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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】溶融物分配器
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/71 20190101AFI20231121BHJP
   B29C 48/16 20190101ALI20231121BHJP
   B29C 48/495 20190101ALI20231121BHJP
   B29C 31/10 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B29C48/71
B29C48/16
B29C48/495
B29C31/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022507463
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2020071680
(87)【国際公開番号】W WO2021023663
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】102019121172.7
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019127661.6
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502170681
【氏名又は名称】カウテックス マシーネンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kautex Maschinenbau GmbH
【住所又は居所原語表記】Kautexstrasse 54, D-53229 Bonn-Holzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】モーリス ミールケ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー ホルツキー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-500302(JP,A)
【文献】特表平05-501093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96,31/00-31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチックから成る溶融物を変向し分配するための溶融物分配器(1)であって、該溶融物分配器(1)が、複数の溶融物流の溶融物から多層プリフォームを製造するために多層押出ヘッドに接続可能であり、前記溶融物分配器(1)が、複数のズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)を含んでおり、少なくとも1つの溶融物通路または各ズボン形の溶融物通路が、
供給通路部分(6)と、少なくとも2つの排出通路部分(7.1,7.2)とを有しており、
前記供給通路部分(6)と前記排出通路部分(7.1,7.2)との間に、分岐する移行部(8)が設けられており、
1つのズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の前記供給通路部分(6)が、端部側で前記溶融物のための入口(9)を有しており、各排出通路部分(7.1,7.2)が、端部側で前記溶融物のための出口(10)を有しており、
少なくとも前記分岐する移行部(8)が、丸み付けされたY字形の管路分岐部として構成されており、前記分岐する移行部(8)が、前記供給通路部分(6)と、接続する2つの前記排出通路部分(7.1,7.2)との間で、連続的に曲げられた曲線に沿っており、該曲線の曲率がゼロに等しくない、溶融物分配器において、
前記溶融物分配器(1)が、一体的な構成部材(2)として構成されており、全てのズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)が、前記一体的な構成部材(2)内に配置されていることを特徴とする、溶融物分配器。
【請求項2】
前記ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)は、固体材料から成る一体的な溶融物分配器内に形成されており、各溶融物通路の外側輪郭は全体的に一体的な構成部材によって形成されている、請求項1記載の溶融物分配器。
【請求項3】
