(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/72 20060101AFI20231121BHJP
H02P 3/18 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H02M7/72
H02P3/18
(21)【出願番号】P 2022559285
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2021040173
(87)【国際公開番号】W WO2022092304
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/041111
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史宏
(72)【発明者】
【氏名】田邉 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】高田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松元 大輔
(72)【発明者】
【氏名】八木原 茂俊
(72)【発明者】
【氏名】平賀 正宏
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-214781(JP,A)
【文献】特開2008-252966(JP,A)
【文献】特開平03-060390(JP,A)
【文献】特開平03-098472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/72
H02P 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を入力し交流電力を出力する電力変換装置であって、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流部と、
前記直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、
前記直流電圧を入力し交流電力を出力するインバータ部と、
前記インバータ部にゲート信号を出力するインバータ駆動部と、
前記平滑コンデンサに並列に接続される回生制動部と、
前記回生制動部にゲート信号を出力する回生制動駆動部と、
前記インバータ駆動部と前記回生制動駆動部に駆動信号を出力する制御部と、
前記回生制動部に流れる電流が判定値を超過した場合に過電流検出信号を出力する回生制動過電流検出部と、
前記回生制動過電流検出部から出力される過電流検出信号を入力し前記制御部にゲート出力遮断信号を出力するラッチ部を備え、
前記回生制動過電流検出部が過電流を検出した場合に前記インバータ部と前記回生制動部のスイッチング素子がオフ状態で停止することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記回生制動駆動部は、前記制御部から駆動信号を入力する回生制動バッファ部と、前記回生制動部にゲート信号を出力する回生制動ゲートドライブ部を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記ラッチ部は、前記回生制動過電流検出部が過電流を検出した場合に、前記回生制動駆動部から出力されるゲート信号が、前記回生制動部のスイッチング素子がオフ状態で停止する様に、前記回生制動バッファ部にゲート出力遮断信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記インバータ部に流れる電流が判定値を超過した場合に過電流検出信号を出力するインバータ過電流検出部を備え、
前記ラッチ部は、前記回生制動過電流検出部と前記インバータ過電流検出部から出力される過電流検出信号を入力し、前記制御部にゲート出力遮断信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記回生制動駆動部は、前記制御部から駆動信号を入力する回生制動バッファ部と、前記回生制動部にゲート信号を出力する回生制動ゲートドライブ部を備え、
前記インバータ駆動部は、前記制御部から駆動信号を入力するインバータバッファ部と、前記インバータ部にゲート信号を出力するインバータゲートドライブ部を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記ラッチ部は、前記回生制動過電流検出部もしくは前記インバータ過電流検出部が過電流を検出した場合に、前記回生制動駆動部と前記インバータ駆動部から出力されるゲート信号が、前記回生制動部と前記インバータ駆動部のスイッチング素子がオフ状態で停止する様に、前記回生制動バッファ部と前記インバータバッファ部にゲート出力遮断信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記ラッチ部は論理回路とラッチ回路で構成されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力変換装置であって、
前記論理回路は、前記回生制動過電流検出部と前記インバータ過電流検出部から出力される過電流検出信号を入力し、前記回生制動過電流検出部もしくは前記インバータ過電流検出部が過電流を検出した場合に過電流検出信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記論理回路から出力された過電流検出信号が入力された場合に、前記回生制動駆動部と前記インバータ駆動部から出力されるゲート信号が、前記回生制動部と前記インバータ部のスイッチング素子がオフ状態で停止する様にゲート出力遮断信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電力変換装置であって、
前記ラッチ回路は、前記回生制動過電流検出部と前記インバータ過電流検出部から出力される過電流検出信号を入力し、前記回生制動過電流検出部もしくは前記インバータ過電流検出部が過電流を検出した場合にゲート出力遮断信号を出力し、
