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特許7389250無線通信装置、無線通信方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/18 20090101AFI20231121BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20231121BHJP
   H04W 40/30 20090101ALI20231121BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20231121BHJP
   H04L 45/247 20220101ALI20231121BHJP
   H04L 49/201 20220101ALI20231121BHJP
【FI】
H04W28/18 110
H04W84/18
H04W40/30
H04W4/06
H04L45/247
H04L49/201
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022524387
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021017680
(87)【国際公開番号】W WO2021235257
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2020086729
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智也
(72)【発明者】
【氏名】下尾 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小幡 公
(72)【発明者】
【氏名】白石 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大希
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-222659(JP,A)
【文献】特開2017-212714(JP,A)
【文献】特開2009-284291(JP,A)
【文献】特開2016-184890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0194419(US,A1)
【文献】特開2010-135870(JP,A)
【文献】特開2012-217160(JP,A)
【文献】John A. Stine,Node state multicasting in wireless ad hoc networks,MILCOM 2005 - 2005 IEEE Military Communications Conference,IEEE,2006年03月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H04L 45/247
H04L 49/201
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置であって、
前記マルチキャスト通信を制御するネットワーク部と、送信タイミングの制御を行う無線アクセス制御部とを有し、
前記ネットワーク部が、受信時に前記無線アクセス制御部から取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、前記経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、前記ノード品質情報を参照して、前記リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、前記最低値に基づいて変調方式を選択することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
無線アクセス制御部が、受信したMACフレームとその受信品質をネットワーク部に出力し、
前記ネットワーク部が、
マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、前記経路上の受信局及び中継局のノードのIPアドレスを示すリストとしてIPアドレスリストを生成するアドホックマルチキャストルーティング部と、
前記無線アクセス制御部から入力されたMACフレームの受信品質と、前記MACフレームに含まれるMACアドレス及びIPアドレスの組み合わせとを対応付けてノード品質情報として記憶しておくと共に、IPアドレスリストが入力されると、前記ノード品質情報を参照して、前記入力されたIPアドレスリストに含まれるIPアドレスに対応する受信品質の最低値を出力する品質情報管理部と、
マルチキャスト通信の送信時に、前記アドホックマルチキャストルーティング部から、前記マルチキャスト通信のグループに応じて生成されたIPアドレスリストを取得し、前記取得したIPアドレスリストを前記品質情報管理部に出力して、前記品質情報管理部から入力された前記受信品質の最低値に応じて変調方式を選択するマルチキャスト変調方式判別部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
受信品質が、等化誤差又は信号対雑音比であることを特徴とする請求項1又は2記載の通信装置。
【請求項4】
ネットワーク部が、