熱可塑性プラスチックから成る溶融物を変向し分配するための溶融物分配器(1)であって、該溶融物分配器(1)が、複数の溶融物流の溶融物から多層プリフォームを製造するために多層押出ヘッドに接続可能であり、前記溶融物分配器(1)が、複数のズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)を含んでおり、少なくとも1つの溶融物通路または各ズボン形の溶融物通路が、
供給通路部分(6)と、少なくとも2つの排出通路部分(7.1,7.2)とを有しており、
前記供給通路部分(6)と前記排出通路部分(7.1,7.2)との間に、分岐する移行部(8)が設けられており、
1つのズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の前記供給通路部分(6)が、端部側で前記溶融物のための入口(9)を有しており、各排出通路部分(7.1,7.2)が、端部側で前記溶融物のための出口(10)を有しており、
少なくとも前記分岐する移行部(8)が、丸み付けされたY字形の管路分岐部として構成されており、前記分岐する移行部(8)が、前記供給通路部分(6)と、接続する2つの前記排出通路部分(7.1,7.2)との間で、連続的に曲げられた曲線に沿っており、該曲線の曲率がゼロに等しくない、溶融物分配器において、
前記溶融物分配器(1)が、2つ以上のリングセグメント(20.1,20.2,20.3)を別個のかつ一体的な構成部材として有しており、少なくとも1つのリングセグメント(20.1,20.2,20.3)内に、前記分岐する移行部および連続的な曲率経過を有する前記ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の1つが形成されており、
・各ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)が、前記溶融物分配器(1)の、一体的な構成部材として構成された別個のリングセグメント(20.1,20.2,20.3)内に配置されているか、または
・前記ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の部分群が、前記溶融物分配器(1)の、一体的な構成部材として構成された1つのリングセグメント(20.1,20.2,20.3)内に配置されていることを特徴とする、溶融物分配器。
【請求項4】
前記ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)または前記ズボン形の溶融物通路の部分群は、固体材料から成る一体的なリングセグメント内に形成されており、前記溶融物通路の外側輪郭は全体的に一体的な構成部材によって形成されている、請求項3記載の溶融物分配器。
【請求項5】
前記分岐する移行部(8)における前記曲げられた曲線の円弧長さが、90°未満の中心角(W)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の溶融物分配器。
【請求項6】
1つのズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の前記移行部(8)に、前記供給通路部分(6)の前側区分(18)が接続しており、かつ/または
前記分岐する移行部(8)に、前記排出通路部分(7.1,7.2)のそれぞれ1つの後側区分(19)が接続しており、かつ
前記前側区分(18)または前記後側区分(19)が同様に、曲率がゼロに等しくない継続的に曲げられた曲線に沿っている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の溶融物分配器。
【請求項7】
前記複数のズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の複数の入口(9)が、前記溶融物分配器(1)の入口側(3)で1つの直線(12)上に位置しており、かつ/または、前記ズボン形の管路(5.1,5.2,5.3)の複数または全ての出口(10)が、前記溶融物分配器(1)の出口側(4)で1つの直線(13)上に位置している、請求項1からまでのいずれか1項記載の溶融物分配器。
【請求項8】
全ての入口(9)が前記溶融物分配器(1)の入口側(3)に配置されており、かつ/または、全ての出口(10)が、前記溶融物分配器(1)の、反対側に位置する出口側(4)に配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の溶融物分配器。
【請求項9】
前記ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)が、
下流側に位置する通路直径を有しており、かつ
上流側に位置する通路直径を有しており、かつ
・前記下流側に位置する直径の、前記上流側に位置する直径に対する比は、流入する前記熱可塑性プラスチックから成る溶融物の流速が、流出する前記熱可塑性プラスチックから成る溶融物の流速と実質的に同一であるように選択されており、かつ/または
