(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】光学部材ならびに該光学部材を用いたバックライトユニットおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20231121BHJP
【FI】
F21S2/00 443
(21)【出願番号】P 2022510639
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012444
(87)【国際公開番号】W WO2021193789
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020055923
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴博
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森島 諒太
(72)【発明者】
【氏名】岸 敦史
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124409(JP,A)
【文献】特開2013-232406(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042992(WO,A1)
【文献】特開2014-107028(JP,A)
【文献】特開2002-190209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光が入射する端面と入射した光を出射する出射面とを有する導光板と;
該導光板の出射面と反対側に両面粘着フィルムを介して貼り合わされた反射板と;
を有し、
該両面粘着フィルムが、該導光板側から、第1の粘着剤層と低屈折率層と第2の粘着剤層とを有し、
該第1の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が1.2×10
5
(Pa)以上であり、該第2の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が9.0×10
4
(Pa)以下であり、
該反射板の該両面粘着フィルムと反対側に表面処理層が形成されている、
光学部材。
【請求項2】
前記表面処理層の動摩擦係数が1.0以下である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記表面処理層が、鉛筆硬度がH以上のハードコート層である、請求項1または2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記表面処理層が、前記ハードコート層の前記反射板と反対側の表面にフッ素を含む最外層をさらに有する、請求項3に記載の光学部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光学部材と、
光源と、
を有し、
該光源が、前記導光板の前記端面に対向するように配置されている、
バックライトユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のバックライトユニットと、
前記導光板の前記出射面側に配置された画像表示パネルと、
を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材ならびに該光学部材を用いたバックライトユニットおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導光板を用いて光を取り出す光学装置(例えば、画像表示装置、照明装置)において、導光板と周辺光学部材(例えば、反射板、拡散板、プリズムシート、光取り出しフィルム)とを積層する際に、低屈折率層を介して積層する技術が知られている。このような技術によれば、低屈折率層を介することにより、単純に粘着剤のみで積層する場合に比べて光の利用効率が高いと報告されている。このような光学部材同士の一体化に低屈折率層を用いることは、車載用途および/またはアミューズメント用途(例えばアーケードゲーム機や、パチンコ及びスロットなどの遊技機)においても期待されている。しかし、車載用途および/またはアミューズメント用途における光学部材同士(例えば、導光板と反射板)の一体化は、使用時の振動に起因して、光学部材同士および/または光学部材と筐体との間の摩耗またはキズにより表示品位が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、低屈折率層の優れた特性を維持しつつ、振動に起因した摩耗またはキズによる表示品位の低下が抑制された光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による光学部材は、光源からの光が入射する端面と入射した光を出射する出射面とを有する導光板と;該導光板の出射面と反対側に両面粘着フィルムを介して貼り合わされた反射板と;を有する。該両面粘着フィルムは、該導光板側から、第1の粘着剤層と低屈折率層と第2の粘着剤層とを有する。この光学部材においては、該反射板の該両面粘着フィルムと反対側に表面処理層が形成されている。
1つの実施形態においては、上記表面処理層の動摩擦係数は1.0以下である。
1つの実施形態においては、上記表面処理層は、鉛筆硬度がH以上のハードコート層である。1つの実施形態においては、上記表面処理層は、上記ハードコート層の上記反射板と反対側の表面にフッ素を含む最外層をさらに有する。
本発明の別の局面によれば、バックライトユニットが提供される。このバックライトユニットは、上記の光学部材と光源とを有し、該光源は、上記導光板の上記端面に対向するように配置されている。
本発明のさらに別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記のバックライトユニットと、上記導光板の上記出射面側に配置された画像表示パネルと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、導光板と反射板とが低屈折率層を含む両面粘着フィルムを介して一体化された光学部材において、反射板表面に所定の表面処理層を設けることにより、低屈折率層の優れた特性を維持しつつ、振動に起因した摩耗またはキズによる表示品位の低下が抑制された光学部材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による光学部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.光学部材の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学部材の概略断面図である。図示例の光学部材100は、導光板10と、導光板10に両面粘着フィルム20を介して貼り合わされた反射板30と、を有する。両面粘着フィルム20は、導光板10側から、第1の粘着剤層21と低屈折率層22と第2の粘着剤層23とを有する。実用的には、低屈折率層22と第2の粘着剤層23との間に、基材24が設けられる。より詳細には、基材24表面に低屈折率層22が形成され、基材24と低屈折率層22との積層体の両側に第1の粘着剤層21および第2の粘着剤層23が配置され得る。光学部材100においては、反射板30の両面粘着フィルム20と反対側に表面処理層40が形成されている。
【0010】
導光板10は、光源からの光が入射する端面10aと入射した光を出射する出射面10bとを有する。すなわち、導光板10は、代表的には、端面10aから光が入射するエッジライト方式である。より詳細には、導光板10は、光源から端面10aに入射した光を内部で反射作用等を受けながら端面10aと対向する端部側へ導光し、その導光過程において徐々に光を出射面10bから出射する。出射面10bには、代表的には出射パターンが設けられている。出射パターンとしては、例えば、凹凸形状が挙げられる。さらに、導光板の出射面と反対側の面には、代表的には光取り出しパターンが設けられている。光取り出しパターンとしては、例えば、白色ドットが挙げられる。導光板としては、任意の適切な導光板が用いられ得る。上記導光板を構成する材料としては、光源から照射された光を効率的に導き得る限り、任意の適切な材料が用いられ得る。導光板を構成する材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、スチレン樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0011】
反射板としては、任意の適切な反射板が用いられ得る。例えば、反射板は、鏡面反射板であってもよく拡散反射板であってもよい。反射板の具体例としては、反射率の高い樹脂シート(例えば、アクリル板)、アルミニウム、ステンレス等の金属薄板または金属箔、ポリエステル等の樹脂フィルム等の基材にアルミニウム、銀等を蒸着した蒸着シート、ポリエステル等の樹脂フィルム等の基材とアルミニウム等の金属箔との積層体、内部に空孔(ボイド)が形成された樹脂フィルムが挙げられる。
【0012】
以下、光学部材を構成する両面粘着フィルムおよび表面処理層について詳細に説明する。導光板および反射板については業界で周知の構成が採用され得るので、上記以外の説明は省略する。
【0013】
B.両面粘着フィルム
B-1.両面粘着フィルムの概略
上記A項で説明したとおり、両面粘着フィルムは、導光板10側から、第1の粘着剤層21と低屈折率層22と実用的には基材24と第2の粘着剤層23とを有する。低屈折率層22の空隙率は、例えば40体積%以上である。第1の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は例えば1.0×105(Pa)~1.0×107(Pa)であり、第2の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は例えば1.0×105(Pa)以下である。低屈折率層に隣接する第1の粘着剤層の貯蔵弾性率を上記のように高くすることにより、粘着剤が低屈折率層の空隙に入り込むことを防止できるので、低屈折率層の屈折率を低く維持して、その効果を維持することができる。さらに、もう一方の粘着剤層である第2の粘着剤層の貯蔵弾性率をこのように低くすることにより、振動による低屈折率層の破損を抑制することができる。振動に対する低屈折率層の破損抑制効果は、光学部材を車載用途および/またはアミューズメント用途に用いた場合に特に顕著である。
【0014】