受信したアドホックメッセージのMACフレームからIPアドレスとMACアドレスとの組み合わせを取得してIPアドレス-MACアドレステーブルを生成するIPアドレス-MACアドレステーブル保持部を備え、
品質情報管理部が、前記IPアドレス-MACアドレステーブルを参照してノード品質情報を生成することを特徴とする請求項2又は3記載の通信装置。
【請求項5】
アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置における通信方法であって、
前記通信装置が、受信時に取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、前記経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、前記ノード品質情報を参照して、前記リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、前記最低値に基づいて変調方式を選択することを特徴とする通信方法。
【請求項6】
アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置において動作するプログラムであって、
前記通信装置を、受信時に取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、前記経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、前記ノード品質情報を参照して、前記リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、前記最低値に基づいて変調方式を選択するよう機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャスト通信を行う無線通信装置、無線通信方法及びプログラムに係り、特にマルチキャスト通信の経路上にあるノードの回線状態に合わせ、それ以外の通信局の影響を除いて変調方式を選択でき、通信誤りを防止して通信品質を確保することができる無線通信装置、無線通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、自律分散アクセスを用いた移動体ネットワークがある。
このような移動体ネットワークでは、移動通信局間で自律的に端末を検知し、自律的に経路の最適化を実施して、その場限りの無線ネットワーク(アドホックネットワーク)を構築する。これにより、遅延量を少なくしながら、回線の負荷を抑止した通信を実現する。
【0003】
回線の負荷を少なくする情報配信の方法として、マルチキャスト通信がしばしば使われる。マルチキャスト通信は、従来の1対1の(ユニキャスト)通信とは異なり、1対多の通信を行う方式である。
ネットワーク上でのマルチキャスト通信では、IP(Internet Protocol)プロトコルを用いたマルチキャスト通信が用いられる。
【0004】
アドホックネットワーク上でのマルチキャスト通信の確立には、アドホックマルチキャストルーティングが用いられる。アドホックマルチキャストルーティングは、例えば、特許第5465328号広報(特許文献1)に記載される方法が用いられる。
【0005】
また、アドホックネットワークは、無線回線であるため、各々の通信においては、対象のデジタルデータをデジタル変調し、周波数変換して、電力増幅を行う。
この時、無線回線は通信相手によって、距離、伝搬環境が異なるため、回線状態の変化に合わせて、最適な変調方式を選択する必要がある。
【0006】
例えば、回線が安定している場合には、「通信誤りが起きやすいものの、1度の搬送波に複数のデジタル情報を伝送できる」変調方式が好ましく、不安定な場合はその逆の方式を採用することが望まれる。
最適な変調方式選択については、例えば、特許第5658954号広報(特許文献2)に記載の方式がある。
これは、再送制御情報等を用いた方式であり、1対1での通信においては有効なものである。
【0007】
[従来の通信装置の構成:図6]
従来のマルチキャスト通信を行う通信装置の構成について図6を用いて説明する。図6は、従来の通信装置の構成ブロック図である。
図6に示すように、従来の通信装置は、ネットワーク部40と、無線アクセス制御部(MAC部)50と、無線信号処理/高周波部60とを備えている。
【0008】
ネットワーク部40は、CPU(Central Processing Unit)であり、アドホックマルチキャストルーティング部41と、フレーム生成/解析部42とを備えている。
アドホックマルチキャストルーティング部41は、アドホックマルチキャスト通信を制御するものであり、ルーティング制御を行ってアドホックネットワークを構築し、アドホックルーティングメッセージ(アドホックメッセージ)を生成する。
また、アドホックマルチキャストルーティング部41は、マルチキャスト通信のグループ毎に、送信エントリと送信先となる子ノードのIPアドレスを対応付けた情報を記憶している。
【0009】
フレーム生成/解析部42は、送信されるIPパケットやアドホックメッセージにMAC(Media Access Control)ヘッダを付して、送信MACフレームを生成して無線アクセス制御部50に出力する。
また、フレーム生成/解析部42は、無線アクセス制御部50から受信MACフレームが入力されると、フレームを解析してIPパケット又はアドホックメッセージを抽出し、IPパケットを適宜各部に出力し、アドホックメッセージをアドホックマルチキャストルーティング部41に出力する。