・前記溶融物流に沿って、前記下流側に位置する通路直径の合計が、前記上流側に位置する通路直径と実質的に同一である、
請求項1からまでのいずれか1項記載の溶融物分配器。
【請求項10】
1つのズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)が、前記溶融物流に沿って、均一な通路全体直径を有しており、これにより、前記ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.4)内には均一な流れ速度が存在している、請求項1からまでのいずれか1項記載の溶融物分配器。
【請求項11】
前記ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の各長さ領域における曲率は、前記通路の局所的な曲率半径の、前記通路の局所的な直径に対する比が、最小比限界値以上であるように選択されており、前記最小比限界値が、2.5よりも大きい、請求項1から10までのいずれか1項記載の溶融物分配器。
【請求項12】
押出ヘッドと、請求項1から11までのいずれか1項記載の溶融物分配器とを含む構造群。
【請求項13】
複数の多層プリフォームを同時に製造するための多重押出ヘッドであって、請求項12記載の複数の構造群または請求項1から11までのいずれか1項記載の溶融物分配器を含んでおり、該溶融物分配器において、ズボン形の溶融物通路の隣接する複数の群が設けられている、多重押出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の溶融物分配器に関し、特に、熱可塑性プラスチックから成る溶融物を変向し分配するための複数のズボン形の管通路を備えた溶融物分配器に関する。溶融物分配器は、溶融物から多層プリフォームを製造するために多層押出ヘッドに直接的または間接的に接続可能である。
【背景技術】
【0002】
西独国特許出願公開第2100192号明細書には、熱可塑性プラスチックから互いに対して実質的に同軸的に延びる、チューブ状の2つの部分流を製造し、該部分流の、長手方向で延びる継ぎ目領域が周方向で互いに対してずらされて配置されていることが開示されている。次いで、これらの部分流は、可塑性の状態でチューブ状のプリフォームを形成するために半径方向で押出ヘッド内において合流する。
欧州特許出願公開第0357004号明細書に基づいて、偏平な構造を有する分配装置が知られている。この分配装置は、酢酸セルロースと、爆発性の粒子とから成る混合物を入口開口から複数の分岐部を介して合計4つの出口へと分配するために規定されており、4つの出口には、円筒形の通路を備えた単層押出工具が配置されており、この工具を介して単層のプリフォームが形成可能である。分配装置は、互いに対して直接に隣合う2つの構成部材により形成されており、これらの構成部材間にセットバックされた表面領域によって1つの通路が形成されている。分配装置は、まさに1つの材料流を収容するように形成されている。
国際公開第89/04243号および米国特許第5711349号明細書は、偏平な構造を有する別の分配装置を開示している。分配装置は、まさに1つの溶融物流を収容するために形成されている。分配装置は、互いに隣合う2つのボディをそれぞれ含んでおり、これらのボディの表面に管通路の一部がフライス加工により形成されている。
【0003】
さらに、本出願人の先行技術に基づいて、プリフォームを製造するための多層押出ヘッドが知られており、プリフォームは、複数の、たとえば6つまでの層を有している。
【0004】
本出願人により予め公知である別の先行技術では、溶融物分配器は、複数のズボン形の管路を有しており、これらの管路はそれぞれ、
-溶融物のための供給管路部分と、2つのストランド(Strang)に分配された溶融物のための2つの排出管路部分とを有しており、
-供給管路部分と、2つの排出管路部分との間に移行部を有しており、かつ
-各供給管路部分が、端部側で溶融物のための入口を有しており、各排出管路部分が、端部側で溶融物のための出口を有しており、全ての入口が、溶融物分配器の第1の側に配置されており、全ての出口が、溶融物分配器の、第1の側とは反対に位置する側に配置されている。
【0005】
溶融物分配器は、プリフォームを製造するための押出ヘッド、特に多層のチューブ形のプリフォームを製造するための多層押出ヘッドに前置されている。
【0006】
最後に、図1に図示した本出願人の先行技術からは、溶融物分配器(30)が知られており、この溶融物分配器(30)は、多層押出ヘッドにより製造すべき多層プリフォームの層の数に対応して複数のズボン形の管路(31.1,31.2,31.3)を有している。各ズボン形の管路(31.1,31.2,31.3)は、溶融物流を層ごとに2つの部分流に分配する。
【0007】
