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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】往復移動装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/013 20060101AFI20231121BHJP
   G21C 19/20 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G21C17/013
G21C19/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022141636
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2020509468の分割
【原出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2022172308
(43)【公開日】2022-11-15
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】15/681,484
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】フォーリー、ケヴィン、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッツリフェ、アンドリュー、ジェイ
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05930316(US,A)
【文献】米国特許第05784425(US,A)
【文献】特開平02-116747(JP,A)
【文献】特開平03-261897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/003
G21C 17/013
G21C 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子炉(10)の炉心シュラウド(12)の内部領域(8)に受け入れ可能なツール(4)に取り付けるように、また、当該内部領域にデバイス(6)を搬入するように構成された往復移動装置(86)であって、
当該ツール上に設置するように構成され、互いに反対側の第1の側面(91A)および第2の側面(91B)を有するプラットフォーム(88)と、
当該プラットフォーム上に設置される細長い支持部(90)であって、互いに反対側の第1の端部(101A)および第2の端部(101B)を有し、当該プラットフォームに対して長手軸の方向の第1の方向へ移動可能であり、当該第1の方向は移動により当該第1の端部が当該第1の側面から相対的に離れる方向であり、さらに当該第1の方向とは反対の第2の方向へ移動可能であり、当該第2の方向は移動により当該第2の端部が当該第2の側面から相対的に離れる方向であり、さらに当該プラットフォームに対して凹状である円弧方向に細長いことを特徴とする支持部(90)と、
細長い可撓性のベルト(92)であって、その長さ沿いの1つ以上の位置(104A、104B、104C)で当該プラットフォームに固着され、当該支持部の少なくとも一部の周りを延びて閉ループを形成し、当該支持部が当該第1の方向および当該第2の方向へ移動すると当該支持部の当該少なくとも一部との間で相対的に移動するベルト(92)と、
当該ベルト上に設置され、当該デバイスを搬送するように構成された取り付け台(94)と、
当該支持部と当該プラットフォームおよび当該ベルトのうちの一方との間に作動的に延びる駆動機構(96)であって、当該往復移動装置をその第1の状態と第2の状態の間で移動させるように作動可能な駆動機構(96)とを具備し、
当該第1の状態において、当該第1の側面から延びている当該支持部の部分は当該第2の側面から延びている部分より相対的に大きく、当該取り付け台は相対的に当該第2の端部よりも当該第1の端部の近くに位置しており、且つ、当該第1の端部と当該取り付け台は当該プラットフォームに対してオーバーハングしており、
当該第2の状態において、当該第2の側面から延びている当該支持部の部分は当該第1の側面から延びている部分より相対的に大きく、当該取り付け台は相対的に当該第1の端部よりも当該第2の端部の近くに位置しており、且つ、当該第2の端部と当該取り付け台は当該プラットフォームに対してオーバーハングしていることを特徴とする往復移動装置(86)。
【請求項2】
前記円弧は半径が一定である、請求項1の往復移動装置。
【請求項3】
前記ベルトが前記第1の端部に隣接する第1の位置(105A)の周りに延び、さらに前記第2の端部に隣接する第2の位置(105B)の周りに延び、前記往復移動装置が前記第1の状態と前記第2の状態の間で移動すると前記ベルトと当該第1の位置および当該第2の位置の間に相対的な移動が生じることを特徴とする、請求項1の往復移動装置。
【請求項4】
前記駆動機構が前記支持部と前記プラットフォームの間に作動的に延びる、請求項3の往復移動装置。
【請求項5】
前記支持部は歯付きラック(102)を含み、前記駆動機構は当該歯付きラックと前記プラットフォームの間を作動的に延びることを特徴とする、請求項4の往復移動装置。
【請求項6】
前記取り付け台は前記ベルトに固着されており、前記駆動機構の動作によって前記支持部が前記プラットフォームに対して移動すると、前記往復移動装置が前記第1の状態と前記第2の状態の間で移動する際、前記ベルトと前記第1の位置および前記第2の位置の間に相対的な移動が生じることを特徴とする、請求項5の往復移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願で開示および特許請求する発明は概して照射環境で使用できるツールに関し、具体的には、使用するにあたり沸騰水型原子炉の炉心シュラウドの内部領域に受け入れて、当該内部領域にデバイスを搬入するように構成されたツールに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術分野では多種類の原子炉の存在が知られている。そのような周知の原子炉には加圧水型原子炉(PWR)と沸騰水型原子炉(BWR)があるが、いずれも一般的に、原子力発電所の一部である発電機に接続される。