【0010】
無線アクセス制御部50は、FCS(Frame Check Sequence)/送信タイミング設定部51と、制御フレーム解析部52と、送信タイミング制御部53と、FCS/送信タイミング解析部54と、ユニキャスト変調方式判別部55とを備えている。
【0011】
FCS/送信タイミング設定部51は、入力された送信MACフレームに誤り検出符号を挿入する。
また、FCS/送信タイミング設定部51は、制御フレームを制御フレーム解析部52に出力して、制御フレーム解析部52から指示された送信タイミングを送信タイミング制御部53に設定する。
更に、FCS/送信タイミング設定部51は、ユニキャスト変調方式判別部55から設定された変調方式を、送信MACフレームに付して送信タイミング制御部53に出力する。
【0012】
制御フレーム解析部52は、送信MACフレームの制御フレームを解析して送信タイミングの設定(所定のタイミング、又は回線空き状態)を読み取り、FCS/送信タイミング設定部51に指示する。
【0013】
送信タイミング制御部53は、設定に従って送信タイミングを検出し、送信タイミングになると送信MACフレームを無線信号処理/高周波部60に出力する。
また、FCS/送信タイミング解析部54は、受信MACフレームに対してFCS処理で誤りを検出して誤りがあれば再送要求等所定の処理を行うと共に、送信タイミングの情報を抽出して、MACフレームをネットワーク部40に出力する。
【0014】
ユニキャスト変調方式判別部55は、ユニキャスト通信において最適な変調方式を選択するものである。
ユニキャスト変調方式判別部55は、無線信号処理/高周波部60から通信対象局のMACアドレスが含まれたMACフレームを受信した際の品質情報(等化誤差等)が入力されると、それに基づいて送信元とのユニキャスト通信を行う場合の最適な変調方式を判別(判定)し、FCS/送信タイミング設定部51に設定する。
【0015】
無線信号処理/高周波部60は、無線アクセス制御部50からの送信MACフレームを指定された変調方式で変調して、アップコンバートし、無線送信する。
また、無線信号処理/高周波部60は、無線信号を受信して、ダウンコンバートして復調し、MACフレームを無線アクセス制御部50に出力する。その際、無線信号処理/高周波部60は、受信信号の等化誤差等の通信品質を算出して、無線アクセス制御部50に出力する。
【0016】
[従来のマルチキャスト通信の適応変調:図7]
また、ユニキャスト変調方式判別部55は、マルチキャスト通信においても、通信品質に基づいて適応的に変調方式を選択するようになっていた。
ここで、従来のマルチキャスト通信における適応変調について図7を用いて説明する。図7は、従来のマルチキャスト通信における適応変調を示す説明図である。
【0017】
図7に示すように、ノードA~Fから成るアドホックネットワークにおいて、マルチキャスト通信でノードAからノードC,Fにデータを送信する場合、ノードC,Fは受信ノード、ノードB,Eは中継ノードとなる。
ノードDは中継ノードでも受信ノードでもないものの、無線リンク構築を継続するために、ネットワーク制御用のアドホックルーティングメッセージの送受信を行っている。
【0018】
そして、ノードAにおいて送信時の変調方式を選択する際には、ユニキャスト変調方式判別部55は、隣接する全ノードの中で最も品質が低いノードに合わせて通信品質を選択する。
図7の例では、ノードBとの通信におけるSNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)は12dBであり、ノードEのSNRは16dBであるが、マルチキャスト通信には無関係なノードDのSNRは8.3dBとなっている。
【0019】
そのため、従来の通信装置では、ノードAは、最もSNRが低いノードDに合わせてBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調方式を選択し、BPSKでマルチキャスト通信を行う。
つまり、必要以上に伝送速度の遅い方式を選択することになる。
【0020】
これは、従来の通信装置では、変調方式の選択をL2(データリンク層)である無線アクセス制御部50で行っており、どのノードが中継ノードや受信ノードなのかを判別することができず、エリア内の全てのノードとの通信における通信品質に基づいて処理を行うためである。
【0021】
そして、適切な変調方式が選択されない場合には、無線回線を用いたネットワーク接続や、ネットワーク接続での情報共有等の伝送遅延が発生し、最悪の場合には伝送できなくなるといった著しい通信品質の低下につながる恐れがある。
【0022】
[関連技術]
通信装置に関する従来技術としては、特許第5465328号公報「無線通信装置および無線通信方法」(特許文献1)、特許第5658954号公報「無線通信装置」(特許文献2)がある。
【0023】
特許文献1には、相互に接続された有線ネットワークと無線ネットワークの両方に対応したマルチキャスト送信が可能な無線通信装置が記載されている。
特許文献2には、適応変調符号化方式において、効果的に変調方式及び符号化率を選択することができる無線通信装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】特許第5465328号公報