前記論理回路は、前記ラッチ回路から出力されたゲート出力遮断信号が入力された場合に、前記回生制動駆動部と前記インバータ駆動部から出力されるゲート信号が、前記回生制動部と前記インバータ部のスイッチング素子がオフ状態で停止する様にゲート出力遮断信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記ラッチ部はフリップフロップ回路を含み、前記制御部から出力されるリセット信号を受信することでラッチ停止状態を解除することを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記過電流検出信号は前記回生制動過電流検出部が過電流を検出してから所定の時間経過後に出力を停止することを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
交流電圧を入力し交流電力を出力する電力変換装置であって、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流部と、
前記直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、
前記直流電圧を入力し交流電力を出力するインバータ部と、
前記平滑コンデンサに並列に接続される回生制動部と、
前記回生制動部に流れる電流が判定値を超過した場合に過電流検出信号を出力する回生制動過電流検出部
と、
前記回生制動過電流検出部が過電流を検出した場合に前記インバータ部と前記回生制動部のスイッチング素子がオフ状態で停止するように制御する制御回路を備え、
前記回生制動部を構成するスイッチング素子が内蔵された半導体パッケージの外部の、前記スイッチング素子のコレクタ端子またはドレイン端子と前記直流電圧の負電圧側の間に、電流経路を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
交流電圧を入力し交流電力を出力する電力変換装置であって、
交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流部と、
前記直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、
前記直流電圧を入力し交流電力を出力するインバータ部と、
前記平滑コンデンサに並列に接続される回生制動部と、
前記回生制動部に流れる電流が判定値を超過した場合に過電流検出信号を出力する回生制動過電流検出部
と、
前記回生制動過電流検出部が過電流を検出した場合に前記インバータ部と前記回生制動部のスイッチング素子がオフ状態で停止するように制御する制御回路を備え、
前記回生制動部を構成するスイッチング素子が内蔵された半導体パッケージの外部の、前記スイッチング素子のコレクタ端子またはドレイン端子と前記直流電圧の高電圧側の間に、電流経路を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電力変換装置であって、
前記電流経路はダイオードまたは抵抗を含むことを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項12または13に記載の電力変換装置であって、
前記電流経路の抵抗値は、前記スイッチング素子がオフ状態の抵抗値より低いことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに交流電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動用の電力変換装置は一般的に、交流電圧を直流電圧に変換する整流部、直流電圧を平滑する平滑コンデンサ、直流電圧を逆変換するインバータ部で構成される。インバータ部は、力行動作時には直流電圧をモータ駆動のための交流電力に変換してモータへ供給し、回生動作時にはモータで回生された交流電力を直流電力に変換して平滑コンデンサへ供給する。従って、モータの回生動作時には、回生エネルギーがインバータ回路を介して平滑コンデンサを充電するため、直流電圧が上昇する。
【0003】
モータの回生動作時に直流電圧が平滑コンデンサの耐圧を超過することを防ぐために、平滑コンデンサに対して並列に制動抵抗とスイッチング素子の直列体で構成された回生制動部を配置し、直流電圧が所定の電圧を超過した場合に回生制動部のスイッチング素子を駆動させ、制動抵抗で回生エネルギーを消費させる手法が一般的に知られている。制動抵抗の抵抗値や定格電力、スイッチング素子の許容電流は、消費させる回生エネルギーの量に依存するため、機器によって適切な物を選定する必要がある。
【0004】
ここで、制動抵抗に本来必要な値よりも低い抵抗値の物を接続した場合や、制動抵抗の両端を誤って短絡させた場合、スイッチング素子に想定よりも大きな電流が流れ、スイッチング素子が破壊に至る懸念がある。また、制動抵抗に本来必要な値よりも低い定格電力の物を接続した場合、制動抵抗が焼損に至る懸念がある。そのため、モータ駆動用の電力変換装置は、信頼性を向上させるために回生制動部に過電流保護回路を備えることが望ましい。
【0005】
本技術分野における先行技術文献として特許文献1がある。特許文献1には、制動抵抗及びスイッチング素子に直列に電流遮断手段を設け、過電流を検出したときに制動抵抗に流れる電流を遮断する保護機構を備えた電力変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、制動抵抗に直列にサーマルリレー付きコンタクタを接続し、過電流によりサーマルリレーがトリップするとコンタクタがオフ状態となり、制動抵抗の焼損が防止される。しかしながら、制動抵抗が過電流を検出した際のインバータ部の動作には言及しておらず、サーマルリレーがトリップした際に、本来の目的である直流電圧の上昇が抑制されないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、電力変換装置であって、交流電圧を整流し直流電圧を出力する整流部と、直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、直流電圧を入力し交流電力を出力するインバータ部と、インバータ部にゲート信号を出力するインバータ駆動部と、平滑コンデンサに並列に接続される回生制動部と、回生制動部にゲート信号を出力する回生制動駆動部と、インバータ駆動部と回生制動駆動部に駆動信号を出力する制御部と、回生制動部に流れる電流が判定値を超過した場合に過電流検出信号を出力する回生制動過電流検出部と、回生制動過電流検出部から出力される過電流検出信号を入力し制御部にゲート出力遮断信号を出力するラッチ部を備え、回生制動過電流検出部が過電流を検出した場合にインバータ部と回生制動部のスイッチング素子がオフ状態で停止するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制動抵抗及び回生制動部のスイッチング素子の破壊を防ぎつつ、直流電圧の上昇を抑制できる電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における電力変換装置の構成図である。