【0003】
原子炉内のさまざまな構成機器および構造物は、かかる構成機器および構造物の構造健全性を評価し修理の必要性を判断するために定期的に検査される。超音波検査は、原子炉の構成機器および構造物のひび割れを検知する周知の技術である。しかし、原子炉内の検査領域はアクセス上制約があるため、検査ツールを用いる評価には難しいところがある。例えば、BWRの炉心シュラウドのひび割れは、構造健全性を低下させ、プラントの運転に支障をきたすおそれがあるため、定期的な検査および評価の対象となる。しかし、炉心シュラウドの溶接部はアクセスが容易ではない。より具体的には、そのような炉心シュラウドの円筒形の外面へのアクセスは、一般的に、炉心シュラウドの外面と原子炉圧力容器の内面との間の環状空間内の、互いに隣接するジェットポンプの間の領域に限られる。超音波走査のためのアクセスは、原子炉圧力容器の内面とジェットポンプおよび他の付属品(炉心シュラウドの円筒形外面から半径方向外向きに突き出たライザーブレースやリストレーナブラケットなど)との間のさらに狭い空間内に制限される。さらには、具体的なプラント設備によるが、一部の炉心シュラウドおよび溶接された付属品は炉心シュラウド外面でまったくアクセス不能である。
【0004】
さらに、原子炉内の検査領域は放射能が高く、同領域内で作業する作業員に安全上のリスクが及ぶ可能性がある。BWRなどの原子炉の検査および補修は、手動制御のポールとロープによって検査デバイスを操作および/または位置決めするのが一般的である。原子炉の運転停止時に、一部の構成機器の検査や補修を行うには、原子炉冷却材中の30~100フィートの深さに検査のためのマニピュレータ装置を設置する必要がある。そのような深さでマニピュレータを設置したり取り外したりする作業には比較的長い時間がかかるため、プラントの運転停止期間に影響が及ぶ可能性がある。また、検査の実施には、種々の検査デバイスに応じて異なるいくつかのマニピュレータ、あるいはマニピュレータの動作形態の変更を要することがあるため、さらなるマニピュレータの設置および取り外し作業と追加の費用が必要となる。設置と取り外しにかかる期間が長くなると、プラントの運転停止期間に影響が及ぶだけでなく、検査を行う作業員の放射線被ばくや汚染物質へ身をさらすことが増えることになる。
【0005】
したがって発電事業者は、放射線被ばくを減らし、発電所の運転停止コストとその影響を軽減するために、マニピュレータを設置したり取り外したりする回数を減らすことを望んでいる。発電事業者はまた、コストを減らし、運転効率をできるだけ上げることを望んでいる。したがって、改善策が望まれる。
【発明の概要】
【0006】
改良型ツールは、BWRの炉心シュラウドの内部領域に受け入れられるように構成されている。当該ツールは、当該内部領域にデバイスを搬入するように構成されている。このデバイスは、炉心シュラウドを超音波で走査できる検査用機器でも別のデバイスでもよい。当該ツールは、細長いフレームと、当該フレーム上の昇降装置と、当該昇降装置上のマニピュレータ装置とを含む。当該ツールはさらに、当該マニピュレータ装置上の往復移動装置を含み、当該往復移動装置は当該デバイスを搬送するように構成された取り付け台を有する。当該往復移動装置は、当該炉心シュラウドの内面の輪郭に整合する円弧状の細長いラックを含む。当該細長いラックを当該マニピュレータ装置に対して移動させると、当該ラック上の取り付け台および当該取り付け台に搭載された当該デバイスが円弧状経路を移動して、炉心シュラウドの円周方向の検査が行われる。当該昇降装置は、当該往復移動装置を細長い当該フレームに沿って移動させて、当該取り付け台およびその上に搭載された当該デバイスを当該炉心シュラウド上で軸方向に移動させるように作動可能である。当該マニピュレータ装置は、当該往復移動装置を収縮位置と展開位置の間で移動させるように作動可能であるが、当該マニピュレータ装置は、当該収縮位置において、当該フレームの細長い内部空間に収まり、当該展開位置において、当該内部空間から取り出されて、当該デバイスが検査のために展開される。当該収縮位置において、当該ツールは、当該BWRの上部格子板の開口を介して、原子燃料を取り出した後の燃料セルに装入することができる。当該ツールはさらに、当該フレームの端部に位置する足装置を含んでおり、当該足装置を炉心板上に嵌合すると、当該フレームを当該炉心板に対して当該フレームの長手軸を中心として旋回させることができる。
【0007】
したがって、本願で開示および特許請求する発明の一局面は、BWRの炉心シュラウドの内部領域に受け入れられるように構成され、当該内部領域に検査デバイスまたは他のデバイスを搬入するように構成された改良型ツールを提供することである。
【0008】
本願で開示および特許請求する発明の別の局面は、当該上部格子板の開口を介して、当該原子燃料を取り出した後の当該BWRの燃料セルに装入することができる改良型ツールを提供することである。
【0009】
本願で開示および特許請求する発明の別の局面は、取り付け台に設置されたデバイスを当該BWRの当該炉心シュラウドの内面上の円弧状経路に沿って移動させるように作動可能な往復移動装置を有する、改良型ツールを提供することである。
【0010】
本願で開示および特許請求する発明の別の局面は、かかるツール上に受け入れ可能な往復移動装置であって、当該往復移動装置の取り付け台に設置されたデバイスを円弧状経路に沿って移動できるように構成された往復移動装置を提供することである。
【0011】