【文献】特許第5658954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上述したように、従来の通信装置では、L2である無線アクセス制御部で変調方式を選択していたため、マルチキャスト通信の経路上にあって実際に受信待ちを行う通信局が識別できず、制御用の通信やユニキャスト通信を行う通信局も含めた通信品質を反映させていたため、適切な変調方式を選択することが困難であり、通信品質の低下を招く恐れがあるという問題点があった。
【0026】
尚、特許文献1及び2には、マルチキャスト通信において、経路上にある通信局の通信品質を対象とし、それ以外の通信局の影響を除いて適切な変調方式を選択することは記載されていない。
【0027】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、マルチキャスト通信において実際に受信待ちを行う通信局を対象とし、それ以外の通信局の影響を除いて適切な変調方式を選択し、通信品質を確保することができる通信装置、通信方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置であって、マルチキャスト通信を制御するネットワーク部と、送信タイミングの制御を行う無線アクセス制御部とを有し、ネットワーク部が、受信時に無線アクセス制御部から取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、ノード品質情報を参照して、リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、最低値に基づいて変調方式を選択することを特徴としている。
【0029】
また、本発明は、上記通信装置において、無線アクセス制御部が、受信したMACフレームとその受信品質をネットワーク部に出力し、ネットワーク部が、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、経路上の受信局及び中継局のノードのIPアドレスを示すリストとしてIPアドレスリストを生成するアドホックマルチキャストルーティング部と、無線アクセス制御部から入力されたMACフレームの受信品質と、MACフレームに含まれるMACアドレス及びIPアドレスの組み合わせとを対応付けてノード品質情報として記憶しておくと共に、IPアドレスリストが入力されると、ノード品質情報を参照して、入力されたIPアドレスリストに含まれるIPアドレスに対応する受信品質の最低値を出力する品質情報管理部と、マルチキャスト通信の送信時に、アドホックマルチキャストルーティング部から、マルチキャスト通信のグループに応じて生成されたIPアドレスリストを取得し、取得したIPアドレスリストを品質情報管理部に出力して、品質情報管理部から入力された受信品質の最低値に応じて変調方式を選択するマルチキャスト変調方式判別部とを備えたことを特徴としている。
【0030】
また、本発明は、上記通信装置において、受信品質が、等化誤差又は信号対雑音比であることを特徴としている。
【0031】
また、本発明は、上記通信装置において、ネットワーク部が、受信したアドホックメッセージのMACフレームからIPアドレスとMACアドレスとの組み合わせを取得してIPアドレス-MACアドレステーブルを生成するIPアドレス-MACアドレステーブル保持部を備え、品質情報管理部が、IPアドレス-MACアドレステーブルを参照してノード品質情報を生成することを特徴としている。
【0032】
また、本発明は、アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置における通信方法であって、通信装置が、受信時に取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、ノード品質情報を参照して、リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、最低値に基づいて変調方式を選択することを特徴としている。
【0033】
また、本発明は、アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置において動作するプログラムであって、通信装置を、受信時に取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、ノード品質情報を参照して、リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、最低値に基づいて変調方式を選択するよう機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置であって、マルチキャスト通信を制御するネットワーク部と、送信タイミングの制御を行う無線アクセス制御部とを有し、ネットワーク部が、受信時に無線アクセス制御部から取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、ノード品質情報を参照して、リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、最低値に基づいて変調方式を選択する通信装置としているので、マルチキャスト通信経路上の通信局を識別して、実際に経路上にある通信局を対象として適切な変調方式を選択することができ、経路上にない通信局の影響を防ぎ、良好な通信品質を確保することができる効果がある。
【0035】
