(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】サーバ装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/32 20090101AFI20231121BHJP
H04W 36/28 20090101ALI20231121BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20231121BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W36/28
H04W48/16 132
H04W48/16 134
(21)【出願番号】P 2023058439
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2023-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 高彰
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519017(JP,A)
【文献】特開2018-056764(JP,A)
【文献】国際公開第2022/153465(WO,A1)
【文献】特開2022-094215(JP,A)
【文献】特開2016-171497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G1/00-99/00
H04B7/24-7/26
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記使用条件は、前記位置情報から求められた又は前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る又は基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである
、サーバ装置。
【請求項2】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記使用条件は、前記位置情報から求められた若しくは前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が第1速度閾値を上回ること、又は、前記移動速度が、前記第1速度閾値以下で、かつ、前記第1速度閾値より低い第2速度閾値を上回る場合に、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る若しくは基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである
、サーバ装置。
【請求項3】
前記移動装置から受信された前記無線情報と前記位置情報とが対応付けて格納される記憶手段を更に備え、
前記無線情報は、前記移動装置が接続中の、前記第1無線通信のためのセルの識別情報を含み、
前記特定エリアは、前記記憶手段に格納された前記無線情報に含まれる前記識別情報によって示されるセルの遷移と、前記識別情報に対応する前記位置情報とに基づいて決定される、請求項
2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記情報は、外部の端末から受信された、前記移動装置の動作を制御するための制御情報であり、
前記使用条件は、前記移動装置が前記制御情報に従って動作しており、かつ、前記位置情報から求められた又は前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る又は基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである
、サーバ装置。
【請求項5】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記情報は、外部の端末から受信された、前記移動装置の動作を制御するための制御情報であり、
前記使用条件は、前記移動装置が前記制御情報に従って動作しており、かつ、前記位置情報から求められた若しくは前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が第1速度閾値を上回ること、又は、前記移動速度が、前記第1速度閾値以下で、かつ、前記第1速度閾値より低い第2速度閾値を上回る場合に、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る若しくは基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである
、サーバ装置。
【請求項6】
前記移動装置は、外部の端末から遠隔操作が行われる自動運転車、又は、物品を搬送する搬送用ロボットである、請求項
4又は
5に記載のサーバ装置。
【請求項7】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記移動装置は、物品を搬送する搬送用ロボットであり、
前記情報は、外部の端末から受信された、前記移動装置の動作を制御するための制御情報であり、
前記使用条件は、前記移動装置が前記制御情報に従って、他の移動装置と協調して物品を搬送する動作を行っていることである
、サーバ装置。
【請求項8】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記情報は、外部の端末から受信された、緊急性を有する通知情報であり、
前記使用条件は、前記移動装置が前記通知情報に基づいて動作しており、かつ、前記移動装置が、交差点から所定範囲内の特定エリア内に前記移動装置が位置していることである