【
図2】実施例1における電力変換装置の動作例を説明する図である。
【
図3】実施例1における回生制動過電流検出部の具体例を示す構成図である。
【
図4】実施例1における回生制動過電流検出部の具体例を示す構成図である。
【
図5】実施例1における回生制動駆動部の具体例を示す構成図である。
【
図6】実施例1における回生制動駆動部の具体例を示す構成図である。
【
図7】実施例2における電力変換装置の構成図である。
【
図8】実施例2におけるラッチ部、回生制動駆動部、インバータ駆動部の具体例を示す構成図である。
【
図9】実施例2における電力変換装置の動作例を説明する図である。
【
図10】実施例2におけるインバータ過電流検出部の具体例を示す構成図である。
【
図11】実施例2におけるインバータ過電流検出部の具体例を示す構成図である。
【
図12】実施例3における電力変換装置の構成図である。
【
図13】実施例3におけるラッチ部の具体例を示す構成図である。
【
図14】実施例3における電力変換装置の動作例を説明する図である。
【
図15】実施例4における電力変換装置の構成図である。
【
図16】実施例4における電力変換装置の構成図である。
【
図17】実施例4における突入電流制限部、電流経路の具体例を示す構成図である。
【
図18】実施例4における突入電流制限部、電流経路の具体例を示す構成図である。
【
図19】実施例4における電力変換装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本実施例における電力変換装置1の構成図である。
図1において、電力変換装置1は、交流電圧を入力し直流電圧を出力する整流部101と、直流電圧を平滑する平滑コンデンサ106と、整流部101が出力する直流電圧の値を検出する電圧検出部102と、電圧検出部102で検出された電圧値が所定の値を超過した場合に直流電圧の上昇を抑制させる様に動作する回生制動部103と、回生制動部103にゲート信号VGBを出力する回生制動駆動部212と、回生制動部103に流れる電流が判定値を超過した場合に過電流検出信号SCBを出力する回生制動過電流検出部211を備える。さらに、電力変換装置1は、直流電圧を交流電力に変換するインバータ部104と、インバータ部104にゲート信号VGIを出力するインバータ駆動部202と、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に駆動信号GB、GIを出力する制御部231と、回生制動過電流検出部211が過電流検出信号SCBを出力した場合に回生制動駆動部212、インバータ駆動部202、制御部231に、ゲート出力遮断信号GSを出力するラッチ部221を備える。
【0013】
整流部101は少なくとも6つのダイオードで構成され、入力端子R、S、Tから入力される交流電圧を直流電圧に変換し、平滑コンデンサ106の両電極に出力する。整流部101のダイオードの整流作用によりノードP側の直流電圧配線に正電圧、ノードN側の直流電圧配線に負電圧とした直流電圧が発生する。平滑コンデンサ106はノードPとノードNにおいて直流電圧配線に接続し、配線間の電圧を平滑化する。
【0014】
インバータ部104は、スイッチング素子1041~1046で構成される。モータを力行運転する場合には、平滑コンデンサ106の直流電圧を交流電力に変換しモータに出力し、モータを回生運転する場合には、モータからの回生エネルギーを平滑コンデンサに充電する様にスイッチング素子1041~1046が動作する。尚、
図1に示すスイッチング素子は代表例としてIGBTの回路記号を適用しているが、MOSFET等別のパワー半導体を適用することも可能である。
【0015】
回生制動部103は、スイッチング素子1031、制動抵抗105、ダイオード1032で構成される。回生制動部103は、電圧検出部102で検出された直流電圧値が所定の値より高くなった時にスイッチング素子1031を駆動させ、制動抵抗105でエネルギーを消費させ、直流電圧の上昇を抑制する。従って制動抵抗105は、インバータ部104の制動トルクをアップさせ、高頻度にインバータ部104がオンオフを繰り返す場合や、大きな負荷慣性モーメントのモータを減速させる場合等、回生エネルギーが比較的大きい条件で接続される。
【0016】
回生制動駆動部212は、バッファ部214、ゲートドライブ部213で構成され、制御部231が出力する駆動信号GBを受け、回生制動部103にゲート信号VGBを出力する。
【0017】
また、インバータ駆動部202も同様に、バッファ部204、ゲートドライブ部203で構成され、制御部231が出力する駆動信号GIを受け、インバータ部104にゲート信号VGIを出力する。
【0018】
回生制動過電流検出部211は、制動抵抗105の抵抗値が指定の値より低いものを接続した、誤接続により
図1に示すノードP-RB間が短絡した、等の要因により回生制動部103に流れる電流が判定値を超過した場合に、ラッチ部221に過電流検出信号SCBを出力する。
【0019】
ラッチ部221は、フリップフロップ等で構成され、回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合、バッファ部214、204の制御入力端子に、ゲート出力遮断信号GSを出力する。バッファ部214、204は、ゲート出力遮断信号GSを受信した場合、制御部231から出力された駆動信号GB、GIに関わらず、ゲート信号VGB、VGIの出力を、回生制動部103とインバータ部104のスイッチング素子をオフ状態で停止させる様に遷移させる。これにより、回生制動部103に過電流が流れた場合に、ゲート出力遮断動作が実現する。
