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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】複合材料の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/52 20060101AFI20231121BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231121BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20231121BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20231121BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B29C43/52
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
B29C43/12
B29C70/06
B29C70/44
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022134750
(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公開番号】P2023033240
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】110131955
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 建旭
(72)【発明者】
【氏名】梁 智翔
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 龍田
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102765198(CN,A)
【文献】特開2003-298241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0227107(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180240(US,A1)
【文献】特開平10-156853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 - 43/58
B29C 70/00 - 70/88
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリプレグ部品と、
少なくとも1つの寸法制御部品と、
圧着方向に垂直な平面において、前記プリプレグ部品を取り囲み、吐出通路を有し、前記プリプレグ部品と前記少なくとも1つの寸法制御部品との間に設けられるシール部品と、を含む被圧着部品を、ガス遮断部品の中に置き、且つ上圧着板と下圧着板との間に設けるステップと、
前記プリプレグ部品の位置に対応し、板部材を前記ガス遮断部品と前記上圧着板との間に置くステップと、
前記上圧着板と前記下圧着板によって熱プレスを行うステップと、
複合材料を製造するように、冷却を行うステップと、を含む複合材料の成形方法。
【請求項2】
前記シール部品の高さは、前記プリプレグ部品の高さ以上である請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項3】
前記吐出通路の幅は、2~20センチである請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項4】
前記吐出通路は、前記圧着方向に垂直な方向に沿って前記シール部品を貫通する請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの寸法制御部品の数は偶数個であり、且つ、前記少なくとも1つの寸法制御部品のそれぞれは、他方に対向して設けられる請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの寸法制御部品のそれぞれの高さは、前記複合材料と前記板部材の高さの総和に等しい請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項7】
前記圧着方向に沿って、前記プリプレグ部品の投影範囲は前記板部材の投影範囲に完全に収まっている請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項8】
前記圧着方向に沿って、前記被圧着部品の投影範囲は前記上圧着板の圧着領域に位置する請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項9】
前記上圧着板、前記下圧着板及び前記板部材の表面粗さは、25~75nmである請求項1に記載の複合材料の成形方法。
【請求項10】
