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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/06 20060101AFI20231121BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20231121BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D11/101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023089970
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-06-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舞 幹子
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-155465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する(メタ)アクリレート化合物を組成物の全質量を基準として7~60質量%含有し、
光重合開始剤が、融点が80~150℃であるアシルフォスフィンオキサイド化合物、及び、融点が25℃以下であるアシルフォスフィンオキサイド化合物を含有し、
アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量の合計が、組成物の全質量を基準として1~25質量%であり、
オフセット印刷、樹脂凸版印刷用、フレキソ印刷、グラビア印刷、および、スクリーン印刷からなる群より選ばれるいずれかの印刷用、あるいは、ロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファーロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレーコーター、および、ダイコーターからなる群より選ばれるいずれかによるコーティング用である活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
融点が80~150℃のアシルフォスフィンオキサイド化合物が、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
融点が25℃以下のアシルフォスフィンオキサイド化合物が、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネートである、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
光重合開始剤が、さらに、チオキサントン系化合物を含有する、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
活性エネルギー線硬化型組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型組成物100g中0.25~0.90molである、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
さらに、蛍光増白剤を含有する、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
さらに着色剤として、顔料を含有する、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
基材上に、請求項1~いずれか記載の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ等に使用される活性エネルギー線硬化型組成物および印刷物に関するものであり、硬化性および保存安定性にすぐれ、低黄変性に優れる印刷物を提供することが可能となる活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型インキは、無溶剤型であり瞬間的に活性エネルギー線硬化乾燥することから、環境対応、印刷作業性に優れ、且つ高品質の印刷物が得られるとして、雑誌やチラシ等の印刷情報の分野から紙器等の食品包装向けパッケージ分野まで広く使用されている。
【0003】
近年は、従来から使用されている高圧水銀灯やメタルハライドランプといった光源に加えて、オゾンが発生しないオゾンレスメタルハライドランプを使用し230~420nmの紫外線を発生するような光源や、発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオードUV-LED等、様々な種類の光源が使われている。そして、これら各種光源の波長域に合わせた吸収波長の異なる光重合開始剤を複数組み合わせた発明がなされているが、十分な硬化性を得つつ、低黄変性である組成物ではないのが現状である(特許文献1)。
【0004】
また、発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオードにより照射される紫外線に対して、優れた硬化性を有し、さらに黄変がほとんどない活性エネルギー線硬化型コーティングニスの提供として、エチレン性二重結合を有する化合物、光重合開始剤および蛍光増白剤を含有する活性エネルギー線硬化型コーティングニスにおいて、光重合開始剤が、アシルフォスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型コーティングニスが挙げられているが、ニスの保存安定性の面で十分でなかった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7236578号
【文献】特開2012-188659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた硬化性、低黄変性を有し、さらには、保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型組成物およびそれを用いた印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線硬化型組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する(メタ)アクリレート化合物を組成物の全質量を基準として7~60質量%含有し、