【0020】
ラッチ部221は、制御部231からリセット信号RSTを受信することで停止を解除し、制御部231から出力される駆動信号GB、GIに基づき回生制動駆動部212、インバータ駆動部202はゲート信号VGB、VGIを出力し、回生制動部103とインバータ部104の駆動を再開する。
【0021】
制御部231は、ラッチ部221のゲート出力遮断信号GSを受信した場合、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202への駆動信号GB、GIの出力を、回生制動部103とインバータ部104のスイッチング素子をオフ状態で停止させる様に遷移させる。これにより、回生制動部103に過電流が流れた場合に、先に述べたバッファ部214、204によるゲート出力遮断に加え、二重に保護系を構築することが可能となる。
【0022】
図2を用いて本実施例における電力変換装置の動作例を説明する。
図2は、駆動信号GB、GI、ゲート信号VGB、VGI、過電流検出信号SCB、ゲート出力遮断信号GS、リセット信号RSTをそれぞれ示し、時間方向にStage1、Stage2、Stage3で推移する様子を示している。
【0023】
図2において、Stage1では、制御部231から駆動信号GB、GIが回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に出力されており、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202は制御部231からの駆動信号GB、GIを受けて、回生制動部103、インバータ部104にゲート信号VGB、VGIを出力している。
【0024】
回生制動部103の動作中に、回生制動過電流検出部211が過電流を検出すると、回生制動過電流検出部211は過電流検出信号SCBを出力し(SCB:L→H)Stage2に移行する。ラッチ部221は過電流検出信号SCBの遷移を受けて、ゲート出力遮断信号GSを出力し(GS:L→H)、その状態をラッチする。回生制動駆動部212、インバータ駆動部202は、ゲート出力遮断信号GSがH状態の間は、ゲート信号VGB、VGIの出力を停止する様に構成される。また、制御部231は、ゲート出力遮断信号GSがH状態の間は、駆動信号GB、GIの出力を停止する様に構成される。回生制動部103の動作を停止し回生制動部103の電流を遮断することで、回生制動過電流検出部211は過電流検出信号SCBの出力を停止(SCB:H→L)する。
【0025】
回生制動部103の過電流による故障等、動作上問題が無いことを確認した場合、制御部231がリセット信号RSTを出力し(RST:L→H)、Stage3に移行する。ラッチ部221は、リセット信号RSTの立ち上がりを受けてゲート出力遮断信号GSのラッチを解除し(GS:H→L)、制御部231は、ゲート出力遮断信号GSの立ち下がりを受けて駆動信号GB、GIを回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に出力し、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202はゲート信号VGB、VGIの出力を再開する。
【0026】
尚、
図2に示す信号は一例であり、論理は問わない。例えば、本実施例ではリセット信号RSTにワンショットパルスを入力し、立ち上がりでラッチ部221のラッチ停止を解除する動作について述べたが、立ち下がりでラッチ解除する等、図示した方式以外の方法も可能である。
【0027】
図3、
図4に、本実施例における回生制動過電流検出部211の具体例を示す。
図3は、回生制動部103のスイッチング素子1031のエミッタ側に電流検出抵抗2111を配置し、電流検出抵抗2111の電圧(Vs)が閾値電圧Vthを超過した場合に、コンパレータが過電流検出信号SCBを出力する方式である。また、
図4は、回生制動部103のスイッチング素子1031のコレクタ端子にダイオード2112を、ゲート端子に抵抗2113をそれぞれ図示される様に接続して、回生制動部103のスイッチング素子1031がオン状態(VGB:H)におけるエミッタ-コレクタ間電圧Vceを検出し、Vceが閾値電圧Vthを超過した場合にコンパレータが過電流検出信号SCBを出力する方式である。これらは一般的に用いられている方式であり、前者は構成が簡素である点、後者は電力損失が小さい点が利点である。
【0028】
図5、
図6に、本実施例におけるバッファ部214の具体例を示す。尚、
図5、
図6に示す構成は一例であり論理は問わないが、本説明では先に述べた
図2に示す動作を参照する。
図5は、バッファ部214に3ステートバッファを配置する方式であり、
図6は、バッファ部214にANDゲートとNOTゲートを図示される様に配置する方式である。いずれの方式も、ラッチ部221から出力されるゲート出力遮断信号GSがHの状態では、駆動信号GBによらずバッファ部214の出力はLとなり、ゲートドライブ部213を、入力がL状態で回生制動部103のスイッチング素子がオフ状態で停止させる様に構成することで、所望の動作が実現する。
【0029】
以上述べた様に本実施例では、回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合に、回生制動部103とインバータ部104のスイッチング素子をオフ状態で停止させる。これにより、回生制動部103で過電流が発生した場合に、回生制動部103のスイッチング素子の破壊を防ぎ、且つインバータ部104からの回生エネルギーを遮断し直流電圧の上昇を抑制できる。
【0030】
尚、本実施例ではバッファ部214によるゲート出力遮断、制御部231からの駆動信号GB、GIの出力停止の2種類について述べたが、これはいずれか一方が故障或いは誤動作等の要因により動作しなかった場合にも、回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合に、確実に回生制動部103とインバータ部104のスイッチング素子がオフ状態で停止する動作を想定したためである。従って、電力変換装置1の保護の程度によっては、いずれか一方のみでも構わない。
