(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】メスコネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
A61M39/10
(21)【出願番号】P 2019120361
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 聖一
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-512946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0218757(US,A1)
【文献】特開2001-269412(JP,A)
【文献】特開2015-066068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が開放された開放端部であり、上端部が閉塞された閉塞端部である内部が中空円筒状の弾性体であって、オスコネクタの接続時に該オスコネクタにより下方に押されて開口
し、該オスコネクタが挿入されることにより該オスコネクタと該弾性体の内部とを連通させるスリットが該閉塞端部に設けられ
、該閉塞端部は、該下方への押下により下方に変位し、かつ該オスコネクタの挿入により径方向外方へ押し広げられる該弾性体と、
円筒状の内面を有し、該内面により前記弾性体を保持する筐体とを備え、
前記筐体は、前記オスコネクタの外径に対応する内径を有して前記閉塞端部の径方向外周に接し、該閉塞端部を該閉塞端部の上端面が該筐体の上端面以下の位置で径方向に支持する挿入部を備え、
前記挿入部は、前記弾性体の軸線方向に向かう方向に突出して前記閉塞端部の上端面又は前記径方向外周に接して、前記閉塞端部の上方への変位を防止する押え部を備え
、
前記筐体は、
前記挿入部の下方側に外側移行部を介して隣接し、該挿入部よりも内径が大きい拡径内径部と、
前記拡径内径部よりも下方側に位置し、該拡径内径部よりも径が大きい大内径部とを備え、
前記弾性体は、前記閉塞端部の下方側に内側移行部を介して隣接し、該閉塞端部の外径よりも大きい外径を有する拡径外径部を備え、
前記大内径部と前記拡径外径部との間には、前記オスコネクタの接続時に前記弾性体の一部を収容する収容空間が形成され、
前記外側移行部、前記拡径内径部、及び前記内側移行部により、前記オスコネクタの接続時に前記下方に変異して径方向外方へ押し広げられる前記閉塞端部の一部を逃がす逃し空間が、前記収容空間とは分離して画定されることを特徴とするメスコネクタ。
【請求項2】
前記押え部は、前記挿入部の内壁の上端部から前記軸線方向に向かう方向に突出した環状突出部により構成されることを特徴とする請求項1に記載のメスコネクタ。
【請求項3】
前記押え部は、前記挿入部の内壁により形成される押圧面であって、該内壁の周方向に垂直な断面がその両端部にかけて前記軸線方向と反対方向に湾曲して前記弾性体の前記閉塞端部の径方向外周を該軸線方向に押圧する該押圧面により構成されることを特徴とする請求項1に記載のメスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三方活栓の混注口等に適したメスコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三方活栓の混注口に適したメスコネクタとして、下端部が開放された開放端部で、上端部が閉塞された閉塞端部となっている中空円筒状の弾性体と、円筒状の内面により該弾性体を保持する筐体とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のメスコネクタにおける弾性体の閉塞端部側の端面には、オスコネクタの接続時に該オスコネクタにより下方に押されて開口することにより該オスコネクタを該弾性体の内部に連通させるスリットが設けられる。また、該メスコネクタの筐体は、オスコネクタの外径に対応する内径を有して該閉塞端部の径方向外周に接し、該閉塞端部を径方向において支持する挿入部を備える。
【0004】