1つの実施形態においては、両面粘着フィルムに存在する粘着剤層の合計厚みに対する低屈折率層の厚みの比は例えば0.10%~5.00%であり、好ましくは0.11%~4.50%であり、より好ましくは0.12%~4.00%である。厚みの比がこのような範囲であれば、振動による低屈折率層の破損をさらに良好に抑制することができる。より詳細には、車載用途および/またはアミューズメント用途においては縦方向のみならず横方向にも大きな振動が存在するところ、特に横方向の強度に劣る低屈折率層の破損を良好に抑制することができる。
【0015】
B-2.基材
基材は、代表的には、樹脂(好ましくは、透明樹脂)のフィルムまたは板状物で構成され得る。このような樹脂の代表例としては、熱可塑性樹脂、反応性樹脂(例えば、電離放射線硬化性樹脂)が挙げられる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PET等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂の具体例としては、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
基材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~50μmである。
【0017】
基材の屈折率は、好ましくは1.47以上であり、より好ましくは1.47~1.60であり、さらに好ましくは1.47~1.55である。このような範囲であれば、導光板から取り出される光に悪影響を与えることなく画像表示セルに導くことができる。
【0018】
B-3.低屈折率層
低屈折率層は、代表的には、内部に空隙を有する。低屈折率層の空隙率は、上記のとおり40体積%以上であり、代表的には50体積%以上であり、好ましくは70体積%以上であり、より好ましくは80体積%以上である。一方、空隙率は、例えば90体積%以下であり、好ましくは85体積%以下である。空隙率が上記範囲内であることにより、低屈折率層の屈折率を適切な範囲とすることができる。空隙率は、エリプソメーターで測定した屈折率の値から、Lorentz‐Lorenz’s formula(ローレンツ-ローレンツの式)より空隙率を算出された値である。
【0019】
低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.30以下であり、より好ましくは1.20以下であり、さらに好ましくは1.15以下である。屈折率の下限は、例えば1.01であり得る。このような範囲であれば、両面粘着剤層付光学積層体を介して得られる導光板と周辺部材との積層構造において非常に優れた光の利用効率を実現することができる。屈折率は、特に断らない限り、波長550nmにおいて測定した屈折率をいう。屈折率は、以下の実施例における[製造例4]に記載の方法によって測定された値である。
【0020】
低屈折率層は、上記所望の空隙率および屈折率を有する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。低屈折率層は、好ましくは塗工または印刷等により形成され得る。低屈折率層を構成する材料としては、例えば、国際公開第2004/113966号、特開2013-254183号公報、および特開2012-189802号公報に記載の材料を採用し得る。具体的には、例えば、シリカ系化合物;加水分解性シラン類、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物;有機ポリマー;シラノール基を含有するケイ素化合物;ケイ酸塩を酸やイオン交換樹脂に接触させることにより得られる活性シリカ;重合性モノマー(例えば、(メタ)アクリル系モノマー、およびスチレン系モノマー);硬化性樹脂(例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂、およびウレタン樹脂);およびこれらの組み合わせが挙げられる。低屈折率層は、このような材料の溶液または分散液を塗工または印刷等することにより形成され得る。
【0021】
低屈折率層における空隙(孔)のサイズは、空隙(孔)の長軸の直径および短軸の直径のうち、長軸の直径を指すものとする。空隙(孔)のサイズは、例えば、2nm~500nmである。空隙(孔)のサイズは、例えば2nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは20nm以上である。一方、空隙(孔)のサイズは、例えば500nm以下であり、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。空隙(孔)のサイズの範囲は、例えば2nm~500nmであり、好ましくは5nm~500nmであり、より好ましくは10nm~200nmであり、さらに好ましくは20nm~100nmである。空隙(孔)のサイズは、目的および用途等に応じて、所望のサイズに調整することができる。空隙(孔)のサイズは、BET試験法により定量化できる。
【0022】
空隙(孔)のサイズは、BET試験法により定量化できる。具体的には、比表面積測定装置(マイクロメリティック社製:ASAP2020)のキャピラリに、サンプル(形成された空隙層)を0.1g投入した後、室温で24時間、減圧乾燥を行って、空隙構造内の気体を脱気する。そして、上記サンプルに窒素ガスを吸着させることで吸着等温線を描き、細孔分布を求める。これによって、空隙サイズが評価できる。
【0023】
低屈折率層のヘイズは、例えば5%未満であり、好ましくは3%未満である。一方、ヘイズは、例えば0.1%以上であり、好ましくは0.2%以上である。ヘイズの範囲は、例えば0.1%以上5%未満であり、好ましくは0.2%以上3%未満である。ヘイズは、例えば、以下のような方法により測定できる。なお、ヘイズは、低屈折率層の透明性の指標である。
空隙層(低屈折率層)を50mm×50mmのサイズにカットし、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製:HM-150)にセットしてヘイズを測定する。ヘイズ値については、以下の式より算出する。
ヘイズ(%)=[拡散透過率(%)/全光線透過率(%)]×100(%)
【0024】
上記内部に空隙を有する低屈折率層としては、例えば、多孔質層、および/または空気層を少なくとも一部に有する低屈折率層が挙げられる。多孔質層は、代表的には、エアロゲル、および/または粒子(例えば、中空微粒子および/または多孔質粒子)を含む。低屈折率層は、好ましくはナノポーラス層(具体的には、90%以上の微細孔の直径が10-1nm~103nmの範囲内の多孔質層)であり得る。
【0025】
上記粒子としては、任意の適切な粒子を採用し得る。粒子は、代表的には、シリカ系化合物からなる。粒子の形状としては、例えば、球状、板状、針状、ストリング状、およびブドウの房状が挙げられる。ストリング状の粒子としては、例えば、球状、板状、または針状の形状を有する複数の粒子が数珠状に連なった粒子、短繊維状の粒子(例えば、特開2001-188104号公報に記載の短繊維状の粒子)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ストリング状の粒子は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ブドウの房状の粒子としては、例えば、球状、板状、および針状の粒子が複数凝集してブドウの房状になったものが挙げられる。粒子の形状は、例えば透過電子顕微鏡で観察することによって確認できる。
【0026】
低屈折率層の厚みは、好ましくは0.2μm~5μmであり、より好ましくは0.3μm~3μmである。低屈折率層の厚みがこのような範囲であれば、本発明による破損防止効果が顕著なものとなる。さらに、上記所望の厚みの比を容易に実現することができる。
【0027】
低屈折率層は、代表的には上記のように塗工または印刷により形成され得る。このような構成であれば、低屈折率層をロールトゥロールにより連続的に設けることができる。低屈折率層は、基材全面に形成されてもよく、所定のパターンで形成されてもよい。低屈折率層が所定のパターンで形成される場合には、塗工は、例えば所定のパターンを有するマスクを介して行われる。印刷は、任意の適切な方式が採用され得る。印刷方法は、具体的には、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の有版式の印刷方法であってもよく、インクジェット印刷、レーザー印刷、静電印刷等の無版式の印刷方法であってもよい。
【0028】
以下、低屈折率層の具体的な構成の一例について説明する。本実施形態の低屈折率層は、微細な空隙構造を形成する一種類または複数種類の構成単位からなり、該構成単位同士が触媒作用を介して化学的に結合している。構成単位の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、棒状、平板状が挙げられる。構成単位は、1つの形状のみを有していてもよく、2つ以上の形状を組み合わせて有していてもよい。以下においては、主として、低屈折率層が上記微細孔粒子どうしが化学的に結合している多孔体の空隙層である場合について説明する。
【0029】
このような空隙層は、空隙層形成工程において、例えば微細孔粒子どうしを化学的に結合させることにより形成され得る。なお、本発明の実施形態において「粒子」(例えば、上記微細孔粒子)の形状は特に限定されず、例えば球状でもよく他の形状でもよい。また、本発明の実施形態において、上記微細孔粒子は、例えば、ゾルゲル数珠状粒子、ナノ粒子(中空ナノシリカ・ナノバルーン粒子)、ナノ繊維等であってもよい。微細孔粒子は、代表的には無機物を含む。無機物の具体例としては、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。1つの実施形態においては、上記微細孔粒子は、例えばケイ素化合物の微細孔粒子であり、上記多孔体は、例えばシリコーン多孔体である。上記ケイ素化合物の微細孔粒子は、例えば、ゲル状シリカ化合物の粉砕体を含む。また、多孔質層および/または空気層を少なくとも一部に有する低屈折率層の別形態としては、例えば、ナノファイバー等の繊維状物質からなり、該繊維状物質が絡まり合い空隙が形成されて層を成している空隙層がある。このような空隙層の製造方法は特に限定されず、例えば、上記微細孔粒子どうしが化学的に結合している多孔体の空隙層の場合と同様である。さらに別の形態としては、中空ナノ粒子やナノクレイを用いた空隙層、中空ナノバルーンやフッ化マグネシウムを用いて形成した空隙層が挙げられる。空隙層は、単一の構成物質からなる空隙層であってもよいし、複数の構成物質からなる空隙層であってもよい。空隙層は、単一の上記形態で構成されていてもよく、複数の上記形態を含んで構成されていてもよい。
【0030】