【0031】
また、回生制動過電流検出部211は、
図3、
図4に示す構成を備えていれば接続箇所を問わない。例えば、
図3、
図4に示す回路を外付けの部品により配線しても良いし、
図3、
図4に示す機能の一部または全てを内蔵したゲートドライバを回生制動駆動部212に適用してもよい。ここで、
図3、
図4に示す機能の一部または全てを内蔵したゲートドライバを回生制動駆動部212に適用した場合、
図3、
図4に示す過電流検出信号SCBはゲートドライバ内部に存在する可能性がある。その場合は、回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合にゲートドライバから出力されるエラー信号等、過電流検出と同期した別の信号を過電流検出信号SCBに代替することで、本実施例で述べた動作と同様の動作が実現する。
【0032】
また、過電流検出信号SCBは、回生制動過電流検出部211が過電流を検出してから所定の時間経過後に出力を停止する自己復帰型としてもよい。
【0033】
また、回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合に、回生制動部103とインバータ部104のスイッチング素子がオフ状態で停止する動作が実現できる構成であれば、バッファ部214、204は接続箇所を問わない。一例として、バッファ部214の機能を内蔵し、外部から制御信号をイネーブル端子等の制御端子に入力するとゲート出力を遮断するゲートドライバを回生制動駆動部212とインバータ駆動部202に適用し、ラッチ部221からの制御信号をゲートドライバの制御端子に入力しても良い。また、アウトプットイネーブル等の機能によりバッファ部214の機能を内蔵し、制御信号を所定の端子に入力すると駆動信号の出力を停止させることが可能なマイクロコンピュータを制御部231に適用し、ラッチ部221からの制御信号を制御部231の当該端子に入力しても良い。
【0034】
このように、本実施例によれば、制動抵抗の過電流を検出した場合に回生制動部のスイッチング素子とインバータ部のスイッチング素子がそれぞれオフ状態で停止するため、制動抵抗及び回生制動部のスイッチング素子の破壊を防ぎつつ、直流電圧の上昇を抑制でき、電力変換装置の信頼性向上を図ることが出来る。
【実施例2】
【0035】
図7は、本実施例における電力変換装置2の構成図である。
図7において、
図1と同じ構成については同じ符号を付し、その説明は省略する。
図7において、
図1と異なる点は、インバータ部104に流れる電流が判定値を超過した場合に過電流検出信号SCIを出力するインバータ過電流検出部201が追加されている点である。また、ラッチ部221は回生制動過電流検出部211もしくはインバータ過電流検出部201が過電流を検出した場合に制御部231、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202にゲート出力遮断信号GSを出力する。
【0036】
すなわち、インバータ過電流検出部201は、インバータ部104に流れる電流が判定値を超過した場合に、ラッチ部221に過電流検出信号SCIを出力する。また、実施例1と同様に、回生制動過電流検出部211は、回生制動部103に流れる電流が判定値を超過した場合に、ラッチ部221に過電流検出信号SCBを出力する。
【0037】
ラッチ部221は、回生制動過電流検出部211もしくはインバータ過電流検出部201から過電流検出信号SCB、SCIを受けた場合、バッファ部214、204の制御入力端子に、ゲート出力遮断信号GSを出力する。
【0038】
図8に、本実施例におけるラッチ部221、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202の具体例を示す。尚、
図8に示す構成は一例であり、論理は問わない。また、
図8における回生制動駆動部212、インバータ駆動部202のバッファ部は、代表例として
図5に示すバッファ部の構成としている。
【0039】
図8において、ラッチ部221は、論理回路222、ラッチ回路223で構成されている。尚、本実施例では論理回路222をORゲートとして動作を説明する。回生制動過電流検出部211及びインバータ過電流検出部201は、通常時にLを出力、過電流時にHを出力する様に構成され、各過電流検出部の出力は論理回路222に入力される。従って、論理回路222は通常時にLを出力し、回生制動過電流検出部211もしくはインバータ過電流検出部201がHを出力した場合に、ラッチ回路223にHを出力する。ラッチ回路223は、論理回路222からHを入力した場合に、ゲート出力遮断信号GSを回生制動駆動部212、インバータ駆動部202、制御部231に出力する。また、ラッチ回路223は、制御部231からリセット信号RSTを受信することでラッチを解除し、制御部231から出力される駆動信号GB、GIに基づき回生制動部103、インバータ部104の駆動を再開する。
【0040】
また、
図8において、インバータ駆動部202は、バッファ部204とゲートドライブ部203で構成され、バッファ部204は
図5に示すバッファ部214と同様の構成のバッファ部が6つで構成されており、ゲートドライブ部203も
図5に示すゲートドライブ部213と同様の構成のゲートドライブ部が6つで構成されている。そして、制御部231が出力する6本の駆動信号GIを受け、インバータ部104に6本のゲート信号VGIを出力する。
【0041】
図9を用いて、本実施例における電力変換装置の回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合の動作を説明する。
図9は、駆動信号GB、GI、ゲート信号VGB、VGI、過電流検出信号SCB、論理回路222の出力信号(FO)、ゲート出力遮断信号GS、リセット信号RSTをそれぞれ示し、時間方向にStage1、Stage2、Stage3で推移する様子を示している。尚、
図9に示す信号は一例であり、論理は問わない。
【0042】
