IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20231121BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C08L23/14
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022579121
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021064705
(87)【国際公開番号】W WO2022002514
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】20183010.6
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】フェラーロ、ジャンピエロ
(72)【発明者】
【氏名】カヴァリエーリ、クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】カトラン、キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】チャッチア、エレオノーラ
(72)【発明者】
【氏名】チャラフォーニ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】モンタレッティ、アンブラ
(72)【発明者】
【氏名】デ カプア、アルベルタ
(72)【発明者】
【氏名】パンタレオーニ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】カプト、ティツィアーナ
(72)【発明者】
【氏名】プリニ、ジャンシーロ
(72)【発明者】
【氏名】ナルディン、アルベルト
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-545054(JP,A)
【文献】特表2011-506717(JP,A)
【文献】特表2017-509753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0095266(US,A1)
【文献】特開2013-173924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 9/04
C08F 6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)25℃でキシレンに可溶な画分が、2.5重量%~8.0重量%の間で含まれ、
メルトフローレート(ISO1133、条件L、すなわち、230℃および2.16kg荷重に準拠したMFR L)が、2.0~15.0g/10分の範囲であり、
多分散指数(PI)が、9.2~21.3の間で含まれる、
0.5重量%~3.5重量%の1-ヘキセン由来の単位を含んだ70重量%~90重量%のプロピレン1-ヘキセンコポリマと、
B)45.0重量%~65.0重量%のエチレン由来の単位を含んだ10重量%~30重量%のプロピレンとエチレンとのコポリマと、を含むポリプロピレン組成物であって、
前記ポリプロピレン組成物において、
25℃での前記キシレンに可溶な画分は、10.0重量%~25.0重量%の範囲であり、
25℃で前記キシレンに可溶な画分の固有粘度は、4.0dl/g~6.5dl/gの範囲であり、
25℃で前記キシレンに可溶な画分のエチレン由来の単位の含有量は、前記成分B)のエチレン由来の単位の含有量よりも低く、38.0重量%~55.0重量%の範囲であり、
分子量の分布Mw/Mnは、25~40の範囲であり、
成分A)および成分B)の合計が100重量%である、ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレン組成物において、25℃での前記キシレンに可溶な画分の前記固有粘度は、4.1dl/g~6.3dl/gの範囲である、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記分子量の分布Mw/Mnは、28~38の範囲である、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリプロピレン組成物を含む、発泡物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広い分子量分布および高い溶融強度を有する1-ヘキセン由来の単位を含むポリプロピレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンホモポリマおよびコポリマの溶融状態における加工性が、通常、メルトフローレート(MFR)で表される分子量、および分子量分布(MWD)によって、主に影響を受けることは、当技術分野で知られている。分子量分布は、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比率として、または多分散指数(P.I.)として表され得る。
