(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/02 20060101AFI20231122BHJP
F04C 23/00 20060101ALI20231122BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F04B39/02 Z
F04C23/00 D
F04C29/02 311Z
(21)【出願番号】P 2019138902
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 誠
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034536(JP,A)
【文献】特開2011-179456(JP,A)
【文献】特開2015-105638(JP,A)
【文献】特開2006-329067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/02
F04C 23/00;29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に潤滑油を貯留するケーシング(20)と、
上記ケーシング(20)内に設けられ、吸入した流体を圧縮する圧縮機構(30)と、
上記圧縮機構(30)の上に設けられ、上記圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)と、
上記ケーシング(20)内における上記電動機(40)よりも上側の空間に開口する吐出管(22)とを備える圧縮機(10)であって、
上記電動機(40)の回転によって生じる旋回流を利用して、上記ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)を上記吐出管(22)に導く排油機構(60)を備え
、
上記排油機構(60)は、上記ケーシング(20)における上記電動機(40)よりも上側の内壁から突出する突起部(61)であることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
請求項
1において、
上記吐出管(22)は、上記ケーシング(20)の中央部に開口し、
上記突起部(61)は、上記ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)を上記ケーシング(20)の中央側へ案内するガイド面(61a)を有することを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
底部に潤滑油を貯留するケーシング(20)と、
上記ケーシング(20)内に設けられ、吸入した流体を圧縮する圧縮機構(30)と、
上記圧縮機構(30)の上に設けられ、上記圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)と、
上記ケーシング(20)内における上記電動機(40)よりも上側の空間に開口する吐出管(22)とを備える圧縮機(10)であって、
上記電動機(40)の回転によって生じる旋回流を利用して、上記ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)を上記吐出管(22)に導く排油機構(60)を備え、
上記排油機構(60)は、
一端(65a)が上記ケーシング(20)の内壁に開口し、他端(65b)が上記吐出管(22)に接続される排油管(65)と、
上記排油管(65)に設けられた流量調節弁(66)とを備え、
上記流量調節弁(66)は、その開度が変更可能であり、
上記電動機(40)の回転速度が高いほど上記開度が小さくなり、
上記電動機(40)の回転速度が低いほど上記開度が大きくなることを特徴とする圧縮機。
【請求項4】
請求項
3において、
上記排油管(65)の一端(65a)は、上記ケーシング(20)の内壁における上記電動機(40)よりも下に開口していることを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置等に使用される圧縮機が知られている。この圧縮機は、吸入した流体(例えば、冷媒)を圧縮して吐出する。特許文献1には、底部に潤滑油を貯留するケーシングと、このケーシング内に収容され、駆動軸に取り付けられたモータ(電動機)と、ケーシング内におけるモータの下方に設けられ、吸入した冷媒を圧縮してケーシング内に吐出する圧縮機構とを備えた回転式の圧縮機が開示されている。この圧縮機では、ケーシングの上側部分にケーシングの内外を連通する吐出管が貫通するように設けられている。ケーシング内に吐出された冷媒が、この吐出管からケーシングの外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の圧縮機は、電動機の駆動によってケーシング内部で潤滑油及び冷媒の旋回流が生じる。この旋回流によってケーシング内の潤滑油に遠心力が作用し、潤滑油がケーシングの内壁に張り付いた状態になる。このため、ケーシング内の油面位置が高い場合であっても、ケーシングの中央部に配置された吐出管から潤滑油が流出しにくい。