図1に図示した溶融物分配器(30)は、互いに異なる3つの溶融物流をそれぞれ2つの部分流に分配する合計3つのズボン形の管路(31.1,31.2,31.3)を有している。
【0008】
本出願人の公知の溶融物分配器(30)は、上側プレート(32)と下側プレート(33)とを含んでおり、両プレート(32,33)間に水平方向の分離平面(34)を有している。3つのズボン形の管路(31.1,31.2,31.3)の、直線形の供給管路部分(35)は、孔として上側プレート(32)内に加工されている。3つのズボン形の管路(31.1,31.2,31.3)の直線形のそれぞれ2つの排出管路部分(36.1,36.2)は、孔として下側プレート(33)内に加工されている。各ズボン形の管路(31.1,31.2,31.3)の供給管路部分(35)と両方の排出管路部分(36.1,36.2)との間の移行部(37)は、分離平面(34)に延びる水平方向の通路により形成されている。直線形の管路部分(35)から流入する溶融物は、それぞれT字形の流入ゾーンにおいて両方の通路(37)へと分配される。溶融物流は、供給管路部分(35)内の流れ方向から、各通路(37)内へと不連続に90°変向し、さらに通路(37)から排出管路部分(36.1,36.2)内への進入時に、90°だけ再び不連続または断続的に曲げられて変向する。通路は、それぞれ半分が上側プレート(32)に、半分が下側プレート(33)に、フライス加工によって加工されている。
【0009】
社内で予め知られている図1に示した溶融物分配器は、製造に手間がかかる。さらに、この溶融物分配器では、溶融物流が移行部(37)の領域で、両方の排出管(36.1,36.2)の方向で90°(角度)、分離平面(34)内に延びる通路内へと変向させられる。この90°の変向は、溶融物の流れにデッドゾーンを生じさせ、このデッドゾーン内では溶融物の熱分解のおそれが生じる。さらに、色替え時の先行する色を有する溶融物が、デッドゾーンから極めて時間をかけて異なった色の後続の溶融物により洗い出されるので、色替えが長引く。色替え中に製造された物品は、先行する色と新しい色との混色により、使用することができない。さらに、このように形成された移行部は、分配器における溶融物の流れ経路を長くしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人の先行技術を起点として、本発明の根底にある課題は、溶融物分配器を改良して、特により短い流れ経路を有し、かつ/または特に移行部の領域においてデッドゾーンの形成を回避し、かつ/または簡単に製造可能であるようにすることである。さらに、溶融物分配器が、溶融物の流れに対する流れ幾何学形状の適合を可能にすると有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、この課題を独立請求項の特徴部に記載の特徴によって解決する。
【0012】
本開示は、個別に、または組み合わせて、課題の解決に寄与することができる様々な態様を含んでいる。
【0013】
本開示による溶融物分配器は、好適には、多層プリフォームを製造するための多層押出ヘッドに接続されるように規定されている。したがって、プリフォームは、多層押出ヘッドに溶融物分配器から供給される溶融物から形成される。
【0014】
本開示による溶融物分配器は、熱可塑性プラスチックから成る1つまたは好適には複数の溶融物流を変向し分配するように設けられかつ形成されている。このために、溶融物分配器は、1つまたは複数のズボン形の溶融物通路を有している。
【0015】
第1の態様によれば、少なくとも各ズボン形の溶融物通路の供給通路部分と2つの排出通路部分との間の分岐する移行部が、その曲率がゼロに等しくない曲げられた曲線に沿う溶融物分配器が規定されている。
【0016】
曲率とは、曲線の通過時の方向変化として理解される。直線の曲率は、その方向が変わらないので、どこでもゼロに等しい。円弧は、その方向がどこでも同じ量だけ変化するので、どこでも等しい曲率を有している。1つの曲線は、局所的に様々な曲率値を有していてよい。
【0017】
少なくとも溶融物分配器の分岐する移行部の、連続的に丸み付けされた、つまり直線ではなく、90°の屈曲も含んでいない構成は、より短い流れ経路に貢献し、デッドゾーンの形成を回避する。デッドゾーンの回避は、特に曲率の連続性によって、つまり曲線の互いに隣合う領域における曲率値の不連続な飛躍を回避することによって促進される。
【0018】
通路部分間にあらゆる不連続な屈曲部がないことにより、移行部は、本出願人の先行技術による溶融物分配器の2つのプレート間の場合にあるような、分割平面における水平方向の通路を必要としない。
【0019】
両方の排出通路部分への丸み付けされた移行部の形成にとって、さらに好適には小さな曲率半径が回避される。好適には、各排出通路部分への曲げられた曲線の円弧長さは、分岐された移行部に、90°未満の中心角を有している。
【0020】