【0003】
広い分子量分布または高い多分散指数を有するプロピレンポリマは、狭い分子量分布を有するポリマよりも低い溶融粘度を有する。したがって、当該広いMWDのプロピレンポリマは、熱成形、射出成形、ブロー成形または延伸ブロー成形、コーティング、およびフィルム変換においてより容易に流動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリマ発泡体などの特定の用途に関して、高い溶融強度と組み合わせた異なる流動性を有する製品が特に望ましい。異なる分子量を有するプロピレンポリマ画分の溶融ブレンドによって当該ポリマを製造すること、または多段階重合において当該画分の反応器ブレンドを製造することは、当技術分野で知られている。
【0005】
欧州特許第1899415号は、プロピレン以外に炭素数2~8のα-オレフィン単位を5.0重量%まで含むプロピレンホモポリマまたはコポリマに関するものであり、当該プロピレンホモポリマまたはコポリマにおいて、多分散指数が15より高く、キシレン可溶画分が4重量%未満であることを特徴とする。しかしながら、この文献には、本開示のポリプロピレン組成物について記載されていない。
【0006】
しかしながら、特に発泡用途に使用される、溶融強度の増加を示すポリプロピレン組成物がさらに必要とされている。
【0007】
本開示は、
A)25℃でキシレンに可溶な画分が、2.5重量%~8.0重量%の間で含まれ、
メルトフローレート(ISO1133、条件L、すなわち、230℃および2.16kg荷重に準拠したMFR L)が、2.0~15.0g/10分の範囲であり、
多分散指数(PI)が、9.2~21.3の間で含まれる、
0.5重量%~3.5重量%の1-ヘキセン由来の単位を含んだ70重量%~90重量%のプロピレン1-ヘキセンコポリマと、
B)45.0重量%~65.0重量%のエチレン由来の単位を含んだ、10重量%~30重量%の、プロピレンとエチレンとのコポリマと、を含むポリプロピレン組成物であって、
25℃でのキシレンに可溶な画分は、10.0重量%~25.0重量%の範囲であり、
25℃でキシレンに可溶な画分の固有粘度は、4.0dl/g~6.5dl/gの範囲であり、
25℃でキシレンに可溶な画分のエチレン由来の単位の含有量は、成分B)のエチレン由来の単位の含有量よりも低く、38.0重量%~55.0重量%の範囲であり、
分子量の分布Mw/Mnは、25~40の範囲であり、
成分A)およびB)の合計が100重量%である、ポリプロピレン組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、
A)25℃でキシレンに可溶な画分が、2.5重量%~8.0重量%の間で含まれ、好ましくは3.1重量%~6.8重量%の間で含まれ、より好ましくは3.8重量%~5.9重量%の間で含まれ、
メルトフローレート(ISO1133、条件L、すなわち、230℃および2.16kg荷重に準拠したMFR L)が、2.0~15.0g/10分の範囲、好ましくは3.0~10.0g/10分の範囲であり、
多分散指数(PI)が、9.2~21.3の間で含まれ、好ましくは10.1~16.4の間で含まれ、より好ましくは11.3~14.2の間で含まれる、
0.5重量%~3.5重量%、好ましくは1.0重量%~2.9重量%、より好ましくは1.2重量%~2.4重量%の1-ヘキセン由来の単位を含んだ70重量%~90重量%、好ましくは74重量%~86重量%、より好ましくは77重量%~82重量%のプロピレン1-ヘキセンコポリマと、
B)45.0重量%~65.0重量%、好ましくは48.0重量%~61.0重量%、より好ましくは50.0重量%~59.0重量%のエチレン由来の単位を含んだ、10重量%~30重量%、好ましくは14重量%~26重量%、より好ましくは18重量%~23重量%の、プロピレンとエチレンとのコポリマと、を含むポリプロピレン組成物であって、
25℃でのキシレンに可溶な画分は、10.0重量%~25.0重量%、好ましくは16.0重量%~22.0重量%の範囲であり、
25℃でキシレンに可溶な画分の固有粘度は、4.0dl/g~6.5dl/g、好ましくは4.1dl/g~6.3dl/g、より好ましくは5.3dl/g~6.2dl/gの範囲であり、
25℃でキシレンに可溶な画分のエチレン由来の単位の含有量は、成分B)のエチレン由来の単位の含有量以下であり、38.0重量%~55.0重量%、好ましくは41.0重量%~52.0重量%、より好ましくは43.0重量%~51.0重量%の範囲のエチレン由来の単位であり、
分子量の分布Mw/Mnは、25~40、好ましくは28~38、より好ましくは30~35の範囲であり、
成分A)およびB)の合計が100重量%である、ポリプロピレン組成物を提供する。



【0009】
本開示の目的のために、コポリマという用語は、プロピレンとエチレン、またはプロピレンと1-ヘキセンなどの2種類のモノマーのみを含むポリマとして意図されなければならない。
【0010】
任意選択で、プロピレンとエチレンとのコポリマの成分B)は、0.6重量%までの1-ヘキセン由来の単位を含み得る。