本実施形態においては、多孔体の多孔質構造は、例えば、孔構造が連続した連泡構造体であり得る。連泡構造体とは、例えば上記シリコーン多孔体において、三次元的に孔構造が連なっていることを意味し、孔構造の内部空隙が連続している状態ともいえる。多孔質体が連泡構造を有することにより、空隙率を高めることが可能である。ただし、中空シリカのような独泡粒子(個々に孔構造を有する粒子)を使用する場合には、連泡構造を形成できない。一方、例えばシリカゾル粒子(ゾルを形成するゲル状ケイ素化合物の粉砕物)を使用する場合、当該粒子が三次元の樹状構造を有するために、塗工膜(ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含むゾルの塗工膜)中で当該樹状粒子が沈降および堆積することで、容易に連泡構造を形成することが可能である。低屈折率層は、より好ましくは、連泡構造が複数の細孔分布を含むモノリス構造を有する。モノリス構造は、例えば、ナノサイズの微細な空隙が存在する構造と、同ナノ空隙が集合した連泡構造とを含む階層構造を意味する。モノリス構造を形成する場合、例えば、微細な空隙で膜強度を付与しつつ、粗大な連泡空隙で高い空隙率を付与し、膜強度と高空隙率とを両立することができる。このようなモノリス構造は、好ましくは、シリカゾル粒子に粉砕する前段階のゲル(ゲル状ケイ素化合物)において、生成する空隙構造の細孔分布を制御することにより形成され得る。また例えば、ゲル状ケイ素化合物を粉砕する際、粉砕後のシリカゾル粒子の粒度分布を所望のサイズに制御することにより、モノリス構造を形成することができる。
【0031】
低屈折率層は、例えば上記のようにゲル状化合物の粉砕物を含み、当該粉砕物同士が化学的に結合している。低屈折率層における粉砕物同士の化学的な結合(化学結合)の形態は、特に制限されず、例えば架橋結合、共有結合、水素結合が挙げられる。
【0032】
ゲル状化合物のゲル形態は、特に制限されない。「ゲル」とは、一般に、溶質が相互作用のために独立した運動性を失って集合した構造を有し、固化した状態をいう。ゲル状化合物は、例えば、ウェットゲルでもよいし、キセロゲルでもよい。なお、一般に、ウェットゲルは、分散媒を含み、分散媒中で溶質が一様な構造をとるものをいい、キセロゲルは、溶媒が除去されて、溶質が空隙を持つ網目構造をとるものをいう。
【0033】
ゲル状化合物としては、例えば、モノマー化合物をゲル化したゲル化物が挙げられる。具体的には、上記ゲル状ケイ素化合物としては、例えば、モノマーのケイ素化合物が互いに結合したゲル化物、具体例として、モノマーのケイ素化合物が互いに共有結合、水素結合または分子間力結合したゲル化物が挙げられる。共有結合としては、例えば脱水縮合による結合が挙げられる。
【0034】
低屈折率層における上記粉砕物の体積平均粒子径は、例えば0.10μm以上であり、好ましくは0.20μm以上であり、より好ましくは0.40μm以上である。一方、体積平均粒子径は、例えば2.00μm以下であり、好ましくは1.50μm以下であり、より好ましくは1.00μm以下である。体積平均粒子径の範囲は、例えば0.10μm~2.00μmであり、好ましくは0.20μm~1.50μmであり、より好ましくは0.40μm~1.00μmである。粒度分布は、例えば、動的光散乱法、レーザー回折法等の粒度分布評価装置、および走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡等により測定することができる。なお、体積平均粒子径は、粉砕物の粒度のバラツキの指標である。
【0035】
ゲル状化合物の種類は、特に制限されない。ゲル状化合物としては、例えばゲル状ケイ素化合物が挙げられる。以下、ゲル状化合物がゲル状ケイ素化合物である場合を例として説明するが、これには限定されない。
【0036】
上記架橋結合は、例えばシロキサン結合である。シロキサン結合としては、例えば以下に示すような、T2の結合、T3の結合、T4の結合が挙げられる。空隙層(低屈折率層)がシロキサン結合を有する場合、いずれか一種の結合を有してもよいし、いずれか二種の結合を有してもよいし、三種全ての結合を有してもよい。シロキサン結合のうち、T2およびT3の比率が多いほど、可撓性に富み、ゲル本来の特性を期待できる。一方で、T4の比率が多いほど、膜強度が発現しやすい。したがって、目的、用途、所望の特性等に応じて、T2、T3およびT4の比率を変えることが好ましい。
【0037】
【0038】
また、低屈折率層(空隙層)においては、例えば、含まれるケイ素原子がシロキサン結合していることが好ましい。具体例として、空隙層に含まれる全ケイ素原子のうち、未結合のケイ素原子(つまり、残留シラノール)の割合は、例えば50%未満であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは15%以下である。
【0039】
ゲル状化合物がゲル状ケイ素化合物である場合、モノマーのケイ素化合物は、特に制限されない。モノマーのケイ素化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。ゲル状ケイ素化合物が、上記のように、モノマーのケイ素化合物が互いに水素結合または分子間力結合したゲル化物である場合、式(1)のモノマー間は、例えば、それぞれの水酸基を介して水素結合できる。
【0040】
【0041】
式(1)中、Xは、例えば2、3または4であり、好ましくは3または4である。R1は、例えば直鎖もしくは分枝アルキル基である。R1の炭素数は、例えば1~6であり、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~2である。直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、分枝アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0042】
式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(1’)に示す化合物が挙げられる。下記式(1’)において、R1は、式(1)の場合と同様であり、例えばメチル基である。R1がメチル基である場合、ケイ素化合物は、トリス(ヒドロキシ)メチルシランである。Xが3である場合、ケイ素化合物は、例えば、3つの官能基を有する3官能シランである。
【0043】
【0044】
式(1)で表されるケイ素化合物の別の具体例としては、Xが4である化合物が挙げられる。この場合、ケイ素化合物は、例えば、4つの官能基を有する4官能シランである。
【0045】
モノマーのケイ素化合物は、例えば、ケイ素化合物前駆体の加水分解物でもよい。ケイ素化合物前駆体としては、例えば、加水分解によりケイ素化合物を生成できるものであればよく、具体例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【0047】
前記式(2)中、Xは、例えば2、3または4であり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、直鎖もしくは分枝アルキル基であり、
R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、
R1は、Xが2の場合、互いに同一でも異なっていてもよく、
R2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0048】
XおよびR1は、例えば、式(1)におけるXおよびR1と同じである。R2は、例えば、式(1)におけるR1の例示が援用できる。
【0049】
式(2)で表されるケイ素化合物前駆体の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(2’)に示す化合物が挙げられる。下記式(2’)において、R1およびR2は、それぞれ、式(2)の場合と同様である。R1およびR2がメチル基の場合、ケイ素化合物前駆体は、トリメトキシ(メチル)シラン(以下、「MTMS」ともいう)である。
【0050】
【0051】
モノマーのケイ素化合物は、例えば低屈折率性に優れる点から、3官能シランが好ましい。また、モノマーのケイ素化合物は、例えば強度(例えば、耐擦傷性)に優れる点から、4官能シランが好ましい。モノマーのケイ素化合物は、一種類のみを使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。例えば、モノマーのケイ素化合物として、3官能シランのみを含んでもよいし、4官能シランのみを含んでもよいし、3官能シランと4官能シランの両方を含んでもよいし、その他のケイ素化合物をさらに含んでもよい。モノマーのケイ素化合物として二種類以上のケイ素化合物を使用する場合、その比率は特に制限されず、適宜設定できる。
【0052】
以下、このような低屈折率層の形成方法の一例について説明する。
【0053】
当該方法は、代表的には、樹脂フィルム上に低屈折率層(空隙層)の前駆体である空隙構造を形成する前駆体形成工程、および、前駆体形成工程後に当該前駆体内部で架橋反応を起こさせる架橋反応工程、を含む。当該方法は、微細孔粒子を含む含有液(以下、「微細孔粒子含有液」または単に「含有液」という場合がある。)を作製する含有液作製工程、および、当該含有液を乾燥させる乾燥工程をさらに含み、前駆体形成工程において、乾燥体中の微細孔粒子どうしを化学的に結合させて前駆体を形成する。含有液は、特に限定されず、例えば、微細孔粒子を含む懸濁液である。なお、以下においては、主として、微細孔粒子がゲル状化合物の粉砕物であり、空隙層がゲル状化合物の粉砕物を含む多孔体(好ましくはシリコーン多孔体)である場合について説明する。ただし、低屈折率層は、微細孔粒子がゲル状化合物の粉砕物以外である場合も、同様に形成することができる。
【0054】
上記の方法によれば、例えば、非常に低い屈折率を有する低屈折率層(空隙層)が形成される。その理由は、例えば以下のように推測される。ただし、当該推測は、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。
【0055】
上記粉砕物は、ゲル状ケイ素化合物を粉砕したものであるため、粉砕前のゲル状ケイ素化合物の三次元構造が、三次元基本構造に分散された状態となっている。さらに、上記方法では、ゲル状ケイ素化合物の破砕物を樹脂フィルム上に塗工することで、三次元基本構造に基づく多孔性構造の前駆体が形成される。つまり、上記の方法によれば、ゲル状ケイ素化合物の三次元構造とは異なる、粉砕物の塗工による新たな多孔構造(三次元基本構造)が形成される。このため、最終的に得られる空隙層においては、例えば空気層と同程度に機能する低屈折率を実現することができる。さらに、上記の方法においては、砕物同士を化学的に結合させるため、三次元基本構造が固定化される。このため、最終的に得られる空隙層は、空隙を有する構造であるにもかかわらず、十分な強度と可撓性とを維持することができる。
【0056】