また、本発明によれば、アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置における通信方法であって、通信装置が、受信時に取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、ノード品質情報を参照して、リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、最低値に基づいて変調方式を選択する通信方法としているので、マルチキャスト通信経路上の通信局を識別して、実際に経路上にある通信局を対象として適切な変調方式を選択することができ、経路上にない通信局の影響を防ぎ、良好な通信品質を確保することができる効果がある。
【0036】
また、本発明によれば、アドホックマルチルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置において動作するプログラムであって、通信装置を、受信時に取得した複数のノードの通信品質をノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、当該マルチキャスト通信のグループに対応する最適な経路を決定して、経路上の受信局及び中継局のノードのリストを生成し、ノード品質情報を参照して、リストに含まれるノードに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、最低値に基づいて変調方式を選択するよう機能させるプログラムとしているので、マルチキャスト通信経路上の通信局を識別して、実際に経路上にある通信局を対象として適切な変調方式を選択することができ、経路上にない通信局の影響を防ぎ、良好な通信品質を確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本通信装置の構成ブロック図である。
図2】本通信装置の動作概要を示す説明図である。
図3】マルチキャストグループ情報の構成を示す説明図である。
図4】本通信装置における周波数選択のシーケンスを示す説明図である。
図5】変調方式選択テーブルの説明図である。
図6】従来の通信装置の構成ブロック図である。
図7】従来のマルチキャスト通信における適応変調を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る通信装置(本通信装置)は、マルチキャスト通信を行う通信装置であって、ネットワーク部において、受信時に、受信品質をノードのIPアドレスに対応してノード品質情報として記憶しておき、マルチキャスト通信の送信時に、ノード品質情報を参照して、当該マルチキャスト通信のグループによって特定される経路上にあるノードのIPアドレスに対応する通信品質の内、品質が最も低い最低値を求め、当該最低値に基づいて変調方式を選択するようにしており、実際のマルチキャスト通信経路上の通信局を対象として適切な変調方式を選択することができ、経路上にない通信局の影響を除外して、良好な通信品質を確保することができるものである。
【0039】
また、本通信方法は、本通信装置における通信方法であり、本プログラムは、本通信装置において動作するプログラムである。
【0040】
[本通信装置の構成:図1]
本通信装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本通信装置の構成ブロック図である。
図1に示すように、本通信装置の基本的な構成は、従来と同様であり、ネットワーク部10と、無線アクセス制御部(MAC部)20と、無線信号処理/高周波部30とを備えている。
無線信号処理/高周波部30は、図6に示した従来の無線信号処理/高周波部60と同等であり、詳細な説明は省略する。
【0041】
従来の通信装置では、マルチキャスト通信における送信時の変調方式の選択をL2である無線アクセス制御部50で行っていたが、本通信装置では、L3であるネットワーク部10で行うようにしている。
これにより、本通信装置では、エリア内にある通信局の中から、経路上にある通信局を識別して、これらの通信局との通信における品質に基づいて適切な変調方式を選択できるものである。
【0042】
[本通信装置の動作概要:図2]
本通信装置の各部について説明する前に、本通信装置の動作概要について図2を用いて説明する。図2は、本通信装置の動作概要を示す説明図である。
図2に示したネットワークは、図7に示したものと同等であり、マルチキャスト通信でノードAからノードC,Fにデータを送信する場合を想定している。ノードA(本通信装置)と各隣接ノード間の通信品質(SNR)は、図7と同等である。
【0043】
ここで、本通信装置(ノードA)では、エリア内のノードの中から、実際のマルチキャスト通信の経路上にあるノードBとノードEを判別して、これらのノードとの通信での通信品質に基づいて変調方式を選択する。
つまり、ノードDは無線リンクを維持するための通信は行っているものの、当該マルチキャスト通信の経路上にはないため、ノードAは、当該マルチキャスト通信の変調方式を決定する際に、ノードDの通信品質は反映されない。即ち、マルチキャスト通信の経路上にあるノードの通信品質に基づいてマルチキャスト通信の変調方式を決定するものである。
【0044】
その結果、SNRの最低値は12dBとなり、ノードAは、当該マルチキャスト通信の送信では、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)を選択する。これにより、図7に示した従来の通信装置で選択されたBPSKに比べて伝送速度を増大させ、スループットの向上や伝送時の低遅延化を図ることができるものである。