図9において、Stage1では、制御部231から駆動信号GB、GIが回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に出力されており、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202は制御部231からの駆動信号GB、GIを受けて、回生制動部103、インバータ部104にゲート信号VGB、VGIを出力している。
【0043】
回生制動過電流検出部211が過電流を検出すると、回生制動過電流検出部211は過電流検出信号SCBを出力し(SCB:L→H)、Stage2に移行する。論理回路222は過電流検出信号SCBの立ち上がりを受けてHを出力し(FO:L→H)、ラッチ部221は論理回路222出力信号の立ち上がりを受けて、ゲート出力遮断信号GSを出力し(GS:L→H)、その状態をラッチする。回生制動駆動部212、インバータ駆動部202は、ゲート出力遮断信号GSがH状態の間は、ゲート信号VGB、VGIの出力を停止する様に構成される。また、制御部231は、ゲート出力遮断信号GSがH状態の間は、駆動信号GB、GIの出力を停止する様に構成される。回生制動部103の動作を停止し回生制動部103の電流を遮断することで、回生制動過電流検出部211は過電流検出信号SCBの出力を停止(SCB:H→L)する。
【0044】
回生制動部103の過電流による故障等、動作上問題が無いことを確認した場合、制御部231がリセット信号RSTを出力し(RST:L→H)、Stage3に移行する。ラッチ回路223は、リセット信号RSTの立ち上がりを受けてゲート出力遮断信号GSのラッチを解除し(GS:H→L)、制御部231は、ゲート出力遮断信号GSの立ち下がりを受けて駆動信号GB、GIを回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に出力し、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202はゲート信号VGB、VGIの出力を再開する。
【0045】
尚、
図9では回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合の動作について述べたが、インバータ過電流検出部201が過電流を検出した場合には、
図9の過電流検出信号SCBをSCIに置き換えた動作となり、回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合と同様に、回生制動部103、インバータ部104のスイッチング素子がオフ状態で停止する。
【0046】
図10、
図11に、本実施例におけるインバータ過電流検出部201の具体例を示す。
図10は、インバータ部104のローサイド側スイッチング素子1042、1044、1046のエミッタ側に電流検出抵抗2011、2012、2013を配置し、電流検出抵抗の電圧(Vs)が閾値電圧Vthを超過した場合に、コンパレータが過電流検出信号SCIを出力する方式である。また、
図11は、インバータ部104のスイッチング素子1041~1046のコレクタ端子にダイオード2031~2036を、ゲート端子に抵抗2021~2026をそれぞれ図示される様に接続して、インバータ部104のスイッチング素子1041~1046がオン状態におけるエミッタ-コレクタ間電圧Vceを検出し、Vceが閾値電圧Vthを超過した場合にコンパレータが過電流検出信号SCIを出力する方式である。これらは一般的に用いられている方式であり、前者は構成が簡素である点、後者は電力損失が小さい点、ハイサイド側の過電流検出も可能な点、が利点である。
【0047】
以上述べた様に本実施例では、実施例1に対し、インバータ過電流検出部201を追加し、実施例1で述べた動作に加えてインバータ過電流検出部201が過電流検出信号SCIを出力した場合に、回生制動部103とインバータ部104のスイッチングを停止する。誤結線による過電流等の不測の事態は、回生制動部103に限らずインバータ部104にも生じ得る事であることから、回生制動部103と同様の理由により、電力変換装置2はインバータ部104にも過電流検出部を設けるのが望ましい。本実施例で述べたラッチ部221以降の構成を回生制動部103とインバータ部104で共用することにより、実施例1に対し別系統でインバータ部104の過電流保護系統を備えた場合に比べて部品数が削減される。
【0048】
尚、本実施例では論理回路222の具体例としてORゲートを用いて説明したが、論理回路222は過電流検出部が出力する論理に応じて適宜変更可能である。一例として、ORゲートをANDゲートとし、回生制動過電流検出部211及びインバータ過電流検出部201は、通常時にHを出力、過電流時にLを出力させる。これにより、ANDゲートは通常時にHを出力し、回生制動過電流検出部211もしくはインバータ過電流検出部201がLを出力した場合に、ラッチ回路223にLを出力する。ラッチ回路223はANDゲートからLを入力した場合に、ゲート出力遮断信号GSを回生制動駆動部212、インバータ駆動部202、制御部231に出力する。これにより、本実施例で述べた動作と同様に、回生制動部103もしくはインバータ部104に過電流が流れた場合に、ゲート出力遮断動作を実現することも可能である。
【0049】
また、インバータ過電流検出部201は、
図10、
図11に示す構成を備えていれば接続箇所を問わない。例えば、
図10、
図11に示す回路を外付けの部品により配線しても良いし、
図10、
図11に示す機能の一部または全てを内蔵したゲートドライバをインバータ駆動部202に適用してもよい。
図10、
図11に示す機能の一部または全てを内蔵したゲートドライバをインバータ駆動部202に適用した場合、
図10、
図11に示す過電流検出信号SCIはゲートドライバ内部に存在する可能性がある。その場合は、インバータ過電流検出部201が過電流を検出した場合にゲートドライバから出力されるエラー信号等、過電流検出と同期した別の信号を過電流検出信号SCIに代替することで、本実施例で述べた動作と同様の動作が実現する。
【実施例3】
【0050】
図12は、本実施例における電力変換装置3の構成図である。
図12において、
図7と同じ構成については同じ符号を付し、その説明は省略する。
図12において、
図7と異なる点は、ラッチ部221の構成を変更し、ラッチ部221内にラッチ回路224を追加して、ラッチ回路223、224の出力を論理回路222に入力するようにした点である。