、サーバ装置。
【請求項9】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記情報は、外部の端末から受信された、緊急性を有する通知情報であり、
前記使用条件は、前記移動装置が前記通知情報に基づいて動作しており、かつ、前記位置情報から求められた又は前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る又は基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである
、サーバ装置。
【請求項10】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、
通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、
前記情報は、外部の端末から受信された、緊急性を有する通知情報であり、
前記使用条件は、前記移動装置が前記通知情報に基づいて動作しており、かつ、前記位置情報から求められた若しくは前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が第1速度閾値を上回ること、又は、前記移動速度が、前記第1速度閾値以下で、かつ、前記第1速度閾値より低い第2速度閾値を上回る場合に、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る若しくは基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである
、サーバ装置。
【請求項11】
前記移動装置は、前記通知情報に基づく自律制御により動作する自動運転車である、請求項
8乃至
10のいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項12】
前記制御手段は、
前記第1無線通信による前記移動装置への前記情報の送信を開始し、
前記使用条件が満たされると、前記第1無線通信に加えて前記第2無線通信による前記情報の送信を開始し、
前記使用条件が満たされなくなると、前記第2無線通信による前記情報の送信を停止する
ように前記移動装置との通信を制御する、請求項
1、2、4、5及び7乃至10のいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項13】
前記制御手段は更に、前記第1及び第2無線通信の両方について、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回ると、停止指示又は移動速度の減速指示を前記移動装置へ送信する、請求項
1、2、4、5及び7乃至10のいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項14】
前記制御手段は更に、前記停止指示又は前記減速指示を前記移動装置へ送信した後に、前記移動装置の周辺に位置している他の移動装置に対して、前記移動装置が位置するエリアを迂回する経路の移動を指示するための迂回指示を送信する、請求項
13に記載のサーバ装置。
【請求項15】
ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置の制御方法であって、
それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する工程と、
通信対象の移動装置から送信される
、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する工程と、
前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する工程と、
前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する工程と、
を含み、
前記使用条件は、前記位置情報から求められた又は前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る又は基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである、制御方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の制御方法をサーバ装置のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して移動装置と通信可能なサーバ装置、制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動運転車、コネクティッドカー、ドローン、及び搬送用ロボット等の移動装置(モビリティ端末)の移動中に、基地局間のハンドオーバ又は無線品質の劣化に起因してモビリティ端末とのデータ通信の瞬断が発生すると、データ通信に遅れが生じることがある。これにより、移動装置の移動速度を低下又は移動を停止させる必要が生じ、モビリティ端末のスムーズな運行及び継続的な監視が妨げられる可能性がある。
【0003】
このようなモビリティ端末に対して安定した通信環境を提供するために、モビリティ端末との間に確立される無線チャネル(通信経路)を冗長化することが有効である。例えば、特許文献1には、通信先装置との間に常時複数の無線通信経路を確立するようにすることで、ハンドオーバ期間においても通信の継続を可能にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送用ロボット及び自動運転車等の、許容される遅延及びジッタが小さいユースケースでは、安定した通信環境を提供することが必要である。一方で、上述のような冗長通信を常に使用してデータ通信を行うと、通信リソースの消費量が増加し、ネットワークにおける通信容量の逼迫につながる。
