ドレ
イン電極層に達するコンタクトホール上に、透光性を有する導電膜7017を介して配置
する。なお、第1の電極7013の周縁部は、隔壁で覆ってもよい。隔壁7019は、ポ
リイミド、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の有機樹脂膜、無機絶縁膜または
有機ポリシロキサンを用いて形成する。隔壁7019は、特に感光性の樹脂材料を用い、
第1の電極7013上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成
される傾斜面となるように形成することが好ましい。隔壁7019として感光性の樹脂材
料を用いる場合、レジストマスクを形成する工程を省略することができる。
【0307】
また、第1の電極7013及び隔壁7019上に形成するEL層7014は、少なくとも
発光層を含めば良く、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成さ
れていてもどちらでも良い。EL層7014が複数の層で構成されている場合、陰極とし
て機能する第1の電極7013上に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホ
ール注入層の順に積層する。なおこれらの層を全て設ける必要はない。
【0308】
また、上記積層順に限定されず、第1の電極7013を陽極として機能させ、第1の電極
7013上にホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層
してもよい。ただし、消費電力を比較する場合、第1の電極7013を陰極として機能さ
せ、第1の電極7013上に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注
入層の順に積層するほうが、駆動回路部の電圧上昇を抑制でき、消費電力を少なくできる
ため好ましい。
【0309】
また、EL層7014上に形成する第2の電極7015としては、様々な材料を用いるこ
とができる。例えば、第2の電極7015を陽極として用いる場合、仕事関数が大きい材
料、例えば、ZrN、Ti、W、Ni、Pt、Cr等や、ITO、IZO、ZnOなどの
透明導電性材料が好ましい。また、第2の電極7015上に遮蔽膜7016、例えば光を
遮光する金属、光を反射する金属等を用いる。本実施の形態では、第2の電極7015と
してITO膜を用い、遮蔽膜7016としてTi膜を用いる。
【0310】
第1の電極7013及び第2の電極7015で、発光層を含むEL層7014を挟んでい
る領域が発光素子7012に相当する。図15(A)に示した素子構造の場合、発光素子
7012から発せられる光は、矢印で示すように第1の電極7013側に射出する。
【0311】
なお、図15(A)において、発光素子7012から発せられる光は、カラーフィルタ層
7033を通過し、絶縁層7032、酸化物絶縁層7031、ゲート絶縁層7030、及
び基板7010を通過して射出させる。
【0312】
カラーフィルタ層7033はインクジェット法などの液滴吐出法や、印刷法、フォトリソ
グラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ形成する。
【0313】
また、カラーフィルタ層7033はオーバーコート層7034で覆われ、さらに保護絶縁
層7035によって覆う。なお、図15(A)ではオーバーコート層7034は薄い膜厚
で図示したが、オーバーコート層7034は、アクリル樹脂などの樹脂材料を用い、カラ
ーフィルタ層7033に起因する凹凸を平坦化する機能を有している。
【0314】
次に、両面射出構造の発光素子について、図15(B)を用いて説明する。
【0315】
図15(B)では、駆動用トランジスタ7021のドレイン電極層と電気的に接続された
透光性を有する導電膜7027上に、発光素子7022の第1の電極7023が形成され
ており、第1の電極7023上にEL層7024、第2の電極7025が順に積層されて
いる。
【0316】
透光性を有する導電膜7027としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸
化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化
チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケ
イ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電膜を用いることができる。
【0317】
また、第1の電極7023は様々な材料を用いることができる。例えば、第1の電極70
23を陰極として用いる場合、仕事関数が小さい材料、具体的には、例えば、LiやCs
等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む
合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属等が好ましい。本
実施の形態では、第1の電極7023を陰極として用い、その膜厚は、光を透過する程度
(好ましくは、5nm~30nm程度)とする。例えば20nmの膜厚を有するアルミニ
ウム膜を、陰極として用いる。
【0318】
なお、透光性を有する導電膜とアルミニウム膜を積層成膜した後、選択的にエッチングし
て透光性を有する導電膜7027と第1の電極7023を形成してもよく、この場合、同
じマスクを用いてエッチングすることができ、好ましい。
【0319】
また、隔壁7029は、保護絶縁層7045及び絶縁層7042に形成され、且つ、ドレ
イン電極層に達するコンタクトホール上に、透光性を有する導電膜7027を介して配置
する。なお、第1の電極7023の周縁部は、隔壁で覆ってもよい。隔壁7029は、ポ
リイミド、アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の有機樹脂膜、無機絶縁膜または
有機ポリシロキサンを用いて形成する。隔壁7029は、特に感光性の樹脂材料を用い、
第1の電極7023上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成
される傾斜面となるように形成することが好ましい。隔壁7029として感光性の樹脂材
料を用いる場合、レジストマスクを形成する工程を省略することができる。
【0320】
また、第1の電極7023及び隔壁7029上に形成するEL層7024は、発光層を含
めば良く、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていても
どちらでも良い。EL層7024が複数の層で構成されている場合、陰極として機能する
第1の電極7023上に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層
の順に積層する。なお、これらの層を全て設ける必要はない。
【0321】
また、上記積層順に限定されず、第1の電極7023を陽極として用い、陽極上にホール
注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層してもよい。ただし
、消費電力を比較する場合、第1の電極7023を陰極として用い、陰極上に電子注入層