本願で開示および特許請求する発明の別の局面は、昇降装置上に一対の動作形態のうちのいずれかの動作形態で取り付け可能なマニピュレータ装置を有する、改良型ツールを提供することである。当該マニピュレータ装置は、第1の動作形態において、当該昇降装置から概して当該足装置の方へ延びており、第2の動作形態において、当該昇降装置から概して当該足装置から離れる方向へ延びている。
【0012】
本願で開示および特許請求する発明の上記のおよび他の局面は、沸騰水型原子炉の炉心シュラウドの内部領域に受け入れ可能なように、かつ当該内部領域にデバイスを搬入するように構成された改良型ツールによって提供される。当該ツールは概して、当該長手軸の方向に細長く、長手軸の方向に細長い内部空間を有するフレームと、当該フレーム上の昇降装置と、当該昇降装置上に設置され、少なくとも一部が当該内部空間に収まるマニピュレータ装置と、概して当該マニピュレータ装置上に設置され、細長い支持部を含む往復移動装置とを含み、当該往復移動装置はさらに、概して当該支持部上に設置され、当該デバイスを搬送するように構成された取り付け台を含み、当該昇降装置は当該マニピュレータ装置を当該フレームの長手方向の第1の位置と第2の位置の間で移動させるように作動可能であり、当該マニピュレータ装置は、当該往復移動装置を、当該支持部の少なくとも一部が当該内部空間内に収まる状態の第1の位置と、当該支持部および当該取り付け台が当該内部空間から取り出された状態の第2の位置の間で移動させるように作動可能であり、当該ツールはまた、当該フレームに設置され、概して多数の足および旋回機構より成る足装置を含み、当該フレームの端部に設置された当該多数の足は当該沸騰水型原子炉の燃料支持金具、制御棒案内管および炉心板のうちの少なくとも1つに嵌合するように構成されており、当該旋回機構は当該多数の足が当該燃料支持金具、当該制御棒案内管および当該炉心板のうちの当該少なくとも1つに嵌合すると当該フレームを当該多数の足に対して当該長手軸を中心として旋回させるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
本願で開示および特許請求する発明の他の局面は、沸騰水型原子炉の炉心シュラウドの内部領域に受け入れ可能なツールに取り付けて、当該内部領域にデバイスを搬入するように構成された改良型往復移動装置によって提供される。当該往復移動装置は概して、当該ツール上に設置するように構成され、互いに反対側の第1の側面および第2の側面を有するプラットフォームと、当該プラットフォーム上の細長い支持部とを含み、当該支持部は互いに反対側の第1の端部および第2の端部を有し、当該支持部は当該プラットフォームに対して長手軸に沿う第1の方向へ移動可能であり、当該第1の方向へ移動すると、当該第1の端部は当該第1の側面から相対的に離れるように移動し、当該第1の方向とは反対向きの第2の方向へ移動すると、当該第2の端部は当該第2の側面から相対的に離れるように移動し、当該往復移動装置はさらに可撓性の細長いベルトを含み、当該ベルトはその長さ沿いの1つ以上の位置で当該プラットフォームに固着され、当該ベルトは当該支持部の少なくとも一部の周りに延びて閉ループを形成するため、当該支持部が当該第1の方向および当該第2の方向へ移動すると、当該ベルトは当該支持部の当該少なくとも一部との間で相対的に移動し、当該往復移動装置はさらに、当該ベルト上に設置され当該デバイスを搬送するように構成された取り付け台と、当該支持部と当該プラットフォームおよび当該ベルトのうちの一方との間に作動的に延びる駆動機構とを含み、当該駆動機構は、当該往復移動装置を当該往復移動装置の第1の状態と当該往復移動装置の第2の状態との間で移動させるように作動可能であり、当該第1の状態において、当該第1の側面から延びている当該支持部の部分は当該第2の側面から延びている当該支持部の部分より相対的に大きく、かつ当該取り付け台は相対的に当該第2の端部よりも当該第1の端部の近くに位置し、当該第2の状態において、当該第2の側面から延びている当該支持部の部分は当該第1の側面から延びている当該支持部の部分より相対的に大きく、かつ当該取り付け台は相対的に当該第1の端部よりも当該第2の端部の近くに位置している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本願で開示および特許請求する発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0015】
図1】本願で開示および特許請求する発明の第1の局面に基づく改良型ツールと、本願で開示および特許請求する発明の別の局面に基づく改良型往復移動装置の斜視図であり、当該ツール上の第1の動作形態のマニピュレータ装置と、当該マニピュレータ装置上の中央位置にある当該改良型往復移動装置とを示す。
【0016】
図2】沸騰水型原子炉の上部格子板を通して見た図1のツールの上部平面図であり、当該ツールは燃料セル内で当該沸騰水型原子炉の炉心板上に配置されている。
【0017】
図3】マニピュレータ装置がツールの長手方向の別の位置にある点を除き、図1に類似する図である。
【0018】
図4図2の沸騰水型原子炉に受け入れられた図1のツールの立面図であり、当該ツール上の第2の動作形態のマニピュレータ装置を示す。
【0019】
図5】マニピュレータ装置が第2の動作形態にあり、往復移動装置が中心からずれた別の位置にある点を除き、図1に類似する図である。
【0020】
図6】マニピュレータ装置がツールの長手方向の別の位置にあり、往復移動装置がツールのフレームを越えてツールの足装置に隣接する位置にある点を除き、図5に類似する図である。
【0021】
図7】ツールの上部平面図である点を除き、図6に類似する図である。
【0022】
図8】ツールの正面図である点を除き、図6に類似する図である。
【0023】
図9】マニピュレータ装置が収縮位置にあり、往復移動装置の支持部がフレームの細長い内部空間内にある点を除き、図5に類似する図である。