さらに、上記の方法は、上記前駆体形成工程と上記架橋反応工程とを別工程として行う。加えて、架橋反応工程を好ましくは多段階で行う。架橋反応工程を多段階で行うことにより、例えば、架橋反応工程を1段階で行うよりも前駆体の強度をさらに向上させ、高空隙率と強度が両立した低屈折率層を得ることができる。このメカニズムは不明であるが、例えば、以下のように推測される。すなわち、上記のとおり、空隙層の形成と同時に触媒等により膜強度を向上させると、触媒反応の進行により、膜強度は向上するが空隙率が低下する問題がある。これは、例えば、触媒による微細孔粒子どうしの架橋反応の進行により、微細孔粒子どうしの架橋(化学的な結合)の数が増加することにより、結合は強固になるが空隙層全体が凝縮し空隙率が低下するためと考えられる。これに対し、前駆体形成工程と架橋反応工程とを別工程として行い、かつ、架橋反応工程を多段階で行うことにより、例えば、前駆体全体の形態をあまり変化させずに(例えば、全体の凝縮をあまり起こさずに)架橋(化学的な結合)の数を増加させることができると考えられる。ただし、これらは、推測可能なメカニズムの一例であり、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。
【0057】
前駆体形成工程においては、例えば、一定の形状を有する粒子を積層させ、空隙層の前駆体を形成する。この時点での前駆体の強度は非常に弱い。その後、例えば、光もしくは熱活性触媒反応により、微細孔粒子どうしを化学的に結合させ得る生成物(例えば、光塩基発生剤から発生した強塩基触媒等)を発生させる(架橋反応工程の1段階目)。効率よく短時間で反応を進めるためにさらに加熱エージング(架橋反応工程の2段階目)を行なうことにより、微細孔粒子どうしの化学的な結合(架橋反応)がさらに進み強度が向上すると考えられる。例えば、微細孔粒子がケイ素化合物の微細孔粒子(例えばゲル状シリカ化合物の粉砕体)であって、前駆体中に残留シラノール基(Si-OH基)が存在する場合、残留シラノール基どうしが架橋反応により化学的に結合すると考えられる。ただし、この説明も例示であり、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。
【0058】
上記の方法は、微細孔粒子を含む含有液を作製する含有液作製工程を有する。微細孔粒子がゲル状化合物の粉砕物である場合は、粉砕物は、例えばゲル状化合物を粉砕して得られる。ゲル状化合物の粉砕によって、上記のように、ゲル状化合物の三次元構造が破壊され三次元基本構造に分散される。粉砕物の調製の一例は以下のとおりである。
【0059】
モノマー化合物のゲル化は、例えば、モノマー化合物を、互いに水素結合させることまたは分子間力結合させることで行うことができる。モノマー化合物としては、例えば、上記式(1)で表されるケイ素化合物が挙げられる。式(1)のケイ素化合物は、水酸基を有するため、式(1)のモノマー間は、例えば、それぞれの水酸基を介して水素結合または分子間力結合が可能である。
【0060】
あるいは、ケイ素化合物は、上記ケイ素化合物前駆体の加水分解物でもよく、例えば、上記式(2)で表されるケイ素化合物前駆体を加水分解して生成してもよい。
【0061】
モノマー化合物前駆体の加水分解の方法は、特に制限されず、例えば、触媒存在下での化学反応により行うことができる。触媒としては、例えば、シュウ酸、酢酸等の酸等が挙げられる。加水分解反応は、例えば、シュウ酸の水溶液を、ケイ素化合物とジメチルスルホキシドとの混合液(例えば懸濁液)に、室温環境下でゆっくり滴下混合させた後に、そのまま30分程度撹拌することで行うことができる。ケイ素化合物前駆体を加水分解する際は、例えば、ケイ素化合物前駆体のアルコキシ基を完全に加水分解することで、その後のゲル化・熟成・空隙構造形成後の加熱・固定化を、さらに効率良く行うことができる。
【0062】
モノマー化合物のゲル化は、例えば、モノマー間の脱水縮合反応により行うことができる。脱水縮合反応は、例えば、触媒存在下で行うことが好ましく、触媒としては、例えば、塩酸、シュウ酸、硫酸等の酸触媒、およびアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒等の、脱水縮合触媒が挙げられる。脱水縮合触媒としては、塩基触媒が好ましい。脱水縮合反応において、モノマー化合物に対する触媒の添加量は、特に制限されない。触媒は、例えば、モノマー化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル~10モル、より好ましくは0.05モル~7モル、さらに好ましくは0.1モル~5モル添加され得る。
【0063】
モノマー化合物のゲル化は、例えば、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒に対するモノマー化合物の割合は、特に制限されない。溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、γ-ブチルラクトン(GBL)、アセトニトリル(MeCN)、エチレングリコールエチルエーテル(EGEE)等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。ゲル化に使用する溶媒を、以下、「ゲル化用溶媒」ともいう。
【0064】
ゲル化の条件は、特に制限されない。モノマー化合物を含む溶媒に対する処理温度は、例えば20℃~30℃であり、好ましくは22℃~28℃であり、より好ましくは24℃~26℃である。処理時間は、例えば1分~60分であり、好ましくは5分~40分であり、より好ましくは10分~30分である。脱水縮合反応を行う場合、その処理条件は、特に制限されず、これらの例示を援用できる。ゲル化を行うことで、例えば、シロキサン結合が成長し、シリカ一次粒子が形成され、さらに反応が進行することで、一次粒子同士が、数珠状に連なり三次元構造のゲルが生成される。
【0065】
ゲル化により得られるゲル状化合物は、ゲル化反応の後、熟成処理を施すことが好ましい。熟成処理により、例えば、ゲル化で得られた三次元構造を有するゲルの一次粒子をさらに成長させ、粒子自体のサイズを大きくすることが可能であり、結果的には、粒子同士が接触しているネック部分の接触状態を、点接触から面接触にする(接触面積を増やす)ことができる。熟成処理を行ったゲルは、例えば、ゲル自体の強度が増加し、結果的には、粉砕を行った後の三次元基本構造の強度を向上できる。これにより、例えば、粉砕物を塗工した後の乾燥工程において、三次元基本構造が堆積した空隙構造の細孔サイズが、乾燥過程の溶媒揮発に伴って収縮することを抑制できる。
【0066】
熟成処理は、例えば、所定の温度で所定の時間、ゲル状化合物をインキュベートすることにより行うことができる。熟成温度は、例えば30℃以上であり、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。一方、熟成温度は、例えば80℃以下であり、好ましくは75℃以下であり、より好ましくは70℃以下である。熟成温度の範囲は、例えば30℃~80℃であり、好ましくは35℃~75℃であり、より好ましくは40℃~70℃である。熟成時間は、例えば5時間以上であり、好ましくは10時間以上であり、より好ましくは15時間以上である。一方、熟成時間は、例えば50時間以下であり、好ましくは40時間以下であり、より好ましくは30時間以下である。熟成時間の範囲は、例えば5時間~50時間であり、好ましくは10時間~40時間であり、より好ましくは15時間~30時間である。なお、熟成条件については、例えば、シリカ一次粒子サイズの増大、およびネック部分の接触面積の増大が得られるよう最適化され得る。さらには、使用している溶媒の沸点を考慮することが好ましく、例えば、熟成温度が高すぎると、溶媒が過剰に揮発してしまい、塗工液(ゲル液)濃度の濃縮により三次元空隙構造の細孔が閉口する等の不具合が生じる可能性がある。一方で、例えば、熟成温度が低すぎる場合は、熟成による効果が十分に得られないばかりでなく、量産プロセスの経時での温度バラツキが増大することとなり、特性に劣る低屈折率層ができる可能性がある。
【0067】
熟成処理は、例えばゲル化処理と同じ溶媒を使用できる。具体的には、ゲル処理後の反応物(つまり、ゲル状化合物を含む溶媒)に対して、そのまま熟成処理を施すことが好ましい。ゲル化後の熟成処理を終えたゲル(ゲル状化合物、例えば、ゲル状ケイ素化合物)に含まれる残留シラノール基のモル数は、例えば50%以下であり、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下である。一方、残留シラノール基のモル数は、例えば1%以上であり、好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上である。残留シラノール基のモル数の範囲は、例えば1%~50%であり、好ましくは3%~40%であり、より好ましくは5%~30%である。ゲルの硬度を上げる目的では、例えば、残留シラノール基のモル数が低いほど好ましい。シラノール基のモル数が高すぎると、例えば、シリコーン多孔体の前駆体が架橋されるまでに、空隙構造を保持できなくなる可能性がある。一方で、シラノール基のモル数が低すぎると、例えば、微細孔粒子含有液(例えば懸濁液)を作製する工程及び/又はその後の工程において、ゲル状化合物の粉砕物を架橋できなくなり、十分な膜強度を付与できなくなる可能性がある。なお、残留シラノール基のモル数は、例えば、原材料(例えば、モノマー化合物前駆体)のアルコキシ基のモル数を100とした場合の残留シラノール基の割合である。なお、上記はシラノール基の例であるが、例えば、モノマーのケイ素化合物を各種反応性官能基で修飾した場合は、各々の官能基に対しても同様の事項および条件等が適用され得る。
【0068】
モノマー化合物をゲル化用溶媒中でゲル化した後、得られたゲル状化合物を粉砕する。粉砕は、例えば、ゲル化用溶媒中のゲル状化合物に対して、そのまま粉砕処理を施してもよいし、ゲル化用溶媒を他の溶媒に置換してから、当該他の溶媒中のゲル状化合物に対して、粉砕処理を施してもよい。また例えば、ゲル化反応に用いた触媒および用いた溶媒が、熟成工程後も残存することで、液の経時ゲル化(ポットライフ)、乾燥工程時の乾燥効率低下を発生させる場合は、他の溶媒に置換することが好ましい。上記他の溶媒を、以下、「粉砕用溶媒」ともいう。
【0069】