【0005】
ここで、圧縮機を複数台連結して使用する場合、圧縮機内の潤滑油が1台の圧縮機に偏ってしまうことがある。特許文献1のものを連結した場合、潤滑油が圧縮機の外部に流出しにくいので、他の圧縮機内の潤滑油が不足し、圧縮機の故障の原因となってしまう。
【0006】
本開示の目的は、圧縮機の外部へ潤滑油を流出させやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、底部に潤滑油を貯留するケーシング(20)と、上記ケーシング(20)内に設けられ、吸入した流体を圧縮する圧縮機構(30)と、上記圧縮機構(30)の上に設けられ、上記圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)と、上記ケーシング(20)内における上記電動機(40)よりも上側の空間に開口する吐出管(22)とを備える圧縮機(10)であって、上記電動機(40)の回転によって生じる旋回流を利用して、上記ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)を上記吐出管(22)に導く排油機構(60)を備えていることを特徴とする。
【0008】
第1の態様では、旋回流を利用した排油機構(60)によって、ケーシング(20)内の潤滑油(25)を吐出管(22)に導くので、圧縮機(10)の外部へ潤滑油(25)を流出させやすくできる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、上記排油機構(60)は、上記ケーシング(20)における上記電動機(40)よりも上側の内壁から突出する突起部(61)であることを特徴とする。
【0010】
第2の態様では、旋回流によってケーシング(20)における電動機(40)よりも上側の空間に到達した潤滑油(25)が、突起部(61)に衝突して吐出管(22)に導かれるので、圧縮機(10)の外部へ潤滑油(25)を流出させやすくできる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、上記吐出管(22)は、上記ケーシング(20)の中央部に開口し、上記突起部(61)は、上記ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)を上記ケーシング(20)の中央側へ案内するガイド面(61a)を有することを特徴とする。
【0012】
第3の態様では、ケーシング(20)内の潤滑油(25)が突起部(61)のガイド面(61a)に衝突すると、吐出管(22)に向かって潤滑油(25)が跳ね上がる。これにより、圧縮機(10)の外部へ潤滑油(25)を流出させやすくできる。
【0013】
本開示の第4の態様は、第1の態様において、上記排油機構(60)は、一端(65a)が上記ケーシング(20)の内壁に開口し、他端(65b)が上記吐出管(22)に接続される排油管(65)と、上記排油管(65)に設けられた流量調節弁(66)とを備えることを特徴とする。
【0014】
第4の態様では、排油管(65)の一端(65a)がケーシング(20)の内壁に開口しているので、旋回流によってケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)が排油管(65)に流入しやすくなる。これにより、圧縮機(10)の外部で潤滑油(25)を流出させやすくできる。
【0015】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、上記流量調節弁(66)は、その開度が変更可能であり、上記電動機(40)の回転速度が高いほど上記開度が小さくなり、上記電動機(40)の回転速度が低いほど上記開度が大きくなることを特徴とする。
【0016】
第5の態様では、電動機(40)の回転速度に応じて流量調節弁(66)の開度を変更することで、圧縮機(10)の外部へ流出する潤滑油(25)の量を調節できる。
【0017】
本開示の第6の態様は、第4又は第5の態様において、上記排油管(65)の一端(65a)は、上記ケーシング(20)の内壁における上記電動機(40)よりも下に開口していることを特徴とする。