【0024】
図10】ツールの側面図である点を除き、図9に類似する図である。
【0025】
図11図9の線11-11に沿う断面図である。
【0026】
図11A図11の枠内の拡大図である。
【0027】
図12】ツールの上部平面図である点を除き、図9に類似する図である。
【0028】
図13図1に示すツールのマニピュレータ装置の側立面図である。
【0029】
図14図13のマニピュレータ装置の正面立面図である。
【0030】
図15図13の線15-15に沿う断面図である。
【0031】
図16図5に示すのと同様の位置にあるマニピュレータ装置および往復移動装置の斜視図である。
【0032】
図17】往復移動装置がマニピュレータ装置に対して異なる位置にある点を除き、図16に類似する図である。
【0033】
図18】マニピュレータ装置と往復移動装置の正面図である点を除き、図16に類似する図である。
【0034】
図19図1の往復移動装置の上部平面図である。
【0035】
図20図19の往復移動装置の背立面図である。
【0036】
図21】往復移動装置が別の位置にある点を除き、図19に類似する図である。
【0037】
図22図19の線22-22に沿う断面図である。
【0038】
同じ参照番号は、本明細書を通して同じ部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本願で開示および特許請求する発明の一局面に基づく改良型ツール4を図1~12に略示し、その一部を図13~22に示す。ツール4は、図2に示す沸騰水型原子炉(BWR)10のような原子炉の内部領域8にデバイス6(図7)を搬入するように構成されている。デバイス6は、例えば超音波検査デバイスや他の検査または評価デバイスあるいは内部領域8の物体と物理的に相互作用する何らかのデバイス(非限定的な例として内部領域8にある物体を把持したり移動させたりするデバイス)でもよい。
【0040】
図2に示すように、BWR10の環状シュラウド12は原子炉圧力容器13の内部領域にある。シュラウド12の、原子炉圧力容器13とは反対側の内面14は、例えば超音波センサのようなデバイス6を搭載したツール4によるシュラウド12の検査を行うことができる表面である。図4からわかるように、シュラウド12には、垂直溶接部16と水平溶接部18のような多数の溶接部がある。本願に用いる表現「多数の」およびその変化形は、広義には、ゼロを除き1を含む任意の数量を指す。垂直溶接部16はシュラウド12の軸方向17に、また、水平溶接部18は周方向19(方位角の方向と呼ぶこともある)に延びていると言える。
【0041】
図2からわかるように、BWR10はさらに、炉心板20、その垂直上方に離隔した上部格子板26を含み、ツール4は炉心板20上に設置できる。BWR10内には運転時に原子燃料を受け入れる複数の燃料セル22が形成されており、各セルは上部格子板26に形成された開口を有する。なお、図2、4のBWR10は、図示を簡略化するためすべての燃料が取り出された状態にある。また、ツール4は、すべての燃料および他の物質を燃料セル22から取り出さなくてもBWR10で使用できる設計であることも明記しておく。すなわち、ツール4は、燃料を取り出した後の燃料セル22に装入されるが、そのセルに隣接する燃料セル22から燃料を取り出す必要性が最小限に抑えられた有利な構成である。例えば、図2において、ツール4は複数の燃料セル22のうちの燃料セル22Aに装入されている。図2はまた、ツール4が旋回して(その態様は以下で詳述)、その一部が隣接する燃料セル22Bおよび実際には燃料が装入されない隣接領域22C内へ突き出た状態を示している。したがって、燃料セル22Aにツール4を装入して燃料セル22A、22Bの近辺の内面14を検査するには、図2において燃料などの装入のない他の燃料セル22からの燃料などの取り出しは不要であり、そのような状況で燃料を取り出す必要があるのは燃料セル22A、22Bのみであることが分かる。したがって、シュラウド12の内面14の検査を行ううえで燃料セル22から取り出さなければならない燃料の量が抑えられるため、シュラウド12の内面14の検査に要する時間と労力が減少するという利点が得られる。
【0042】
さらに、図2に示すように、炉心板20には複数のソケット(参照符号24A、24B、24C、24Dで略示)が設けられており、それらは集合的または個別に参照符号24で表すことがある。各燃料セル22は、ツール4の結合部(以下で詳述)を差し込むように構成された一組のソケット24A、24B、24C、24Dを具備する。BWR10の運転時に、ソケット24は、原子炉燃料支持金具およびさまざまな燃料格子構造体を受け入れる。したがって、BWR10を検査する場合や、ツール4を用いる作業を行う場合、内面8の近くにある燃料セル22のうちの1つにツール4を装入するために、その燃料セルに入っている燃料を取り出す必要がある。後述のように、ツール4を操作できるようにするために、ツール4を装入する燃料セル22に隣接する別の1つまたは2つの燃料セル22から入っている燃料を取り出す必要があるかもしれない。
【0043】
図1からわかるように、ツール4はアンビリカル30を介してコンピュータシステム28に接続されている。コンピュータシステム28は、キーボード、ジョイスティック、その他の制御入力デバイスなどさまざまな入力デバイスを含む入力装置を有する。コンピュータシステム28はさらに、さまざまな出力デバイス(非限定的な例として画像ディスプレイ、プリンタ、スピーカーなどの音声出力システム)を含む出力装置を有する。コンピュータシステム28はさらに、入力装置および出力装置と通信関係にあり、その上でさまざまなルーチンを実行してツール4にさまざまな動作を行わせるプロセッサ装置を有する。ツール4とそのさまざまなサブアセンブリは、搭載されたアクチュエータが電動モータまたは空気圧作動式モータやシリンダなどを介して電子的に作動されるという意味で本質的にロボットであることを理解されたい。したがって、アンビリカル30は、ツール4の或る特定のサブアセンブリを作動させるために、ワイヤなどの形態の電子通信チャンネルだけでなく、ツール4に流体を供給する空気や他の流体チャンネルを含むことができる。この点に関して、コンピュータシステム28は、本発明の精神から逸脱することなく、ツール4と無線通信することができる。