粉砕用溶媒は、特に制限されず、例えば有機溶媒が使用できる。有機溶媒としては、沸点が例えば130℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは85℃以下の溶媒が挙げられる。具体例としては、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、メタノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルセロソルブ、アセトン、ジメチルホムアミド(DMF)、イソブチルアルコール等が挙げられる。粉砕用溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ゲル化用溶媒と粉砕用溶媒との組合せは、特に制限されず、例えば、DMSOとIPA、DMSOとエタノール、DMSOとメタノール、DMSOとブタノール、DMSOとイソブチルアルコールの組合せ等が挙げられる。このように、ゲル化用溶媒を破砕用溶媒に置換することで、例えば、後述する塗膜形成において、より均一な塗工膜を形成することができる。
【0071】
ゲル状化合物の粉砕方法は、特に制限されず、例えば、超音波ホモジナイザー、高速回転ホモジナイザー、その他のキャビテーション現象を用いる粉砕装置により行うことができる。ボールミル等のメディア粉砕を行う装置は、例えば、粉砕時にゲルの空隙構造を物理的に破壊するのに対し、ホモジナイザー等のキャビテーション方式粉砕装置は、例えば、メディアレス方式のため、ゲル三次元構造にすでに内包されている比較的弱い結合のシリカ粒子接合面を、高速のせん断力で剥離する。これにより、得られるゲル三次元構造は、例えば、一定範囲の粒度分布をもつ空隙構造を保持することができ、塗工・乾燥時の堆積による空隙構造を再形成できる。粉砕の条件は、特に制限されず、例えば、瞬間的に高速の流れを与えることで、溶媒を揮発させることなくゲルを粉砕することができることが好ましい。例えば、上記のような粒度バラツキ(例えば、体積平均粒子径または粒度分布)の粉砕物となるように粉砕することが好ましい。仮に粉砕時間・強度等の仕事量が不足した場合は、例えば、粗粒が残ることとなり緻密な細孔を形成できないばかりか外観欠点も増加し高い品質を得ることができない可能性がある。一方で、仕事量が過多な場合は、例えば、所望の粒度分布よりも微細な粒子となり、塗工・乾燥後に堆積した空隙サイズが微細となり、所望の空隙率が得られない可能性がある。
【0072】
以上のようにして、微細孔粒子(ゲル状化合物の粉砕物)を含む液(例えば懸濁液)を作製することができる。さらに、微細孔粒子を含む液を作製した後に、または作製工程中に、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を加えることにより、微細孔粒子および触媒を含む含有液を作製することができる。触媒は、例えば、微細孔粒子同士の架橋結合を促進する触媒であってもよい。微細孔粒子どうしを化学的に結合させる化学反応としては、シリカゾル分子に含まれる残留シラノール基の脱水縮合反応を利用することが好ましい。シラノール基の水酸基同士の反応を触媒で促進することで、短時間で空隙構造を硬化させる連続成膜が可能である。触媒としては、例えば、光活性触媒および熱活性触媒が挙げられる。光活性触媒によれば、例えば、前駆体形成工程において、加熱によらずに微細孔粒子どうしを化学的に結合(例えば架橋結合)させることができる。これによれば、例えば、前駆体形成工程において、前駆体全体の収縮が起こりにくいため、より高い空隙率を維持できる。また、触媒に加え、またはこれに代えて、触媒を発生する物質(触媒発生剤)を用いてもよい。例えば、光活性触媒に加え、またはこれに代えて、光により触媒を発生する物質(光触媒発生剤)を用いてもよいし、熱活性触媒に加え、またはこれに代えて、熱により触媒を発生する物質(熱触媒発生剤)を用いてもよい。光触媒発生剤としては、例えば、光塩基発生剤(光照射により塩基性触媒を発生する物質)、光酸発生剤(光照射により酸性触媒を発生する物質)等が挙げられ、光塩基発生剤が好ましい。光塩基発生剤としては、例えば、9-アントリルメチル N,N-ジエチルカルバメート(9-anthrylmethyl N,N-diethylcarbamate、商品名WPBG-018)、(E)-1-[3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペノイル]ピペリジン((E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine、商品名WPBG-027)、1-(アントラキノン-2-イル)エチル イミダゾールカルボキシレート(1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate、商品名WPBG-140)、2-ニトロフェニルメチル 4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシラート(商品名WPBG-165)、1,2-ジイソプロピル-3-〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート(商品名WPBG-266)、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム n-ブチルトリフェニルボラート(商品名WPBG-300)、および2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(東京化成工業株式会社)、4-ピペリジンメタノールを含む化合物(商品名HDPD-PB100:ヘレウス社製)等が挙げられる。なお、上記「WPBG」を含む商品名は、いずれも和光純薬工業株式会社の商品名である。光酸発生剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩(商品名SP-170:ADEKA社)、トリアリールスルホニウム塩(商品名CPI101A:サンアプロ社)、芳香族ヨードニウム塩(商品名Irgacure250:チバ・ジャパン社)等が挙げられる。また、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒は、光活性触媒および光触媒発生剤に限定されず、例えば、熱活性触媒または尿素のような熱触媒発生剤でもよい。微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒、塩酸、酢酸、シュウ酸等の酸触媒等が挙げられる。これらの中で、塩基触媒が好ましい。微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒もしくは触媒発生剤は、例えば、粉砕物(微細孔粒子)を含むゾル粒子液(例えば懸濁液)に、塗工直前に添加して使用する、または触媒もしくは触媒発生剤を溶媒に混合した混合液として使用することができる。混合液は、例えば、ゾル粒子液に直接添加して溶解した塗工液、触媒もしくは触媒発生剤を溶媒に溶解した溶液、または、触媒もしくは触媒発生剤を溶媒に分散した分散液でもよい。溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。
【0073】
また、例えば、ゲル含有液には、さらに、前記ゲルの粉砕物同士を間接的に結合させるための架橋補助剤を添加してもよい。この架橋補助剤が、粒子(前記粉砕物)同士の間に入り込み、粒子と架橋補助剤が各々相互作用もしくは結合することで、距離的に多少離れた粒子同士も結合させることが可能であり、効率よく強度を上げることが可能となる。前記架橋補助剤としては、多架橋シランモノマーが好ましい。前記多架橋シランモノマーは、具体的には、例えば、2以上3以下のアルコキシシリル基を有し、アルコキシシリル基間の鎖長が炭素数1以上10以下であってもよく、炭素以外の元素も含んでもよい。前記架橋補助剤としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)-N-ブチル-N-プロピル-エタン-1,2-ジアミン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。この架橋補助剤の添加量としては、特に限定されないが、例えば、前記ケイ素化合物の粉砕物の重量に対して0.01~20重量%、0.05~15重量%、または0.1~10重量%である。
【0074】
次に、基材上に微細孔粒子を含む含有液(例えば懸濁液)を塗工する(塗工工程)。塗工は、例えば、後述する各種塗工方式を用いることができ、また、これらに限定されない。微細孔粒子(例えばゲル状シリカ化合物の粉砕物)を含む含有液を、基材上に直接塗工することにより、微細孔粒子および触媒を含む塗工膜を形成することができる。塗工膜は、例えば、塗工層ということもできる。塗工膜を形成することにより、例えば、三次元構造が破壊された粉砕物が沈降・堆積することによって、新たな三次元構造が構築される。なお、例えば、微細孔粒子を含む含有液が、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を含まなくてもよい。例えば、後述するように、塗工膜に、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を吹き付けてから、または吹き付けながら前駆体形成工程を行っても良い。しかし、微細孔粒子を含む含有液が、微細孔粒子どうしを化学的に結合させる触媒を含み、塗工膜中に含まれる触媒の作用により、微細孔粒子どうしを化学的に結合させて多孔体の前駆体を形成してもよい。
【0075】
上記溶媒(以下、「塗工用溶媒」ともいう)は、特に制限されず、例えば、有機溶媒が使用できる。有機溶媒としては、例えば、沸点150℃以下の溶媒が挙げられる。具体例としては、例えば、IPA、エタノール、メタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノール等が挙げられ、また、粉砕用溶媒と同様のものが使用できる。低屈折率層の形成方法が、ゲル状化合物を粉砕する工程を含む場合、塗工膜の形成工程においては、例えば、ゲル状化合物の粉砕物を含む粉砕用溶媒を、そのまま使用してもよい。
【0076】
塗工工程においては、例えば、溶媒に分散させたゾル状の粉砕物(以下、「ゾル粒子液」ともいう)を、基材上に塗工することが好ましい。ゾル粒子液は、例えば、基材上に塗工・乾燥した後に、前記化学架橋を行うことで、一定レベル以上の膜強度を有する空隙層を、連続成膜することが可能である。なお、本発明の実施形態における「ゾル」とは、ゲルの三次元構造を粉砕することで、空隙構造の一部を保持したナノ三次元構造のシリカゾル粒子が溶媒中に分散して流動性を示す状態をいう。
【0077】
塗工用溶媒における粉砕物の濃度は、特に制限されず、例えば0.3%(v/v)~50%(v/v)であり、好ましくは0.5%(v/v)~30%(v/v)であり、より好ましくは1.0%(v/v)~10%(v/v)である。粉砕物の濃度が高すぎると、例えば、ゾル粒子液の流動性が著しく低下し、塗工時の凝集物・塗工スジを発生させる可能性がある。粉砕物の濃度が低すぎると、例えば、ゾル粒子液の溶媒の乾燥に相当の時間がかかるだけでなく、乾燥直後の残留溶媒も高くなるために、空隙率が低下してしまう可能性がある。
【0078】