【0006】
本発明は、通信対象の移動装置(モビリティ端末)に合わせて必要な場合にのみ冗長通信を提供することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るサーバ装置は、ネットワークを介して移動装置と通信するサーバ装置であって、それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する取得手段と、通信対象の移動装置から送信される、前記移動装置の無線通信状態を示す無線情報と、前記移動装置の位置情報とに基づいて、当該移動装置の状態を監視する監視手段と、前記移動装置の前記状態に基づいて、前記使用条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、前記使用条件が満たされていない場合には前記冗長通信を用いずに前記第1無線通信により前記移動装置へ情報を送信し、前記使用条件が満たされた場合には前記冗長通信により前記移動装置へ前記情報を送信するように、前記移動装置との通信を制御する制御手段と、を備え、前記使用条件は、前記位置情報から求められた又は前記移動装置から取得された前記移動装置の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、前記無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回る又は基地局間のハンドオーバが発生する特定エリア内に前記移動装置が位置していることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信対象の移動装置に合わせて必要な場合にのみ冗長通信を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】通信システムにおいて実行される処理のシーケンスの例を示すシーケンス図。
【
図5】サーバ装置による移動装置の停止処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<通信システムの構成例>
図1は、本開示の一実施形態に係る通信システムの構成例を示す。ネットワーク40は、例えば、移動通信ネットワーク(モバイルネットワーク)及びインターネットを含みうる。移動通信ネットワークは、例えば、LTE(Long Term Evolution)(LTE/LTE-Advanced)規格に準拠したネットワーク、及び5G規格に準拠したネットワークである。移動通信ネットワークは、無線アクセスネットワーク(RAN)及びコアネットワークを含む。本実施形態では、ネットワーク40は、LTE規格に準拠した無線通信(LTE通信)を提供する移動通信ネットワークと、5G規格に準拠した無線通信(5G通信)を提供する移動通信ネットワークとを含む。
【0012】
移動装置10は、手動操作(例えば遠隔操作)又は自律制御により移動可能なモビリティ端末である。移動装置10は、例えば、自動運転車若しくはコネクティッドカー等の車両、又はドローン、搬送用ロボット等で構成されうる。移動装置10は、ネットワーク40によって提供される移動通信サービスを利用する。移動装置10は、移動通信サービスが提供されるエリア内で、ネットワーク40を介してサーバ装置20と通信可能である。移動装置10は、ネットワーク40の基地局との無線通信を行う通信インタフェース(I/F)として、それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる無線I/Fを備える。本実施形態では、後述するように、移動装置10は、LTE通信を行う無線I/F及び5G通信を行う無線I/Fを備える。
【0013】
サーバ装置20は、サーバアプリケーションが実装されたアプリサーバである。サーバアプリケーションは、例えば、移動装置10の動作を制御する機能、及びネットワーク40を介して取得した情報を移動装置10へ通知する機能を提供する。サーバ装置20は、それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用して、移動装置10と通信することが可能である。サーバ装置20は、予め設定された使用条件に従って冗長通信を使用して、移動装置10との通信を行う。サーバ装置20は、冗長通信を使用しない場合には第1無線通信を優先的に使用するものとする。
【0014】
なお、本実施形態では、サーバ装置20及び移動装置10は、それぞれ異なるシステムを用いる無線通信であるLTE通信及び5G通信による冗長通信を行うように構成される。即ち、第1無線通信をLTE通信、第2無線通信を5G通信として、冗長通信が行われる。あるいは、サーバ装置20及び移動装置10は、異なる周波数を用いる無線通信による冗長通信を行うように構成されてもよい。その場合、例えば、第1無線通信を800MHz帯の周波数を用いる無線通信、第2無線通信を2GHz帯の周波数を用いる無線通信として、冗長通信が行われてもよい。
【0015】
端末30は、ネットワーク40を介してサーバ装置20と通信可能なデバイスである。端末30は、サーバ装置20上のサーバアプリケーションを利用して、移動装置10へ制御情報又は通知情報(制御/通知情報)を送信できる。端末30は、以下に例示するように、種々のタイプの端末として構成されうる。
【0016】