光重合開始剤が、融点が80~150℃であるアシルフォスフィンオキサイド化合物、及び、融点が25℃以下であるアシルフォスフィンオキサイド化合物を含有し、
アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量の合計が、組成物の全質量を基準として1~25質量%であり、
オフセット印刷、樹脂凸版印刷用、フレキソ印刷、グラビア印刷、および、スクリーン印刷からなる群より選ばれるいずれかの印刷用、あるいは、ロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファーロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレーコーター、および、ダイコーターからなる群より選ばれるいずれかによるコーティング用である活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、融点が80~150℃のアシルフォスフィンオキサイド化合物が、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドである、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、融点が25℃以下のアシルフォスフィンオキサイド化合物が、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネートである、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、光重合開始剤が、さらに、チオキサントン系化合物を含有する、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する
【0013】
また、本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が、活性エネルギー線硬化型組成物100g中0.25~0.90molである、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、さらに、蛍光増白剤を含有する、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、さらに着色剤として、顔料を含有する、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、 基材上に、上記活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物を有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、硬化性、低黄変性に優れ、さらに高い保存安定性を有する活性エネルギー線硬化型組成物およびそれを用いた印刷物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下に記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0020】
本明細書で使用される用語について説明する。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタアクリレートを意味する。「活性エネルギー線」とは、紫外線を照射することによって照射されたものに化学反応等の化学的変化を生じさせ得る性質を有するエネルギー線を意味する。また、「PO」は「プロピレンオキサイド」を、「EO」は「エチレンオキサイド」を表す。
【0021】
<活性エネルギー線硬化型組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、少なくとも(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤として、特定のアシルフォスフィンオキサイド化合物2種類を含む。
以下、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物(以下、単に「組成物」ともいう)に含まれるか、または含まれ得る成分を説明する。
【0022】
[(メタ)アクリレート化合物]
本発明の組成物は、(メタ)アクリレート化合物として(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する(メタ)アクリレート化合物を含む。
本発明の組成物における(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物の含有量は、組成物の全質量を基準として5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
【0023】
(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する化合物として、具体的には、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレート化合物、などが挙げられる。
【0024】
また、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイル基を1~3個有する化合物を用いることもできる。
【0025】
(メタ)アクリロイル基を1~3個有する(メタ)アクリレート化合物として、具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリンなどの(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリレート化合物、
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能(メタ)アクリレート化合物、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を3個有する3官能(メタ)アクリレート化合物等があげられる。
【0026】
また、(メタ)アクリレート化合物として、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等も用いることができる。