メスコネクタにオスコネクタを接続して使用する前後には、感染予防のためにメスコネクタにおけるオスコネクタを接続する側の端面をふいて消毒する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のメスコネクタによれば、これを適用した三方活栓の流路側をE.O.(エチレンオキサイド)ガスで滅菌するときの加圧工程で、メスコネクタの弾性体が上方に押されて、弾性体の上端面が筐体の挿入部の上端面よりも上方にはみ出すことがある。この場合、弾性体のはみ出した部分の外周も消毒する手間が生じる。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、消毒しやすいメスコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のメスコネクタは、
下端部が開放された開放端部であり、上端部が閉塞された閉塞端部である内部が中空円筒状の弾性体であって、オスコネクタの接続時に該オスコネクタにより下方に押されて開口し、該オスコネクタが挿入されることにより該オスコネクタと該弾性体の内部とを連通させるスリットが該閉塞端部に設けられ、該閉塞端部は、該下方への押下により下方に変位し、かつ該オスコネクタの挿入により径方向外方へ押し広げられる該弾性体と、
円筒状の内面を有し、該内面により前記弾性体を保持する筐体とを備え、
前記筐体は、前記オスコネクタの外径に対応する内径を有して前記閉塞端部の径方向外周に接し、該閉塞端部を該閉塞端部の上端面が該筐体の上端面以下の位置で径方向に支持する挿入部を備え、
前記挿入部は、前記弾性体の軸線方向に向かう方向に突出して前記閉塞端部の上端面又は前記径方向外周に接して、前記閉塞端部の上方への変位を防止する押え部を備え、
前記筐体は、
前記挿入部の下方側に外側移行部を介して隣接し、該挿入部よりも内径が大きい拡径内径部と、
前記拡径内径部よりも下方側に位置し、該拡径内径部よりも径が大きい大内径部とを備え、
前記弾性体は、前記閉塞端部の下方側に内側移行部を介して隣接し、該閉塞端部の外径よりも大きい外径を有する拡径外径部を備え、
前記大内径部と前記拡径外径部との間には、前記オスコネクタの接続時に前記弾性体の一部を収容する収容空間が形成され、
前記外側移行部、前記拡径内径部、及び前記内側移行部により、前記オスコネクタの接続時に前記下方に変異して径方向外方へ押し広げられる前記閉塞端部の一部を逃がす逃し空間が、前記収容空間とは分離して画定されることを特徴とする。
【0009】
本発明では、挿入部によって、閉塞端部の端面が筐体の上端面以下の位置で支持されているとともに、挿入部に設けられた押え部によって、閉塞端部の上方への変位が防止されているため、閉塞端部の上端面が筐体の上端面よりも上方に変位しにくい。
【0010】
よって、本発明のメスコネクタは、弾性体の上端面を消毒すれば足り、弾性体の外周を消毒する必要がないので消毒しやすい。
これによれば、オスコネクタをメスコネクタに接続する際に、弾性体のスリットが押し開かれながら弾性体の閉塞端部が押されて筐体の挿入部よりも接続方向側に移動するが、このとき、移動した閉塞端部の一部が逃し空間内に逃げるので、オスコネクタは、スムーズに弾性体の内側に挿入される。
また、オスコネクタの挿入が進行するにつれて、弾性体の閉塞端部よりも下方側の部分が収容空間に収容されてゆく。これにより、容易にオスコネクタを挿入してメスコネクタに接続することができる。
【0011】
本発明において、前記押え部は、前記挿入部の内壁の上端部から前記軸線方向に向かう方向に突出し、前記閉塞端部の上端面に接する環状突出部により構成されるのが好ましい。
【0012】
これによれば、閉塞端部の上方への変位を確実に防止することができる。
【0013】
本発明において、前記押え部は、前記挿入部の内壁により形成される押圧面であって、該内壁の周方向に垂直な断面がその両端部にかけて前記軸線方向と反対方向に湾曲して前記弾性体の前記閉塞端部の径方向外周を該軸線方向に押圧する該押圧面により構成されてもよい。
【0014】
この場合も、閉塞端部の上方への変位を極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るメスコネクタを備える三方活栓を示す断面図である。
【
図2】
図1の三方活栓における弾性体を示す断面斜視図である。