本通信装置では、通信品質と変調方式を対応付けた情報(変調方式選択テーブル)に基づいて変調方式を選択する。変調方式選択テーブルについては後述する。
【0045】
尚、プリアンブルはBPSKであるため、ノードDもこれを受信してキャリアセンスを行い、PLCP(Physical Layer Convergence Protocol)フレームに従って送信待機、又は他の通信局が通信を行っているBusy状態で送信待機することにより、信号の衝突を回避することができるものである。
【0046】
[ネットワーク部10]
図1に戻って本通信装置の構成について説明する。
ネットワーク部10は、CPU等の制御部と記憶部とインタフェース部とを備えており、記憶部に記憶されたプログラムを制御部が起動することによって各種機能を実現するものである。
ネットワーク部10は、具体的な機能を実現する各部として、アドホックマルチキャストルーティング部11と、フレーム生成/解析部12と、IPアドレス-MACアドレステーブル保持部13と、品質情報管理部14と、マルチキャスト変調方式判別部15とを備えている。
【0047】
[アドホックマルチキャストルーティング部11]
アドホックマルチキャストルーティング部11は、従来と同様にアドホックマルチキャスト通信のルーティング制御を行うものであり、マルチキャスト通信の送信元IPアドレスと宛先IPアドレス(マルチキャストグループアドレス)と、受信局及び中継局の情報を示す子ノードIPアドレスリストの組み合わせを管理している。
そして、マルチキャスト送信時に、マルチキャストグループに対応する最適な経路を決定して、子ノードIPアドレスリストを生成する。
【0048】
送信元IPアドレスと宛先IPアドレス(マルチキャストグループアドレス)の組み合わせをマルチキャスト参加エントリと称する。
また、マルチキャスト参加エントリと子ノードIPアドレスリストの組み合わせを、マルチキャストグループ情報と称するものとする。
図では1個しか示していないが、アドホックマルチキャストルーティング部11には複数のマルチキャストグループ情報が記憶されていてもよい。マルチキャストグループ情報については後述する。
【0049】
そして、本通信装置のアドホックマルチキャストルーティング部11は、後述するマルチキャスト変調方式判別部15からの要求に基づいて、宛先となるマルチキャストグループに対応する子ノードIPアドレスリストを出力する。
【0050】
[フレーム生成/解析部12]
フレーム生成/解析部12は、従来と同様に、送信すべきIPパケットやアドホックメッセージのMACフレームを生成し、受信したMACフレームからIPパケットやアドホックメッセージを抽出する。
そして、本通信装置の特徴として、フレーム生成/解析部12は、マルチキャスト通信で送信されるIPパケット(マルチキャストパケットと称する)が入力されると、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組み合わせをマルチキャスト変調方式判別部15に出力して、変調方式の指定を受ける。
【0051】
更に、本通信装置のフレーム生成/解析部12は、マルチキャスト変調方式判別部15から指定された変調方式を、送信するMACフレームに付して無線アクセス制御部20に出力する。
【0052】
[IPアドレス-MACアドレステーブル保持部13]
IPアドレス-MACアドレステーブル保持部13は、受信したMACフレームに含まれるアドホックルーティングメッセージから、送信元のIPアドレスとMACアドレスの組み合わせを取得して、IPアドレス-MACアドレステーブルを生成して記憶する。
【0053】
[品質情報管理部14]
品質情報管理部14は、受信したMACフレームに基づいて、ノード毎の通信品質を求めて記憶しておき、マルチキャスト送信時に、宛先となる子ノードの通信品質の内、最低品質の値を出力するものである。
受信品質を取得する際には、アドホックメッセージだけでなくユニキャスト通信を用いてもよい。
【0054】
具体的には、品質情報管理部14は、無線アクセス制御部20から、受信MACフレーム及び通信品質情報(等化誤差等)を入力して、ノード(受信MACフレームにおける送信ノード)毎に、ノードMACアドレスと、それに対応するノードIPアドレスと、等化誤差情報又は等化誤差から算出したSNR情報を組として記憶する。この情報をノード品質情報と称する。
【0055】
ここで、品質情報管理部14は、IPアドレス-MACアドレステーブルを参照して、ノードMACアドレスに対応するノードIPアドレスを特定する。
つまり、品質情報管理部14は、本通信装置でアドホックメッセージの受信が行われる度に、ノード品質情報を蓄積(更新)していく。
ノード品質情報には、マルチキャスト通信で子ノードとなるか否か(マルチキャスト通信の経路上にあるかどうか)に関わらず、当該通信装置と通信を行う全てのノードの通信品質情報が蓄積されるものである。
【0056】
そして、品質情報管理部14は、マルチキャスト変調方式判別部15から子ノードIPアドレスリストが入力されると、ノード品質情報を参照して、入力された子ノードIPアドレスリストに含まれるノードIPアドレスに対応する品質情報(ここではSNR情報とする)を特定する。
更に、品質情報管理部14は、特定された品質情報の中から、最も低い(最も品質が悪い)値を特定し、マルチキャスト変調方式判別部15に出力する。
【0057】
[マルチキャスト変調方式判別部15]
マルチキャスト変調方式判別部15は、マルチキャスト送信時に、宛先又は中継局となる子ノードとの通信品質に応じた適切な変調方式を選択して、フレーム生成/解析部12に指定するものである。