【0018】
第6の態様では、電動機(40)よりも上の内壁に付着している潤滑油(25)を排油管(65)から流出させることができるので、電動機(40)が潤滑油(25)に浸かることによる動力の損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態1の冷凍装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の圧縮機(ロータリ圧縮機)の縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の圧縮機内の潤滑油の流れを示す概略縦断面図である。
【
図7A】
図7Aは、実施形態2における回転速度と弁の開度との関係を示すグラフである。
【
図7B】
図7Bは、実施形態2における回転速度と圧縮機の外部に流出する潤滑油量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。
【0021】
-冷凍装置-
まず、本実施形態の圧縮機(10)が設けられる冷凍装置(1)について説明する。この冷凍装置(1)は、室内の冷房と暖房を行う空気調和装置である。
図1に示すように、冷凍装置(1)は、室外ユニット(2)と室内ユニット(3)とを複数台ずつ備える。本実施形態の圧縮機(10)は、各室外ユニット(2)に設けられる。室外ユニット(2)と室内ユニット(3)は、液側連絡配管(4)及びガス側連絡配管(5)を介して接続されて冷媒回路(6)を構成する。冷媒回路(6)では、複数台の室外ユニット(2)が互いに並列に接続され、複数台の室内ユニット(3)が互いに並列に接続される。
【0022】
-圧縮機-
図2に示すように、圧縮機(10)は、全密閉型のロータリ式圧縮機である。この圧縮機(10)は、ケーシング(20)と、圧縮機構(30)と、電動機(40)と、駆動軸(50)とを備える。圧縮機構(30)と電動機(40)と駆動軸(50)とは、ケーシング(20)に収容される。
【0023】
〈ケーシング〉
ケーシング(20)は、両端が閉塞された円筒状の密閉容器である。ケーシング(20)は、その軸方向が上下方向となっている。ケーシング(20)の内部空間では、圧縮機構(30)の上方に電動機(40)が配置される。ケーシング(20)は、吸入管(21)と吐出管(22)とを備える。吸入管(21)は、ケーシング(20)の胴部を貫通して圧縮機構(30)に接続する。吐出管(22)は、ケーシング(20)の頂部を貫通している。吐出管(22)は、ケーシング(20)の内部における電動機(40)よりも上側の空間に開口している。吐出管(22)は、ケーシング(20)の中央部に開口している。本実施形態では、吐出管(22)は直管である。ケーシング(20)の底部には、圧縮機構(30)等の各摺動部分に供給される潤滑油(25)を貯留するための油貯留部(26)が形成されている。
【0024】
〈圧縮機構〉
圧縮機構(30)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械である。圧縮機構(30)は、吸入した流体を圧縮するためのものである。この圧縮機構(30)は、シリンダ(31)と、ピストン(33)と、フロントヘッド(34)と、リアヘッド(35)とを備える。
【0025】
シリンダ(31)は、中央にシリンダボア(32)が形成された厚肉円板状の部材である。シリンダボア(32)には、厚肉円筒状のピストン(33)が配置される。このピストン(33)には、後述する駆動軸(50)の偏心軸部(53)が挿し通される。圧縮機構(30)では、シリンダボア(32)の壁面とピストン(33)の外周面との間に圧縮室(36)が形成される。また、図示しないが、圧縮機構(30)には、圧縮室(36)を高圧室と低圧室に仕切るブレードが設けられる。
【0026】
フロントヘッド(34)は、シリンダ(31)の上端面を閉塞する板状の部材である。フロントヘッド(34)の中央部には、円筒状の主軸受部(37)が形成される。主軸受部(37)には、軸受メタル(37a)が嵌め込まれる。この軸受メタル(37a)を有する主軸受部(37)は、駆動軸(50)を支持する滑り軸受である。リアヘッド(35)は、シリンダ(31)の下端面を閉塞する板状の部材である。リアヘッド(35)の中央部には、円筒状の副軸受部(38)が形成される。副軸受部(38)には、軸受メタル(38a)が嵌め込まれる。この軸受メタル(38a)を有する副軸受部(38)は、駆動軸(50)を支持する滑り軸受である。
【0027】
〈電動機〉
電動機(40)は、後述する駆動軸(50)を介して圧縮機構(30)を駆動するためのものである。電動機(40)は、圧縮機構(30)の上に設けられている。