前記複合材料の気孔率は1%以下である請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材料の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料及びその成形方法に関し、特に、複数の厚さの仕様に容易に製造できる複合材料及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な応用の要求を満たすために、材料科学の研究は盛んに発展している。しかしながら、応用の高度発展に伴い、材料の性質に対する要求も厳しくなってきている。これに基づき、複数種の材料をブレンドして、各材料の特性を組み合わせた複合材料が極力開発されている。また、炭素繊維材料は、軽量と良好な機械的性質(例えば強度とモジュラスなど)を有するため、複合材料の補強材としてよく用いられる。
【0003】
複合材料は、一般的に液状成形方式(例えば樹脂トランスファー成形(Resin Transfer Molding;RTM)、真空補助RTM又は樹脂注入(Resin Infusion;RI)など)、加圧成形方式(例えば熱プレス機)、スプレー・ハンドレイアップ方式(Hand and Spray lay-up)方式及びオートクレーブ成形などの方法で形成され得る。また、熱プレス機成形が高い操作利便性と効率を有するが、オートクレーブ成形で製造された複合材料は良好な性質と品質を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱プレス機成形は金型で製造された複合材料の寸法を調整するため、複合材料の寸法が大きいほど、必要な金型も調整して拡大する必要があり、よって重い重量を有し、さらにプロセスの利便性を低下させる。なお、異なる仕様の複合材料を作製しようとするとき、使用する金型を交換する必要もあり、オペレーターが金型を持ち運ぶリスクを増やす。オートクレーブ成形の装置が複雑であるため、装置温度の昇降に多くの時間がかかり、複合材料の製造コストを向上させる。また、オートクレーブ成形は高温高圧のパラメータ条件によって複合材料を製造するため、そのシステムは高い不安定性を有し、よって、高い環境危険性を有する。
【0005】
上述に鑑み、従来の異なる寸法の仕様の複合材料を容易に製造できない欠陥を改善するために、複合材料及びその成形方法の提供が急務となっている。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、板部材及び寸法制御部品を設けることにより、様々な厚みの仕様の複合材料を容易に製造することができる複合材料の成形方法を提供することにある。
【0007】
本発明の別の態様は、前記の成形方法により製造された複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の複合材料の成形方法によれば、プリプレグ部品と、少なくとも1つの寸法制御部品と、圧着方向に垂直な平面において、プリプレグ部品を取り囲み、吐出通路を有し、プリプレグ部品と少なくとも1つの寸法制御部品との間に設けられるシール部品と、を含む被圧着部品を、ガス遮断部品の中に置き、且つ上圧着板と下圧着板との間に設けるステップと、その後、プリプレグ部品の位置に対応し、板部材をガス遮断部品と上圧着板との間に置くステップと、続いて、上圧着板と下圧着板によって熱プレスを行うステップと、熱プレスステップの後、冷却ステップを行って、複合材料を製造できるステップと、を含む。
【0009】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記シール部品の高さは、プリプレグ部品の高さ以上である。
【0010】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記吐出通路の幅は、2~20センチである。
【0011】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記吐出通路は、前記圧着方向に垂直な方向に沿ってシール部品を貫通する。
【0012】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記寸法制御部品の数は偶数個であり、且つ、寸法制御部品のそれぞれは、他方に対向して設けられる。
【0013】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記寸法制御部品のそれぞれの高さは、複合材料と板部材の高さの総和に等しい。
【0014】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記圧着方向に沿って、プリプレグ部品の投影範囲は板部材の投影範囲に完全に収まっている。
【0015】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記圧着方向に沿って、被圧着部品の投影範囲は上圧着板の圧着領域に位置する。
【0016】
本発明の幾つかの実施例によれば、前記上圧着板、前記下圧着板及び前記板部材の表面粗さは、25~75nmである。
【0017】
本発明の別の態様によれば、前記の成形方法により製造された複合材料の気孔率は1%以下である。
(発明の効果)
【0018】