【0044】
ツール4は、その長手軸34の方向に細長いフレーム32を含むと言える。ツール4はさらに、フレーム32の端部に位置する足装置36を含む。当該足装置は、ツール4を装入する燃料セル22のソケット28A、28B、28C、28Dに差し込むように構成された一組の4つの足38を有する足アセンブリ37を含む。この点に関して、足38は、BWR10のさまざまな部品(非限定的な例として、BWR10の燃料支持金具、制御棒案内管、炉心板20のうちの1つ以上)のうちの任意の部品に嵌合することができる。燃料支持金具は、制御棒案内管の最上部に着座する原子炉機材の一部である。制御棒案内管の最上部は、炉心板20の最上部より若干突出し、燃料支持金具の重量を支える。制御棒案内管および/または燃料支持金具が取り外されている場合は、例えばツール4を案内管の中または炉心板20の上に設置できるように、必要に応じて足38の構造を変えればよい。
【0045】
足装置36はさらに、フレーム32を足38に対して回転軸(例示する実施態様では長手軸34に一致する)を中心として旋回させる旋回機構40を含む。この点に関して、旋回機構40は、フレーム32と足38の間に歯車を介して接続されたモータ42を含む。当該モータは、通電または他の手段によって作動されると、旋回機構40を作動させ、フレーム32を足38に対してフレーム32の長手軸34を中心として旋回させる。より具体的には、図11Aに示すように、モータ42はシャフト39と、シャフト39上のピニオンギア41を含む。足アセンブリ37上には、ピニオンギア41が係合する反動歯車43もあり、モータ42が通電または他の手段によって作動されると、フレーム32が足38に対してフレーム32の長手軸34を中心として旋回する。フレーム32の端部と足アセンブリ37の間には、フレーム32が足38に対して旋回する際の摩擦を減らすために、軸受45が挿入されている。例示する実施態様において、軸受45は深溝玉軸受であるが、本発明の精神から逸脱することなく他の種類の軸受を使用できる。
【0046】
例えば、図1に示すように、フレーム32の前面46と見なされる部分の内側には、細長い空間44がある。この内部空間44は、長手軸34の方向に細長い。フレーム32はさらに、前面46の反対側の背面48(図2)と、その背面48とフレーム32の一対の側面51A、51Bとの間にそれぞれ延びる一対の面取り部50A、50Bとを有すると言うことができる。図2からわかるように、面取り部50A、50B(集合的または個別に参照符号50で表すことがある)があるため、フレーム32と、ツール4が設置された燃料セル22に隣接する燃料セル22との間に隙間が形成される。この隙間があるため、旋回機構40がフレーム32を炉心板20に対して旋回させても、フレーム32が隣接する燃料セル22にある燃料に当接したり係合したりする有意なリスクは存在しない。面取り部50は、本発明の精神から逸脱することなく、円弧状や弓状などの異なる構成および輪郭にしても、また、背面48および側面51A、51Bと成す角を変えてもよい。
【0047】
例えば、図1、2からわかるように、フレーム32の足装置36とは反対側の端部には頭部47がある。頭部47は、長手軸34を横断する面上で円形である。頭部47には、カメラ53などの別のデバイスを受け入れ可能な出入口49が設けられている。カメラ53は、典型的にはケーブル55を介してビデオシステムに接続されるが、ケーブル55がアンビリカル30の一部のこともある。旋回機構40をツール4の最上端ではなく最下端に設置することにより、頭部47の内部に、カメラ53または他のデバイスを受け入れる出入口49を設けるのに有利な十分な自由空間が存在する。出入口49は内部空間44内へのアクセス、すなわち、例えばツール4の垂直上方の領域から内部空間44へのアクセスを可能にする。例えば、カメラ53を出入口49を介して内部空間44に挿入すると、デバイス6の動作およびツール4が働く状況を遠隔監視することができる。
【0048】
さらなる利点は、旋回機構40が足装置37とフレーム44の間にあってフレーム44全体を足38に対して旋回させる構成のため、フレーム44を長手軸34を中心として旋回させることにより、BWR10内の水中でアンビリカル30を移動できることである。すなわち、燃料セル22から燃料を取り出す或る特定の状況において、例えば、BWRの内部空間は空きが少ないため、アンビリカル30と取り出される燃料とが物理的に衝突する可能性がある。したがって、旋回機構40を作動させることにより、フレーム44を旋回させて、アンビリカル30をBWR10の水中で再配置すると、アンビリカル30と取り出される燃料の物理的衝突を回避できる利点がある。
【0049】
ツール4は、図11に示すようにフレーム32上に設置され、駆動モータ54と駆動ねじ56を含む昇降装置52をさらに含む。駆動ねじ56は、従動体58(図16)と協働する。駆動モータ54は、ねじジャッキまたは他の形態の細長い螺設装置である駆動ねじ56に作動的に接続され、駆動ねじ56は従動体58と螺合接続関係にある。図16に示すように、従動体58はマニピュレータ装置60に連結されている。図8、10、11からわかるように、駆動モータ54が通電または他の方法によって作動され、駆動ねじ56が内部空間44内で回転すると、駆動ねじ56と螺合接続関係にある従動体58とマニピュレータ装置60とがフレーム32の長手軸34に沿って並進する。例えば、図1におけるマニピュレータ装置60のフレーム32に対する位置と、図3におけるマニピュレータ装置60のフレーム32に対する位置とは異なる。内部空間44内のそのような長手軸34沿いのマニピュレータ装置60の並進は、昇降装置52の駆動モータ54を通電または他の方法によって作動させ、駆動ねじ56により、それと螺合接続関係にある従動体58を長手軸34沿いに並進させることにより起こる。