【0051】
図12において、インバータ過電流検出部201は、インバータ部104に流れる電流が判定値を超過した場合に、過電流検出信号SCIをラッチ回路224に出力する。ラッチ回路224は、過電流検出信号SCIを受信すると、論理回路222にゲート出力遮断信号GSIを出力する。一方、回生制動過電流検出部211は、回生制動部103に流れる電流が判定値を超過した場合に、過電流検出信号SCBをラッチ回路223に出力する。ラッチ回路223は、過電流検出信号SCBを受信すると、論理回路222にゲート出力遮断信号GSBを出力する。論理回路222は、過電流検出信号SCBもしくはSCIが入力されると、ゲート出力遮断信号GSを回生制動駆動部212、インバータ駆動部202、制御部231に出力する。
【0052】
図13に、本実施例におけるラッチ部221の具体例を示す。尚、
図13に示す構成は一例であり、論理は問わない。
【0053】
図13において、ラッチ部221は、論理回路222、ラッチ回路223、224で構成されている。尚、本実施例では論理回路222をORゲートとして動作を説明する。回生制動過電流検出部211及びインバータ過電流検出部201は、通常時にLを出力、過電流時にHを出力する様に構成され、各過電流検出部の出力はそれぞれラッチ回路223、224に入力される。ラッチ回路223、224は、回生制動過電流検出部211及びインバータ過電流検出部201からHが入力された場合に、ゲート出力遮断信号GSB、GSIを論理回路222に出力する。論理回路222は、ゲート出力遮断信号GSBもしくはGSIが出力された場合に、ゲート出力遮断信号GSを回生制動駆動部212、インバータ駆動部202、制御部231に出力する。ラッチ回路223、224は、制御部231からリセット信号RSTを受信することでラッチを解除し、制御部231から出力される駆動信号GB、GIに基づき回生制動部103、インバータ部104の駆動を再開する。
【0054】
図14を用いて、本実施例における電力変換装置3の回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合の動作を説明する。
図14は、駆動信号GB、GI、ゲート信号VGB、VGI、過電流検出信号SCB、ゲート出力遮断信号GSB、GS、リセット信号RSTをそれぞれ示し、時間方向にStage1、Stage2、Stage3で推移する様子を示している。尚、
図14に示す信号は一例であり、論理は問わない。
【0055】
図14において、Stage1では、制御部231から駆動信号GB、GIが回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に出力されており、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202は制御部231からの駆動信号GB、GIを受けて、回生制動部103、インバータ部104にゲート信号VGB、VGIを出力している。
【0056】
回生制動過電流検出部211が過電流を検出すると、回生制動過電流検出部211は過電流検出信号SCBを出力し(SCB:L→H)、Stage2に移行する。ラッチ回路223は、過電流検出信号SCBの立ち上がりを受けてHを出力し(GSB:L→H)、その状態をラッチする。論理回路222は、過電流検出信号SCBの立ち上がりを受けてHを出力(GS:L→H)する。回生制動駆動部212、インバータ駆動部202は、ゲート出力遮断信号GSがH状態の間は、ゲート信号VGB、VGIの出力を停止する様に構成される。また、制御部231は、ゲート出力遮断信号GSがH状態の間は、駆動信号GB、GIの出力を停止する様に構成される。回生制動部103の動作を停止し回生制動部103の電流を遮断することで、回生制動過電流検出部211は過電流検出信号SCBの出力を停止(SCB:H→L)する。
【0057】
回生制動部103の過電流による故障等、動作上問題が無いことを確認した場合、制御部231がリセット信号RSTを出力し(RST:L→H)Stage3に移行する。ラッチ回路223は、リセット信号RSTの立ち上がりを受けてゲート出力遮断信号GSBのラッチを解除し(GSB:H→L)、論理回路222はゲート出力遮断信号GSBの立下りを受けてLを出力(GS:H→L)する。制御部231は、ゲート出力遮断信号GSの立ち下がりを受けて駆動信号GB、GIを回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に出力し、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202はゲート信号VGB、VGIの出力を再開する。
【0058】
尚、
図14では回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合の動作について述べたが、インバータ過電流検出部201が過電流を検出した場合には、
図14の過電流検出信号SCBをSCIに、ゲート出力遮断信号GSBをGSIに置き換えた動作となり、回生制動過電流検出部211が過電流を検出した場合と同様に、回生制動部103、インバータ部104のスイッチング素子がオフ状態で停止する。
【0059】
以上述べた様に本実施例では、実施例2に対しラッチ回路224を追加し、ラッチ回路223、224の出力を論理回路222に入力し、論理回路222からゲート出力遮断信号GSを制御部231、回生制動駆動部212、インバータ駆動部202に出力する。本実施例で述べた電力変換装置3は、実施例2で述べた電力変換装置2の変形例であり、いずれも過電流検出時に回生制動部103とインバータ部104のスイッチング素子をオフ状態で停止する動作を実現するため、実装面積や部品コスト等に鑑み必要に応じて適宜変更できる。
【0060】
ここで、
図12に示す構成であれば、ラッチ回路224は接続箇所を問わない。例えば、ラッチ回路224を外付けの部品により配線しても良いし、過電流保護時のラッチ機能を内蔵したゲートドライバをインバータ駆動部202に適用しても良い。過電流保護時のラッチ機能を内蔵したゲートドライバをインバータ駆動部202に適用した場合、