本発明の複合材料及びその成形方法は応用され、要求を満たすように、寸法制御部品及び板部材を設けることにより、製造された複合材料の寸法を容易に制御する。次に、機械的性質の需要を考慮に入れるために、本発明の被圧着部品は、プリプレグ部品を取り囲むシール部品を含むことで、熱プレスステップの際に、樹脂材料の流出率を効果的に制御することができる。これにより、本発明の製造方法は、寸法の要求と機械的性質を両立する複合材料を効果的に製造することができる。また、寸法制御部品及び/又は板部材を調整することにより、製造された複合材料の寸法に対する制御を容易に達成することができるため、熱プレス装置は、追加の修正を必要とせずに、異なる仕様の複合材料の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例及びそのメリットをより完全に理解するために、対応する図面と併せて、以下の説明を参照する。強調しなければならないのは、様々な特徴は、比例に基づいて描かれておらず、図示の目的だけである。関連する図面について、以下に説明する。
図1】本発明の幾つかの実施例による複合材料の製造方法を示すフローチャートである。
図2A】本発明の幾つかの実施例による被圧着部材を示す模式的斜視図である。
図2B】本発明の幾つかの実施例によるシール部品をそれぞれ示す模式的側面図である。
図2C】本発明の幾つかの実施例によるシール部品をそれぞれ示す模式的側面図である。
図2D】本発明の幾つかの実施例による被圧着部材を示す模式的斜視図である。
図3A】本発明の幾つかの実施例による熱プレスステップを行う前の、熱プレス装置を示す模式的断面図である。
図3B】本発明の幾つかの実施例による熱プレスステップを行った後の、熱プレス装置を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例の製造及び使用を詳細に論じる。しかしながら、実施例は、多種多様な特定のコンテンツにおいて実施され得る多くの適用可能な創作概念を提供することを理解されたい。論じられる特定の実施例は、単に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0021】
本発明の幾つかの実施例による複合材料の製造方法を示すフローチャートである図1を参照する。操作110に示すとおり、方法110は、被圧着部品をガス遮断部品の中に置き、且つ上圧着板と下圧着板との間に設けることである。
【0022】
本発明の幾つかの実施例による被圧着部材を示す模式的斜視図である図2Aを参照する。被圧着部品200aは、プリプレグ部品210、シール部品220及び寸法制御部品231a、233aを含む。x-y平面において、シール部品220はプリプレグ部品210を取り囲み、且つ、プリプレグ部品210と寸法制御部品231a、233aとの間に設けられる。シール部品220は、吐出通路221aを有してもよい。
【0023】
プリプレグ部品210は、樹脂材料を含浸させた繊維材料であってもよい。幾つかの実施例において、プリプレグ部品210は、例えば、樹脂材料を含浸させた複数層の繊維布で形成された積層体であってもよい。幾つかの具体的な例において、繊維材料は、人工繊維材料、天然繊維材料及び/又は他の適切な繊維材料を含んでよいが、これらに限定されず、樹脂材料は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂(vinylester resin;VE)、ビスマレイミド(bismaleimide;BMI)、フェノール樹脂及び/又は他の適当な熱硬化型樹脂材料を含んでよいが、これらに限定されない。例えば、繊維材料は、例えば、炭素繊維材料であってもよく、一方向(unidirectional;UD)繊維及び織布(例えば3K、6K、12K、24Kと48K織布)であってもよい。
【0024】
シール部品220は、力を受けて圧縮変形可能な材料である。シール部品220の形状は、特に限定されず、プリプレグ部品210を取り囲むことができればよい。図2Aに示すように、プリプレグ部品210のx-y平面における投影形状は四角形であり、且つシール部品220は方形枠であるが、本発明はこれらに限定されなく、他の実施例において、プリプレグ部品210のx-y平面における投影形状は、応用の需要を満たすように任意の形状であってもよいが、シール部品220は依然として方形枠であってもよく、又はシール部品220はプリプレグ部品210の外形に応じて変化する枠体であってもよい。
【0025】
シール部品220の吐出通路221aの設置位置は特に制限されず、シール部品220を貫通して、後続の熱プレスステップで押し出された余分な材料の吐出を可能できればよい。幾つかの実施例において、吐出通路221aの幅Wは、2~20センチであってもよく、好ましくは2~10センチである。吐出通路221aの幅が上記範囲であると、上記の余分な材料を容易に吐出することができる。図2Aにおいて、吐出通路221aの設置により、シール部品220は連続的な枠体ではないが、本発明はこれに限定されない。他の実施例において、本発明の幾つかの実施例によるシール部品をそれぞれ示す模式的側面図である図2B及び図2Cを参照すると、シール部品220の吐出通路221bは円形通路(例えば図2B)であってもよく、又は吐出通路221cはシール部品220の側壁底面に設けられたトレンチ構造(例えば図2C)である。幾つかの実施例において、好適な吐出効果を得るために、それに、シール部品220が圧力を受ける時に変形するので、シール部品220とプリプレグ部品210との間の間隔は、0~5センチであってもよく、好ましくは0~2センチである。
【0026】