例えば、端末30は、移動装置10(自動運転車、ドローン等)の遠隔操作を行うための遠隔操作卓で構成されてもよい。その場合、端末30は、移動装置10の遠隔操作用の制御情報をサーバ装置20へ送信しうる。サーバ装置20は、端末30から受信した制御情報に従って、移動装置10へ制御情報を送信することで、端末30からの移動装置10の遠隔操作を実現する。
【0017】
また、端末30は、移動装置10(搬送用ロボット等)の動作を遠隔で監視して、移動装置10が行う動作(作業)に関する指示を行うための遠隔監視端末で構成されてもよい。その場合、端末30は、移動装置10が行う動作(作業)に関する指示を含む制御情報をサーバ装置20へ送信しうる。端末30から受信した制御情報に従って、移動装置10へ制御情報を送信することで、端末30からの移動装置10への動作に関する指示を実現する。
【0018】
また、端末30は、交通インフラ設備の一部として交差点等のロケーションに設けられたセンサ/カメラ端末で構成されてもよい。その場合、端末30は、例えば、交差点の状況を検知するために用いられ、交差点における人又は車両を検知(撮影)して得られた検知情報(画像情報)を、ネットワーク40を介してサーバ装置20へ送信する。サーバ装置20は、端末30から受信した通知情報を移動装置10(コネクテッドカー等)へ送信することで、移動装置10における当該通知情報の使用を可能にする。
【0019】
<移動装置の構成例>
図2は、本実施形態に係る移動装置10の構成例を示すブロック図である。移動装置10は、ハードウェア構成として、制御部110、記憶部120、測位部130、第1無線I/F140及び第2無線I/F150を備えている。なお、
図2では、本実施形態の処理に関連するハードウェア構成要素のみを図示している。
【0020】
制御部110は、CPU等の1つ以上のプロセッサで構成され、移動装置10全体の動作を制御する。制御部110は、CPUに代えて、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサで構成されてもよい。
【0021】
記憶部120は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶媒体を含む。測位部130は、移動装置10の位置を測定して位置情報(例えば、緯度及び経度情報)を出力するように構成される。測位部130は、例えば、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)による測位を行って位置情報を出力するように構成されうる。
【0022】
第1無線I/F140及び第2無線I/F150は、制御部110による制御下で、ネットワーク40(移動通信ネットワーク)の基地局との無線通信を行うための無線通信インタフェースである。第1無線I/F140及び第2無線I/F150は、それぞれ異なるシステム又は周波数による無線通信を行うように構成される。本実施形態では、第1無線I/F140は、LTE規格に準拠した無線通信(LTE通信)を行うように構成され、第2無線I/F150は、は、5G規格に準拠した無線通信(5G通信)を行うように構成される。本実施形態では、移動装置10は、冗長通信を使用しない場合には第1無線I/F140を優先的に使用するように構成される。第2無線I/F150は、サーバ装置20との間で冗長通信を行う際に、第1無線I/F140に加えて使用される。
【0023】
制御部110上で動作する各機能ユニット(情報取得部111及び通信制御部112)は、記憶部120に格納されたプログラムを制御部110が実行することによって実現される。あるいは、各機能ユニットは、それぞれ1つ以上の専用のプロセッサ(処理回路)によって実現されてもよい。
【0024】
情報取得部111は、測位部130を制御して、測位部130によって生成される位置情報を取得する。また、情報取得部111は、第1無線I/F140及び第2無線I/F150によってそれぞれ送受信される信号に基づいて、移動装置10の無線通信状態を示す無線情報を取得する。情報取得部111は、取得した情報(位置情報及び無線情報)を、当該情報を取得した時刻を示す時刻を示す時刻情報とともに、記憶部120に格納又は通信制御部112へ提供する。
【0025】
無線情報は、第1無線I/F140及び第2無線I/F150のそれぞれと基地局との間の無線通信の通信品質を示す情報(例えば、受信強度を示すRSRP(Reference Signal Received Power)、又は受信品質を示すRSRQ(Reference Signal Received Quality))を含む。無線情報は更に、通信キャリア及び周波数を示す情報、並びに移動装置10が接続中のセルの識別情報(例えば、セル番号)を含みうる。
【0026】
通信制御部112は、第1無線I/F140を制御して、対応する移動通信ネットワークの基地局との無線通信(LTE通信)を行い、第2無線I/F150を制御して、対応する移動通信ネットワークの基地局との無線通信(5G通信)を行う。通信制御部112は、第1無線I/F140によるLTE通信を優先的に使用して、サーバ装置20との通信を行う。また、通信制御部112は、冗長通信の使用時には、第1無線I/F140によるLTE通信及び第2無線I/F150による5G通信を使用して、サーバ20との通信を行う。なお、通信制御部112は、サーバ装置20からの指示に従って、第1無線I/F140のみを用いた通信(非冗長通信)と、第1無線I/F140及び第2無線I/F150を用いた冗長通信との切り替えを行う。
【0027】