【0027】
ウレタンアクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0028】
ポリエステルアクリレートは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリカルボン酸と、水酸基含有(メタ)アクリレート等とを反応させて得ることができる。
【0029】
エポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリレート基としたものが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0030】
本発明において、上記(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明の組成物は、組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が、組成物100g中0.25~0.90molとなるものが好ましい。この範囲であると、十分な硬化性と十分な保存安定性を両立でき、最適な印刷を行うことができる。さらに、組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量は、十分な硬化性と最適な印刷適性を確保するため、組成物100g中0.28~0.80molとなるものが好ましい。なお、組成物100g中の(メタ)アクリロイル基の含有量(mol)は、(メタ)アクリレート化合物の構造から算出される分子量を用い、配合量100g当たりの(メタ)アクリロイル基のモル数を計算で求めた値である。
【0032】
[光重合開始剤]
本発明の組成物は、光重合開始剤を含有する。本発明における重合開始剤は、光の作用、または増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカルを生成する化合物であり、中でも、露光という手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0033】
本発明の組成物は、光重合開始剤として、融点が80~150℃であるアシルフォスフィンオキサイド化合物、及び、融点が25℃以下であるアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む。
【0034】
さらに、十分な硬化性および低黄変性に優れ、保存安定性を確保するためには、アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有総量が組成物の全質量を基準として1~25質量%であることが好ましい。より好ましくは、組成物全質量中3~18質量%である。
【0035】
融点が80~150℃であるアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(融点:91℃)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(融点:127℃)、2,4,6-トリメチルベンゾイル―ビス(4-メチルフェニル)フォスフィニルオキサイド(融点:122℃)があげられる。
これらのうち、融点が100~150℃であるものを用いることが好ましく、特に、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを用いることが好ましい。
【0036】
融点が25℃以下であるアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(融点:マイナス12℃)があげられる。
これらのうち、融点が-50~25℃であるものを用いることが好ましく、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを用いることがより好ましい。
【0037】
また、光重合開始剤として、チオキサントン系化合物を用いることが好ましい。チオキサントン系化合物を用いることで、さらに十分な硬化性を有することが可能である。
【0038】
チオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0039】
また、光重合開始剤として、上記以外の光重合開始剤も用いることができる。具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、などが挙げられる。
【0040】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノンなどが挙げられる。
【0041】
ジアルコキシアセトフェノン系化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0042】
α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0043】
α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル-1-ブタノンなどが挙げられる。
【0044】
本発明において、アシルフォスフィンオキサイド化合物2種類は、単独で用いてもよく、その他の光重合開始剤を組み合わせて用いてもよい。その他の光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明の組成物に紫外線を照射して硬化させる場合、組成物に光重合開始剤を添加するだけでよいが、硬化性をより向上させるために、光増感剤を併用することもできる。
光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、および4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のアミン類が挙げられる。
【0046】
[樹脂]
本発明の組成物は、硬化性を向上させるために、樹脂を含有することができる。
【0047】
本発明における樹脂としては、(メタ)アクリレート化合物と優れた相溶性を有するものが好ましく、ジアリルフタレート樹脂、ロジン変性樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体のような合成ゴム、等が挙げられる。
【0048】
[蛍光増白剤]