移行部はさらに、丸み付けされた、好適には対称的なY字形の管路分岐部として構成されていてよい。Y字形は、図1に示した本出願人の先行技術において存在するT字形の移行部とは異なっている。
【0021】
供給通路部分は、分岐する移行部に対して上流側に配置された前側区分を有していてよい。排出通路部分は、分岐する移行部に対して下流側に配置された後側区分を有していてよい。流れ経路の長さを短くし、ズボン形の溶融物通路の幾何学形状を流れに適合させるために、好適には、供給通路部分および/または2つの排出通路部分の、移行部に接続しているこれらの区分も、その曲率が連続的であり、さらに好適にはゼロに等しくない曲げられた曲線に沿っている。ズボン形の溶融物通路は、好適には、入口および出口のための一致する接続幾何学形状を確保するために、専ら入口および少なくとも2つの出口における端部側で、局所的に直線状の形状を有している。残りの区分では、全ての通路部分が全体的に所定の(連続的に)曲げられた曲線に沿っている。
【0022】
本発明の1つの構成では、複数のズボン形の溶融物通路の全ての入口は、好適には溶融物分配器の上側である入口側で1つの直線上に位置している。代替的または付加的には、ズボン形の溶融物通路の全ての出口は、好適には溶融物分配器の下側である出口側で1つの直線上に位置している。入口を備えた線と出口を備えた線とは、さらに好適には、互いに直交して延びていてよく、これにより、各ズボン形の溶融物通路の各管路部分が入口と出口との間の空間曲線に沿っている。この構成は、2つの排出通路部分が一致した形状および長さ、特に中心面に対して対称的な形状を有していることに貢献し、これにより、分配された溶融物流が一致する条件で、下流側に配置された多層押出ヘッド内に進入する。
【0023】
多層押出ヘッドが、重畳するカージオイド通路を備えた互いに入れ子状になったスリーブによって分配された溶融物流を押し出す限りに、入口および分岐された移行部は、好適にはそれぞれ、ブロー成形機の金型分離線に対して平行に延びている線上に延びている。
【0024】
特に分岐する移行部の領域における、ズボン形の溶融物通路の本開示による複雑な互いに入れ子状の構成は、互いに隣接するプレートの孔およびプレート間の分離平面におけるフライス加工による、先行技術から公知の製造を排除する。
【0025】
少なくとも1つのズボン形の溶融物通路は、本開示の好適な1つの構成では、一体的な固体材料から成る溶融物分配器に形成されていてよい。この場合、溶融物分配器は、金属材料のための、金型を有しない付加製造法によって一体的な構成部材として製造されている。一体的な構成部材は、1つ、2つまたはそれ以上の溶融物通路を有していてよく、これらの溶融物通路は、好適には互いに半径方向で隣接するリングセグメント内に配置されていてよい。
【0026】
好適な別の1つの構成では、2つ以上のリングセグメントが別個の(かつ好適には一体的な)構成部材として構成されていてよく、少なくとも1つのリングセグメント内に、分岐する移行部および連続的な曲率経過を有するズボン形の溶融物通路の1つが形成されている。複数のリングセグメントへと溶融物分配器を分割することにより、モジュール式の構造を達成することができ、この構造は、溶融物分配器全体を新たに作製する必要なしに、単に溶融物流のうちの1つまたは一部への意図的な適合を可能にする。1つのリングセグメントは、それ自体単独で交換することができ、これにより、たとえば、1つの特定の溶融物流のみに別の流れ幾何学形状を提供し、別のリングセグメントを維持することができる。
【0027】
ズボン形の溶融物通路が収容されている構成部材(溶融物分配器全体またはリングセグメント)の一体的な構成は、本開示の独立した態様を成す。これは、特に多層溶融物分配器に当てはまる。一体性の特別な利点は、先行技術において設けられていた、互いに隣接するプレート間の分離平面を省略し、これにより漏れ損失および縁部付着ゾーンが回避されることにある。これにより、漏れ隙間からの残留物による溶融物の汚染、ならびにこれにより生じる運転妨害および清掃作業を回避する。溶融物通路の外側輪郭は、全体的に一体的な構成部材または一体的なリングセグメントによって形成されていてよく、これにより、溶融物分配器内の溶融物流は、流れ方向に対して斜めまたは流れ方向に対して接線方向に延びる分離継ぎ目に遭遇しない。
【0028】
複雑な通路幾何学形状を備えた溶融物分配器の一体的な構成は、(少なくとも2つのプレートを使用した公知の金属切削製造法とは異なり)金属材料のための付加製造法の使用によって達成される。このような製造法は、一体的な構成部材の形成に適しており、アンダカットの有無にかかわらず、任意の内側空間幾何学形状の設定を可能にする。溶融物分配器の製造コストが著しく減じられることの他に、別の利点として、大きな幾何学形状の自由度を挙げることができ、この幾何学形状の自由度は、ズボン形の溶融物通路の形成のために特に重要である。
【0029】