本実施形態において、通信制御部112は、情報取得部111によって取得された情報(位置情報及び無線情報)を、第1無線I/F140及び第2無線I/F150の少なくともいずれかを介してサーバ装置20へ送信する。また、通信制御部112は、サーバ装置20から送信された情報を、第1無線I/F140を介して、又は冗長通信の使用時には第1無線I/F140及び第2無線I/F150を介して受信する。
【0028】
<サーバ装置の構成例>
図3は、本実施形態に係るサーバ装置20の構成例を示すブロック図である。サーバ装置20は、ハードウェア構成として、制御部210、記憶部220及び通信部230を備えている。
【0029】
制御部210は、CPU等の1つ以上のプロセッサで構成され、サーバ装置20全体の動作を制御する。制御部210は、CPUに代えて、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサで構成されてもよい。
【0030】
記憶部220は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶媒体を含む。通信部230は、ネットワーク40(例えば、ネットワーク40に含まれるインターネット)に接続されている。通信部230は、制御部210による制御下で、ネットワーク40を介して外部装置との通信を行うための通信インタフェースである。
【0031】
制御部210上で動作する各機能ユニット(条件設定部211、状態監視部212、条件判定部213及び通信制御部214)は、記憶部220に格納された、サーバアプリケーションのプログラムを制御部210が実行することによって、サーバアプリケーションの機能として実現される。
【0032】
条件設定部211は、移動装置10との通信に冗長通信を使用する使用条件を設定する。冗長通信の使用条件の設定は、サーバ装置20上で動作するサーバアプリケーションの管理者によって事前に行われる。この使用条件は、移動装置10の状態に基づく判定処理に使用されるものであり、移動装置10との通信において高信頼性が求められる状況において冗長通信が使用されるように設定される。これにより、通信対象の移動装置10に合わせて必要な場合にのみ冗長通信を提供することを可能にする。条件設定部211は、設定した使用条件を示す使用条件情報を、記憶部220に保存する。
【0033】
本実施形態において、条件設定部211は、冗長通信の使用条件を、管理者による設定に従って、以下のうちの1つ以上の条件を組み合わせて設定する。
●無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回ること(例えば、品質閾値X[dBm]に対して、RSRP<X、又はRSRQ<X)。
●基地局間のハンドオーバ(HO)が発生する特定エリア(HOエリア)内に移動装置10が位置していること。
●交差点から所定範囲内の特定エリア(交差点エリア)内に移動装置10が位置していること。
●移動装置10の移動速度が速度閾値を上回ること。
●移動装置10が、特定の動作(例えば、複数の作業用ロボットによる物品の協調搬送等の協調作業)を行っていること。
●移動装置10への送信情報(送信データ)のタイプが、制御情報(例えば、ハンドル、ブレーキ又はアクセルの遠隔操作のための制御情報)又は緊急性のある情報(例えば、交差点エリアにおける人又は車両の有無等の情報)であること。
【0034】
上述のHOエリアは、移動装置10から受信され、取得情報として記憶部220に格納されている無線情報に基づいて決定可能である。具体的には、HOエリアは、記憶部220に格納されている無線情報に含まれる、セルの識別情報によって示されるセルの遷移と、当該識別情報に対応する位置情報とに基づいて決定される。決定されたHOエリアを示す情報は、特定エリア情報として記憶部220に格納され、冗長通信の使用条件についての判定に使用されうる。
【0035】
また、上述の交差点エリアは、記憶部220に格納されている地図情報に基づいて決定可能である。決定されたHOエリアを示す情報は、特定エリア情報として記憶部220に格納され、冗長通信の使用条件についての判定に使用されうる。
【0036】
状態監視部212は、通信対象の移動装置10から送信される情報を取得し、当該取得した情報に基づいて移動装置10の状態を監視し、移動装置10の状態を示す状態情報を条件判定部213へ出力する。即ち、状態監視部212は、移動装置10から送信される、移動装置10の無線通信状態を示す無線情報と、移動装置10の位置情報とに基づいて、移動装置10の状態を監視する。また、状態監視部212は、移動装置10からの取得情報を記憶部220に保存する。記憶部220には、当該取得情報として、移動装置10から受信された無線情報と位置情報とが対応付けて格納される。
【0037】
なお、状態監視部212は、移動装置10の状態の監視に、端末30からの受信情報及び/又は移動装置10への送信情報を更に用いてもよい。例えば、状態監視部212は、端末30から受信された制御情報に基づいて、移動装置10が、例えば、特定の動作を行っている状態であることを示す状態情報を出力しうる。また、状態監視部212は、端末30への送信情報のタイプに基づいて、移動装置10が、例えば、ブレーキ又はアクセル動作を行わせるための制御情報に従って、又は緊急情報に従って動作を行っている状態であることを示す状態情報を出力しうる。
【0038】
条件判定部213は、状態監視部212から出力される状態情報と、記憶部220に格納されている使用条件情報とに基づいて、通信対象の移動装置10に対して冗長通信を使用する使用条件が満たされたか否かの判定処理を行う。即ち、条件判定部213は、状態情報が示す、移動装置10の状態に基づいて、使用条件情報が示す使用条件が満たされているか否かを判定する。
【0039】