【0011】
本開示の組成物は、高い溶融強度を有しているため、本開示のポリプロピレン組成物は、容易に加工可能であり、溶融状態で良好な流動特性を有する一方で、良好な機械的特性、特に高い剛性、高いクリープ抵抗および高い熱変形抵抗の高い降伏応力を保持する。
【0012】
溶融強度の値は、ポリマ溶融物を切断するのに必要な、適用された線形力の尺度である。
【0013】
本開示の組成物は、非常に広い分子量の分布Mw/Mnを有する。 広い分子量の分布のおかげで、本開示のポリプロピレン組成物の加工性はかなり改善される。
【0014】
本開示のポリプロピレン組成物は、後続の各重合段階が、直前の重合反応で形成されたポリマ材料の存在下で行われる、少なくとも2段階の逐次重合によって製造され、成分(A)は通常、少なくとも1つの第1の重合段階で調製され、成分(B)は通常、少なくとも1つの第2の重合段階で調製される。
【0015】
成分A)は、少なくとも2つの相互接続された重合領域で行われる重合プロセスで生成される。当該重合プロセスは、欧州特許第782587号および国際公開第00/02929号に記載されている。このプロセスは、触媒系の存在下でプロピレンとエチレンまたはプロピレンとα-オレフィンが供給され、生成されたポリマが排出される第1および第2の相互接続された重合領域で行われる。成長中のポリマ粒子は、高速流動条件下で第1の当該重合領域(上昇管)を通って流れ、当該第1の重合領域を出て第2の当該重合領域(下降管)に入り、そこからポリマ粒子は重力の作用下で緻密化された形で流れ、当該第2の重合領域を出て当該第1の重合領域に再導入され、こうして、2つの重合領域の間でポリマの循環が確立される。一般に、第1の重合領域における高速流動の条件は、モノマーの気体混合物を、成長中のポリマの当該第1の重合領域への再導入の個所より下流に供給することによって確立される。第1の重合領域への輸送気体の速度は、動作条件下での輸送速度よりも高く、通常は2~15m/秒の間である。ポリマが重力の作用下で緻密化された形で流れる第2の重合領域において、ポリマのかさ密度に近い、高い固体密度値に到達し、こうして、流れの方向に沿って正の圧力増加が得られ得るので、機械的手段の助けなしに第1の反応領域へのポリマの再導入が可能となる。このようにして、2つの重合領域間の圧力のバランス、およびシステムに導入されるヘッドロスによって定義された「ループ」循環が設定される。任意選択で、窒素または脂肪族炭化水素などの1つ以上の不活性気体が、不活性気体の分圧の合計が、好ましくは、気体の総圧力の5~80%の間となるような量で、重合領域に維持される。例えば、温度などの動作パラメータは、気相オレフィン重合プロセスにおいて通常のものであり、例えば、50℃~120℃の間、好ましくは70℃~90℃である。このプロセスは、0.5~10MPaの間、好ましくは1.5~6MPaの間の動作圧力下で行われ得る。
【0016】
好ましくは、種々の触媒成分が、当該第1の重合領域の任意の個所で、第1の重合領域に供給される。しかしながら、それらは、第2の重合領域の任意の個所でも供給され得る。
【0017】
重合プロセスにおいて、上昇管中に存在する気体および/または液体混合物が下降管に入るのを全体的または部分的に防止可能である手段が提供され、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体および/または液体混合物が、下降管に導入される。好ましい実施形態によれば、上昇管内に存在する気体混合物とは異なる組成を有する当該気体および/または液体混合物の、1つ以上の導入ラインを通した下降管への導入は、上昇管内に存在する混合物が下降管に入るのを防止するのに有効である。下降管に供給される異なる組成の気体および/または液体混合物は、任意選択で、部分的または完全に液化された形で供給され得る。成長中のポリマの分子量分布およびそれによるP.I.値は、国際公開第00/02929号の図4に図表で示された反応器中で重合プロセスを行うこと、並びに、コモノマおよび通常の分子量調節剤、特に水素を、少なくとも1つの重合領域、好ましくは上昇管中に異なる割合で独立して測定することによって、都合よく調整され得る。
【0018】
成分B)は第2の段階で調製され、プロピレン/エチレンコポリマ(B)は、従来の流動床気相反応器で、ポリマ材料および前の重合工程からの触媒系の存在下で製造される。
【0019】
各重合段階は、立体特異性の高い不均一系のチーグラー・ナッタ触媒の存在下で行われる。本発明のプロピレンポリマ組成物を製造するのに適したチーグラー・ナッタ触媒は、少なくとも1つのチタン-ハロゲン結合を有する少なくとも1つのチタン化合物、および少なくとも1つの電子供与体化合物(内部供与体)を含んだ固体触媒成分を含み、両方とも塩化マグネシウムに支持されている。チーグラー・ナッタ触媒系は、さらに、必須共触媒として有機アルミニウム化合物を含み、任意選択で外部電子供与体化合物を含む。
【0020】
適切な触媒系は、欧州特許第45977号、欧州特許第361494号、欧州特許第728769号、欧州特許第1272533号、および国際公開第00/063261号に記載されている。