、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層の順に積層するほうが消費電力が少
ないため好ましい。
【0322】
また、EL層7024上に形成する第2の電極7025としては、様々な材料を用いるこ
とができる。例えば、第2の電極7025を陽極として用いる場合、仕事関数が大きい材
料、例えば、ITO、IZO、ZnOなどの透明導電性材料を好ましく用いることができ
る。本実施の形態では、第2の電極7025を陽極として用い、酸化珪素を含むITO膜
を形成する。
【0323】
第1の電極7023及び第2の電極7025で、発光層を含むEL層7024を挟んでい
る領域が発光素子7022に相当する。図15(B)に示した素子構造の場合、発光素子
7022から発せられる光は、矢印で示すように第2の電極7025側と第1の電極70
23側の両方に射出する。
【0324】
なお、図15(B)において、発光素子7022から第1の電極7023側に発せられる
一方の光は、カラーフィルタ層7043を通過し、絶縁層7042、酸化物絶縁層704
1、ゲート絶縁層7040、及び基板7020を通過して射出させる。
【0325】
カラーフィルタ層7043はインクジェット法などの液滴吐出法や、印刷法、フォトリソ
グラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ形成する。
【0326】
また、カラーフィルタ層7043はオーバーコート層7044で覆われ、さらに保護絶縁
層7045によって覆う。
【0327】
ただし、両面射出構造の発光素子を用い、どちらの表示面もフルカラー表示とする場合、
第2の電極7025側からの光はカラーフィルタ層7043を通過しないため、別途カラ
ーフィルタ層を備えた封止基板を第2の電極7025上方に設けることが好ましい。
【0328】
次に、上面射出構造の発光素子について、図15(C)を用いて説明する。
【0329】
図15(C)に、駆動用トランジスタであるトランジスタ7001がn型で、発光素子7
002から発せられる光が第2の電極7005側に抜ける場合の、画素の断面図を示す。
図15(C)では、駆動用のトランジスタ7001のドレイン電極層と電気的に接続され
た発光素子7002の第1の電極7003が形成されており、第1の電極7003上にE
L層7004、第2の電極7005が順に積層されている。
【0330】
また、第1の電極7003は様々な材料を用いることができる。例えば、第1の電極70
03を陰極として用いる場合、仕事関数が小さい材料、具体的には、例えば、LiやCs
等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む
合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属等が好ましい。
【0331】
また、隔壁7009は、保護絶縁層7052及び絶縁層7055に形成され、且つ、ドレ
イン電極層に達するコンタクトホール上に、第1の電極7003を介して配置する。なお
、第1の電極7003の周縁部を、隔壁で覆ってもよい。隔壁7009は、ポリイミド、
アクリル樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の有機樹脂膜、無機絶縁膜または有機ポリシ
ロキサンを用いて形成する。隔壁7009は、特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極
7003上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜
面となるように形成することが好ましい。隔壁7009として感光性の樹脂材料を用いる
場合、レジストマスクを形成する工程を省略することができる。
【0332】
また、第1の電極7003及び隔壁7009上に形成するEL層7004は、少なくとも
発光層を含めば良く、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成さ
れていてもどちらでも良い。EL層7004が複数の層で構成されている場合、陰極とし
て用いる第1の電極7003上に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホー
ル注入層の順に積層する。なおこれらの層を全て設ける必要はない。
【0333】
また、上記積層順に限定されず、陽極として用いる第1の電極7003上にホール注入層
、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層してもよい。
【0334】
図15(C)ではTi膜、アルミニウム膜、Ti膜の順に積層した積層膜上に、ホール注
入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層し、その上にMg:A
g合金薄膜とITOとの積層を形成する。
【0335】
ただし、トランジスタ7001がn型の場合、第1の電極7003上に電子注入層、電子
輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層の順に積層するほうが、駆動回路における
電圧上昇を抑制することができ、消費電力を少なくできるため好ましい。
【0336】
第2の電極7005は光を透過する透光性を有する導電性材料を用いて形成し、例えば酸
化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物
、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウ
ム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透
光性を有する導電膜を用いても良い。
【0337】
第1の電極7003及び第2の電極7005で発光層を含むEL層7004を挟んでいる
領域が発光素子7002に相当する。図15(C)に示した画素の場合、発光素子700
2から発せられる光は、矢印で示すように第2の電極7005側に射出する。
【0338】
平坦化絶縁層7053は、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリアミド
、エポキシ樹脂等の樹脂材料を用いることができる。また上記樹脂材料の他に、低誘電率
材料(low-k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボ
ロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積
層させることで、平坦化絶縁層7053を形成してもよい。平坦化絶縁層7053の形成
法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディ
ップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷
等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いる
ことができる。
【0339】
また、図15(C)の構造においては、フルカラー表示を行う場合、例えば発光素子70
02として緑色発光素子とし、隣り合う一方の発光素子を赤色発光素子とし、もう一方の