図2Aを継続して参照する。寸法制御部品231a、233aは、ともに、圧力を受けて変形しないものである。なお、圧力を受けて変形しないこととは、材料が後続の熱プレスステップで加えられる圧力を受けても、その寸法が変化しないことを意味する。幾つかの具体的な例において、寸法制御部品231a、233aは、金属材料、高分子材料、及び/又は他の適切な材料で作製される。幾つかの具体的な例において、製造しようとする複合材料の寸法に基づき、寸法制御部品231a、233aの寸法誤差は、0.02センチ以下に制御しなければならない。寸法制御部品231a、233aの設置により、後続の熱プレスステップを行うときに、製造された複合材料の寸法を容易に調整及び制御することができる。幾つかの実施例において、寸法制御部品231a、233a以外に、被圧着部品200aは他の寸法制御部品を追加的に含むことができるが、好適な熱プレス効果を得るために、これらの追加的に設けられた寸法制御部品の数は偶数個であり、且つ寸法制御部品のぞれぞれは、他の寸法制御部品に対してプリプレグ部品210の反対側に設けられる(例えば、寸法制御部品231a、233aの設置方式)。同様に、シール部品220と寸法制御部品231a、233aとの間隔は、0~5センチであってもよく、好ましくは0~2センチである。
【0027】
z軸方向において、シール部品220の高さは、プリプレグ部品210の高さ以上である。好ましくは、シール部品220の高さは、プリプレグ部品210の高さより高い。その次、シール部品220の高さは、寸法制御部品231a、233aの高さより高い。
【0028】
本発明の幾つかの実施例による被圧着部材を示す模式的斜視図である図2Dを参照する。被圧着部品200bの配置は、被圧着部品200bがシール部品220を取り囲む寸法制御部品230bを含むこと以外は、被圧着部品200aの配置とほぼ同じである。
【0029】
図1図2A及び本発明の幾つかの実施例による熱プレスステップを行う前の、熱プレス装置を示す模式的断面図である図3Aを同時に参照する。操作110を行う際、被圧着部品200aをガス遮断部品310の中に置き、且つ上圧着板320aと下圧着板320bとの間に設ける。ガス遮断部品310の材料は、特に限定されず、ガスを効果的に遮断することができるとともに、後続の熱プレスステップを行っている間に、割れや損傷しないものであればよい。幾つかの具体的な例において、ガス遮断部品310は、真空バッグであってもよい。被圧着部品200aをガス遮断部品310に置くとき、製造された複合材料の表面に望ましくない筋目を有することを回避するために、ガス遮断部品310は、平坦でかつ直接プリプレグ部品210の上面と下面に接触し、また熱プレス効果を向上させるために、ガス遮断部品310も平坦でかつ直接シール部品220と寸法制御部品231a、233aの上面と下面に接触する。後続の熱プレスステップの圧着効果を向上させるために、z軸方向(すなわち熱プレスステップの圧着方向300a)に沿って、被圧着部品200aの投影範囲は、上圧着板320aの圧着領域に位置する。
【0030】
操作110を行った後、操作120に示すとおり、プリプレグ部品210の位置に対応して、板部材330を置く。好適な熱プレス効果を得るように、圧着方向300aに沿って、プリプレグ部品210の投影範囲は完全に板部材330の投影範囲に収まっている。換言すれば、プリプレグ部品210の上面全体を板部材330で覆うことができる。好ましくは、圧着方向300aに沿って、板部材330はプリプレグ部品210に対応する投影範囲を有する。後続で製造される複合材料の寸法が要求を満たすことができないことを回避するために、圧着方向300aに沿って、シール部品220の投影範囲は板部材330の投影範囲と重ならない。幾つかの実施例において、後続で製造された複合材料に非平面的な表面輪郭を持たせるために、板部材330の下面と下圧着板320bの上面は、選択的に、この表面輪郭に対応する表面起伏を有してもよく、及び/又は、追加の部品を下圧着板320bの上面に設けることで、複合材料の表面が非平面的な表面輪郭を有する。なお、説明しなければならないのは、部品を追加設置する場合、依然として複合材料の寸法に対する要求を同時に考慮する必要がある。
【0031】
接続するための熱プレスステップを行う前には、プリプレグ部品210の高さH11は、シール部品220の高さH21より低く、シール部品220の高さH21は、寸法制御部品231a、233aの高さH3より高く、受圧変形のないシール部品220は幅W1を有する。幾つかの実施例において、シール部品220が熱プレスステップの際に変形することを許容するために、シール部品220とプリプレグ部品210との間に間隔空間220aを有し、且つシール部品220と寸法制御部品231a、233aとの間に間隔空間220bも有する。
【0032】
幾つかの実施例において、操作120を行った後、選択的に排気ステップを行うことができ、これにより、ガス遮断部品310内のガスを排除し、ガス遮断部品310のプリプレグ部品210、シール部品220及び寸法制御部品231a、233aに対する平坦性を向上させる。同時に、プリプレグ部品210における余分な樹脂材料の一部は、シール部品220の吐出通路221a(図2A)から吐出することができる。
【0033】