選択的レーザ溶融法(英語:Selective Laser Melting、略してSLM)は、付加製造法に属する。選択的レーザ溶融法は、金属材料に良好に適しており、本開示による溶融物分配器またはリングセグメントを製造するために提案されている。代替的には、任意の別の製造法、特に別の付加製造法を使用することができる。
【0030】
選択的レーザ溶融法では、加工すべき粉末状の金属材料をベースプレート上に薄い層として被着させる。粉末状の材料は、レーザビームによって局所的に完全に溶解されて、固化後に固体の材料層を形成する。次いで、ベースプレートを層厚さの分だけ降下し、改めて粉末を被着させる。このサイクルは、全ての層が溶解されるまで繰り返される。完成した構成部材は、過剰な粉をクリーニングされ、ベースプレートから取り除かれて、必要に応じて再加工されるか、または直ちに使用される。構成部材の構造にとって典型的な層厚さは、材料に関係なく、15~500μmで変動する。レーザビームのガイドのためのデータは、ソフトウェアを用いて3次元CAD体から作成される。第1の計算ステップでは、構成部材が個別の層に分割される。第2の計算ステップでは、各層のためにレーザビームが進む軌道(ベクトル)が生成される。
【0031】
本発明に係る溶融物分配器を備えた押出ヘッド、特に熱可塑性のチューブ形のプリフォームを製造するための多層押出ヘッドは、1つの構造群を形成している。このような複数の構造群を、複数の多層プリフォームを同時に製造するために、好適には構造的に組み立てて多重押出ヘッドが形成されていてよい。
【0032】
本発明を図面に例示的かつ概略的に図示する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本出願人の先行技術による溶融物分配器を示す図である。
図2A】本開示による溶融物分配器を正面および左から見た側面で示す部分透過図である。
図2B図2Aに示した溶融物分配器を示す部分的な透過斜視図である。
図3】様々な溶融物流を提供するために複数の押出機に接続されている多重押出ヘッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示による溶融物分配器1の好適な構成が、図2Aおよび図2Bに関連図で示されている。
【0035】
溶融物分配器1は、この例では、入口側3と出口側4とを備えた一体的な金属製の構成部材2を含んでいる。この例では、入口側3が上側、出口側4が、上側とは反対側に位置する下側である。以下では、図面を簡略化するためにこの立体配置を基準とする。代替的には、入口側3と出口側4とは互いに対してまたは空間内で別の配向を有していてよい。
【0036】
入口側3と出口側4との間には、図示の例では、3つのズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3が延びている。溶融物通路の数はこの例と異なっていてもよい。1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の溶融物通路が設けられていてよい。これらの溶融物通路は、好適には、互いに隣り合う空間ゾーンに位置していてよく、これにより、溶融物通路は互いに接触しない。1つまたは複数の空間ゾーンが、特に主軸線Xに沿って真っ直ぐなボディとして延びているセグメント形状を有していてよい。したがって、空間ゾーンは、特に好適には、円筒リングの形状を有していてよい。主軸線Xは、溶融物分配器の軸方向の中心に配置していてよい。この中心には、1つの別の、好適には直線状の通路(図示せず)が設けられていてもよく、この通路は、たとえば、媒体接続部または機械的な構成要素の通過のために役立つことができる。
【0037】
最も単純な場合、溶融物分配器1は、連続的な曲率を有する本開示による分岐する移行部8を備えた、まさに1つのズボン形の溶融物通路を含んでいる。さらに、別の形状を備えた別の溶融物通路が設けられていてよい。さらに代替的には、2つ、3つ、または全ての溶融物通路が、本開示によるズボン形の形状と分岐する移行部8とを有していてよい。
【0038】
構成部材2は、たとえば、一体的な、金属製のブロックとして構成されており、このブロック内には、1つまたは複数のズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3が流体をガイドする貫通部として配置されている。溶融物通路5.1,5.2,5.3を形成する流体をガイドする貫通部を備えたブロックの製造は、付加製造法によって、特に選択的レーザ溶融法(英語:Selective Laser Melting、略してSLM)によって行われる。
【0039】