ゾルの物性は、特に制限されない。ゾルのせん断粘度は、10001/sのせん断速度において、例えば100cPa・s以下であり、好ましくは10cPa・s以下であり、より好ましくは1cPa・s以下である。せん断粘度が高すぎると、例えば、塗工スジが発生し、グラビア塗工の転写率の低下等の不具合が見られる可能性がある。逆に、せん断粘度が低すぎる場合は、例えば、塗工時のウェット塗工厚みを厚くすることができず、乾燥後に所望の厚みが得られない可能性がある。
【0079】
基材に対する粉砕物の塗工量は、特に制限されず、例えば、所望のシリコーン多孔体(結果として、低屈折率層)の厚み等に応じて適宜設定できる。具体例として、厚み0.1μm~1000μmのシリコーン多孔体を形成する場合、基材に対する粉砕物の塗工量は、基材の面積1m2あたり、例えば0.01μg~60000μgであり、好ましくは0.1μg~5000μgであり、より好ましくは1μg~50μgである。ゾル粒子液の好ましい塗工量は、例えば、液の濃度や塗工方式等と関係するため、一義的に定義することは難しいが、生産性を考慮すると、できるだけ薄層で塗工することが好ましい。塗工量が多すぎると、例えば、溶媒が揮発する前に乾燥炉で乾燥される可能性が高くなる。これにより、溶媒中でナノ粉砕ゾル粒子が沈降・堆積し、空隙構造を形成する前に、溶媒が乾燥することで、空隙の形成が阻害されて空隙率が大きく低下する可能性がある。一方で、塗工量が薄過ぎると、基材の凹凸・親疎水性のバラツキ等により塗工ハジキが発生するリスクが高くなる可能性がある。
【0080】
さらに、低屈折率層の形成方法は、例えば上記のように、基材上に、空隙層(低屈折率層)の前駆体である空隙構造を形成する前駆体形成工程を有する。前駆体形成工程は、特に限定されないが、例えば、微細孔粒子含有液を塗工して作製された塗工膜を乾燥させる乾燥工程により、前駆体(空隙構造)を形成してもよい。乾燥工程における乾燥処理によって、例えば、上記の塗工膜中の溶媒(ゾル粒子液に含まれる溶媒)を除去するだけでなく、乾燥処理中に、ゾル粒子を沈降・堆積させ、空隙構造を形成することができる。乾燥処理の温度は、例えば50℃~250℃であり、好ましくは60℃~150℃であり、より好ましくは70℃~130℃である。乾燥処理の時間は、例えば0.1分~30分であり、好ましくは0.2分~10分であり、より好ましくは0.3分~3分である。乾燥処理温度および時間については、例えば、連続生産性や高い空隙率の発現の関連では、より低く短いほうが好ましい。条件が厳しすぎると、例えば、樹脂フィルムに塗工する場合、樹脂フィルムのガラス転移温度に近づくことで、樹脂フィルムが乾燥炉の中で伸展してしまい、塗工直後に、形成された空隙構造にクラック等の欠点が発生する可能性がある。一方で、条件が緩すぎる場合、例えば、乾燥炉を出たタイミングで残留溶媒を含むため、次工程でロールと擦れた際に、スクラッチ傷が入る等の外観上の不具合が発生する可能性がある。
【0081】
乾燥処理は、例えば、自然乾燥でもよいし、加熱乾燥でもよいし、減圧乾燥でもよい。中でも、工業的に連続生産することを前提とした場合は、加熱乾燥を用いることが好ましい。加熱乾燥の方法は、特に制限されず、例えば、一般的な加熱手段が使用できる。加熱手段としては、例えば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等が挙げられる。また、使用される溶媒については、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層(シリコーン多孔体)のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられる。また、上記IPA等にペルフルオロ系界面活性剤もしくはシリコーン系界面活性剤を少量添加し表面張力を低下させてもよい。
【0082】
さらに、低屈折率層の形成方法は、上記のとおり、前駆体形成工程後に、前駆体内部で架橋反応を起こさせる架橋反応工程を含み、当該架橋反応工程において、光照射または加熱により塩基性物質を発生させ、かつ、架橋反応工程が多段階である。架橋反応工程の1段階目では、例えば、微細孔粒子どうしを触媒(塩基性物質)の作用により化学的に結合させる。これにより、例えば、塗工膜(前駆体)における粉砕物の三次元構造が、固定化される。従来の焼結による固定化を行う場合は、例えば、200℃以上の高温処理を行うことで、シラノール基の脱水縮合、シロキサン結合の形成を誘発する。本形成方法においては、上記の脱水縮合反応を触媒する各種添加剤を反応させることで、例えば、基材(樹脂フィルム)にダメージを起こすことなく、100℃前後の比較的低い乾燥温度、および数分未満の短い処理時間で、連続的に空隙構造を形成、固定化することができる。
【0083】
化学的に結合させる方法は、特に制限されず、例えば、ゲル状ケイ素化合物の種類に応じて、適宜決定できる。具体例として、化学的な結合は、例えば、粉砕物同士の化学的な架橋結合により行うことができ、その他にも、例えば、酸化チタン等の無機粒子等を粉砕物に添加した場合、無機粒子と粉砕物とを化学的に架橋結合させることも考えられる。また、酵素等の生体触媒を担持させる場合も、触媒活性点とは別の部位と粉砕物とを化学架橋結合させる場合もある。したがって、低屈折率層の形成方法は、例えば、ゾル粒子同士で形成する空隙層(シリコーン多孔体)だけでなく、有機無機ハイブリッド空隙層、ホストゲスト空隙層等の応用展開が考えられる。
【0084】
上記触媒存在下での化学反応は、低屈折率層の形成方法におけるどの段階で行う(起こる)かは、特に限定されず、例えば、上記多段階の架橋反応工程における少なくとも一つの段階で行う。例えば、低屈折率層の形成方法では、上記のとおり、乾燥工程が前駆体形成工程を兼ねていてもよい。また例えば、乾燥工程後に、多段階の架橋反応工程を行い、その少なくとも一つの段階で、微細孔粒子どうしを触媒の作用により化学的に結合させてもよい。例えば、上記のとおり触媒が光活性触媒である場合には、架橋反応工程において、光照射により、微細孔粒子どうしを化学的に結合させて多孔体の前駆体を形成してもよい。また、触媒が熱活性触媒である場合には、架橋反応工程において、加熱により微細孔粒子どうしを化学的に結合させて多孔体の前駆体を形成してもよい。
【0085】
上記化学反応は、例えば、事前にゾル粒子液(例えば懸濁液)に添加された触媒を含む塗工膜に対し光照射もしくは加熱、または、塗工膜に触媒を吹き付けてから光照射もしくは加熱、または、触媒を吹き付けながら光照射もしくは加熱することによって、行うことができる。光照射における積算光量は、特に限定されず、波長360nm換算で、例えば200mJ/cm2~800mJ/cm2であり、好ましくは250mJ/cm2~600mJ/cm2であり、より好ましくは300mJ/cm2~400mJ/cm2である。照射量が十分でなく触媒の光吸収による分解が進まず効果が不十分となることを防止する観点からは、200mJ/cm2以上の積算光量が好ましい。また、空隙層下の基材にダメージがかかることによる熱ジワが発生することを防止する観点からは、800mJ/cm2以下の積算光量が好ましい。加熱処理の条件は、特に制限されない。加熱温度は、例えば50℃~250℃であり、好ましくは60℃~150℃であり、より好ましくは70℃~130℃である。加熱時間は、例えば0.1分~30分であり、好ましくは0.2分~10分であり、より好ましくは0.3分~3分である。あるいは、上記のとおり塗工されたゾル粒子液(例えば懸濁液)を乾燥する工程が、触媒存在下での化学反応を行う工程を兼ねていてもよい。すなわち、塗工されたゾル粒子液(例えば懸濁液)を乾燥する工程において、触媒存在下での化学反応により、粉砕物(微細孔粒子)同士を化学的に結合させてもよい。この場合、乾燥工程後に塗工膜をさらに加熱することにより、粉砕物(微細孔粒子)同士をさらに強固に結合させてもよい。さらに、触媒存在下での化学反応は、微細孔粒子含有液(例えば懸濁液)を作製する工程、および、微細孔粒子含有液を塗工する工程においても起こる場合があると推測される。しかしながら、この推測は、低屈折率層の形成方法を限定するものではない。また、使用される溶媒については、例えば、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられる。
【0086】
低屈折率層の形成方法においては、架橋反応工程が多段階であることにより、例えば、架橋反応工程が1段階の場合よりも、空隙層(低屈折率層)の強度をさらに向上させることができる。以下、架橋反応工程の2段階目以降の工程を「エージング工程」という場合がある。エージング工程においては、例えば、前駆体を加熱することにより、前駆体内部で架橋反応をさらに促進させてもよい。架橋反応工程において起こる現象およびメカニズムは不明であるが、例えば、上記のとおりである。例えば、エージング工程においては、加熱温度を低温にして、前駆体の収縮を抑制しながら架橋反応を起こさせることで強度を向上させ、高空隙率と強度の両立を達成できる。エージング工程における温度は、例えば40℃~70℃であり、好ましくは45℃~65℃であり、より好ましくは50℃~60℃である。エージング工程を行う時間は、例えば10hr~30hrであり、好ましくは13hr~25hrであり、より好ましくは15hr~20hrである。
【0087】
以上のようにして形成される低屈折率層は、強度に優れるため、例えば、ロール状の多孔体とすることができ、製造効率が良い、取り扱いやすい等の利点がある。
【0088】
このようにして形成される低屈折率層(空隙層)は、例えば、さらに他のフィルム(層)と積層して、多孔質構造を含む積層構造体としてもよい。この場合、積層構造体における各構成要素は、例えば、粘着剤または接着剤を介して積層させてもよい。各構成要素の積層は、例えば、効率的であることから、長尺フィルムを用いた連続処理(いわゆるRoll to Roll等)により積層を行ってもよく、基材が成形物・素子等の場合はバッチ処理を行ったものを積層してもよい。
【0089】
低屈折率層の具体的な構成および形成方法の詳細は、例えば国際公開第2019/151073号に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0090】
B-4.第1の粘着剤層