発光素子を青色発光素子とする。また、3種類の発光素子だけでなく白色素子を加えた4
種類の発光素子でフルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。
【0340】
また、図15(C)の構造においては、配置する複数の発光素子を全て白色発光素子とし
て、発光素子7002上方にカラーフィルタなどを有する封止基板を配置する構成とし、
フルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。白色などの単色の発光を示す材
料を形成し、カラーフィルタや色変換層を組み合わせることによりフルカラー表示を行う
ことができる。
【0341】
もちろん単色発光の表示を行ってもよい。例えば、白色発光を用いて照明装置を形成して
もよいし、単色発光を用いてエリアカラータイプの発光装置を形成してもよい。
【0342】
また、必要があれば、円偏光板などの偏光フィルムなどの光学フィルムを設けてもよい。
【0343】
なお、ここでは、発光素子として有機EL素子について述べたが、発光素子として無機E
L素子を設けることも可能である。
【0344】
なお、発光素子の駆動を制御するトランジスタ(駆動用トランジスタ)と発光素子が電気
的に接続されている例を示したが、駆動用トランジスタと発光素子との間に電流制御用ト
ランジスタが接続されている構成であってもよい。
【0345】
なお本実施の形態で示す半導体装置は、図15に示した構成に限定されるものではなく、
本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0346】
次に、実施の形態1または2に示すトランジスタを適用した半導体装置の一形態に相当す
る発光表示パネル(発光パネルともいう)の外観及び断面について、図16を用いて説明
する。図16(A)は、第1の基板上に形成されたトランジスタ及び発光素子を、第2の
基板との間にシール材によって封止した、パネルの上面図であり、図16(B)は、図1
6(A)のH-Iにおける断面図に相当する。
【0347】
第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、450
3b、及び走査線駆動回路4504a、4504bを囲むようにして、シール材4505
が設けられている。また画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び
走査線駆動回路4504a、4504bの上に第2の基板4506が設けられている。よ
って画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路45
04a、4504bは、第1の基板4501とシール材4505と第2の基板4506と
によって、充填材4507と共に密封されている。このように外気に曝されないように気
密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィル
ム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0348】
また第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、4
503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは、トランジスタを複数有してお
り、図16(B)では、画素部4502に含まれるトランジスタ4510と、信号線駆動
回路4503aに含まれるトランジスタ4509とを例示している。
【0349】
トランジスタ4509、4510は、In-Ga-Zn-O系膜を酸化物半導体層として
含む信頼性の高い実施の形態1または2に示すトランジスタを適用することができる。本
実施の形態において、トランジスタ4509、4510はnチャネル型トランジスタであ
る。
【0350】
絶縁層4544上において画素部のトランジスタ4510の酸化物半導体層のチャネル形
成領域と重なる位置に導電層4540が設けられている。導電層4540を酸化物半導体
層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後におけるトラン
ジスタ4510のしきい値電圧の変化量を低減することができる。また、導電層4540
は、電位がトランジスタ4510のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く
、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層4040の電位がG
ND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0351】
また4511は発光素子に相当し、発光素子4511が有する画素電極である第1の電極
層4517は、トランジスタ4510のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接
続されている。なお発光素子4511の構成は、第1の電極層4517、電界発光層45
12、第2の電極層4513の積層構造であるが、本実施の形態に示した構成に限定され
ない。発光素子4511から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4511の構成
は適宜変えることができる。
【0352】
隔壁4520は、有機樹脂膜、無機絶縁膜または有機ポリシロキサンを用いて形成する。
特に感光性の材料を用い、第1の電極層4517上に開口部を形成し、その開口部の側壁
が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0353】
電界発光層4512は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成
されていてもどちらでも良い。
【0354】
発光素子4511に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層
4513及び隔壁4520上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン
膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。
【0355】
また、信号線駆動回路4503a、4503b、走査線駆動回路4504a、4504b
、または画素部4502に与えられる各種信号及び電位は、FPC4518a、4518
bから供給されている。
【0356】
本実施の形態では、接続端子電極4515が、発光素子4511が有する第1の電極層4
517と同じ導電膜から形成され、端子電極4516は、トランジスタ4509、451
0が有するソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜から形成されている。
【0357】
接続端子電極4515は、FPC4518aが有する端子と、異方性導電膜4519を介
して電気的に接続されている。
【0358】
発光素子4511からの光の取り出し方向に位置する基板は透光性を有する必要がある。