【
図3】
図3Aは、
図1の三方活栓においてオスコネクタを挿入するときの様子を示す断面図であり、
図3Bは、オスコネクタの挿入が完了したときの様子を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るメスコネクタを備える三方活栓を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る三方活栓1の側管2に連結されたメスコネクタ3を示す。このメスコネクタ3は、オスコネクタが挿入される弾性体4と、円筒状の内面を有し、該内面により弾性体4を保持する筐体5と、弾性体4と筐体5との間に形成されてオスコネクタの挿入時に弾性体4の一部を収容する収容空間6とを備える。
【0020】
オスコネクタとしては、例えば、オスルアーテーパを有するものを使用することができる。
【0021】
弾性体4は、中空円筒状で、上端部が開放された開放端部7となっており、下端部が閉塞された閉塞端部8となっている。弾性体4は、例えば、シリコンゴムで構成することができる。
【0022】
図2に示すように、弾性体4には、オスコネクタの接続時に該オスコネクタにより下方に押されて開口することにより該オスコネクタと弾性体4の内部とを連通させるスリット9が閉塞端部8に設けられる。ただし、オスコネクタを接続していない状態では、スリット9の底部10は閉塞されており、メスコネクタ3は、その外部に対して密閉された状態に保持される。すなわち、メスコネクタ3は、メカニカルバルブではなく、スプリットセプタムにより、セフィオフロー(閉鎖式輸液)を実現している。
【0023】
筐体5は、オスコネクタの外径に対応する内径を有して弾性体4の閉塞端部8の径方向外周に接し、閉塞端部8をその上端面が筐体5の上端面以下の位置で支持する挿入部11と、挿入部11のD方向側に外側移行部12を介して隣接し、挿入部11よりも内径が大きい拡径内径部13と、拡径内径部13よりもD方向側に位置し、拡径内径部13よりも径が大きい大内径部28とを備える。
【0024】
また、弾性体4は、閉塞端部8のD方向側に内側移行部14を介して隣接し、閉塞端部8の外径よりも大きい外径を有する拡径外径部15を備える。収容空間6は、大内径部28と拡径外径部15との間に形成される。
【0025】
外側移行部12、拡径内径部13、及び弾性体4の内側移行部14により、オスコネクタの挿入時に弾性体4の閉塞端部8の一部を逃がす逃し空間16が、収容空間6とは分離して画定される。
【0026】
挿入部11は、その内壁の上端部から弾性体4の軸線方向に向かう方向に突出した環状突出部17を備える。環状突出部17は、該軸線方向に向かう方向に突出して閉塞端部8の上端面に接して、閉塞端部8の上方への変位を防止する押え部として機能する。
【0027】
筐体5は、側管2に一体的に連結した第1部分18と、第1部分18に接合された第2部分19とで構成される。収容空間6は、第1部分18と第2部分19とが接合している部分と、弾性体4との間に形成される。弾性体4の開放端部7は、第1部分18の内面に設けられた段差部20により密閉して支持され、側管2に接続される。
【0028】
側管2は、三方活栓1の基部21に接続される。基部21には、導入管22及び導出管23が接続される。基部21は、側管2、導入管22、導出管23相互間の接続を切り替えるための円柱体24を備える。円柱体24は、側管2、導入管22、及び導出管23を中継してこれらの接続状態を切り替えるための内部接続路25を備える。
【0029】
具体的には、円柱体24が
図1のような角度に位置するとき、側管2、導入管22、及び導出管23が接続された状態にある。また、円柱体24を、
図1の角度から一方又は他方に90°回転させることにより、側管2と導入管22が接続し、又は側管2と導出管23が接続した状態とすることができる。また、円柱体24を図の角度から45°等に傾けることにより、側管2、導入管22、及び導出管23の接続をすべて遮断することができる。
【0030】
なお、側管2から弾性体4の開放端部7にわたる管路を左右に仕切っている板状部材の上端部は、第1部分18の上下方向中間部に存在する小さい段差部分よりも上方に位置する。
【0031】