【0028】
電動機(40)は、固定子(41)と回転子(42)とを備える。固定子(41)は、ケーシング(20)の胴部に固定される。回転子(42)は、固定子(41)の内側に配置される。また、回転子(42)には、駆動軸(50)が挿し通される。
【0029】
〈駆動軸〉
駆動軸(50)は、主ジャーナル部(51)と、副ジャーナル部(52)と、偏心軸部(53)と、上側軸部(54)とを備える。駆動軸(50)では、その下端から上端へ向かって順に、副ジャーナル部(52)と、偏心軸部(53)と、主ジャーナル部(51)と、上側軸部(54)とが配置される。
【0030】
主ジャーナル部(51)と、副ジャーナル部(52)と、上側軸部(54)とは、それぞれが円柱状に形成されて、互いに同軸に配置される。主ジャーナル部(51)は、フロントヘッド(34)の主軸受部(37)に挿し通される。副ジャーナル部(52)は、リアヘッド(35)の副軸受部(38)に挿し通される。駆動軸(50)は、主ジャーナル部(51)が主軸受部(37)に支持され、副ジャーナル部(52)が副軸受部(38)に支持される。上側軸部(54)は、電動機(40)の回転子(42)に挿し通される。回転子(42)は、上側軸部(54)に固定される。
【0031】
偏心軸部(53)は、主ジャーナル部(51)及び副ジャーナル部(52)よりも大径の円柱状に形成される。偏心軸部(53)の軸心は、主ジャーナル部(51)及び副ジャーナル部(52)の軸心と実質的に平行であり、主ジャーナル部(51)及び副ジャーナル部(52)の軸心に対して偏心している。偏心軸部(53)は、ピストン(33)に挿し通される。偏心軸部(53)は、ピストン(33)を支持するジャーナル部である。
【0032】
副ジャーナル部(52)の下端には、油貯留部(26)に浸漬する遠心ポンプ(55)が設けられている。図示は省略するが、駆動軸(50)には、給油通路が形成される。給油通路は、ケーシング(20)の底部に貯留された潤滑油(25)(冷凍機油)を摺動箇所へ供給するための通路である。駆動軸(50)が回転すると、遠心ポンプ(55)によって油貯留部(26)の潤滑油(25)が駆動軸(50)内の給油通路へ汲み上げられ、主軸受部(37)、副軸受部(38)、及びピストン(33)のそれぞれと駆動軸(50)の摺動箇所に、給油通路を通じて潤滑油(25)が供給される。
【0033】
〈排油機構〉
排油機構(60)は、電動機(40)の回転によってケーシング(20)内で生じる冷媒及び潤滑油(25)の旋回流を利用して、ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)を吐出管(22)に導く。本実施形態では、排油機構(60)は、突起部(61)である。
【0034】
図3及び
図4に示すように、突起部(61)は、ケーシング(20)内における電動機(40)よりも上側の内壁から突出している。突起部(61)は、概ね三角柱状である。突起部(61)は、その高さ方向が上下方向となっている。
【0035】
突起部(61)は、凹曲面のガイド面(61a)を有する。ガイド面(61a)は、突起部(61)における、旋回流の旋回方向と対向する面である。ガイド面(61a)は、旋回流の旋回方向に進むにつれてケーシング(20)の中央側に近づくように傾斜している。ガイド面(61a)は、ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)をケーシング(20)の中央側へ案内するように形成されている。具体的には、ガイド面(61a)は、ケーシング(20)の内壁に張り付きながら旋回している潤滑油(25)を内壁から剥離させ、ケーシング(20)の中央部に開口した吐出管(22)に向かって案内している。
【0036】
-潤滑油の流れ-
次に、ケーシング(20)内の潤滑油(25)の流れについて説明する。
【0037】
電動機(40)が駆動し、駆動軸(50)が回転すると、圧縮機構(30)が作動する。圧縮機構(30)が作動すると、ケーシング(20)内に貯留されていた冷媒及び潤滑油(25)の旋回流が発生する。旋回流が発生すると、
図3に示すように、潤滑油(25)には遠心力が作用し、ケーシング(20)の内壁に張り付いた状態になる。油面の形状は、内壁に近づくほど高くなる凹面状となる。この内壁に張り付いた潤滑油(25)がケーシング(20)の上部に到達すると、
図4に示すように、潤滑油(25)が突起部(61)のガイド面(61a)に衝突し、跳ね上げられて、内壁から剥離する。剥離した潤滑油(25)は、吐出管(22)に向かうガス冷媒とともに吐出管(22)へ流入する。吐出管(22)に流入した油は、吐出管(22)内を通過して、ケーシング(20)の外部へ流出する。