第1の粘着剤層は、第1の粘着剤層を構成する粘着剤が通常の状態では低屈折率層の空隙に浸透しない程度の硬さを有する。第1の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、上記のとおり1.0×105(Pa)~1.0×107(Pa)である。例えば、1.1×105(Pa)以上、1.2×105(Pa)以上、1.3×105(Pa)以上、1.4×105(Pa)以上、1.5×105(Pa)以上、1.6×105(Pa)以上、1.7×105(Pa)以上、1.8×105(Pa)以上、1.9×105(Pa)以上または2.0×105(Pa)以上であり、かつ1.0×107(Pa)以下、5.0×106(Pa)以下、1.0×106(Pa)以下または5.0×105(Pa)以下である。好ましくは1.3×105(Pa)~1.0×106(Pa)であり、より好ましくは1.5×105(Pa)~5.0×105(Pa)である。貯蔵弾性率は、JIS K7244-1「プラスチック-動的機械特性の試験方法」に記載の方法に準拠して、周波数1Hzの条件で、-50℃~150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した際の、23℃におけるにおける値を読み取ることにより求められる。
【0091】
第1の粘着剤層を構成する粘着剤としては、上記のような特性を有する限りにおいて任意の適切な粘着剤が用いられ得る。粘着剤としては、代表的には、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が挙げられる。アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分(ベースポリマー)として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個である。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有(メタ)アクリレート等のコモノマーが挙げられる。コモノマーは、好ましくはヒドロキシル基含有モノマーおよび/または複素環含有(メタ)アクリレートであり、より好ましくはN-アクリロイルモルホリンである。アクリル系粘着剤組成物は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。このような粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば特許第4140736号に記載されており、当該特許公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0092】
第1の粘着剤層の厚みは、好ましくは3μm~30μmであり、より好ましくは5μm~10μmである。第1の粘着剤層の厚みがこのような範囲であれば、充分な密着力を有しつつ、全体厚みに対する粘着剤層厚みの影響が小さいという利点を有する。さらに、上記所望の厚みの比を容易に実現することができる。
【0093】
B-5.第2の粘着剤層
第2の粘着剤層は、車等の使用時に連続的に振動するような装置に適用され、前記振動の伝達を吸収して低屈折率層の破損を抑制し得るような柔らかさを有する粘着剤で構成される。第2の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、上記のとおり例えば1.0×105(Pa)以下であり、例えば、1.0×105(Pa)以下、9.5×104(Pa)以下、9.0×104(Pa)以下、8.5×104(Pa)以下、8.0×104(Pa)以下、7.5×104(Pa)以下、または7.0×104(Pa)以下であり、かつ1.0×103(Pa)以上、5.0×103(Pa)以上、1.0×104(Pa)以上、または5.0×104(Pa)以上である。好ましくは5.0×103(Pa)~9.0×104(Pa)以下であり、より好ましくは1.0×104(Pa)~8.5×104(Pa)である。
【0094】
第2の粘着剤層を構成する粘着剤としては、上記のような特性を有する限りにおいて任意の適切な粘着剤が用いられ得る。粘着剤としては、代表的には、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が挙げられる。アクリル系粘着剤組成物としては、上記B-4項で説明したとおりである。ただし、第2の粘着剤層を構成する粘着剤は、好ましくはコモノマーとして複素環含有(メタ)アクリレートを含まない。また、粘着剤組成物中のベースポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは2000000以下であり、より好ましくは5000~1600000である。第2の粘着剤層または第2の粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば特開2016-190996号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0095】
第2の粘着剤層の厚みは、好ましくは5μm~300μmであり、より好ましくは10μm~200μmである。第2の粘着剤層の厚みがこのような範囲であれば、特に横方向への振動時に衝撃を緩和し低屈折率層へのダメージを低減させることができ、かつ、画像表示装置組み立て時に発生する構成内の歪を低減させ結果的に画像表示時の輝度ムラを低減させることができる。さらに、上記所望の厚みの比を容易に実現することができる。
【0096】
C.表面処理層
表面処理層は、動摩擦係数が好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.8以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。表面処理層の動摩擦係数は小さいほど好ましく、その下限は例えば0.1であり得る。動摩擦係数がこのような範囲であれば、光学部材の使用時の振動に起因する導光板と反射板との間の摩耗またはキズ、ならびに/あるいは、導光板と筐体との間の摩耗またはキズによる表示品位の低下を抑制することができる。すなわち、最外層として表面処理層を設けて光学部材を滑りやすくすることにより、振動時の摩耗またはキズ(導光板と反射板との間、ならびに/あるいは、導光板と筐体との間)を顕著に抑制することができ、結果として、表示品位(実質的には、画像表示装置の表示品位)の低下を抑制することができる。さらに、このような表面処理層を設けることと上記の第2の粘着剤層の貯蔵弾性率を所定範囲とすることとの相乗的な効果により、振動による低屈折率層の破損を抑制することができる。なお、動摩擦係数は、JIS K 7125の「摩擦係数試験方法」に基づいて測定され得る。
【0097】
表面処理層は、反射板表面に形成可能であり、かつ、上記のような動摩擦係数を有する限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。1つの実施形態においては、表面処理層は、ハードコート層であり得る。ハードコート層は、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上の鉛筆硬度を有する。一方、ハードコート層の鉛筆硬度は、好ましくは6H以下であり、より好ましくは5H以下である。ハードコート層の鉛筆硬度がこのような範囲であれば、振動に起因した摩耗またはキズによる表示品位の低下を抑制しつつ、低屈折率層の破損を抑制することができる。鉛筆硬度は、JIS K 5400の「鉛筆硬度試験」に基づいて測定され得る。
【0098】
ハードコート層の厚みは、好ましくは1μm~30μmであり、より好ましくは2μm~20μmであり、さらに好ましくは3μm~15μmである。ハードコート層の厚みがこのような範囲であれば、摩耗またはキズをさらに良好に抑制することができる。加えて、上記のような硬い鉛筆硬度を有しつつ、干渉縞を抑制することができる。
【0099】
ハードコート層は、上記のような特性を満足する限りにおいて、任意の適切な材料で構成され得る。ハードコート層は、例えば、熱硬化性樹脂または電離放射線(例えば、可視光、紫外線)硬化性樹脂の硬化層である。このような硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のアクリレート、シロキサン等のケイ素樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシが挙げられる。
【0100】
ハードコート層の詳細は、例えば特開2011-237789号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0101】
表面処理層は、1つの実施形態においては、ハードコート層の反射板と反対側の表面にフッ素を含む最外層をさらに有していてもよい。このような最外層を形成することにより、表面処理層の動摩擦係数をさらに小さくすることができる。最外層は、例えば、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を含む塗布液を塗布し、乾燥、固化または焼付硬化することにより形成され得る。最外層の厚みは、好ましくは0.5μm~20.0μmである。
【0102】
D.バックライトユニット
上記A項からC項に記載の光学部材は、バックライトユニット(特に、エッジライト式バックライトユニット)に好適に用いられ得る。したがって、本発明の実施形態は、このようなバックライトユニットも包含する。バックライトユニットは、上記A項からC項に記載の光学部材と、光源と、を有する。光源は、例えばLED光源、有機ELであり得る。光源は、
図1の導光板10の端面10aに対向するように配置されている、
【0103】
E.画像表示装置
上記D項のバックライトユニットは、画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ等)に好適に用いられ得る。したがって、本発明の実施形態は、このような画像表示装置も包含する。画像表示装置は、上記D項に記載のバックライトユニットと、導光板の出射面側に配置された画像表示パネルとを有する。
【実施例】
【0104】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。また、特に明記しない限り、実施例における「%」および「部」は重量基準である。
【0105】
[製造例1]低屈折率層形成用塗工液の調製
(1)ケイ素化合物のゲル化
2.2gのジメチルスルホキシド(DMSO)に、ケイ素化合物の前駆体であるメチルトリメトキシシラン(MTMS)を0.95g溶解させて混合液Aを調製した。この混合液Aに、0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を0.5g添加し、室温で30分撹拌を行うことでMTMSを加水分解して、トリス(ヒドロキシ)メチルシランを含む混合液Bを生成した。
5.5gのDMSOに、28重量%のアンモニア水0.38g、および純水0.2gを添加した後、さらに、上記混合液Bを追添し、室温で15分撹拌することで、トリス(ヒドロキシ)メチルシランのゲル化を行い、ゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを得た。
(2)熟成処理
上記のように調製したゲル状ケイ素化合物を含む混合液Cを、そのまま、40℃で20時間インキュベートして、熟成処理を行った。