図12に示すゲート遮断信号SCIはゲートドライバ内部に存在する可能性がある。その場合には、インバータ過電流検出部201が過電流を検出した場合にゲートドライバから出力されるエラー信号等、過電流検出と同期した別の信号を過電流検出信号SCIに代替する、或いはゲートドライバから直接過電流検出信号SCIを出力することで、本実施例で述べた動作と同様の動作が実現する。
【実施例4】
【0061】
図15、
図16は、本実施例における電力変換装置4の構成図である。本実施例では、
図1、
図7、
図12等に記される電力変換装置の電力変換部について、構成例を述べる。
【0062】
図15に示す様に本実施例における電力変換装置4では、整流部101、回生制動部103を構成するスイッチング素子1031及びダイオード1032、インバータ部104は、同一のパッケージである半導体モジュール107の内部に配置される。このような形態の半導体モジュールは一般的にPIM(Power Integrated Module)と呼ばれている。
【0063】
また、
図16に示す構成は
図15と異なり、整流部101を半導体モジュール108、インバータ部104を半導体モジュール109、回生制動部103を構成するスイッチング素子1031、ダイオード1032をディスクリート素子110、112で構成している。
図15、
図16に示す構成以外にも、半導体モジュールに内蔵される回路の組み合わせは、例えば整流部101とインバータ部104を同一パッケージに内蔵した物など様々な物が存在する。
【0064】
以降、代表例として
図15を用いて本実施例について述べる。交流電源から入力された交流電圧は、半導体モジュール107のR端子、S端子、T端子に入力され、半導体モジュール107内部に配置された整流部101で直流電圧に整流される。直流電圧の高電圧側は半導体モジュール107のP1端子から半導体モジュール107外部へ出力され、突入電流制限部111へ入力される。突入電流制限部111は、交流電源投入時等に平滑コンデンサ106へ充電電流が過大になることを防ぐ。
【0065】
突入電流制限部111から出力された直流電圧は、半導体モジュール107のP2端子に入力され、インバータ部104のスイッチングによりU端子、V端子、W端子から交流電力が出力される。
【0066】
先に述べた様に制動抵抗105は、インバータ部104の制動トルクやモータの慣性モーメントにより接続の要否が判断される。ここで、制動抵抗105が接続されず、またスイッチング素子1031がオフの時、スイッチング素子1031のコレクタ端子(
図15のRB端子)は、スイッチング素子1031のオフ状態の抵抗値でノードNと接続される。スイッチング素子1031のオフ状態の抵抗値はMΩオーダーのハイインピーダンス値であり、この状態で交流電源からモータに電力を供給した場合、インバータ部104で発生した電磁ノイズにより、回生制動過電流検出部211が誤動作し、回生制動過電流検出信号SCBが出力されてしまう懸念がある。
【0067】
そこで、RB端子とノードNの間に電流経路1033を配置する。電流経路1033を配置した効果により、スイッチング素子1031がオフ状態でも、インバータ部104から発生した電磁ノイズは電流経路1033によりノードNへと流れるため、RB端子の電位が安定し耐ノイズ性が向上する。
【0068】
図17に突入電流制限部111、電流経路1033の一例を示す。突入電流制限部111は、リレー1111と限流抵抗1112で構成される。交流電源投入時等、突入電流制限部111の両端に電圧が発生する条件では、リレー1111がオフとなり限流抵抗1112に電流が流れる。平滑コンデンサ106が充電され直流電圧が所定の値より高くなるとリレー1111がオンする。突入電流制限部111は他にも、サイリスタ等で構成することも可能である。
【0069】
電流経路1033は、アノードがスイッチング素子1031のノードN、カソードがRB端子に接続される方向にダイオード1034を配置する。ダイオード1034を図示する向きに追加することで、スイッチング素子1031がオフ状態でも、RB端子はダイオード1034のアノードーカソード間のオフ抵抗でNB端子若しくはノードNと接続されるため、電流経路1033を接続しない場合と比べ、RB端子の電位が安定する。
【0070】
図18では
図17と異なり電流経路1033は、ノードNと、RB端子間に抵抗1035を配置する。これにより、
図17と同様にスイッチング素子1031がオフ状態でも、RB端子は抵抗1035の抵抗値でノードNと接続されるため、電流経路1033を接続しない場合と比べ、RB端子の電位が安定する。
【0071】
図19は、
図15と異なり電流経路1033をノードPとRB端子の間に配置し、インバータ部104から発生した電磁ノイズをノードPに流すことで回生制動過電流検出部211の耐ノイズ性を向上させる。電流経路1033は実施例4と同様に、ダイオードや抵抗で構成できる。
【0072】
電流経路1033は、抵抗値が低いほど耐ノイズ性が向上する一方、損失が増加する。最低限の耐ノイズ性を持たせるためにはスイッチング素子1031にインバータ部104から発生した電磁ノイズを流さない為に、スイッチング素子1031のオフ状態の抵抗値より電流経路1033の抵抗値の方が低くなる様に選定することが望ましい。
【0073】
以上実施例について説明したが、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1、2、3、4:電力変換装置、101:整流部、102:電圧検出部、103:回生制動部、1031、1041~1046:スイッチング素子、1032、1034、2112、2031~2026:ダイオード、1033:電流経路、1035、2021~2026、2113:抵抗、104:インバータ部、105:制動抵抗、106:平滑コンデンサ、107、108、109:半導体モジュール、110、112:ディスクリート素子、111:突入電流制限部、1111:リレー、1112:限流抵抗、201:インバータ過電流検出部、2011~2013、2111:電流検出抵抗、202:インバータ駆動部、203、213:ゲートドライブ部、204、214:バッファ部、211:回生制動過電流検出部、212:回生制動駆動部、221:ラッチ部、222:論理回路、223、224:ラッチ回路、231:制御部