少なくとも1つの、好適には各ズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3は、溶融物のための1つの供給通路部分6と、少なくとも2つの、好適な構成によればまさに2つの排出通路部分7.1,7.2とを有している。供給通路部分6と2つの排出通路部分7.1,7.2との間で、本開示によるズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3は、図2Aにおいてボックスによって強調されている分岐する移行部8を有している。分岐する移行部8は、丸み付けされたY字形の管路分岐部として構成されている。管路分岐部は、さらに好適には対称的に形成されていてよく、特に中心平面に対して対称的に形成されていてよい。
【0040】
供給通路部分6は、端部側に入口9を有している。好適な1つの構成によれば、複数のズボン形の溶融物通路の入口は、構成部材2の入口側3に位置していてよい。各排出通路部分7.1,7.2は、端部側に出口10を有している。好適には、全ての出口10が出口側4に配置されている。入口9または出口10に隣接して、個別の通路部分または各通路部分6,7.1,7.2が、異なる幾何学形状を備えた前側区分18または後側区分19を有していてよい。前側区分18または後側区分19は、特に、短い直線状の円筒形の通路区分11を有していてもよい。この通路区分11は、たとえば、構成部材2の入口側3または出口側4に対して垂直方向に延びていてよい。
【0041】
しかし、ズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3の供給通路部分6と排出通路部分7.1,7.2との間の分岐する移行部と、場合によっては排出通路部分7.1,7.2の、分岐する移行部8に接続する後側区分19とは、その曲率が連続しており、ゼロに等しくない曲げられた曲線に沿っている。ズボン形の溶融物通路の、本開示によって継続的に曲げられたこの形状は、屈曲部およびデッドゾーンを全く有していない。継続的な曲率は、連続的な曲率または連続的に変化する曲率の値を有する形状とも呼ぶことができる。
【0042】
分岐する移行部8における曲げられた曲線の円弧長さは、特に好適な1つの構成によれば、90°未満の中心角Wを有している。この構成は、溶融物分配器1の単に1つの、複数の、または全てのズボン形の溶融物通路のために規定されていてよい。
【0043】
図3は、本開示による溶融物分配器1と、1つまたは複数の押出機および押出ヘッドとの協働の例を示している。図2Aおよび図2Bに示した溶融物分配器の入口9は、図示の例では、図3のみに図示した3つの押出機15.1,15.2,15.3の出口に(間接的に)接続可能であるか、または接続されている。押出機は、熱可塑性プラスチックから成る溶融物流を提供し、圧送する溶融物圧送機である。代替的な構成では、単に1つ、2つ、4つまたは任意の別の個数の押出機が設けられていてよい。さらに、少なくとも1つの溶融物流が、別の供給源から提供されていてもよい。
【0044】
ズボン形の溶融物通路5.1の入口9は、熱可塑性プラスチックからプリフォームの主層を形成するために押出機14.1に接続されている。このズボン形の溶融物通路5.1は、最大の入口直径を有している。別の2つのズボン形の溶融物通路5.2,5.3を介して、熱可塑性プラスチック材料が、多層プリフォームの別の層を形成するために供給され、これらの層は多層押出ヘッド15のチューブ形成ユニットにおいて合流する。
【0045】
下流側に位置する直径、つまり出口10における出口直径および/または排出通路部分7.1,7.2の通路直径は、好適には上流側に位置する直径、つまり入口9における入口直径および/または供給通路部分6の通路直径よりも小さい。下流側に位置する直径の、上流側に位置する直径に対する比は、好適には、流入するプラスチック溶融物の流速が流出するプラスチック溶融物の流速と実質的に等しくなるように選択されている。さらに好適には、溶融物流に沿って、下流側に位置する通路直径の合計が、上流側に位置する通路直径に実質的に等しい。これにより、溶融物流の途中における滞留ゾーンの形成が阻止される。滞留ゾーンは、(横断面)直径の局所的な増大が発生する通路領域内で頻繁に形成され、これは流れ速度の局所的な低下をもたらす。この減少した流れ速度は、通路の縁部領域における堆積物の形成につながり、上述したデッドゾーンと同様の悪影響を及ぼしてしまう。
【0046】
特に好適には、ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)が、溶融物流に沿って均一な通路全体直径を有しており、これにより、通路に沿った溶融物の(横断面に関して平均的な)流れ速度は実質的に同一となり、しかも好適には溶融物が供給通路部分(6)にあるかまたは(分配された溶融物流として)排出通路部分(7.1,7.2)にあるかにかかわらず、実質的に同一である。換言すると、通路部分の全体直径は、ズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.4)内で均一な流れ速度が存在しているように選択されている。