【0049】
本発明において使用される蛍光増白剤とは、紫外線を選択的に吸収し、紫~青色の光(可視光)に変え、発光させる能力を持ったものである。すなわち、本発明の蛍光増白剤は、蛍光着色剤でも良く、紫外線を吸収、好ましくは315nm~450nm、さらに好ましくは、350nm~410nmの紫外線を吸収するときに基底状態から励起状態へと変化することにより、無色から有色に発光するものであれば、特に制限されるものではなく、蛍光着色剤、蛍光増白剤などいずれも使用でき、染料でも顔料でもよい。
【0050】
例えば、ベンゾオキサゾール系、オキサゾール系、スチルベン系、クマリン系、ピラゾリン系、イミダゾール系、ナフタルイミド系、ビスベンゾオキサゾール系、ビススチリルビフェニル系の化合物、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体等が挙げられる。
【0051】
具体的には、2,5-チオフェンジイルビス-(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)、ベンゾオキサゾール-2,2’-(2,5-チオフェンジイル)-ビス-[5-(1,1-ジメチルエチル)]、2,2’-(1,2-エテンジイルジ-4,1-フェニレン)ビス-ベンゾオキサゾール、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス-(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸イミド、2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール、2,2’-ビス-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール)、3-フェニル-7-(4-メチル-6-ブチルオキシベンゾオキサゾール)クマリン、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾル-2-イル)スチルベン、4-メチル-7-ジエチルアミノクマリン、2,4-ジメトキシ-6-(1’-ピレニル)1,3,5-トリアジン、1,4-ビス(ベンゾオキサゾル-2-イル)ナフタレン、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾル-2-イル)スチルベン、4-(ベンゾオキサゾル-2-イル)-4’-(5-メチルベンゾオキサゾル-2-イル)スチルベン、4,4’-ビス-(5-メチルベンゾオキサゾル-2-イル)スチルベン、3-フェニル-7-(2H-ナフト-[[1,2-d]]トリアゾル-2-イル)クマリン、4,4’-ビス(2-メチトキシスチリル)-ビフェニル、2,5-ビス-(5-tert-ブチルベンゾオキサゾル-2-イル)チオフェン、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビス-(2-(メトキシフェニル)エテニル)が挙げられ、特に、ビスベンゾオキサゾール系の化合物が好ましく、一般式(1)で表される化合物である2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)がより好ましい。
【0052】
蛍光増白剤の添加量は組成物の全質量を基準として0.01~5質量%であることが好ましい。添加量がこの範囲であることで、紫外線を照射したときの発色と溶解性とが良好になる。
【0053】
<光重合禁止剤>
本発明の組成物は、光重合禁止剤を含むことができる。光重合禁止剤を含むことで、優れた保存安定性を発現できる。
【0054】
本発明における光重合禁止剤としては、保存安定性の観点から、ニトロソ系化合物、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる1種を含むことが好ましく、ニトロソ系化合物、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物からなる群より選ばれる2種以上を含むことがより好ましい。
【0055】
ニトロソ系化合物としては、ニトロソベンゼン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、ピクリン酸、クペロン、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0056】
フェノール系化合物としては、(アルキル)フェノール、p-メトキシフェノール、o-イソプロピルフェノール、カテコール、レゾルシン、t-ブチルカテコール、ピロガロール、ジブチルクレゾール、グアヤコール等が挙げられる。
【0057】
キノン系化合物としては、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等が挙げられる。
【0058】
ピペリジン系化合物としては、フェノチアジン等が挙げられる。
【0059】
また、本発明における光重合禁止剤は、上述したニトロソ系化合物、フェノール系化合物、キノン系化合物、および、ピペリジン系化合物以外の光重合禁止剤(「その他の光重合禁止剤」ともいう)を併用することも可能である。その他の光重合禁止剤の具体例としては、1,1-ピクリルヒドラジル、ジチオベンゾイルジスルフィド、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、等が挙げられる。
【0060】
光重合禁止剤の含有量は、組成物の全質量を基準として0.05~5.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
【0061】
[着色剤]
本発明の組成物には、着色剤を用いることも可能である。着色剤としては、顔料および染料のうち少なくとも一方を用いることができるが、耐光性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
【0062】
本発明における顔料としては、特に制限はなく、公知の顔料を用いることができる。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれも用いることができる。
【0063】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック類、酸化鉄、酸化チタンなどが挙げられる。