【0038】
-実施形態1の特徴(1)-
本実施形態では、圧縮機(10)は、底部に潤滑油を貯留するケーシング(20)と、ケーシング(20)内に設けられ、吸入した流体を圧縮する圧縮機構(30)と、圧縮機構(30)の上に設けられ、圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)と、ケーシング(20)内における電動機(40)よりも上側の空間に開口する吐出管(22)とを備える。そして、圧縮機(10)は、電動機(40)の回転によって生じる旋回流を利用して、ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)を吐出管(22)に導く排油機構(60)を備えている。
【0039】
ここで、冷媒回路(6)において、複数の圧縮機(10)が並列接続されている場合は、各圧縮機(10)に戻る潤滑油の量が不均一となり、一部の圧縮機(10)に潤滑油が偏在することがある。このとき、多くの潤滑油を保有する圧縮機(10)から排出される潤滑油の量が少ないと、他の圧縮機(10)は潤滑油の保有量の少ない状態が続いて潤滑油不足に陥るおそれがある。
【0040】
これに対し、本実施形態では、旋回流を利用した排油機構(60)によって、ケーシング(20)内の潤滑油(25)を吐出管(22)に導くので、圧縮機(10)の外部へ潤滑油(25)を流出させやすくできる。これにより、複数の圧縮機(10)が並列接続されている場合でも、圧縮機(10)における潤滑油の偏在を抑制できる。
【0041】
-実施形態1の特徴(2)-
本実施形態の圧縮機(10)の排油機構(60)は、ケーシング(20)における電動機(40)よりも上側の内壁から突出する突起部(61)である。
【0042】
したがって、旋回流によってケーシング(20)における電動機(40)よりも上側の空間に到達した潤滑油(25)が、突起部(61)に衝突して吐出管(22)に導かれるので、圧縮機(10)の外部へ潤滑油(25)を流出させやすくできる。
【0043】
-実施形態1の特徴(3)-
本実施形態の圧縮機(10)の吐出管(22)は、ケーシング(20)の中央部に開口している。そして、圧縮機(10)の突起部(61)は、ケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)をケーシング(20)の中央側へ案内するガイド面(61a)を有する。
【0044】
したがって、ケーシング(20)内の潤滑油(25)が突起部(61)のガイド面(61a)に衝突すると、吐出管(22)に向かって潤滑油(25)が跳ね上がる。これにより、圧縮機(10)の外部へ潤滑油(25)を流出させやすくできる。
【0045】
-実施形態1の変形例-
図5に示すように、本実施形態の変形例では、突起部(61)が平板状である。突起部(61)は、旋回流の旋回方向に沿って内壁側に傾いている。この平板状の突起部(61)においても、旋回流の旋回方向と対向する面がガイド面(61a)となる。突起部(61)のガイド面(61a)は、平面である。
【0046】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の圧縮機(10)は、実施形態1の圧縮機(10)において、排油機構(60)を変更したものである。ここでは、本実施形態の排油機構(60)について説明する。
【0047】
-排油機構-
本実施形態では、
図6に示すように、排油機構(60)は、排油管(65)と流量調節弁(66)とを備えている。排油管(65)は、ケーシング(20)の外部に設けられている。排油管(65)は、ケーシング(20)の内部と吐出管(22)とを連通している。具体的には、排油管(65)は、その一端(65a)(流入端)がケーシング(20)の内壁に開口している。排油管(65)の一端(65a)は、ケーシング(20)の内壁における電動機(40)よりも下に開口している。排油管(65)の一端(65a)は、ケーシング(20)の内壁における圧縮機構(30)よりも上に開口している。言い換えると、排油管(65)の一端は、ケーシング(20)の内壁における圧縮機構(30)と電動機(40)との間に開口している。排油管(65)は、その他端(65b)(流出端)が吐出管(22)に接続される。排油管(65)には、流量調節弁が設けられている。この例では、流量調節弁として電動弁(66a)が設けられている。この電動弁(66a)は、その開度が変更可能である。
【0048】
-潤滑油の流れ-
次に、ケーシング内の潤滑油(25)の流れについて説明する。
【0049】