通信制御部214は、条件判定部213による判定結果に従って、移動装置10との通信を制御する。具体的には、通信制御部214は、使用条件が満たされていない場合には冗長通信を用いずに第1無線通信により移動装置10へ情報を送信し、使用条件が満たされた場合には冗長通信により移動装置10へ情報を送信するように、移動装置10との通信を制御する。
【0040】
<処理手順>
図4は、本実施形態に係る通信システムにおいて実行される処理のシーケンスの例を示すシーケンス図である。
【0041】
サーバ装置20は、端末30からの制御/通知情報(制御情報又は通知情報)の受信の開始に従って(S401)、移動装置10への第1無線通信(本例では、LTE通信)による情報の送信を開始する(S402)。サーバ装置20は、例えば、端末30から制御/通知情報を受信するごとに、第1無線通信により制御/通知情報を移動装置10へ送信する(S403)。
【0042】
移動装置10は、制御/通知情報に従って動作(移動)を行っている間に、取得した無線情報及び位置情報を定期的に(例えば、数ミリ秒又は数秒の間隔で)サーバ装置20へ送信する(S404)。なお、移動装置10は、第1無線通信により無線情報及び位置情報の送信を行う。
【0043】
サーバ装置20は、移動装置10から受信される無線情報及び位置情報に基づいて、移動装置10の状態を監視するとともに、当該移動装置10の状態に基づいて、冗長通信の使用条件が満たされたか否かを判定する(S405)。サーバ装置20は、冗長通信の使用条件が満たされていない場合には、冗長通信を用いずに第1無線通信により移動装置10への情報の送信を継続する(S403)。その間、移動装置10は、無線情報及び位置情報のサーバ装置20への送信を継続する(S404)。
【0044】
サーバ装置20は、冗長通信の使用条件が満たされた場合、移動装置10への冗長通信による情報の送信を開始する(S406)。具体的には、サーバ装置20は、第1無線通信(LTE通信)に加えて第2無線通信(5G通信)による情報の送信を開始する。サーバ装置20は、例えば、端末30から制御/通知情報を受信するごとに、同じ制御/通知情報を、第1無線通信及び第2無線通信により移動装置10へ送信する(S407)。このように冗長通信を行うことで、移動装置10との通信の信頼性を向上させることが可能である。
【0045】
移動装置10は、制御/通知情報に従って動作(移動)を行っている間に、取得した無線情報及び位置情報を定期的に(例えば、数ミリ秒又は数秒の間隔で)サーバ装置20へ送信する(S408)。なお、移動装置10は、第1無線通信により無線情報及び位置情報の送信を行ってもよいし、第1無線通信及び第2無線通信の両方で無線情報及び位置情報の送信を行ってもよい。
【0046】
サーバ装置20は、移動装置10から受信される無線情報及び位置情報に基づいて、移動装置10の状態を監視するとともに、当該移動装置10の状態に基づいて、冗長通信の使用条件が依然として満たされているか否かを判定する(S409)。サーバ装置20は、冗長通信の使用条件が満たされている間、冗長通信により移動装置10への情報の送信を継続する(S407)。その間、移動装置10は、無線情報及び位置情報のサーバ装置20への送信を継続する(S408)。
【0047】
サーバ装置20は、冗長通信の使用条件が満たされなくなると、第2無線通信(5G通信)による移動装置10への情報の送信を停止することで、冗長通信を終了する(S410)。その後、サーバ装置20は、移動装置10への第1無線通信(LTE通信)による情報の送信を継続する(S403)。更に、サーバ装置20は、端末30との通信が終了するまでの間、冗長通信の使用条件が満たされるごとに、再び冗長通信により移動装置10への情報の送信を行う(S406~S407)。このようにして、サーバ装置20は、予め設定された使用条件に従って、通信対象の移動装置10に合わせて必要な場合にのみ冗長通信を提供することが可能になる。
【0048】
<移動装置の停止処理>
図5は、サーバ装置20において、移動装置10との通信に冗長通信を使用している間に行われる、移動装置10を停止条件に従って停止させる処理の手順を示すフローチャートである。サーバ装置20は、移動装置10を停止させる停止条件が予め設定されている場合、移動装置10との通信に冗長通信を使用している間に(S406~S410)、
図5の手順による処理を行ってもよい。なお、本例では、移動装置10は、端末30(交差点等のロケーションに設けられたセンサ/カメラ端末)からの通知情報に基づいて、自律制御により移動する自動運転車でありうる。
【0049】
サーバ装置20は、S501(S406)で、上述のように冗長通信による移動装置10への情報の送信を開始すると、S502へ処理を進める。S502で、サーバ装置20は、移動装置10の状態に基づいて、移動装置10の停止条件が満たされているか否かを判定する。この停止条件は、例えば、第1無線通信及び第2無線通信の両方について、無線情報が示す通信品質が品質閾値を下回ることである。このような場合、移動装置10との安定した通信を継続することが難しくなる可能性が高いため、移動装置10の動作(移動)を停止させる処理を行う。
【0050】
サーバ装置20は、移動装置10の停止条件が満たされていない場合には、S503へ処理を進める。S503(S409)で、サーバ装置20は、移動装置10の状態に基づいて、冗長通信の使用条件が依然として満たされているか否かを判定する。サーバ装置20は、使用条件が満たされている限り、S502に処理を戻し、冗長通信を継続しながらS502の判定処理を繰り返す。一方、サーバ装置20は、冗長通信の使用条件が満たされなくなると、S504へ処理を進める。S504(S410)で、サーバ装置20は、上述のように第2無線通信による移動装置10への情報の送信を停止することで、冗長通信を終了する。