その場合には、ガラス板、プラスチック板、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フ
ィルムのような透光性を有する材料を用いる。
【0359】
また、充填材4507としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹
脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹
脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)または
EVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。本実施の形態は充填材とし
て窒素を用いた。
【0360】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、
位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよ
い。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により
反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0361】
信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは
、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜によって形成された駆動回
路で実装されていてもよい。また、信号線駆動回路のみ、或いは一部、又は走査線駆動回
路のみ、或いは一部のみを別途形成して実装しても良く、本実施の形態は図16の構成に
限定されない。
【0362】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い発光表示装置(表示パネル)を作製す
ることができる。
【0363】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができることとする。
【0364】
(実施の形態9)
実施の形態1または2に示すトランジスタを適用した半導体装置は、電子ペーパーとして
適用することができる。電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野の電
子機器に用いることが可能である。例えば、電子ペーパーを用いて、電子書籍(電子ブッ
ク)、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジットカード等の各種カードにおけ
る表示等に適用することができる。電子機器の一例を図17図18に示す。
【0365】
図17(A)は、電子ペーパーで作られたポスター2631を示している。広告媒体が紙
の印刷物である場合には、広告の交換は人手によって行われるが、電子ペーパーを用いれ
ば短時間で広告の表示を変えることができる。また、表示も崩れることなく安定した画像
が得られる。なお、ポスターは無線で情報を送受信できる構成としてもよい。
【0366】
また、図17(B)は、電車などの乗り物の車内広告2632を示している。広告媒体が
紙の印刷物である場合には、広告の交換は人手によって行われるが、電子ペーパーを用い
れば人手を多くかけることなく短時間で広告の表示を変えることができる。また表示も崩
れることなく安定した画像が得られる。なお、車内広告は無線で情報を送受信できる構成
としてもよい。
【0367】
また、図18は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体27
01および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体270
3は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行う
ことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0368】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み
込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成として
もよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とするこ
とで、例えば右側の表示部(図18では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部
図18では表示部2707)に画像を表示することができる。
【0369】
また、図18では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2
701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備えている
。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキー
ボードやポインティングディバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や
側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSB
ケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成
としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成とし
てもよい。
【0370】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、
電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすること
も可能である。
【0371】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができることとする。
【0372】
(実施の形態10)
実施の形態1または2に示すトランジスタを用いた半導体装置は、さまざまな電子機器(
遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置
(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタ
ルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携
帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機など
の大型ゲーム機などが挙げられる。
【0373】
図19(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、
筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示
することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持し
た構成を示している。