【0050】
例えば、図1、16からわかるように、マニピュレータ装置60は、相互接続された延伸装置62と回転装置64とを含むと言える。延伸装置62は昇降装置52上に設置され、回転装置64は延伸装置62上に設置されている。
【0051】
延伸装置62は、4バーリンク機構66および駆動体68を含むと言える。図16に最もわかりやすく示すように、4バーリンク機構66は、従動体58を搭載するスタンド69と、スタンド69に旋回自在に接続されスタンド69から離れる方向に延びる第1のリンク70および第2のリンク72と、スタンド69とは反対側の第1のリンク70および第2のリンク72の端部に旋回自在に接続された本体74とを含むと言える。スタンド69、第1のリンク70、第2のリンク72および本体74の組み合わせが、4バーリンク機構66として機能する。
【0052】
図16~18からわかるように、駆動体68は、スタンド69と第1のリンク70との間を延びて両者を作動的に接続する。駆動体68は、例えば空気圧シリンダ、ステッピングモータ、および長さが可変で、4バーリンク機構66を例えば図9~12に略示するような収縮位置と図1、3、5に略示するような延伸位置の間で作動させる構成の他の同様のデバイスのような多種多様なデバイスのうちの任意のデバイスでよい。以下に詳述するように、4バーリンク機構66は、ツール4を燃料セル22に装入したり燃料セル22から取り出したりするときは、例えば図9~12に示す収縮位置にある。一方、延伸装置62は、燃料セル22内に設置されたツール4が検査や他の作業を行うときに、一般的に図1、3、5に例示するような延伸位置にある。
【0053】
例えば、図13~15からわかるように、回転装置64は本体74上に設置されている。回転装置64は、参照符号76A、76B(集合的または個別に参照符号76で表すことがある)で略示される一対のアクチュエータを含むと言える。回転装置64はさらに、本体74上に旋回自在に設置されたクランク78と、クランク78上に設置された台座80とを含む。アクチュエータ76A、76Bはそれぞれ、本体74に取り付けられた静止部として機能するシリンダ82A、82Bを含む。さらに、アクチュエータ76A、76Bはそれぞれ、対応するシリンダ82A、82Bに対して伸縮方向に移動可能な作動部として機能するピストン84A、84Bを含む。ピストン84A、84Bは、クランク78に作動的に接続されている。図15からわかるように、アクチュエータ76Aの伸縮方向とアクチュエータ76Bの伸縮方向は実質的に互いに平行である。したがってアクチュエータ76の伸縮方向は、実質的に互いに平行であると言える。さらに、アクチュエータ76A、76Bは隣り合わせに配置されている。この点に関して、マニピュレータ装置60は、第1のリンク70および第2のリンク72との接続部とは反対側の本体74の端部に自由端部85があることがわかる。台座80は自由端部85に隣接し、アクチュエータ76は共に、クランク78から自由端部85からの離れる方向へ延びている。図15からわかるように、一方のアクチュエータ76が延伸し、それと同時にもう一方のアクチュエータ76が収縮すると、クランク78の両端部に互いに反対向きの2つの力が同時にかかるため、台座80が本体74に対して回転する。アクチュエータ76をこのように巧妙に配置して同時に作動させると、有利なことに、本体74の自由端部85が台座80のごく近くに来るため、以下に詳述するように、スタンド69からの長手軸34に沿う方向のデバイス6のリーチを所望の如く長くすることができる。
【0054】
例えば、図1、16、17からわかるように、ツール4はさらに、回転装置64の台座80上に設置された往復移動装置86を含む。より具体的には、往復移動装置86は、台座80上に設置されたプラットフォーム88と、プラットフォーム88上に移動自在に設置された支持部90を含むと言える。プラットフォーム88は、互いに反対側の第1の側面91Aおよび第2の側面91Bを有すると言える。往復移動装置86はさらに、プラットフォーム88と支持部90の間を延びるベルト92と、支持部90上に設置された取り付け台94を含み、取り付け台94は例えば、支持部90とデバイス6の間に介在するジンバル装置を含む。往復移動装置86はさらに、プラットフォーム88と支持部90の間を延びて両者を作動関係にする駆動機構96を含む。
【0055】
往復移動装置86はさらに、プラットフォーム88上に回転自在に設置され、支持部90と係合する複数の保持ホイール98を含む。例示する実施態様の保持ホイール98は2対あり、一方の対の保持ホイール98は支持部90の第1の部分を移動自在に挟持し、もう一方の対の保持ホイール98は支持部90の別の部分を移動自在に挟持する。同様に、取り付け台94には一組の4つの位置決めホイール99が回転自在に取り付けられており、これらの位置決めホイール99の各対は同様に支持部90の互いに反対方向の側面に配置され、支持部90の2つの異なる部分に係合する。
【0056】
支持部90は、より具体的には、プラットフォーム88に対して凹状で、半径が一定の円弧状の細長いフランジ100を含むことがわかる。すなわち、フランジ100の曲率半径の方向は、フランジ100に対してプラットフォーム88が位置する方向と同じである。フランジ100は、互いに反対側の第1の端部101Aおよび第2の端部101Bを有する。フランジ100の第1の端部101Aは、概してプラットフォーム88の第1の側面91Aから離れる方向に延び、また、フランジ100の第2の端部101Bは、概してプラットフォーム88の第2の側面91Bから離れる方向に延びる。支持部90はさらに、フランジ100上に形成された歯付きラック102を含む。駆動機構96は、歯付きラック102の複数の歯と係合して、取り付け台94をマニピュレータ装置60に対して複数の位置の間で移動させる。