【0051】
一方、サーバ装置20は、S502において、移動装置10の停止条件が満たされると、S505へ処理を進める。S505で、サーバ装置20は、移動装置10に対して、移動の停止指示を含む制御情報を送信することで、移動装置10を停止させる。あるいは、サーバ装置20は、移動装置10に対して、移動速度の減速を指示してもよい。更に、S506で、サーバ装置20は、移動装置10以外の、周辺の他の移動装置に対して、移動装置10が位置するエリアを迂回する経路の移動を指示するための迂回指示を含む制御情報を送信する。このようにして、このようにして、サーバ装置20は、予め設定された停止条件に従って、通信対象の移動装置10をより安全に動作(運行)させることが可能になる。
【0052】
<冗長通信の使用条件の設定例>
次に、冗長通信の使用条件の設定例として、移動装置10の個別のユースケースに適した設定例について説明する。
【0053】
《例1:自動運転車》
例1として、移動装置10が、端末30(交差点等のロケーションに設けられたセンサ/カメラ端末)からの通知情報に基づいて自律制御により移動可能な自動運転車であるユースケースを想定する。このユースケースでは、例えば、自動運転車が見通しの悪い交差点に進入する際、当該自動運転車の車載センサによる検知不可能な(死角に位置する)対向車が交差点エリアに存在する場合がある。この場合に、検知不可能な対向車を、交差点に配置された端末30によって検知し、自動運転車はその検知情報に基づいて走行することが必要になる。対向車の検知情報は、端末30からサーバ装置20へ送信される。サーバ装置20が、端末30から受信した検知情報を移動装置10(自動運転車)へ送信する際に、低遅延かつ高信頼性の通信が求められる。
【0054】
また、交差点以外のエリアでも、例えば、移動装置10(自動運転車)の移動速度(走行速度)が速い場合、死角に位置する対向車の検知情報を端末30からサーバ装置20を介して移動装置10へ送信する際には、低遅延かつ高信頼性の通信が求められる。そこで、このようなユースケースでは、冗長通信の使用条件として、例えば以下の2つの条件が設定されうる。なお、移動装置10の移動速度は、例えば、移動装置10の位置情報から求められうる。あるいは、サーバ装置20は、移動装置10において(例えば測位部130を用いて)測定された移動速度を、移動装置10から取得してもよい。その場合、情報取得部111が、位置情報及び無線情報とともに、移動装置10の移動速度を示す速度情報を、移動装置10から取得してもよい。
【0055】
●使用条件1:
移動装置10の自律制御用の、緊急性を有する通知情報(例えば、人又は車両の検知情報(画像情報))を送信している間に(即ち、移動装置10が当該通知情報に基づいて動作している状態において)、移動装置10が交差点エリア内に位置している(侵入した)こと。
【0056】
●使用条件2:
移動装置10の自律制御用の、緊急性を有する通知情報(例えば、人又は車両の検知情報(画像情報))を送信している間に(即ち、移動装置10が当該通知情報に基づいて動作している状態において)、移動装置10の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)こと。
【0057】
なお、移動装置10の移動速度が高速(例:60km/h)である場合には、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)かに依らずに冗長通信を使用するように、使用条件が設定されてもよい。例えば、使用条件2は、移動装置10の自律制御用の、緊急性を有する通知情報を送信している間に、移動装置10の移動速度が第1速度閾値を上回る(高速の)移動速度(例:60km/h)であること、又は、移動装置10の移動速度が第1速度閾値以下で、かつ、第1速度閾値より低い第2速度閾値を上回る(中速の)移動速度(例:30km/h)である場合に、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)こと、に設定されてもよい。
【0058】
《例2:自動運転車》
例2として、移動装置10が、端末30から遠隔操作が行われる自動運転車であるユースケースを想定する。このユースケースでは、移動装置10に対して急な停止操作又はハンドル操作が必要になる場合、移動速度(走行速度)によっては、サーバ装置20と移動装置10との間のデータ通信に低遅延かつ高信頼性の通信が求められる。具体的には、移動速度が速く、制動距離が大きくなる場合には、サーバ装置20と移動装置10との間の通信に冗長通信を使用することで、通信の信頼性を高めることが必要になる。そこで、このようなユースケースでは、冗長通信の使用条件として、例えば以下の条件が設定されうる。なお、移動装置10の移動速度は、例えば、移動装置10の位置情報から求められうる。あるいは、サーバ装置20は、移動装置10において(例えば測位部130を用いて)測定された移動速度を、移動装置10から取得してもよい。その場合、情報取得部111が、位置情報及び無線情報とともに、移動装置10の移動速度を示す速度情報を、移動装置10から取得してもよい。
【0059】
●使用条件:
移動装置10の動作を制御するための制御情報(例えば、ハンドル、ブレーキ又はアクセルの遠隔操作のための制御情報)を送信している間に(即ち、移動装置10が当該制御情報に従って動作している状態において)、移動装置10の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)こと。