(3)粉砕処理
つぎに、上記のように熟成処理したゲル状ケイ素化合物を、スパチュラを用いて数mm~数cmサイズの顆粒状に砕いた。次いで、混合液Cにイソプロピルアルコール(IPA)を40g添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回行うことにより、溶媒置換し、混合液Dを得た。次いで、混合液D中のゲル状ケイ素化合物を粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)した。粉砕処理(高圧メディアレス粉砕)は、ホモジナイザー(エスエムテー社製、商品名「UH-50」)を使用し、5ccのスクリュー瓶に、混合液D中のゲル状化合物1.85gおよびIPAを1.15g秤量した後、50W、20kHzの条件で2分間の粉砕で行った。
この粉砕処理によって、上記混合液D中のゲル状ケイ素化合物が粉砕されたことにより、該混合液D’は、粉砕物のゾル液となった。混合液D’に含まれる粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(日機装社製、UPA-EX150型)にて確認したところ、0.50~0.70であった。さらに、このゾル液(混合液C’)0.75gに対し、光塩基発生剤(和光純薬工業株式会社:商品名WPBG266)の1.5重量%濃度MEK(メチルエチルケトン)溶液を0.062g、ビス(トリメトキシシリル)エタンの5%濃度MEK溶液を0.036gの比率で添加し、低屈折率層形成用塗工液を得た。
【0106】
[製造例2]第1の粘着剤層を構成する粘着剤の調製
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート90.7部、N-アクリロイルモルホリン6部、アクリル酸3部、2-ヒドロキシブチルアクリレート0.3部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル100gと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製のコロネートL、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)0.2部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)0.2部を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成した。得られた粘着剤の貯蔵弾性率は、1.3×105(Pa)であった。
【0107】
[製造例3]第2の粘着剤層を構成する粘着剤の調製
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部、4-ヒドロキシブチルアクリレート1部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマーの溶液を調製した。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(三井武田ケミカル社製のタケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート)0.1部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.1部、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。次いで、上記アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム:三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、MRF38)の片面に塗布し、150℃で3分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に厚さが20μmの粘着剤層を形成した。得られた粘着剤の貯蔵弾性率は、8.2×104(Pa)であった。
【0108】
[製造例4]両面粘着フィルムの作製
製造例1で調製した低屈折率層形成用塗工液を厚さ20μmの基材(アクリルフィルム)に塗工した。塗工層のウェット厚み(乾燥させる前の厚み)は約27μmであった。該塗工層を、温度100℃で1分処理して乾燥し、基材上に低屈折率層(厚み0.9μm)を形成した。得られた低屈折率層の空隙率は56%であり、屈折率は1.15であった。次に、低屈折率層表面に製造例2で調製した粘着剤で構成される第1の粘着剤層(厚み10μm)を形成し、さらに、基材表面に製造例3で調製した粘着剤で構成される第2の粘着剤層(厚み28μm)を形成した。このようにして、第1の粘着剤層(高貯蔵弾性率)/低屈折率層/基材/第2の粘着剤層(低貯蔵弾性率)の構成を有する両面粘着フィルムを作製した。粘着剤層の合計厚みに対する低屈折率層の厚みの比は1.5%であった。なお、低屈折率層の屈折率は以下のようにして測定した。
アクリルフィルムに低屈折率層を形成した後に、50mm×50mmのサイズにカットし、これを粘着層を介してガラス板(厚み:3mm)の表面に貼合した。上記ガラス板の裏面中央部(直径20mm程度)を黒マジックで塗りつぶして、該ガラス板の裏面で反射しないサンプルとした。エリプソメーター(J.A.Woollam Japan社製:VASE)に上記サンプルをセットし、550nmの波長、入射角50~80度の条件で、屈折率を測定した。
【0109】
[製造例5]ハードコート層形成材料の調製
ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマーまたはオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC社製、商品名「ユニディック17-806」、固形分濃度80%)に、その溶液中の固形分100部当たり、光重合開始剤(BASF社製、製品名「IRGACURE906」)を5部、レベリング剤(DIC社製、製品名「GRANDIC PC4100」)を0.03部添加した。その後、上記溶液中の固形分濃度が75%となるように、上記溶液に酢酸ブチルを加えた。さらに、上記溶液中の固形分濃度が50%となるように、上記溶液にシクロペンタノンを加えた。このようにして、ハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を調製した。
【0110】
[実施例1]
反射板(東レ社製、商品名「ルミラー(登録商標)#225 E6SR」)の一方の表面に、製造例5で得られたハードコート層形成材料をダイコーターにより塗工して塗膜を形成した。ハードコート層形成材料は、硬化後の塗膜(ハードコート層)の厚みが7.5μmとなるように、厚み13.8μmに塗工した。この塗膜を80℃で2分間乾燥し、その後、塗膜に高圧水銀ランプを用いて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射することにより、ハードコート層を形成した。ハードコート層の動摩擦係数は0.8であり、鉛筆硬度は2Hであった。反射板のハードコート層が形成されていない表面と製造例4で得られた両面粘着フィルムとを、第2の粘着剤層を介して貼り合わた。さらに、第1の粘着剤層を介して市販の導光板を貼り合わせ、光学部材を作製した。なお、動摩擦係数は、JIS K 7125の「摩擦係数試験方法」に基づいて測定し;鉛筆硬度は、JIS K 5400の「鉛筆硬度試験」に基づいて測定した。
【0111】
(I)キズ試験
光学部材に用いた両面粘着フィルム/反射板の積層体をキズ試験に供した。具体的には以下のとおりである。積層体を50mm×1500mmサイズに切り出し、第1の粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせ、試験サンプルを作製した。次いで、この試験サンプルの反射板(実質的には、ハードコート層)と拡散シート(住友スリーエム社製、商品名「DBEF-D2-400」)とが接触するようにしてトレーに設置し、200回/分×10分の振動試験を行った。振動試験後の反射板について目視によりキズを観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
良好:反射板表面にキズは認められなかった
不良:反射板表面にキズが認められた
【0112】
(II)リワーク性
得られた光学部材を、液晶表示装置の背面側筐体に配置した後取り出し、再び背面側筐体に配置し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
良好:再配置可能であった
不良:再配置できなかった(積層体の破損)
【0113】
[実施例2]
ハードコート層の表面にフッ素を含む最外層としてフッ素コーティング層を形成したこと以外は実施例1と同様にして光学部材を作製した。なお、フッ素コーティング層は、市販のフッ素樹脂コーティングスプレー(太平化成株式会社製、商品名「ジェットプロテクターF-200SI」)を用いて形成した。フッ素コーティング層の厚みは15μm、動摩擦係数は0.4であった。得られた光学部材を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0114】
[比較例1]
ハードコート層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして光学部材を作製した。なお、反射板表面の動摩擦係数は1.1であった。得られた光学部材を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0115】
[比較例2]
比較例1の光学部材の反射板表面を、市販の両面テープを用いて液晶表示装置の背面側筐体に貼り合わせた後剥離し、再び背面側筐体に配置し(貼り合わせ)、実施例1と同様の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、振動によるキズが抑制された光学部材を実現することができる。このような光学部材は、キズや摩耗による表示品位の低下が抑制されることが理解される。さらに、本発明の実施例によれば、振動によっても低屈折率層が破損されないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の光学部材は、画像表示装置(特に、液晶表示装置)のバックライトユニットに好適に用いられ得る。画像表示装置は、車載用途および/またはアミューズメント用途に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0119】
10 導光板
20 両面粘着フィルム
21 第1の粘着剤層
22 低屈折率層
23 第2の粘着剤層
24 基材
30 反射板
40 表面処理層
100 光学部材