図3Aは三方活栓1においてオスコネクタ26を接続するときの様子を示しており、
図3Bはオスコネクタ26の接続が完了したときの様子を示す。
図3Aのように、メスコネクタ3にオスコネクタ26を接続する際には、オスコネクタ26を、弾性体4の閉塞端部8に押し当てて、D方向に沿って弾性体4の内側に挿入する。
【0032】
このとき、
図3Aのように、弾性体4の閉塞端部8は、D方向に押されて筐体5の挿入部11よりもD方向の側に押される。また、スリット9(
図2参照)に侵入したオスコネクタ26により径方向外方に押される。これにより、閉塞端部8の一部が逃し空間16に流入し、逃し空間16は弾性体4で埋められることになる。
【0033】
また、このとき、オスコネクタ26からの押圧力により、弾性体4の中間部分が、筐体5との間の収容空間6内に張り出し、その一部が収容空間6内に収容される。このようにして、オスコネクタ26は、弾性体4のスリット9の底部10(
図2参照)を確実に貫通することができる。
【0034】
オスコネクタ26をさらに挿入することによって、オスルアーテーパによりオスコネクタ26が挿入部11の環状突出部17に接合し、
図3Bの状態となる。これにより、メスコネクタ3に対するオスコネクタ26の接続が完了し、オスコネクタ26が弾性体4を介して側管2に密閉して接続された状態となる。
【0035】
本実施形態によれば、オスコネクタ26をメスコネクタ3に接続する際に、弾性体4の閉塞端部8が押されてD方向に移動し、閉塞端部8の一部が逃し空間16内に逃げるので、オスコネクタ26を、スムーズに弾性体4の内側に挿入し、弾性体4のスリット9の底部10を確実に貫通させることができる。
【0036】
また、挿入部11によって、閉塞端部8の端面が筐体5の上端面以下の位置で支持されているとともに、挿入部11に設けられた押え部としての環状突出部17によって、閉塞端部8の上方への変位が防止されているため、閉塞端部8の上端面が筐体11の上端面よりも上方に変位しにくい。
【0037】
よって、本実施形態のメスコネクタ3は、弾性体4の上端面を消毒すれば足り、弾性体4の外周を消毒する必要がないので消毒しやすい。
【0038】
図4は、本発明の第2実施形態に係る三方活栓1の側管2に連結されたメスコネクタ3aを示す。
図4に示すように、挿入部11は、上述の環状突出部17に代えて、挿入部11の内壁により形成され、弾性体4の閉塞端部8の径方向外周を弾性体4の軸線方向に押圧する押圧面27を備える。押圧面27は、該内壁の周方向に垂直な断面がその両端部にかけて該軸線方向と反対方向に湾曲した形状を有する。
【0039】
すなわち、押圧面27は、弾性体4の軸線方向に向かう方向に突出して閉塞端部8の径方向外周に接して、閉塞端部8の上方への変位を防止する押え部として機能する。他の点については、上記第1実施形態の場合と同様である。
【0040】
本実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様に、挿入部11によって、閉塞端部8の端面が筐体5の上端面以下の位置で支持されているとともに、挿入部11に設けられた押え部としての押圧面27によって、閉塞端部8の上方への変位が防止されているため、閉塞端部8の上端面が筐体11の上端面よりも上方に変位しにくい。
【0041】
よって、本実施形態のメスコネクタ3aは、弾性体4の上端面を消毒すれば足り、弾性体4の外周を消毒する必要がないので消毒しやすい。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明のメスコネクタは、三方活栓1の側管2(混注部)に限らず、セフィオフローコネクタ等のメスコネクタに適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…三方活栓、2…側管、3、3a…メスコネクタ、4…弾性体、5…筐体、6…収容空間、7…開放端部、8…閉塞端部、9…スリット、10…底部、11…挿入部、12…外側移行部、13…拡径内径部、14…内側移行部、15…拡径外径部、16…逃し空間、17…環状突出部、18…第1部分、19…第2部分、20…段差部、21…基部、22…導入管、23…導出管、24…円柱体、25…内部接続路、26…オスコネクタ、27…押圧面、28…大内径部。