【0047】
供給通路部分(6)の1つの長さ区分において、通路全体直径は、供給通路部分(6)のその場所の直径と同一である。(関連し、互いに隣り合う)排出通路部分(7.1,7.2)の1つの長さ区分において、全体直径は、この排出通路部分(7.1,7.2)の、流れ方向で互いに対応する長さ区分において存在する個別の直径の合計により形成されている。
【0048】
本開示の別の1つの態様によれば、好適にはズボン形の溶融物通路(5.1,5.2,5.3)の各長さ領域における曲率は、通路の局所的な曲率半径の、局所的な直径に対する比が最小比限界値以上であるように、選択されている。最小比限界値は、加工すべきプラスチック溶融物の材料および圧力に依存して決定されていてよい。最小比限界値は、特に少なくとも2.5である。特に好適には、最小比限界値は値3である。
【0049】
上述の表現は、通路部分(6,7.1,7.2)が実質的に円形または楕円形の横断面を有していることを前提としており、これにより、直径は通路の横断面積と直接に相関している。このような表現は、レオロジーにおいて一般的であり、実質的に円形または楕円形の横断面形状は、好適な構成である。当業者は、特に局所的な流れ速度への影響ならびにデッドゾーンおよび渦流ゾーンの形成に関して、「直径」という用語が、それぞれの通路の幅を記述するのに適している別の幾何学的な量であって、流体力学の法則を考慮して溶融物流のガイドにとって特に対応する作用を有する別の幾何学的な量も包含していることを認める。
【0050】
3つのズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3の全ての入口9は、図3の例では溶融物分配器の入口側3において1つの直線12上に延びている。そして、ズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3の全ての出口10は、溶融物分配器1の出口側4において1つの直線13上に延びている。これらの線12,13は、主軸線Xの視線方向で互いに直交して延びているので、通路部分6,7.1,7.2は、入口9と両方の出口10との間で、分岐する曲げられた空間曲線に沿っている。両排出通路部分7.1,7.2は、一致した形状および長さを有しており、これにより、ズボン形の溶融物通路5.1,5.2,5.3内で分配された溶融物流は、溶融物分配器1に接続する多層押出ヘッド15内に一致する条件で流入する。この一致した(対称的な)形状および長さの排出通路部分は、好適には、複数または全ての溶融物通路に設けられていてよい。
【0051】
溶融物分配器1および多層押出ヘッド15はそれぞれ、1つの構造群16を形成することができる。
【0052】
好適には、図3に図示するように、複数の構造群16が組み合わされて多重押出ヘッド17を形成し、これにより同時に複数のプリフォームを押し出すことができ、これらのプリフォームは好適にはそれぞれ複数の溶融物層から構成されている。
【0053】
さらに、溶融物分配器に本開示による賦形を有する溶融物通路の隣接する2つ、3つまたは複数の群を設けることが可能であり、溶融物通路の各群に1つの押出ヘッドが後置されている。
【0054】
本発明の変更は様々な形式で可能である。特に、それぞれの実施形態について示され、説明されまたは特許請求された特徴を、任意の形式で互いに組み合わせるか、または互いに代替することができる。
【0055】
溶融物通路は、本開示によれば、熱可塑性プラスチックから成る溶融物を変向し、場合によっては分配するための管通路である。この管通路は、管路として形成されていてよい。通路部分は、対応して管路部分として形成されていてよい。
【符号の説明】
【0056】
本発明(図2および図3
1 溶融物分配器
2 構成部材
3 上側/入口側
4 下側/出口側
5.1 ズボン形の溶融物通路/ズボン形の管路
5.2 ズボン形の溶融物通路/ズボン形の管路
5.3 ズボン形の溶融物通路/ズボン形の管路
6 供給通路部分/供給管路部分
7.1 排出通路部分/排出管路部分
7.2 排出通路部分/排出管路部分
8 分岐する移行部
9 入口
10 出口
11 円筒形の通路区分
12 直線
13 直線
14.1 押出機/溶融物圧送部
14.2 押出機/溶融物圧送部
14.3 押出機/溶融物圧送部
15 多層押出ヘッド
16 構造群
17 多重押出ヘッド
18 前側区分
19 後側区分
20.1 リングセグメント
20.2 リングセグメント
20.3 リングセグメント
W 中心角
先行技術(図1
30 溶融物分配器
31.1 ズボン形の管路
31.2 ズボン形の管路
31.3 ズボン形の管路
32 上側プレート
33 下側プレート
34 分離平面
35 供給管路部分
36.1 排出管路部分
36.2 排出管路部分
37 移行部
図1
図2A
図2B
図3