【0374】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機9610により行うことができる。リモコン操作機9610が備える操作キー
9609により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9603に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機9610に、当該リモコン操作機
9610から出力する情報を表示する表示部9607を設ける構成としてもよい。
【0375】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線に
よる通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向
(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0376】
図19(B)は、デジタルフォトフレームの一例を示している。例えば、デジタルフォト
フレーム9700は、筐体9701に表示部9703が組み込まれている。表示部970
3は、各種画像を表示することが可能であり、例えばデジタルカメラなどで撮影した画像
データを表示させることで、通常の写真立てと同様に機能させることができる。
【0377】
なお、デジタルフォトフレーム9700は、操作部、外部接続用端子(USB端子、US
Bケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構
成とする。これらの構成は、表示部と同一面に組み込まれていてもよいが、側面や裏面に
備えるとデザイン性が向上するため好ましい。例えば、デジタルフォトフレームの記録媒
体挿入部に、デジタルカメラで撮影した画像データを記憶したメモリを挿入して画像デー
タを取り込み、取り込んだ画像データを表示部9703に表示させることができる。
【0378】
また、デジタルフォトフレーム9700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい
。無線により、所望の画像データを取り込み、表示させる構成とすることもできる。
【0379】
図20(A)は携帯型遊技機であり、筐体9881と筐体9891の2つの筐体で構成さ
れており、連結部9893により、開閉可能に連結されている。筐体9881には表示部
9882が組み込まれ、筐体9891には表示部9883が組み込まれている。また、図
20(A)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部9884、記録媒体挿入部988
6、LEDランプ9890、入力手段(操作キー9885、接続端子9887、センサ9
888(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、
化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振
動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9889)等を備え
ている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも本発明に
係る半導体装置を備えた構成であればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とする
ことができる。図20(A)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラ
ム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行っ
て情報を共有する機能を有する。なお、図20(A)に示す携帯型遊技機が有する機能は
これに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0380】
図20(B)は大型遊技機であるスロットマシンの一例を示している。スロットマシン9
900は、筐体9901に表示部9903が組み込まれている。また、スロットマシン9
900は、その他、スタートレバーやストップスイッチなどの操作手段、コイン投入口、
スピーカなどを備えている。もちろん、スロットマシン9900の構成は上述のものに限
定されず、少なくとも本発明に係る半導体装置を備えた構成であればよく、その他付属設
備が適宜設けられた構成とすることができる。
【0381】
図21(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機1000は、筐体1001
に組み込まれた表示部1002の他、操作ボタン1003、外部接続ポート1004、ス
ピーカ1005、マイク1006などを備えている。
【0382】
図21(A)に示す携帯電話機1000は、表示部1002を指などで触れることで、情
報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は
、表示部1002を指などで触れることにより行うことができる。
【0383】
表示部1002の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表
示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示
モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0384】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部1002を文字の入力を
主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合
、表示部1002の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好
ましい。
【0385】
また、携帯電話機1000内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを
有する検出装置を設けることで、携帯電話機1000の向き(縦か横か)を判断して、表
示部1002の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0386】
また、画面モードの切り替えは、表示部1002を触れること、又は筐体1001の操作
ボタン1003の操作により行われる。また、表示部1002に表示される画像の種類に
よって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画の
データであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0387】
また、入力モードにおいて、表示部1002の光センサで検出される信号を検知し、表示
部1002のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モード
から表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0388】
表示部1002は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部10