【0021】
本開示の目的であるポリプロピレン組成物は、好ましくは、以下の成分を接触させることにより得られる生成物を含む触媒系の存在下で、プロピレンとエチレンとを様々な段階で重合させることによって得ることが可能である。
a)ハロゲン化マグネシウムと、少なくともTi-ハロゲン結合を有するチタン化合物と、コハク酸塩類から選択される少なくとも1つの電子供与体化合物とを含む固体触媒成分、
b)ヒドロカルビルアルミニウム化合物、および
c)任意選択で、外部電子供与体化合物。
【0022】
固体触媒成分(a)において、コハク酸塩は、好ましくは式(I)のコハク酸塩類から選択され、
【化1】
【0023】
ラジカルRおよびRは、互いに等しいまたは異なり、C~C20の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり、任意選択でヘテロ原子を含み;ラジカルRおよびRは、互いに等しいまたは異なり、C~C20のアルキル、C~C20のシクロアルキル、C~C20のアリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であるが、それらの少なくとも1つは分岐鎖アルキルであるという条件付きであり;当該化合物は、式(I)の構造において識別される2つの不斉炭素原子に関して、(S,R)または(R,S)型の立体異性体であり、
【0024】
およびRは、好ましくは、C~Cアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基である。特に好ましくは、RおよびRが、第一級アルキル、特に分岐鎖の第一級アルキルから選択される化合物である。適切なRおよびR基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2-エチルヘキシルである。特に好ましくは、エチル、イソブチル、およびネオペンチルである。
【0025】
特に好ましくは、Rおよび/またはRラジカルが、イソプロピル、sec-ブチル、2-ペンチル、3-ペンチルなどの第二級アルキルまたはシクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルメチルなどのシクロアルキルである化合物である。
【0026】
上述の化合物の例は、2,3-ビス(トリメチルシリル)コハク酸ジエチル、2,3-ビス(2-エチルブチル)コハク酸ジエチル、2,3-ジベンジルコハク酸ジエチル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジイソブチル、2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジエチル、2,3-ジイソブチルコハク酸ジエチル、2,3-ジネオペンチルコハク酸ジエチル、2,3-ジシクロペンチルコハク酸ジエチル、2,3-ジシクロヘキシルコハク酸ジエチルの(S,R)(S,R)型であり、純粋な形または混合物の形、任意選択でラセミ体の形である。
【0027】
上記で説明したように、触媒成分(a)は、上記の電子供与体に加えて、少なくともTi-ハロゲン結合を有するチタン化合物、およびMgハロゲン化物を含む。ハロゲン化マグネシウムは、好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒の担体として特許文献から広く知られている活性型のMgClである。米国特許第4298718号および米国特許第4495338号は、チーグラー・ナッタ触媒におけるこれらの化合物の使用を最初に記載したものである。これらの特許から、オレフィンの重合用触媒の成分において担体または共担体として使用される活性型のジハロゲン化マグネシウムが、X線スペクトルによって特徴付けられることが知られており、非活性型ハロゲン化物のスペクトルに現れる最も高強度の回折線は、強度が低下し、その最大強度が、より強度の高い線の角度よりも低い角度に向かって変位されるハロに交換される。
【0028】
本発明の触媒成分に使用される好ましいチタン化合物は、TiClおよびTiClであり、さらに、式Ti(OR)n-yのTi-ハロアルコラートも使用され得、nはチタンの原子価であり、yは1~n-1の間の数であり、Xはハロゲンであり、Rは、炭素数1~10の炭化水素ラジカルである。
【0029】
触媒成分(a)の平均粒径は、好ましくは15~80μm、より好ましくは20~70μm、さらに好ましくは25~65μmの範囲である。
【0030】
アルキル-Al化合物(b)は、好ましくは、例えば、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。トリアルキルアルミニウムと、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、または、例えばAlEtClおよびAlEtClなどのアルキルアルミニウムセスキ塩化物との混合物を使用することも可能である。
【0031】