【0060】
なお、例1のユースケースと同様、移動装置10の移動速度が高速(例:60km/h)である場合には、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)かに依らずに冗長通信を使用するように、使用条件が設定されてもよい。例えば、使用条件は、移動装置10の動作を制御するための制御情報を送信している間に、移動装置10の移動速度が第1速度閾値を上回る(高速の)移動速度(例:60km/h)であること、又は、移動装置10の移動速度が第1速度閾値以下で、かつ、第1速度閾値より低い第2速度閾値を上回る(中速の)移動速度(例:30km/h)である場合に、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)こと、に設定されてもよい。
【0061】
《例3:搬送用ロボット》
例3として、移動装置10が、端末30からの制御情報に含まれる指示に従って動作する搬送用ロボットであるユースケースを想定する。このユースケースでは、例えば、搬送用ロボット(移動装置10)が、他の搬送用ロボットと協調して大型の荷物を搬送する場合、搬送用ロボット間で挙動のずれが生じると、荷物の落下等が生じて搬送が困難になることがありうる。このため、端末30から送信される制御情報に従って搬送用ロボットが高精度の動作を行えるよう、端末30からの制御情報をサーバ装置20が搬送用ロボット(移動装置10)へ送信する際に、低遅延かつ高信頼性の通信が求められる。そこで、このようなユースケースでは、冗長通信の使用条件として、例えば以下の2つの条件が設定されうる。
【0062】
●使用条件1:
移動装置10の動作を制御するための制御情報を送信(即ち、移動装置10が当該制御情報に従って動作)しており、かつ、移動装置10が、特定の動作(他の移動装置との協調動作)を行っていること。
【0063】
●使用条件2:
移動装置10の動作を制御するための制御情報を送信(即ち、移動装置10が当該制御情報に従って動作)しており、かつ、移動装置10の移動速度が速度閾値を上回り、かつ、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)こと。
【0064】
なお、例1及び例2のユースケースと同様、移動装置10の移動速度が高速である場合には、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)かに依らずに冗長通信を使用するように、使用条件が設定されてもよい。例えば、使用条件2は、移動装置10の動作を制御するための制御情報を送信している間に、移動装置10の移動速度が第1速度閾値を上回る(高速の)移動速度であること、又は、移動装置10の移動速度が第1速度閾値以下で、かつ、第1速度閾値より低い第2速度閾値を上回る(中速の)移動速度である場合に、第1無線通信の通信品質が品質閾値を下回る(又はHOエリア内に移動装置10が位置している)こと、に設定されてもよい。
【0065】
このように、本実施形態では、移動装置10の個別のユースケースに合わせて冗長通信の使用条件を設定することで、通信対象の移動装置10に合わせて必要な場合にのみ冗長通信を提供することが可能になる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のサーバ装置20は、それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する。サーバ装置20は、通信対象の移動装置10から送信される情報に基づいて、当該移動装置10の状態を監視する。サーバ装置20は、移動装置10の状態に基づいて、冗長通信の使用条件が満たされたか否かを判定する。サーバ装置20は、使用条件が満たされていない場合には冗長通信を用いずに第1無線通信により移動装置10へ情報を送信し、使用条件が満たされた場合には冗長通信により移動装置10へ情報を送信するように、移動装置10との通信を制御する。このようにして、サーバ装置20は、通信対象の移動装置10に合わせて必要な場合にのみ冗長通信を提供することが可能になる。
【0067】
[その他の実施形態]
上述の実施形態に係るサーバ装置は、コンピュータをサーバ装置として機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0068】
なお、本発明により、例えば、ネットワークを介して移動装置と通信可能なサーバ装置が必要な場合にのみ冗長通信を提供することが可能になることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0069】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10:移動装置(モビリティ端末)、20:サーバ装置、30:端末、40:ネットワーク
【要約】
【課題】通信対象の移動装置に合わせて必要な場合にのみ冗長通信を提供することを可能にする。
【解決手段】サーバ装置は、それぞれ異なるシステム又は周波数を用いる第1及び第2無線通信により並列に同じ情報を送信する冗長通信を使用する使用条件であって、予め設定された使用条件を取得する。サーバ装置は、通信対象の移動装置から送信される情報に基づいて、当該移動装置の状態を監視し、当該移動装置の状態に基づいて、冗長通信の使用条件が満たされたか否かを判定する。サーバ装置は、使用条件が満たされていない場合には冗長通信を用いずに第1無線通信により移動装置へ情報を送信し、使用条件が満たされた場合には冗長通信により移動装置へ情報を送信するように、移動装置との通信を制御する。
【選択図】
図4