【0064】
有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料; β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料;銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(例えば、塩素化または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系等の多環式顔料および複素環式顔料などが挙げられる。
【0065】
更に詳しくは、C.I.カラーインデックスで示すと、黒顔料としては、C.I.Pigment Black 1、6、7、9、10、11、28、26、31などが挙げられる。
【0066】
白顔料としては、C.I.Pigment White 5、6、7、12、28などが挙げられる。
【0067】
黄顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、18、24、73、74、75、83、93、95、97、98、100、108、109、110、114、120、128、129、138、139、174、150、151、154、155、167、180、185、213などが挙げられる。
【0068】
青またはシアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62などが挙げられる。
【0069】
赤または紅顔料としては、C.I.Pigment RED 1、3、5、19、21、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、50、52、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、90、104、108、112、114、122、144、146、148、149、150、166、168、169、170、172、173、176、177、178、184、185、187、193、202、209、214、242、254、255、264、266、269、C.I.Pigment Violet 19などが挙げられる。
【0070】
緑顔料としては、C.I.Pigment Green 1、2、3、4、7、8、10、15、17、26、36、45、50などが挙げられる。
【0071】
紫顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、2、3、4、5:1、12、13、15、16、17、19、23、25、29、31、32、36、37、39、42などが挙げられる。
オレンジ顔料としては、C.I.Pigment Orange 13、16、20、34、36、38、39、43、51、61、63、64、74などが挙げられる。
【0072】
本発明において、上記顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本発明における着色剤は、目的の濃度が再現可能であれば任意の含有量で使用することが可能であり、組成物の全質量を基準として5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは10~25質量%である。
【0074】
[体質顔料]
本発明の組成物は、体質顔料を添加することができる。
本発明における体質顔料としては、無機微粒子を用いる事が好ましい。
【0075】
体質顔料として、具体的には、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、石膏、クレイ(ChinaClay)、シリカ、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、組成物の流動性調整、ミスチング防止、紙等の印刷基材への浸透防止といった効果を付加する事が出来る。
【0076】
[添加剤]
本発明の組成物は、目的に応じて、添加剤として、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤等の各種添加剤を、さらに含んでもよい。各種添加剤は、常法によって組成物に添加することができる。
本発明の組成物に対して各種添加剤を添加する場合、他の材料の効果を阻害しない範囲で配合量を調整することが好ましい。各種添加剤の配合量は、組成物全量中15質量%以下であることが好ましい。
【0077】
本明細書において、活性エネルギー線とは、代表的に、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等が挙げられるが、ラジカル性活性種を発生させ得るならば、いかなるエネルギー種でもよく、可視光線、赤外線、およびレーザー光線でもよい。
紫外線を発生するものとしては、例えば、LED、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、およびアルゴンレーザーなどが挙げられる。
【0078】
本発明の組成物は、各種基材や、各種書籍用印刷物、紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。
【0079】
<積層体>
本発明における積層体は、本発明の組成物を、基材上に印刷またはコーティングし、活性エネルギー線にて硬化することによって得られる。基材としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0080】
本発明の組成物を、基材上に印刷またはコーティングする方法としては、ロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファーロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレーコーター、ダイコーター、オフセット印刷( 湿し水を使用する通常の平版及び湿し水を使用しない水無し平版)、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。
【実施例
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本明細書に記載の「部」は質量部を表し、「%」は質量%を示す。
【0082】