好ましい外部電子供与体化合物には、ケイ素化合物、エーテル、4-エトキシ安息香酸エチルなどのエステル、アミン、複素環式化合物、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ケトン、および1,3-ジエーテルが含まれる。好ましい外部供与体化合物の別のクラスは、式R Si(ORのケイ素化合物のものであり、aおよびbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、合計(a+b+c)は4であり、R、R、およびRは、任意選択でヘテロ原子を含む炭素数1~18の、アルキル、シクロアルキル、またはアリールラジカルである。特に好ましくは、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2-エチルピペリジニル-2-t-ブチルジメトキシシラン、1,1,1-トリフルオロプロピル-2-エチルピペリジニル-ジメトキシシラン、および1,1,1-トリフルオロプロピル-メチル-ジメトキシシランである。外部電子供与体化合物は、有機アルミニウム化合物と当該電子供与体化合物との間のモル比が5~500、好ましくは5~400、より好ましくは10~200となるような量で使用される。
【0032】
触媒形成成分は、プロパン、n-ヘキサン、またはn-ヘプタンなどの液体不活性炭化水素溶媒と、約60℃未満、好ましくは約0~30℃の温度で、約6秒~60分の時間、接触され得る。
【0033】
上記の触媒成分(a)、(b)および任意選択で(c)は、重量比(b)/(a)が0.1~10の範囲であり、化合物(c)が存在する場合、重量比(b)/(c)は、上記で定義したモル比に対応する重量比であるような量で予備接触容器に供給され得る。好ましくは、当該成分は、10~20℃の温度で1~30分間、予備接触される。予備接触容器は、一般に撹拌タンク反応器である。
【0034】
好ましくは、予備接触された触媒は、次いで、予備重合工程が行われる予備重合反応器に供給される。予備重合工程は、ループ反応器または連続攪拌タンク反応器から選択される第1の反応器で行われ得、一般に液相で行われる。液体媒体は、任意選択で不活性炭化水素溶媒を添加して、液体α-オレフィンモノマを含む。当該炭化水素溶媒は、トルエンなどの芳香族、またはプロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサン、および2,2,4-トリメチルペンタンなどの脂肪族のいずれかであり得る。もしあれば、炭化水素溶媒の量は、α-オレフィンの総量に対して40重量%未満、好ましくは20重量%未満である。好ましくは、当該工程(a)は、不活性炭化水素溶媒の非存在下で実施される。
【0035】
この反応器中の平均滞留時間は、一般に2~40分、好ましくは10~25分の範囲である。温度は、10℃~50℃の間、好ましくは15℃~35℃の間の範囲である。これらの条件を採用することにより、固体触媒成分1グラム当たり60~800g、好ましくは固体触媒成分1グラム当たり150~500gの好ましい範囲の予備重合度を得ることが可能になる。工程(a)は、スラリー中の固体濃度が低いこと、典型的にはスラリー1リットル当たり固体が50g~300gの範囲であることをさらに特徴とする。
【0036】
本開示のポリプロピレン組成物は、積層および非積層シート、ビーズ、ならびに異形材などの発泡物品の製造に使用され得る。密度が30~700Kg/m、特に100~600Kg/mの範囲である発泡体は、本開示のポリプロピレン組成物から得ることができ、断熱および電気絶縁、騒音および振動減衰、衝撃吸収および軽量化のために用途を見出す。
【0037】
特に、バンパー内装や衝撃パネルのための自動車分野、浮揚デバイスとしての海洋分野、または電気ケーブルの絶縁において用途を見出し得る。本開示のポリプロピレン組成物は、従来の方法によって発泡物品に製造されてよい。それらは、単一および多層構造の両方で、従来の一軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機により少なくとも1つの発泡剤の存在下において押し出され得る。
【0038】
発泡剤は、CO、気体の炭化水素、HO、CFC、もしくはそれらの混合物などの物理的発泡剤、または無機炭酸塩、クエン酸、もしくはそれらの混合物などの化学的発泡剤であり得る。あるいは、本開示のポリプロピレン組成物を、当技術分野で周知のプロセスに従って、発泡ポリプロピレンビーズを製造するために、最初にペレット化し、発泡化し、続いて成形し得る。本開示のポリプロピレン組成物を使用して、発泡被覆または非被覆パイプおよび食品用発泡包装などの発泡物品は製造され得る。
【0039】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、限定するものではない。
実施例
【0040】
プロピレンポリマ材料のデータは、次の方法に従って取得された。
【0041】
メルトフローレート
【0042】
ISO1133(230℃、2.16kg)に準拠して測定。
【0043】
多分散指数(P.I.)