図1図3A及び本発明の幾つかの実施例による熱プレスステップを行った後の、熱プレス装置を示す模式的断面図である図3Bを同時に参照する。操作120を行った後、操作130~操作150に示すとおり、熱プレスステップと冷却ステップを行って、複合材料340を製造する。熱プレスステップを行う際には、上圧着板320aが寸法制御部品231a、233aに当接するまで、上圧着板320aを圧着方向300aに沿って押し下げ、板部材330を介してプリプレグ部品210を押し下げて、さらに未冷却の複合材料340を形成する。幾つかの実施例において、製造された複合材料340の表面品質を向上させるために、上圧着板320a、下圧着板320b及び板部材330の表面粗さは、25~75nmであってもよく、好ましくは25~50nmである。幾つかの具体的な例において、上圧着板320a及び下圧着板320bは、SKD系、SUS系及び/又はSCM系の鋼材からなってもよいが、板部材330はアルミニウム金属からなってもよい。熱プレスステップで加えられた高温の熱エネルギーにより、プリプレグ部品210における樹脂材料に流動性を持たせることができるので、上圧着板320aを押し下げることにつれて、余分な樹脂材料をシール部品220の吐出通路221a(図2A)から吐出することができ、また樹脂材料の流動により、材料内の気泡を一括して持ち出すことができ、製造された複合材料340の気孔を小さくしてその品質を向上させる。また、余分な樹脂材料及び気孔を排除することが可能となるため、本発明の製造方法は高圧ガスを使用する必要がなく、且つ製造された複合材料340はさらに加工ステップを行うことなく応用要求を満たすことができ、且つ優れた表面品質と機械的性質を有する。
【0034】
熱プレスステップを行う前及びその行っている間に、プリプレグ部品210の高さH11がシール部品220の初期高さH21よりも低いため、樹脂材料が吐出通路221aのみから流出することができ他の箇所から溢れ出ることはなく、そのため、樹脂材料の総流出率を容易に調整及び制御することができ、製造された複合材料340の特性を調整する。
【0035】
次に、上圧着板320aに加えられた圧力はシール部品220の変形を促進することもでき、そのため、圧力を受けたシール部品220は低い高さH22と広い幅W2を有する。プリプレグ部品210と寸法制御部品231a、233aの位置は変動しないため、シール部品220の変形に伴い、熱プレスステップを行う前の場合に比べて、間隔空間220a及び間隔空間220bはいずれも縮小する。シール部品220の受圧変形に基づき、吐出通路221a(図2A)も変形により閉鎖され、そのため流動性を有する樹脂材料がさらに流失せず、製造された複合材料340の品質及び機械的性質を維持することができる。幾つかの実施例において、本発明の製造方法100において、樹脂材料の総流出率は20%以下である。樹脂材料の総流出率が20%以下であると、後続で製造された複合材料340はより適切な繊維含有量を有して、応用に要求される寸法の仕様及び機械的性質を同時に満たすことができる。
【0036】
上圧着板320aが寸法制御部品231a、233aに当接すると、上圧着板320aをそれ以上押し下げることができないので、寸法制御部品231a、233aの高さH3から板部材330の高さH4を差し引いた高さは製造された複合材料340の高さH12となる。換言すれば、板部材330の高さH4を調整することにより、本発明の製造方法100は異なる寸法の仕様の複合材料340を容易に製造することができる。
【0037】
前記の冷却ステップは、上圧着板320aの加圧状態を維持し、未冷却の複合材料340を70℃以下まで降温し、さらに型を取り外して、複合材料340を得ることができる。幾つかの具体的な例において、本発明で製造された複合材料340は、53%~63%の繊維材料を含んでよく、且つその気孔率が1%以下であり、機械的性質の変動係数(coefficient of variation;CV)が5%以下である。これらの具体的な例において、複合材料340が60%の繊維材料を含む場合、一般モジュラス(36msi)の複合材料340の引張強度は2100MPa以上であり、中モジュラス(42msi)の複合材料340の引張強度は2200MPa以上である。
【0038】
以下、実施例によって本発明の応用を説明するが、それは本発明を限定するためのものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、様々な変更や修正を加えることができる。
【0039】
調製例1
【0040】
まず、ビニル系樹脂からなる3K編成プリプレグとUD繊維プリプレグによって積層作業を行って、積層体を得た。続いて、積層体、シーラントストリップ及び2枚の寸法制御シートを含む被圧着部品を真空バッグの中に置き、且つこの被圧着部品を鏡面圧着鉄板の中央領域に置いた。寸法制御シートはそれぞれ積層体の反対側に置かれ、且つ対応する両側に位置し、シーラントストリップはいずれも積層体と寸法制御シートとの間に位置した。次に、シーラントストリップと積層体との間、及びシーラントストリップと隣接する寸法制御シートとの間隔は、いずれも、独立して3~20センチであってもよい。続いて、真空バッグ内のガスを除去することで、真空バッグに被圧着部品を平貼りさせた。積層体の位置に応じて、アルミニウム板を置き、且つ真空引きの状態で、樹脂の硬化特性により、2枚の鏡面圧着鉄板で熱プレスステップを行った。熱プレスステップを行った後、鏡面圧着鉄板の加圧状態を保持し、冷却ステップを行って、70℃以下まで降温した。型を取り外した後、調製例1の複合材料を得た。