以下の実施例で実施した各種測定の詳細は以下のとおりである。
【0083】
実施例1
[活性エネルギー線硬化型組成物1の製造](フレキソ印刷、ロールコーター印刷用)
(メタ)アクリレート化合物として、MIRAMERM3130を42.6部、MIRAMERM600を45.0部 光重合開始剤として、Omnirad 819を1.0部、Omnirad TPO-Lを10.0部、光重合禁止剤として、H-BHTを0.3部、ポリストップ7300Pを0.1部、添加剤として、脂肪酸エステルを1.0部加え、ディスパーによって良く混合し、活性エネルギー線硬化型組成物1を作成した。
【0084】
実施例2-17、比較例1-8
[活性エネルギー線硬化型組成物2~25の製造](フレキソ印刷、ロールコーター印刷用)
表1に記載した原料と量を変更した以外は、活性エネルギー線硬化型組成物1と同様の方法で活性エネルギー線硬化型組成物2~25を得た。なお、表中の数値は特に断りがない限り「質量部」を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0085】
実施例18
[活性エネルギー線硬化型組成物26の製造](オフセット印刷、樹脂凸版印刷用)
(メタ)アクリレート化合物として、MIRAMER M240を29.8部、MIRAMER M3130を5.0部、MIRAMER M410を8.0部、MIRAMER M600を7.0部、MIRAMER PE210を20.0部、光重合開始剤として、Omnirad 819を1.0部、Omnirad TPO-Lを6.0部、光重合禁止剤として、Q-1301を0.1部、TBHQを0.1部、樹脂として、DAP-Aを7.0部、添加剤として、脂肪酸エステルを1.0部、WAXを3.0部、ファインオキソコール180を2.0部、体質顔料として、ハイフィラー5000PJを1.0部、レオロシールMT-10Cを9.0部加え、ミキサーを用いて攪拌混合し、3本ロールにて最大粒径が15μm以下になるように分散し、活性エネルギー線硬化型組成物26を作成した。
【0086】
実施例19-35、比較例9-15
[活性エネルギー線硬化型組成物27~50の製造](オフセット印刷、樹脂凸版印刷用)
表2に記載した原料と量を変更した以外は、活性エネルギー線硬化型組成物26と同様の方法で活性エネルギー線硬化型組成物27~50を得た。なお、表中の数値は特に断りがない限り「質量部」を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表1】
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表2】
【0092】
【表2】
【0093】
上記活性エネルギー線硬化型組成物1、26の製造方法、および、表1、2中の略語は、以下の通りである。
[(メタ)アクリレート化合物]
・MIRAMER M216:MIWON社製、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、分子量 328
・MIRAMER M3130:MIWON社製、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、分子量 428
・エベクリルOTA480:ダイセル・オルクネクス株式会社製 グリセリンプロポキシトリアクリレート、分子量428
・MIRAMER M410:MIWON社製、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、分子量482
・MIRAMER M600:MIWON社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、分子量578.6
・MIRAMER M240:MIWON社製、ビスフェノールAEO変性ジアクリレート、分子量 512.59
・MIRAMER PE210:MIWON社製、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、分子量 520
[光重合開始剤]
・OmniradTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、融点 91℃
・Omnirad819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、融点 127℃
・OmniradTPO―L:エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、融点 マイナス12℃
・Ltcure TMO:PiChem社製 (ジ-p―トリルホスホリル)(メシチル)メタノン、融点 122℃
・Omnirad4MBZ:4-メチルベンゾフェノン
・OmniradDETX:IGM社製、2,4-ジエチルチオキサントン
・Omnirad1173:IGM社製、2-ヒドロキシ―2―メチル1-フェニル-1―プロパノン
・アミノアルコールMDA:日本乳化剤社製、N-メチルジエタノールアミン
[蛍光増白剤]
・チノパールOBCO:BASFジャパン社製2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)
[樹脂]
・DAP-A:株式会社大阪ソーダ製、ジアリルフタレート樹脂
[体質顔料]
・レオロシールMT-10C:株式会社トクヤマ製、シリカ
・ハイフィラー5000PJ:松村産業株式会社:タルク
[光重合禁止剤]
・H-BHT:本州化学工業社製、ジブチルヒドロキシトルエン
・ポリストップ7300P:伯東株式会社製、ピペリジン系化合物、ピペリジン誘導体
・Q-1301:富士フィルム和光純薬株式会社製、ニトロソ系化合物、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・TBHQ:精工化学株式会社製、フェノール系化合物、2-t-ブチルハイドロキノン
[添加剤]
・脂肪酸エステル:アデカルーブF-3HH
・WAX:三洋化成工業製 サンワックス161P ポリエチレン樹脂
・ファインオキソコール180:日産化学株式会社製 イソオクタデシルアルコール レベリング剤
【0094】
[活性エネルギー線硬化型組成物の評価]
得られた活性エネルギー線硬化型組成物1~50について、下記の方法に従い、評価した。
各評価の結果を表1、2に示す。
【0095】
[硬化性]