02に掌や指で触れて、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。
また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用
光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0389】
図21(B)も携帯電話機の一例である。図21(B)の携帯電話機は、筐体9411に
、表示部9412、及び操作ボタン9413を含む表示装置9410と、筐体9401に
操作ボタン9402、外部入力端子9403、マイク9404、スピーカ9405、及び
着信時に発光する発光部9406を含む通信装置9400とを有しており、表示機能を有
する表示装置9410は電話機能を有する通信装置9400と矢印の2方向に脱着可能で
ある。よって、表示装置9410と通信装置9400の短軸同士を取り付けることも、表
示装置9410と通信装置9400の長軸同士を取り付けることもできる。また、表示機
能のみを必要とする場合、通信装置9400より表示装置9410を取り外し、表示装置
9410を単独で用いることもできる。通信装置9400と表示装置9410とは無線通
信又は有線通信により画像又は入力情報を授受することができ、それぞれ充電可能なバッ
テリーを有する。
【0390】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができることとする。
【符号の説明】
【0391】
10 パルス出力回路
11 配線
12 配線
13 配線
14 配線
15 配線
16 配線
17 配線
21 入力端子
22 入力端子
23 入力端子
24 入力端子
25 入力端子
26 出力端子
27 出力端子
31 トランジスタ
32 トランジスタ
33 トランジスタ
34 トランジスタ
35 トランジスタ
36 トランジスタ
37 トランジスタ
38 トランジスタ
39 トランジスタ
40 トランジスタ
41 トランジスタ
51 電源線
52 電源線
53 電源線
61 期間
62 期間
63 期間
64 期間
65 期間
400 基板
402 絶縁層
403 酸化物半導体膜
404a 酸化物半導体層
404b 酸化物半導体層
405a 結晶領域
405b 結晶領域
411 端子
412 接続電極
414 端子
415 導電層
416 電極層
418 導電層
421 ゲート電極層
428 絶縁層
440 トランジスタ
442 接続電極層
450 トランジスタ
451 ゲート電極層
455a ソース電極層
455b ドレイン電極層
455c ソース電極層
455d ドレイン電極層
460 トランジスタ
470 トランジスタ
480 酸化物導電層
482 金属導電膜
484a ソース電極層
484b ドレイン電極層
486a 酸化物導電層
486b 酸化物導電層
486c ソース電極層
486d ドレイン電極層
580 基板
581 トランジスタ
583 絶縁層
585 絶縁層
587 電極層
588 電極層
589 球形粒子
590a 黒色領域
590b 白色領域
594 キャビティ
595 充填材
596 基板
1000 携帯電話機
1001 筐体
1002 表示部
1003 操作ボタン
1004 外部接続ポート
1005 スピーカ
1006 マイク
2600 トランジスタ基板
2601 対向基板
2602 シール材
2603 画素部
2604 表示素子
2605 着色層
2606 偏光板
2607 偏光板
2608 配線回路部
2609 フレキシブル配線基板
2610 冷陰極管
2611 反射板
2612 回路基板
2613 拡散板
2631 ポスター
2632 車内広告
2700 電子書籍
2701 筐体
2703 筐体
2705 表示部
2707 表示部
2711 軸部
2721 電源
2723 操作キー
2725 スピーカ
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 基板
4008 液晶層
4010 トランジスタ
4011 トランジスタ
4013 液晶素子
4015 接続端子電極
4016 端子電極
4018 FPC
4019 異方性導電膜
4020 絶縁層
4021 絶縁層
4030 画素電極層
4031 対向電極層
4032 絶縁層
4033 絶縁層
4035 スペーサ
4040 導電層
4042 導電層
4501 基板
4502 画素部
4503a 信号線駆動回路
4503b 信号線駆動回路
4504a 走査線駆動回路
4504b 走査線駆動回路
4505 シール材
4506 基板
4507 充填材
4509 トランジスタ
4510 トランジスタ
4511 発光素子
4512 電界発光層
4513 電極層
4515 接続端子電極
4516 端子電極
4517 電極層
4518a FPC
4518b FPC
4519 異方性導電膜
4520 隔壁
4540 導電層
4544 絶縁層
5300 基板
5301 画素部
5302 走査線駆動回路
5303 走査線駆動回路
5304 信号線駆動回路
5305 タイミング制御回路
5601 シフトレジスタ
5602 スイッチング回路
5603 トランジスタ
5604 配線
5605 配線
6400 画素
6401 スイッチング用トランジスタ
6402 駆動用トランジスタ
6403 容量素子
6404 発光素子
6405 信号線
6406 走査線
6407 電源線
6408 共通電極
7001 トランジスタ
7002 発光素子
7003 電極
7004 EL層
7005 電極
7009 隔壁
7010 基板
7011 駆動用トランジスタ
7012 発光素子
7013 電極
7014 EL層
7015 電極
7016 遮蔽膜
7017 導電膜
7019 隔壁
7020 基板
7021 駆動用トランジスタ
7022 発光素子
7023 電極
7024 EL層
7025 電極
7027 導電膜
7029 隔壁
7030 ゲート絶縁層
7031 酸化物絶縁層
7032 絶縁層
7033 カラーフィルタ層
7034 オーバーコート層
7035 保護絶縁層
7040 ゲート絶縁層
7041 酸化物絶縁層
7042 絶縁層
7043 カラーフィルタ層
7044 オーバーコート層
7045 保護絶縁層
7051 酸化物絶縁層
7052 保護絶縁層
7053 平坦化絶縁層
7055 絶縁層
9400 通信装置
9401 筐体
9402 操作ボタン
9403 外部入力端子
9404 マイク
9405 スピーカ
9406 発光部
9410 表示装置
9411 筐体
9412 表示部
9413 操作ボタン
9600 テレビジョン装置
9601 筐体
9603 表示部
9605 スタンド
9607 表示部
9609 操作キー
9610 リモコン操作機
9700 デジタルフォトフレーム
9701 筐体
9703 表示部
9881 筐体
9882 表示部
9883 表示部
9884 スピーカ部
9885 操作キー
9886 記録媒体挿入部
9887 接続端子
9888 センサ
9889 マイクロフォン
9890 LEDランプ
9891 筐体
9893 連結部
9900 スロットマシン
9901 筐体
9903 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26