【0057】
例えば、図1、3、19、20は、往復移動装置86が中央位置にある状態を示す。例示する実施態様において、この中央位置は、取り付け台94が、フランジ100上において、第1の端部101Aおよび第2の端部101Bから等距離で、プラットフォーム88に最も近く、プラットフォーム88に重なる位置である。図5~8および図16は、往復移動装置が、支持部90と取り付け台94(したがってデバイス6)をフレーム32から円弧方向に最も離隔させる一方の先端位置にある状態を示す。図5~8に示す位置において、フランジ100の第1の端部101Aとプラットフォーム88の第1の側面91Aの間隔は、フランジ100の第2の端部101Bとプラットフォーム88の第2の側面91Bの間隔より相対的に大きい。同様に、図17は、往復移動装置が、プラットフォーム90と取り付け台94(したがってデバイス6)をマニピュレータ装置60から反対側の円弧方向に最も離隔させた、マニピュレータ装置60に対して別の先端位置にある状態を示す。図17の位置において、フランジ100の第1の端部101Aとプラットフォーム88の第1の側面91Aの間隔は、フランジ100の第2の端部101Bとプラットフォーム88の第2の側面91Bの間隔より相対的に小さい。すなわち、図17において、フランジ100の第2の端部101Bとプラットフォーム88の第2の側面91Bの間隔は、フランジ100の第1の端部101Aとプラットフォーム88の第1の側面91Aの間隔より大きい。図21は、往復移動装置の、例えば図19に示す中央位置と、例えば図16に示す一方の先端位置との間の中間的な位置を示す。往復移動装置86は、例えば図16に示す一方の先端位置と例えば図17に示すもう一方の先端位置の間のすべての位置の間を連続的に移動可能であり、取り付け台94(したがってデバイス6)を図16図17に示す2つの先端位置の間で円弧方向19に移動させることができる。
【0058】
例えば、図19、21からわかるように、ベルト92は、参照符号104A、104Bで示す2つの固着位置を有し、フランジ100の互いに反対側の端部101A、101Bに隣接して配置された参照符号105A、105Bで示す一対のプーリの周りを延びて閉ループを形成する。ベルト92はさらに、そのほぼ中間点でプラットフォーム88に固着されるが、その中間点がもう一つの固着位置104Cである。
【0059】
図22からわかるように、駆動機構96は、プラットフォーム88上に設置されたモータ106を含み、モータ106から延びるシャフト108は中間の傘歯車112を介して歯車列110と接続関係にある。歯車列110は、支持部90のラック102に噛み合う駆動歯車114を含む。通電または他の手段によってモータ106のシャフト108が回転すると、駆動歯車114が回転して、支持部90をプラットフォーム88に対して移動させる。その理由は、プラットフォーム88がマニピュレータ装置60の台座80に固着されているからである。ベルト92は固着位置104Cでプラットフォーム88に固着されているため、図21に示すように、支持部90が図19に示す中央位置から図16に示す一方の先端位置の方へ移動すると、ベルト92の引張力が取り付け台94の固着位置104Aにかかり、この力が、取り付け台94を位置決めホイール99とともに、支持部90の長手方向にフランジ100の第1の端部101Aの方へ移動させる。また、そのような取り付け台94の移動は、概してプラットフォーム88の第1の側面91Aから離れる方向であると言える。
【0060】
支持部90がプラットフォーム88に対して円弧方向19に移動する距離の増分に比べて、取り付け台94がプラットフォーム88に対して円弧方向19に移動する距離の増分は2倍である。これは、ベルト92をフランジ100の凹面(すなわちラック102が形成された表面)とその反対側の凸面の上に向きを変えて張設することによって実現される。例えば、図21において支持部90が円弧方向19に左方へ1インチ動くと、ベルト92の一部が支持部90の凹面と凸面のそれぞれで1インチの距離だけ引っ張られる。ベルト92は固着位置104Cにおいてプラットフォーム88に固着されているため、取り付け台94は円弧方向19に、図21で左方へ1インチ+1インチの合計2インチ移動する。図16、17の両先端位置の間で取り付け台94が円弧方向19に移動する距離は、支持部90の円弧方向の長さよりはるかに大きい。支持部90の或る特定の部分は、プラットフォーム88上の複数対の保持ホイール98の間に外れないように保持される必要があるが、上述した幾何学的関係により、取り付け台94およびその上に設置されたデバイス6を円弧方向に、支持部90の円弧方向19の移動距離の2倍近い距離にわたって移動させることができる。さらに、駆動機構96とベルト92の構成の組み合わせにより、単一の駆動機構96だけで支持部90と取り付け台94の両方を駆動することができる。
【0061】
ツール4を使用するためにBWR10に装入するには、マニピュレータ装置60をまず、図9~12に略示するような収縮位置に収める。図9~12からわかるように、収縮位置では、往復移動装置86と搭載されたデバイス6とは完全に内部空間44内に収まるため、ツール4を燃料セル22のうちの1つに長手方向に装入することが可能である。収縮位置において、縦長の支持部90は概して長手軸34と一直線である。マニピュレータ装置60は通常、ツール4を装入する燃料セル22のソケット24に足38が係合するまでは、収縮位置に保たれる。次に、駆動機構68を作動(例示する実施態様では延伸)させて、マニピュレータ装置60を図9~12に示す収縮位置から延伸位置に移動させることができる。延伸位置において、支持部90は内部空間44の外に位置し、縦長の支持部90は長手軸34とほぼ一直線である。次いで、回転装置64のアクチュエータ76を作動させて、往復移動装置86を延伸位置と展開位置の間で旋回させることができる。展開位置では、図4に略示するように、支持部90の縦長の本体が回転装置64によって回転される結果、長手軸34をほぼ横断する方向に向いている。