電動機(40)が駆動し、駆動軸(50)が回転すると、圧縮機構(30)が作動する。圧縮機構(30)が作動すると、ケーシング(20)内に貯留されていた冷媒及び潤滑油(25)の旋回流が発生する。旋回流が発生すると、
図6に示すように、潤滑油(25)には遠心力が作用し、ケーシング(20)の内壁に張り付いた状態になる。油面の形状は、内壁に近づくほど高くなる凹面状となる。内壁に張り付いた潤滑油(25)は、遠心力の作用により、排油管(65)の流入端(65a)から排油管(65)内に押し出される。排油管(65)に流入した潤滑油(25)は、電動弁(66a)を通過して、排油管(65)の流出端(65b)から吐出管(22)に排出される。
【0050】
ここで、本実施形態の圧縮機(10)は、仮に電動弁(66a)が閉じていても、電動機(40)の回転速度が高くなると、回転速度が低い場合に比べて、圧縮機(10)の外部に流出する潤滑油(25)の量が増加する。そこで、
図7Aに示すように、電動弁(66a)は、電動機(40)の回転速度が高いほど、電動弁(66a)の開度が小さくなり、電動機(40)の回転速度が低いほど、電動弁(66a)の開度が大きくなるように構成されている。これにより、
図7Bに示すように、電動機(40)の回転速度にかかわらず、圧縮機(10)の外部へ流出する潤滑油(25)の量をある程度一定に調節できる。
【0051】
-実施形態2の特徴(1)-
本実施形態の圧縮機(10)の排油機構(60)は、一端(65a)がケーシング(20)の内壁に開口し、他端(65b)が吐出管(22)に接続される排油管(65)と、排油管(65)に設けられた流量調節弁(66)とを備える。
【0052】
したがって、排油管(65)の一端(65a)がケーシング(20)の内壁に開口しているので、旋回流によってケーシング(20)の内壁に付着した潤滑油(25)が排油管(65)に流入しやすくなる。これにより、圧縮機(10)の外部で潤滑油(25)を流出させやすくできる。
【0053】
-実施形態2の特徴(2)-
また、本実施形態の圧縮機(10)の流量調節弁(66)は、その開度が変更可能であり、電動機(40)の回転速度が高いほど開度が小さくなり、電動機(40)の回転速度が低いほど開度が大きくなる。
【0054】
したがって、電動機(40)の回転速度に応じて流量調節弁(66)の開度を変更することで、圧縮機(10)の外部へ流出する潤滑油(25)の量を調節できる。
【0055】
-実施形態2の特徴(3)-
また本実施形態の圧縮機(10)における排油管(65)の一端(65a)は、ケーシング(20)の内壁における電動機(40)よりも下に開口している。
【0056】
したがって、電動機(40)よりも上の内壁に付着している潤滑油(25)を排油管(65)から流出させることができるので、電動機(40)が潤滑油(25)に浸かることによる動力の損失を低減できる。
【0057】
-実施形態2の変形例-
図8に示すように、本実施形態の変形例では、流量調節弁として電磁弁(66b)が設けられている。この電磁弁(66b)の開度は、大開度と小開度の2段階に切り替えが可能である。小開度のときは、大開度のときに比べ、弁を通過する潤滑油(25)の量が少ない。ただし、小開度でも弁を通過する流量はゼロにはならない。
【0058】
図9Aに示すように、電磁弁(66b)は、電動機(40)の回転速度が所定の回転速度よりも高い場合、電磁弁(66b)を小開度にし、電動機(40)の回転速度が所定の回転速度よりも低い場合、電磁弁(66b)を大開度にするように構成されている。これにより、
図9Bに示すように、圧縮機(10)の外部へ流出する潤滑油(25)の量を適量に調節することができる。
【0059】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0060】
上記各実施形態の圧縮機(10)は、圧縮機構(30)の上に電動機(40)が配置される圧縮機であればよく、ロータリ式圧縮機以外のものでもよい。
【0061】
上記実施形態1の吐出管(22)は、曲管でもよい。吐出管(22)は、ケーシング(20)の中央部に開口していればよく、ケーシング(20)の頂部の中央部を貫通している必要はない。
【0062】
上記実施形態1の突起部(61)におけるガイド面(61a)は、傾斜面であってもよい。
【0063】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本開示は、圧縮機について有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 圧縮機
20 ケーシング
22 吐出管
25 潤滑油
30 圧縮機構
40 電動機
60 排油機構
61 突起部
61a ガイド面
65 排油管
66 流量調節弁