【0058】
具体的には、マルチキャスト変調方式判別部15は、フレーム生成/解析部12から送信元アドレス及び宛先IPアドレスの組み合わせが入力されると、当該送信元アドレス及び宛先IPアドレスに基づいて、アドホックマルチキャストルーティング部11に子ノードIPアドレスリストを要求する。
これにより、マルチキャスト変調方式判別部15は、これから送信するデータの送信先となるグループアドレスに対応した子ノードIPアドレスリストを取得するものである。つまり、子ノードIPアドレスリストに含まれるIPアドレスは、当該マルチキャスト通信の経路上にあるノードのIPアドレスである。
【0059】
更に、マルチキャスト変調方式判別部15は、取得した子ノードIPアドレスリストを品質情報管理部14に出力し、それに対応する品質情報の最低値を取得する。
そして、品質情報の最低値に基づいて、内部に記憶している変調方式選択テーブルを参照して、変調方式を選択し、フレーム生成/解析部12に出力する。
【0060】
また、ここでは図示は省略するが、本通信装置のネットワーク部10では、マルチキャスト通信に限らず、ユニキャスト通信時にも同様に変調方式を選択することが可能である。
この場合、ユニキャスト通信時に、フレーム生成/解析部12が、マルチキャスト変調方式判別部15に、アドホックメッセージから抽出した送信元IPアドレスと宛先MACアドレスを出力する。
【0061】
マルチキャスト変調方式判別部15は、当該宛先MACアドレスを付して品質情報管理部14に変調方式を問い合わせ、品質情報管理部14が当該宛先MACアドレスに対応する品質情報をマルチキャスト変調方式判別部15に出力する。
マルチキャスト変調方式判別部15では、入力された品質情報に基づいて変調方式を特定し、フレーム生成/解析部12に出力する。
このようにして、ユニキャスト通信における変調方式も通信品質に基づいて適切に選択できるものである。
【0062】
本通信装置では、無線アクセス制御部20の構成は従来と同様であるが、ネットワーク部10から入力されるMACフレームは既に変調方式が指定されているため、ユニキャスト変調方式判別部25で選択された変調方式は採用されないように設定されている。
【0063】
[マルチキャストグループ情報:図3]
ここで、マルチキャストグループ情報の構成について図3を用いて説明する。図3は、マルチキャストグループ情報の構成を示す説明図である。
図3に示すように、マルチキャストグループ情報は、送信元(自装置)IPアドレス71と、宛先IPアドレス72と、複数の子ノードIPアドレス73-1~73-nが連結された構成である。
【0064】
宛先IPアドレスは、マルチキャスト通信のグループを特定するグループアドレスであり、当該グループに属する受信ノードが特定されるものである。そして、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組み合わせがマルチキャスト参加エントリとなっている。
子ノードIPアドレスリストは、複数の子ノードIPアドレス73-1~73-2が連結されたリストである。当該マルチキャスト通信においては、これらの複数の子ノードを通る適切な経路が決定されるため、複数の子ノードアドレスは当該経路上にあり、当該装置からの送信信号を待ち受ける受信局又は中継局となる子ノードのアドレスである。
【0065】
[本通信装置におけるシーケンス:図4]
次に、本通信装置における周波数選択のシーケンスについて図4を用いて説明する。図4は、本通信装置における周波数選択のシーケンスを示す説明図である。
図4に示すように、受信された高周波信号が無線信号処理/高周波部30に入力されると(S11)、無線信号処理/高周波部30は、ベースバンド信号にダウンコンバートして復調し、MACフレームを無線アクセス制御部20に出力する(S12)。
また、その際に無線信号処理/高周波部30は、等化誤差等の品質情報を算出して、品質情報を無線アクセス制御部20に出力する(S13)。
【0066】
無線アクセス制御部20は、MACフレームをネットワーク部10のフレーム生成/解析部12に出力する(S14)。
更に、本通信装置の特徴として、無線アクセス制御部20は、MACフレームをIPアドレス-MACアドレステーブル保持部13及び品質情報管理部14に出力し(S15,S16)、等化誤差等の品質情報を品質情報管理部14に出力する(S17)。
【0067】
フレーム生成/解析部12は、MACフレームを解析してアドホックメッセージをアドホックマルチキャストルーティング部11に出力し、IPパケットを表示処理部、音声出力部等に適宜出力する(S18)。
【0068】
IPアドレス-MACアドレステーブル保持部13は、入力されたMACフレームのアドホックメッセージからIPアドレスとMACアドレスの対応情報を取得して、IPアドレス-MACアドレステーブルに登録する。
【0069】
また、品質情報管理部14は、入力された等化誤差等の品質情報からSNRを算出し、共に入力されたMACフレームに含まれるMACアドレス及びアドホックメッセージに含まれるIPアドレスを組み合わせて、ノード品質情報として記憶する。
品質情報管理部14は、本通信装置で受信が行われる度にこの処理を行って、ノード品質情報を蓄積、更新していく。同一ノードから複数回受信した場合には、最新の値が記憶される。
【0070】