【0044】
ISO6721-10に準拠して、数グラムの溶融ホモポリマは、200℃の温度で、平行板レオメータを使用した速度掃引の動的試験を受けた。G’(貯蔵弾性率)とG”(損失弾性率)は、周波数の関数として測定される。速度掃引データから、PIは、PI=105/Gcで定義され、Gcは、G’=G”における弾性率の値としてのクロスオーバー弾性率である。
【0045】
ヘキセン含有量(C6含有量)
【0046】
NMRによる1-ヘキセン含有量の測定
【0047】
13C NMRスペクトルは、120℃におけるフーリエ変換モードの150.91MHzで動作して、クライオプローブを装備したAV-600分光計で取得される。プロピレンCHのピークを28.83で内部基準として使用した。13C NMRスペクトルは、以下のパラメータを使用して取得される。
【0048】
【表1】
モルパーセントとしての1-ヘキセンの総量は、次の関係を使用して、測定されたNMRに存在する識別されたダイアドから算出される。
[P]=PP+0.5PH
[H]=HH+0.5PH
プロピレン/1-ヘキセンコポリマの13C NMRスペクトルの帰属は、次の表に従って計算される。

【表2】
【0049】
NMRによるエチレン(C2)含有量の測定
【0050】
プロピレン/エチレンコポリマの13C NMR
【0051】
13C NMRスペクトルは、120℃におけるフーリエ変換モードの160.91MHzで動作して、クライオプローブを装備したBruker AV-600分光計で取得された。全組成で測定された。成分B)のエチレン含有量は、成分B)および成分A)の量を使用して、以下の式に従って算出された。
2tot=C2B×成分B(重量%)/100
サンプルを、1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に、120℃で8%wt/vの濃度で溶解した。各スペクトルは、90°パルス、15秒のパルス間の遅延、およびH-13Cカップリングを除去するためのCPDで取得された。9000Hzのスペクトルウィンドウを使用して、512のトランジェントが32Kデータポイントに格納された。
ダイアド分布は、以下の関係に従って算出される。
PP=100I/Σ
PH=100I/Σ
HH=100I/Σ
PE=100I/Σ
HE=100I/Σ
EE=100(0.5(I13+I16)+0.25I12)/Σ
ここで、Σ=I+I+I+I+I+0.5(I13+I16)+0.25I12
モルパーセントとしての1-ヘキセンとエチレンの総量は、以下の関係を使用してダイアドから算出される。
[P]=PP+0.5PH+0.5PE
[H]=HH+0.5PH+0.5HE
[E]=EE+0.5PE+0.5HE
プロピレン、1-ヘキセン、エチレンの13C NMRスペクトルの帰属
【表3】
エチレン含有量のモルパーセントは、以下の式を使用して評価された。
Eモル%=100*[PEP+PEE+EEE] エチレン含有量の重量パーセントは、以下の式を使用して評価された。
100*Eモル%*MW
E重量%=-------------------
Eモル%*MW+Pモル%*MW
ここで、Pモル%は、プロピレン含有量のモルパーセントであり、MWおよびMWは、それぞれエチレンおよびプロピレンの分子量である。
【0052】
供給気体のモル比
【0053】
ガスクロマトグラフィによって測定。
【0054】
機械分析用サンプル
【0055】
サンプルは、ISO294-2に準拠して取得された。
【0056】
曲げ弾性率
【0057】
ISO178に準拠して測定。
【0058】
溶融強度
【0059】
ISO16790に準拠した尺度。溶融強度は、定義された押出温度および延伸条件下で溶融フィラメントを変形させる際に発生する力(ニュートン)の測定による、プラスチックの延伸および破断特性の尺度である。
【0060】
溶融温度、溶融エンタルピー、および結晶化温度
【0061】
ISO11357-3に準拠して、重量5~7mgのサンプルについて、不活性Nフロー下、冷却と加熱の両方で、20℃/分のスキャン速度で測定。インジウムでなされた機器の較正。
【0062】
25℃(室温)でのキシレン可溶画分および不溶画分
【0063】
ISO16152に準拠したキシレン可溶物。250mlの溶液量で、25℃で20分間、そのうちの10分間は攪拌しながら(マグネチックスターラ)沈殿させ、70℃で真空乾燥した。
【0064】
固有粘度(I.V.)