【0062】
また、上述の操作において、フレーム32を足38に対して長手軸30を中心として旋回させて、図2に略示するように、弓状のプラットフォーム88をシュラウド12の弓状の内面14に沿う位置に移動させるために、足装置36のモータ42を通電または他の手段によって作動させる必要があるかもしれない。この点に関して、駆動体68の作動により支持部90が内部空間44から外に出ている限り、マニピュレータ装置60と旋回機構40を図9~12に示す位置と図2に示す位置との間において作動する順序は概して任意でよいことがわかる。例えば、所与の状況で、まず旋回機構40を作動して、フレーム32を図2に略示する位置に移動させたあと、駆動体68を作動して、プラットフォーム88全体を、内部空間44の外側ではあるが、内面14の直ぐ近くではないところに配置するのが望ましいことがある。次いで、回転装置64を通電または他の手段によって作動させて、台座80を約90度回転させ、縦長の支持部90を概して長手軸34を横断する向きに配向する。その後、図2に略示するような位置になるまで、駆動体68をさらに作動させて支持部90を内面14に近いところへ移動させる。したがって、回転装置44を通電または他の手段によって作動させるまえに支持部90が内部空間44の外側で延伸位置にある限り、図2の位置関係を実現するための作動は概して任意の順序で行うことができる。
【0063】
図2は、例えば図1、3、4と同様に中央位置にある往復移動装置86を示す。駆動機構96を通電または他の手段で作動させると、往復移動装置86を中央位置から図16、17に示す両先端位置の間へ移動させるとともに、取り付け台94とその上に搭載されたデバイス6を、図4に示す所与の垂直高さで、内面14に沿った複数の異なる位置の間を円弧方向19に移動させることができる。往復移動装置86を例えば図16、17に示す2つの先端位置の間で移動させた後、昇降装置52を通電または他の手段によって作動させて、マニピュレータ装置60、往復移動装置86、取り付け台94、および当該取り付け台94に搭載されたデバイス6を、図4に示す前の垂直位置から、上方または下方の別の垂直位置へ移動させることができる。
【0064】
例えば、ツール4は当初、シュラウド12に対して、図2、4に示す位置、すなわち、自由端部85がスタンド69から足38の方向(図2、4の上で下向き)へ延びる位置で展開させることができる。この動作形態を、マニピュレータ装置60の第2の動作形態と呼ぶことができる。図16、17に示す円弧方向の両先端位置の間で往復移動装置86を移動させるたびに、昇降装置52を作動させて往復移動装置86を軸方向17において下向きに漸進させることができる。そのような円弧方向と軸方向の移動を交互に行わせると、往復移動装置86(したがってデバイス6)が内面14の円周方向区間に沿って順次移動しながら、例えば下方へ移動し、最終的には、図4に略示する位置から下方の水平溶接部18に至るまでのシュラウド12の大きな円周区間を検査することになる。
【0065】
この点に関して、図6からわかるように、昇降装置52上のマニピュレータ装置60の自由端部85がスタンド69から概して足38の方へ延びるようにマニピュレータ装置60を位置決めすると、往復移動装置86(したがってデバイス6)をシュラウド12の非常に低い垂直位置へ移動させることができる。これにより、例えば水平溶接部18の検査が可能になる。その後、ツール4を燃料セル22から取り出して部分的に分解し、昇降装置52上のマニピュレータ装置60を例えば図1に略示するような第1の動作形態にすることができる。この動作形態では、マニピュレータ装置60の自由端部85は、スタンド69から概して足38から離れる方向へ延びる。ここで言及する第1の動作形態と第2の動作形態は、特定の順序で作動することを提案するものではない。
【0066】
図1に略示するようにマニピュレータ装置60が第2の動作形態にあるツール4を燃料セル22内に再配置すると、昇降装置52を作動させてマニピュレータ装置60を往復移動装置86およびデバイス6とともに軸方向17に沿って非常に高い位置へ垂直に移動させることにより、上部格子板26に隣接する領域のシュラウド12を検査することができる。マニピュレータ装置60が図1図5に示す2つの動作形態の間で切り替え可能であるため、マニピュレータ装置60の動作形態を交互に変えると、デバイス6は例えば検査または他の目的でシュラウド12の垂直方向の全範囲にアクセスできる。繰り返し述べるが、ツール4が所与の燃料セル22に装入された状態で往復移動装置86を作動させると、取り付け台94(したがってデバイス6)を、検査または他の目的で、支持部90の円弧方向19の長さの2倍近い長さの帯状領域にアクセスさせることができる。フレーム32の最上部に柄部116があるため、ツール4を吊上げ機構に接続して、ツール4を対応する燃料セル22内に下ろしたり、そこから取り出したりすることができる。
【0067】
前述のすべての操作およびデバイス6の制御、例えば、検査時におけるデバイス6からの超音波データの検出、シュラウド12と相互作用する別種のデバイス6の制御は、コンピュータシステム28で行うことができる。したがって、ツール4および往復移動装置86の構成は、シュラウド12の内面14への迅速なアクセスと、それによる内面14の検査や他の操作の迅速な実施を可能にするという利点がある。その他の利点も明らかとなるだろう。
【0068】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の配置構成は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図11A
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22