一方、送信時には、フレーム生成/解析部12にマルチキャスト通信のIPパケットが入力されると(S21)、フレーム生成/解析部12は、当該マルチキャストグループに対応する宛先IPアドレス(マルチキャストグループアドレス)を抽出し、送信元アドレス・宛先IPアドレスをマルチキャスト変調方式判別部15に出力する(S22)。
【0071】
マルチキャスト変調方式判別部15は、送信元アドレス・宛先IPアドレスをアドホックマルチキャストルーティング部11に出力して、当該マルチキャスト通信で、自装置からの送信を待ち受けるノードを特定するマルチキャスト受信子ノードIPアドレスリスト(子ノードIPアドレスリスト)を要求する(S23)。
そして、マルチキャスト変調方式判別部15は、アドホックマルチキャストルーティング部11から子ノードIPアドレスリストを受け取って(S24)、品質情報管理部14に子ノードIPアドレスリストを送出する(S25)。
【0072】
品質情報管理部14は、記憶しているノード品質情報から、入力された子ノードIPアドレスリストに含まれるIPアドレスに対応した品質情報(SNR)を読み出し、その中で最小のSNR値をマルチキャスト変調方式判別部15に出力する(S26)。
【0073】
最小のSNR値を受け取ったマルチキャスト変調方式判別部15は、変調方式選択テーブルを参照して、当該SNR値に対応する変調方式を選択して、フレーム生成/解析部12に出力する(S27)。
【0074】
フレーム生成/解析部12は、送信するマルチキャストパケットのMACフレームを無線アクセス制御部20に出力する(S28)と共に、当該MACフレームの変調方式を指定する情報を無線アクセス制御部20に出力する(S29)。
【0075】
無線アクセス制御部20は、所定の送信タイミングになると、当該MACフレーム及び変調方式の情報を無線信号処理/高周波部30に出力し(S31,S32)、無線信号処理/高周波部30が、指定された変調方式で変調し、高周波信号に変換して無線出力する(S32)。
このようにして本通信装置におけるシーケンスが行われるものである。
【0076】
[変調方式選択テーブル:図5]
次に、マルチキャスト変調方式判別部15に記憶されている変調方式選択テーブルについて図5を用いて説明する。図5は、変調方式選択テーブルの説明図である。
図5に示すように、変調方式選択テーブルでは、項番ごとに、選択される変調方式と、それに対応するSNRのしきい値が記憶されている。
品質情報管理部14から入力されたSNR値(最小値)が、各しきい値未満の場合に、対応する変調方式が選択される。
【0077】
例えば、SNR値(最小値)が10dB未満であればBPSKが選択され、10dB以上14dB未満であれば、QPSKが選択される。また、SNR値が14dB以上20dB未満であれば16QAMが選択され、20dB以上26dB未満であれば64QAMが選択される。
【0078】
[実施の形態の効果]
本通信装置、本通信方法及び本プログラムによれば、アドホックマルチキャストルーティングプロトコルを用いてネットワークを構築し、マルチキャスト通信を行う通信装置において、ネットワーク部10において、IPアドレス-MACアドレステーブル保持部13が、アドホックルーティングメッセージの受信MACフレームからIPアドレスとMACアドレスの組み合わせを抽出して記憶しておくと共に、品質情報管理部14が、受信時の通信品質をIPアドレスに対応してノード通信品質として記憶しておき、マルチキャスト変調方式判別部15が、マルチキャスト通信の送信時に、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの組み合わせに対応する中継ノード及び受信ノードである子ノードIPアドレスリストを品質情報管理部14に出力し、品質情報管理部14が、入力されたIPアドレスリストに対応する通信品質の最低値をマルチキャスト変調方式判別部15に出力し、マルチキャスト変調方式判別部15が、当該通信品質の最低値に対応する変調方式を選択する通信装置、通信方法及びプログラムとしているので、実際のマルチキャスト通信経路上の通信局を対象として適切な変調方式を選択することができ、経路上にない通信局の影響を除外して、良好な通信品質を確保することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、マルチキャスト通信の経路上にあるノードの回線状態に合わせ、それ以外の通信局の影響を除いて変調方式を選択でき、通信誤りを防止して通信品質を確保することができる無線通信装置、無線通信方法及びプログラムに適している。この出願は、2020年5月18日に出願された日本出願特願2020-086729を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【符号の説明】
【0080】
10,40…ネットワーク部、 11,41…アドホックマルチキャストルーティング部、 12,42…フレーム生成/解析部、 13…IPアドレス-MACアドレステーブル保持部、 14…品質情報管理部、 15…マルチキャスト変調方式判別部、 20,50…無線アクセス制御部、 21,51…FCS/送信タイミング設定部、 22,52…制御フレーム解析部、 23,53…送信タイミング制御部、 24,54…FCS/送信タイミング解析部、 25,55…ユニキャスト変調方式判別部、 30,60…無線信号処理/高周波部、 71…送信元IPアドレス、 72…宛先IPアドレス、
73-1~73-n…子ノードIPアドレス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7