【0065】
サンプルは、135℃でテトラヒドロナフタレンによって溶解された後、キャピラリー粘度計に注がれた。
【0066】
粘度計チューブ(ウベローデ型)は、円筒形のガラスジャケットで囲まれており、このセットアップでは、温度調節された液体を循環させて温度制御が可能である。
【0067】
メニスカスの下方への通過は、光電デバイスによって計時される。上部ランプの前でのメニスカスの通過は、水晶振動子を有するカウンタを始動させる。メニスカスの下部ランプの通過は、カウンタを停止させ、流出時間が記録され、これは固有粘度の値に変換される。
【0068】
アイゾッド衝撃強度
【0069】
ISO180/1Aに準拠して測定。
【0070】
本発明による実施例1
【0071】
固体触媒成分の調製
【0072】
チーグラー・ナッタ触媒は、欧州特許第728769号の実施例5、48~55行に従って調製された。トリエチルアルミニウム(TEAL)を共触媒として使用し、ジシクロペンチルジメトキシシランを外部供与体として使用した。
【0073】
重合
【0074】
重合は、生成物を1つの反応器からそのすぐ隣の反応器に移すためのデバイスを装備した直列の2つの反応器で連続的に行われた。第1の反応器は、国際公開第00/02929号に記載の重合装置である。
【0075】
触媒は、相互接続された2つの円筒形反応器、上昇管と下降管を含む重合装置に送られる。気固分離器からの気体を再循環させることにより、上昇管中で高速流動化条件が確立され、「バリア」効果が活性化される。次いで、得られた生成物は、流動床気相反応器に供給される。分子量調節剤として水素を使用した。
【0076】
成分(A)は第1の反応器で調製され、成分(B)は第2の反応器で調製される。
【0077】
水素は、分子量調節剤として使用される。
【0078】
気相(プロピレン、エチレン、1-ヘキセン、および水素)は、ガスクロマトグラフィーを介して連続的に分析される。
【0079】
重合の最後に粉末が排出され、窒素気流下で乾燥される。
【0080】
表4に、主な重合条件を示す。
【表4】
表5に、ポリマの特徴を示す。
【表5】
【0081】
実施例1、2および比較例3の組成物は、標準的な添加剤パッケージとブレンドされた。
【0082】
発泡
【0083】
ホイルは、Φ30mm、L/D25:1の押出機構成、幅350mmのフラットダイ、1mmのギャップ開口部を備えた、PMチルロールホイルラインで製造された。使用された化学発泡剤(CBA)は、2%充填された、ClariantのHYDROCEROL(登録商標)CT660である。ホイルは、サンプルごとに個別に調整された、釣鐘型の温度プロファイルを使用して製造された。
【0084】
熱成形プロセス
【0085】
熱成形は、深さΦ250mmのトレイ(高さ80mm)のポジティブボウルを使用して、Formech TF686真空成形機で行われた。型温度60℃を使用して、シートを215℃まで(高温計)加熱した。
【0086】
表6に、発泡熱成形例の結果を報告する。
【表6】