(硬化性試験片の作成方法―1)
得られた活性エネルギー線硬化型組成物1~25について、北越マリコート(北越コーポレーション(株)製のコートボール紙)にFDカルトンX(東洋インキ(株)製の活性エネルギー線硬化型インキ)の墨インキを印刷、硬化させたインキ層上に、表1に示す活性エネルギー線硬化型組成物をバーコーター♯2にて塗工した。その後、AMS社製LED硬化装置(波長385nm)を用いてコンベア速度50m/minにて紫外線を照射し、印刷面を完全に乾燥させた。

(硬化性試験片の作成方法―2)
得られた活性エネルギー線硬化型組成物26~50について、北越マリコート(北越コーポレーション(株)製のコートボール紙)にFDカルトンX(東洋インキ(株)製の活性エネルギー線硬化型インキ)の墨インキを印刷、硬化させたインキ層上に、RIテスター(テスター産業株式会社製)4分割ロール、インキ量0.075mlの条件にて展色物を作成した。その後AMS社製LED硬化装置(385nm)を用いてコンベア速度50m/minにて紫外線を照射し、印刷面を完全に乾燥させた。
【0096】
上記方法で作成した試験片を用い、印刷面を擦り評価した。擦れが少ない程、硬化性が良好であると判断ができる。
評価基準は下記に示した通りであり、◎、〇 が実用上好ましい。
◎:印刷面への擦れがない
〇:印刷面表層まで擦れる
△:印刷面の中間部まで擦れる
×:印刷面底部まで擦れる
【0097】
[黄変性]
(硬化性試験片の作成方法―3)
得られた活性エネルギー線硬化型組成物1~25について、北越マリコート(北越コーポレーション(株)製のコートボール紙)に、表1に示す活性エネルギー線硬化型組成物をバーコーター♯2にて塗工した。その後、AMS社製LED硬化装置(波長385nm)を用いてコンベア速度50m/minにて紫外線を照射し、印刷面を完全に乾燥させた。

(硬化性試験片の作成方法―4)
得られた活性エネルギー線硬化型組成物26~50について、北越マリコート(北越コーポレーション(株)製のコートボール紙)に、RIテスター(テスター産業株式会社製)4分割ロール、インキ量0.075mlの条件にて展色物を作成した。その後AMS社製LED硬化装置(385nm)を用いてコンベア速度50m/minにて紫外線を照射し、印刷面を完全に乾燥させた。
【0098】
上記方法で作成した試験片を用い、印刷面をX-rite社製分光高度計にてb値を測色し、紙のみと印刷面でのb値の差を確認した。
評価基準は下記に示した通りであり、◎、〇 が実用上好ましい。
◎:紙のみと印刷面でのb値の差異が0以上3.0未満
〇:紙のみと印刷面でのb値の差異が3以上5.0未満
△:紙のみと印刷面でのb値の差異が5.0以上7.0未満
×:紙のみと印刷面でのb値の差異が7.0以上
【0099】
[黄変性―2]
【0100】
上記方法で作成した試験片を用い、ブラックライト(325nm、365nmの発光波長域の光源)を照射し、白色度を目視にて評価を行った。
評価は、◎(良好)、〇、△、×(不良)の4段階により評価を行った。なお、◎、〇が実用上好ましい。
【0101】
[安定性―1]
金属製の容器に活性エネルギー線硬化型組成物を100ml充填し、容器密閉し、10℃、25℃、60℃で保存した。6か月後に取り出し、Thermo Scientific製HAAKE Rheo Stress 6000で粘度を測定し、試験開始前の粘度に対する比率を算出した。評価基準は下記に示した通りであり、◎、〇 が実用上好ましい。
◎:試験前の粘度と比較した増粘率が120%未満
〇:試験前の粘度と比較した増粘率が120%以上150%未満
△:試験前の粘度と比較した増粘率が150%以上180%未満
×:試験前の粘度と比較した増粘率が200%以上

[安定性―2]
金属製の容器に活性エネルギー線硬化型組成物を100ml充填し、容器密閉し、10℃、25℃、60℃で保存した。6か月後に取り出し、最大粒系の確認を行った。◎、〇 が実用上好ましい。
◎:0~15μm未満である。
〇:15μm~25μm未満である。
△:25μm~50μm未満である。
×:50μm以上である。
【0102】
[安定性]
上記2つの安定性に関する評価を総合して、[安定性―1][安定性―2]2つの評価ですべて実用上好ましい(◎、〇)ものを、安定性が〇(良好)であると判断し、上記2つの評価にて、どちらか一方でも実用上安定性が劣ると判断したもの(△、×)がある場合は、安定性が×(悪い)と判断する。
【0103】
表1、2に示すように、実施例1~35は、硬化性、黄変性、安定性のいずれも実用上問題なく良好であった。
一方、比較例1、比較例9、はアシルフォスフィンオキサイド化合物を含有せず、硬化性が不足していた。比較例2、比較例3、比較例10、比較例11、比較例12は融点が80~150℃であるアシルフォスフィンオキサイド化合物1種類での使用であり、安定性が不足していた。
比較例4、比較例13は、融点が25℃以下であるアシルフォスフィンオキサイド化合物1種類での使用であり、硬化性が不足していた。
比較例7は、光重合開始剤量が多いことから、黄変性が十分でなく、比較例5、6、8、比較例14、15については、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する(メタ)アクリレート化合物の含有量が不足しており、硬化性が十分でなかった。
【要約】
【課題】本発明の目的は、優れた硬化性、低黄変性を有し、さらには、保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化型組成物およびそれを用いた印刷物を提供することである。
【解決手段】上記課題は、(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、(メタ)アクリレート化合物が、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有する(メタ)アクリレート化合物を含有し、光重合開始剤が、融点が80~150℃であるアシルフォスフィンオキサイド化合物、及び、融点が25℃以下であるアシルフォスフィンオキサイド化合物を含有し、アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量の合計が、組成物の全質量を基準として1~25質量%である活性エネルギー線硬化型組成物により解決できる。
【選択図】なし