【0041】
調製例2~調製例14
【0042】
調製例2~調製例14は、プリプレグの樹脂材料とその種類を変更する以外は、調製例1の複合材料と同じ製造方法を使用した。調製例2は、エポキシ樹脂からなる3K編成プリプレグとUD繊維プリプレグによって積層体を形成し、調製例3は、エポキシ樹脂からなるUD繊維プリプレグによって多角度(例えば0度、90度、+45度と-45度)の積層を行い、調製例4は、エポキシ樹脂からなるUD繊維プリプレグによって単一角度の積層を行った。
【0043】
実施例1
【0044】
実施例1は、前記の調製例2の方法によってガラス転移温度が150℃の複合材料を製造し、熱プレスステップの温度が150℃であり、圧力が7.5キログラムであり、時間が60分間である。製造された複合材料に対して、さらに延伸、曲げ及び圧縮等の機械的性質のテストを行い、その測定結果の変動係数はいずれも5%以下に制御することができる。また、複合材料の気孔率は0.37%であった。
【0045】
実施例2~実施例7
【0046】
実施例2は、前記の調製例2の方法によってガラス転移温度が180℃の複合材料を製造し、熱プレスステップの温度が180℃であり、圧力が7.5キログラムであり、時間が120分間である。製造された複合材料の延伸、曲げ及び圧縮等の機械的性質の変動係数はいずれも5%以下に制御することができ、且つその気孔率は0.29%であった。
【0047】
実施例3は、前記の調製例3の方法によってガラス転移温度が180℃の複合材料を製造し、熱プレスステップの温度が180℃であり、圧力が7.5キログラムであり、時間が180分間である。製造された複合材料に対して、さらにノッチなし(unnotched)の延伸及び圧縮等の機械的性質のテストを行い、その変動係数はいずれも5%以下に制御することができ、気孔率は0.40%であった。
【0048】
実施例4は、前記の調製例3の方法によってガラス転移温度が180℃の複合材料を製造し、熱プレスステップの温度が180℃であり、圧力が5.0キログラムであり、時間が180分間である。製造された複合材料に対して、さらに開孔(open hole)の圧縮テストを行い、その変動係数はいずれも3%以下に制御することができ、気孔率は0.35%であった。
【0049】
実施例5は、前記の調製例4の方法によってガラス転移温度が150℃の複合材料を製造し、熱プレスステップの温度が150℃であり、圧力が2.5キログラムであり、時間が30分間である。製造された複合材料の延伸、曲げ及び短梁等の機械的性質の変動係数はいずれも5%以下に制御することができ、且つ気孔率は0.23%であった。また、短梁の機械的性質は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials;ASTM)D2344号の標準方法で測定された。
【0050】
実施例6は、前記の調製例4の方法によってガラス転移温度が180℃の複合材料を製造し、熱プレスステップの温度が180℃であり、圧力が5.0キログラムであり、時間が180分間である。製造された複合材料の延伸、曲げ及び短梁等の機械的性質の変動係数はいずれも5%以下に制御することができ、且つ気孔率は0.25%であった。
【0051】
実施例7は、前記の調製例4の方法によってガラス転移温度が150℃の複合材料を製造し、熱プレスステップの温度が150℃であり、圧力が5.0キログラムであり、時間が60分間である。製造された複合材料の延伸、曲げ及び短梁等の機械的性質の変動係数はいずれも4%以下に制御することができ、且つ気孔率は0.19%であった。
【0052】
これにより、本発明の製造方法は、寸法制御部品の寸法を調整することにより、製造された複合材料の寸法を容易に調整することができる。なお、本発明の製造方法は、シール部品の吐出通路により余分な樹脂材料の流出率を制御することができ、且つ同時に樹脂材料の流動により材料内の気孔を一括して排除し、これにより、寸法の要求を満たす上で、複合材料に適切な機械的性質を持たせて、応用の要求を満たす。また、ガス遮断部品の配置により、本発明の製造方法は離型剤を使用する必要がなく、プロセスの利便性を向上させコストを低減させることができる。
【0053】
以上、本発明を実施形態で上述のように開示するが、本発明を限定するためのものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、様々な変更及び修正を行うことができ、従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義されたものを基準とすべきである。
【符号の説明】
【0054】
100 方法
110、120、130、140、150 操作
200a、200b 被圧着部品
210 プリプレグ部品
220 シール部品
220a、220b 間隔空間
221a、221b、221c 吐出通路
230b、231a、233a 寸法制御部品
300a 方向
310 ガス遮断部品
320a、320b 圧着板
330 板部材
340 複合材料
11、H12、H21、H22、H3、H4 高さ
W、W1、W2 幅
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B